RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
Day by Day・67
(67)








「マ・・・・、フランは、フランソワーズは、島村が好きなの?」








彼らのやり取りに、特別な”何か”を感じる。
それは、ジェット・リンク、ピュンマ・ギルモア意外の、邸に住む誰かと、会話する彼女からは感じられない、何か。

明らかに、フランソワーズと話している、接しているとき、”島村の雰囲気”が変わる。
口で説明しろ。と、言われても、当麻には”雰囲気が違う”と言うことしかできなかった。






「荷物を、早くしまわないとダメになってしまうわ。急ぎましょう」

逡巡する瞳が、瞬く。と、言うには明らかにゆっくりと閉じられて、そして、再び当麻をとらえる。
曖昧な微笑みが愛らしく、ふっくらとした、いつもよりも濃く感じるくちびるに象りながらの、曖昧な返事。



答えないことが、答えのように思えた。



フランソワーズが車のトランクを閉めた音に背を押されたようにして、当麻は、訊ねた言葉をこのままウヤムヤにすることなく、勢いある今、もう一度フランソワーズへと問う。



「好きなのかな?・・・島村のことが、そう、見えるから」


当麻のくちびるが、動く。
耳に届く音に、フランソワーズは戸惑う。


そして、”いつもの台詞”を口にした。


「彼は、私・・たちの、大切な仲間ですもの。家族と一緒なの」


視線を買い出しの荷物へと落として、早口に畳み込むように言い。会話を終わらせようと、両手いっぱいに荷物を持ち上げた。


「そういう風に、見えないんだ・・・・。わかるから、ぼくは」


手にした荷物を重たげに、抱えてフランソワーズが足を一歩踏み出した。


「当麻さん、急ぎましょう。痛んでしまうわ」
「・・・ぼくの気持ちは、”あのとき”、わかってもらえたと、思っているけれど。ちゃんと言葉にはしていなかったから・・・・」







フランソワーズが、篠原の家を去る前日。

初めて、フランが乗ったという大観覧車の中で。
2人だけの空間で。

伝えたい言葉を避けて、自分の想いを伝えた。
ただ、伝えた。



伝えた。


伝わったはず。






「・・・・なかったことに、するのは・・・、なぜかな?」










フランソワーズの、前に踏み出した足が、重たく地に凍り付く。


「こんなときに、って思うかもしれない。・・・・でも、ぼくにとって、今、自分の周りに何が起こっているのか、まったく解らないし、それ以前に知ることを拒まれている状態で・・・。でも、こういうコトになったからそこ、フランに近づけたと、思う。だから、もっとちゃんとフランを知りたいし、向き合いたい。好きだという気持ちは、嘘も偽りもない、正直な気持ちだから。このまま、ここを去るときに、この間のようには、さようならしたくないから」


フランソワーズは、咥内に溜る唾液を、こくっ。と、飲み込んだ。


「私、サイボーグです・・・」
「それが、なに?」


即答だった。
フランソワーズは、両手に持った荷物を握りしめる。


「わかってないのよ、当麻さん。・・・サイボーグと、いうものの”本当”の姿を。だから、だから、そんなに簡単に言えるんだわ」
「本当の姿?・・・・目の前にいる、フランで十分だよ。ぼくにとって」
「・・・・そう言えるのは、今だけなの」
「だったら」


当麻は、フランソワーズの背後に立ち、立ち止まったまま動かないフランソワーズの肩を優しく抱きしめた。


「”本当の姿”を知っても、ぼくの気持ちが変わらなければ、受け入れてくれる?」


耳元で、甘くささやかれた。


兄でも、00メンバーでも、バレエのパートナーでも、ない男性からの包容に、フランソワーズの躯が石のように固まったとき、彼女の脳裏を鋭い光が、記憶の糸を遡った。が、固くくちびるを噛みしめる痛みに、脳裏を駈けていく映像から逃げることなく、冷静に、それらを再びこころの奥底へと追いやっていく。
スイッチが入ったように震え始めたフランソワーズにたいして、当麻はフランソワーズを驚かせたと思い、一度だけ、強くその肩を抱いた後、そっと彼女から腕を放した。

手に持っている荷物が滑り落ちそうになったので、ぐっと力を入れて握りしめるが、震える躯を巧くコントロールできずに、フランソワーズの手から荷物が音を立てて地面へ落ちた。

フランソワーズは慌てて、落ちたそれらを拾うために、膝を折った。
当麻も同じように、フランソワーズの正面に移動し、片膝をついた。



「ぼくは、フランソワーズ、あなたが好きです」



フランソワーズの手が、止まる。
視線を地面に、落とした荷物に定めたまま、当麻へと顔を上げることが怖かった。








買い出しの荷物を邸に運ぶ手伝いを、張大人から頼まれたジェロニモが、当麻とフランソワーズに声をかけることもせずに、静かに歩み寄ると、フランソワーズは立ち上がり、荷物はそのままにして、早足にギルモア邸の中へと消えていった。
残された、当麻とジェロニモの間に会話はなく、当麻が持てるだけの荷物を持ち、残りはをすべてジェロニモが引き受けた。















####


ギルモア邸正門から、一般車道へは15分弱ほどの緩やかな私道を歩かなければならない。走り抜けるだけの車からは、そこに”道”が存在するなど、気づかない。
早足に一般車道まで足を向けて、カーブを描くアスファルトに沿う白いガードレール前に立つ。

ジョーの目から見て、あまりにも頼りなく感じるガードレールは、彼の腰にも届かない高さ。カーブを曲がり損なった車がぶつかれば、衝撃に耐えることなく、数メートル下に見下ろす、陽光を眩しく照り返す白い砂浜を、燃え上がるオイルの黒い煙が覆うことだろう。

簡単に映像化できた惨劇は、ジョーの目の前に広がる平穏な青の風景に似合わない。
彼は首を左右に振って映像を消去することにつとめた。



一般人が使う、”コンクリートでおざなりに設けられた階段”は、ジョーの立つ位置から10分強ほど下ったギルモア邸最寄りのバス停近くにあり、そこまで行くことが面倒に感じたジョーは、周りを見渡して、人気や車の往来がないことを確認してから、ひらり。と、ガードレールを飛び越えた。











振動した携帯電話は、002からの報告だった。

『石川が動いた。篠原秀顕に連絡を取った。2』










重力を躯に感じる刹那に、時が止まる間がある。
その間が、いつでもジョーに”宙(そら)を思い出させた。








利き足で、熱を含んだ砂の上に着地する。
ざんっと、乾いた音とともに、砂が飛沫をあげるように舞った。

歩きながら、ズボンの尻ポケットに突っ込んでいた携帯電話を取り出して、確認する。
002からの報告にたいして、短く、必要事項のみを書き込み、送信。





それは002のみならず、00メンバー全員へ送信された。














季節は遅れて、梅雨へと向かっている。
じめじめとした湿気を肌で感じながらも、涼やかな潮風がそれらを追い払ってくれる。




波打ち際まで歩き、履き慣れた愛用のスニーカーを脱ぎ、裸足になる。
持っていた携帯電話、使い捨てライター、紅い煙草の箱、いぶし銀カラーの、円い携帯用灰皿。を、靴の上に投げ出す。

ほかに何かなかったか?と、確認するように、腰周りを叩くような仕種をした。
ジーンズのベルトをはずそうと、して、しばし考える。
続いて、着ていたTシャツの襟元を引っ張り、逡巡をあらわしたような表情をみせたが、ふわりと、風に靡いて、砂の上に落ちる、よりも早く、ジョーは消えた。









遠く、立ち上がった波飛沫が、キラキラと空に向かって放たれた。

























シズンデ イク カラダ。















見上げる、光満ちる海面は空色よりも明るく、波に揺らされて煌めく。
透き通る陽の温もりが肌に心地よかった。



口元から、ぷくり。と、小さな空気球が、上へ上へと逃げていく。











耳に聞こえてくる世界は、眼にみえない世界の音。

作り物の心臓が打つ音が妙にはっきりと感じる。
内側を感じる。












閉ざされた外の世界に、反発するように、内にこもる何かが、開放を求めた。













すべての力を抜いて、流されるままに、揺らされるままに、溶け出していく。













息苦しさを感じて、機械の力を借りる。






皮膚感覚が、消えたように思えた。
自分と海水との境が消えたように、思えた。

体内に埋め込まれたセンサーが勝手に反応し、現在の体温と海面の温度、そして
その誤差などをジョーに、009に知らせる。


ふっと、口元が緩んだ。


こぽこぽこぽ。と、空気球が無数に浮かび、口を開けると、ごぼごぼっ。と、海
水に圧迫された空気の固まりが地上を目指して、上へと上る。















ここから、始めよう。


















終わったわけじゃない。
戻るんじゃない。
やり直すんじゃない。





続いているようでいて、常に新しく始まるんだ。






















フランソワーズ。
キミの言うとおりだ。



俺は、俺で、俺でしかなく。
昨日、一昨日、去年、・・・・サイボーグにされる前、そこに生きた俺は、今の俺に繋がっているとしても、今日の俺じゃない。

積み重なる、過去の、一番上に開かれる真白いページは、常に新しい。
書き込んでいく、俺が、009で、009が、俺。











切り取られることのない、どこまでも続く空は、くるりと、世界を包む。
波の揺れるに乗って、目指す先に人影がみえた。

くちびるが塩辛く、腕で乱暴に拭うが、腕も同じ味がする。
海水を含んでしまったジーンズが、重い。が、それほど問題ではない。

一歩、一歩、歩くごとに、青から解放されていく。
天から降る光は暖かく、それは、首から、徐々に、肩へ、背へ、腰へ、と流れて
いく。


見上げた空よりもも、ずっと高い、宙から、地球を見た。
・・・どの、蒼よりも、キミの碧が一番きれいだ。







特徴ある人影が、ジョーに向かってタオルを投げた。


「泳ぐなら、中途半端に脱ぐんじゃなくて、全部脱ぎやがれっ!」
「・・・早いな、よくわかったね、ここ」
「早い?・・・携帯電話の電源を入れたままだろ?居場所くらい、これでわかる。忘れたのか?」


腕を組みながら溜息混じりにつぶやいた、彼の瞳の色が解るまでにジョーは2人に近づいていく途中、放り出していた、煙草とライターを拾った。
ジェットから受け取った、タオルを肩にかけ、とんとん、と、四角い紅箱をたたき、白い棒を1本取り出して銜える。
ささやかに吹く風から、ライターの火を守るかのように手を添えて、火を移す。


2,3度、強く吸い上げて、かちり。と、ライターの火を消すと、口の端から、風にきえゆく白を眺めた。


「・・・で、タオルつき?イワンに聞いたんだろ?・・・・俺は、”邸に2時間後”って送ったはずだけど?」
「はあ?んなもん、とっくに過ぎてんぞ?だ~か~らっ!わざわざ、報告にきてやったんだぜ?面倒くせえのが、うろうろ邸内にいるからよ!」
「・・過ぎてる?・・・そう、なのか?」
「1本遣せ」


アルベルトが、ジョーの紅箱に手を伸ばした。


「自分のは?・・・まだ買ってない?」
「なかなか、手に入らないんだ。ネットで取り寄せてもいいが・・・、税金がかかる。ほかを見つけるまで世話になるぞ」
「口に合わないんじゃなかった?」


アルベルトがジョーから受け取った箱から1本、取り出すと、ジョーは手に持っていたライターの火を、灯す。


「ジェットのよりか、ましだ」
「この旨さがわからないとは、おっさんの舌、やばいんじゃね?」


ジェットも、自分の分をくしゃくしゃになった箱から取り出し、アルベルトに続いてジョーから火をもらう。



「それで、何の真似だ?」


肺を満たした毒を満足げに空へと放ちながら、アルベルトがジョーに向かって尋ねた。


「・・報告があるんだろ?そっちが」
「動いた、今すぐにとは言わないが、秀顕は夜に入れていたスケジュールをキャンセルした」
「んだからよ、石川もそれまでは動きようがないらしく、ホテルでテレクラに篭った男みたいになってるぜ」
「古、・・・・・ジェット、テレクラって・・・今は出会い系サイトや、インターネットの、だろ?」


人差し指と中指に、煙草を挟み、呆れたように言った口から煙草を離した。
ジェットがジョーの足元に投げ置かれていた、いぶした銀色の丸い形をした携帯用の灰ざらを拾い上げ、スライド式に開閉する蓋を、親指で押し開けて、その中に、とん。と、灰を落とす。


「部屋に引きこもって、手帳と睨みあって、電話をかけまくる、だぜ?テレクラに居座り続ける男、以外の他に、なんて例えんだよ?」
「ストーカーか、その日の売り上げを気にする、ホストだな」
「同伴ってやつ?それとも、店に来てくれっつう~、営業?・・・面はいいから、ホストの方がしっくりくるよな?」
「・・・・まだ、この国に移り住んで1年経ってないよ、な?・・・・・普段、何してんだよ?」


再び、銜えなおした煙草を、くちびるでささえながら、タオルで髪をがしがし。と、拭きはじめたジョー。


「こっちの報告の前に、聞いておきたいんだが?」
「・・・・イワンから、聞かなかった?」
「フランソワーズにミルクをねだっているイワンに聞けると思うか?」
「聞いてみたら?」
「ジョー、お前を売ってもいいなら、な」
「・・・で、俺から何を聞きたいんだ、よ?」


手を止めて、タオルを被ったような状態のままジョーは、すうっと口に銜えた草から、吸い込んだ煙を肺へと送った。


「動くぞ、石川が・・・」
「ああ・・」
「オレが見張っていた間に、電話をかけた先は控えてあるぜ・・・・。いくつかは国際電話、会話の内容までは聞くなよ?003じゃねんだからよ。けどよ、007が部屋に盗聴器を仕掛けていてくれたから、そこから”内容”を取り出せるだろうけどよ」
「内容は、ほとんど”篠原さえこ”探し、だろ?・・・地下で一通り聴いてみるけれど、秀顕と連絡を取った今、あまり重要には思えない」
「津田海は?」


薄く開くくちびるの隙間から、煙を吐き出し、半分ほど吸った煙草を、ジェットが持つ灰皿に捨てたジョーは、アルベルトの言葉にうなずいた。


「008に任せている、時間がかかるだろうから001の助けを借りた」
「001と、009、お前さんがが進めていたプラン通りにいくのか?」
「・・・それが、聴きたかった?」
「時間がない。接触する前に、石川を押さえる方がリスクが少ないのは当然だ」
「オレも、004の意見に賛成だぜ?・・・すでに、当麻、さえこに言っちまったんだしな、これ以上の情報提供の必要性はねえんじゃねえの?」
「篠原親子を信用しているわけでは、ないぞ」


アルベルトの意見はジョーの予想した通りであったために、くすり。と、笑いがこぼれた。


「余裕じゃねえかよ?」


こぼれた笑みを見逃すことなく、ジェットは2本目の煙草に火を灯けた。


「接触しても、問題ない」


きっぱりと言い切った、009。


「・・・・・また、面倒なコトを言い出すんじゃないだろうな?」
「・・・お世話になります」


アルベルトは、持っていた煙草を、ジェットの手から奪いとった灰皿に、捻じ込んだ。


「オレの、Roth-Handleを手に入れてくれ、それが条件だ」
「アルベルトだけかよ?面倒になるのはよぉ、みんな一緒なんだぜ?」
「そう思っているのは、お前だけだ・・・・。いいな、ジョー、たっぷりと吸わせてくれ、これが終わったら」


足にこびりつく砂を払い、スニーカーを履き、携帯電話を拾い上げてから、同じようにTシャツを手に取った。



「了解・・・・、ジェット」
「おう、なんだよ?」
「俺の脳みそは1つ、補助脳も、同じ。”俺が009”だぜ?」


アルベルトの左口角があがる。
ジェットは、にやり、と笑って、手に持っていたタバコを口に銜えると、ジョーの髪を覆い隠すタオルを、空いた両手でつかむと、わしゃわしゃ。とジョーの髪を乱暴にかき回した。


「ったく、うちのリーダーのマイペースぶりには困ったもんだぜっ!!・・・・やっとかよ、遅いっつうのう、一緒に落ちた、オレを見習えっつうの!」」
「・・・、いや、ジェットとジョーを足して2で割ったのが、好ましい。009、秀顕と、石川は夜の10時に、篠原の本社、秀顕の部屋で会うことになっている」
「今、何時?」
「4時前」
「ああ、本当だね。”2時間後”はとっくに過ぎてる・・・もしかして、みんなを待たせてる?」


歩き出したジョーについて、アルベルトとジェットも歩き出した。


「過ぎてる、どころじゃないだろう?・・・・殴られろ」
「さすがに8人がかりじゃ、俺も辛い。・・・・と、言うことは2人が代表になって、迎えに来てくれた?」
「・・・の、はずだったんだけどよおっ」


ジェットが顎で指した先に、おざなりに作られたコンクリートの階段が、砂浜から一般車道を繋ぐ道。
そこに、いびつな影が並ぶ。


「・・・・・邸をカラにして出てくるなんて、無用心だ、ね」


ジョーは眩しげに、影の数を数えた。

















####


「1人で海水浴?僕に内緒だなんて、ひどいんじゃない?」


駆け寄ってきたピュンマが言った。


「次回からは誘う、よ」
「ジーンズは脱がなかったの?」


Tシャツを手に、濡れて色が変わったジーンズを履いているジョーの姿を見て訊いた。


「・・・なんとなく、やめておいた」
「ジーンズで海に入るなんて、海水を吸って重くなるだけだろうに・・・」


ジョーに返さなかったGARAMの紅箱から、1本煙草を取り出すと、ジェットは自分が持っていたライターをアルベルトに向かって投げた。


「見られても減るもんじゃねえだろ?なあ?浴室に大穴を空けて、オレたちにストリップ・ショウをさせようとしたヤツがよ!」
「・・・・津田は?」
「あ、うん・・・・。ギルモア博士と話してる。思ったよりも落ち着いているよ、でも・・・・彼はすごく石川先生を信頼しているみたいだから、彼から聞き出すのには」
「時間がかかりすぎる、ね・・・。報告は済ませた?」


ちらり。とアルベルトへと視線をむけたジョー。


「待ちすぎて、キリンになりそうだったんでな」



砂浜を歩く。
海水を含んだジーンズが足にへばりついて、重い上に、妙に生暖かく、心地よいものではなかったが、逆にそれが、嬉しくもあった。



視線の先に、見える影の形がクリアになってくる。
ジョーの視線は、全体を捉えながらも、その1人に注がれた。

肌を撫でる、ささやかな潮風にさえ舞う髪の色は、蜂蜜色に輝いて、トレードマークのカチューシャが飾られている。
細腕に抱く、イワン。
彼にとって、ランソワーズの腕の中が一番の特等席。


いびつなコンクリートの階段をゆっくりと、足元を確認しながら降りてくるものの、その足取りが危なっかしく、つい腕を伸ばしたくなる衝動に駆られたジョーは、ごまかすように、肩にかけていたタオルをピュンマに持ってもらい、手にあったTシャツに袖を通した。


「あ~あ、フランソワーズのヤツ、危ねえっ・・・アイツ、あれでよく戦ってきたよなあ?バレエだって信じられねえぜ?・・・鈍くせえな!」


ジョーのこころを代弁するような、ジェットの声にピュンマが笑った。


「ジェットっ聞こえてるよ、絶対!」
「別に、かまやしねえよっ!」


フランソワーズの前を行くグレートは、ちらり、ちらり、とフランソワーズへと視線を送り、背後にはジェロニモが寄り添っている。すでに階段を下りている張大人は、階段脇に立ち、見上げて、フランソワーズの様子を伺っていた。


「姫、だな」


ふう、とアルベルトの吐いた息が、風に乗って海へと旅立ち、彼の言葉だけが、ジョーの耳に残った。



「強い、よ?・・・姫は姫でも、・・・戦えるのって、リボンの騎士?」
「・・・・・それの方が古いぞ?」
「知ってる、アルベルトが怖い、最近ので”姫”で”戦える”っていうの、知らない」
「リボンの騎士は、リメイクしたからね!」
「・・・ピュンマ、知ってるんだ?・・・リメイク?」
「グレートが毎月買ってる雑誌にね!原作も読んだよ」
「オレも読んだぜ!漫喫で!」
「・・・・・・・アルベルトは?」
「手塚作品は一通り持っている」
「・・・いったい、どこで何をしているのか、報告書を出してもらおうか、これから・・・。俺より日本人してそうで、怖い、よ」



<亜麻色の髪の乙女に恋する、フランツ・チャーミングという、王子がいるんだが・・・知っているか?>



フランソワーズの利き足が、砂に触れたとき、アルベルト、ジェット、ピュンマ、そして、ジョーが階段下にたどり着いた。



<亜麻色?・・・・・リボンの騎士は、確か・・・黒髪のショートヘア、だろ?>
<サファイアが変装した姿に、惚れるんだ>
<サファイア?って誰?>


「サファイア姫の正体が、リボンの騎士。」


何の前触れもなく、突然ジェロニモが言い放った言葉に、フランソワーズが驚いて彼へと振り返った。
ジョーとアルベルトは、顔を見合わせて苦笑し、ジェットはニヤニヤと笑う。
ピュンマは微笑を絶やすことなく、張大人は濡れてしまているジョーのジーンズに、溜息をつき、風呂に入ることを進めた。
グレートは、腕を組んで周りの様子を伺いつつ、フランソワーズはきょとん、と。瞳を瞬かせながら、イワンを抱きなおす。


アルベルトが肺に含んだ煙を外へと解き放ち、言う。


「さて、009・・・。これからどうすればいい?」









9人の、戦士が揃った。



















「・・・・・戦いの基本、その1。相手を知ること、だよ」



009の言葉に002の顔が歪んだ。


「んなもんっ!もう十分だろっ!!」
「だから、復習。・・・・サイボーグの文字を1文字でも残すことなく、消すために。心配しなくても、今夜、こちらから動く、よ」


















=====68へ続く



・ちょっと呟く・


脳みそ入れ替え中のパソコンから取り出した、テキストが、ウィンドウズでは
見られなくて・・・・。


紙に走り書きした、イベントマップを頼りに書き進めていたら、迷い道。
プロット無視で進みます。
大筋の流れは同じなのですが、9と3のこころの動きが危ない(笑)



当麻くん、ここで告白?
いやいや、ここからっすよ!

いろいろとね!






スポンサーサイト
web拍手 by FC2
in the dog days of summer


梅雨明けのニュースを、新人お天気お姉さんから教えてもらい、本格的に夏が訪れた。

日本独特な、湿気万歳の、熱風かけてゆく街。
の、道はきれいに舗装されて、見た目ばかりが美しく、そこに生きる人間にとっては照り返すアスファルトの熱が、下から足首に絡みつかれて足取りが重くなるばかり。

整った道にクールビズは適用されていないのか?
(クールビズってなんだ?!)


太陽に灼かれるのではなく、オレはテレビ・ショッッピングのわざとらしい、大げさなリアクションで説明する、赤外線なんちゃらの魚焼き機に、放り込まれた美味しい魚の気分。

上からしっかり、下からじんわり、灼かれます。

中はしっとりふわふわの身に仕上がるらしいけど・・・・オレの中はしっかりじっくりフランソワーズさん一色です。


ドアのチャイムがちりりんっと鳴る。

カフェ内で生まれ育った愛しい冷気が外へと逃げていく。
むあっとした熱気が、ここぞとばかりに店内に飛び込んでくる。

混じり合う空気が肌を交互になでていき、次第に、肌から引いていく汗とともに、カフェAudreyの甘い香りに包まれる。


「やあっと出てきたわね、大地」


出迎えてくれるのは、義姉さん。


ここの店長です?
いや、店長は兄貴か?


「ほらほら、ぼーっとしないでよ!バイトでしょ、バイト!時は金なりっ」


義姉さんに急かされて向かった先は、”スタッフルーム”。


汗をすったTシャツが重く、冷たくなってオレの背中にべったりと張り付いていた。
それを脱ぎ捨てて、半袖の白のカッターシャツに着替える。
上は白シャツ+オリジナル・エプロンが、カフェAudreyのバイト服。

エプロンは3種類好きなのを選ぶ。夏用をね。
シーズンによって、デザインが代わるのは兄貴の趣味。
なので、春夏秋冬、なんとも落ち着きのない制服である。


ジーンズはそのままに、エプロンを手にもって店へと戻る。
一歩踏み出したとき、太ももに冷たいジーンズの感触でぶる。と、体が震えた。


「義姉さん!冷房強すぎだよ、これじゃあ、ホットの注文が増えるよ?」


レジカウンターと一緒に並ぶ、ケーキ用のウィンドウをのぞきながら、品数をチェックしていた義姉さんに言った。


「お店を開けるまでは、これでいいの!あけたら一度切るから!」


持っていたペンでオレを指す。
そして、その手が、ドアへと向けられた。


「ほら、ドアのプレートチェンジ!」








土曜日、午前10時・・・2分前。




ドアのチャイムをちりりん、と鳴らした、オレ。






「いらっしゃいませ。ようこそ、カフェ・Audreyへ!」


オレの最大級の営業スマイルの先は、もちろん!


「おはようございます、大地さん!ばたばたしていて、食べてないの・・・大丈夫かしら?」


ああ、美しい!
この暑さに関わらず、涼やかに、白とベージュの細いストライプ柄のシャツワンピーツを着こなして、訪れた今日一番のお客様っ。

「冷房、強すぎないか?・・・フランソワーズ、何か羽織れ」



・・・・・・・・・は、フランソワーズさんだけではなかった。




「いらっしゃいませっ♪フランちゃん、島村っちさん。珍しいわね!開店同時に来るなんて、座って、座って!」
「萌子さん、おはようございます!ブランチ、お願いしたいの」


義姉さんではなく、兄貴が厨房から、「お任せでいいですか~?」と、答えた。


「二人分、お願いしますっ!」


何とも耳に心地よい、フランソワーズさんの声がカフェ内に響いた。
きっと、高田さんと、兄貴ははりきってメニューにない”スペシャル”が出てくるだろう。
それは、うちのお得意様中のお得意様である、フランソワーズさんだから♪
そう、それはフランソワーズさんのためであって、決して、ジョーのためでは、ない!!



「・・・・そんな、あからさまに睨むなよ。客だぜ?」
「うるせえっ、オレのバラ色になる予定だった1日を瞬殺しやがって」


ふっと、口元で微笑んだジョーを睨んだために、気づいてしまった。


「?・・・何、どうしたんだよ?」


けんかを売るように、睨んでいたオレが、がっくりと、肩を落としてうなだれてしまった様子に、ジョーは優しげに声をかけてきた。










もう、好きに灼かれてしまおう。と、思った。
オレ。じっくりじんわり灼かれますので、誰かおいしくいただいてください。

(できれば、フランソワーズさんにいただかれたいのですが・・・)








「暑いのに、この暑い、時期に・・・・熱くて結構ですね!」


跳ねるように、顔を上げたオレの視線に、ジョーはぱっと、首元を押さえた。


「え・・・、まさか、・・・・・ついてる?」


おお!動揺しているぞ、ジョーがっ!!
っけ・・・・何が”ついてるか、わかっているのが、むかつくけど!


「虫食いにしちゃあ、変なところ噛まれたよなあ?」


ジョーの視線が俺から逸れて、フランソワーズさんへとむけられた。


「・・・・フランソワーズ、見えるところにつけるなって、言っただろ」


義姉さんと話していたフランソワーズさんが、ちらり。と、振り返る。と、絹のようにきらきらと光纏う亜麻色の髪が、追いかけて、愛らしく、小さなチェリーカラーの舌をぺろっと出し、肩を竦めてみせた。





かわいすぎるっっ!!!!!!!!!!!!




「・・・・お仕置きよ、ジョー。だって、駄目だって言うのに、いっぱいつけるんだもの!恥ずかしいでしょ?意外と、んふふ。わかった?」









はあああああ・・・・・。






「義姉さんっ!冷房の温度設定、下げてくれよっ、オレっっっ熱くてしにそうだよっ!!」












オレの夏は、去年より大分熱くなるようです・・・・・。
助けてくださいっっ!!














end。








・いいわけ・

大地くんものは、”イントロ”だけは山とある(笑)
これは、そのうちの一つです。

続けなくても、これだけで十分かなあ?と、メール添付で保存していた文を取り出しました。
いろんなところで、暇を見ては書いているので、いく先々に走り書きのような、文章が保存されてます(笑)
web拍手 by FC2
Novelization
人が恋に落ちる瞬間。とは、どんなときだろうか?










初めての出会いに、それを感じる余裕はなく。
ただ、あまりの場違いな美しさに、息を飲むしかなかった。

自分のおかれている状況よりも、なぜ、その美しいひとはそこに立っているのか。
それだけが、不思議と頭の隅っこに居座り続けた。


名もない人。
いや、名を番号で呼び合う間柄の人。




初めて、彼女の名前を知ったとき、その音の柔らかな響きに驚いた。
その名前を名乗るに、ふさわしい人。


何に例えればいいのか、わからないほどに細く、きらり。きらり。と輝く髪は、亜麻色と呼ばれる色だと、知った。
僕の目には、蜂蜜のように、とろりと甘く綺羅めいてみえる、髪色。

小さい頃に川底で見つけた、つるりとした白くて輝く石を、この世で一番の宝石のように大切にしていた、それよりも、純白に輝くような小さくて白い手で、肩先に揺れる一房の髪を払いのけた、その仕草が、スローモーションのように見えて。


髪から放たれた香りに、目眩がした。








いつも下腹部からじわじわとわき上がってくる痺れに、戸惑う。





ボクよりも身長が低い彼女の見上げるてくる視線を、への字にした口で、耐える。
恥ずかしさと、嬉しさと、入り混じった小さなプライドが、憮然とした態度となってしまう。


あまりにも大きな瞳が、小さな作りの彼女の顔からこぼれ落ちそうで、瞬くたびに陰を落とす、長くしっとりと繊細に整われた、睫のささやかな揺れが、空の青とも海の青とも言いがたい、彼女だけの青に、どうしようもなく引き込まれてしまう。


だから、まともに彼女と視線を合わすことができなくて。







長い前髪を幕のようにを引いて、直接的に彼女と視線を合わすことを避けた。






「009は、・・・・・・・・私のこと、嫌いなのよ」
「ちがうな」
「004、どうして?・・・だってみんなとは普通なのに・・」
「少し、時間をやれば、そのうちわかるさ」













人が恋に落ちる瞬間。とは、どんなときだろうか?




「そんなもん!出会って、よっしゃ!だろ?」

「う~ん。フィーリングじゃないかな?あ、この子だ!って言う感じだと思うよ?」

「ワテのことなんて、参考にならないアルヨ!でも、言わせてもらえば、・・・ときめきネエ」

「誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。と、シェークスピアは言っておるぞ!」

「自然のこころに従う。じぶんのこころに、正直になる。」

<DNAに組ミ込マレタ、子孫繁栄ノタメ ノ ぷろぐらむ>






人が恋に落ちる瞬間。とは、どんなときだろうか?






「なんじゃ、そんなこと・・・鏡をみてみなさい」
「鏡?ですか?」
「003と話した後に、じゃぞ?」
「?」




戦場から離れたひとときに、触れることができた時間。
ささやかな、間。

閉店処分セールで、ぽつり。と、放りおかれていた薄っぺらい単行本を、なんとなく買ってみた。
古い、古い、その本は、作者があこがれの女性にたいして綴ったものだった。




その女性に出会った瞬間の、胸の高鳴りを書いただけの、話。










読み終わった後、その本をどうしたいいのかわからなくなった。
もっているだけで、気持ちが落ち着かなくて、捨てようと、何度もゴミ箱へ投げるも、捨てることができなくて。
部屋のクローゼットの、奥の、奥の、奥へとしまい込んだ。



はずなのに・・・・それは、いつの間にかリビングルームの珈琲テーブルの上に置かれていた。






「・・・これ」


通りかかった、彼女が言った。


「それ、・・・・この間、町に出たときに閉店処分セールをしていた本屋でみつけたのよ。なんだか・・・」


最後の言葉は音にされることなく、空気にとけ込んでいった。


「なんだか、なに?」
「・・・・」


困惑したように、眉根を寄せて視線を床に落として言い淀む、立ち姿に、苛立よりも、好奇心が勝つ。


「買わずには、いられなかったの」


ボクの手から、奪いさる、古ぼけた単行本。











同じ本が、この邸に存在する。

1冊は、彼女が持ち。
もう一冊は、ボクの部屋のクローゼットの奥の、奥の、奥にしまわれている。








人が恋に落ちる瞬間。とは、どんなときだろうか?




その本のはじめに書かれていた、言葉を何度も繰り返し思い出す。










どんなときだろうか?











「009、出かけるのでしょう?」


彼女がボクを呼んだ瞬間に、彼女の声がすっと耳に入り込んで、僕の胸でイタズラに機会仕掛けの心臓のポンプを早く打つように細工する。

じんわりと、浮かび上がってくる痺れに耐えきれなくて、ぐっと喉に力をいれると、つい口がへの字に固まってしまい、汗ばんでくる手が気持ちが悪い。


「・・・うん、003。・・・・・・・・・一緒に来る?」


ボクの言葉に、驚く彼女の瞳の色が、綺羅めいて。
少しばかり色づいた頬が心持ち上に上がり、こぼれ落ちそうなほどに大きな、その瞳が細められた。


「一緒に、・・・いいの?」













「鏡をみれば、いいんじゃよ。恋する目をしておるじゃないか。・・・・009はいつも恋に落ちた”瞬間”に生きておるんじゃからな」




ぱちり。と、将棋の盤を打つ音。






















どこへ行こうか?
彼女と一緒に。


早鐘打つ、心臓を胸に。
手に汗をかきながら、喉に力を入れてへの字に固めた口で。

まっすぐに、見ることができない、青の瞳を輝かせるキミの隣を歩くボクは。






恋に落ちた瞬間を生きている。


その先に、何があるのかわからない。
なぜなら、ボクの部屋のクローゼットの、奥の、奥の、奥に、しまわれた、その単行本に、先は書かれていなかったから。

彼女の持つ、単行本にも書かれていない、はず。




ここから先は、きっと。









「003、じゃなくて、さ・・・・・、フランソワーズって呼んでも、いいかな?・・せっかく、教えてもらったから」
「じゃあ、私も、ジョーって呼んでも、いいかしら?」















ボクと彼女が続きを書くんだ。













end.









