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彼女とぼくと末っ子と/9.1.08’
ぼくはいつの間に眠ってしまったんだろう?
さっきまで彼女にミルクをもらって、そして・・・彼女が心地よく躯を揺らしてくれていたから、その揺れにぼくは、眠ってしまったようだ。




「・・・起きた?」



<?>




ああ、そうだ。

いつもはリビングルームでミルクを飲むけれど、今日は違った。
久しぶりに遠征先から戻ってきた、末っ子の部屋だ。

彼女は1秒たりとも、末っ子と離れたくないらしく、ミルクを作って、ぼくを末っ子の部屋に連れてきた。

持ち帰った仕事をしている彼のそばで、・・・・ミルクを飲んでいたんだっけ、ぼく。




「だめだよ、起こしたら・・・」




彼女へとのばした手を、末っ子の人差し指が邪魔をした。






彼女とぼくと末っ子と。


陽の傾いた光が、差し込む窓に薄いカーテンの影が揺れて、模様を形作る。
ルームライトが消された部屋が、徐々に夜の空気をまとい始めて。


末っ子が仕事をしていたパソコンデスクのモニターが、スリープ機能に切り替わった。





「・・・・お昼寝、もう少しだけつきあってあげて・・」






囁く声が、ぼくの前髪を撫でた。


ときおり、ぼくの頬に当たる、彼女の温かくて柔らかな胸が規則正しく上下し続けている。
同じタイミングで、ぼくの髪をくすぐるのは、大好きな彼女の寝息だ。


仰向けになっていた躯を、寝返りを打つようにして、彼女の方へむけようとしたら、末っ子の手が背中を押して、手伝ってくれた。


ぱふん。と、ぼくは彼女の胸に抱きつく。


彼女の手は、条件反射でぼくの背をぽん、ぽん。と、やさしくたたいてくれた。





彼女とぼくと末っ子と、ごろん。と、横になっているのはベッドの上。



マットレスが軋んだ。






ぼくを通り越して、末っ子は彼女へと腕をのばすと、ぼくの背にぴたり。と近づいた。
末っ子の手は何度も、何度も、彼女の背に肩に、腕に・・・髪へと、往復する。



彼女の安心しきった幸せな色の寝息が、僕の頭上を通り過ぎる。

そのうち、背中から末っ子の寝息も聞こえてきた。









彼女とぼくと末っ子と。
こういうの、川の字って言うらしい。
ぼくてきには、サンドウィッチの方が好きだ。



彼女はぼくを温かく抱きしめてくれる。
彼女とぼくを世界最強の末っ子が守ってくれる。









二つの寝息が追いかけっこする。
ぼくの頭上で2人の幸せ色の寝息に参加する時間がきたようだ。




ふああ。っと、あくびをひとつ。



彼女とぼくと末っ子と。












もう少しお昼寝してやるか。












☆9月1日。9と1はいいなあ。
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そういうことかよ?/9.2.08’
彼奴が謝ってきやがった。
理由なんて、オレがわかるわけがねえ!


腹が減って仕方がねえ朝だったのは、覚えてんだけどよ。




「ごめん」
「ああ?なんだよっ朝っぱらからっ」
「・・・・・ごめん・・・それだけ」





訳わかんねえ!







ダイニングルームのドア前で、朝の挨拶をすっとばしてまで、オレに謝らなきゃなんねえこと、てめえは何したっつうんだよ?!

まさか!

オレのお宝ジェシーちゃんのDVDを無くしちまったとかっ?!
この間、お前の部屋に置いてきた限定無修正本をアイツに見つかって捨てられたのかよっ?!
それか、俺のバイクに何か細工しやがったのかっ?!
俺のチョコ食ったのか?!
頼んだコークじゃなくて、ペプシなんか買ってきたのかよ?!





「違うよ・・、そういうことじゃないんだ・・・・・・・」
「だったら、なんだってんだよっ!」







はっきりしやがらねえ野郎だぜ、まったくよっ!






「あら?そんなところで何してるの、2人とも?」


よおっ、フランソワーズ!
コイツ、わけかんねんだよっ!

いきなり”ごめん”だぜ?

気色悪ぃんだけど?


「おはよう、ジェット」
「モーニンっ」


オレは”ごめん”野郎の目の前で、わざとらしく盛大な音をたててフランソワーズの頬にキスを1つ。
フランソワーズは笑いながら、オレの頬にもキスを1つ返してきた。






そして、彼奴の”ごめん”の理由を、フランソワーズに混じる香りで理解した。



「っだよ、そういうことかよっ!」


















オレはジョーを睨んだ。


「馬鹿か?」
「・・・・・・ごめん」
「オレはなあっ!!」
「ごめん・・・ジェット」




とっくに諦めてるっつうの!
そもそも、オレはっっ・・・・・・・・



003なんてのはっ



フランソワーズはなっ










お前にゾッコン惚れ込んだっ
お前の女になったコイツなんて”元々”興味ねえんだよっ!













「ジョー、謝るくれえならっオレの代わりにっ・・・・・・・」
「なあに?どうかしたの、2人とも・・・恐い顔して・・・・」
「ああ、フランソワーズオレの”ドルフィンのそうじ当番”は当分、ジョーが引き受けてくれるらしいぜ!」










<絶対に、コイツを泣かすんじゃねえぞっ!>














「え?どうして・・??」
「そういうことに決まったんだよっ!な、ジョー!!」






もう、・・・・・・・オレはいくらあがいても、取り戻せねえんだな。

そういうこと、かよ?
そういうこと、だろ?












☆2・・・私も君に謝ろう、ごめんっ!こんなのしか今はかけないっ。ちゃんとリベンジするよ、来年(笑)
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SCENARIO
<注意・大地くんのJ&Fですが、今更ですが(笑)桃色な(R13.5?)を含んでいますので、大丈夫な方だけお読みくださいね>

私にはこれが限界。

勉強しますw




















[SCENARIO]





耳に届く、台詞。
現実にあるようで、ない、”作られたお話”の中の甘い台詞が耳に届く前に、彼の、うわずったテノールの、甘えた台詞が重なる。


「n・・ん・・・?」


隣に座る彼の熱くなった息を、右側の首筋に感じて、柔らかな、くちびるの感触が円を描くように、押し付けられてた。
くちびるの感触とは違う、一段と熱くなった咥内から、ちらりとのぞいた舌があてられる。

彼女の香りを吸い込む彼の呼吸が首筋を這い、おねだりの意を含んだ舌が、ゆっくりと首すじから、あごへ。
顔のラインに沿い、耳へと移動していく。


空気に散る囁きが、英語の台詞とかぶった。





「・・・・ねえ、ジョー」


くすぐったくて、彼のくちびるが寄せられた方へと首を傾けた。


「ん?」


首を左右に揺らして、払いのけるハチミツ色の髪。


「あのね・・」


切なげに、こぼれ落ちそうなほどに大きな宝石を縁取る睫が小刻みに震えて。


「・・な、に、?」


ジョーがくちびるにはさんだ、耳朶の、彼が彼女に贈ったジニア・カット・ダイヤモンドのピアスを舌で弄ぶ。



「見られ、..n・・て…るの・・・っmよ?」


ぴたり。と、その動きが止まる。


「・・・・・・あ、そいうえば」








あ、そういえばじゃねえよっ!








映画を見るために消された、リビングルームのライト。
兄貴が義姉さんを口説き落として購入した、大きいだけの液晶最新型TVが映し出すのは、DVDレンタルでオレが選んだ映画。

移り変わるカメラワークに合わせて、彼らにそれらの色が反射する。







はじめは、軽く頬にキス・・・だった。
それが少しずつ・・・、暗い部屋のTVの落ち着かない明るさに、珍しくヤツの髪が艶のないブラウン・カラーに見えた。





面白くないのか?
興味がない?
飽きた?

・・・映画に集中できないのか?



ま、まさか、映画に触発された?




オレは映画よりも、ヤツの動きを追っていた。
それが、なんとも情けないやら、・・・・映画より興味深いやら!






・・・この映画を選んだときのヤツの顔を思い出すと、ヤツの好みじゃないんだろうけどさ!

オレがいるの分かっていてそういうこと!するかあああ?!ジョーっ!!