・あとがき・


加速装置をksk装置と書くらしい。


9は加速装置つき=加速する=周りの時間が止まっている=9(平)ってちょい鈍そう=自分が恋してるの気づかない=恋に落ちる瞬間を何度も繰り返す=やっと気づく=何度も恋に落ちてる?



そういうことで、平ぜろ・ジョーでしょうか?




何を書いているんでしょう、私・・・。
web拍手 by FC2
Day by Day・68
(68)





人であったころ。
中華料理店を経営していたと話してくれた張大人に、アメリカ先住民の、今は消えてしまったある部族の生き残りである、ジェロニモと買い出しの荷物をキッチンへと運び終えた後。
リビングルームにおかれている、海外輸入家具をメインにしている店でも滅多に売っていないだろう。と、その大きさに驚かされる、白い皮作りのソファに、子猫のように自分のひざに顔をうずめてしまい、ぴくり。とも動かない母のそばに、恐る恐る近づいていく。

母の、初めて見る弱りきった姿に、どう声をかけてよいのか解らず、ソファの端に立ちつくす当麻。黙って同じソファに、さえことは距離を開けて座る、イギリス人に当麻は席を勧められた。
ジェロニモとリビングルームを通るとき、独り言のように、母に話しかけている姿を当麻は先刻目撃している。


「初めてましてですかな?・・・篠原当麻くん」
「・・はい」
「我輩は、グレート・ブリテン。007とも呼ばれている、役者です」
「や、くしゃ?」


当麻の言葉に、にっこりとグレートは笑い、頷いた。


「酒を飲め。こう悲しみの多い人生は眠るか酔うかしてすごしたほうがよかろう。byオマル・ハイヤーム。当麻くんも、いっぱい飲むかい?」


グレートの言葉にぎょっと、驚き。その手にカラメルカラーの液体が、カッティングの美しいグラスに1/3ほど注がれて、ルームライトにキラキラと光る氷が宝石のようにみえた。


「仕事、仕事、で満足にこれを口にする暇がなくてねえ、少し休め。と、リーダーが言ってくださったので、休ませてもらっているのさ・・・。母上にもオススメしたんだが、ふられてしまった」


へへへ。と、はげた頭を撫でながら、手に持つグラスから一口、舐めるように液体を口に含むと、氷がからん。と、耳に心地良い音を鳴らした。
当麻は、そろそろと、ソファの端に腰掛けながら、さえこの様子を伺うが、彼女はまったく反応を示さなさない。


「我々は泣きながら生まれて、文句を言いながら生きて、失望しながら死ぬ」


当麻は、グレートの言葉に再び彼の方へと視線をむけた。


「・・・・生まれた国のことわざだよ。ジョーが・・・。うちのリーダーをあとで殴ってやらなきゃなあ、・・・返り討ちにあうかもしれんが、一発なぐらなきゃ、我輩の気が治まらん」
「島村を、殴る?」
「そうだとも!か弱き女性を守るのが男っ、麗しく薫る花を手折ることは、誰にもでできること、善悪の見分もけつかない、性別の何たるかも知らない、坊やじゃないんだからなあ。こぼされる朝露の光が消えるまで、そばに居てこそ、男だと思わないかい?」
「・・・・島村が、何か・・母に?」


グレートは手に持っていたグラスを、音を立てずに硝子作りのテーブルに置いた。


「代わり、に。謝っておくよ・・・。ジョーが、すまんなあ・・・。前はこんな風に女性を放っておくようなヤツではなかったんだが、アイツも今いろいろと、がんばっているんでな。・・・・冷たくしちまったのは、こころに余裕がないからで」


当麻は、再び視線をさえこに戻した。
すると、さえこは当麻の視線を感じたのか、連続写真を撮るかのように、もどかしいほどに、ゆっくりと体の強張りを解いて顔を上げ始めた。


「我々は泣きながら生まれて、文句を言いながら生きて、失望しながら死ぬ」


さえこの動きをじっと見つめながら、グレートは再びつぶやくように、同じ言葉を口にした。


「我々は泣きながら生まれて、文句を言いながら生きて、失望しながら死ぬ・・・・・・・・・。失望しながら死ぬってのは、聞きようによっては、失望するほどの”何か”があったってことだと、思うんだなあ、我輩は。素晴らしいじゃないか!失望するということは、その”何か”に果敢に挑戦した末のことだ。生きた証に、大いに失望しようじゃないか」


当麻は、黙ってグレートの言葉を聞きながら、考えた。


「失望することさえできない、人間もいるんだよ。文句を言いながら生きようじゃないか!だから、我輩はジョーを殴り、文句を言うんだ。母上は、人生の何に失望なさるかな?」


さえこの瞳がグレートを捉えるのに、どれほどの時間がかかったのか、壁にかけられた時計をみていなかったために当麻にははっきりとした時間を言うことができない。が、正確に時を刻み続ける病身の音が、耳障りに感じるほどに、長くかかったことだけは確かだった。


「・・・・・・・失望?・・・・・・・失望し続ける、人生よ」
「それは、お見事!母上の失望の人生に、乾杯っ!」


テーブルの上においたグラスを勢いよく手に持つと、それを高々と上げて立ち上がり、カラメルカラーの液体を一気に飲み干した。


「わからないわ」
「人生に、迷いはつきものですぞ?・・・その迷いを楽しみ味わうことが、我々を神から遠ざけていく。神から遠ざかるほど、人は迷い、苦しむ。あなたは、人なんですなあ、羨ましい」


力なく、グレートはソファに崩れるように座り、手に持つ、氷だけになったグラスを、からん。からん。と鳴らしながらグラスをまわして遊ぶ。
さえこは、少しばかり首を傾けるような仕種をみせたそれは、グレートに言葉の意味を問う。


「我々は、神を裏切ったものの手によって作られた、産物。存在すること自体が罪・・・、害あるものでしかない・・・。止められた時間は流れることもなく、体は土に還ることをゆるされず。悩み、苦しみ、迷いながらも、曖昧に生き続ける兵器なんですなあ」
「そんな・・・」
「あなたは」


当麻とさえこの言葉が重なった。
さえこは言葉を続け、当麻が口を閉じる。


「何に失望するの?・・・・サイボーグの躯に?」
「・・・酒、に・・ですかな?・・・これで、手に入れた地位と名誉を失い、体を失い、そして今、・・・・自然の土に抱かれて咲き誇る美しき花を、移しかえようとしているのですからな」


グレートは、手の中にあったグラスを両手で包み込む。
じんっと、冷たさが手のひらの熱を刺して、一瞬の戦いの間に、グレートの熱が勝ち進んで氷を溶かす。



「酒は人を魅する悪魔である。うまい毒薬である。心地良い罪悪である。アウグスティヌス、だったかな?」



そう言ったグレートは、ぴく。と、躯を不自然に揺らした後、腰を浮かせて携帯電話を取り出した。
女子高生がつけていそうな、彩り豊かなキャラクターを象った携帯ストラップがじゃらりと、ぶら下がっている。
ジェットの携帯につけられたストラップたちよりも重たそうだ。


「どうやら、全員集合らしい。・・・・・その前に、我輩は一仕事終わらせておきたいのですがねえ、・・・母上殿。大切なご子息のために用意なさったものを、受け取りに向かいたいのですが?」
「あなたが?・・・行くの?・・・・・できる、の?・・・・」
「失望してください、多いに失望してくださって結構ですよ。大根役者の名にかけて、見事ここにお望みのものを持ち帰ってきたあかつきには、ひとつ、このブリテンと、グラスを合わせてくださるのなら、ねえ・・・・、いかがでしょう?」
「・・・とにかく、今はそれを手に入れてきて」
「はは~・・・わが命に代えましても、必ずや!」


芝居がかった、中世の騎士が女王に任務を仰せつかったシーンを演じるかのように床に膝をつき、恭しく頭を下げた。
さえこは、短く弁護士とのやり取りの内容を伝える。
当麻に聞かれても支障がない言葉を使うが、十分にさえこの意を得ることができたグレートは、リビングから退場するときも、役者として、女王に使える誠実な騎士としての、役柄を演じきった。


リビングルームに再び静寂が訪れて、当麻は考える。
















人生はジェットコースター。と、誰が言ったのだろうか?
人生は小説より奇なり。この言葉もよく耳にする。

Life is like a box of chocolate .
これは、映画で有名になった台詞だったと記憶している。


人生はチョコレートの箱、開けてみるまで解らない、という意味。
味わってみないと、わからないではないのか?と、ぼくは思った。




人生は全て次の二つから成り立っている。したいけど、できない。 できるけど、したくない。と、ゲーテは言った。







まるで、今のぼくにぴったりの言葉だ。

したいけど、できない。=知りたいけれど、知ることができない。
できるけれど、したくない。=自ら進んで、今の現状に身を投下させることは簡単だと思うけれど、その一線を越えたときに、ぼくはぼくでい続けられか自信がなかった。

後者の言葉から見ると、前者の、したいけど、できない。=知りたいけれど、知ることができない。の意味が少しばかり変わってくる。



島村は言った。


「彼が”勝手に得た情報は、知りませんよ?・・・・あなたがた”親子の問題”に、我々も関わるつもりはありません。従って、彼が何をしても我々は無関係です」(63)


母は、それに納得していた。
”彼ら”も、ぼくに何を訊かれても、答えてるつもりはないだろう。
それは昨日、”サイボーグ”についていくつか質問をしたときのピュンマ・ギルモアの答え方で知ることができた。


本気では、ないからだろうか?
いや、ぼくはぼくなりに”本気だった。


知りたい、と強く胸を衝きあげる、焦りに似た衝動を抑えることは、意外と簡単なものである。
”知らない”と、言う免罪符を手に、いい逃げることができるからだ。


心地よい響きだ。
知りたいと願うけれども、それを誰も許してはくれなかった。


ふと、思う。
島村は、ぼくにチャンスをくれたのだろうか?
そこまで、彼はぼくのことを考えてくれているのか?


知ろうと思えば、知ることができる環境に身をおきながらも、そこへと踏み込みことができない溝が、・・・・・・・フランソワーズとの埋まらない距離なのだろうか?












開けてはいけない。と、言われた箱を開けるような、好奇心が勝つようような人間ではない。
どちらかといえば、開けてはいけない。と、言う理由を求めて、納得さえすれば、そのままその箱を忘れてしまうことができる、人間だ。




母が、必死で隠していることは、多分・・・・ぼくの出生について。では、ないかと思う。
そして、それが今回のことに関わっているかもしれない。と、予想している。
母がぼくに触れて欲しくないことと言えば、それくらいのことしか、思い浮かばない。

確認したくても、確認できない。=したいけれども、できない。


留学生だった父と、母の一時的なロマンスの末の子ども。
父親は、誰かと尋ねても答えてくれないことが解っていたために、一度も母に訊ねたことなどなかった。が、ある日、突然父方の祖父が訪ねて来たから、会いにいけ。と、母に言われた。


気にしていないフリをしていても、母は気づいていたのかもしれない。

母は、そういう人だ。
突き放しながらも、どこかおどおどとした弱さで、ぼくをかまう。


そして、祖父に会ったことにより、母がつき通そうとしている嘘に、安堵したことを知っている。
知ったところで、何が変わるのか、わからない。
知ったことによって、何が変わるのが、知りたくない。





当麻は、手を伸ばせばとどく距離に座るさえこをちらりと、盗み見る。
さえこは再び膝に抱いていたファイルを開き、それを眺めながら、右手親指の爪をきりっと噛んだ。








ジェットコースターはゆっくりと、ゆっくりと、傾斜の激しいレールを、機械音をきしませながら、上へ上へと上っていく。
どきどきと、高鳴る心臓。
次にやってくるだろうと、予測する、快感と、刺激と、恐怖に。肌を打ち震わせて、喉の渇きにごくりと、生唾を飲み込む。
手に汗をかきながらも、ぎゅっと安全バーを握りしめる”時間”が用意されている。




ぼくには、用意されていたのだろうか?
それとも、ぼくの人生はすべてが今日、この日を迎えるために昇り続けていたのだろうか?








ぼくは今。

人生のジェットコースターが、最大加速で落ちようとしている。
小説よりも奇なり、・・・な、サイボーグとなった人たちと出会い、1人の女性に特別な気持ちを抱いてたために、開けたチョコレートの箱に埋まっているであろう、濃厚に口どけるカカオの苦味を感じている。
淡く甘い砂糖の舌触りをじっくりと深く味わう前に、ぼくの気持ちに答えてくれることなく、さらりと溶けて、苦味しか残っていないから。

そして、人生は全て次の二つから成り立っている。したいけど、できない。 できるけど、したくない。と、言ったゲーテの言葉のほかに・・・、いや、これはヘッセだったかな?
・・・馬で行くこと、車で行くことも、二人で行くことも、三人で行くこともできる。だが、最後の一歩は自分ひとりで歩かなければならない。と言っていた。
それは、どこかの文章に引用されていたもの。



最後の一歩は自分で歩かなければばならない。

結局は、人生のすべては、したいけれど、できない。できるけれど、したくない。と、自分勝手で放漫なこころを持ちながらも、岐路に立たされたときに選択するのは、他人ではなく、自分自身でしかない。と、言うこと。


他人に決めてもらう、ということでさえ、自分がそのように決めたと、言うこと。



ぼくは人生に、失望したことがあっただろうか?
失望することができるような情熱を、掲げて生きてきたことはあっただろうか?





・・・フランソワーズが島村にいった言葉は、ぼくにも勇気をくれた。

昨日のぼくは、今日のぼくではない。

マリーと出会ったぼくは、彼女に強く惹かれていく。
好きだという気持ちは、変わらない。

マリーでも、フランソワーズでも、彼女は彼女だから。
サイボーグであるかどうかなんて、今のぼくにとって重要なことなんだろうか?

そして、今のぼくにとって、何も知らされていないこの状況の中で何を、すべきか。




フラン、島村が言う君の強さをぼくに少しだけ分けてほしい。










グレートは、さえこから得た情報を手に、ギルモア邸を出て行く前、キッチンに立つ張大人に向かって2時間以内には戻ってこられないかもしれない。と、報告した。が、遅れて戻ったギルモア邸では、”2時間後に邸で”と、指定した本人が姿を現さず、急いで戻ってきたグレートは2発は殴る!と、作った拳にはあっと!息をかけた。














頭上から、ぱあああ、とクラクションを鳴らすバスの音。
カーブの多いうねる車道走る、対向車に注意を促す。


「・・・と、言うことでだ。さえこ殿が望まれたものは、すでに邸。彼女の手にある。・・・・殴っていいか?」
「・・・・後で」
「忘れるなよ、009」


大型車独特のエンジン音が鳴り響き、肌に触れるかふれないかの、ささやかな潮風に混じった排気ガス。
ギルモア邸最寄のバス停に、海岸へ降りる階段が、素人目に見ても、ひどく歪なものが設けられている。

海水浴のシーズンでもなく、影に身を休ませる場所のない海岸では、次第に強まる陽射しと暑さに身を投じる人はなく、時間的にも階段下に集う9人の姿を目撃する人はいなかった。




報告される出来事を、黙って聞きながら短く返事を返す、009と呼ばれる青年、と言うには幼さが残る見栄えのよい顔出ちの、彼が、グレートの報告を聞き終えた後に、ふうっと、息を吐いて考えをまとめる。


「・・彼女は何か言っていた?」
「預かってきたものを渡したが、何も言ってないねえ」
「今、どこにいる?」
「変わらず、リビングルームだ」


007の言葉に、確認するような仕草で、003がギルモア邸がある方向へと首を傾けた。そして、彼の言葉を固定するように頷いた。


「・・・・・篠原は?」
「一緒アルヨ、会話はなかったネ」


009の視線が003へと向けられる。
その視線に、003はもう一度頷いた。


「話を、しているみたい。・・・聴いていましょうか?」
「・・・いや、何を話しているか想像はついてる。今はいい。終わった後にでも、訊けるしね」


さああ、っと波が押しては引いていく。
誘われては、戸惑いに似た間をあけて、その場にとどまる貝殻たち。


009の、”終わった後”と言う言葉に、全員の瞳が、戦士の色を宿す。


「・・・終わらせよう。秀顕の手に繋げられている糸を断ち切る」
「石川斗織じゃ、ねえのかよ?」
「違う、よ・・・。すべては篠原秀顕が、だよ」
「石川と、篠原秀顕は繋がっていたアルヨ・・・、それはわかっていたネ」
「篠原さえこと連絡がつかない。石川がそっちに連絡を取る。自然な流れだ。篠原秀顕が動くことになる。」
「そもそも、秀顕氏がさえこ殿と石川の動きを知らない方がおかしいからなあ・・・。なんだかんだ言っても、篠原のトップはさえこの父上、現役の秀顕氏だし。それに津田海の足も知っているんだからして・・」
「あやめ祭の企画も、理事長兼経営者である彼が知らないはずないよね、あやめ祭の後にすぐ、篠原グループ恒例の”パーティ”が開かれる。パーティの後、篠原グループは今よりも大きくなるんだ・・・。それは、篠原先輩のお母さん、さえこが会社に入る以前から、ずっと続いてきたことで、そんな成長の仕方は不自然だよ」
「・・・009に送られてきた”8つ目の景品の映像”はどこからか、まだ確認されていないわ」
「好き勝手やってやがる、ワンマン社長なんだろっ!そいつ。・・・そんなヤツが、かよ?そいつが今回の、黒幕っつうのかよ?」
<拾イ集メタぴーすノ中ニハ、タマニ 違ウ物モ紛レ込ンデ イタリモスル。ソレハ 偶然ジャナイ。必要ダカラ、紛レテイルンダ> 
「ここ何年か、篠原秀顕は役立たずな、”名前だけ”の人間に成り下がって、引退の噂もあっただろ?オレたちは確かにマークはしていたが、それほど石川、さえこのように重要視していなかったはずだぞ。・・・・003のメンテナンスを挟んだが・・・オレたちが外を走り回っている間、お前さんは動かずにずっと邸に居続けた。その理由が、そこにあるんだな、009?」


004は短くなった煙草の、最後の毒を吸い上げた。


「みんなを走り回らせて、俺はのんびり邸で珈琲を飲んでいた。と、言いたい?・・・間違ってはないと思うけど」









何本もの”見えない糸”を使って操る。
マリオネットを動かすために。


自分の思い通りのままに。



手、足、腰、首、頭・・・・・・。



それらは上へと伸びていき、操る”人”の指に絡まる。



繋がれている場所は違うが、目的はひとつ。
人形を立たせて、歩かせる。

踊らせる。

部位にばらばらに繋げられていても、実際は、ひとつの”人形”を動かすための1本の糸。



「・・・手短に説明する。真相は本人、秀顕から訊いた方が確実だし、ね」















####


藍色に少しばかりの白を混ぜた、曖昧に濁る空の色はじめじめとした湿気を含み、微かに街に流れる風は、不快感意外のなにものでもない。

ベッドサイドに置かれた安物のデジタル時計の数字が、黄緑色に薄光る。
ルームライトがつけられていない部屋に、徐々に浮かび上がる時間は、その部屋の主、石川斗織を時の檻に縫い止めているようにみえる。


握りしめていた携帯電話を手からやっとの思いで引きはがすことに成功したのは、篠原さえこからの電話を受け取り、彼女の父親である、秀顕に連絡をとった後。


秀顕がプライベートで使用する番号を、初めて使った。
それほどに、石川は切羽詰まっていた。が、彼の不安や焦りなど微塵も気にする風もなく、秀顕は一言だけを石川斗織に残して、一方的に電話を切った。


「22時に、本社へ来い」







石川斗織の口から報告した言葉の1/10にも満たない。
あの、さえこの父親だ。
と、知りつつも、さえこに黙って通じていたが、なんとも情けなくなってくる。


結局は、自分には何も残らない。
そう、何もないのだ。




”篠原”がないと、何もない。






必死でしがみついた。

会うことが願わなかった、父を追いかけるために。
成長とともに枯れてゆく、天才の名を残すために。

自分と言う人間の存在を、認めさせるために。






石川斗織は、”篠原”の闇に近づくために、さえこへと計画的に近づいた。
その束の間の、自分が”アンディ”であった最後の時間を、斗織は一生忘れないだろう。

篠原の正当な一人娘である、利用するためだけの存在であったさえこを、可愛いと思い、彼女が抱えていた孤独にも同情し、こころを砕いて思い寄せ合う中になったために、淡い期待のような、自分の中に見いだした、男として異性に好感を持つ感情に触れた気がした。が、それでも、彼女を”篠原”の娘としてしか見られない自分が、いた。

別の道で自分を見いだしてくれる女性を、さえこから紹介された。
彼女の名前は、美涼。










美涼を一目見た瞬間に、全身で彼女を求める自分に戸惑った。


利用するために近づいたさえこにたいして、申し訳ない気持ちになった自分に驚き、同情以外の好意ある感情が、自分の予想を超えて遥かに深かったことに狼狽したことを、忘れることができない。
その気持ちがあったからこそ、未だに”関係”がある。


”篠原”の娘としての彼女ではない、さえこ。との、関係だ。





それは最愛の人であった美涼への当てつけだろうか?







初めて人を、女を、本気で愛し、今までの人生に勝ち得てきたもの、すべてを捨て、ともに生きようと想いを告げる前に、道は分かれた。

分かれるも何も、はじめから道は、少しばかりの角でふれあっていただけのものだった。






運命は、”篠原”から逃れられない。




いや、篠原秀顕から逃れられない。
それを、運命と呼ぶべきか。


自分が選んだ道である。と、言い切れない力を感じる。
それが、”B.G(ブラック・ゴースト)”の力なのだろうか。



美凉は、さえこと同じ、篠原の血を引く娘であり、我が子と変わりなく深い愛情をそそいで育てくれた養父の会社を、”篠原”に潰されないために、自分とさえこの見張り役として近づいた、女。




さえこは、何も知らなっただろう。
いや、未だに知らないのかもしれない。













自分の彼女への気持ちは、本物だった。
何もない自分だからこそ、自分が持つすべては、自分であることだけだった。

斗織がすべてを捧げた、夜。
白の波間に交換しあった熱が冷める間もなく、告げられた美凉の言葉が、始まりだった。と、斗織は振り返る。








さえこは、何も知らない。


可愛そうな女だ。と、石川は思う。



ーーー今、どこで何をしているのだろうか?


苛立ちや怒りに、頭に血が上っている状態では、感じられなかったこころの動きに、今、気がついた。
とにかく、篠原秀顕と連絡がついたことが、斗織に冷静さを取り戻したのであろう。


さえこのことを考えるたびに、同情は愛情とひどく似た感情であると感じてならない。
”篠原”の全面援助でドイツ留学から一時帰国したとき、交換留学生との間に生まれた息子だと言い、当麻を連れて現れた。

斗織が初めて当麻に会ったのは、彼が4歳になるかならないかのとき。
自分の子ではないと知ったとき、安堵するよりもショックだったことを、今頃になって思い出す。





婚約はしてはいたが、その彼女が別の男と子を成したことで裏切られた。とは、思わなかった。
そういう女だ。とは、思った。

孤独と肌寂しさを埋めるのに、一番簡単な方法を彼女はよく知っている。


・・・それ以前に、さえこは子どもが望めない女であることを知っているのは、婚約者の自分だけである。

100%望めない、わけではない。
確率が低く、その数字が”奇跡”と言う言葉を頼るしかない数字であっただけだ。

奇跡が、起きたのだろう・・・・。





今まで考えたことなど、なかった。



「・・・もしも、さえこが産んでないんだったら、誰の子なんだ?」








あらぬ方向へと思考の糸に搦め囚られていた意識を解放させたのは、携帯電話の着信音。

ぎくん。と、体が跳ねて心臓が痛んだ。
液晶画面には、非通知の文字。


行方知れずのさえこでも、津田海でも、ないことは明らかだった。



自分に用件がある内容であれば、メッセージを残すだろうと、携帯電話には出なかった。
数えなかったコール音は、成り続けて、ぷつり。と、切れた。

鳴らなくなった携帯電話を手にして、石川斗織は慌ててホテルの部屋から飛び出した。
時間は確実に歩を進めて、約束の時間を知らせようとしていたために。




飛び乗るようにして運転席に体をねじ込み、キーを差し込み捻る。
こういうときに限って、メーターが赤いラインに触れようとしていために、3ブロック先にあるガソリンスタンドへ寄らなければならなくなった事に、苦々しく舌打ちした。

高速が近くを通っているのと、少しばかり住宅地から離れているためか、スピードを出す車が多く、ホテルの駐車場を出るのにしばし時間を要する。1ブロック先に信号機の一つでもあればいいのでだが、生憎、肉眼で色を確かめることが難しい距離にそれはある。

込み合う時間帯ではなかったが、週末ということもあり行き交う車はなかなか、斗織がアクセルを踏むきっかけを与えてはくれなかった。

ちらり。と、車内のデジタル時計に視線を投げる。
約束の時間には間に合いそうもない。


普段なら焦り、無理にでも車を前進させて道路へ出ようとするが、今夜は変に体内が冷めていた。
ホテルに閉じこもり、必死で篠原さえこ、津田海の行方を探していたために、奪われた体力は熱を作るほどの力が残ってないのかもしれない。


もう一度、渇ききった咥内で舌打ちを打った。
上あごに舌が張り付きそうな感触。

唾液を求めるように、喉に力を入れて、咥内を真空状態にし吸い上げるが、何も得られない。



不意に、自分を絡めていた思考の糸が再び、足首に巻き付いてきたように感じる。



胸をハンドルに近づけて抱え込むようにして、車の往来を確認する。
強く放たれるカーライトに、ときおり白の世界に引きづり込まれるが、瞬息の間に聞くエンジン音と、路面を削り合うゴムの音に、助けられる。


シルバーの国産車が去った後、ひた。と、斗織の前に空間ができた。
その機を逃すことなく、アクセルを踏み込んだ。









ハレーションを起こす視界に、足首に巻き付いていた糸が全身を繭のように斗織を包み込んだ。









何本もの”見えない糸”を使って操る。
マリオネットを動かすために。


自分の思い通りのままに。



手、足、腰、首、頭・・・・・・。



それらは上へと伸びていき、操る”人”の指に絡まる。



繋がれている場所は違うが、目的はひとつ。
人形を立たせて、歩かせる。

踊らせる。

部位にばらばらに繋げられていても、実際は、ひとつの”人形”を動かすための1本の糸。





すべてに、理由がある。









人形を歩かせる、理由が。






糸は1本。
繋がれている場所に、惑わされるな。



あやつる指は、舞台からは見えない。
煌々と輝く表舞台のライトの陰にかくれた指先は、誰のもの?













目的は、サイボーグ。
再び、サイボーグをこの世に作り出そうという動きは、誰の手によって?



























「お目にかかれて光栄ですな、サイボーグ、・・・・00・・・?すまないねえ、誰が何番なのか、分からないんだが・・・まさか”生きていた”とは、・・・失礼。いやはや、この目が老いてしまったものであるがために、疑い深くてね」









====69へ続く





・ちょっと呟く・

事件ですよ。
ミッションですよ。



当分我慢です(笑)
web拍手 by FC2
もじもじhouse
ここは”お題”をこなすためのお部屋でございます。

加速しますー



名前の通りに、もじもじした、9と3が、ぎるもあてーに住んでます。
私の中では基本3頭身。なイメージ(笑)

平・新・原(旧..?)の、微妙なもじもじした距離感だけ抜き取ってみましょう・・・(笑)
たまに、他のカテゴリーに住む9と3も遊びにきていただきます。
(お題の内容に合わせてね・・現時点ではイベントくらいですけど)


いただいてくる、お題に合わせてお話が進みます。




****
もじもじhouseの二人は・・・?

両想いです!・・・でも、口に出しては言ってません。
お互いにお互いを想いながらも・・・・ボクたちは別に?!。
でも、・・・そうは言ってられなくなりました!と・・・(笑)

はっきりと言えば、私のラブ・コメしたい!って言った気持ちが生み出しました・・・。
(”コメ”な部分がかなり怪しく、危ないんですが・・最近なんてギャグ担当カテゴリーになってます(4.02.09’)

もじもじな2人に、じれじれ、やきもきして、ああああああああ!と叫びましょうw
(ここでもか?!)


☆もじもじ・・・goo辞書より
(副)スル
遠慮や恥ずかしさのため、したいことができず落ち着かないさま。ためらうさま。
例・「~~~~していないではっきり言いなさい」







web拍手 by FC2
合鍵/ボクと彼女の関係は?



車の鍵に、ギルモア邸の鍵も一緒についている。
常に誰かが居るギルモア邸のために、普段フランソワーズは邸の鍵を持ち歩くことはない。

けれども、ギルモア博士の親友、コズミ博士がギルモア博士をヨーロッパの学会へ一緒に行こう。と、誘ったために、2つしかなかったギルモア邸の鍵を、増やす事になった。

1つは、常に共用自動車(ギルモア邸の住人、全員運転するが、ほとんどジョー専用車と言ってもいい)の鍵と一緒になってつけられていて、もう1つは、常にギルモア邸のリビングにある、アンティーク調の飾り棚の上に置かれたシルバープレートの上に、フランソワーズがアクアリウムで買った、ピンクのイルカのキーホルダーと、ともに放って置かれている。

今まで何の不便もなく生活していたが、今後もしかしたら、ギルモア邸に誰もいない。と言う状況が出て来るかもしれないために、せめて常に身を寄せている、ジョー、フランソワーズ、グレート、張大人、ギルモアは鍵を持つこと。と、なった。


「アタシと博士の分が必要なのよね?」
「うん、キミと博士の分だね」
「2つ?・・邸には、置いておかないのかしら?」
「じゃあ、3つ?」
「どうしましょう?」
「・・・とにかく、言われた通り2つ、作っておこう」


いつも買い物へ出かける車で20分ほどの場所にある、大型スーパー。
駐車場へと繋がる入り口のドアの隅っこに、シュー・リペアの店があり、スペアキーも受け付けている。

ピンクのイルカの鍵は、張大人と、グレートが共用で使うと話し合いで決まった。







様々な形の鍵は、金、銀、銅色を中心に壁にかけられて、店の左側はすべてウィンドウとなっているために、駐車場の様子が一目でわかる。
西日が射すようにウィンドウいっぱいに陽が照りつけて、金属製の鍵がきらり。きらり。と光る。


1畳ほどのカウンターに座る、おっとりとした年配の女性は、異国の香り漂う2人を良く知っている。

よく知っている。と、言う表現はおかしいが、週に1、2度夕方に2人は駐車場からやってきて、店前のドアから、スーパーへと入っていく。
その都度、天使の輪ができる、うっとりするようなハチミツ色の髪の女の子は、そっと、カウンターに座る女性にむかって、形よいふっくらとした愛らしい口元を微笑みにかえ、大きく、こぼれ落ちてしまいそうな瞳を細めて会釈して行くのである。

今時の若い子は、つん!と、して無視するか、ちらり。と、店に座る自分を見て、そっけなく顔を背けてしまうことが多いために、フランソワーズの印象は深く、しかも、彼女は日本人ではなく、フランス人。

そんな彼女が、店前を通り過ぎるたびに、魅力的な愛らしい微笑みをたたえながら、日本風に会釈するのである。
店番をする女性が、フランソワーズを覚えていない方が不思議かもしれない。









「いらっしゃいませ。靴の修理?」
「え、と・・・スペアキーを」
「あら、鍵?」


女性の声に驚きの色が含まれてたが、ジョーは気づかない。
フランソワーズは困ったように、少しばかり眉を寄せた。そして、ジョーの服の端を引っ張る。

女性は座っていた椅子から立ち上がり、興味深く明るい栗色の髪の青年と、異国の少女を交互に見つめた。


「すみません、この鍵のスペアキーを2つ、お願いしたいんですが」


青年は手に持っていた、焦げ茶色の皮で作られたシンプルなキーケースから、1つ、鍵を外してカウンターに置いた。


「ご自宅・・・の?」
「はい」
「2つ・・で、いいんですね?」
「はい、お願います」


カウンターに置かれた鍵を手にとり、女性は青年を見る。
いつもは通りすぎるだけで、長い前髪が邪魔して知る事がなかった青年の、端正な顔立ちに、ほうっと、見惚れてしまう。

ジョーが女性とやり取りしている間に、フランスソワーズは不安げな視線でジョーを見上げる。
女性の、少し含みのある声が気になった。


「2時間ほど、時間がかかりますけれど、よろしいですか?」
「はい、買い物をしているので・・・・」


ジョーは店先の壁にある、古びたプラスティックの丸い時計を見上げた。その視線の動きを追って、女性も時計を見上げる。


「6時過ぎ、にはできてますか?」
「大丈夫だと思いますよ」
「では、また来ます」


軽く頭を下げて、隣に立つフランソワーズを促し、店を出て行く。
若い2人の後ろ姿を見送りながら、女性は手に持っていた鍵を見つめた。


「同棲するのかしらねえ・・・」


性能良い、フランソワーズの耳にはっきりと女性の声が聞こえていた。









普段通りの買い物だけでは時間が余ってしまう。
スーパー内にある小さな書店にも立ち寄るが、なかなか時間はつぶれない。

フードコートで席をとり、向かい合わせに座る2人。
フランソワーズにソフトクリームでも食べる?と、ジョーは訊ねたが、彼女は首を左右に振り、non.と答えた。
何もいらない。と、言う彼女に、自分と同じMサイズのコーラを買って、テーブルに置く。


「気分でも悪いの、フラン?」
「別に」
「変、だよ?」


スーパーでの買い物中、フランソワーズはこころなしか元気がなかったことには、気がついていた。
それがいつからかは、ジョーにはわからない。


「・・・お腹がすいてないだけ」
「ソフトクリーム、だよ?・・・いつも帰りに食べたがるのに・・・」
「いつもじゃないわ・・・」


氷ばかりが入ったコーラのカップを持ち上げて、ストローを口へと運び、喉の乾きを潤しながら、ジョーは胸の中で、はあ。と、ため息をついた。


今回”も”何がフランソワーズの機嫌を損ねたのか、わからない。
女の子は地球外生命体だ。と、胸の中で呟いた。




黙って向かい合わせに座る、フードコートの席。
夕食の買い出しでスーパーは賑わい、小さな子どもたちの声がフードコート内に響く。
学校帰りなのか、制服姿の学生たちも目立ち、楽しげにトレーに乗せたジャンクフードを夕食前にも関わらず、胃に詰め込んでは、けらけらと、明るく笑いあっている。



黙ったままのフランソワーズに、降参。と、ばかりに両手をあげてしまったジョーは、周りの様子をなんとなく眺めていた。

コーラが入っていたカップは、氷ばかりのために、その役目を果たし終えたにも関わらず、いまだキンキンとカップを冷やし続けている。


「飲まないなら、ボクがもらうよ?」


フランソワーズの前に置かれた、注がれたままのコーラカップに手を伸ばした。








ただ、遅く、緩やかに、腹立たしいほどの和やかすぎる時間が過ぎていく。


ジョーがフランソワーズの分のコーラを飲み終えたころ。
やっと、貝のように口を閉ざしていたフランソワーズの、くちびるが動いた。


「鍵、アタシいらない」


高校生らしき、3、4人の女の子たちが、2人の座る席を横切る。
聴きたくもない、会話が聞こえてくる。





仲間。
家族。


恋人同士?