「そんな顔するなよ、・・・・こんな映画を選んだ、大地が悪い」



ジョーっ!てめえっ
オレを忘れてやがったなあああああああああ!!


しっかり、ここにいるんだぜっ!!
お前の隣にだっ!


しかも、オレのせいかよっオイ!


ここはっオレの家だぞおおおおおっ(正確には兄貴のだけど!)



「ジョー、この映画面白くない?」


ジョーからの、その・・・攻撃?催促?お誘い?から解放されたフランソワーズさんの、こぼれ落ちそうなほどに大きな瞳の色はカフェで見るよりも一段と深い瑠璃色の潤み、滲んだ目元がTVの光に反射して鈍く揺らぐ。


「いや、面白いよ・・・だから・・・・」
「・・・っ」


ジョーがフランソワーズさんの鎖骨あたりに吸い付いて、薄紅い花が1つ咲く。












すとおおおおおおおおおおおおおおおおおおっぷ!
(フランソワーズさんっそんな、ああ、そんなあ、ぅふわああああ・・・)




震える手で、フランソワーズさんはジョーを自分の首元から引きはがす。

オレもお手伝いしましょうか!
なんならいっそ、ジョーをこのままポイっしちゃってもいいんじゃないでしょうかっ!



「んもう、だめ、よ。・・・ここは邸じゃないのよ?」
「余計に、興奮する」


げえ!?


「駄目、大地さんがいらっしゃるのよ?」
「・・・見られるの、キライ?」
「そういうのって、間違ってるわ」
「刺激てき、って言わない?」
「見られたいの?」
「さあ、どうだろう?・・・いつもと違うキミに逢える?」
「・・・わからないわ・・でも、そうなると、・・・見られちゃうのよ?ね、”私”を見られるの」
「いやだ」
「そうでしょう?だったら、止めてください」
「・・・・・・・うん」


なんなんっすか!
その会話はっ!!

なに残念そうな顔してんだよっ、・・・・拗ねてるのか?



「それに、今日は萌子さんのご実家に大輝さんとお盆でお里帰りなさっていて、大地さん一人だと心配だから、私たちが”保護者”としてお邪魔しているのよ?ちゃんと、”保護者”していないと駄目なの」


め!と、小さい子を叱る、母親のようにジョーの頬を、つん。と、人差し指で押した、フランソワーズさん。
可愛いっす~・・・



っち!ジョーさえいなけりゃ、フランソワーズさんと2人きりだったのに!!



オレはぎゅううううううっと、義姉さんのお気に入りのクッションに力を入れて腕に抱き込んだ。


「保護者、か・・・大地」
「っなんだよ」
「・・・お子様は寝る時間、だろ?」




むっかあああああああああああああああ!!!


んだよっその嗤いはっ




「俺はちゃんと成人式をすませた、立派な大人だっつうのっ!」
「・・それじゃ、なんで俺らがいる?」
「知らねえよっ!義姉さんが勝手にフランソワーズさんに話し持ちかけてっ!」
「なあ、フラン?」


フランだあああああああ?!
フランソワーズさんはお菓子じゃねえ!


「なあに?」


ああん・・・・可愛いっすねえ、そのくりっとした瞳が、少し傾けた顔の動きと仕種が・・・!!!


ハチミツ色の髪も、力なく感じるけれど、その加減がゆったりと普段見る事ができないフランソワーズさん。
カフェで会うのとは違い、ここがオレの家(兄貴のだけど)で、リビングルームで、そして、オレのテリトリーにいるフランソワーズさんが、リラックスしている。

そんな姿が不思議。


それでいて、ちょっと恥ずかしい。




中学のときに初めてつき合った彼女を部屋に招き入れた、感覚に似ているかもしれない。
(今日はコブ・ジョーつきだけどな!)


どきどき、とした緊張と、渇きを覚える喉。
うずく胸はなかなか上手く肺に空気を送り込むことができなくて。
どこに視線をおけばいいのか、分からずに泳ぐ瞳。

何を話しをしたらいいのか、わからなくて。
ただ黙って、コンビニで買ったジュースを一気のみ。


彼女の、困ったような、うつむいた横顔と制服だけをよく覚えている。





懐かしい感覚を思い出させた。












「・・・俺たち、大地の大人としてのプライドを傷つけたみたい、だよ?やっぱり、いくらなんでも変だろ、20歳超えた男に”保護者なんて、さ」


ジョーの言葉に、ん~~~~、っと悩む、フランソワーズさん。

少し下がった眉が愛らしく、下唇を押し上げて、尖ったような、への字になったような、愛らしいくちびる。
妙に艶かしくツヤがあるように見えるのは、TVの光のせい?


「そうよねえ・・・確かに、失礼よね。大地さんはもう、きちんと成人なさった男の方ですもの,”保護者”なんて失礼だわ」
「だろ?・・・・行こうか?」


え?

な、なんか、変な方向に話が進んでませんか?

あれ?





よ、予定では、・・・お泊まりでしたよね?(4泊5日!ジョーも込み・・・くそっ)
あのさ、ジョー、いいんだぜ?


うん。
少しくらい、我慢するよ、オレ!
ジョーくらい、へっちゃらさっ(キラーん、と歯を光らせてみる。)




「j・・fらんそ・・・」
「そうね、やっぱり帰りましょう。・・・DVDは置いておくわね、大地さん」


ほへええ?!




あっさりと、義姉さんに頼まれた”オレの保護者”をあきらめて、花が咲くように、愛らしく微笑んだフランソワーズさん。
その言葉に、ふっと口元に何やら含みのある笑みのジョー。



「邸には、泊まるって行ってきてるから、・・・いつものとこ、でいい?」



はいいいい?
いつもの、とこ?!


って、どこですか?
そんなところがあるんですか?
なんでですか?


え、お宅へは戻らないんですか?






あ、映画!

映画が途中っすよ!



「も!やだ・・・・、大地さんがいらっしゃるのよっ」


カーペットが敷かれた床から立ち上がり、フランソワーズさんの頬が艶やかに染まる。
オレはそんな彼女を見上げる。と、その視界を塞ぐように、オレの隣にいたジョーも立ち上がった。


「じゃ、な・・・大地。ああ、昼には電話する、よ。昼はフランソワーズに作らせるから」


作らせるだとおお!


「そうね、お昼は私がちゃんと作ります。今日は外食だったものね。萌子さんがいらっしゃらないと、大地さんはインスタントばっかりになるって、心配してらしたから、萌子さんが帰っていらっしゃるまで、お食事はちゃんとさせていただくわ、ね?大地さん」
「え?あ、はい・・・どうも、あの、ヨロシクお願いします・・・え?で、でも」



ええっと、なぜ朝ご飯は飛ばされているんでしょう、か?
ねえ?


ねえ、ちょいとお二人さん?
(荷物は、置いたままなんです、・・・・ね?)




映画の世界はオレたちの会話を、状況を無視して流れていく。

映画と同じくらいの流れで、すんなりと2人はリビングルームを抜けて、玄関に向かう。
そんな2人の背を、慌てて追いかける、オレ。



話しが急すぎて、あの。
それに、あっさりし過ぎてませんか?
妙に聞き分けが良すぎませんか、フランソワーズさん???



玄関で、フランソワーズさんが履き始めた華奢なパンプスは、白。
甲の部分にギャザーが寄っていて、義姉さんがカワイイ!と、どこで買ったか訊ねていたものだ。
ジョーは、リーボックの黒のスニーカー。

よくよく知ると、あんまり服とかに興味がないらしい。
いい感じのTシャツを着ていたので、兄貴が目敏くジョーに訊ねていたら、返ってきた答えは、「ユニシロのセール500円」だった。



今日も、それを着ている。
今をときめく、レーシングカーのドライバーのくせに・・・、安上がりな男だ、オレの方がいいもん着てるぜ?

へへん♪






けどよお・・・・なんでそんなに格好よく着こなしてんだよ!ったく、オレの方がユニシロって言われても文句言えねえ!





「じゃあ、大地さん、おやすみなさい」


はっ!