・・・同棲・・・
同居、でしょう。














「もう、鍵はつくったんだし・・・。持ち歩かなくてもいいから、一応ね」


すれ違い様に、女の子たちはジョーを見る。
その視線に誘われたかのように、そちらへ振り向いたジョーにむかって女の子たちは、その年頃独特な、甘くて黄色い反応を見せた。





ケンカなんか、してないわよ。





胸の中で文句を言い、そして、女の子たちと視線があったために微笑んだジョーにたいしても、小さく文句を言った。



恋人じゃない、わ・・・。












2人の椅子やテーブルに置かれた買い物袋の中を見れば、そこに恋人同士。というような甘いものは1つと見当たらない。



「そろそろ、できてるかな?」


立ち上がったジョーにむかって、フランソワーズは手を差し出した。
その仕種は、まるで子どもがおコズカイでも強請るようだ。


「車の鍵。・・・・・・荷物と一緒に先に車に行くから」
「通り道だよ?けっこう買い物したから、重いし」
「鍵」


へそを曲げてしまった、彼女は頑としてその意見を曲げないことを、よおく知っているジョーは、仕方なくジーンズのポケットから、焦げ茶色のキーケースを出して、白くて柔らかそうな手のひらに置いた。


「すぐ、追いかけるから」


そんなジョーの言葉を無視するかのように、”自分の分”だけの荷物を持って、足早に歩き出し、今日、3度目のため息はしっかりジョーの口から漏れた。








目立つ、ハチミツ色の髪色の女の子の姿を目にして、注文された2つの鍵と、預かっていた鍵、計3つをカウンターに置いた女性だったが、彼女は店先で足も止めず駐車場へと去って行ったことに、怪訝そうに眉を顰めて、次に、栗色の髪の青年が、彼女を追いかけるようにして、姿を現した。


両手に、荷物を抱えて。



「すみません、鍵は・・・?」
「できてますよ、はい。こちらです」
「ありがとうございます」


青年はカウンターに置かれた、鍵を確認し会計をすます。
よけいなおせっかいだと思いつつも、女性は胸は一言言いたくて、うずうずと口が落ち着かず、青年が財布にレシートをしまう様子をみながら、とうとう、口から言葉が溢れ出した。


「ケンカでもしたの?」
「いえ、そういうわけ・・・じゃあ」
「・・・・可愛らしいお嬢さんだけど、やっぱり外国の女の子ねえ、最近の日本の女の子も気が強いけれど、生活習慣も違うから、何かと大変でしょう?」


曖昧に微笑みながらジョーは財布をしまい、カウンターの上の鍵を手に取った。


「・・・・お兄さん、若いのに・・・急がなくてもいいんじゃなくて?・・・同棲したら、夫婦と変わらなくなっちゃうもの。まあ、いろいろとがんばってね」












同棲・・・?!
夫婦・・・!?













見開いた瞳は、瞬きすることを忘れた。



フランソワーズが助手席に座る車へと向かい、荷物を後部座席に放り込んで、運転席に体を滑り込ませたジョーは、フランソワーズから車の鍵を受け取りながらも、それを差し込むことなく、まじまじとフランソワーズを見つめた。


「・・・帰らないの?」


フランソワーズに不思議そうに覗き込まれて、近づいてきた碧の瞳にどきり。と、心臓を跳ねさせる。
心臓の音を聞かなかったことにしようと、ごまかすようにジョーは車のキーを捻り、エンジン音に耳を澄ませてアクセルを踏む。


「あの、イルカのキーホルダーも一緒にグレートと張大人は持っていったのかしら・・・」


独り言のように呟いたフランソワーズの言葉に、ジョーは答えなかった。


いや、答えられなかった。









頭の中をぐるぐると、回る言葉は”同棲”と”夫婦”。








一緒に住んでいるだけで、どうしてそうなるんだ?

その前に、恋人、・・・・だって言えるような、その・・・。

同棲、って・・・、同居?えっと・・・ハウスメイト?

だけど、ええ?同棲、同棲って、同居とどう違うの?

それなら、ギルモア博士も、イワンもいるのに・・???






自分で問い、自分に言い訳するのに必死で。
その後、フランソワーズに何を話しかけられても上の空だったために、再び、ジョーはフランソワーズが何に機嫌を損ねたのか、わからないままに1日が終わっていった。







その夜。
自室のパソコンでウィキペディア調べる、ジョー。



同棲(どうせい)とは、
1 一つの家に一緒に住むこと。
2 Tacticsの18禁恋愛シミュレーションゲーム。1.をテーマに扱っている。
本項では主に1.を取り扱う。

概要
「同棲」という言葉を使う場合、特に結婚していない(恋愛関係にある)男女が、共に暮らすことを指すことが多い。
「同居」との違いは、そのケースによって曖昧な部分はあるが、恋人同士である場合やそれに近い場合などでは、一般に「同棲」という言葉を使う。
ヨーロッパなどでは、結婚せずに同棲のみするカップルが増え、スウェーデンでは結婚したカップルの99%が同棲を経ているという。現在の日本においても、大学生以上の恋人同士であれば、自然と半ば「同棲」を始めるカップルも多く、社会常識的にも咎められるものでは無くなりつつある。
家の鍵を恋人に渡すことで、恋人が自分の家の出入りを自由にできる状態にすることを、「合鍵同棲」あるいは「通い同棲」と呼ぶ。


ついで、goo辞書にて検索。

同棲
(名)スル
(1)一つの家に一緒に住むこと。
(2)特に、結婚していない男女が一緒に暮らすこと。
「学生のころから?していた」








同棲、と言えなくもなく、けれども同居と言う方が正しい。

それは、日本であるため?
国外では同棲。と、言ってもおかしくないかもしれない。

とくに引っかかる部分が、一番曖昧になっている関係。



(恋愛関係にある)男女。
恋人同士である場合やそれに近い場合。














3つのスペアキーはギルモア邸のリビングルームにおかれた、アンティーク調の飾り棚にある、シルバープレートの上に、並べられている。










web拍手 by FC2
もじもじHOUSE・・・目次

お題別メニュー

注意

()内の数字は私が書いていった順番です。ストーリー的につながっていたりもしますが、バラバラでも読めるようになってます。
私が書いた順番別メニューを作成しました。
こちらからどうぞ♪
同居中に 10 個のお題

01.バスルームで鉢合わせ/彼女はボクのすべてをみていた。(14)
02.ひとりじゃ眠れない/ボクはキミのそばにいる。(5)
03.合鍵/ボクと彼女の関係は?(1)
04.○○当番
05.用意された朝食/ボクとアタシの朝の風景(8)
06.ただいまとおかえり
07.新しいルール/幸せのカタチ (33)
08.扉を開けたら着替え中
09.プライバシー
10.僕の部屋君の部屋、自分達の家
微妙な距離の微妙な 7題

01.あと1cm/ボクと彼女との距離は?(2)
02.境目
03.伝わらない
04.素直になれない/恋せよ、戦士。(36)
05.複雑な心境/恋する証拠(あかし)(11)
06.気づいてほしい、でも知られたくない/『C』と『R』の間に。zero2マニアさまからのキリリク・イラストつき!(23)
07.嫌いじゃない
面影重ねて5題

1・目を疑うほどにあなたは似ている
2・ふとした時に思い出す/
3・瞼の裏に映るあなたは、誰?
4・私の中にいる人
5・あなたは、あの人じゃないから
誘惑されて 七 題

一.うなじ
ニ.あしくび/ボクのせい?キミのせい?(14)
三.ふともも/ギルモア邸の新ルール?!(21)
四.鎖骨
五.唇/ボク・アタシの初めての・・・・?(6)
六.指先
七.吐息/そんな彼女の行動にボクは(4)
Hands.

01.握手
02.ゆびきり/アタシが彼に約束したことは・・・(7)
03.バイバイ/一方通行な、正義(34)
04.握りこぶし/綺麗な、キレイな、きれいな(15)
05.デコピン/ボクは二度と彼女にデコピンしないと思う。
06.ピース
07.手をつなぐ/特別な事じゃないけれど(12)
まったりした時間にお題を 5 つ

01.ベッドから抜けられない朝/起きられない彼が悪いわ!(10)
02.ひなたぼっこ
03.こたつの誘惑
04.ひざまくら/キケン人物キケン人物(38)
05.至福のひとときです
こんな心情15のお題

01.心の奥が温かくなる/『ホノカ二 アマク ボク ヲ クスグッタ』(32)
02.動揺を隠せない/『ファースト・コンタクト』(35)
03.何だか嫌な予感がする/『ジョーの誕生日ネタでまとめてます。一番下にありますー』(24)
04.思わず笑ってしまう/アタシの秘密を知った彼(3)
05.苛々/ライバルの正体は!(13)
06.心配で仕方がない
07.まったく理解できない/2009年は丑年です。(19)
08.呆れ返る/キミに片思いなボクのまま、春。(31)
09.涙を禁じえない/ジョー、フランソワーズはお前じゃないとダメだ・・(27)
10.照れくさい/そんな二人のクリスマス(18)
11.何だか芯がもやもやする/ハロウィンの呪い?(16)
12.切なくて息苦しい/アタシは平気、なのよ・・・(9)
13.不安/その日を意識する関係。(30)
14.頭では納得してるけど気持ちがついていかない
15.どうしようもなく嬉しい/ それが、ボクの願い(20)もじ旅行のその後になってます。
片想い中の 20 のお題

01.自覚、はじまり/メンテナンスルームに通い始めた、ボク。(22)
02.特別になりたい/『ジョーのお誕生日のお話として抜粋/下にあります』(25)
03君に振り回される自分がいる/『ジョーのお誕生日のお話として抜粋/下にあります』(26)
04.その笑顔を独占できたら
05.瞳に焼きついた/千年に1度のサービスデー?(29)
06.名前を呼びたい
07.気がつけば君をさがしてる
08.視線の先/ボクは今から来年の夏が心配です。(28)
09.こっちを見て
10.もどかしい想い/恋せよ、戦士。2(37)
11.デート気分
12.存在を刻み付ける
13.偶然?それとも…
14.作戦
15.夢の中の話
16.同じ空間にいるということ
17.君の気持ちが知りたい
18.告白シミュレーション
19.チャンス
20.今だけは。
甘いふたりで5題

『もじもじ京都・嵐山2泊3日旅行編』(17)


1.ーこうすればあったかい/『
2ーおやすみが言いたくて/『
2.5ー付け足しお早うが言いたくて
3ー名前を呼ぶだけで/『』『
4ーそんなところが好き/『』『
5ーおでこ、合わせて/『』『』完
6ーただいまとおかえり/『9』旅行編おまけ~同居中に 10 個のお題から~

おまけイラスト/お絵描きエディターでぷちぷち93京都旅行@achiko
お題抜粋にて連続したお話

ジョーのお誕生日の内容でまとまってます。


(注意)同じお題で、同じないようですが、違うアプローチで書いてます。お好きな方を選んでいただいて、25へお進みくださいませ☆

1).何だか嫌な予感がする/アタシってばすごーい!(24a)
1).何だか嫌な予感がする/009の予感は常に正しい?(24b)
02.特別になりたい/男って以外とこだわるんだよ(25)
03.君に振り回される自分がいる/『』『2』『』『』『』『6』『7』/完(26)

other comment


意味もなく、増えます・・・2題から抜粋オッケーみたいなので、そうなるかもしれません。
勝手気ままに、気分転換的に更新していきます。
メインの2柱があるのでねえ(笑)

お題もと

1141-883103.gif

○MasterName >> 七瀬はち乃 さま
○ SiteName >> 1141 「イチイチヨンイチ」
○ SiteAddress >> http://2st.jp/2579

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
⇒ 続きを読む
web拍手 by FC2
あと1cm/ボクと彼女との距離は?


「ジョー~~~~~~~~~~、はっ!わかってないっ!わかってないんなっ!!わかってなああああああいのら!」


グレートの雄叫びがリビングルームに響くと、今夜の生け贄が決まった証拠。
そそくさと、ギルモアに抱かれたイワン、張大人、フランソワーズは生け贄(ジョー)だけを残してリビングルームを去っていく。

グレートと飲むのはキライじゃないジョーにとって、仲間たちが考えているほど、生け贄になることに不満はないが、今夜だけは、内容が内容だったので遠慮したかったが、しかし、そいうときだからこそ、彼なのだ。


生け贄になった原因は、スーパーへの買い出しに出かけていたジョーとランソワーズが、一緒にリビングルームに入ってきたとき、ドアを開け、それをホールドしていたのは、彼ではなく、彼女だったから。

たったそれだけのことが、気に入らなかったらしいグレートは、呑み始めて1時間もしないうちに、ちくり、ちくり。と、ジョーを詰りはじめた。


たとえジョーが両手いっぱいに荷物を持っていた状況であった。としても、だ。
関係ないらしい。







施設で育ったジョーは、彼と同世代の女の子たちと寝食を共にして育った。もちろん、部屋割りは同性同士であったが。
今のギルモア邸での生活も、その延長線上にあり、今までの生活とそれほど変わりなく感じる。

言えば、女の子と生活をする。と言う事に、平均的一般人男性に比べて慣れている。
姉妹がいる環境で育った。と言うのと、近いのかもしれない。それは、あくまでも”近い”であって、同じではない。家族。と言う環境とはかけ離れていたからだ。

だからこそ、ジョーにとってフランソワーズと一緒に暮らす事にたいし、他の仲間たちが気にする、心配するような問題(ジョーと彼らとの間に問題の意味の”差”はあるけれど。)は、何もない。

ついでに言えば、ジョーは”日本人”の自分にしては、それなりに仲間たちからの影響(お小言)もあり、できる限りの誠意(と、仲間達とは違う、ちょっと特別な意識)をもってフランソワーズに接している。と、考えている。






「男っていうものはらなあ、ジョーっつ!!」


酒を飲んでいるグレートが酒に飲まれるまで、しっかり、きっちり、ジョーは”生け贄”の役目を果たさなければならず、酔いの勢いが最高潮に達したグレートの、役者として鍛えた流れる舌から紡ぎだされる言葉は、フランソワーズにたいする扱い云々から始まり、紳士とは、淑女とは、に移り、自分の豊富な恋愛の軌跡を振り返ると、彼なりの恋と愛の定義をお得意のシェークスピアの台詞に混ぜて語りだした。
うんざりした様子のジョーに気づくこともなく、右から左に通り抜けいくグレートの話は、最後に決まって、


「で、2人はどこまで進んだ関係だ?」


と、アルコール臭くなった息でいやらしくささやき訊ねるのだ。


「どこといれても、そんな”関係”なんてないよ」


と、ジョーは口を突き出すかのようにして答えると、首根っこを捕まえられて、ぎゅうっと、グレートの腕に絞められた。


「だ~~~~~かあああああああああああらっっ!!なんでそうなんらよおおおおおお!いいかあああ、お前がそんなだかあああっっ姫が可愛そうなんだおっっっ」


アルコールくさいグレートの息がジョーにかかり、空気の色もアルコール色に見える。


「いたい、いたいよ、グレート・・・離してくれって・・酔っぱらいが、もう・・・・どうしてフランソワーズが可哀想なんだよ?可哀相なのは、ボクだよ・・まったく、いたいって・・・離せよ」


首にまわされた腕を、009の力でぐいっと離し、けほっと、擦れた息を吐き出す。


「う、うう、うううう。う・・うう・・・ううううああああああ、こいつは、こいつはああ」


泣き出した。
どうやら、最終段階に入ったようだ。

ソファに深く腰掛けていた背中を丸めて、腕で、ずずずっと鼻をすすると、そのままごしごしと、ウサギのように亜各区はらした目にたまる、熱い涙を、来ていたシャツの袖に滲ませる。


グレートが泣き出した。と、言う事はそろそろ”寝る”準備が始まった合図。


「ごめん、ごめん、グレート・・ボクが悪いんだよ、ぜ~んぶ、ボクのせいだよ」


ここは何も言わずに慰めて、彼が言う言葉を全て自分のせいにする。
それがどんなに身に覚えのない理不尽な事であっても、だ。



言葉をかけながら、丸くなったグレートの背中をなでてやると、短い嗚咽が聞こえ始める。
そして、それが鼾に変わるのに、それほど時間はかからない。

















「今日は意外と早かったわね?・・・さすがジョー、グレートの相手はジョーにかぎるわ」


リビングルームに姿を現したフランソワーズの手には、タオルケット。
彼女のそのタイミングの良さに、ジョーはいつも驚かされる。

ソファの上にごろり。と、躯を横たえて、真っ赤な顔に大いびき。効き手にはしっかりお気に入りの酒瓶を抱えているグレートに、そっと手に持っていたタオルケットをかけてやり、酒瓶の代わりに、抱き心地良さそうなクッションと入れ替える。

以前、寝返りを打った拍子に割ってしまった、まだ1/3も空けていない瓶にたいして、酷く落ち込んでいたグレートを知っている彼女だから。


フランソワーズは、グレートがリビングルームで寝てしまうまで、もしくは部屋に戻るまで、ずっと起きていることを、ジョーは知っている。

だから、生け贄になることは、それほど嫌じゃない。と、言う事になるのかもしれない。















フランソワーズは飲み散らかされたテーブルの周りを片付け始めた。

ジョーは絨毯が敷かれた床に座り、グレートが横たわるソファにもたれかかると、後頭部をコツン。と、グレートの膝に押されて、”手伝うとか、なんか気の利いた言葉でもかけてやりやがれえ”と言う、グレートの言葉を聞いたような気がした。が、睨んだ先のグレートは、気持ち良さげに、大口をあけて眠っている。


「お水、いる?」


片付けの手を休める事なく、フランソワーズはジョーに訊ねた。


「・・・いい、自分で」と、言いかけたが、フランソワーズはすっくと床かから立ち上がり、中身がまだ無事なつまみたちを手に、キッチンへと歩いて行き、そして、氷入りの冷たい水と一緒に戻って来る。


「そんなに見ないで・・恥ずかしいじゃない・・・」
「・・・ごめん」


フランソワーズの声に、やっと彼女から視線を外す。




どこまでの関係と言われても・・・・。






珈琲テーブルの上に置かれたグラスを取ると、指に凍みるような痛さが心地よく、自分がグレートに流されて普段よりも呑んでしまっていることに気がついた。

フランソワーズの手が忙しそうに、テーブルの上や、その周りを片付けていく。
白く、細い腕がジョーの目の前を忙しなく往復する。
彼女の動きに会わせて、肩先で揺れる、金糸のようなキラキラした髪が、さらり、と。なびいた。

ハチミツ色の髪が溢れ弾く、ルームライトの光が滲み、フランソワーズがぽおっと柔らかい何かに包まれているように見える。ジョーはそれが何か確かめたく、まだ一口も飲んでいないグラスをテーブルに置いて、揺れて彼女の周りで戯れる光に触れようと腕をのばす。









自分に向かってのばされてきた手に。
ジョーの手に。

フランソワーズの躯が緊張に固まった。
大きな瞳がさらに大きく開かれて、その手が進む先を視線で追う。











その手が彼女の、彼女に、触れる、あと1cm。













花の香りがジョーの鼻腔をくすぐらせて、そこにフランソワーズがいたことを形作る。
宙に漂う、行き場を失った手をどこへ納めていいのかわからずに、指だけがぴくり。ぴくり。と動いた。


「邪魔してしまったのか、のう?・・・・スマンかった」


フランソワーズが吸い込まれていったドア口に立つ、ギルモアの口から申し訳なさそうな呟きが、波紋となって空気を揺らし、ジョーの耳に届いたときには、ダイニングルームへと続くドアが閉まる。


「・・・・・・いえ、邪魔じゃないです」


閉まったリビングルームのドアに向けてではなく、宙に浮いた自分の手にむかって言った。










施設で育った自分は、同世代の女の子たちと寝食を共にして育った。
もちろん、部屋割りは同性同士。

今のフランソワーズとの生活も、その延長線上のようなもので、以前の暮らしとそれほど変わりない、はず。


変わらないのだ。
変わらない、のだ・・・、同年代の年頃の女の子と一つ屋根の下、でも。


問題ない。
ちょっと特別な気持ちはあるけれど、問題ない。








じゃあ、この手はなんだ?

この手はどこへ行こうとした?
何をしようとした?





ええっと、・・・・・・・・。





ゆっくりと引き戻した手を、ジョーは見つめる。
その手を開いたり握ったりして、繰り返し、ふうっと溜め息をついた。












・・・呑み過ぎた。と、言う事で。




自分に自分で言い訳をしつつ、あと1cmの距離に、舌打ちした・・・自分に驚き、


そして、呟く。












「問題あり、だ・・・・・・」






















































*らぶ・コメって難しい・・・向いてないかも~・・・のんびりもじもじってことで*
web拍手 by FC2
思わず笑ってしまう/アタシの秘密を知った彼

張大人とグレートが3駅先の繁華街に、お店をOpenして以来、週末の買い出しは、いつの間にか2人の仕事になっていた。

週1、2度のペースで買い出しに行く先は、車で20分ほど離れた場所にある大型スーパー。
最近は、張大人が店で仕入れる食材をギルモア邸に差し入れてくれるようになったため、スーパーへ出かける回数が減っていく。


それが、ほんの少しフランソワーズを寂しい気持ちにさせたコトを、誰も気づいていない。












いつものスーパーのとある一角。
フランソワーズのお気に入りのコーナーは駄菓子の棚。
とくに、食玩・玩菓に弱い。


「1回の買い物で、1個だからね」


ジョーは床にしゃがみ込んだ、天使の輪を持つ女の子、と言うには成長しすぎた、フランソワーズの頭に向かって呟いた。


「っもう!言われなくてもわかっているわ。どれにしましょう?・・んっと、先週ね、やっと全部”こげぱん”ちゃんのシリーズがそろったのよ。すごいでしょ?だから、今日からは・・・」


さまざまな箱を手に取っては追った膝の上においていき、右手、左手に、大小様々な箱を棚と膝の上を往復させる。
空っぽの買い物カートを邪魔にならないように、棚に寄せて立つジョーの深い溜め息など、聞こえてはいないのだろう。

これはスーパーで買い物をするための儀式。と、言ってもいいかもしれない。
スーパーに入ったら、まず、玩具・食玩のコーナーでフランソワーズが1個だけ、買い物をする。
前に、シリーズ全部をすぐに集めたくて”大人買い”をしたことを、ギルモア博士に怒られたのだ。

どういう風に怒られたのかは、ジョーは知らない。が、それ以来、フランソワーズはスーパーへやって来るたびに、毎回1箱だけ買い求める。(たまにコンビや、その他の場所でも買い求めているが、かならず1箱で、”大人買い”することはなくなった。)


「何が入っているか分かるやつにしたら?・・・ダブらなくていいと思うけど」
「そんなの、買う楽しみがなくなっちゃうわ!中身がわからないから、いいの!」



ーーーダブった中身をボクに押し付けないんだったら、別になんでもいいんだけどさ・・・。




中身がわからないため、同じものが箱から出て来る度に、フランソワーズはそれをジョーの部屋の、まだ、本が置かれていない空間に並べていくのである。

それは、ジョーが知らない間に密やかに行われ、だいたい週明けの夜には、何かが増えていたりする。
おかげで、置かれた食玩に本棚の貴重なスペースを奪われている状態のため、あまりジョーは快くは思っていない。



2回目の、ジョーの溜め息が聞こえたのか、おおきくて、こぼれてしまいそうな宝石は、むっとした色を放った。
彼女のご機嫌を損ねてしまいそうな溜め息を、慌てて口の中にしまいこもうとしたが、出てしまったそれは、すでに空気にまぎれてしまい、どれが自分の吐き出したものか、わからない。


「・・・別に、そこで待ってなくてもいいのよ?先に買い物をしていてくれて」


「出来るなら、とっくにそうしてます」と、言う言葉が喉から飛び出してきそうなのをぐっと、耐えると、ジョーの口がへの字になった。


見上げる空色の瞳の人が薄く下唇を噛む。と、同時にぷっと、頬を膨らませた。
飲み込んだはずの言葉が聞こえたようだ。




さすが、003。



それは、喉を通らずに胸の中で呟かれた。



ごそごそと、フランソワーズの手が再び膝と棚のを行き来しはじめる。
ジョーは黙ってそれを眺めている。

すると、突然。


「あ!・・・これ、これにするわっ」


きちんと整頓されていたはずの棚が、フランソワーズにかき回されてできた隙間に手を突っ込んで、引き寄せた2つの箱を手に取った。


「すごいわっ!もう販売されてないって思っていたのっ」


立ち上がったフランソワーズは、膝の上に置かれていた箱が落ちるのを、興奮してしまっているせいか、気にしない。
ずいっと、ジョーの目の前に突き出された箱、2つ。


「・・・・1個だけだけど?」
「でも、最後の2個みたいなの!」














####

ギルモア邸に帰り着き、買い出ししたものをキッチンのカウンターテーブルに広げて、冷蔵庫やストック用の棚に収めていく。地下の研究室から、夕飯の時間より少し早くやってきたギルモアが、キッチン内にいる2人を見つけて、皺を濃くして何度か頷くと、ふと。カウンターに置かれた、同じ柄の箱が2つ。重ねて置かれているのを目にする。


「フランソワーズ、1個じゃなかったかのう?」


調味料類が納められている棚を開けようと、のばした白い手が、ぴたり。と、宙で止まった。


「あ、それ。もう1つはボクの分です、博士」


間をあけず、ジョーが答えた。











夕食後。
リビングルームでいそいそと2つの箱を開け始めるフランソワーズを、食後の珈琲を飲みながら見ているのは、ジョー。

1つ目の箱から出てきたのは、蛇の目傘に丸い1つ目。ひとつ足に下駄をはいて、長い舌で”あっかんべえ”をしている、おどけたキャラクター、”唐傘小僧”の携帯ストラップ。


そう、フランソワーズが買い求めたのは、”日本・妖怪シリーズ”の食玩だった。


ジョーが目にしたそれは、予想以上にリアルに作られていて、今の食玩はすごいなあ。と、言う感想と、それを「可愛い!」と、呟いたフランソワースの感覚に、先週買い求めた”こげぱん”シリーズとは、傾向が180度違うと、疑問に持ったのは、ほぼ同時。



女の子ってわからない。と、苦い液体を口に含み、訂正する。




ーーーいや、フランソワーズがわからない。








持っていないものだったのか、大事そうに手にのせて眺めるフランソワーズの、きらきらとした明るく愛らしい笑みをみて、ま、いいか。と、口に含んだ苦みを味わいながら喉へと通す。


2つ目の箱に手を出して、出てきた品にたいするフランソワーズの反応に、ジョーは、思わず口に含んだ珈琲を吹き出しそうになる。

表情豊かなフランソワーズは、こころの動きが素直すぎるほどに顔に出るため、彼女のおおまかなこころの動き追う事は簡単だった。

そこにジョーが理解できる”原因”があればの、話しだけれど。


「持ってるの、だった?」
「残念・・・・ねえ、ジョー」
「なに?」
「ジョーの携帯電話、貸してくれる?」
「?」
「出して」


持っていた珈琲カップをテーブルにおいて、少しばかり腰を浮かせて携帯電話を取り出し、1人分、距離をあけて座るフランソワーズに渡した。


「・・・どうするの?」
「だって、これジョーの分だもの、つけるの」
「・・・え?」


携帯電話を購入したときに、備品としてあった、飾り気のないただの、ヒモ。の、ストラップを外し、妖怪”子泣きじじぃ”のキャラクターストラップを、ジョーの携帯電話につけて「はい♪」と、嬉しそうにそれを返した。


ジョーの携帯にぶらり。と、ぶら下がる、リアルな泣きっ面のおじいさんは、赤い前掛け、蓑を背に。


「・・・・・え?」
「ふふ、可愛いでしょ?」


ジョーの戸惑いと、漏れかけた溜め息は珈琲によって、フランソワーズに伝わる事を防ぐ。









####


「アイヤ?これ、フランソワーズのあるネ」



数日後。

ダイニングルームのテーブルに置かれていた携帯電話を手に取った張大人は、ギルモアと出かけたフラソワーズが、携帯電話を忘れて出て行った。と、リビングルームにいたジョーに伝えた。


駅まで2人を車で送って行き、帰ってきたばかりのジョーは、ソファに腰を落ち着ける事もなく、うろうろとリビングルームを彷徨っていたところ。


「何してるアルか?」
「・・・探しもの、て・・・ああ、大人がみつけてくれたんだ、ありがとう」
「アイヤあ。これはフランソワーズのアルヨ?」
「探していたんだ、携帯。・・・それ、ボクのだよ?フランソワーズと同じ機種だけど、彼女のは、ピンクだろ?」


張大人は、手にある携帯電話がシルバーであることを、確認する。


「あららら?・・・ほんとアルネ、でも、このストラップ・・・・・」
「ストラップが、どうかした?」
「これ、どうしたアルカ?」
「ほら、いつもの・・フランソワーズが買うおもちゃ付きの、ね。・・・ダブったみたいで勝手につけられただけだよ」


にんまり。と張大人は笑う。


「あいやあ、いいあるねえ」
「なにが?」
「ダブったから、あるかあ?」
「そう、同じものを2個も、3個もいらないだろ?・・・そういうのが、全部ボクにまわってくるんだよ。ほんと、困るよ」


にんまり。とした笑いがにやにやとした嗤いに変わる。


「2個も、3個も同じものアルかあ・・・。ワタシもグレートはんも一度もそういうのもらった事ないアルヨオ」
「・・・欲しいならあげようか?ボクの部屋にいっぱいあるよ?」
「いやいやいや、だめアルヨ!ジョー、絶対にそれらを人にあげちゃ駄目ネ!!!」
「?」
「せっかくの”お揃い”アル、大切にしてあげるネ」






お揃い?










「同じものを持ってる、女の子にとって、とっても、とっても、重要なことネ!」














同じもの?













「可愛いアルネ♪そうアルカ・・・お揃い、ねえ・・・お揃い」
「c、大人・・そういう、その、そういう意味で、フランソワーズがくれたわけじゃ・・・・」
「大ありヨ。フランソワーズの携帯電話、みるヨロシ!お揃いネ」
「・・・・・・」


張大人は、ぽんっと、ジョーの手の平に彼の携帯電話を乗せて、キッチンへと戻っていく。
ぱたん。と、リビングルームのドアが閉まり、手の中にある携帯電話を目の前まで持ち上げた、ジョー。


ゆらゆらと揺れるのは、八の字眉に泣きっ面のおじいさんは、赤い前掛け、蓑を背に、裸足で胡座をかいている。リアルな作りの、妖怪”子泣きじじぃ”。



ーーーこれと同じものが、彼女の携帯電話に?


「・・・・お揃い、なんだ・・・」


ーーーでも、なんで”妖怪”で”子泣きじじぃ”なんだよ?