「あ、あの、え?ほ、本当にかえt」
「じゃあな、”昼”に」


フランソワーズさんの腰に腕をまわして、自分へと引き寄せると玄関のドアを開ける。


「あ、え。う、うん、あの、でも、なんで。え?でもなんで昼?」
「・・・・・野暮なこと訊くな、”大人”、だろ?」


一段と色濃く薔薇色に染まったフランソワーズさんは、ジョーの胸に頬をすり寄せるようにして、顔を隠した。その彼女の肩を抱いて、ジョーのアンバー・カラーの瞳が妖艶に煌る。


「あんな映画を選んだ、大地が悪い。・・・・フランソワーズがその気になってたのに、黙って放っておくのは”男として問題だろ?」


え?あ?


・・・・・・えええ?!



フランソワーズさんが、その気!?



「・・・ジョーっ」


ジョーの胸の中のくぐもった抗議の声が、妙に色っぽい。
くすくすっと、喉で笑うジョーは・・・男のオレでも、どうしたらいいのかわからない。


「おやすみ、大地。ちゃんと戸締まりしろよ、何かあったら電話するように・・・・。なるべく邪魔するな、よ」
「・・・お、・・・う・・・」




ばたん。と、玄関のドアが閉まる。




3LDK+サンルームの、兄貴が買ったマンションは、カフェAudreyのビルのオーナーが紹介してくれた不動産屋を通して、”特別”料金で買った。ローン10年。

5年ほどたった今でも新築、真新しい雰囲気を未だに感じさせる。




背後のリビングルームで、聞こえる英語の台詞は、愛を囁く。
明るい廊下と玄関。
暗い、リビングルームに青白い光。











ジョーの声がリフレインする。

”フランソワーズがその気になってたのに、黙って放っておくのは”男として問題だろ?”




映画に触発されたのは、ジョーではなく・・・フランソワーズさん。





それで、ですか?
それで、あんなにあっさりと・・・ですか?


立ちつくすは、玄関先が妙に寒い。
熱帯夜の記録を更新し続ける、夏。

リビングルームから流れるエアコンの風が、北極圏の吹き荒ぶブリザードよりも冷たく背中に感じる。


携帯電話が、メールの着信を知らせた。


ジーンズのポケットからそれを取り出す。
フランソワーズさんからだった。


”おやすみなさい、大地さん。
もしも寂しかったら何時でもいいので電話をください、明日からは予定通りお泊まりしますから。
今夜のうちに、私、がんばりますね”





・・・・・・フランソワーズさん、それって、あの?
駄目押しって知ってますか?




その前に、何をがんばるのか、説明していただけないでしょうかあああああ?!





続けて、メールが届いた。

次はジョーからだ。


”俺もがんばります。昼前に電話をくれ、起きれるか自信ない”












・・・・・。










香奈恵さん、助けてください。
香奈恵さん。
ゲスト・ダンサーとしてヨーロッパをまわっている、香奈恵さん。
俺に今必要なのは、あなたのその強さです。



義姉さん、兄貴。
来年からは厭がらず、ちゃんと里帰りに同伴させていただきます。
正月も、帰ります。

田舎もたまにはいいっすよね。
もしかしたら、佳子ちゃんに逢えるかも、だし。
懐かしいなあ、彼女は地元の短大って聞いたから、もう働いているのかな?






寂しいよ。
オレ、猛烈に寂しいよ・・・。

あの2人がさった後、ここは地球で一番涼しい、いや・・・寒い場所になりました。


















####

「ジョー?」
「・・・なに?」
「あんまり、大地さんからかっちゃ駄目よ?」
「・・ん?」


車を走らせて、待ち合わせ場所へ急ぐ。


「だって、そうでしょう?・・・・他の方法もあったのに、あなたが考えた案は、恥ずかしくて・・・」
「・・・・ああ、まあ、・・・・上手くいっただろ?」
「そうだけど・・・・。イワンも、ひどいわ。当分動きはないって言っていたのに・・・」
「仕方ない、むこうはこっちの都合なんて考えてないんだ」


人気のない朽ち果てたビルの、駐車場。
目立たないように、ビルの影に車を止める。


「・・・わかってるわ、でも」
「なかなか寝ない、子どもが悪い」
「ま!・・・ジョーの方がお子様よ?」
「・・・ふうん」
「今夜中に終わればいいけれど」
「がんばるんだろ?」
「もちろん!003ですものっ」


車から降りた、003と009は、引力が引き合うように並んで立ち、ある方向へと視線をむけた。


「・・・・・・大地はきっと勘違いしてるだろうな」
「え?」
「いや、さっきのメールの内容に」
「?」


きょとん、とした。大きな瞳に、ジョーは苦笑する。


「終わったら、教えてあげる、よ。迎えがきた」


空に浮かぶ軍用機、その名は・・・。



「ドルフィン号だわ、002が運転しているの?」
「いや、004か008だろ。ここへは降ろせないからね」


オレンジ色の光が2人の視界に入り、彼が持つジェット音が聞こえた。


「キミから、行くんだ」
「了解」


降り立った、つんつんとした赤毛の髪が特徴の、仲間の1人が003へと腕をのばした。


「すぐ戻って来るぜ」
「ああ」
「2人いっぺんでもいいんだけどよ?」
「・・・・安全を重視したい」
「そうかよ、そんじゃあ待ってろ」


002に抱きかかえられる数秒前、003は009の頬に、いつもより少しだけ熱さを感じるキスを一つ。


「・・・・その気になったのは、本当なの」
「知ってる」


シャーペンの芯のように細い声は折れることなく、彼の耳に言葉を書いた。


「行くぜ」


002に抱きかかえられて、空へ。


「・・・・できたら”いつものところ”へ行きたかった、よ。それに、映画の続きも気になる・・・・。現実は映画のシナリオのように都合よくできてなくて・・悪いな、大地」


小さく溜め息をついて、そして・・・彼の視線は完全に009のものとなった。
















end.










・あとがき・


大地くんシリーズでやってはいけないと決めたルールをやぶりまくった・・・。

1)サイボーグはしない(笑)
2)9と3以外は出さない。・・・ように努力する(もう無理だな・・・)
3)描写は大人ちゅーまで!(ニュアンス的に、そうですよ~は有り。それ以外かけないからって、意外と書いている気がしないでも、ないんですが、どうでしょうねえ?)


私的に、桃色モードがんばった。=JとFもがんばるらしいからw

でもなんで”桃色”と言うんでしょ?・・・はて、なんででしょう?


ここはひとつ、檸檬?いや、それは違う。

完熟フルーツ?
・・・?

蜜月モード?あ、これは新婚さんですねえ。
ハチミツ、モードって・・・3の髪色だし(笑)

熟成?薫製?ジャム?
やっぱり、桃色なんですね。
ピンクて書くと、ダイレクトですし。


いつもお世話になっている色辞典で”ピンク”を検索。

チェリーでもいいかも・・・。あ。でも、別の意味もある。から却下。

やっぱり、桃色はももいろですね!

・・・あとがきになってない。ってか動揺してます・・・(汗)

大地くんとこでは、そういう描写を意外と書いてる気がするんだすでけど、どうなんでしょう?