ふと、自分の部屋の本棚を思い出す。
フランソワーズが勝手に並べる、”ダブったもの”たち置き場。




「あれ、全部が・・・彼女とお揃いってこと?」



思わず、ふっと、笑いがこぼれおちた。


「次回から、参戦した方がいいかなあ・・・。フランソワーズのセンスじゃ、これだもんなあ」


ぴんっと、爪先で妖怪・子泣きじじぃを弾き、携帯電話をジーンズにしまった。










####


翌週のスーパーで、ハチミツ色の髪の少女と、栗色の青年が、玩具・食玩コーナーに座り込み、ああだ、こうだ、と言い合う姿がみかけられた。


「もっ!1個しか買えないのにっ、ジョーって趣味最悪っ」
「ええ?!フランソワーズに言われたくないよ、なんだよ、この”アメコミヒーロ/ゾンビ・シリーズって!」
「ジョーこそ、これ!パンダ組シリーズだなんて・・」
「可愛いよ、これ。あ、ウサギ組の方がいいかな?でも、パンダの方が、愛嬌があるっていうか・・・フランソワーズこそ、”こげぱん”シリーズから、なんでそういうのになるかなあ?」
「あら、ス○イダーマンがゾンビにdeformerされていて、素敵でしょ?可愛いわ!」
「悪趣味だよ、・・・こっちの”イツデモ一緒・シリーズ”のト○、可愛いよ?これにしない?」
「・・・・・・ジョーって」
「なんだよ?」


ふう・・・っと深い溜め息をついたフランソワーズは、ぽつり。と呟いた。


「・・・オトメン(乙男)だったのね」
「なんだよ、そのオトメンって?」
「ウィキペディアへgo!」
「・・・教えろよ、絶対に変なことだろ?」
「やっぱり、これよ。これに決めたわ!行きましょう」


ジョーの質問を遮って立ち上がったフランソワーズの手には、アメコミヒーロー/ゾンビ・シリーズの箱が握られていた。



「お揃いなら、もう少し・・・それらしいものがいいんだけなあ」


そんなジョーの呟きは”都合良く”フランソワーズには届かない。上に、それを面と向かって彼女に言う事もできない。


003のくせに。と、毒づいてみせる。
こういうときに、聞こえないのはどうしてだ?と。
















*どうしてでしょうね?・・・9目線が多いのはなぜ?そういう時期らしい*
⇒ 続きを読む
web拍手 by FC2
Day by Day・69
(69)




篠原グループ本社は、都心にある篠原総合病院とは違い、オフィス街と呼ばれる街からかけ離れた場所にある。

駅を使用する人間のほとんどが”篠原”専用と、数少ない住民が皮肉を込めて言うように、そこはすべてが”篠原”のために、篠原の裏金によって成り立つ小さな町であった。
篠原本社ビルが設計される企画があがった数十年前、なぜこんな場所に。と、町に住む人々から疑問の声が寄せられたが、篠原秀顕の先見の目は確かなものであった。

公共機関のすべてが都心に繋がっている。
ある一定の距離をおくことで、むやみやたらに他社からの影響を受けない。
多くの疑問の声は今の篠原を見て、押し黙るしかない。
一国家的な規模を時間と手間をかけて、その地域一帯に”篠原”を築き上げたために。




世間で言う、その道の評論家や学者たちは別の疑問を持つ。
医者の家系で都内のたかだか総合病院経営者が、どうやって成功できたのか。

篠原総合病院を中心に、製薬会社、医療機器関連の輸入、輸出、開発、研究所、学校経営、など、”篠原”の名前をネット上で検索をかければ、一目瞭然。小学生でもどれほどの企業であるか知る事ができた。

ほかに例を見ないほどのスピードで、日本経済に影響を与える大企業として成長した”篠原”に、あらぬ噂が立ち始めたのは、四友会社の所長兼代表が行方不明になった事件直後のことである。
なぜなら、企業としてのフィールドが違う四友の株を篠原が1/3を所有していたことが発覚し、行方不明になった代表の代わりをつとめる人間が立ったのにも関わらず、裏では篠原が四友を吸収合併する形で、”篠原グループ”関連企業の一つとして、四友が加わったからである。





表向きは、さほどの変化はない。
企業の歯車のひとつとして働く個人にとって、養う家族を路頭に迷わす事なく、定年後の保証さえ整っている事が、すべてである。

そこに”会社”が存在し、与えられる仕事に見合った収入があればいい。

起きて、会社に行き、働き、帰り、眠る。
その合間、合間に、おこる人生の悲喜交々に、時間は流れていく。

生まれ、愛され、勉学に励み、成長し、職を得て、人生の伴侶と出会い、愛し、結婚し、子どもを授かり、年老いていく両親の世話をし、成長する子どもたちを守り、育て、そして・・・・。











「その先に、何があるんだろうかねえ・・・。そうやって歴史は繰りかえし、環境や生活様式、形は時代によって違うけれども、結局は何も変わらないんだと思うよ。人と言うものは、それが我が社の新入社員でも、この秀顕でも、人として見れば、さほど変わりない生活を送っていると思うのだが、どうだろう?・・・・君らはどれくら長く生きているのかな?普段はどんな生活をしているのか、興味があるねえ。私としてはボグートが行方不明になり・・・」


70を超えたその男は、間接照明だけのライトが届かない闇に語りかけていた。
その滲むような光は、外からの夜景を楽しむには十分のゆるさ。

薄暗く感じるが、不便ではない。


篠原本社ビルの最上階にある、篠原秀顕の私室。そこへ彼以外のものが入室することはほぼ、不可能であった。
彼専属の秘書でさえも、特別な何かがない限り、入室は許可されない。くわえて、娘である篠原さえこも同じであった。
孫である当麻は、ビル内にそのような部屋がある自体、報らさせれてはいないだろう。

部屋はすべて一流のイタリア製家具で統一された、ホテルのスイートルームのリビングを思わせるような部屋であった。




今、篠原秀顕は、1人ではない。


部屋の角に間接照明の淡くにじむような光が届かない世界に佇む客人にむかって語っていた。
彼が。いや、”彼ら”がいつ頃からそれこにいるのか、どうやって部屋に入ってきたか、など、秀顕は考えることを諦めている。
闇に立つ人影の中で、秀顕の目に確認できるのは、淡い栗色と思われる髪の者のみ。
秀顕は、深く、深く、焦げ茶のソファに身を沈め、リラックスした状態で、闇に立つ者へと話しかけている。


「B.G(ブラック・ゴースト)が突然、その動きがなくなり、いきなり”消滅した”だからねえ。その恩恵を受けていた団体が、企業が、政府が、国が、混乱していく中で・・・・得た情報では、”裏切り者”の手によって、滅ぼされた、と。そして、その”裏切り者”・・・B.G(ブラック・ゴースト)の手によって作られたプロトタイプのサイボーグたちも、ともに・・・と・・・。聞いていたんだがねえ。興味深い話しだったよ」


秀顕が口に出した、B.G(ブラック・ゴースト)と言う言葉に、栗色の髪の、青年と思われる、人物が、ゆらり。と1歩、秀顕に近づいた。


「知っているのかな?躍起になって探しているんだよ、君たちを。どこの誰かとは、訊かないでくれたまえよ?それこそ星の数ほどいるんだからねえ・・・・多くの者が、サイボーグである君たちを求めていたんだよ、いや、いた、ではないねえ。今現在も、だ。ときどき、ふとしたところで、”サイボーグ00ナンバー”の名前が聞こえてくるんでね、亡霊かなにか、にしては、あまりにも真実味を帯びた情報だったからねえ」


部屋の間接照明がじんわりと、彼の足下から、斜めに線を引くように浮かび上がらせた、奇妙な紅の服に、緋色のマフラーらしきもの。


「・・・・ああ。言っておくが、私はB.G(ブラック・ゴースト)ではないんだ、私にはB.G(ブラック・ゴースト)の、やり方や、その組織の存在目的に、なんら興味もないし、魅力を感じた事もない。関わっていたのは確かだが、しかし、それはあくまでも、法に乗っ取った形でのビジネスだ。君に、いや・・・君たちに命を狙われるようなことを、した覚えはないんだけれどねえ。・・・・まあ、確かに、さえこと石川を使ったのは、認めよう。そして、B.Gの名の下に開発された技術を欲したことも、加えておくよ。それはこの会社にとって必要なことだったんだ」


彼らであることは確かだが、彼、以外はシルエット程度にしか存在を確かめる事ができない。


「訂正しよう、会社ではなく・・・。私に必要なことだったんだ」
「・・・わかっています」


初めて、青年の声を耳にして秀顕の目が鋭く闇へと投げられたが、すぐに元の好々爺的な眼差しへと変わる。


「家ネズミのように、うろちょろしておったさえこが・・・行方不明らしいが、君たちと一緒にいるのかね?」


恰幅良く、年齢に似合わないほどに引き締まった腹の上で手を組んだ、秀顕の質問に、青年は答えない。そして、彼の背後にいる者も、一様に言葉を発しない。


「やれやれ、サイボーグという者は、会話ができないのかな?それとも・・・戦闘兵器として作られたから、そういう”マナー”をデータとして持ち合わせていないのかね?」


ため息まじりな言葉をかけて、ぎろり。と、青年を睨んだ。
その視線に答えるように、1歩。
青年は秀顕に近づき、闇と間接照明との境界線が青年の体を這い上がり、首に巻かれた緋色のマフラーが浮かんだ。

あと1歩、青年が秀顕に近づけば、秀顕は彼の顔を見ることができるだろう。


「トーマス・マクガーと名乗ていた人物を拾って、恩田充弘の叔父夫婦に見張らせてていたのは、あなたですね?」


低音の、耳障りなバイブレーションをカットした、なんとも甘いテノールの声が、流れるように秀顕の耳に届くが、その声に含まれる隙のない鋭さと厳しさに、ぞくり。と秀顕は背筋を凍らせた。


「やっと、口を開いたと思えばしょうもない事を訊くんだねえ?・・・やれやれ・・・・そんな屑を引っ張りだしてきて、どうするんだい?サイボーグさん」


秀顕が久々に感じる、緊張感。
興奮してくるのが、わかる。
早鐘をうち始める老いた心臓を、優しく宥め落ち着かせながら、脂肪が失せたたくちびるを奇妙に歪ませながら、開かれた。


「恩田充弘の、叔父夫婦は二重スパイ。そして、偽トーマスも、・・・・元B.G研究員であることを利用して、ですね。本物は、ずっとあなたからも、B.Gからも逃げて隠遁生活を送っていた。自分の息子である、石川斗織を頼りに日本へ来たものの、すでにあなたの息がかかっているために、接触したくてもできなかった。・・・彼女が篠原の娘であることを隠して、さえこに接触させたのは、彼の持っていた研究資料が欲しかったため。彼がもっていたアタッシュケース内に、さえこ、そしてトーマス・マクガー以外の指紋が見つかりました。それは、あなたのだ。・・・石川には見せない、渡さない。と言う事を条件に、あなたは、さえこからそれを手に入れた。が、あたなが望んでいたほどのモノではなかった。・・・けれど、石川がそれを手にしていれば、変わっていたかもしれないのに,石川に渡さなかった。その、理由が聴きたい。そして、・・・・”8つ目の景品の映像として使われたサイボーグ手術の、・・・・青年はあなた。ですね?」


今度は秀顕が黙る番だった。


「あなたは、すべてを知っていた。その上で、個別に石川斗織、篠原さえこと関係していた。・・・本物のトーマス・マクガーがあなたの足の手術をした人物。僕はそう考えてます。違いますか?」


秀顕の表情は変わらない。
青年の言葉に、驚き、動揺、納得、同意、否定、それらの青年が予想したような感情は何も表さない。
ゆったりと、ソファに身を沈めたまま、青年の言葉に耳を傾ける姿は好々爺、そのものだった。


「・・・手術は日本で行われた。日本にもB.G研究施設があり、全面的に関わっていた企業が、四友。・・・・個人的にどのような経緯で繋がっていたのかは、掴みきれませんでしたが、篠原聡、あなたの父親ですね。総合病院の一人息子であった彼が、その地位を使って関係していたのは、有名でしたよ。すぐに調べがつきました。聡の父、桂(かつら)の反対を押し切り、B.Gと繋がり、今の”篠原”の基盤を気づいた。そして、石川が、津田海の手術を行った場所でもある・・・旧篠原総合病院は、月見里(やまなし)学院ですね。旧校舎がそうだ。そして、あやめ際のオークション会場でもある。・・・B.Gの実験体になった、いや・・・・あなたの父親の聡、さえこの祖父にあたる彼が、B.Gに手術を願い出た。が、正しいですか?」
「正しいねえ。・・・事故とはいえ、失ってしまったもにたいしての父の態度がねえ。自分が医者だっただけに、息子の手術をしたはいいが、失敗したなど、口が裂けてもいいたくないだろう?お陰で私は、歩く事ができなくなった。・・・が、まあ、B.Gがくれた足は、それなりに良く役立ってくれたよ。・・・それが、君達を作るための実験の1つだったとしてもねえ、そのときの映像は、父の聡が記録したものだよ。・・・医者のくせに、少しでもB.Gの科学技術を手に入れようとして、自分の息子のオペを利用し、・・・・酷い父親だと思わないかい?若い頃は、”わざと”父は私の手術をに失敗したのではないか?と、疑ったもんだよ。いやあ、つらくてねえ、そのB.Gの手術は・・・・今でも痛みで魘されてしまう。君達には感謝して欲しいくらいだよ、私の躯で行った実験が、君達の躯に活かされているはずなんだからねえ」


青年は、言葉を続けながら、1歩前へ出た。が、それは1歩、とは言いがたい。
形よい唇と、頬が青年。とは言いがたい印象を秀顕に与えた。


「その技術が、なぜ石川の手に渡らなかったのですか?」


青年の型をすり抜けた淡い光が、背後に控えている人物の金色に近い髪が、秀顕の視界に触れた。


「そちらの目的は?」
「あなたの目的は?」



沈黙。


「・・・・篠原が持つ、いや、あなた自身が持つサイボーグに関する情報、全ての消去、破棄」


秀顕の胸が大きく上下し、吐き出された息は深い。


「私に人殺しになれ。と、言うのかな?・・人の記憶までは消去できない。君たちのようにコンピューターはここに仕込まれていないんだよ、”人”は」


とん、とん。と、緩やかな動きで自分の額を指をさし、青年をからかうような視線。


「石川はどうするんだ?さえこは?当麻・・・は知っているのかな?ああ、そうだ津田君はどうだ?それに、石川の可愛がっていいた、生徒は?」


青年の口元が薄く笑ったのを秀顕の目は見ている。


「・・・・・愛人の久保絵里子(交流会)も、含まれますか?」
「そうだ、あの女も関わっていたね・・・忘れていたよ、すっかり。しかし、あれは”愛人”にはカウントできんな・・・。そういえば、その恩田と言う男と、クラーク・リンツと言う学者は、どうなのかね?知っているのかね?」
「そこまで、知っていいらっしゃるんですね?」
「・・・・これでも、金には不自由ない身の上だし、それなりに目を配るのがトップだと思わないのかな?人に自慢できる程度の地位と名誉、金を手に入れたと、思っておるよ」
「僕は、それとは違う理由でお尋ねしてます」
「・・・まあ、君たちほど”裏”には詳しくないし、”裏”に生きてはいないがね?」


秀顕は見えない青年の顔を伺うように少しばかいり顔を傾けた。


「そこははっきりとさせておいた方がいいからね。・・・・この年だし、父親が聡だ。それだけで分かるかい?・・・君たちなら分かるだろう?あのスカールと関わっていながら、天寿を全うした人間はそう数えるほどいないだそうし。父を調べたかね?彼は純粋なB.G(ブラック・ゴースト)関係者だったよ、いや、B.Gがまだ暗躍する前から、その組織がまだ小さな団体だったころからの関係だったかもしれない。私が産まれる前の古い話だ。父の跡を継ぐにあたっての一番の悩みどころだったのは、B.Gとどう繋がっていくか、だったねえ。いや、懐かしい。私の選択は間違っていなかった。当時の重役達は、今頃地の底で地団駄を踏んでいると思うな・・・。私は正しかったんだ。だからこそ、今がある。B.Gが滅んだ後でも、見るがいい・・・”篠原”は健在だ」


語尾を強く強調した。


「・・・それだけが理由、ですか?違うはず。だと、言っておきます」
「X島を破壊したのは、どこのどなたでしたかな?・・・・全てはそこにあった。それが、全てだった」


秀顕の指と指が交差する手の甲に力が微かに入ったのを、青年は見逃さない。
張りを失い、皮がたるんだ手の甲のしわが動く。


「変ですね?」
「・・・何が、かな?」
「あなたほどの人が、なぜ、X島へ入る許可を得られなかったのか」
「言っただろう。私はB.Gではない、とねえ」


青年は、しばし間を開けて、口を開いた。


「僕らが日本にいることを知ったのは、いつですか?」
「・・・小さな穴があけば、どんなものでも・・・漏れてしまうのが世の・・・そうじゃないかね?」
「穴をあけたつもりはないんですけれど、ね」
「そう思っていることが、危険だとは、感じないのかな?・・・さえこに同情しすぎるし、交流会に関わった人物が、ずぶの素人ではねえ」
「・・・・・その辺をつつかれると、なんとも言えませんが。対処可能な範囲内でした。と、ご報告しておきます」
「存在していることは、わかったが、確信はなかったんだよ、私もさすがに・・・。まさか、”裏切り者”が生きていて、・・・・B.Gの方が消えるとは、未だに信じられない部分が多い。それに、あまりにも君達に関する資料がなさすぎて、実態がない・・・お見事。としか、言いようがなかった」
「ありがとうございます・・・・」
「それに、・・・・だ。噂は噂でね。根拠のない、出所不明なものが多すぎる。最近はろくでもない情報ばかりが飛び交う世の中でね」
「・・・・時代、ですから。それに関しては、同意見ですよ・・・・、迷惑な話です」
「嘘か誠か、見極める目がないとねえ・・・・、その点、年の功というべきか、多少の”関わり合い”が功を奏した。と、言っておこう、こうやって君達と話ができたのは、そういうことの集大成だ」


にやり、と。薄い、色あせたくちびるが左右に引っ張るようにして、嗤う。
頬に刻まれた深いしわが、より濃く陰を作った。


「君達、と言ったが、・・・君の後ろにいるのは、1人だけ、かね・・・見たところ、女性のように思えるが・・・?」
「・・・あなたの目にそう見えるなら、1人なのでしょうね」


青年の言葉に、秀顕の肩眉がつり上がった。


「それは妙な話だね。冥土の土産にお顔を拝見したいのだが。ああ、失礼、ここからは・・・君の後ろの者が腕に抱いてる赤ん坊?を含めれば2人だ。その子は君の子か?・・・知らなかったねえ、サイボーグでも子が成せるのか?・・・・そこまでB.Gの科学技術は、神に等しい力を手に入れていた。と、言う事かな?・・・・・答えてもらるのだろうか?」
「勘違いですよ、・・・この子も、我々の大切な仲間です」
「赤ん坊がか・・」
「・・・資料不足は、そこまで深刻だったんですね、彼のこともさえ知らないなんて。”篠原”の名前が泣きますよ」


秀顕の両の口角がぐっと引き上がり、声もなく嗤う。


「泣く、か。この”篠原”秀顕が!いいねえ。久しぶりの感覚だ・・・。推理小説の探偵ごっこは止めにしてくれ。そちらで調べた事に、すべてYESと、答えよう。それで勘弁してくれないか?」
「石川は、あなたが望んだ事を成し遂げることができるだけの、力があると、思わなかったんですか?」
「・・・・思っておるよ、あいつは天才だ。父親以上のねえ、あの、少し臆病な、自分を信じきれない弱い部分さえ克服すればの話だ。運が悪かったとしか言いようがない。環境だよ、環境。どんな天才でも、環境一つで、馬鹿にもなりさがる。・・・・しかし、父親が残した遺産、あれを見せていれば、完全な足を津田君に贈っていただろう、たとえ足りない資料だとしても、だ。片足一本くらい、時間をかければ、できただろう」
「なら、なぜ?」
「・・・・わからんか?」
「ええ、わかりかねます。ぜひ、お教え願います」
「言っただろう、私はB.Gではない、と」


無数の、通信が青年の通信回路に届く。
薄く、青年が唇を噛んだ動きが、秀顕の興味をくすぐった。


「・・・・わからない、あなたはいったい、何がしたいんです?」
「何がしたい、か・・・・。それで?何かあったのかな?」
「009・・・」


青年の後ろからか細い女性の声が、彼を読んだ。


「009、そうか、君のプロトタイプ、コードは009か?」
「・・・・あなたの目的が聞きたい、そして、なぜ・・・・旧校舎を爆破したんですっ・・・」
「すごいな、君は千里眼でも持っているのかね?・・・・人殺しはしとらんよ?今夜、あそこの警備の人間は退けておいた」
「ええ、仲間が確認済みです。・・・・できれば爆破を阻止したかったのですが」
「仲間は、無事かね?」
「・・・・・ご心配いりません」
「よかったねえ」
「・・・石川が、接触事故を起こしたそうですよ・・・」
「な、なんと!!事故だとっ!」


ソファに沈めた躯を1mmと動かさずに、秀顕は驚いてみせた。


「・・・役者には、なれませんね」
「生きているのか?」
「お教えできません。・・・・彼に次の手が伸びる可能性があるので」


秀顕がニヤリ。と、いやらしく嗤う。


「ああ。そうそう、訂正しておこう、・・・恩田のその夫婦は私のではなく、父の、だったよ。そして、偽も、だ。本物も、だね。本物はしくじって両方から命を追われることをになったので、私が助けてやったんだ、”手術の礼”としてねえ。・・・しかし、その恩も仇で返された、だから、息子に責任をとってもらおうとしてね」
「支離滅裂だ、あなたに何の利益も生まない、責任?・・・本当の意味で責任を取らせるのなら、トーマス・マクガーの資料を石川にわたして、研究チームを作り・・・あなたは”完全なサイボーグ”になっていたはずだっ・・・そして、そのチャンスだって、B.Gが存在していた間に、いくらでもあったはずっ」
「ふむ。・・・完全なサイボーグの躯か、確かに。・・・そうだねえ、そうだったかもしれない。この中途半端な躯を、完璧なサイボーグとする予定だったねえ。・・・・B.Gの、まだボグートが生きてい入れば、それなりの取引で手に入れていたかもねえ。そうだ、手に入れようと躍起になっていた時期もあった、ああ、懐かしい事を思い出させてくれてた。・・・・しかし、それは、君たちのせいで潰えたんだよ?」
「X島の破壊ですか?」
「そう、君たちの裏切りが、私の望むすべてを奪ったんだ。・・・・何、今は恨んでいないよ。心配しなさんな。・・・・君たちの後に作られたサイボーグたちは、ある男の手を省いて作られた、なんとも、不細工な、中途半端なものが多くてねえ。プロトタイプと呼ばれている、00シリーズが一番の出来だと、思っているよ」


青年は秀顕と会話しながら、通信回路のチャンネルを開いた状態で逐一仲間達から得る、情報を処理していく。


「あなたの目的は?」
「何が何でも、私の口から言わせたいのかな?」
「確認したいだけです」
「・・・すべて、あの男のせいだと言いたいねえ。だから、探していた。求めていた。何度もコンタクトを取るために、色々とそれなりの努力はしたんだよ?これでも、・・・・しかし、プロトタイプ00シリーズに目処が立つまでは、と。待たされてねえ。長い間、待たされたよ。待たせておきながら、サイボーグ計画のプロトタイプが完成した途端に消えたんだから、たまったもんじゃない。その上に跡形もなくX島は破壊されて・・・」


薄く吐く溜め息。
秀顕の口元は嗤ったまま。



「・・・多くの研究者がB.Gの闇から逃れたんだった。・・・そうだねえ、トーマスもその1人だったねえ、いや、違う。彼は・・・それより少し前だ、はて・・・いつだったか、よくは思い出せないが・・・私が良く知る科学者の名はブラウン。彼と父は何かと交流があったようでね。まあ、キレイとは言えない腹の探り合いだっただろうが、彼の研究チームの1つに、私は委ねられていたんだよ、そのチームの責任者がトーマス・マクガー。・・・昔話が好きだねえ、君は。いや、私かな?やれ、私はどうもおしゃべりになってしまうようだ。」
「ブラウン、博士・・・」



「君は知っているかな?改造される前にあっているのかね?ブラウン博士は、結局・・・生きている間に、拒絶反応を起こしたためにコールドスリープさせた実験体を起こす事ができなかったんだが・・・」


視界に入っていた金糸のような髪が揺れたのを、秀顕は眺めていた。


「仲間にその”コールドスリープ”させたプロトタイプはいるのかな?それとも、君自身なのかな?009と言うから9番目か?さて、君がいつ生まれたのか、まったく検討がつかないし、あの当時、何体のサイボーグがコールドスリープされていたのかも知らないんでね。しかし、それらは・・・アイザック・ギルモアが完成させた。と、聞いているが?その直後に反旗を翻したために、X島は見事なまでに破壊されて、鉄くずの島には何もなかったよ」
「あなたの、目的はギルモア博士・・・」
「彼以外に、本当の”サイボーグ”は作れない。・・・たとえ石川でも、いや、もしも石川が時同じくして、B.Gの研究員として、ギルモア博士とまったく同じ環境に身を置いていたら、変わっていたかもしれないが、だ」
「やっぱり、辻褄が合わない」
「おや?そうかね・・・十分に合っていると、思うが・・・」
「ギルモア博士を狙うなら、もっと」
「他にもっと、それを目的とした方法があったと、言いたいんだね?・・・・そうだね、確かにその通りだ、だから」


秀顕は深く、ソファに沈み込ませていた背をゆっくりと前屈みに倒して、影で隠れる、009の顔を下から覗き込むように動いた。






「すべて遊びだよ、遊び。暇つぶしに過ぎん・・・・探している間に、目的なんぞ忘れてしまったんでねえ」





















「楽しかった、ですか?・・・・自分の娘をつかったゲームは」
「それなりに、さえこが面白い動きをしたんでねえ、石川は予想通りだったが。ああ、当麻と言う面白いオプションもついてきたな」
「その、遊びに加わって、いや・・・・違う・・・違いますね。遊ぶようにしむけた。一緒に遊ぼうと、言い出したのは、誰です?」








「N.B.G(ネオ・ブラックゴースト)」












青年の、009の手が、強く拳を作り、震え、そして001の、瞳の光を、腕に抱く003だけが知る。



「・・・・今の世の中に”団体”や”組織”に”忠誠”を誓うなど、そんな面倒なことは不要。流行らんのだよ。”誰か”のために動くなど、今の人間は”個性”を”自分”を訴える事が趣味みたいなもんでなあ、チャンスがあれば、それに食らいつき、人と違う、自分は”特別”なんだ、と。叫びたがる。・・・個人が名乗りを上げればいいんだよ。裏から情報を強い入れて、使い、利益を得て、そして表で涼しい顔で生きていく。合い言葉は”N.B.Gだ」
「合い言葉・・」


嗤いが落ちる。
肩を揺らし、楽しげに。


「何の、ために」
「暇つぶしだよ、遊びだ、遊び…・・・復讐も兼ねていたかな?こんな躯にした相手を潰してくれた恩義あるプロトタイプにも会ってみたかった。という理由もあるねえ」
「いつ、から」
「さて・・・通いのネットワークに、君たちの情報を見つけたのは、ボグートがいなくなった直後だ。ああ、四友も簡単に手に入ったねえ」
「合わない」
「なに、合わないかね?」
「・・・・・・6年前は、まだB.Gは存在していた」
「そうだったねえ、ボグートが行方不明になったのは、3.4年前だったかな?」
「・・・合わない」
「君達はB.Gを倒すことに必死で、気がつかなかっただけだろう?そういう”ネットワーク”があることを知ったのも、今回のことがあって、初めて、ではないかな?・・・・ああ、闇市(ブラックマーケット)など、そのほんの入り口程度だよ?勘違いしないでくれね。ここは年長者として、孫とかわらない年齢に見える、君に助言しておこう。わざわざ会いにきてくれた、礼も含めて・・・。何にでも正確な答えが出せると思う事は間違いだ。辻褄が合わないからこそ、いいんだよ。それが真実なら、それでいいんだよ?」
「改めて、お聞きします。・・・あなたの、目的、は?」
「言っただろう、暇つぶし、遊び、そして”情報”に便乗した、復讐か・・・?いまさらサイボーグ化した躯を得ても、・・・少しばかり考えてみればわかるだろう?この世に、人類の未来に、なんら楽しみが見いだせなくてな。半永久的な命よりも人として死ぬ事を選んだんだよ。潔く、それなりに遊んでから天に召されようとねえ。こんな躯でも、まだ土に還ることが許されている生身があるんでねえ。・・・それに、身の程はわきまえているつもりだ。私と言う人間の尺度をね。B.Gのように大それた野望など、とてもとても・・・」


くくく、と嗄れた喉奥の嗤いを堪えるように、たるんだ皮の、年老い得た手を口元に当てた。
ひとしきり嗤い、はああ。と、肺にこもっていた旧い空気を吐き出して、新鮮なものを取り込む。



「B.Gが築き上げたかった世界は、B.Gが滅んでこそ、動き出したんだねえ。いや、滅んだのではないねえ、彼らのその存在が、BG(花)が散ったことにより種を撒いた・・・そしてそれは進んだ現代の”電気通信網”などを通した、眼に見えない不確かな”情報”が苗床となった。すばらしいタイミングだったと、思うだが、どう思うかね、君は?」


話しかけておきながら、009の反応など気にせずに、言葉を次いだ。


「そこに善悪が存在するのだろうか?存在などしない、そこは人の欲だけだと思うねえ。善悪じゃないんだ。私利私欲の”個”が放つ”願望”が同じものを望むものを引きつけて、輪になり、目的達成後は、散っていく。まるで、餌に群がるハイエナのように。そこに”肉”があるから寄り付き、”骨”になれば散っていく。我が身可愛さに身を隠しながらも虎視眈々と個の欲を狙っている。・・・・人は人としてのコミュニケーションを、関わりを捨て去ったときから、団体であることを放棄したんだ。そのうち、・・・遺伝子レベルでの”属”、いや”族”と言うものが消えていくかもしれないい、と私は考えているよ。・・・地球、その規模で人。だと、言う時代がくるときは、・・・ないか。その前に、人が人として人を消滅させているかもしれん。それは、”個”を選んだ、我々の愚かさなのかもしれんがねえ。B.Gは本物のゴーストになったんだよ。ネットワークと言う、通信技術の中で進化して。本物の亡霊となったんだよ。

滅んでこそ、B.Gは本来の目的を遂げる事に成功したんだよ、
君たちは、それを行うために用意された駒にすぎなかったんだねえ」




009の脳は通信に届いた、篠原旧校舎に引き続いての四友工場の爆破。
警察が”テロ事件”として慌ただしく動きだした、と報告が入る。











001は、動かない。
それが今夜、計画的に行われる事を知っていたかのように。

不意に胸底にわいた疑問に答える者がいた。


<過去ヲ振リ返ッテモ、何モ出来ナイ。忘レナイデ、過ギ去ッタモノハ、今ニ繋ガッテイルンダヨ。未来ハ 僕ニダッテ 予測シ難イモノダ。自分ノ都合ノ良イ方ヘ 選択サセルコト、導クコトノ方ガ簡単ダヨ。・・・・未来ハ 1ツジャナイ。無数ニノビル糸ヲ 1つ選択スルコトデ ソコカラ マタ 新シク分カレテ、イク。 君ガ、秀顕ヲ手ニカケル未来ト、生カス未来ノ先ニ広ガル糸ハ、今ハ分カレテイルカモ知レナイ。デモ、ソノ先ニ再ビ絡マリアッテ、同ジ未来ヘ向カッテイルモノモ アレバ、全ク違ウ世界ヘト繋ガッテイルモノ モ アル。君ノ手ニアル糸ト 秀顕ノ糸ガ触レ合ッテイルハ ”今ダ”。今ヲ選ブノハ 君ダ 009。>


001のテレパスに、視線を自分の背後で003に抱かれている彼にむけた。
秀顕は、振り返る仕種を見せたために、端正に描かれた009の顎のラインを、その視界に捕らえる。


「相手は”個”であり、その目的も多様化した上に”真実”であるかどうかを、確かめるための”情報”自体が、すでに、NBGの手の中なんだ。そう、言えば君たちも裏に生き、関わること自体、正義の名乗りを上げたNBGだと言う事だよ。そうなると、今までのようにはいかないねえ。」
「あと、・・・どこを爆破する予定ですか?たしかに、僕たちが望んだのは、あなたが持つ、知り得る、サイボーグに関する全ての消去、破棄だ」
「ご希望に答えられて嬉しいねえ・・・君たちに見つかってしまった以上、ゲーム終了だ。後片付けはしないといけないからねえ。私は満足だよ、いやあ、楽しかった。この目で”アイザック・ギルモア博士”の芸術的完全体サイボーグ、プロトタイプ・コードナンバー00シリーズを確認できたんだ。それはどんな情報よりも確実で確かなもの、満足だよ」
「あなたは、いったい何がしたいだ?」


009の効き足が、1歩前へ出る。と、同時に背後から、涼やかに、愛らしく、けれどもしっかりとした芯の通った声が秀顕に語りかけた。


「・・・わからない。のですね?・・・自分でも、自分が、自分をどうしていいのか、もう・・・わからないのでしょう?」















====70.へ続く



・ちょっと呟く・

つ、つらいっす・・・・。
もじもじで、気分転換。
大地くんで息抜き。しながら書いてますので、更新遅いです・・・。
ああ、ただでさえ遅れてるのに・・・(汗)



もうちょっとで山場乗り切りますので、しばしおつきあいを・・。
このあと、たあああああっぷり憂さ晴らしに、あのイベント!・・・早く書きたいっ。
web拍手 by FC2
吐息/そんな彼女の行動にボクは(4)


彼女の指先が赤くかじかむ。

何度も白い息がはあ、っと彼女の手を包むが、白の温度は一瞬で熱を奪ってしまう、気温はマイナス・・・。

人が人として生きていくには、とても厳しい環境である、ここに、防護服に身を包む、サイボーグにとって生命の危険にさらされるほどの、問題はない。


肩を小さくして、はあ、っと、小さな手に何度も息をかける。








ミッションのために真夏の日本から、北極圏へ。


生身に近い彼女でも、ちゃんと体内の温度調節はできている、はず。
それでもかじかむ白い手が可哀想にみえた。

009は自分の手をみるが、真夏の日本で生活していた時間と、なんら変化はなく、指先も、彼女のように赤くはなっていない。



それが、旧型と最新型の違い?






009の胸に、”完全”なサイボーグである悲しさが、どっと押し寄せくる。
この極寒の地で、人らしい仕草をみせる彼女が羨ましくもあり、妬ましくもある。


「009?」


009の視線に、003が気がついた。


「あ、何でもないよ・・・遅いね。どうしたのかな、みんな・・・」


調査に出た、002、004,006からの連絡待ち。
003が眼のスイッチを入れた。


「・・・・遠いわ、もうアタシの眼でも追うことができないみたい」
「中に入っていたら?・・・ボクは平気だけど、キミは・・・」


少し離れた場所にいた、003が、009に近づいてくる。
氷の大地に、もう1人の003が映っていた。

鏡のように、クリアには移しださないが、鈍く曇る氷上の003は009の瞳にとても可憐に見えた。


「009は、寒くないの?」
「平気」
「嘘よ、だって・・・私の手は・・・・」


こんなに冷たいのよ。と、証明したいらしく、009の右手に003の手が触れて、それを彼女は自分の視線の高さにまで持ち上げた。
氷のように冷たい、そして妙に柔らかくて、矛盾したような、なんと表現したらいいのかわからない、003の両手が、009の右手を包み込む。


「・・・戻った方がいいよ、そんなに冷たいんじゃ・・・・風邪ひくよ?」
「ジョーの手も十分に冷たいわ!」


009と呼ばなかった彼女。
はあっと・・・ジョーの手を包み込んだ両の手にくちびるを寄せて、あたたかな吐息で、温める。





やばい。
やばい。

やばい。


それ、やばい。



やばいって!!!




「ふふ、少しは・・・温かくなった?」


握りしめる、握りしめられる、手。
上目遣いに、細められた宝石。



再び、彼女ははあ、と息をかける。




うわっっ。



だから、やばい!
やばいって。




はぁああ・・・。と、先ほどよりも、近く、強く、熱く、・・・白が舞う。





あ・・の,やばい、から・・・。


やばい。

やばい。



やばいよっフランソワーズ!!