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唇/ボク・アタシの初めての・・・・?
「いいよ、これくらい・・・大丈夫だから」
「切れてる・・わ」


不意をつかれて1発。


敵から受けた傷じゃないことだけが、ジョーの少しばかり苛つく胸の荒波を、それ以上、目の前にいるフランソワーズにぶつけなくてすんだ。


「どうしてジェットがジョーを殴ったりしたの?・・・いつもの口喧嘩じゃなかったの?ジョーも・・・彼に殴られるようなことをするなんて・・・ケンカなんかしないで。仲間なのに・・・」


細く整った眉が八の字に下がり、泣きそうに、こぼれ落ちそうなほどに大きな宝石が涙に滲む。
メンテナンスルームの無機質な白の明るさに、きらり、きらり。と煌めかせ、心配げに、長く宝石を縁取る睫が悲しげに瞬くのを見て、ジョーは下くちびるの内側を軽く噛んだ。

拗ねたように尖らせて見えるくちびるの右端に、円を描くように赤から紫にグラデーションする痣。
咥内に広がる血の味が、内側の頬肉を切ってしまっていることがわかる。


「痛そう・・・原因は何?」
「・・・・・・言いたくない」


ジョーの呟いた答えに、溜め息をつくと同時にフランソワーズの目蓋が、閉じて、頬に影をつくる。


「どっちが悪いの?」
「知らない」
「・・・・・ジョーなのね?」
「・・・・・・・」
「ジョーでしょ?」


深い碧の宝石に覗き込まれて、そっぽを向く。
その顔を、小さく華奢な手の、細くて長い、整った桜貝色の爪をもつ指先が追う。


「痛そう・・・」


触れられたグラデーションする痣に、引き攣るのは痣とは反対側の頬。
そして、その指がジョーのくちびるをなぞる。


上くちびるに伝う、爪。
下くちびるを撫でる、中指の腹。




「もっと、腫れてくるわ、きっと・・・」



息を吸い込むために、震えて、少しばかり開いたジョーのくちびる。






「口の中も切ってるんでしょ?今日はジョーのお夕食はぬるくしないと・・・」


離れていく指先。
追いかけていきたい衝動に舌がくちびるにはさまれる。








「イワンと一緒のミルクにしちゃいましょうか!ケンカのお仕置き!」


とっても素敵なアイデアでしょ!と、言わんばかりに、柏手を打った小さな白い手。


























ケンカの原因はキミなんです、けど?










「イワンのミルクなんか、飲めるかよ!」


殴られた痛みと、それっぽい雰囲気(ムード)が壊されて、立ち上がって、自分のそばから離れようとするフランソワーズへの不満が、ジョーの口調を少しだけきつくする。


「もっ!こんな痣を作っていて、口の中も切ってるのに!普通のお食事なんて絶対、痛いわよ?!ケンカのお仕置きなんだものっ」
「食うよっ普通に!もっと酷い怪我のときだって普通に食ってたんだぜっ!なんでオレだけお仕置きされなきゃなんねえんだよっ、殴られたのっオレなんだぜ!わかってんのかよっ」
「・・・・ジョー」
「っだよ」
「そんなに乱暴な言葉を使うお口には、こうですっ!」


立ち上がろうとしていたフランソワーズは、素早くイスに座り直した。

フランソワーズが作り出した風のために、ジョーの鼻腔にいつもの距離で香るよりも10倍は濃く香り、ジョーの視界はフランソワーズの碧の宝石だけに捕らえられ、宝石を縁取る長い睫の、ゆったりと扇いだ微風が、彼の頬の上を撫でる。


”イワンのミルク”発言に不満であった、拗ねたように、不満げにつきだしたくちびると、重なったのは彼とおなじだけど、同じじゃない、彼女の、もの。










音もない、柔らかく、甘い、感触、は、触れられた、彼女の指、とは、まったくの、別もの。


















な、?!


えぇ?









超至近距離で見る、宝石に映った、驚きに固まった自分自身の顔。
触れ合ったばかりの、フランソワーズの艶ある、ふっくらとした形良いくちびるの動きを追う。


「いい?そんな乱暴な口はきかないでください、ジョーらしくないわ。・・・もっとお仕置きしちゃうから!」







お、おし、お仕置きって・・・キミ・・・・・・。







離れていく花の香り。
いつのまにかジョーの膝にあった彼女の手が残す、熱さ。
手跡が、焼き印を押されたように、ジョーの膝に残る。








「ジョーはここで、1人反省会よ。みんなの様子をみてくるわ、きっと心配してるんだから!」



イスから重力を感じさせずに、ふうわりと立ち上がり、メンテナンスルームのドアへと向かう、フランソワーズ。


そして、ごく自然に、何事もなかったかのように、振る舞う。















あの・・・・・・今のって、その・・?


メンテナンスルームから出て行こうとする、フランソワーズを視線だけで追うジョーの、驚きに硬直したままの躯は、いまだに自由が効かない。



「もっと、お仕置きしてほしいなんて、Hなこと考えちゃ駄目よ?」







!!






フランソワーズの最後の言葉が、ぐるぐる、ぐるぐると、頭のてっぺんから足のさきまで、躯中を駆け回り、ふわふわとした目眩を感じるジョーは、その場に1人残された。
・・・・やっと動くようになった躯をのろのろと移動させ、メンテナンスルームのベッドへと俯せに倒れ込む。









なんなんだよ・・・・・・もっとお仕置きって、
おい・・・・・・。



彼女にとって、こんなの・・・・・挨拶程度なんだからな!

挨拶程度!



そうっっ!
挨拶っ!



お仕置きっ!



お。






お。し。お・・・・・・・・き





「もっと、お仕置きしてほしいなんて、Hなこと考えちゃ駄目よ?」








・・・・・・・・・・・ああああああああああ!!!














*ドルフィン号の備品であるベッドを壊した”理由”をギルモア博士に問いつめられて、普通に”むしゃくしゃ”して。と、ケンカを理由にしたらいいのに、できなくて(思いつかなくて)口ごもる、ジョーの、そのまじめ?さが可愛い。と、付け足しておきます(笑)*

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ちゅ。/9.3.08’
自由恋愛国出身の、友達以上、恋人未満の彼女。


朝の挨拶に、ちゅ。
行ってきますに、ちゅ。
おかえりなさいに、ちゅ。
ありがとうに、ちゅ。
おやすみなさいに、ちゅ。



なにかある事に、ちゅ。ちゅ。ちゅ。ちゅ・・・・。





文化も生活スタイルも全く違うから、仕方がない。
仕方がないんだ。


仕方がない。



仕方がないんだけど、さあ。








ボクのこと、好きなのって嘘なんじゃない?
実は、ボクの勘違いってこと、ない?

なんで他の男に、ちゅ。なんて気軽にできるんだよ?




ボクが日本人で、そういう事に”慣れてない”って知って以来、ちゅ。なんてするどころか。
003と009の関係でない限り、手も繋がないんだよね。






まじ、ムカツクんだけど?
















なめんなよ、ボクを。














「ジョー、どこかへでかけるの?」


ソファから立ち上がろうとした、ボクにむかって言った。




「うん」
「いってらっshあ・・・・」




ボクの躯は彼女の隣に素早く移動。



彼女の頬を両手でおおう。
少しボク向きに上向かせて。








言葉の途中に開かれたくちびる。



ちゅ。どころではないよ。



やさしく、あまく。そして、ゆっくりと、やわらかく、舌先でなぞる。

角度をかえて。

少し吸うようにあまく噛んでみる。




逃げられないよ。




softに触れて。
deepに割り込んで。

君の方へと追いかける。
ボクの方へと誘い込む。




角度をかえて。



赤く熟れた果実を、味わう。








角度をかえて。


予定よりも長く。






ボクのシャツにしがみつく、手の力が強くなり、弱くなり、震えだし、・・・熱くなり、その気になって。














「キミも行くんだよ、一緒に」
「・・・・」



「ボクの部屋がいい?キミの部屋?」






ちゅ。なんて、もう他の男にできなくしてやるからな!


なめんなよ、ボクを。























☆9月3日です。・・・どうした私・・・・・・・・・・・・(困)
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子犬を散歩へつれて行く理由/9.4.08’

「いい加減にしてくれ」
「いいだろ?」
「よくない・・・オレの貴重な時間を邪魔するんじゃない」
「時間はありあまってるだろ?」
「オレにはオレの予定がある」
「たまには、ボクをその予定に加えてくれよ!」


子犬だ・・・・・・・・。











「だって、フランソワーズが・・・」





出たな、必殺”だって、フランソワーズが・・・”
知らん、なんでオレが、お前達のままごと恋愛につき合わされなきゃならんのだ!







「フランソワーズがどうかしたのか?」


訊いてやる、オレもオレだが・・・・・・。


「だって、フランソワーズが・・・。どうしてジョーはアルベルトみたいに出来ないの?って、さ」


あの、フランス娘は・・・、日本の子犬が出来るわけないだろう?



「それで?・・・・オレにまとわりついてどうするんだ?」
「・・・・何が”アルベルト”みたいに出来ないのか、よくわからないんだ、だから」


そうだろうな。



「じゃ、ひとつ・・・教えてやろう」
「!」
「そのかわり絶対に実行しろよ?約束できるなら、だ」


お~お~・・・、お前に尻尾があれば千切れんばかりに振ってくれただろうなあ。

















後日。


「アルベルト、あのさあ・・」
「ん?どうした?」
「覚えてる?前に・・・・ほら、教えてもらった・・・その・・」


ああ、あれか。
・・・・・・・・実行したのか?