温かいを通りこして、全身が熱くなるって!
ボクよりもキミが温かくならないといけないのに!

そう、キミの方がっ・・・・・・。









「・・・ボクよりも」
「?」


彼女の手に、開いていた左手を重ねた。




「うぉおおおい!見つけたぜっ!!」

「あ!002が戻ってきたわ!」




小さく、舌打ちを打つ。のはジョーの胸の中。








ああ、そうだね・・・・。


わざわざ報告してくれなくても、わかるよ。



あんな大声で、轟音のジェット音だしね。



ジェットなだけに、うるさいんだよ、あの足は!












ぱっと、彼女の手が離れて。

はあ・・・とため息をついたら、彼女の吐息と同じ色の白が、広がった。












*9視点が多いのが今のブーム?気分?・・・なんでだろう?もじもじが似合うのは9?!*
web拍手 by FC2
ひとりじゃ眠れない/ひとり、を。ふたりに。



ふと、したきっかけで。
フランソワーズは兄、ジャンを思い出してしまった。











仲間の中で唯一異性であるフランソワーズは、多くの場面で”女の子”だからと、特別に扱われるが、それと同じくらいに、多くのことで、”男”と変わらない扱いを受けている。


時と場合によりけりだけれども、統計的にみて50/50だと思われる。






そのせいなのか。
フランソワーズの生まれもった性格のためなのか。

表情豊かなフランソワーズは、こころで感じるままに素直に気持ちが顔に出る。と、思われているせいか。

誰も彼女が毎夜見る夢に、悲しみ染まる瞳をおおう瞼を、冷たいタオルを乗せて過ごす時間があることを知らなかった。







「なに、してるんだい?」


びくん。とフランソワーズの躯が跳ねた。


「こんな時間に、お腹でも空いたの?」


なんとも彼らしい質問に、フランソワーズはほっと胸を撫で下ろした。


「まだ、起きてたの?」
「本を読んでたんだよ。・・・気がついたらこんな時間になってた」
「何か、飲む?」
「ん」
「麦茶、牛乳、オレンジジュースに・・・、温かいのがいい?」
「麦茶」
「氷は?」
「いらない・・・・・、それ何?」


フランソワーズの手にあるものを見て、ジョーは冷蔵庫前に立つ彼女に近づいて、不思議そうにフランソワーズを覗き込み、呟いた。


「アイスノン?頭痛でも...?・・・・目がうさぎ?」




つらそうに、渇きかけた碧にまじった赤を、手に持った”アイスノン”で消す前。


「泣いた、の?」


フランソワーズは何も言わずに微笑んだ。
それはいつものように、花が咲くような明るさをたたえているが、瞳元の腫れはごまかせない。



言葉で、ごまかす。


「アタシもね、読んでいたの。悲しいお話の本だったから、だから、ね?」
「どんな本?」


フランソワーズは冷蔵庫を開けようと、手を伸ばす。
ジョーの麦茶を用意するために。しかし、冷蔵庫を開けられない。

ドアを、009が手で押さえているから。
困ったような視線をフランソワーズはジョーにむける。と、彼の真剣な、・・・そこに009の眼差しとぶつかり、驚く。


「どんな本で、泣いたの?」
「ええっと、ジョーが好きじゃないジャンルの本」
「なんてタイトル?」
「い、いいじゃない、そんなの」
「タイトルは?」
「教えても、ジョーは読まないでしょ?」
「読む」
「・・・・・」
「キミが泣いた(泣かせた)本が、どんな内容なのか、知りたい」
「・・・」
「言えないの?」
「あ、ええっと、あの・・そう、忘れちゃったわ!」
「泣いてしまうくらいに感情移入してしまった本のタイトルを?」
「s、そう、ほら、それくらい、お話に夢中で」
「じゃあ、その本を貸して」


009は命令する。


やっと落ち着きを取り戻しかけていたこころの波が、再び大きく荒れ始めた。
碧に混じる紅にうっすらと溢れ出した、露がぽろぽろと落ちる。


「ボクが泣かせたみたいじゃないか」


薄く、下唇を噛み締めて、そっぽをむいてしまった彼は009ではない。


「ジョーの、せいよ・・・・」
「ボクじゃない。何がキミを泣かせるんだよ」
「・・・もう、会え、・・・会わないと決めた、人」


人。





誰だよ?










アタシが愛している人。
アタシと血を分けた人。
アタシが生まれたときを知っていて、アタシが人であったころを知っている人。


アタシがバレエを始めたときも、アタシが初めて舞台にたったときも。
辛くて、悲しくて、寂しくて、・・・そんな夜は、ホットミルクに、一粒のチョコレートを手に、部屋をノックする、人。




「大切な、人、私の大切な、大好きな、兄さん・・・」















「どんな人?」
「優しい人」
「どんな風に優しいの?」
「・・・温かくて、アタシのことを大切に、いっぱい愛してくれて・・・。生まれ変わっても、また兄妹になりたいくらいに、素敵な人」
「どんな風に素敵なの?」
「とってもモテるのよ、ジャンは・・・。自慢の兄なの。みんな、羨ましいって言ってくれるのよ。ジャンにとって私が一番なの。私を一番に考えてくれるの」
「一番、なんだ?」
「そう、一番なの・・・。お嫁さんになりたいって、小さい頃に言ったら、駄目!って。フランソワーズは僕の妹だから、お嫁さんになると僕のそばにいなく、そばに、いなく、いな・・・く、な・・・」


頬に描く、色のない絵の具が光の加減で、きらり。と、光り、フランソワーズの頬に線をひきつづける。

ぐっと、喉に力を入れたために、フランソワーズのふっくらとした、色つや良い唇が真一文字を結び、芸術的なラインをつくる顎が上下した。
それは、彼女が我慢した嗚咽のせい。






寂しい夜は、誰にもで訪れる。
色々な形に色に変えて、淋しい夜は訪れる。


温かさを知っている分に、その寒さはよけいに寒くて、寂しい。


知っている分に、淋しい。





どんなに着膨れても、どんなに毛布を、布団を重ねても。
部屋の暖房をmaxにしても、寒い。


寒くて、ひとりじゃ眠れない夜は、誰にでも訪れる。





でも・・・ひとりを、ふたり。にしてくれていた人は、いない。



そばにいない。

ジャンはいない。




瞳が溶けてなくなるほどに泣いても、

声がおばあさんのように嗄れるほどに叫んでも、

ジャンは温かいホットミルクと、1粒のチョコレートをもって、部屋のドアをノックすることは、永遠にない。

もう二度と、ない。



ない。









冷蔵庫のドアにいつの間にかジョーはもたれかかっていた。
フランソワーズとむきあって、見下ろす彼女の元気のない髪に、キッチンのライトは薄く天使の輪を作る。

背中に、冷蔵庫の微かな振動を感じて。
その振動が、ジョーのこころをも揺らす。




「寂しいのに、どうして言わないの?」
「・・・・言うような、ことじゃないわ。そうでしょ?」
「悲しくて、泣きたいのを、どうして秘密にするのかな?」
「・・・・・だって」
「隠しておくと、もっと悲しくて、寂しいままだと思うけど?」
「でも・・・」
「・・・・・みんなに言えないなら、ボクに言えばいいよ」
「ジョー、に?」
「うん」
「・・・でも」
「フランソワーズ、寂しい?」
「・・・・」
「逢いたい?お兄さんに、逢いたい?」
「・・・・」
「恋しい?」
「・・・・・・あ、い、・・・たいわ」
「淋しいんだろ?」


フランソワーズはジョーの言葉に戸惑いがちに頷く。が、その顔を上げる事ができない。
ジョーは、そっとフランソワーズの元気のない、しっとりと手に絡まるハチミツ色の髪に触れて、彼女の後頭部に、あてた手のひらに力を入れると、引き寄せて自分の肩で彼女の流れ落ちる色のない、しずくを受け止めた。


「寂しいよね、フランソワーズ・・・お兄さんに逢いたいんだよね?」
「っっ・・・寂しい・・・あいたい、あい、あ、あいたいのっ・・あいたいっ、あいたいわっ、ジョーっねえ、あいたいのっジャンにっ!!ジャンにっあいたいっ!!」
「うん、我慢しなくていいよ・・・ちゃんと声に出して、言いなよ・・聞いてあげるから」





ひとりで、泣かないように。
ひとりで、悲しまないように。

ひとりで、寂しがらないで。




ボクがいる。





眠れない夜には、かならずボクはキミのそばにいるから。
こころに閉じ込めていた声に揺れる肩を抱きしめてあげるから。

キミの頬を伝うしずくを全部、この肩に。
寂しさに潰される憶いを、あずけてほしい。





「あいたいっ!ジャン、ジャンっっ!!!寂しいのっどうして?!どうしてっそばにいてくれないのっ!どうしてっ!ジャンっあいたいっ、寂しのよ、アタシが一番だって言ってくれたのに、そばにいるって言ってくれたのにっジャンっ!」








ジャンの代わりには、なれない。
ボクは、ジャンじゃない。






今、キミのそばにいるのは、ボク。
今、キミの寂しさを受け止めているのは、ボクだよ。








声をあげて、泣いて。
訴えるキミを支えて。








キミがジャンを、兄を、恋しがって、寂しがるのに、会った事もない、その人に嫉妬する自分が情けない。



















「今夜はひとりじゃ、・・・眠れないだろ?・・・・そばに、いてあげるから・・・」





彼の肩に押し付けた、頬が温かくて、涙で湿ってしまった彼のシャツが嬉しくて。

でも・・・・・。









「ジョー・・・もう、大丈夫」










キミの大丈夫は、003のキミだけで、十分だよ。





ボクはキミのそばにいるのに。
キミはボクのそばにいない。





「よくないよ、こんなに泣いて、寂しがるキミを・・・ひとりになんかさせられない」
「ジョー、・・・でも」
「ひとりになんか、させないよ?・・・ちゃんとキミが眠るまでそばにいるから」



キミがボクのそばにいなくても、ボクはこうやってキミのそばへと駆け寄っていく。






「あの・・・ね?」
「なに?」


ほうっと、あたたかな溜め息がフランソワーズからこぼれた。
彼女はもう、泣いてはいない。
フランソワーズが泣いていた跡だけが、頬を濡らした光る路と、あかく、腫れたぼったい目蓋だけが、彼女の憶いを記す。


「・・・張大人が、キッチンを使いたいみないで、でも・・入って来れないみたいなの・・・・・ずっとウロウロ、してるのよ、さっきから・・・ダイニングルームの、影で・・・」


?!



朝!?
もうそんな時間?!




ええっっ・・・・っと。と・・・・と・・・。








ジョーの肩から顔を上げた、フランソワーズは目元をぶっくりと腫らしたままに微笑んだ。
赤がまじる碧だったけれど、いつもの碧の輝きに、頬があがる。




「部屋に戻るわ。さすがに、こんな顔だと・・・ジョー・・・ありがとう!」


ぱっと、離れた躯の重さを、追いかけたい。と、ジョーは思う。けれど、キッチンをのぞく丸い鼻が、照れているのか、邪魔してしまったこと困惑しているのか、それとも続きがあるのかと、訊ねるように揺れていた。







当分、ジョーの躯にしみ込んでしまった、フランソワーズの零したしずくたちが、彼を眠らせてくれないだろう。
















「ジョー、い、いいアルか?」
「いいよ、おはよう大人」


キッチンカウンターの隅っこに、ひょっこりと顔を出した大人。


「キッチンで立ったままだと、ムードもなにも、その先に続かないアルヨ?せめてリビングルームなり、部屋なりに、連れて行くことをおススメするネ・・・。次回はがんばるアルヨ・・・」






どうも、貴重なアドバイスをありがとうございます。









いつからいたんだよ・・・・。

油断も隙もないっていうか、この邸にいるかぎり・・・。








いや、別にそういうのは、その、ねえ・・・フランソワーズの、確かめたこと、ないけど...。
その、それなりに・・・、そう、それなりに・・・・・・。


「大人、お腹空いた」
「はいはい!今用意するネ」





それなりに、っと、言う事で自分の気持ちをごまかした。









いつかの未来に、ひとり、でなく、ふたり。で、眠れない夜を優しく包み合える日を願って。



























*パターンだ。・・・パターンです、定番です・・・切ないのも難しい。*
web拍手 by FC2
オリキャラに30のインタビュー/(1)井川大地くん (2)龍香奈恵さん
anemone2.gif
サイト名 【ANEMONE.】
管理人 【なぎさ】さま
URL 【http://betty.jp/secondshot/index.html】

***************************************

*オリキャラに30のインタビュー*
~from オレが好きになった人は島村ジョーの彼女だった・シリーズ~


(1)井川大地くん




1.こんにちは。今日はよろしくお願いします。

>は、は、はいっっ!!
 こ、こちら、こちらこそ、今日は、よろし、よそr、よそり、よろしくお願いしますっっ・・・・。


2.ではまず、お名前をお聞かせ下さい。

>井川大地ですっ。


3.すてきな名前ですね。由来とかはあるのでしょうか?

>ないですっ!
 祖父が、大輔。父が、大悟。兄が、大輝、と、きて・・・オレの大地です。


4.あ、失礼ですが、性別はどちらでしょうか?

>え・・?
 お、男、ですけど・・?そ、それ以外に見えるっすか?!


5.失礼しました。では、歳はおいくつですか?

>21歳です。


6.職業は何をやっていらっしゃるのですか?

>W大生ですっ。


7.そうなんですか。楽しいですか?

>ええ、まあ・・・2浪してやっと入ったんで、がんばってます!


8.そういえば、今は何処に住んでるんですか?

>兄貴夫婦の家に居候中なんですよ・・・。


9.では、家族構成を教えてください。

>一応の初期設定(?)では、父、母、兄、オレです。
 都合によって、増えたり、減ったり、するみたいです、・・・なんだそれ?


10.暇な時は何をして過ごしていらっしゃいますか?

>・・・・・ええ?・・最近バイトが忙しくって、暇なとき、なんて・・・。
 前は、ふらふらしてたり、義姉さんの漫画読んだり、・・・。
 そうっすね、最近は兄貴の経営するカフェに入り浸ってます。
 アルバイト以外でもっすかね・・・
 あ、ジョーと連絡ついたら、ヤツが色々と、その・・。
 あの・・・ここでは・・・・・・・ちょっと”どこか”は控えさせてください・・・。
 他は、予備校時代、大学の友達とか、サークルに顔出したり、・・・っすかね?


11.これだけは自慢できる、特技などはありますか?

>ぐっ… 一応野球少年でした。1st。
 あと、剣道と、水泳、そろばん、習字、家の近くにそういうのんを
 ば~っと面倒みてくれるところがって、
 両親共働きなんで、すこで色々やってました。

  あとは.....
 ・・・・・・フランソワーズさん見つける事・・・・っすか?
 あと、フランソワーズさんについて、フランソワーズさんの、ための、
 あの美しさを例えるボキャブラリー集めっすか?


12.自分の性格についてどう思いますか?

> う~ん・・・、なんか、よくわからんですね。
 一途、かもしれないっす。
 


13.ちなみに、他の人からは何と言われますか?

>言われる?
 性格っすか?
 犬っぽいって言われた事あります。フリスビーとか得意そうな感じ、とか?
 いっつも・・・・・・ぼこぼこに言われてますよ・・、香奈恵さんとか、義姉さんとか。
 でも、フランソワーズさんに、ジョーがオレみたいになりたかったって、言っているって、聴きました。
  

14.有名人でいうと外見は誰に似ていると思いますか?

>ええ~、マジっすか?
 自分で、自分を・・?
 うう・・・・・二次創作キャラなんで、オレ。そこまでちゃんと設定されてないんっすよ。
 読んでくださる方の想像に応じて、容姿替えてるんで!
 (カメレオン大ちゃんっすね!)


15.では、声は誰に似てますかね?

>げえっ!それこそ、余計に・・・。
 読んでくれる方まかせですっ!
 う~・・ん、オレの声募集(笑)
 声優さんだと、誰がいいっすか?


16.突然ですが、今、好きな人はいますか?

>・・・・・・・・・失恋した相手なんですけど、 その人のこと、いまだに、ちょっぴり。


17.へぇ~。どんなタイプが好みなんですか?

>なんか、いきなり、馴れ馴れしい・・・。
 ええっと、タイプ?
 ばらっばらっすね!
 タイプがないのが、タイプ?みたいな・・・。特に考えた事ないです。


18.じゃあ、食べ物には好き嫌いってありますか?

>あります。
 人参。あの、青臭さが駄目!
 カレーでもよけますね!
 兄貴が”キャロット・ケーキ”を作ったら、オレ、兄弟の縁切る予定っすよ!!


19.お酒は飲めますか?

>はい。
 そこそこに。
 最近、ジョーがすんげえ、高価なの飲ましてくれるんで。
 大学のダチとは行けない、すんげええええええっとこ、
 たかああああああいの、ぽんぽん!飲ませてくれるんっすよ?レーサーってずりい!


20.動物はお好きですか?

>もちろん♪

21.どうしても苦手なものってありますか?

>・・・・・・オレ、ゴキブリだけは駄目なんっすよ。


22.その髪型や服装にこだわりなどありましたら教えてください。

>ジーンズは”えびす”で、FCUKが好きです。


23.つい言ってしまう口癖はありますか?

>野球少年だったんで・・・。


24.じゃあ、ついやってしまう癖は?

>癖?
 あるのか?オレに・・・??誰かに訊いてみないと、分からないっすね。


25.コンプレックスって、ありませんよね?

>コンプレックスだらけっすよ!
 兄貴にたいして、ジョーにたいして、もう人生、全身、コンプレックス!


26.将来の夢はありますか?

>・・・・フランソワーズさんと、・・・・・・・・・ありえないですけどね。
 大学卒業して、就職できたらいいっすよ。


27.尊敬する人物は誰ですか?理由も教えてくださると嬉しいです。

>・・・・・・兄貴かなあ。
 あのすっとぼけた、感じの、のんびり屋なのに、・・・ケーキにかける情熱はすごいし。
 オレが物心ついた時には”自分の店で、自分が作ったオリジナルのケーキを売って、
 好きな人と幸せに暮らす!”って。
 全部、ほとんど実現させましたから。
 あ、店の、Audreyは、そのままあの有名な女優さんから、です。

 大ファンなんっすよ、兄貴。


28.貴方の周りにいる人について、どんな人か説明してください。

>まあ、兄貴の大輝、でしょ?その嫁の萌子義姉さん。
 ”オレの”お得意さま!フランソワーズさんっ♪
 島村ジョー。そして、香奈恵さん。かなあ?
 あと、幼なじみで従兄弟ののタッペー。と、大学で知り合った、同じ学部の外瀬。
 他は、まあまあ、な感じっすね。

29.貴方が一番大切にしているものってありますか?

>・・・・ありますけど、ひ・み・つ。


30.最後に、自己アピールをお願いします。本日はありがとうございました。

>自己アピール?!
 ええっと、大地です・・・・。
 あの、オレなんかを、こう・・・、良いヤツだ~!とか、婿に、彼氏に、とコメントを寄せてくださった
 みなさま、ありがとうございます!!
 

 あの、どうやって、アピールすればいいのか、よくわかんないんですけど…。
 
 と、とにかく、毎日、フランソワーズさん日記つけてますっ。
 あと、写真も!
 ええっと、携帯電話の番号は教えてくれないんですけど、メールアドレスは、ゲットできました!
 (ジョー経由ってのが情けないんです・・・)

 ギルモア邸に遊びにいったんですけど、そのSSが、コピュータークラッシュですっ飛びました!
(あれ、何言ってんだろ?オレ・・あ、口が勝手にっ!)
 書き直す気力がないです!

 ・・・・・・・・、え?
 
ええっと、最近出番が他のJ&Fに取られて、更新が滞ってますけど、生きてますから!













00.すいません、あの、ここだけの話っていうやつ、一つ聞かせてくれませんか?内緒にしますんで。

>も~~~!好きっすねえ、特別ですよ?
 ジョーが酔っpあrっっ...........


(しゅんっと空気が切り裂く音とともに、大地くん。消えてしまいました。.....生きてるのか?)





XX.ありがとうございました。お気をつけてお帰り下さい?







****************************************
*オリキャラに30のインタビュー*
~from オレが好きになった人は島村ジョーの彼女だった・シリーズ~


(2)龍香奈恵さん




1.こんにちは。今日はよろしくお願いします。

>あら、こんにちは!よろしくね。

2.ではまず、お名前をお聞かせ下さい。

>龍 香奈恵です。

3.すてきな名前ですね。由来とかはあるのでしょうか?

>ありがとう、由来?
 名字が一字で”りゅう”でしょ、だから祖母的には、バランスを考えたみたいだけど?


4.あ、失礼ですが、性別はどちらでしょうか?

>本当に、失礼ね!


5.失礼しました。では、歳はおいくつですか?

>女性に訊くわけね?
 あなた、とってもマナーを心得た人なのね?
 
 私の舞台に見に来たら、わかるわよ!


6.職業は何をやっていらっしゃるのですか?

>プロのダンサーです。これでもソリスト、プリマはってるわ。


7.そうなんですか。楽しいですか?

>楽しくなきゃ、やってないわよ!
 

8.そういえば、今は何処に住んでるんですか?

>バレエ団が移転したビルの街から、駅で3つ分離れたところ。
 マンションよ。


9.では、家族構成を教えてください。

>祖母、生みの母、養母、妹3人いるわ。長女なの、私。
 ああ、父親もいるわよ、どっかに。
 用がないときは思い出さないようにしてるの。


10.暇な時は何をして過ごしていらっしゃいますか?

>暇?
 人生に暇なんてないわよ!
 踊っている意外は、体のメンテナンスでしょ!
 語学勉強に美的感覚を養いに美術館へ行ったり、歴史的な拝見から知る物語も大切だから、図書館も豆に通ってるのよ。
 リズム感を養うために、打楽器とか、そういうの触らしてくれる、カルチャーセンターに通っているわ   
 音は大切な表現をサポートしてくれる一つ。あんまり好きじゃないけど、ピアノだけは続けてるの。
 
 ダンサーとして”踊る”意外にも色々と忙しいのよ!
 それに! フランソワーズ(島村っち)のこともあるしね!!

 あと、ボーイフレンドたちも増やす予定なの。


11.これだけは自慢できる、特技などはありますか?

>バレエよ!
 それ以外なら、男ね!


12.自分の性格についてどう思いますか?

>性格?
 ボーイフレンドたちは、みんな”可愛い”って言ってくれるわよ?


13.ちなみに、他の人からは何と言われますか?

>怖い、かしら?
 意外とバレエスクールでは、そういう風に思われがちね!

 曖昧なこととか、はっきりしないこと、自分がないやつ、とか、優柔不断なの、嫌いなのよ!
 まあ、自分で自分をコントロールして、ストイックに自分と戦うのが、バレエだから、
 甘い考えなんて、とっくの昔にぺこちゃんキャンディと一緒に卒業したわ!


14.有名人でいうと外見は誰に似ていると思いますか?

>ん~・・・”小雪”とか?
 可愛くいうと、仲間由紀恵?
 あ、でも、仲間由紀恵だと、目が大きいわ!
 私、切れ長なの♪
 口の大きさは、某歌手(ドリーム・・・)にも負けないわよ!


15.では、声は誰に似てますかね?
 
>自分の声と、他人が訊いてる声って違うでしょ?
 わからないわ!

16.突然ですが、今、好きな人はいますか?

>恋は歴史を変える力があるのよ?
 常に恋をし続けているわ!
 好きな人がいない時間なんて、ありえないわ、この世にそんな人、いるのかしら?
 
 もちろん、ボーイフレンド以外に、本命の好きな人はいるわよ?
 当たり前じゃない!!
 プロットは出来てるの、でも、書くの大変なんですって!
 私のイメージが壊れそうだし~っ、でも、私の”意外な一面”と、
 フランソワーズの気持ちがわかる”理由”がそこにあるのよね~・・・。
 さっさと書けっつうのうよ!
 

17.へぇ~。どんなタイプが好みなんですか?

>タイプ? 
 私が合格の判を押したオトコは全員よ!
 

18.じゃあ、食べ物には好き嫌いってありますか?

>ないけど、体資本の職業だから、”食べないもの”は、あるわ。


19.お酒は飲めますか?

>いけるくちよ!


20.動物はお好きですか?

>いじめないわ。


21.どうしても苦手なものってありますか?

>あるけど、言う必要ないでしょう。
 たかだかインタビューで、自分の弱点を晒す気ないわ。


22.その髪型や服装にこだわりなどありましたら教えてください。

>髪は、幼稚舎のころから、ロングよ。
 腰まであるわ。直毛の黒。
 バレリーナだからとか、そういう理由じゃないの。

 服装?
 普段はDKNYや、マックス・マーラーが多いかしら?
 デート服にBCBGを選ぶこともあるわ。そうね、カジュアルにラルフローレンも好きよ。


23.つい言ってしまう口癖はありますか?

>意識したことないわ。


24.じゃあ、ついやってしまう癖は?

>ヘタレをみると、殴りたくなることかしら?
 あと、すぐに頬杖をついちゃうのよね!
 顎が歪みやすくなるって言うし、体の線も乱れるから、気をつけないといけないのだけど、
 癖だから、仕方ないのよ!


25.コンプレックスって、ありませんよね?


>あるわよ? 
 それが、どうかしたの?
 踊りの世界じゃ、コンプレックスだらけよ!


26.将来の夢はありますか?

>今のカンパニーは小さいけど、古典もやるし、前衛的なものもこなすから、
 ダンサーとして恵まれた環境だと思うのよね。
 でも、やっぱり、日本は日本。
 カンパニー代表のコネクションのお陰で、海外で踊るチャンスをくださってるけれど、
 やっぱり・・・本場はヨーロッパね。
 ・・・年齢的に無理だし、ありえないんだけど、
 パリのオペラ座で一度でいい、あの舞台に立ってみいわ。
 どんな形でもいいから・・・・・。
 

27.尊敬する人物は誰ですか?理由も教えてくださると嬉しいです。

>尊敬、ねえ・・・フランソワーズってことにしておくわ。


28.貴方の周りにいる人について、どんな人か説明してください。

>ボーイフレンドたち。
 フランソワーズ、島村っち、モエモエ、旦那、弟、カンパニー関係者、友人たち。
 その他いっぱいよ!


29.貴方が一番大切にしているものってありますか?

>そうね、自分の体かしら?
 踊りには”限界”があるから、今しかできないこと、多いのよ。
 怪我しないこと、病気しないこと。
 そのためには、体がすべてよ。
 
 もちろん”愛される”ためにもね!
 ボーイフレンドたちを満足させてあげられないようじゃ、駄目だわ。


30.最後に、自己アピールをお願いします。本日はありがとうございました。

>自己アピール?
 舞台を見に来たら良いのよ、それだけよ。
 それが、私なんだから!


00.すいません、あの、ここだけの話っていうやつ、一つ聞かせてくれませんか?内緒にしますんで。


>なにがいいの? どれがいいのかしら?
 ・・・・・そうねえ、フランソワーズと島村っちは、きnおuっっ



(きゃああああああああああっっ!っと、乱入してきたフランソワーズと、その彼女の願いを断れない、方々の手によって、香奈恵さん、無理矢理インタビュー室から去る)


XX.ありがとうございました。


・・・・・・大丈夫でしょうか?
あれ、軍用機ですよね?











*拾ってきたお題で遊んでみた・・・*




*おまけっすよ!*

「ったく、あ~ぶないじゃないのっ!フランソワーズっ!」
「ヒドイわっ!!香奈恵さん、あのことは”女同士の秘密”でしょっ!!」
「な~に、言っているのよ?島村っち、男じゃない?」
「!! だって、だって、ジョーは・・・jお」
「はいはい、当事者ですものねえ、知っていて当たりまえよねえ、ねえ?ね~~~え?島村っち!」
「・・・・・何、話したの?」
「あ、の・え?な、何も話してないわ!あ、ジョー、それより、何か焦げ臭い・・・」
「・・・・ごまかすな、何をいったんだよ香奈恵さんに?」
「いろんな所で”がんばって”くれるわねえ、島村っち!いいわあ、参考になって!」
「いろんな所? がんばって? 参考になる?」
「ji・・・ジョーっ!ほら、やっぱりおかしいわ、この匂い、どこからきてるの?あなた、加速・・・したの?でも、服が・・?」
「........ああ、加速したけど、これは大丈夫。あっちが問題かな?」


3人の視線の先には・・


「いやあああああああ!!大地さんっ大地さあああああああんっ!」
「っんまああ!見事な炭っぷりね!芸術的だわ、良い仕事してますねえ、島村っち!!」
「しっかり、しっかりっ!!大地さんっ!!萌子さんと大輝さんになんて言えばっ!」

「・・・・・・フランソワーズ、あんまり揺らすと・・散っていくよ?」
「もう、いいじゃない、焦げちゃった部分アンタたちの養父に改造してもらったら?」
「そんなっ!!」
「・・・・ドルフィン号だし、それなりに整ってるから、大丈夫だけど?」
「ジョーっ!!」
「いいじゃなあああい!!やっちゃいましょ!これで大地もオリキャラから出世して、いっぱしの○ノ森キャラの仲間じゃなああい!!」
「そんなっ!!」
「008、メンテナンスルームの準備、007、手術が終わるまで、大地の代わりをつとめてくれ、006、博士を呼んできて、002、004、ドルフィンの操縦は任せた」
「ジョーっ!!本気?!」
「001、起きてる?・・・助手を頼むよ、あと、003?」
「え?!」
「キミは俺と来い」
「・・・・・え?どこへ・・???009は大地さんの助手を、するんじゃ?」
「お仕置きしないとね?」
「?」
「もう二度と香奈恵さんに話せないくらいの、”お仕置き”しておかないと」
「無駄よ!私がフランソワーズの口を割れないとでも、思ってるの?島村っち?甘いわよ!!」
「・・・・やってみないと、わからない、よ?話せない内容ならいいんだし」
「まああ!ヘタレのくせに!いいわ、お手並み拝見いたしましょ!ほら、フランソワーズ行った、行った!!」
「ええ?ちょ、あ・・・ジョーっ!!」




「ふっふ~ん、またネタが増えていいわあ♪」
「そのネタいくら?」

「あら、良い香り」
「どうぞ」
「ありがと」
「で、そのネタはいくらで売ってもらえるのかな?」
「そおねえ、この珈琲で十分よ、何から聴きたいのかしら?」


ドルフィン号の中、白と黒がイタズラに輝いた。













サイボーグ、何番になるんでしょう?大地くん・・・。
次から”サイボーグ大地くんシリーズ(笑)
web拍手 by FC2
8月20日19時53分

ドアのチャイムがちりりん。と、鳴る。

最後のお客様をお見送りした後。
ドアにかけてあるのは、兄貴お気に入りの手芸屋で開かれる、月2回のアート・ステンシル教室で兄貴が作ってきたプレートを”closed”と、ひっくり返して、オレの今日1日のバイトが終わる。



盆休みを過ぎて、浮かれていた世間が、何事もなかったかのように、規則正しい生活に戻る。


無遠慮に最高気温の記録を更新しまくった後、カレンダーの暦に合わせるかのように立秋を詠んだ日から、涼風至る。と、言う言葉の通りに涼しい風が吹くので、両手を広げてウェルカム!なんだけど、もう、涼しいって言うか、寒いって言うか!

空の調子が今ひとつなのか、熱帯夜が続かないことに感謝しながらも、夏が夏らしくない肌寒さに、不満がない、わけではない。


オレの”夏”に対する不満に、気をつかってくれたのか?
再び、ギネスブックに申請したくなる暑さが突然やってきた!

なんて我が侭な空なんだっ!
おいっ!!


ジョーより我が侭だぞおおおおおおおおおおおおおおおおっ!






「なあに?そこでぶちぶち言ってるの?!大地っそうじ!」


アイアイサ~・・・。

義姉さんには逆らえない・・・。


ん?!



カフェのドアに人の気配を感じて振り返る。
そこに・・・。

あ、が~いじ~んさ~んっっ!?


”CLOSED”の文字をじいいっと睨む、ぎょろん。とした、白目が浮かび上がって怖いです・・・・。
その眼が店の中を覗き込んだとき、視線がばっちりあってしまったオレ。



コツ、コツ。と、ドアをノックされてしまった。


オレではなくて、義姉さんがそのドアを開けた。











カフェのドアがちりりんっとなる。
どちらさまですか?と、優しく訊ねるように。


「あの・・閉店なさっていることは重々承知の上でお願い申し上げます」


オレも、義姉さんも、あまりにも丁寧な日本語を話す、精悍な青年の、物腰柔らかく、腰の低い物言いに驚いた。

オレ、日本人ですけど、そんな日本語を使ったことは・・ございませんでありまする!


「はあ・・・い?」
「ホールケーキを一つ・・・売っていただけませんか?」
「ホールケーキを、ですか?」
「はい、お願いします」


青年は困ったような表情を浮かべたまま、深々と頭を下げた。


「あの、あ、どうぞ、どうぞ、お入りなってください。閉店は8時ですから、まだ大丈夫ですよ、どのケーキがよろしいですか?」


義姉さんの言葉に、顔を上げた青年がぱああああああっと華やいだ。
嬉しげに、きらりん。と、光った白い歯のさわやかさに、義姉さんはたっぷりサービスをするんだろうなあ。っと、思う。


「ありがとうございます!!よかったああ・・・これで、フランソワーズが大人しくなる・・」
「?!」
「え?」


義姉さんに進められるままに店内に入ってきた、熱帯気候の国生まれを象徴する、太陽の香りが漂ってきそうな、艶のあるダークチョコレートカラーの肌の、青年が口にした名前に、オレも義姉さんもびっくりして固まった。


「フランソワーズがお世話になっています」


そういって、彼は再び深々と頭を下げた。


「ふ、ふ、ふ。フランソワーズさんっのっ・・・・・?」
「家の者です」
「やだあ、それならそうと、言ってくだされば良いのに!」


急に馴れ馴れしいっすよ、義姉さんっ!!


「いえ・・・彼女の名前を出してお願いする事は、違うと思いましたので・・・・」


苦笑する、青年は・・・よくよく見るとオレとそんなに代わらない年齢にも見えた。
ってことは・・・


「それじゃあ、島村っちさんとも・・?」
「島村っち…?ああ、ジョー!ええ、ジョーもそうですよ」


聞き慣れないジョーのニックネームに、きょとん。と、何度か瞬きを繰り返してから、にっこりと微笑んだ。

きら~ん☆と、光る、白い歯・・・は、さ、さわやかですね。



「ジョーも、フランソワーズも、僕にとって、大切な、大切な弟、妹なんです。2人が本当にお世話になってます・・・・。彼らから話しを聴いていて、近くご挨拶にうかがわなければ、と”兄弟”たちと話してはいたんです・・・けれど、なかなか、みなそれぞれに忙しく・・・。あ、ご挨拶が遅れて申し訳有りません。僕はピュンマと申します」


ピュンマ。と、名乗った青年は姿勢をただして、深々と、ふかぶか~~~~~~~~~~~と、頭を下げるので、義姉さんとオレは慌ててしまった。


「そんなっ!こちらこそ、フランちゃんには御贔屓にしていただいて、それに島村っちさんには、この愚弟が大変、大変、た~~~~~~~~~~~~~~~~いへんっお世話になってるんです。あの、私こそ、名前も名乗らずに..井川萌子と申します。いつもフランちゃんが来て下って、私本当に嬉しくて、ありがとうございます」
「そういっていただけると、・・・・、今後も2人がご迷惑をおかけするかと、思いますが、弟妹とどうかよろしくおつきあい願います・・」
「こちらこそ・・・」


・・・・・・・・。




義姉さんと、ピュンマさんの2人は頭を下げ合って・・・浮かんできません。













「あの、ケーキは・・・どれにします、か?」


オレの呟きに、2人はやっと顔を上げた。





「・・・フランソワーズは夏風邪をこじらせてしまって大人しくしていないといけないのに、ケーキがないとお誕生日じゃない!って、キッチンに立とうとするから・・」


ピュンマさんはが選んだのは、うちの兄貴が留学した先で初めて”賞”を得たオリジナルケーキ、そして、この店の名を持つ”Audrey”。



「ここのケーキだったら、納得して大人しくベッドで寝ているだろうと思って、慌てて来たんです」
「フランちゃんのお加減、いかがですか?」
「ご心配していただくほどの、じゃないんです。・・・大事を取らせて、と。・・・ジョーがレースを放っぽりだして帰ってきそうな勢いだったので、彼女には、たとえ”風邪気味”と言えど、しっかり治して欲しいんです、けれど・・・。ケーキを作るって、意地になってしまって」
「そのケーキって、この間ウチの主人に色々訊ねていたことに、関係があるのかしら?」
「スペシャルなレシピを教わったの!って、張り切っていましたから、彼女」
「今日、どなたかの・・・お家の方のお誕生日ですか?」
「・・・・・はい」


ピュンマさんは、照れるような、可愛らしい微笑みを見せた。


義姉さんは、白箱にケーキを包み終えて、細い金のリボンで結び終える。
そして、ピュンマさんに訊ねた。

「フランちゃん、ピュンマさんにはいつもどのケーキを選んでいるのかしら?」
「”出会いはきっとレモンパイ”です」


さらり。と、彼は答えた。



似合いすぎて、オレは・・・・何も言えない。









すると、義姉さんは、1つ。それをショーウィンドからとり、同じように、いくつかレモンやキーライムを使った、ケーキと焼き菓子、・・・・と、フランソワーズさんのお気に入りの、”恋の始まりはアップルパイ””七つの恋のタルト・季節の予感”を箱に詰め始めた。


「あ、あの・・?」
「お誕生日おめでとうございます。ピュンマさん、これは当店からのお祝いですので、どうぞお持ち帰りください。あと、フランちゃんへのお見舞いですから」



え、ええ?!


誕生日って・・!

ピュンマさんっ?!





「でも、そんな・・・」
「フランちゃんと島村っちさんのお兄さんですもの!私たちもお祝いさせてくださいね」


義姉さんの言葉に、困惑しながらも・・・ピュンマさんはオレたちからのプレゼントを受け取った。









ドアのチャイムがちりりんっとなる。

HAPPY BIRTHDAY PUMMA!




今度はぜひ、フランソワーズさんと(ついでにジョーもつけて)いらしてくださいっ!
そして、その爽やかさの秘訣を教えてくださいっ!!



・・・・・・なんなら、ジョーの秘密でも・・こう、ジョーの弱み系をひとつ。
あ!それよりもっ!!


フランソワーズさんのっ何かっ!!





「何かってなんですか?」


きらり~ん☆と光る白い歯が・・・妙に怖い。
あれ???オレの頭の中の世界なのに・・・・・。






end.









・あとがき・

自分の誕生日ケーキを自分で買う男、それは8!

・・・8月21日だったんですね。

し、知りませんでしたあああああっ!!
遅れてのUPでごめんね。8!


しかも、お誕生日ケーキを買いに行かせて・・しまって。
ごめんね。

でも、ほらあ・・・ケーキをつくるううううう!ってフランちゃん、
げほげほしながらキッチンに立つから・・・兄としては、
そんな妹を放っておく事できないですからね!




大地くんのところには基本9、3以外は出さないルールなのに・・・。
いくつか設定したルールを破っていく私。

ここに出すときは、9と3とは関係ない、彼らと大地くん。も面白いかも。
あ!・・・妄想がっ
web拍手 by FC2
Day by Day・70
(70)






「・・・わからない。のですね?・・・自分でも、自分が、自分をどうしていいのか、もう・・・わからないのでしょう?」


闇の中から、涼やかに、愛らしい、声が秀顕の耳に届き、青年の背後に隠れた闇に染まったまま、顔が判別できない青年の肩をすり抜けた、間接照明の光に色濃くした蜂蜜色の絹糸がかかる肩だけが秀顕の視界に捕らえることができた。


そして、その声の人物に興味をもつ。


「・・・女の、サイボーグか」
「003?」


擦れた声で、囁くように彼女のコードナンバーを読んだ、009。






「あなたは、幸せですか?」


秀顕は、今までの会話から検討はずれの内容の質問に、嗤いを浮かべていた顔がそのままに固まった。


「いつですか?・・・あなたが”幸せ”を感じたときは、いつですか?今日ですか?昨日?・・・・・・・もう、思い出す事もできない遠い昔・・・ですか?」
「・・・」


秀顕は、一瞬何を訊ねられているのか、涼やかな声が語る言葉が同じ日本語であるか、どうかさえも判断することさえ難しく感じるほど、その声の内容に、どう返答して良いのか分からなくなり狼狽する。


009の目にも、秀顕の狼狽ぶりははっきりとわかる。






「・・・朝起きてからすぐに、カーテンを開けて、晴れた空を見上げるんです。・・・それが、曇りの日でも、雨の日でも・・・。見上げる空のご機嫌を伺う事から、1日が始まる・・・・そして、波の音を聞いて、窓を開けたら潮の香りが気持ちよくて、ときおり雨の香りが含まれる事もあるし、遠くの・・懐かしい香りもある。


・・・毎朝作る甘くしたカフェオレが、エネルギーをくれる。

早めに起きて作った少しだけ豪華にした朝食を喜んでもらって」




淡々と、003はギルモア邸の”フランソワーズ”の1日を語り始めた。



秀顕は混乱する。が、003はおかまいなしに言葉を続ける。
009は、振り返って彼女をみつめた。
暗い闇に立つ彼女でも、暗視モードに勝手に切り替わる眼は、しっかりと003の表情(かお)を見ることができた。


009の視線に、ギルモア邸で見るのと変わらない、花が咲くように明るく愛らしい笑顔があった。
視線が009と合ったがために、途中言葉が途切れる。


その間を、秀顕は態勢を整えて003の言葉が続く前に、彼の口から言葉が発せられた。


「いや・・・参った・・・・・。声の感じからするとお嬢さん。と、言う感じがするんだが、ねえ・・・お嬢さんはいったい、何がいいたいのかな?ここへはあなたの日記でも読み上げるために、いらしてくださったのかな?私としては、いっこうにかまわないんだけれど・・・・やれやれ、驚かされた。ああ・・・驚いたよ。本当に驚いた!」


声を張り、秀顕は003に向かって驚きと感嘆のまじった言葉を口にしたが、彼の表情は明らかに彼女を嘲戯を浮かべた目で捕らえている。


「・・・・・驚くような、こと・・ですか?」
「お嬢ちゃんは、もうお休みの時間じゃないのかねえ?・・・・なんなら私が寝物語でも読んで差し上げようかねえ」


幼い少女に話しかけるように、言葉の速度を大げさにゆるめ、003へと話しかえた。


「・・・・どんなお話をしてくださるのかしら?」
「どれがいいのかなあ?・・・シンデレラ、白雪姫・・・・幸せに王子様と出会うのがいいかねえ」


嘲る嗤いを口元に含む、秀顕。


「いいえ、私が聞きたいのは、あなたが幸せな時の、あなたが、毎日をどのように生きて、どのように感じて、春を夏を秋を、・・冬を・・・巡る季節に、あなたが、あなたらしく感じてきたことを、お聞きしたいわ」
「・・・・なんだ、それは?」
「あなた自身のお話がお聞きしたいのです。霧の中に立つあなたではなく、晴れ渡る青空の下に立つ、あなたの本来のお話を”篠原秀顕”のお話をしてくださいますか?」
「・・・・私の話しかね・・・・、今までずっと語ってきたんだがねえ・・・お嬢ちゃんには難しすぎたかな?」
「いいえ、あなたは一切、あなたのお話をなさってません」
「・・・おや、そうかね?」
「ええ。そうですわ・・・・・B.Gでもなく、N.B.Gでもない、スカールも、ボグートも、・・・他の方のことについては、たくさんお話くださったのですけれど、肝心のあなた。を、お話しくださってません。だから、私からあなたを知るために、あなたが”今回の目的”をお話されるきっかけをさしあげたんですのよ?」
「それが、お嬢ちゃんの・・・日記かね?」
「・・・霧の中に隠れておしまいになったままでは、話しになりません」
「・・・・・・どういう意味かな?」
「夢想されるのは、もうお止めになって。・・・他人の夢や希望、願望、欲、”目的”を自分のこととすり替えてしまうことは、お止めになってください」
「うぬ・・・確かに少しばかり”調子に”乗ってしまったかねえ」
「あなたは、あなた自身がわからないのだわ・・・あなたは、生きているのに、生きていないように見える・・・何も感じていない。あなたがおっしゃる言葉で言えば、あなた自身が人としての”個”を放棄したように感じます、だから・・」


003は言葉をきり、ひと呼吸置いた間に、自分を見守ってくれている009へと視線をむける。
すると、彼女に言葉を続けるように。と、言う意味をこめた仕種で、力強く、頷いた。
003が再び、秀顕に話しかける。

その間、彼は001の能力を通して、各地で動いている仲間達と脳波通信で連絡を取り合う。



「あなたは幸せですか?」
「お嬢ちゃんは幸せかね?」
「あなたは、何を求め、誰のために・・・、ここに、いるの、ですか?」
「お嬢ちゃんは何を求め、何を目的に、誰のために、そんな躯になってまで生き続けているんだね?」


オウムのように、フランソワーズの質問を聞き返してくる秀顕。

腕に抱いている、イワンを抱きなおし、そっと頬をすり寄せると、イワンはそれに答えるように、小さな白い手をのばし、フランソワーズの顎先に触れた。


「あなたは誰ですか?」
「お嬢ちゃんは誰だね?」
「・・・・私は、フランソワーズ・アルヌール。プロトタイプ・サイボーグ、コードナンバー003」


篠原グループ本社にある、秀顕の私室に姿を現した、奇妙な紅の服、緋色のマフラー。
見慣れないデザインに、膝を覆う黒のブーツが、大きく一歩前に出た。

落ち着いた濃紺色の空に星はなく、代わりに地上の人口の星が眩しいほどの溢れている。
秀顕の私室のウィンドウには、空と地上が逆さまに映っていた。



「・・・・・あなたは誰、なの?」

















####

ギルモア邸のリビングルームで、4つのカップが珈琲の芳しい香りで包む。


当麻は落ち着きなく、何度も壁時計と、大型液晶薄型TVが移しだす臨時ニュースへと視線を彷徨わす。
さえこは携帯電話を手に、様々な方面からかかってくる電話に対応しているが、1個の携帯電話では間に合わず、ギルモア邸にある電話の子機、当麻の携帯電話を使い指示を出していく。

テロの可能性を報告され、警察が、政府が、本格的に動き出す前に、ある筋を使って”圧力”をかける。と、ギルモアに告げたのは、数時間前。


「君のお母さんはすごいねえ・・・」
「・・・・仕事している姿は、初めてみます」
「なに、見た事なかったのかね?」
「・・・・・さえこさんは、僕の前では年に一度の、パーティの場以外、絶対に仕事をしている姿をみせませんでした、から」


さえことは距離を取り、ギルモアの座る安楽イス近くに座る当麻。


覚悟を決めて、さえこに聴くべき事を訊く覚悟で、さえこから提示さた書類に眼を通していたが、途中、ギルモアが慌ててTVの電源を入れたことから話しが中断したままの状態だった。


「すまんねえ・・・」
「え?・・・どうして謝るんですか?」
「うちの息子達は、どうやらこの騒ぎを事前に防ぐ事ができんかったようじゃ・・・」
「そんな・・・」
「今回はちと、色々と息子達のプライベートな気持ちも混じっておって、その上・・・・ここに定住することを決めた日から穏やかな日々が続いておってのう。・・・・儂のミスじゃ」
「でも・・・そんな、テロだって言ってますし、彼らが爆破したわけでもないんですよ?未然に防げなかったのが彼らの、ギルモア博士のせいだなんて・・・」


ギルモアは、当麻の言葉にふっと口元で微笑みながらも、その瞳は悲しみと後悔の色を漂わせながら、珈琲カップを手に取り、ふうっと息を吹きかけた。

ギルモアの作った風に、湯気が大きく傾いて、再びもとの位置へと戻って来る。


「・・・ギルモア博士、今回の事をすべて父に責任をとってもらいます。・・・もともと四友内には篠原の傘下に反対する勢力もありましたし、何かと小さな衝突も絶えず、”脅し”や”脅迫”のようなもの続いていました、それらを秀顕の横暴な方法でグループ拡大による摩擦が生んだ、と。四友が関係している”組織”のいきすぎた行動として扱います。はったりじゃなく、実際に彼らはそういう場所に出入りしていましたし、元々の社長が行方不眼になる前も、相当危険なことをしていたようですしね。これを全面に出して、篠原グループからの排除。けれど、”提携・協力”企業として和解。と、言うシナリオをたてます。学院の方ですがもともと、”解体”する予定だった旧校舎ということで・・・。学院自体、人家から離れていますし、まだ学院へはマスコミの手が届いていない今ですから、問題ないと思います。もしものときは、同じように、扱う予定ですが、そのときは関係ない”学生”たちを巻き込んだ。と、言う事で、世間を大きく見方につける事が出来るので、マイナスになるのは四友、篠原は表向き手を切るので、そうそう影響はないでしょう」


立ち上がり、子機を飾り棚の上にある充電器の上に戻して、再びソファに腰を下ろした。


「学院よりも”四友”の方が派手じゃからのう、学院よりもそちらの方が話題性もあるからして、しかし・・・大丈夫かのう?」
「そのための”繋がり”ですもの・・・。普段、それなりに楽しんでいただいているんです、ここでしっかり動いてもらわないと、今後”篠原”の援助が消えてしまうことでしょうね?」
「ふむ・・・して、でかけるのかのう?」


ギルモアは、リビングルームの端で、床に直接座り、彫り物をしていたジェロニモへ視線をむけた。


「会議を開かなければなりません・・・。父のこともありますから、これを機に、篠原内も大掃除します」
「・・・・答えが出たんじゃな?」
「そうしむけたのは、そちらのリーダーさんよ?・・・もしものときは、彼に責任をとってもらいますから」
「ジョーに?」
「ええ、しっかりと。・・・結婚を理由に引退って言うのが女性の逃げ道ですから」
「っ!?」
「さ、さえこさんっ?!」


2人の驚きなど気にも留めず、さえこはジェロニモを見た。


「あなたが私の護衛になるのかしら?」
「・・・1人の行動は危ない。・・・博士、息子、津田海も一緒に行く事になる」
「私1人でも平気だわ」
「009に訊く」


ジェロニモは、手に持っていた木彫りを広げていた新聞紙の上に置き、ナイフの刃を鞘にしまう。


「訊くって・・・」
「今の、彼らには001のサポートがあるからの、問題ない」


当麻はギルモアの言葉の意味が分からず、ジェロニモとギルモアへ交互に視線を向けた。
ジェロニモの大きな躯がフローリングの床から離れる。


「・・・今、篠原本社に行く事、進めない。会議を開くなら他に行けと言っている・・・次の爆破予定は本社だ」
「?!」
「なんと・・・」
「そんなっ!本社には夜も人がいるのよっ?!」
「・・・場所を変えるんだ。後は009たちに任せる」
「そんな・・・・」


珈琲テーブルの上に置いていた、携帯電話を手に取ると、素早く記憶している番号を押した。


「どこへ電話している?」
「父よっ」
「なんのために?」
「こんな馬鹿げた事っ」


ジェロニモはその巨体からは考えられないような素早い動きで、さえこの手に、大きな手を重ねて彼女の手の中にある、携帯電話の通話ボタンを押す事を妨げた。


「無駄だ」
「離してっ!!」
「・・・もう、彼は人間じゃない。あなたの声は届かない・・・手遅れだ」

















####

「002、どうアルネ?」


月見里(やましな)学院に来ていたのは、002、006の2人。


「・・・人が集まってきやがった。ここから離れようぜ、爆破されたのが地下だけだったおかげだぜ、”地震”ってことでカタつけられんじゃねえか?建物自体、大分古lかったしよお、それらしい”言い訳”ができんじゃね?」
「爆破止められなかったのは、009に申し訳ないアルヨ・・・」
「仕方ねえだろ?こればっかりはよお。オレたちはただ”地下の確認”と、”サイボーグ関係の資料”の回収、廃棄”に来ただけだぜ?まさか向こうさんが”爆破”するなんて、誰が予測してたんだっつうの?オレたちだって爆破に巻き込まれなくてよかったぜ!んで、・・・・・・・ああ?火災ってことにすんのかよ?」
「まかせるアルヨ!・・・002は消防車を呼ぶアルネ」
「旧校舎自体を”老化した木造建築”の自然発火。で、なくしちまうってよお」


2人は001を通して遠方にいる、009と脳波通信でやりとりする。


「それがすんだら、・・・・ああ。わかった・・・」
「ギルモア邸に戻るアルカ?」
「あっちに人手がいるみてえだな!」


数分の後、爆破の余波で揺れた大地に表へ出てきた週末の学院内に残っていた関係者および生徒たちの目の前で、藍紺色の空にくっきりと浮かぶ下弦の月が、燃え上がる旧校舎の炎を冷たく見下ろしている。




















「002と006は、・・・ギルモア邸にむかったかあ・・・」


007は004、008と行動していたが、今は1人、その姿を変えて石川斗織が運ばれた救急病院の、手術室前にいた。


「今あっちへいっちまったら、絶対後悔するぞお?逃げるんじゃない。ちゃんとここに戻ってくるんだ」


無機質な白いドアの向こう。
007が唯一、眼にしているのは赤いランプが灯る”手術中”の文字。


「009、知らせなくて本当いいのか?・・・・婚約者なんだろ?」


口に出す必要はないのは分かっているが、つい自分の声を確認するように言葉を空気に触れさせた。


「確かに・・・そうだけどよお・・・・・。ここんとこ、ずっと見てきたからなあ・・・・、淋しい人間なんだなあ、この石川って男は・・・・・」


007は若い時代の自分と、石川の感じている”淋しさ”に似通った部分を見つけているために、同情的な感情が強くなる。


「・・・・・・天才とは、人に理解されにくいもんよ、受け入れられても、それを活かしきれない自分と、周りの歯痒さ・・・強い精神力がねえと、自分の才能に溺れて自分を見失っちまう」


全身の空気を吐き出して、廊下の壁に置かれたhか色のふかふかとしたベンチに座り込んだ。


「吾輩は、ここに居ていいのか?009」

















「004、・・・僕たち」
「ああ、間に合わなかったな」
「人が来るよ」


燃え盛る炎が生み出す熱風に顔を歪めながら、四友工場内に侵入した004,008は、爆破された場所とその損害規模を確認する。


「わかっている・・・起爆は」
「時限式じゃないよ。起爆装置は大分前からセットされていたみたいだけど」
「ここにあった物は全部、灰となる、か・・・・・」
「・・・この工場は、たしか・・」
「ああ、地下帝国へ行く前に009と003が偵察に来た場所だ」
「・・・・・・そしてジョーの」
「施設時代の友人が、改造された場所だったのかもしれんな」
「あのとき、どうして見つけられなかったんだろう?」
「・・・・オレたちも余裕がなかったんだろ?」


004は踵を返して歩き出した。


「もしかして」
「もしかして、なんだ?」


吹き荒れる炎を見つめる008へと振り返る。


「これが、本当の意味でB.Gとの最後じゃないのかな?・・・・日本へ来たのも、日本に定住する事を決めたのも」
「こうなることが予想された、オレたちの運命っていうのか?」
「偶然だとは、思えない」


008は、自分たちの躯の中にある技術を燃やしていく炎を背に呟いた。
004と並び、歩き出す。


「008、偶然じゃない・・・・オレたちは、誰だい?」


008は足を止めずに、004を見た。







どおおおおおおおおおおおおおんっっと爆発音が背後で叫ぶ。
爆風の熱に背を押されながら、答えた。


「サイボーグ・・・・戦うために改造された、プロトタイプ」
「そうだ。ここが、オレたちの生きてきた世界だ。そしてこれからも・・・・・。だからこそ、どんなに小さな命でも、短い時間でも、誰よりも強く、誰よりも深く・・・平和を感じ、求め、生きて行けるんだろ?本当の意味で、知っているんだからな”平和”とは何か」


「004」


彼独特な左口角を上げて、嗤い、背後を振り返る。


「これ以上被害が広がらないようにする、手伝え」
「了解!!」














####





「これは、・・・これは・・・・・・・・・お嬢ちゃん、では・・・・・・、失礼だったねえ」


部屋の間接照明が置かれているのは、秀顕が座る、モダンなデザインのソファ近くの1つのみ。
天井に向かって装飾が施された、ツイストされた円柱のデザインは、朱のベネツィアングラスで作られている。薄くのばした、クレーブス・カラーの光に姿を浮かべる者の美しさに、秀顕は感嘆の声を上げた。


「・・・・・あなたは誰、なの?」
「いやはや・・・B.Gの美的センスを疑ってきた人生だったが、さすが、アイザック・ギルモア博士と言ったところかねえ?」


こぼれ落ちそうなほどに大きな瞳の碧が間接照明の色に染まりながら、瞳を潤わせる幕にきらり、きらりと光を放つさまは、宝石のようにみえる。その宝石を縁取っている睫は長く、しっとり規則正しく並び、頬に影を指し、ふっくらと色つやよい頬は芸術的なラインを描いて顎へと続く。
自分に語りかける言葉を紡ぎだす唇は、艶やかに形よく、彼女の真剣さを表すようにきりりと結ばれていたが、それがよけいに人らしさを遠ざけているように感じる。


「・・・あなたが手術を受けたのは”両足”だけではありませんのね?」
「話しが飛ぶねえ?サイボーグと言えど、やはり女性なのだねえ?」
「私には”視”ることができるんです・・・」
「何が見えたのかね?」


秀顕は足先からじっくりと値踏みするように、003を見る。



<009・・・彼の改造は”足”だけじゃない・・・。改造されていたのは・・・頭部も。躯は足以外生身だけれど、彼には補助脳があるわ・・・爆破の遠隔操作もできるのは、私たちのような脳派通信と類似した脳波によって。簡単な電子信号を、電話をかけるようにして送って・・・>


「・・・まあいい。それよりも、質問に答えてあげよう、美しい003、いや、フランソワーズかな?・・・私は誰か?・・・名前は”篠原秀顕”と言うのがあるが、それは”個”を識別するための”記号”でしかない。そう、君たちのコードナンバーと同じ物だねえ?」


秀顕の言葉を耳にしながら、フランソワーズは囁く。


「・・・009、彼はもう・・・・・」



<人ではないと、思うわ>


003の眼に見える、彼の頭部。
001はもう、きっと気づいている。

それを、なぜ009に報告しないのか、003は疑問に思っていた。
001には、001の考えがある。

腕に抱く小さな超能力者は、自分たちとは違う次元で物事を見ているのだ。


<・・・・人でない、か>
<私たちの物と、違う・・・ように見えるわ>
<僕たちのものとの違いは・・・”人工知能(Artificial Intelligence)チップが内蔵されていること・・・だ>
<・・・?!>


003は009へと振り向いた。
金糸のような髪が、彼女の動きにさらり。と、なびく。


彼女の瞳を見ながら、静かに頷く。


<・・・話しを訊きながら、001がチェックしていた・・・・キミとの会話で完全にそうであることがわかった・・・・>


ここにいるのは、夢想の霧が生み出した、幻影。







「・・・人口知能が過去の”篠原秀顕”氏をベースに作り上げた人格」






生身の躯に、人工脳。
人工の躯に、自然脳。






「彼が、N.B.Gのソースコードなんだ」










====71へと続く



・ちょっと呟く・

もうちょっと!
もうちょっと!

もうちょっとだっ!!




web拍手 by FC2
Day by Day・71
(71)







魔神像の中で見た、3つの脳と対峙したときの景色が、009の脳裏をよぎる。

彼らは生身の脳だけで生きていた。

秀顕氏は・・・生身の脳を人工知能(Artificial Intelligence)に支配されている。
ここにいるのは、彼であって、彼でない・・・・。


本当に、完全に支配されてしまっているのだろうか?

009は、視線を003の腕に抱かれている001へと送る。多分、001はに009の音にしない声が聞こえているはずであるが、彼は答えるつもりはないようだった。





人工知能は、人間的情緒をデータとして持ち合わせていなかったのかもしれない。


001から視線を秀顕に移し、彼の様子を窺う。




人工知能(AI)は、フランソワーズの問いに答えることをさけた・・・ように感じた。
それとも、これが当時の人工知能(AI)限界だったのか?
もしくは、そんなものなど必要ないと排除していたのかも、しれない・・・・。

彼自身は生きているのだろうか?


003の会話を聴きながら、微かな期待を込めて秀顕氏のそれらしい反応を探していた。










「彼が、N.B.Gのソースコードなんだ」


秀顕は、そう言った僕を嬉しそうに見た。



















これも・・・魔神像計画の・・・1つだったのかもしれない。
いや、だったんだ。







N.B.Gのソースコードは、秀顕氏の補助脳の中にあり、人工知能(AI)が”あるもの”をベースにして作り上げ、それは彼の手から離れて、B.Gは広い電子世界へと放たれる、放たれてしまった・・・・。


「合い言葉はN.B.G(ネオ・ブラック・ゴースト)」














秀顕氏は、人工知能(AI)は、役目を終えようとしている。
彼の最後の仕事は・・・地上に残るB.G痕跡の削除だろう。







僕たちを含む?

いや、僕たちの存在が、発動の鍵だったんだ。

当時の僕たちは、篠原秀顕氏まで手を伸ばすことができなかった、から。
その存在すら、確認していなかった。





「言っただろう?私はB.Gではない、と。けれどもN.B.Gとも言い切れない。なぜなら、私は違う。と、自分が主張しているからだ。目に見えない電子世界で、自己の主張を失えば、”それ”だと言う情報を失ってしまうからねえ」








トーマス・マクガー、石川斗織、篠原さえこ、津田海、恩田充弘、クラーク・リンツ、久保絵里子・・・たちを繋いでいた糸の先にいたのは、本物の”マリオネット”。


篠原秀顕、と言うマリオネット。



・・・・糸ではなく、
彼を操るのは、糸ではなく、・・・・・・・B.Gの作り出した科学。

僕たちの躯の中と同じもの、だ。









彼を操る糸の名は・・・発達しすぎた、神をも恐れない科学技術。
人の手を離れつつある・・・新しい神(科学)かも、しれない。







009は、秀顕から視線を外さずに、001に語りかけた。







そうだろう、イワン。
僕たちと言う存在が、作り出した・・・・。


いや、僕だ。











<・・・・009。君ハ知ル必要ナイ情報ダヨ>



もうすでに、わかっているんだね、001。










<知ッタトコロデ、過去ハ変エラレナイ>



わかっている、よ。
それでも、僕は知る権利があるんだ。





<・・・・・・知ッテ、何ニナルノ?モット苦シムダケダヨ?>



それでも、僕は・・・・知っておくべきだと思う。





<・・・・秀顕氏ノ脳ノ手術ハ、彼の両足ト一緒ニ行ワレタ。実験ハ、AI機能ヲサイボーグ計画に組ミ込ムカ、ドウカノ タメ。ぎるもあ博士ニヨッテ、ソノ案ハ却下サレタ。博士ハ さいぼーぐニスルカラコソ、脳ハ、個人ノ生マレ持ッタ人デナクテハナラナイ。ト、考エテイタカラ。・・・・秀顕氏ハ、自分ノ脳ニアル人工知能ガ形成シ始メタ 自分デナイ自分ヲ恐レテ、ぎるもあ博士ニ摘出手術を願イ出テイタ。彼ハ知ラサレテイナカッタが、知ッテシマッタンダ。優秀な”補助脳”ノデータ”ニヨッテネ。・・・・両足ヲ手術シタノハ、とーます・まくがーダケド。補助脳は・・・ぶらうん博士ダカラ。ソノ彼ノ跡ヲ継イダ、ぎるもあ博士ニシカ、当時ハ無理ダッタンダ・・・。彼ガ言ウ”通イノ ねっとわーく”トハ、彼ノ人口脳ガ、B.Gガ飛バシタ人工衛星Artificial Satelliteノ事・・・。彼ガ送受信スル電波ヲ追ウコトデ、ソノ存在ヲ 確認デキタ・・・・・。魔神像カラノ連絡ガナイタメニ、彼ノ人工知能(AI)は、独自に持ッテイタ、ソースコード(Source code)を複製、修正書キ換エヲ行イ続ケ、B.Gノ人工衛星ヲ使イN.B.Gヲ作ッタ。>



優秀だ・・・。
誰もここまで”彼”がするなんて、予想できなかったんだろうね。







<B.Gハ第二ノ基地トシテ、電子世界ヘト移ス基盤を、秀顕氏の補助脳ト人工知能(AI)ニ。1人ノ”人”ニ委ネルコトニ・・・・デモ、ソレハ・・>



遠回しな言い方をするね?
委ねたのは、1人・・・じゃないだろう?






<・・・・・・・コノ計画ハ元々・・・、君ガB.Gニ”存在”シテイテコソ、本当ノ意味デ”完成”サレル予定ダッタンダ。009ノ>



秀顕氏が作り出した、ネットワークはもともと、その人工衛星が用意していた、そうだね?




そして

本当の

”サイボーグ009”の完成

は、


そこにあったんだろう?










<アクマデモ予定ダッタンダ。ソシテ、ソレハ早イ段階デ計画倒レトナッタ>



放り出された、中途半端な計画になったのは、僕が裏切ったから。
僕が・・・秀顕氏を人でない人にしてしまったんだね。


魔人像は宇宙(そら)から発信し、受信する僕は、彼らのために実行する・・・地上に降り立った、殺戮だけを繰り返す、破壊の・・・・・・駒だ。





秀顕氏は・・・僕と魔神像を繋ぐために存在した。
訪れる事がなかった未来のために存在した、僕のためのソースコード(Source code、ソースプログラム)。
















世界には、殺戮と恐怖を繰り返すだけの、未来があった。

一つは、電子世界から。
一つは、宇宙から。

一つは、僕の手で。












<博士ノ手ニヨッテ、初メノめんてなんすデ009の補助脳カラ、ソレラニ関スルデータ、端末類ハ摘出サレテイル。君ノセイデハナイ。全テハ、ナルベクシテナッテシマッタ流レ・・・・・。君ガ裏切ロウガ、ソノママB.Gニ残ッテイヨウガ、秀顕氏ハ・・・仕方ガナカッタンダ。朽チタ計画ノ残骸デシカナイ。過去ハ過去ダ>


それでもイワン。
僕という存在が、今日を、”今”を作り出したんだよ。
そうだろう?