「・・・それは、それでよかったんだけど、その」


それは、それでよかったってことは、実行したんだな!
まさか本当に・・・か?
嘘だろ?




子犬とフランス娘はそこまでの仲だったってことか・・・。
いやいや・・・。

これは騙されたな。

冗談のつもりで、からかったんだが・・・参ったな。




”僕たちは別に~”なんて抜かしてやがるし、こっちが見ていて恥ずかしくなるくらい、赤い顔して必死に否定するから、・・・・すっかり騙されていたな。


「それで?なんだ?」
「・・・・・・アルベルトが、”こんなくらい”の事しか出来ないの?まさか!って・・信じてくれない」




なっっっっっっ!!
おまえっ!

オレから訊いたって言ったのかっ実行した上でかっ。

おいっっっっっっ!
素直に頷くなっ。しかもなんだって?!

”こんなことくらい”ってなんだ!こんなことくらい!ってのはっっ(怒)



ヒルダは好きだったぞ!(十分に楽しんだぞっ!)


「よおおしっ、ジョー、あのフランス娘に”さすがだわ”って言わせてやるっ、しっかり訊いておけ!・・・・その前に、お前達のベーシックな事をかいつまんで教えろ、そこからだっ」
「ええ?!・・そんなこと・・・・君に言うの?」


お前が言い出した事だろっ

「言いったのはフランソワーズだよ!それに、教えたからには、絶対に実行しろって言ったのアルベルトじゃないかっ」





ぐ・・・。









そこへ通りかかったフランス娘。


「楽しそうね?なあに、私も一緒していい?」






・・・なんかムカツクぞ、お前のその余裕の顔と態度。


声に出さなくとも”ふふん♪”が聞こえてきそうだ・・。


「いや・・、別に、そうだジョー・・・・煙草を買いに行くからついてこい、この間、お前が行きたいと行っていた店に連れて行ってやる」
「?」



子犬の顔に?マーク。
けれど”散歩”に弱いのが犬だ。







いいか、子犬っ、しっかり”本気”のオレの”すごさ”を叩き込んでやる。
あとでフランス娘がオレを見て逃げて行くほどになっ!























☆何の話しですか・・・(汗)どうしたんだろう、私・・・9と4でした。
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頼む。/9.5.08’
どういうことだ。

どういうことだ。どういうことだ。

どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。
どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。
どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。
どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。
どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。
どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。
どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。
どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。
どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。
どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。
どういうことだ。どういうことだ。どういうことだ。
どういうことだ。どういうことだ。
どういうことだ。



どういうことだ?





「だめよ・・・」
「だれもこないって」
「でも・・・」
「003なら大丈夫だろ?」





そういう問題じゃないと思うぞ、ジョー。

そういう問題じゃないと思うぞ、ジョー。

そういう問題じゃないと思うぞ、ジョー。

そういう問題じゃないと思うぞ、ジョー。

そういう問題じゃないと思うぞ、ジョー。

そういう問題じゃないと思うぞ、ジョー。

そういう問題じゃないと思うぞ、ジョー。


そういう問題じゃないと思うぞ、ジョー。

そういう問題じゃないと思うぞ、ジョー。

そういう問題じゃないと思うぞ、ジョー。



そういう問題じゃないと思うぞ、ジョー。



そういう 問題 じゃない と 思うぞ、ジョー。







「も・・・・」
「可愛い・・・」







いや、確かに可愛いがな、ジョー。











自然を満喫しろと言ったのはオレだ。
満喫すべきは”自然”であって、決して、”003”ではない。
たしかに、大自然の中でみる、彼女は魅力的で美しいが。


2人で分かち合うこととはそういう”自然な行為”ではないだろう、ジョー。





「いや・・・」
「いやがってない癖に」





その通りだ。

しかし、だ。



そういう問題じゃない。









それより、どういう事だ?
お前達は、”僕たちは別に~”な、関係だっただろう?


違うのか?










むう・・・・・。





いいだろう。
それは、それでいいだろう。

オレは何も言わん。









しかし、だ。









ミッション中は控えてくれ。


控えてくれ。

控えてくれ。

控えてくれ。

控えてくれ。

控えてくれ。

控えてくれ。



おい。


控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ。控えてくれ・・・・・・・・おおっ・・・・・・・。



控えてくれ。





控えてくれ。

控えてくれ。





控えてくれ。






躯が驚きに固まって動かん。








003、気づけ、オレ。














控えてくれ。
止めてくれ。










009





頼む。












☆だから、どうしたんだろう・・私って005って難しいからって、適当すぎないか?!
 って言うか、のぞき?!
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今日のランチは/9.6.08'






なあに、やってるアルかねえ?








「アチっ!!うわっ・・・・・・・え?これでいい・・・あっっっ!!」


フライパンの火!火!せっかく炒めたタマネギがっ。







ああっ!そんな切り方じゃ駄目アルヨ!?


鍋っ、ジョーッ鍋のお湯っ!
空焚きになってしまうネっ!


ちゃんとジャガイモの芽はとるアルヨ!


ああ、見てられないネ・・・。





「えっと・・・、じゃがいもは・・これくらいの大きさ?」





全く、何作ってるあるか?



「あ、張大人!」
「・・・・何してるアルか?」
「カレーライス!」
「カレーライスを、作っているあるか?」





今日のランチをジョーがネ?






「いいかな、キッチン?」
「良いアルヨ!けど、鍋のお湯が沸騰してるアルヨ、フライパンのタマネギが焦げるアルヨ?」
「?!っああ、あああああっっ!」


ちと、焦げたかネ?



「なんで、あんさん、いきなりカレーあるか?」
「う~ん・・・、たまに食べたくなるんだよ、日本のカレー」
「日本の?」
「うん、フランソワーズが作るのもとっても美味しいけど、あれは日本の”カレー”ライスじゃないもん」


なるほどネ。
よくCMで宣伝しているのと、フランソワーズが作るのとちょと違うネ。




「それで、ジョーが作ってるアルか?」
「うん」
「言ってくれたらワテが、作るアルヨ?それくらい作り方知ってるネ」
「あ・・、い、いいんだよっ!!ボクが作りたいんだからっ」



なに、慌ててるネ?





なんで、そこで恥ずかしがるアルか?
あんさん、顔真っ赤アルヨ?
どっちが人参かわかんないネ。









「だから、今日のランチはボクにまかせて!ね?」




いいアル・・・が・・・。ちと、あんさんだけって怖いネ。
心配アルヨ?


「もう・・・、そんな顔しないでくれよ、大丈夫だよ!カレーライスは小学生でも作れるんだからさっ」




あんさんの料理の腕は小学生以下アル・・・・。
お味噌汁も、煮魚も、キュウリと蛸の酢の物も、あんさんが作った後にフランソワーズがトライして、そっちの方がずっとずうううううううっと、美味しかったネ。


んん?





「ジョーは・・・・もしかして・・・フランソワーズに食べさせたいアルか?」
「う・・・ん・・・」



人参通りこして、リンゴになったネ。


先週は肉ジャガだったアル・・・そういえば。
甘ったるい、肉ジャガだったね。

あれも、フランソワーズが次の日、作り直したら最高に美味しかったネ!







「た、食べたことないのを、作ってなんて・・・・お願いできないだろ?」
「ジョーは、・・」
「もう、張大人っ邪魔しないでよっ、お昼に間に合わなくなるからさっ!!」









アイヤー・・。
そうアルか!









###

できたカレーライスは・・・ジャガイモ火が通ってなかったネ、人参も・・・。


「やっぱり、上手くできなかったなあ・・・」


でも、フランソワーズはとっても嬉しそうに食べていたネ。


「美味しいわv日本のカレーライスってこういうのなのね?」
「うん・・・」
「今度、私も作ってみていいかしら?」
「うん!」




なんだか遠回しなアプローチ、アルね。



「楽しみにしてるよっ」



フランソワーズに、

”ボクこれが好きだから、作って”

ってなんで言えないアルか?




「上手くできなかったら、ごめんなさいね?」
「大丈夫っ!フランソワーズは何作ってもボクなんかよりも、とっても美味しく作るんだからさっ」





今度は、一緒に作ったらいいアルヨ・・。

がりっ。と、火の通ってないジャガイモ齧らなくてすむネ。





「明日でもいいよ?」
「連続になってしまうわよ?」
「カレーライスだったら、毎日食べても飽きないよ!」


そこに”フランソワーズのカレーライス”ってなんで言えないアルかねえ・・・。


「んふふ。じゃあ、後で作り方教えてね?」
「もちろん!」





じっくり、ことこと、煮込むのは、カレーライスじゃなくて、あんさんたちの恋もアルね。
生煮えにならないように、しっかり煮込むネ。

出来上がる日を楽しみにまってるアルヨ。









*偏っていた方向から抜け出した(笑)さすが6!
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おせっかい/9.07.08'


参ったなあ。
009と003が、ケンカたあ・・・。

それだけでドルフィン号の空気がガラっと変わっちまうんだからして。

「原因はなんなんだあ?009?」
「・・・」




だんまりか・・・。



003の方は004と008に先を越されちまったんで、仕方なく、009に話しかけてみたがあ、やっぱり駄目だなあ・・。
こいつあ、一度口を閉ざすと、問題が解決するまで貝になっちまう。


「泣いてたぞお?003は・・・、女を泣かせるなんて、男としてどおかと思うぞ?」


009の反応は、ない。


「吾輩は信じられんなあ、・・・009、あんなに愛らしく、可愛い003とケンカするたあ!お前は男だろ?」
「・・・」


お。


ちらり。と、だが、視線をこちらによこした009。
”泣いていた”と、言う言葉が効いたか?




「なあ、なんで彼女を泣かせるようなことするんだあ?いったい、何が原因だ?」
「・・・泣いていた、本当に・・・?」


おお!


「ああ、彼女の大きな瞳いっぱいに、涙がたまって今にもこぼれ落ちそうなほどに、なあ!」
「・・・・泣かせる、泣きたいのはこっちだよ」


なぬ?!


「お前がか?」
「・・・・・003が悪い」
「003が?」
「・・・・・・・・・・」
「それでも、男と言うものはだなあ、じっと我慢して、女を受け止めるn」
「恋人”なんていないっていったんだぞ!」



・・・なっ・・・え?




009、どうした?
恋人なんて、いないって・・003にそんなヤツいたか?
吾輩は初耳だ。


「いない、だろう?」
「っ・・・・・」


なんとおおおお!!
009っその反応はっ!!


「・・・オーウェン教授に迫られて・・たんだ、003」
「あのスケべ親父は、えらく003を気に入ってたからなあ・・・吾輩もあの態度は気に入らん!」


ここは、落ち着いて・・・慎重にこなさねば!


「それで、教授が”恋人”はいるのかって・・」
「それで、003がいない。と、答えたか?・・・それで009となんでケンカになるんだ?」






おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
見事、吾輩は見事にしてやりましたぞ!





009が真っ赤だっ!!



「そういう仲だったのかあ?009と003は!」
「違うっ!」


へ?

ち、違う・・?
そんな力んで拒まなくても・・、その顔がしっかり”そうです。”っと言っておるんだがなあ?


「何が違うんだ?」
「・・・・」
「ここまで言っておいて、黙っているのはおかしかろう?吾輩でよければ、相談に乗るぞ?これでも役者のはしくれ!様々な役をこなすためには、様々な人の心理を読み解き、勉強しておかねばならん身でなあ、何かしら、009の役立つ”言葉”は持っているかもしれん」
「・・・・」


ん?
もう一押し必要か?


「・・・・・だって違う、003とボクは・・・」


ほな、ぽちっとな!


「っっ007?!」
「ジョー・・・どうして?」





どうだ!
なかなかのもんだろう?

さささ、遠慮なく吾輩が扮した”003”の前で、その心のうちを吐き出してみるのだっ!




「・・・ジョー・・・お願い、言って?言ってくれないと解らないわ・・・どうして?何が気に入らないの?」
「っや・・・止めてくれよっ00せっ」


弱々しく首を振ってだなあ、そして上目使いに・・・そうそう、瞬きはゆっくりと・・・そして、下唇を少し吸い込むようにして噛み締めて・・・あ、手だ、膝の上で少し拳を握るようにして・・っと。



どうだ!!


「ジョー・・・私っ・・」
「っ・・・あ、・・・・・・・・・」


悲しい事を思い出せっ!!
悲しい事っ!

ああ・・・最後の一杯を楽しみにしていた、ブレンデッドウイスキーの響30年をっ006が、「あとちびっと飲んでしまうアルヨ」なあああああんて、勝手に飲んじまったんだよああああああっ!

うっ・・うう。
日本を去るときに・・・うう・・・コズミ博士が1本だけ分けてくれた・・・吾輩の・・ううう、吾輩の..うううああああっ。


「ふ、・・・ふらんそわ・・・ず」


うう・・・ああ、あの一口が・・ああ・・・あの,あの酒が・・・うううっっ!!


「ジョー・・・私っ・・」
「フランソワーズっ・・・」











うぎゃっ!



































「・・・・あ、ごめん、007つい・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「だ、大丈夫?」





009・・・005と、どっちが・・・ガクっ。







「あ・・・博士っ博士っっ007っがあああっっ!!!ボクっ思いっきり抱き潰しちゃったっっ!!」
















*勢い余って、憎さもあって(笑) 007・・・やっぱり苦手だなあ・・・。
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距離/9.08.08'


まだ、僕がジョー/009と距離を保って接していたころ。



ジョーと言う人間が今ひとつ理解できなかった。
リーダー然とした009である彼だったから、まだ、なんとかつき合えていた感じ。









ミーティングが始まる前。
彼はジョーではなく、009だった。

紅の防護服に身を包む彼は、ジョーじゃない。


ジョーでなくなって、009だとしても、味覚まで完全に変わらない。



ブラックでなんて飲む事ができない、彼。
けれど、甘いモノが好きなわけでもない、だから、彼の珈琲は甘くないラテになる。



見た目、彼女と同じもの。

ドルフィン号のカップは全部同じ。





書類に目を通していた彼は、隣に座る彼女のカップに手を伸ばした。




じっと書類から目を離さずに、それに口づける。

隣に座る彼女の、肩が震え・・・その愛らしい唇にあてた人差し指。
同時に通信を僕のチャンネルに合わせた、彼女。


『黙っててね!面白いから・・・』




面白い?
彼は009だよ?



『ジョーはジョーだもの』


ジョー?



009・・・だよ?






僕はじぃっと009を見つめた。




カップの縁に唇をよせて、それを傾けると、ミルク色に色も味も柔らかくなったラテが、彼の唇へと吸い込まれていく。
彼は無言で、書類から目を離す。



カップと、彼女を交互に見つめる。

そして、テーブルの上にある、本来彼がが飲むべきだったラテに視線を落とす。
彼女が、009の手にあるカップをそっと彼の手から受け取った。



・・・飲み込まないのか?







彼の口の中には、まだ甘いラテがあるようで。
彼の頬がこころなしか膨らんでいる。













009?




彼は視線を隣に座る彼女へと戻した。

真剣な表情で。
殺気さえも感じそうな、鋭い視線。



ああ、やっぱり009だ。






しかし・・・隣の彼女はこらえきれなくなった笑いが溢れ始めていた。


「ジョー、飲み込んだらいいじゃない?」
「・・・・」
「ずっとそのままのほうが、甘いわよ?」



009の手から引き取った、カップをテーブルの上に置いた、瞬間。



「・・・・っ」
「っ!」







009っ!?

なっ!




003にっ何をっええっっ!?


「はああああっ・・・甘かった・・・・、間違ってたの知っていたんなら、教えてくれよ」
「っ・・・・・・も!」


009の代わりに、こくん。と、鳴った003の喉。
彼は平然と、何事も無かったように、自分の甘くないラテのカップを手に取り、飲む。


真っ赤になった003が009の肩をばしばし叩く。


「ああっ、ちょっ・・零れるって、零すだろっ・・・痛いなあ・・・」
「008がいるのにっ!」





どきん。っと、躯が跳ねた。

そうさっ!!
僕がここにいるんだよっ、み、み、みんなに言うよっ!!