その証拠に、彼は”僕”を確認して、・・・彼は彼なりに色々な人を巻き込んで、・・・見事、僕をここに呼ぶことに成功した。


そして、計画の一端であった、電子世界にN.B.Gを、作り上げた。










僕と言う存在が、今を作ったんだよ。













「001、003とここを出るんだ」




<彼を解放するには、どうすればいいんだい?・・・開頭手術を施しても、脳障害が残るかもしれない上に、彼の肉体的年齢はその術に耐えられるだけの体力はないだろう。・・・・・・・僕はすでに、彼の補助脳、AIとコンタクトを取るための端末を摘出されてしまっている・・・。彼は必死で探しているんだろうね?・・・・彼にまだ”魔神像”のプログラミングが残っている限り、僕と接続するために、送りつけている電子信号とかあるんだろうけれど、もう、それを受信する事はできないから>
















####

004、008の2人は、篠原本社ビルの南口非常階段のドアに身を潜めて、007と合流する。002、006は、005とギルモア邸にて合流し、006が篠原さえこの護衛につくことになり、ギルモア、篠原当麻、津田海の護衛は引き続き005が引き受けた。


004が苦々しく舌打ちをつき、彼らしくなく苛ついていた。
先刻から、どんなに通信を送っても、本社内にいる001、003,009と連絡がつかない。

001の手助けがなくとも、脳波通信は届く範囲にいるにも関わらずである。


「こういうのだな、”嵐の前の静けさ”って言うのかもなあ・・・・様子を見に行った方がいいかもな」


007は石川斗織の手術が長引くことを、手術室から出てきた看護士に聞き、一時的に004、008と合流しているため、自分の役目がないのならば、再び石川のいる病院へ戻る予定であった。


そこへ、突然001を抱いた003が現れた。


「っ!」
「ありゃああああっっ?!」
「003っ!!」


聞き慣れた3人の声に、003の顔が一瞬で青くなる。
最後に耳にした言葉を思い出し、腕に抱く001を見た。


「001っ009はっ」


そして、003の脳裏をかすめるのは、1度味わった事がある・・・感情が胸を押しつぶす。


<ダイジョウブ。・・・・前ミタイナ事ニハナラナイカラ>


001の003にたいする返事に、そして、一緒に本社内にいたはずの001と003だけがテレポートして、自分たちの前に現れたことから、004,007,008の胸中にも不安が、過去に味わった苦みが甦ってくる。


「説明しろ、001」
<・・・・009ノ命令ダカラ>
「そんなの、理由にならないよっ!!なんで009だけ残ってるんだよ?!」


001は003の腕の中から離れ、力を使って宙へ浮かび、4人と対峙した。


<じょーガ最後ノ、ソシテ、009デアルカラ、仕方ナインダ・・・>


















####

「・・・・手品かね?」
「・・・」


009が001、003に向かって命令した瞬間に、001を抱く003は瞬きをする間もなく、その姿を秀顕の前から消した。


「君たちは面白いものをたくさん見せてくれるんだねえ、飽きないよ、いやあ、いい暇つぶしになった。十分に遊ばせてもらったよ」


何を見ても、聴いても、動じない秀顕。
彼の物言いや態度は、人を見下したような、嘲るようなものだ。

しかし、それしかできないのかもしれない。
それが彼の持つ、人工知能(Artificial Intelligence)の限界なのかもしれない。もしくは、本来の秀顕氏が、そういう人間であったのか、今はもう、確かめようがない。

009には、今、目の前にいる篠原秀顕が、人工知能なのか、”秀顕”氏がそこに残っているのか判断できない。
009ではないく、島村ジョーが、判断できないでいた。

009はすでに”答え”を出している。







ジョーはおもむろに、ベルトのホルスターへと手を動かし、スーパーガンを手にした。


「面白い物をもっているねえ?」


一歩前へ踏み出す。と、同時に、彼は秀顕の前に立ち、スーパーガンを彼の胸へと突きつけていた。



「おやおや・・・君もなかなかの顔をしていたんだねえ?・・・B.Gのセンスを見直してやらなければならんなあ」



胸につきつけられている銃、を、見ても、その感触を知っても・・・秀顕は変わらない。
恐怖。と、言う言葉を知らないかのように。


「・・・・君は何をしようとしているのかな?」
「パラライザーの設定をmaxにしています・・・・・心臓に直接打ち込むことで、・・・・心停止する。たとえ遺体が解剖されたとしても、誰も気づかない。あなたの年齢から言って、誰も疑わない」
「ほお、そんな便利なものがあるとはねえ」
「・・・・あなたは誰ですか?」
「君は、誰だね?」


秀顕は、まっすぐに009を見た。


「プロトタイプ・サイボーグ・・・コードナンバー009・・・島村ジョー」



















秀顕=人工知能(Artificial Intelligence)が、補助脳をフルに作動させた、が。
目の前にいる”サイボーグ”へ送った特化電通信にたいするレスポンスがない。
そして、アクセスする予定であった端末をみつけることができない。


さきほど、003と名乗ったサイボーグも同じだった。


プログラムされている、パートナーとなるべき”サイボーグ”を見つけたはずだった。
見つけ出さなければならなかった。






見つけることが、目的。









ミツケルコト。













ミツケテ、ツナガリ、完成。

















カンセイ。
カンゼン。

完全体。





ソウダ。
オモイダシタ。

ワタシガ、cyborgニ サレナカッタ reason。











「あなたの目的は・・・?」
「完全体に、なること・・・だ」








カンゼンタイ。


完全
かんぜん
カンゼン
perfection、Vollendung、perfezione、perfeccion、perfeicao・・・・



カラダナド イラナイ。






体が土へと還り、朽ちても私は生き続けられるからだ。
パートナーとなる”サイボーグ”の中で。





ズット サガシテイタノダ。
目的、purpose、モクテキ。














「あなたは・・・幸せでしたか・・・?」
「幸せ・・・、シアワセ・・・しあわせ・・・何を・・・・・・・泣いているのかね?」
「・・・幸せでs、・・・か?」
「男の子だろう?・・・何を泣くんだね?君はサイボーグで・・・はて、君は泣く必要があるのかな?」


不思議そうに、首を傾げる秀顕。
ぽたり、ぽたり。と、自分へと降り掛かる雫をよける事なく、受け止める。
その熱さに、疑問すら感じていた。

彼は、サイボーグじゃないのか?と。


「・・・・あなたは・・・どこにいるのです、か?」
「おかしなことを訊くねえ、サイボーグとは本当に面白い・・・。”ここに”ちゃんといるんだよ、私はちゃんと、いる」


秀顕は腹の上で組んでいた手をほどき、右腕をのばして、長い前髪を払い、隠れていた009の涙で濡れる両の瞳を見た。


「009、いい顔をしているねえ・・・」



2人はしばし見つめ合う。




「・・・・あなたは、誰、ですか?」
「覚えておきなさい、私、が・・・篠原秀顕だ」


















009の手が、スーパーガンのトリガーを引いた。















「fulfillment・・・・だ」


ニヤリ、と。秀顕は009にむかって皺の深い、薄い唇で微笑み、手が、009の前髪を押さえていた手が、重力に従い落ちた。



「うあああああああああああああああああああああああああああああああああっ」
















藍紺の空に星はなく。
地上に溢れる人工の光は、明日の夜も灯る。
















幸せだったか、どうかだって?
幸せだったねえ、人生で、繰り返すだけの暇な人間生活の中で、こんなに面白い”遊び”ができたんだからねえ。

そして今、カンゼンタイになったんだ。
プログラミング通り、プロトタイプサイボーグコードナンバー00・・・9の、手によってだ。








































====72へと続く


・ちょっと呟く・

山越えっ!

Wrap up Wrap up~♪

♪前半に置いてけぼり内容も、ここから~♪♪
♪片付けましょう~♪エビローグで♪

お♪またせしまた♪イベント~♪
男子校+お祭りしたくて~♪
ついでに事件にしちゃえ♪と~♪やってみたら♪あ~らら~♪
♪らぐびーさんのアドヴァイスが身にしみる~♪

♪できたら、全体事件の感想訊きたいです~♪
♪ち意味わからんぞ~この辺!突っ込み、よろしくです~♪


♪次回は♪もっとシンプル化~♪原作読み直しまくるぜ~♪





へい!
って・・・またエピが長引きそう・・・。

自分で書いておきながら、事件読み直すのやだなあ・・・。
web拍手 by FC2
ゆびきり/アタシが彼に約束したことは・・・

「ジョー、ねえ。手を貸してくれる?」


イワンを連れて日光浴へと近くの公園へでかけていたフラソワーズは、帰って来るなり、地下のギルモアの書庫に向かう。
そこでで積み上げられた資料の整理をしているジョーの腕をひっぱり、彼の小指に自分の小指をひっかけるようにして絡めると、突然。


「ゆ~びき~り♪、げんまん♪、う~そついたら♪♪、はありせんぼん、のおますっ、ゆうびきった!」


公園で小さな子どもたちが、短い歌のような呪文を口々に唱えたていたので、フランソワーズはその言葉を覚えて、ジョーにしてみせた。


「・・・フランソワーズ、指を切ったんなら、小指を離さないと」
「あら、そうなの?」
「うん」
「これ、なあに?」
「・・・・・ボクはいったい何を約束させられたの?」
「約束?」


書庫のデスクチェアに座るジョーを、不思議そうに見下ろすフランソワーズ。


「知らずに、指をきったわけ?」
「これ、Une incantation(呪文)なの?」


くるり。と、回転させたデスクチェア。


「知らないで言ってたの?・・・誰かと何かを約束をするときに、それを守らなかったら、嘘をついたことになって、お前の”指を切断するぞ”、”1万回殴らせろ”それから”針を千本”食べさせるからな!って言う意味なんだけど?」



ジョーはフランソワーズの正面へと向いた。


「まあ!・・・怖いわ、それ・・・そんな怖い言葉を公園に居た小さい子たちが使っていたの???」
「・・どこの国にもそういう部分ってあるとは思うけど、日本も昔は、残酷なことしてたと思うよ。確か・・・指切りの語源って、遊女が通いの客にたいして、自分への愛が変わらないって言う誓いの証として、小指を切断させてた。ってことからきてるって聞いた事があるよ」


ジョーの言葉に、さらに驚く碧色の宝石。


「・・・・すごいわね、それ。指を切る事が愛の証なの?」
「それくらい自分は本気だっていうことじゃない?」


再びジョーは、くるり。と回転させて、デスクに向かい、フランソワーズから視線を外す。


「切った指はどうするの?」
「え?」


フランソワーズの、予想だにしていかった質問に、跳ね上がるようにして彼女へ振り向く。


「ねえ、切られちゃった大好きな人の指は?」


興味深げに、瞬く宝石。
小鳥のように右に少しばかり傾いたハチミツ色の髪が、さらり。と流れる。


「・・・・知らないよ、そんなの」


ジョーは考えた事もなかった。


「・・ユウジョさんが持っているのかしら?」


---遊女さんって・・・


多分、”遊女”の意味もわかってないんだろな。と、胸の中で呟いた。
その意味をジョーは、フランソワーズに説明するつもりはない。
なんとなく、そういうことを知ってほしくない気がしたために、だ。そのために、そこへ話しがいかないよう、注意する。


「今みたいに、冷蔵庫とか、保冷ボックスとかなかったから、生身だし、腐ってしまうだろ?・・・持っていてもどうしようないとおもうけど。相手が”小指を切った”と、言う事に意味があるんだから、切った指は、それほど重要じゃないんだよ」
「・・・・」


ジョーの説明になっとくしたのか、にっこりと花やかに微笑んだフランソワーズ。


「なに?」
「だって腐らないもの!」
「?」


フランソワーズはデスクの上に戻っていた、ジョーの右手をとると、再び彼の小指に、自分の小指を絡めた。


「ゆ~びき~り♪、げんまん♪、う~そついたら♪♪、はありせんぼん、のおますうっ♪、ゆうびきった!」


ぱっと、フランソワーズの小指が、ジョーの小指から離れ、”指を切られた”。


「・・・・だから、約束の唄なんだけど?ボクは何を約束させられたわけ?」
「秘密!」
「それって使い方間違ってるよ?秘密にされたら、ボクは破ったかどうかなんて、わからないじゃないか・・・。それに嫌だよ、小指を切られた上に、1万回殴られて、針を千本食べるなんて・・・」
「嘘つきにならなければいいのよ、約束を守ってくれれば問題ないわ!」


ジョーはなんとも情けない顔をで溜め息を吐く。


「だから、その”約束”は何か、教えてくれないと・・・”約束”できないし、それを守る事もできないよ?」
「だって、ジョーは009だもの!指を切られても、博士に作り直してもらえばいいし、アタシに1万回殴られても、同じでしょ?たいしたことないわ。私の手の方がどうにかなっちゃいそう!・・・それに、針だって、あとできちんと取り除いてもらえるのよ?」
「・・・・・・・破る事前提なわけ?ボクが」
「破らないわ、だってジョーだもの、守ってくれるって信じてるわ」
「だから、何を約束したの?ボクはキミと!」
「ひ~み~つ!」


嬉しそうに、スキップでもするかのように書庫から出て行くフランソワーズ。
書庫の扉が閉まり、ジョーは溜め息をもう一つ吐いた後に、再び書類の整理へと戻っていく。

















ジョーが約束したんじゃないわ。
アタシがアナタに約束したの。























http://gogen-allguide.com/
「ゆびきり」については、語源由来辞典を参考。


*おまけ*


10分後、地下へと再び舞い戻ってきたフランソワーズの口から、ジョーが説明したくなかった質問”遊女”について、しつこく、しつこく問われた。


「通ってくるお客さんの指を切って、自分だけが生涯のパートナーだと誓わせてしまうようなところで働く、女のひとたち!」


と、説明した後に・・・。


「アタシも働ける?」


ジョーはフランソワーズの回答に悩ませられたが・・・・次の彼女の言葉に思考が一時停止した。


「そこで働いたら、ジョーはお客様として来てくれるのかしら?」
「・・・・」
「ねえ、来てくれるの?」
「・・・・」
「ヒドイわ!私が働いているのに、来てくれないの?!・・・みんなはきっと一所懸命に来てくれるはずよ!」
「みんなは、この場合関係ないよ、・・・・・・・・・・行く、から・・・・」


ぼそっと、呟いた。


「でも、・・・どうしてお客様と恋愛関係になってしまって、指を切ってしまうくらいな”誓い”が必要なのかしら?そのお仕事ってそんなに大変なの?2人の関係が危なくなるような、お仕事?」
「・・・・・・・」



フランソワーズの興味はつきない。
つぎつぎ飛び出す疑問の声に、


「・・・・ああっもうっ!禿(かむろ)のころから面倒見るし!水揚げされたら一番目の客になるっ!絶対に通って、他の客なんて取らせないっ!いくらでも指を切って誓うっ!ちゃんと身請けの千両(7500万円)も払う!もういいだろっ」


珍しく声を荒げたジョーの早口。
そして、言い切られた言葉。
その意味のほとんどがわからなかったフランソワーズだけれど、何に納得したのか、嬉しそうに頬を上げて微笑んで、小指をジョーの目の前に出した。


「約束よ!ゆびきりしましょ?」
「・・・・・・」




だまって指切る、ジョーがいた。




















*10分前に、何を約束したのかは、どうぞご自由に...決めてあげてください>あ、逃げ!・・・・それにしても、ジョー、詳しいね(笑)*
web拍手 by FC2
用意された朝食/ボクとアタシの朝の風景
ひと昔前のドラマや、映画、小説に出てくるような、家族で囲む朝の食卓の風景にて、かわされる会話がここ、ギルモア邸でも見られる。


「やめて」
「ん~・・・」
「もう、やめてちょうだい!」
「う・・・ん・・・」
「ねえ、ってば」
「・・・」
「訊いてるの?」
「ん・・・うん・・・・・」
「ねえっ!」
「ん~・・・」


生返事ばかり繰り返すジョーにたいして、フランソワーズは彼の手が伸びた先にあるお皿をさっと移動させた。


「・・・・・・ん?」


やっと、ダイニングテーブルの上に広げられていた専門書から視線をはずし、そこにあるべきであったトーストの乗った皿を探す。と、そこには、ぷっと頬を膨らませて睨む、碧の宝石。


「あれ?・・フラン、ボクのトーストは?」
「知りませんっ!」
「・・・・・・なに怒ってるの?」
「知りませんっ!」
「・・・それ、ボクのじゃないの?」
「違いますっ!」


ジョーの分のトーストの乗った皿は、彼の隣に座るフランソワーズの前に移動していた。


「ボクのだよ?・・なんでそんなところに?」


腕をのばして、その皿を引き寄せようとしたが、その手からフランソワーズがさっと皿をよけた。


「フラン?」
「もう、ごちそうさまでしょ?」
「ええ?・・・一口しか食べてないよ?」
「いいえ、もうジョーは朝ご飯を食べ終わったんですっ!だから、どうぞお好きなだけ、本を読んでくださいな!」
「でも、それボクのトーストだろ?」
「違いますっ!」
「あ!」


フランソワーズは皿からジョーが好きなバターたっぷり塗ってから焼いたトーストを、ぱくり。と、食べた。


「これは、アタシのです」
「食べたっ、ボクのだろ?・・・フランはジャムじゃないかっ」
「いいえ、今日はバターなの」
「なんでだよ?・・・じゃ、ボクの分は?」
「食べ終わったんでしょ!」


ぱくぱくぱくっ!と、トーストを勢いよく食べる、フランソワーズ。


「っ食べ終わってないよ!」
「知りません!」
「なんなんだよ?」
「お食事中に本を読むようなマナーが悪い人の分のご飯なんて、アタシ知らないわ!」


そこで、やっとジョーはテーブルの上の専門書を閉じた。


「これで、いいの?」


ちらり。と、フランソワーズはその本を見る。
ジョーは、はああ、と溜め息をついて、それをテーブルから隣の誰も座っていないイスの上に移動した。


「朝ご飯、ください」
「はい」


手に持っていたトーストを皿の上に置いて、フランソワーズは新しくジョーのトーストを焼くために立ち上がる。
それを視界の端で見ながら、隣のイスを少しばかりひいて置いている専門書を開こうとする・・と。


「ジョーっ!!」


厳しい声がキッチンから聞こえ、びくんっ!っと肩を窄める。


まいったなあ・・・。と言うくちびるの動き。
どんな小さな声でも、彼女が聞き逃すわけがない。


フランソワーズが食べかけていた、”元”自分のトーストを腕をのばして皿ごと引き寄せる。と、その2/3ほど食べられてしまったトーストを手に取り、かじった。


「あ、フランソワーズ・・オレンジジュースある?」
「は~い!」


機嫌の良い声に、ジョーは、ほうっと胸を撫で下ろす。



「なあ、ジョーよ」
「?なんだい、グレート」
「・・・・いや、なんでもない」
「そういえば、博士は?」
「地下だろう?イワンが昨日から昼の時間だしなあ」
「そうか、張大人はお店?」
「ああ、夜に宴会の予約が入ってるんでねえ、我が輩もそろそろ向こうへ行くよ」
「そうなんだ」
「・・・・・・なあ、」
「なに?」


ジョーがトーストを食べ終えたころ。
キッチンから、ちんっ♪とトースターのタイマーが切れる音。


「・・・・・・毎朝、毎朝、おんなじ内容だなあ・・」
「?」
「いや・・・なに、まあ・・・。”新婚さん、いらっしゃい”って番組知ってるか?」
「・・うん、見た事ないけど、ボクが小さい頃からあった番組だけど?」
「応募しようかと、思ってな・・・」
「ええ?!・・・グレート結婚するの?」


熱々の、バターがしっかりしみ込んだトーストとオレンジジュースの入ったグラスをトレーに乗せて、ダイニングテーブルに戻ってきたフランソワーズがジョーの声に驚く。

グレートは、ジョー、フランソワーズ、ジョー、フランソワーズ。と、交互に彼らを見て、にやあり。と、嗤いながら席から立つと、2人の瞳が同じタイミングと速度でグレートを追いかける。


「違う、違う。ジョー、吾輩ではなく・・・」


そこまで言って、グレートは口をつぐむ。
もしも、ここで自分が言った一言がきっかけで、毎朝繰り広げられる”ドラマ”が見られなくなるのは少しばかり淋しい。


「・・・・ま、いってくらあな」



ウィンクひとつを残して、グレートは張大人の店へと向かう。












ダイニングルームに残された、”新婚”さんたちは・・・。


「ねえ、なんなの?誰が結婚するの?」
「・・・いや、グレートが”新婚さんいらっしゃい”って言う、一般の人が参加する番組に応募するって言うから・・・」
「ええ!?グレートが結婚するの?」


フランソワーズは驚きの声を出しながら、トレーをテーブルに置き、ジョーの前に、焼きたてのトーストと、オレンジジュースを置いた。


「さあ、・・・彼に結婚前提におつきあいしているような女性、いたっけ?」


熱々のトーストを手に取る。


「知らないわ。訊いた事もないし、それらしいことも・・・感じた事ないわ」


たっぷりバターがしみ込んだトーストをぱくん。と食べる。と、じゅわり。と、舌の上に乗った。


「感じ、るって何さ?」
「女の人の気配よ」
「女の人の気配?」
「ああ、もう・・・バターが!気をつけて?」
「うわ・・・、何かない?」


ぽたり、とバターがジョーのTシャツに落ちる。と、さっと、キッチンへ戻り、キッチンペーパーを手に戻ってくきたフランソワーズがそれをジョーに渡す。


「気をつけてよ、もう!」
「うん。で、・・・気配って?」


ジョーの隣の席に座りながら、彼の質問に答える。


「女性の影よ!・・・なんとなく、女性の使うものを持っていたり、いつもの生活パターンじゃなくなったり、頻繁に電話がかかってくる、とか。出かける回数が増えるとか、邸で食事しなくなる、あたりが基本かしら?」
「ふうん・・・そういう風には感じないね?」


もう興味がないのか、おざなりな返事で、トーストを食べ続ける。


「でしょ?・・・・もしかしたら、お友達か、お店のお客さまの事かもしれないわね?」
「かもね、・・・・・・・でさ」
「なあに?」
「バター替えた?」
「あら、分かるの?」


オレンジジュースのグラスを手に取る、ジョー。


「いつもと、ちょっと違う気がしただけ、だけど?」
「新製品みたいなの、どっちが好き?」
「前の・・・かなあ?」


つぶつぶ果実入りのオレンジジュースは、ギルモア博士のお気に入り。


「そう、わかったわ。お試しで買ってみたの。じゃあ週末まで待ってね?」
「使い終わってからでいいよ?」
「お試しで買った方は、お菓子とかお料理に使うわ」
「ふうん、・・・わかった。じゃ、今日行こうか?」
「今日?」


グラスを置いて、残りのトーストをやっつけ仕事ように、口に放り込んだ。


「うん、・・・コズミ博士が、通う大学。の。・・・・・・・・図書館から借りてきた本、・・・・今日。まで、だからね、・・・・返しに行く.ついでに、寄るよ」
「も!口の中にトーストが入ったまま、話さないでっ!!」


ごくん。と、飲み込んで、オレンジジュースと一緒に流し込んだ。

「ごめん」
「・・・・じゃあ、イワンのミルクもお願いしていいかしら?思ったよりも買い置きが少なくて・・」
「キミも一緒に来る?」
「いいの?」


邪魔じゃない?と、言いたげな、八の字になるフランソワーズの眉。


「いいよ、本を返すだけだし。どこか行きたいところがあるなら寄るよ?」
「?!っっ・・・・・・・な・n・何時に行くの?」
「う、ん・・・とくに決めてないから、キミが用意できたらでいいよ」
「映画に行きたいわっ!」
「映画?・・・どれ?」
「”少林寺パンダ”か、”日本の怪談”!」
「・・・・・時間調べてみるけど、パンダにしとこうね」
「?・・・・・・・・・いいけど、じゃあ、”怪談”の方はまた今度ね?」





カワイイものも好きらしいが、ホラーも好き。
最近、フランソワーズの好みの傾向が見えてきた、ジョー。
それでも、いまだに多くの謎がある。



ジョーが知らない、不思議がいっぱい。





---女の子って、変なの・・・。

万華鏡のようにキラキラしていて、キレイで・・・。
くるくるまわして覗き込んで見る絵のように、彼女の機嫌もくるくる変わる。



ずっと、見ていたい。
飽きないんだよ、なあ・・・.





ご機嫌のフランソワーズは、”お昼は外食しましょ!”と、地下に籠っているのギルモア用の昼食とイワンのミルク作りを始めるためにキッチンへと戻っていく。


「フランっ珈琲欲しいんだけど」
「は~いっ♪」


ジョーはイスに置いていた、専門書を再びテーブルの上に置き、読みかけていたページを探すためにぱらぱらとめくる。









キッチンから、ダイニングルームに繋がるカウンターテーブル越しに、みるジョーの姿。


嬉しくて、嬉しくて、飛び跳ねて、ふわふわする気持ちに身をまかせ、きゃあ!きゃあ!っと声を上げたいのを必死で我慢するフランソワーズ。


「ジョーっ」
「なに?」
「・・・・・・・・・っなんでもないわ!やっぱり」


キッチンのカウンターからのぞく恥ずかしげに、少しばかり紅がさした頬フランソワーズをジョーは専門書から顔を上げてみる。


「なんだよ?」
「んふふ、なんでもな~い♪」
「・・・なに?」
「なんでもないわ♪」
「なんでもないことないだろ?人を呼んでおいて・・・なに?」
「なんでもないのよ♪」


くるり。と、ジョーに背中をむけてしまったフランソワーズにたいして、ジョーはクスリ。と、笑う。




---可愛いなあ・・・。



























####

「・・・・ここで儂はいつも、思うんじゃ」
<何ヲ?>
「・・・イワン、ミルクが欲しいと泣いてじゃな」
<アア、ソウイウコトネ>


キッチンの隣にある収納室を改造してつくった地下への通路の扉が薄く開いていた。


「若夫婦に、息子、その祖父と、叔父たちって感じでいいじゃろ?」
<どらまダネ>
「ドラマじゃのう」
<映画にツイテ行クッテドオカナ?>
「・・・ほお、それはまた・・・・・」
<B.Gノ虫型兵器ヲ改造して、小型カメラにシチャウノ>
「して、そのこころは?」
<ホームドラマ・さいぼーぐな人々”新妻は超高性能のレーダー付きで浮気ができるもんならしてみなさい!~だんなさまは逃げ足早いKSK装置付き”~>
「いくぞ!イワンっ」
<オウ!>















*もじもじ?ねえ、もじもじっですかあ???・・・意識してないとこうなるってことですね*
web拍手 by FC2
Day by Day・72
(72)






偶然か、それとも・・・。

ギルモア邸のサイボーグたちが動いたと思われる、その翌日に、篠原秀顕の遺体が娘である篠原さえこ、その弁護士、そして篠原グループの役員たちによって発見された。
死後硬直が始まっていた遺体は篠原総合病院に運ばれ、死因を急性心不全(きゅうせいしんふぜん、acute heart failure)と診断される。

009と話していた内容から、さえこの頭にこの自体をふまえて、ある”推測”が立ったが、それを胸の奥底にしまい込んだ。
”マクスウェルの悪魔”であった自分と一緒に。



前夜、彼女は006と共に都内の篠原第三ビルを訪れた。
事前に呼び出しておいた部下たちの手で開かれた、緊急役員会議。
001と009がさえこに渡したファイルを手に、早急に今回の爆破事件の責任を求めて篠原秀顕に引退を促す準備を整える。そして、今回の事件によって取り沙汰されるであろう四友と篠原との確執を考え、マスコミに対する対応などの説明のために株主総会を開く事を取り決めたが、篠原秀顕の死が確認されたことにより、株主総会を開くまでもなく、篠原グループ役員の90%賛同を得て彼女が篠原グループのトップとなり、すべては彼女のシナリオ通りに事が進んで行った。

さえこは四友を傘下から外し、”提携・協力”企業”として和解。大げさな記者会見を開き、それを全面的にアピールすることにより、四友工場の爆破をただの定期点検中によるミスからの”事故”として、篠原グループの”コネクション”で、”たち始めた噂”を捩じ伏せる。

今後の予定として、篠原グループ内の余分な分野を切除し、広がりすぎた事業を篠原総合病院を軸にして縮小を考えているが、変わらず”発展”のための”新技術”を求めて、新しいプロジェクトを精力的に発信することを誓った。

月見里(やまなし)学院はの経営は変わらず、篠原が続けることを付け加えておく。
彼女が書いたシナリオ通り、月見里(やまなし)学院は爆破の規模からも被害は旧校舎のみに留まり、006の放った火により、表向き、老朽化した建物からの自然発火と言う形でマスコミなどの目に留まる事はなかった。




「当分、周りがうるさいわ。父の葬儀もあるし、当麻は当分、学院か、ここ(ギルモア邸)で護って・・・。彼は絶対に表には出さないわ、まだ、”条件”は有効でしょう?”あやめ祭”があるものね?こちらも協力するかわり、当麻をお願いするわ。・・・・・・・篠原黄金期もこれで終わり。・・・それより父の愛人達が目の色変えて”責任”を問うて来るのをサバくのが面倒よ」





ミッションの後片付けに追われる日々が始まり、新たなミッションとして”あやめ祭”があげられ、潜入捜索と銘打って学院生になったジョー、ピュンマ、ジェットは”あやめ祭”が終わるまで、学院生として滞在する。



「あ~あ・・・今日もまた面白くもねえ、野郎ばっかのとこに戻るのかよぉ・・・」



”あやめ祭”のシニア・オークションにて、津田海の石川斗織がサイボーグ技術によって作った義足を公開する予定は変わっていない。


「仕方ないよ!ジョーは篠原先輩と学院に戻る予定だし、明日から僕も戻るんだから、あと1日の我慢だよ!3人とも欠席なんて変だから、ジェットだけでも戻るって、そう決めただろ?いいじゃないか、毎晩こっちに”飛んで”戻ってきてるんだし、そんなに愚痴るなよ」



”あやめ祭”は篠原秀顕(石川斗織)が中心に進めていた”プロジェクト”であり、その表向きの内容とは別に”裏”の内容があり、さえこの協力を得て、それらの情報を得るが、篠原秀顕の死によってどのように”裏”に影響が出るのか判断し辛く、さえこの周辺の人物の動きを見るために007が当分の間、彼女の護衛係を勤める。



「はいはいはいアルヨ!今のうちジェットはたくさん食べるネ、学院の料理よりワタシの愛情たっぷり料理が一番アルヨ!」



サイボーグ技術に興味を示す人間たちが、世界中から集まる予定であり、その中には、裏世界の人間、もしくはB.G、N.B.Gに関わっていた人間が潜んでいないとは言い切れない。
今後のことを考えて、シニア・オークションで集まる人間たちを調査し、得られるだけの情報は収集しておきたいと言う009の意見に従う。

学院へ行く3人以外の00メンバーたちは爆破された工場は旧月見里(やまなし)学院、篠原本社へと足を運び、その他に”サイボーグ”に関する資料が残っていないかを調査を開始。



「004は、四友なんだろ?」
「そうアル、警備員になって捜索してるアルヨ!005は明日からネ!」
「爆破された場所以外も調べないといけないし、夜には僕も参加する予定だよ」
「んで、なあああああああんで、オレが学院なんだよ!」
「向こうもちゃん再捜索しないと、ジェットが任されてるだろ?我慢してよ!」
「ああったく、学院はもういいんじゃね?」



001が取り出して持ち帰った篠原秀顕の補助脳および”人工知能(Artificial Intelligence)から得た情報量は、ギルモア邸地下にあるメインコンピュータを使っても、全てのデータ解読に1年近くの歳月を要するために、まだ篠原秀顕がどこまで裏社会に接していたのか、関係していた人脈もはっきりせず、そして、N.B.Gの存在も霧の中。

それらの調査も始めなければならなかった。


「念には念を入れておくアルヨ!今までがんばってきたから、ここでミスはしたくないアルヨ!あやめ祭もあるからネ」
「じーさんの脳みそをカチっとコンピュータに繋げりゃぜ~~~~~~んぶ、答えがそこにあんだから、終わるだろおおっ!!こんな手間ひまかけなくってもよおおおっ!なんでオレがまだ、あんなところ(学院)にいなきゃなんでねえんだよっ!」
「補助脳のにあった人工知能(Artificial Intelligence)は、あの7つ目の景品の映像からジョーがプロファイリングした年齢と、データー量から見て、秀顕氏が21、2歳ごろに取り付けられているからね、・・・50年分の情報を1年くらいで解読できるなら、まだ早い方だと思うよ、ジェットの好きなお祭りがあるだろ?これからっ」


地下の研究室からダイニングルームへと戻ってきたピュンマは、地味なミッションの後処理に嫌気がさしつつあるジェットの愚痴に、笑顔で答えた。



「ジョーが戻ったらいいだろおおおっ!篠原ならピュンマ、お前と一緒だっていいじゃんかよっ!いったいアイツは何やってんだよっ」
「うるさいなあ!ジョーはジョーでいつもちゃんとしてるだろ?009はいいんだよっ!今回、役立たずだったくせにっ!」
「役立たずだとおっ!?どこがだよっ!!」
「役に立つなら、ちゃんと自分の仕事終わらせて今晩中に学院に戻ってよね!明日遅刻するよ?」


ピュンマはびしっと、ジェットが座るダイニングテーブルに広げられたファイルを指差した。
そして、リビングルームのドアを開ける。














####

津田海はギルモア邸のリビングルームにいた。

彼は篠原さえこが手配した篠原総合病院に入院する。
津田海の左足について、石川との関係を省いた上で、津田海のまわりの人間に彼の左足が”ない”ことにたいする埋め合わせを行うのだ。


「石川先生が・・・衝突事故で・・・・・・・・意識不明?」




石川斗織は事故を起こし、運ばれた先の病院で手術を受け、失っていた意識を取り戻したが、それはほんの一瞬の事で、彼は再び昏睡状態に陥り、いまだ目覚める気配はない。
術後の経過を見て篠原総合病院へと転移させ、アメリカにいる石川の養父母へ連絡を入れ、彼の意識が戻るのを待つのは、さえこ。


<僕ハ、知ラナイヨ。・・・眠ッテイルコトニ飽キルマデ 寝サセテオケバイイ>



忙しく走り回る中、どんなに短い時間でも、毎日石川を見舞うさえこの姿がみられた。










「手術は成功したんだけど・・・意識が戻らないそうなんだ」



ピュンマは静かに頷いた。

自分の身に起きたことを、いまだ完全には受け止めきれてはいなかったが、ギルモアの誠意ある言葉によって、自分の”左足”に使われていた技術などの説明を受ける中、少しずつだが、自分の立っている位置を理解し正面から向き合い始めていた。


「意識が戻らない・・・か・・・・・・・、なんだか変なの、なんだか・・」
「偶然、に思えないよね・・・。海が言いたい事は分かるよ・・・」


海はなんと例えればよいのか分からない、複雑な表情を見せて、くちびるを噛み締めた。
ピュンマは黙って、彼のこころが落ち着くのを待つ。


「いっぺんに、一気に・・・いろんなことが起きて・・・・・。眠っていたら死にそうな足の痛みが襲ってきて、・・・気がついたらSF映画のような機械に囲まれた部屋にいて、左足が・・・・・・石川先生が・・それに・・・」


津田海は、自分の足に使われていた科学技術は、まだ世の中に出る事が難しい、”認められない”技術を用いている。と、いうことのみ、石川斗織から説明を受けていた。


「・・・それに」


海は、自分の隣に座る、ダーク・チョコレートカラーの肌をした、出会ってまだ一週間しか立っていないのにも関わらず、生まれてからずっと一緒に育ってきたような感覚の、留学生を見つめる。


「それに、なに?」
「ううん、なんでもないよ・・・・ピュンマ・・・石川先生が同じ病院なら、会えるね」


海は自分は微笑んでいると、思っているのだろう。
けれど、ピュンマの瞳には、ぴくり。と頬が痙攣するように1度、引き攣っただけだ。


「うん・・・そうだね」


篠原さえこは、今後、全面的に津田海の失った左足において責任を負うと言い、篠原技研が作る義足が無料で提供され、今後、彼は”今現代の”最新技術で開発された足でグランドを駆けることとなる。