ま、まさかっ・・・009と003が?!




「008、今回君が目にしたことは他言無用だ、いいね?」


彼がウィンク一つで、僕に絶対命令を出した。





「泣きそうになってたくせにっ、偉そうねっ!」





な、泣きそうになってた?





「だって、甘いんだよ?」








防護服で、拗ねてみせる。
初めてみた。
009であるべきときに、009でない彼を。



いや・・それよりも・・・・、こんなジョー/009なんて知らない。




「飲み込んだらいいのに!」
「だから、代わりに003に飲んでもらったんじゃないか!」






あ、009だ。





「もうすぐミーティングなのよっ、もう!!」
「関係ないよ」
「008がっ」


また、003が僕のコードナンバーを読んだ。


009が僕を見る。







「ピュンマだもん、彼なら僕たちの味方になってくれる、だろ?」





僕の・・・名前・・・・・・。



「高くつくよ、ジョー、いいんだね?」






初めて、009をジョーっと呼んだ日。
僕は、秘密の共有者となった。



























けどっ!後で、それをどれだけ後悔したことかっ!
彼奴っ、僕が”カバー”することを踏んだ上でっ003とっっ!!



知らない方が良かったよ!
僕は正しかったんだっ。
距離を保っていた、あの”距離感”が一番自分の身の安全を守ることができたんだっ!!


009/ジョーに一歩近づいたがために・・・。



ったく、なああああああにが、009だっ!!
ただの甘えん坊な泣き虫で、肩肘はって格好つけていただけじゃんかっ!
















*あはは・・・は・・・合掌。
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雨の日/9.09.08'

さらさらとした、針のように細い、雨が、秋色に染まり始めた葉に、落ちる。
ささやかに震える葉を滑り落ちた、雫が、ぽたり。と、音を立てて、さしていた傘を奏でた。


見上げた空は、雨雲におおわれて。
陽の色を感じることはないが、あたりはきちんと”昼”である。

隠れてしまった太陽だけれど、その光はきちんと地上(ここ)に届いている。



見えなくても、届いている。


届いている。















「どこへ行こう・・・かな?」


ギルモア博士に頼まれた用事を済ませて、ボクは、なんとなく一度も訪れたことのない駅で降りた。


そこは雨の世界。
数駅離れただけなのに、ここの空の機嫌は悪かったらしい。


「どこに行こうか、な?」


駅から離れて、大道りに出た。なんとなく、人が歩く方向とは逆を行く。
途中、信号が青に変わったので、渡ってみた。

そのまま、いくつかの信号を、歩みを止めることなく進む。



駅から歩いてきた道から外れて、住宅街へと入って行く。






静かだった。














まるで、ジオラマの世界に紛れ込んでしまったみたいだ。
そんな感想を持つと、背後からオートバイの音。


振り返ると、郵便マークが目に入った。







雨の中の配達。



ボクの横を通りすぎて、少し先の家の前に止まる。
名前と住所を確認して、銀色の箱に手紙を差し込んだ。


手紙、かあ。











手紙なんて、書いてないし、最後に受け取ったのはいつだろう?











さらさらと降り続く雨が、駅構内の売店で買った傘をすべり落ちる。
郵便配達のバイクが去った方とは、別の道を進んだ。

どこからか、懐かしいチャイムの音が聞こえた。
近くに学校があるんだろう。

雨の日は、運動場に出て遊ぶことができないんだよね。

ドッジボールの場所取りのために。
1分1秒でも長く遊ぶために。
給食をかきこんで、クラス用の2個しかないボールを誰にも取れないように、抱いて。
走って運動場へと飛び出すんだ。






雨の日は、どうしてた?
雨の日は、どうやって過ごしていたんだろう?




「フランソワーズがいない日は、どうやって過ごしていたんだ?」






歩く足を止めた。

















「フランスは遠いよ?」




雨雲が覆う空に向かって呟いてみた。










聞こえる?

















「・・・雨の日は、キミは何をしていたんだろう?」


洗濯できないよ?
リビングルームのガラス戸も開けられない。


お気に入りの靴も、履けなかったよね?











「手紙、か・・・」


書いてくれるかな?
手紙よりも、電話かな?


・・・・いや、多分ない。



















何の理由があって、ボクなんかに・・・。
















躯を、くるりと反転させて、来た道を引き返した。
なんとなく、引き返す。





駅に着く頃には、さらさらとした雨が、ざあざあと、傘を五月蝿く叩き始めていた。
傘を購入した売店で、テレフォンカードを買った。

ギルモア邸に電話を入れる。




適当に選んだ絵柄は・・・・、有名な画家が描いたバレリーナの絵、の、カードだった。










電車を乗りついで、ギルモア邸もよりの駅に帰ってきた。
鉄紺色の空に、雨の音は聞こえない。

水たまりに浮かぶ、逆さまの空に、星はない。



「そっちの世界のボクのそばには、フランソワーズ、いる?」





覗き込んだ逆さまの、水たまりの世界に浮かぶ、ボクに訊ねてみた。












いるよ。



















亜麻色の髪が、水たまりの世界に浮かんだ。







「ジョー・・・・、ただいま」



水たまりに浮かぶ、彼女が、こちら側のボクに話しかけてきた。


「・・・・・・どうして、もどってきた?」
「もどってきたかったからよ」
「どうして、いるの?」
「だって・・・ジョーがいないんだもの」








水たまりの、世界にいる、フランソワーズが泣いた。








抱きしめてあげたくて。

抱きしめた。


水たまりの世界のボクも、キミを抱きしめていた。
ここにいる、ボクもキミを抱きしめている。







「聞こえたの、ジョーの、声が・・・」



















聞こえたんだ。














「なんて、聞こえた?」
「・・・・・・」
「聞こえたんだろ?」
「淋しい・・」
「・・・・・うん、思ったよ」
「そばに、いてほしい」
「それも、ちゃんと思ってた」
「・・・・好き?」
「うん、・・・・・・ずっと思っていたよ」
「ずるいわ、ジョー・・・」
「そうだね・・・ごめん」






抱きしめていた腕を緩めて、彼女の空を覗き込む。







「キミのいない日々が、こんなにつまらないなんて、知らなかった」



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*9/9です。らぐびーさん、ありがとね!
イラストはまた別ページを作ってらびぐーさんのページに載せます~。
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今日/9.9.08'
最後の1人。

あと、1人じゃ。









「日本から、試験体が運ばれてきます。年齢ともに、予定していた人間に一番近いと思われます」








日本か・・・・。

運がなかったと、思っておくれ。









「島村ジョー、日本人、18歳」




009として、・・・キミは選ばれたんじゃ。









いや、選ばれたんじゃない。
君の運命は、そういう風に流れてしまったんじゃ。



「手術を開始する」













許しておくれ・・・。














「・・・博士、博士、・・・ギルモア博士!」
「ん・・む・・・・うんん・・・?」
「博士っ!」
「・・・っジョー?・・か?」
「こんなところで寝ないでください。フランソワーズが心配します」


肩を揺すられて、気がついた。
どうやら、研究室のデスクに突っ伏す形で眠ってしまっていたらしい。


「おお?・・・イワン、起きたのか?」
<サッキネ、オハヨウ、ぎるもあ博士>


ジョーの腕に抱かれていたイワン。


「博士、大丈夫ですか?」
「ん、あ、ああ・・・大丈夫じゃ」
「フランソワーズが、早めに夕食を済ませて、道が混む前にでかけたいらしいですよ」
「おお、おお・・・そうじゃったな」


そうじゃった、そうじゃった。
今日は確か・・・


「心配しなくても、場所はグレートと張大人が取っていてくれているのに・・・」


溜め息を吐きながら言うが、その頬は高く、嬉しそうじゃぞ?