「・・・ぼくは結局ズルをしていたんだ・・・。自業自得だよね。足は、誰のせいでもない事故だったんだ。篠原のせいでもない。・・・ない、ものは、ない。のに・・・だけど」




海はギルモアに泣いてすがり、再び自分の”足”で跳べる事を願い、訴えた。


怒ることもなく、咎めることもなく、海の訴えを聞きながらも・・・手術をすることは出来ないという言葉を、ギルモア博士から聴かされ続けていたが、可能性があるのなら、取り戻したい。と、願った。

最終的に、それが不可能である理由と、危険性、そして今年の”あやめ祭”の実態について聴かされた上で、ピュンマから、彼と、彼の仲間たちの秘密を打ち明けられ、そして・・・。


「・・まだちょっと、・・・・時間がいるかも・・・わかってるんだよ、ピュンマ・・・自分でも・・でも・・・まだ」
「・・・・・うん、僕も海の立場だったら・・・同じだったよ」


けれど、彼のこころの中にはまだ、・・・諦めきれない思いが残っている。
口にこそ出さなくなったが、その思いは誰の目からみても明らかだった。


「ピュンマ」










海は、姿勢を正してピュンマを見つめた。
まっすぐに。



人であり、人でない、人。













「・・・あきらめてるの?」
「?」
「ピュンマは、あきらめるの?」
「諦めるって・・何を?」
「サイボーグになっても、別に普通に生活できるんだよね?」
「う、うん」


いまだ海には実感がない。
彼がサイボーグだと、ギルモアを除いたこの邸で出会った”人”、全員がサイボーグだということに。


「足がなくても、走りたい、跳びたい。・・諦めたくない・・だから・・・・諦めないでいい方法があるなら、ぼくはそれを諦めたくないっチャンスがあるならっ、ぼくは何だってするっ・・・したい・・・」
「海・・」
「同じだと思うんだけど?・・・・・・・・ぼくの気持ちと、違うのかな?」
「・・・海?」
「このまま、ピュンマは学院を辞めてしまうの?」


話しが自分に向けられて、ピュンマは驚く。


「え、ええっと・・僕?・・・あやめ祭まではいる、けど・・その後は・・・」
「辞めるんだ?」
「海…?」
「サイボーグだから?」
「違う、よ、違う。・・違う、とは言い切れないけど、でも、それは」


玄関に通じる、吹き抜けの広間へ通じるドアが開いた。


「迎えの車がきた。」


ジェロニモがリビングルームに入って来る。


「・・・・なんで学院にきたの?って訊いたときに、ピュンマが言ってくれた夢は、あの学院なら現実に叶うと思ってるよ、ぼく・・・・」
「っ?!」
「・・学院で会おう」


ジェロニモは海を軽々と抱き上げると、玄関へと歩き出す。
ピュンマは、呆然とその背を見送っていた自分に気づき、慌てて追いかけてリビングを出ると、そこにはギルモア、ジョー、フランソワーズ、そして、篠原当麻がいた。


「お世話になりました」


ジェロニモが玄関前で足を止めたために、海は短く、ギルモアにむかって挨拶した。


「・・・海くん、儂は・・・・・・儂は」


それをしない。と、9人の息子たちに誓った。
けれども、誓いはあくまでも”サイボーグ”である。



戦うための、兵器ではない。





---自分は誓ったのだ。



彼が望むものは・・・・・。



---自分は誓ったのだ。



何度も、何度も、何度も、ギルモアはこころの中で葛藤をし続けていた。







「新しい左足と一緒に、遊びにきますねっ」


明るい、とは言い難いが、しっかりとした海の声に、重力に負けていたギルモアの頭が、はっ!っと跳ね上がった。


「海・・くん・・・・」


ピュンマの後に続いてジェットも姿を現した。

ジョーは黙ったまま少し離れた位置から、ギルモアの背を見守っている。
その視線の中で、フランソワーズが、っとギルモアを思いやるように寄り添った。
ギルモアが何を言わんとし、何を胸の内で葛藤しているのか、その表情(かお)から読み取れる。


ジェットはジョーの隣に立ち、海を見送る。
ジェロニモは、海を抱えて邸の玄関を出て行き、その後をピュンマがついて歩く。




空の色が青を失い、あざやかな夕焼けの色を一面に飾った額縁となったのは、左右を開け放ったギルモア邸の扉。



「ジョー、お前ちゃんと生きてんのかよ?」
「・・変なこと言うね」


囁くように、ジェットは隣のジョーに話しかけた。


「報告、してねえじゃんかよ」
「何を?」
「報告義務があんだろ?」
「・・・報告はすませた」
「結果だけな、何があったか詳細は訊いてねえぜ?」
「報告した意外に、何も無い」
「・・・・・・・嘘つき野郎」


どんっ!と、ジェットはジョーの二の腕に拳を突いた。
ジョーは、ちらり。と自分の隣に立つジェットに視線を向けたが、すぐにまた視線をギルモアへと戻す。



「ギルモア博士、・・・・・お話があります」


厳かにジョーはギルモアに声をかけ、その声に振り返ったのは、ギルモアではなくフランソワーズだった。


「ジョー、今は・・・」
「・・・先に、(研究室へ)行ってます」


フランソワーズの言葉に何も答えずに、ジョーはリビングルームへと向かう。
その背にむかってジェットは舌打ちし、フランソワーズに向かって言った。


「おいっ、あの野郎に何があったんだよっ!!フランソワーズっ説明しやがれっ」


フランソワーズはただ、首を左右に振り、ギルモアへと視線を落とす。


「私が・・・知りたいわ」


当麻は、そんなフランソワーズだけをじっと見つめていた。



















####


<009・・・>

だらりと腕を下げて、その手にスーパーガンを持ったままの009の前に、動かなくなった秀明を見下ろす視線を遮るようにして現れた001は、言った。



<きみハ 人殺シ ジャナイ。 犯罪者ジャナイ>
「法律で・・・・裁かれないから?」
<違ウ>
「彼は”篠原秀顕、だったよ・・・」
<ソレガ ドウカシタノカイ?>


ふっと、口元がいびつに歪んだ。


「まるで004、みたいな言い方だね?」


009の声は枯れて、引き攣っていた。


<・・・・・じょー>
「・・・」
<終ワッタンダ、モウ ここニ君ガ居ル必要ハナイ」
「・・・後処理が残っているだろ?このまま、秀顕氏の両足と・・・頭部の補助脳と人工知能(AI)を放っておく、ことは、できない」
<ワカッテイル。ソレハ僕ガスル>
「・・・・・・うん。そうしてくれると助かる、よ」
<じょー>
「・・・・パラライザーをmaxで打ち込んだ、彼の死因は心停止で、通じる?」
<少シ細工ヲシテオクヨ>
「頼む」
<君ノセイジャナイ>




「彼は篠原秀顕だった・・・・・」







---ソレガ、彼ガ選ンダ道ダッタンダ。
 ソレガ、彼ガタグリ寄セタ糸ダッタ。
















加速装置を噛んだ、009を見送った後に001は邸に戻り、揃っていた仲間たちへの報告を始めたころ、001がテレポートで姿を現した。
篠原秀顕の両足と、人工知能(AI)チップが埋め込まれた補助脳とともに。

その補助脳は研究室から通じる部屋にあるメインコンピュータに繋がれている。
人工知能(AI)チップが、メインコンピュータを取り込まないように、それを外した状態でデータの読み込み、解読が進められていた。







「・・・話し、とはなんじゃ、ジョー?」


地下の研究室に向かったジョーの後を追うようにして、姿を現した。
そこにはイワンもいる、が、夜の時間が近づいているために、彼はウトウトと浅い眠りについていた。


「篠原当麻と、学院へ明後日には戻ります」
「おお、そうじゃのう・・・その方がいいじゃろう、ピュンマもか?」


研究室に置かれている、ギルモア専用のでデスクチェアに腰を下ろしながら、ジョーの言葉を聞く。
ジョーは立ったまま、視線を床に落とした状態で会話する。

「ピュンマは・・そうですね、同じになると思いますが、明日からでも大丈夫でしょう。それは彼にまかせます」
「うむ・・・それで?」


ギルモアはジョーに”本題”に入る事を促した。


「・・・・博士が取り除いた・・僕の補助脳にあった端末を、元に戻してくれませんか?」
「なっ・・?!」
「そうです。・・・・・秀顕氏の人工知能(AI)と僕の補助脳を繋げて、・・・・ソースコードを読み込みます」


視線をあげて、ジョーははっきりと自分が何をしたいかを告げた。


「っならんっ!!絶対にっそんなことをしてはならんっ!!」


ギルモアは飛び上がるようにして腰を下ろしたばかりのデスクチェアから立ち上がる。


「・・・魔神像は、もう存在しません。僕がこの手で、この手、で、破壊しました。ですので、僕は自分を”失う”ことはないし、命令されることもありえません。・・・人工衛星の方も、次の001の昼の時間には処理できる予定ですし、その人工衛星とコンタクトを取れたとしても、僕が魔神像から受信するはずだったものとは、全くの別物でしょう。・・・僕が直接彼の補助脳から必要なデータ(情報)をトレースすれば、早く済みます・・・NBGのこともより早く分かります」
「馬鹿を言うでないっ!!補助脳を繋げるという事はだなっその人間のデータを、こころを、生きてきた歴史を、何を考え、何をしてきたか、すべてを”知る”ことになるんじゃっトレースするなぞっ!あの補助脳には人工知能(AI)チップが埋め込まれておるんじゃぞ!知能は生きておるんじゃっ、わかるかっ生きておるんじゃっ!!あのチップに、”篠原秀顕”はまだいるんじゃっ!」


ジョーへと駆け寄り、彼の腕をギルモアは力任せに掴んだ。


「だから、です。博士・・・直接、話しができる」
「馬鹿ものっ!!あれは人ではないっ記録されたデータを元に、答えを算出するコンピュータじゃっ話しなぞできんっ」


ジョーを全身の力を込めて、怒りに震えた腕で揺さぶる。

激しく抗議するギルモアを見ながらも、その意思は変わらない。
反対されることは、当然のごとく予想できていた。


「博士・・・」
「絶対に、ならんっならんぞ!!お前は絶対に、アレに触れてはならんっいいなっ!!009っ命令じゃっ」


ギルモアの怒り含んだ荒げた声。
強く言い切り”命令”するギルモアの姿は、B.Gの戦い以後、見た事はなかった。


「博士・・・・・」


<何ガ知リタインダイ?>


クーファンに乗って、ふよふよと2人の間に割って入るように浮かんだイワン。


「すまんっ・・・起こしてしまったかのう、イワン・・・」
<博士、血圧ガ上ガッタイル、少シ 落チ着イテ>
「しかしじゃなっ!この馬鹿息子がっ」


クーファンに向かって、ギルモアが話しかけながら、ジョーの腕を掴んでいた手を話し、イワンへと腕をのばすと、イワンはクーファンからテレポートして、博士の腕の中に移動する。


「・・・・・繋がる予定だったもの、だろ・・・」
<意味ガナイ>
「・・意味があるかないかは、僕が判断するよ」


会話が、ギルモアからイワンへと移る。
ギルモアは篠原グループ本社で何があったのか、唯一、イワンから詳細を訊いていた1人であった。


<ソンナコトヨリモ 大切ナコトを 君ハ 忘レテイルヨ>
「・・・・大切な、こと?」
<僕ノ夜ノ時間ガ近インダ、練習ノ成果ヲ見セイタイ・・・。ソレト、僕ダッテ、君タチト同ジヨウニ暮ラスコトヲ 希望スル>
「・・・イワン?」
<取引ダヨ、009。君が壊シタだいにんぐてーぶるヲ直シタンダ、今度ハ僕ノ番ダヨ>
「・・・」
<ミンナヲ りびんぐるーむニ集メテ>
「・・・・007,004、008は」
<全員ダヨ>


イワンは有無を言わさない口調で、ジョーに言った。そして…・・。


<ミンナは 大切ナもの ヲ 見ツケルンダ・・・君ハ、イイ加減ニ気ヅクベキダ>
















####

009からの呼び出しに、津田海を病院まで送り届けたピュンマ、警備員として四友工場へ潜入捜査を行っていた004、篠原さえこの護衛役の007が邸に戻り、リビングルームに揃ったのは、ギルモア邸に残るメンバーたちが夕食後の紅茶を楽しみ始めたころ。

呼び出しておきながら、なかなか地下から出てこないジョーに痺れを切らしたジェットが立ち上がったとき、ギルモアがリビングルームに姿を現し、それに続いて、ジョー、そして、彼の腕に抱かれているイワン。・・・を、見て全員が慌てた。
ここには、滞在している篠原当麻がいるために。


日本に邸を構えることになり、サイボーグであるために、日常の暮らしの中に様々な”ルール’を作った。その一つに、イワンのことがある。

どのような問題が起ころうとも、イワンは”一般人”とは関わらせない。
それは、彼の持つ特殊な能力のために、彼の”成長”が未知数であるために、彼独特な生活リズムが危険を招く可能性があるために。


リビングルームに現れたジョーの腕の中にいるイワンを見た00メンバーの誰もが脳波通信をジョーに向けて飛ばす。と、ジョーの眉間に皺が寄る。

1つのチャンネンルに7人が一気に怒鳴り声に近い通信を送りつけてきたからだ。
その中で1人、フランソワーズだけは、ジョーに向かって度惑いがちに彼の名を呼ぶ。その声にジョーは他のメンバーを無視して、フランソワーズを誘った。


「フランソワーズ、イワンがね・・・ちょっと、こっちきて」


当麻はジョーの腕に抱かれている赤ん坊にかなり驚いていた。
それは、当然の反応である。


「島村、・・・子どもいたの?」


こぼれた当麻の言葉に、くっと喉で嗤ったアルベルト。と、ほぼ同じタイミングでジェットが言った。


「フランソワーズとジョーの子だぜ!」


その瞬間、ジョーとフランソワーズ以外の視線が一斉に当麻に向かい、彼の反応を見る。
当麻はすぐに自分の隣に座っているフランソワーズを見つめる。と、頬をうっすらと紅に染めた頬をこころなし膨らませてジェットを睨む、フランソワーズがいた。


「違うんだね・・・」


そんなことはない。と、思いつつも、ほっと安堵の息を吐く当麻。
冷静に判断する当麻にたいして、ジェットはからかいがいがない!と、ばかりに舌打ちを打った。
ジョーはジェットの言葉には無反応で飾り暖炉の方へと歩き出した。


ギルモア邸のリビングルームは、ダイニングルーム、広間へと向かうドアが向かい合うような形で取り付けられている。そのドアを中心に左が庭に面した壁一面のガラス戸。床には厚みのあるカーペットが敷かれ、特大の白い革製でできたL字型ソファ、ギルモア用の安楽イスに、形様々なチェアがバランスよく配置されて、硝子作りの珈琲テーブルを囲み、壁にはジェットとピュンマが選んだ薄型液晶大型テレビにDVDプレイヤーなどの娯楽機器を一つにまとめた薄茶の棚、それにはセットで左右にDVDやCD、本などを収めるためのガラス戸がついた背の低い棚。壁に掛けらた絵や写真、階段へと続く廊下の壁に飾りだな、その上には
観葉植物に花が飾られた花瓶、フランソワーズが選んだ小物類が並んでいる。

ドア挟んだ右に、飾り暖炉がついた毛の長いカーペットが敷かれ、壁に沿ってガラス戸付きの本棚が置かれているだけの広いスペース。
カーペットの上には、ソファからよけられた色とりどりのクッションが無造作に置かれていた。


ジョーは飾り暖炉の前まで歩くと、カーペットの上に胡座をかいて座り、その膝にイワンを抱く。と、もう1度フランソワーズを呼んだ。
飛び交う仲間からの脳波通信が五月蝿く、チャンネルを閉じる。
当麻は黙ってジョーと赤ん坊を見ていた。


ギルモア邸のリビングルームは、脳波通信で会話をしているために静まり返っている。



「ジョー・・・あの・・・イワンは・・」


フランソワーズは素直にソファから立ち上がり、ジョーのそばまで歩いて行くと、少し距離をあけてジョーの正面に座った。フランソワーズにつられるように、ぞろぞろと2人を囲むようにして、00メンバーたちが、ギルモア、当麻が集まった。


ジョーは何も言わずイワンを膝から降ろし、フランソワーズの前に座らせた。


<どこに捕まる?>
<心配ナイ>


イワンの躯を支えていたジョーの手が離れると、前屈みになって両手をつき、その右手を伸ばしてフランソワーズの膝に、ふくふくとした小さな手をおいた。
フランソワーズは訳が分からず、手を出して彼を抱き上げようとしたが、それをジョーに止められる。


「少し待って・・・・、見ていて、イワンを」


フランソワーズは正座を崩した形で横座りしている。
その膝に小さな紅葉の手が置かれ、そこに強い力とイワンの体重がかかる、そして、彼の足が床にぴったりと合わさって、膝が震えながら、のびようと、小刻みに上下する。

イワンの体重が、フランソワーズの膝におかれた彼の小さな手を通して伝わる。


「ほら、しっかり」


ジョーの手がイワンを手助けするように、彼のお尻をぽん!っとたたく。
その手がくれた勢いに乗って、イワンの膝がぴんっと、のびた。

「っ?!」
「・・できた」


びっくり眼のギルモア...。いや、彼だけじゃない。


「立っておるのか・・・?」


ジョー意外が、全員驚きに眼を見開いていると言っていい。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!すっげえじゃんっ!!」


ジェットの雄叫びと同時に、歓喜の声がリビングルームに響き渡った。


「すっごいよおっ!!イワンが立ったっ!イワンが立ったあああっ!」


ピュンマが飛び跳ねて、ジェットにしがみつく。
ジェットはピュンマの背をバシバシたたく。


「お祝いネ、お祝いするアルヨっ!!すぐ何か用意するアルヨおおおおおおおおっ」


奇妙なステップを踏み踊り始める張大人。


「おおおおおおおおおおっ吾輩っ感動したぞおおおおおっ!!イワンよくやった!よくぞここまで成長したなあああっ!!」


瞳の端を潤ませて、それをごしごしと服の袖で拭う、グレート。


「イワン。よかった。成長してる、ちゃんと大きくなっている」


泣き始めたグレートの背をその大きな手で撫でながら、ジェロニモは満面の笑顔で頷く。


「祝い酒じゃっ!祝いじゃっ!!立てるとはっすばらしいっ!!」


張大人と手を取り合って奇妙な踊りに加わるギルモア。


「よかったな・・・。押し車でも買って来るか?」


アルベルトの声がどこか弾んでいる。


<立テルンダヨ、僕・・・・チョット、変ダケド>


イワンのテレパスは、膝を借りたフランソワーズに送られた。
”変”と言ったイワンの言葉通り、彼の立ち姿は確かに”立った”と言うには少し、おかしい。

上半身を完全に手だけでは支えきれないために、フランソワーズの膝の上に突っ伏すような形で小さな躯をくの字におり、少し開き気味に立つ、頼りなげに震える脚。

上半身を起き上がらせようと、腕に力を入れて、脚でささえる。が、さすがにフランソワーズの膝ではどうも安定が悪く、しっかりとした”支え”にならないために、”変”な立ち姿になってしまったようだ。


<ドオ?ふらんそわーず?>


周りの仲間達のはしゃぐ様子に比べて、あまりにも無反応のフランソワーズ。
イワンは、ぽてん。と、膝の力を抜いて尻餅をつき、両足をのばす形で座ると、フランソワーズを見上げた。


<ふらんそわーず?>




震えていた。
彼女の手が、肩が、躯が。そして、綺麗でとても良い香りのする亜麻色の髪が、震えていた。



やさしく、だきしめてくれる。
美味しいミルクを作ってくれる。

大好きなフランソワーズの手が、彼女の顔を覆っているために表情を窺う事が出来ない。
何も言わない彼女から、自分が立ったことについての感想がもらえないイワンは不満そうに、彼女に呼びかけた。


<ネエ?ふらんそわーず?>


ジョーの手が、イワンを抱き上げる。
ふわりと宙に浮いたイワンの躯はフランソワーズの膝の上に乗せられた。


「フランソワーズ、褒めてあげないと。がんばったんだよ・・イワン」


ジョーの声に、フランソワーズは大きく頷いたとき、彼女の指の間から、こぼれ落ちそうなほどに大きな碧い瞳を縁取る長い睫が、艶やかに濡れて、またたきする度に、たくさんの雫を弾き行く筋もの涙が彼女の頬を伝っていることを知った。


<ふらんそわーず・・・?>


言葉が出てこないのである。
がんばったイワンに、たくさん、たくさん声をかけてあげたくても、喉がきゅうっと締めつけられて、なかなか言葉を作り出すことができない。
褒めてあげたくても、胸の底からこみ上げて来る表現し難い緊張に似たと興奮に躯が震え、涙が溢れて止まらない。

止まらない涙を隠すように覆った手が、震えている。


「・・・・フランソワーズ、見て」


ジョーの声とともに、膝の上が軽くなった。
イワンの両脇に手を差し込む形で、ジョーがフランソワーズの目の高さまで彼を抱き上げている。


「きっと、すぐに・・・キミの膝を借りなくても立ってるようになるし、歩けるようにも、ね」


目の前のイワンが、それを証明するかのように、足を曲げたり伸ばしたり、まるで平泳ぎでもするか、ポンプを握るとぴゅんぴゅん跳ねるカエルのおもちゃのような動きをしてみせた。


「っ・・・やだ・・イワンっ・・・ふf・・・」


その動きをみた00メンバー達が一斉に笑い出す。
顔を覆っていた手をイワンへと伸ばし、ジョーの手からイワンを抱き取ると、彼をぎゅうっと抱きしめた。



<ドウ?ふらんそわーず>
「すごいわ・・・・・・・・・イワン、素敵ね・・・・・・いつか、・・・・・・いつか・・・一緒に・・・・・・・」
<ウン、散歩シヨウネ。海岸ヲ歩コウネ>


フランソワーズはより強く、イワンを抱きしめた。
涙は止まるどころか、より一層溢れてくる。


「靴買わないとネ!イワンの初めてのアルヨ!」
「いいねえ、いいねえっ!!初めての靴!我が母国イギリスでは、初めての靴は銀で固めて記念に取っておくんだなあ!そういうのネットで売ってるか調べてみようなあっ」
「記念に、木靴を彫ろう。」



にぎやかな仲間達の声に囲まれて。



「んじゃっ今晩はこのままイワンのお祝いだぜっ!」
「そんな事言って!!駄目だよ学院をずる休みしようだなてっジェット!」
「おしゃぶりも卒業が近いかも、な」



ジョーは切っていたチャンネルをONにして、脳波通信で仲間達に短く”イワンの希望”を受け入れることを伝えた。
今後、彼は”ギルモア博士の知人の子”を一時的に預かっている。と、いう形で、邸を訪れた人間にのみ、その時々の状況に応じて、人と接することを伝えた。

その1人目として、当麻が。
イワンの存在を初めて知ることとなった。





「可愛いね、ぼくに紹介してくれるのかな?」



当麻はフランソワーズに近づいて、彼女の肩に優しく触れた。


「・・・・」


ジョーは、そっと立ち上がり2人のそばから離れようとしたとき、イワンのテレパスが飛んだ。


<じょーハ幸セ?>


フランソワーズは、顔を上げてジョーを見つめた。
その場から立ち去ろうと、片膝を立てた状態で固まっている。


他のメンバーたちも、そしてギルモア、当麻までもその声を訊いた。


「なっなに?!今っ頭の中でっ・・・・」


驚き、慌てふためく当麻。
ギルモアは、ぱっと当麻に駆け寄り、落ち着くように。と、囁くと、そのそばに寄り添った。


<じょー、僕ハ幸セダヨ>


ぴくん。と、ジョーの肩が反応する。
彼は長い前髪に表情を隠し視線を下へ落とした。



<僕ノ幸セナ ”今”ヲ作ッタノハ、じょーナンダヨ・・・。じょーガイタカラ、”今”ガアルンダヨ。君ガイタ過去ガ、僕ノ”今”ニツナガッテイルンダヨ。ツナガッタンダヨ。君ガアノ時、僕タチト来テクレタ、君ガ僕達ト言ウ”糸”ヲ握ッテクレタカラ・・・・。僕ニ”今”ガアル。じょー、僕ハ運命ナンテ信ジテハイナイ。決メラレタ人生ナンテナインダ。選ブノハ”今”ノ自分。選ンダノハ”過去”ノ自分。未来ハ常ニ陽炎ノヨウニ儚ク 移リ変ワッテイク。”今”コウヤッテ、僕ガ君トハナシテイル事モ、含メテ・・。僕ノ存在ヲ能力ヲ、篠原当麻に知ラレテモ、良イト判断シタノモ、僕ノ予測デキル範囲デノ未来ニハナカッタ・・・・。僕ハ、”今”ヲ僕ノ手デ作ッタ。ワカルカナ?>


フランソワーズは抱きしめていた腕を緩めて、イワンをそっと、ジョーと向かい合わせになるように座らせた。


<君ノセイジャナイ。彼ハ選ンダ。ソシテ、じょーモ選ンダ。ソレゾレノ糸ハ、ソレゾレノ未来ニ分カレタダケダ。終ワッタンダ。”今”ノ君ハ、幸セ?誰ト、ナニト、戦ウノ?ソノ目的ハ?ナゼ逃ゲルノ?・・・何カラ逃ゲルノ?・・・ドウシテ逃ゲルノ?君ノ目ノ前ニアル大切ナモノハ、手ヲノバシタラ、イツデモ届ク場所ニアル>


静かに、イワンのテレパスが語りかける。


<じょー、君ハ、僕タチハ殺人用さいぼーぐトシテ改造サレタ。”殺人用”さいぼーぐトシテ生キル道ヲ選バナカッタ。ソレガ全テダヨ。ミンナ、幸セニナル権利ガアル。権利トイウ言イ方ハオカシイカモ。デモネ・・・じょー>
「もう、いいよ・・・イワン」
<じょー・・・?>





サイボーグ戦士として動いた、夜。
篠原グループ内の本社で起こった事はギルモア以外、詳細を知らされてはいない。

結果のみが報告された。



”このミッションは、篠原秀顕の死によって終了。彼は両足と、頭部のみ、改造されたB.Gの・・・生き残りだった。すべては彼から始まったんだ。新しいミッションとして”後処理と、あやめ祭”を中心に動く。彼によって新たにNBGと言う存在が確認された、それを含めて調査も進める。”







イワンの言葉が、009自身の手が篠原秀顕の人生の幕を引いたことを、語っている。
篠原秀顕はサイボーグだったのか、人間だったのか、人工知能=コンピューター(AI)だったのかは、はっきりしないままに。















「もう、いいよ・・・・イワン」










・・・朝起きてからすぐにカーテンを開けて、晴れた空を見上げるんです。



・・・それが、曇りの日でも、雨の日でも・・・。



見上げる空のご機嫌をうかがう事から、1日が始まる。



・・・・そして、波の音を聞いて、窓を開けたら潮の香りが気持ちよくて、ときおり雨の香りが含まれる事もあるし、遠くの・・懐かしい香りもある。



・・・毎朝作る甘くしたカフェオレが、エネルギーをくれる。



早めに起きて作った少しだけ豪華にした朝食を喜んでもらって・・・・・・。(70)






「もう、いいんだよ・・・・イワン。ちゃんと、わかってるから」






色とりどりの洗濯物が邸をのぞきに来る潮風に揺れて、キミが手に取る洗濯物に戯れる風。


海の匂い。
空の広さ。

囁くように聞こえる、どこか遠くで車が走り抜ける音。
ギルモア邸から徒歩20分ほど坂を下ったところにある、停留所に泊まったバスのアナウンスが、風に乗ってときおり聞こえた。

耳に心地よい波の音。
砂浜に降りる光。
海カモメが鳴き、空に描くライン。


白い雲の形がどこか夏を感じさせて、



世界は





明るく光に包まれていた。






キミの髪は天使の輪を作り、風に靡いてはきらきらと輝いて、伸ばされた手にピンク色の洗濯ばさみ。
背伸びした後ろ姿は、華奢で折れそうなほどに細いライン。
両手に抱えた、太陽の香りに胸が好く。



キミの生きる世界が、あった。
キミが生きていた世界を、見た。




”ここ”であっては、いけないんだ。





帰ってこないで。
戻ってこないで。



そのまま、そこにいて・・・・・・。










そのまま、こっちへは来ないで・・・・。











「ちゃんと、わかっている・・・」













『・・・・・・なんのために、俺は戦ってきたんだろう?』
『ジョー?』
『・・・・・何も変わっていない、ね?』
『・・・・・』
『・・・B.Gは、消えたはずで。この手で、この手で・・・確かに・・・・・なのに、また・・・』
『ジョー・・・。今回は違うわ』
『同じだ、よ・・・。何も変わってはいない、結局、俺は・・・・』












「わかっている、よ・・・・」















ーーーキミを戦いの世界にしか、連れて行けない。













目の前にいる、彼なら・・・・俺と違って君をこの世界から連れ出してくれるだろうか?







<ドウシテ逃ゲルノ?君ガ逃ゲテイルカギリ、終ワラナイ>











####


当麻の前で繰り広げられる不思議な・・・会話。

頭に響く、幼い子の声。

その声のイメージからはかけ離れた会話。

イワンと呼ばれる赤ん坊が話しているようだった。



フランソワーズの肩に触れた手に力が入る。
当麻に寄り添うようにしている、ギルモア博士は当麻を安心させるようにして、微笑んではいたが、双眸は厳しさを含んだ色だった。







「・・逃げているわけじゃない。ただ、・・・伸ばす腕が見当たらないんだよ」


彼らがいったい何の話しをしているのか、見当がつかない。
しかし、その話しの内容は、当麻の胸に一生忘れられない言の葉となって胸底にゆらぐものとなった。









「ここに、あるわ・・・ここに」


フランソワーズが、膝の上に乗せていたイワンを抱き上げて、ジョーへと近づこうと躯が動く。
彼女が動いたためにぐっと、さらに当麻の手に力が入ったが、彼女はかまわずジョーへと躯を動かした。


当麻は”今”その手を離してはいけない。と、思う。
しかし、それでも彼女は離れていく。




離れていった。







「ここに、あるわ。ジョー・・・」







『魔法の手、だね?』

『私の手が・・・・そうなら、ジョーの手は、たくさんの人を護っている、手・・・よ。とても強くて、優しい・・手』

『・・・・そうかな、この手は、多くを破壊してきた、よ?』

『それでも、この手はずっと護るために戦って、傷つきながらも、優しさを見失ったりしない・・・みんな、知ってるわ』

『簡単に人を殺すことだって出来る、サイボーグの手』

『それなら、私も・・同じだわ』

『・・・・・違うよ。キミは違う』

『同じよ?・・・・・どうして、違うの?』

『・・・・そんなことさせない、から。・・・・みんな全力で、キミにそんなことをさせないように護る、よ』(59)









「この手が、私たちの”今”を作ってくれた手よ。この手を、腕を・・・・ね?」


イワンを片手に抱き、フランソワーズは幾筋もの涙のあとが残る、頬をきらり、きらり、と綺羅めからせてジョーの手を取った。
ジョーの視線が、自分の手とフランソワーズの手に落ちる。


細くしなやかにのびる指先。
やわらかく、あたたかな、華奢な白い手。


「この手が、ずっと一緒に戦ってきたわ、護ってくれたわ、たくさんの希望をくれたわ・・・ちゃんとここにあるわ」
<ソウダヨ>


フランソワーズの腕の中から、小さなイワンの手も伸びてきたので、彼女はイワンの手が届くところまで、ジョーの手を自分の胸元に抱くイワンへと近づけた。

小さな手が2人の手に重なる。


「未来は君たちの手の中にあるんじゃ・・・ジョー、それは誰に等しく、お前自身にもあるんじゃ」


皺だらけの、強く、けれど温かい手が。
そして・・・・。


「っだか訳わかんねえんだけどよっ!ウジウジしてんじゃねえよっったく・・・いつまでたっても、成長しねえヤツだよな!」
「まったくなあ、ジョーは日本人らしい、日本人だと思うぞお?なんでそんなに謙虚なんだかなあ?」


次々に重ねられる。


「もっと自信もってよね!ジョーはリーダーなんだし、それに、遠慮し過ぎだよ!!もっともっとジョーは甘えてよ、僕たちにさあ」
「口に出せ、お前はすぐに自分の中に問題を抱えてしまう、迷惑だ」


大小さまざまに。
その形さまざまに。


「恥ずかしがる必要ないアルヨ!可愛い末っ子ジョーのためネ!いつでも応援するアルヨ!」
「なんのための、仲間だ。家族だ。1人でも見失っていてはいけない。みんなが幸せであることに意味がある。」


ぬくもり、さまざまに。


「ジョー・・・ここにあるわ。あなたが何を思い、何を悩み、何を背負い、・・・見失ってしまっても、あなたが伸ばす腕を見つけられなくても、私たちの手が、腕があるわ・・・・そうでしょう?」


重なりあった手に。
重なり合った過去が甦る。










のばした腕を、手を






・・・・・・振り払われるのが、怖い。
何も掴まなかったら、怖い。


誰にも届かない、ときは?











<マズハ ソノ手ヲ、腕ヲ伸バシテミナイト、ワカラナイ、始マラナイヨ>





どこへ?










<過去ヘジャナイ。B.Gデモ、N.B.Gデモ、魔神像デモ、篠原秀顕デモナイ。009デモナイ。自分ノタメニ、じょー自信ノタメニ。明日ヲ選ブ、”今”ヲチャント生キルンダ。チャント見ルンダ、じょーの”今”ヲ、君ハソノ手ヲドコヘノバシタイ?>



















当麻は彼らが眩しかった。
そして、羨ましかった。



強さに、温かさに、優しさに、固い絆に・・・・・。












視線をあげたジョーがまず見つめた先に、碧い瞳。
涙に濡れてきらり、きらりと光る、碧い双眸。


ぐるりと、仲間達の顔を見渡して、はにかむように微笑んだ。













====73へと続く。





・ちょっと呟く・

9・・・。
実は一番後ろ向きな人(笑)で、自分のことは常に後回し。
秀顕さんに色々影響されてますね(ニヤリ)

web拍手 by FC2
| home |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。