「イワン、君はちょうど良いときに起きたね」
<ソウラシイネ・・・じょー、オ腹空イテルンダケド?>
「ああ、フランソワーズが今、用意しているよ。さ、博士も、これ以上彼女を待たせると、後が大変なんですから」


ジョーに促されて、デスクチェアから立ち上がり、伸びをした。


「儂は別に・・・イワンと留守番しておるぞ?せっかくじゃから2人で行ってきたらいいじゃろうに?」


おお、おお、おお!
可愛いのう・・・。


「っ、そんなっフランソワーズが悲しみますよっ!!みんなで行きたいって彼女が望んでいるんですからっっ」
「ジョーは、フランソワーズと2人の方がよかろうに?」
「博士っ、そんなことありません!!」
「なんじゃ、フランソワーズと2人は嫌なのか?」
「嫌じゃないですっけど、そんなっ」


ほっほ、いい反応じゃなあ、・・・・ジョー。


「うかうかしておると、他の誰かにさらわれてしまうぞ?」
「博士・・・っ!」


イワンを抱いたまま、逃げるように、書斎から出て行く、ジョーの後をゆっくりと追う。





色々なものを背負った、その背が、逞しくもみえ、悲しくもあり、・・・そして、儂の罪がみえた。


















「・・・・・幸せになりなさい」
「え?何かいいました?」
「フランソワーズとデートは、しておるのか?」
「いい加減にしてくださいっ、ボクとフランソワーズは別にっ・・・」









・・・幸せになっておくれ・・・・・・・・。










「それで、今日はどこへ行くんじゃったかのう?」
「・・・博士・・・・、今日は・・」
















儂の罪は永遠に消えることはないが、お前たちが平和に暮らす世界はくる。
きっと、来る。


そして、その日のために、ジョー・・・お前たちのそばにおるぞ。











<博士、ふらんそわーずトじょーハ、明後日、でーとノ予定ダッテ>
「いっっ!イワンっっ勝手に読むなよっ」










今日、また一日が平和でありますように・・。











「それなら夕食は張大人の店で済ますかのう・・・で、夜はここに帰ってくるのか?」
「博士っっ!!勘弁してくださいっ!!」










































*ギルモア博士・・せっかくなので書いてみた。9と博士。好きです。
イワン混ざるといい感じ?
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ベッドから抜けられない朝/起きられない彼が悪いわ!


セットしておいた(正確には、セットさせられた)目覚まし時計が、普段は絶対に起きない時間にけたたましい電子音をかき鳴らした。


耳をつんざく電子音に、ジョーは思わず布団を深くかぶる。
が、ほんの少しだけ鼓膜の震動を和らげた程度で、まったく役に立たない。

布団の中から腕をにょっきりとのばして、目覚まし時計を探して行く。
ベッドサイドに置いてある、ミニチェストの上を彷徨う手。を、静かに見守る視線。


やっと見つけたOFFボタン。
その手が音を消した事に、にんまりと布団の中で笑ったのだろう、ことが簡単に想像できた。


ミニチェストからのろのろと、手が布団の中へと戻っていく。
布団の中にすっぽりと消えて、もそもそ。っと布団が動くと・・・ぴたり。と、その動きが止まり、穏やかな寝息に合わせて微かに上下しだした。


「も!!」
<アルベルト、ジョーが起きないわっやっぱり!!>
<・・・そうか、なら実行してみろ、003>
<了解!>


目覚まし時計の音を聴き、ジョーの部屋のドアを何度ノックしても起きる様子がないために、勝手に部屋の中に入っていたフランソワーズは、ドアを背に立っていた。


パフスリーブがお気に入りなパウダーピンクカラーのサマーニットを脱いで、70%セールで買った肌触りの良いシルク生地のレースがたっぷりと裾についた、キャミソール1枚になり、履いていた、デニムのミニスカートを脱ぐ。

バレリーナたちが喉から手がてしまうほどに欲しがると言われる、弓のような形をして長い膝下、引き締まったふとともも、白水晶のようなシミ一つない肌の、すらりとした足があらわになる。

シルク生地のキャミソールとお揃いのレースがふんだんに使われているショートキュロットは、ナイティとしても活用でき、今、フランソワーズの大のお気に入り。


<健闘を祈る>


気を許しているとはいえ、相手は”あの009”である。
脱いだ洋服をそろりと床に置いたまま、フランソワーズは薄氷の上を歩くようにフローリングの床を進み、気配を消して、まるで敵地へ潜入するような緊張感を漂わす。



ジョーの眠るベッド。



ヘッドボード部分はぴたり。と、壁際に寄せられている。
反対の足下から、そおっと、マットレスの沈みに彼が感ずかないように、片膝を乗せ、体重をかけていった。
耳を澄ませ”眼”のスイッチで、布団の中の彼の位置を見る。

フランソワーズから見て、彼はミニチェストがあった左側へと寄っているために、フランソワーズは右側のスペースへと、躯を移動させていく。


先ほどの目覚まし時計の音で、眠りが浅くなっているのか、小さく「ん?」と喉を鳴らすような声に、フランソワーズの全身が、猫の毛が逆立つように緊張する。

少し寝返り打った、ジョー。


フランソワーズはジョーのベッドの上で四つん這いになった状態でしばし、硬直。
再び、規則正しい寝息が聞こえ始めて、緊張を解き、ゆっくりとジョーのベッドの右側に躯を横たえた。

”眼”のスイッチで、布団の中を再び確認。
陽の光が入らないように、注意しながら、そっと布団へと忍び込む。




あどけなく、少し眉を下げて。
童顔、と、仲間達からからかわれては不機嫌になるが、今の寝顔はまさに”可愛い男の子”と言う言葉がぴったり合う。と、フランソワーズはのどの奥で笑うのを必死で我慢する。









ジョーの、香り。
ジョーの、温もり。

すっぽりと、同じ布団の中に入り込んだフランソワーズ。





作戦を実行するには、彼の腕の中へと飛び込んで、ある台詞を言わなければならない。
それは、アルベルトが”起きなかった”時に恋人によく詰られた台詞らしい。

その意味を訊ねたとき。


「ジョーに聴け。なんなら、いっそ使ってみろ。効果抜群だ」


と、言われて、今に至る。
















####

ふと、人の気配がした気がしたが、その気配は自分に危害を加えない人物であると、何の根拠もなくそう思う。

ゆっくりと、大好きな子の香りが鼻腔をくすぐり、それがどんどん強くなっていく気がした。
夢の中までもか・・、と半ば自分に呆れつつ、それでも、夢の中まで彼女の香りを胸いっぱいに楽しめる事が嬉しかった。







こんなに”リアル”に夢の中でも香りって楽しめるものなのかな?











フランソワーズの、香り。
それが、シャンプーなのか、石けんなのか、香水なのか、なんなのか、男の自分にはよくわからない。
とにかく、彼女はいつも、花の香りがする。


腕をのばせば、彼女を抱きしめられる?


泣いてる彼女じゃなく。
戦闘中の彼女じゃなく。


ボクだけを見てくれて。
ボクだけに笑ってくれる。







ボクだけに、ボクだけの、彼女を・・・・。











一番強く香る場所へ腕をのばした。

「?!」






触れた、柔らかさが愛おしくて、ぬいぐるみでも抱き寄せるかのように、それを胸の中に閉じ込めた。
右腕を、頭の下に通し、背中へと腕をまわし。
左手を、ウエストから抱き込む。



---なんだか・・・・本物のフランソワーズを・・・



柔らかく滑るような肌の感触。

いつもより甘く感じる、フランソワーズの香り。
彼女の柔らかく、細い絹糸のようなハチミツ色の髪が、顎下に触れているような。


きゅうっ。と、腕に力を入れる。






---細っ・・・・・ちゃんと・・・食べてる?・・・・



あまりの華奢な躯つきに、ジョーは、肩から背中を撫でるように移動させて、ウェストのラインをなぞる。

つるつるとした生地が、手のひらに気持ちよい。


ウェスト部分から腰に向かってのカーブの深さが信じられず、ジョーの手が往復する。
抱き込んだ何かが、びくん。と、跳ねるような反応をした。


「・・・nん?」


ジョーはさらに強く抱きしめる。
すると、胸のあたりに、小さな手のような感触で、自分を押し返そうとする力を感じた。


「ジョー・・・痛い、そんなに力を入れたら、・・・アタシ、つぶれちゃうわ」
「・・・・・・・・・・・・・?」
「お願い、う、腕の力を、緩めて・・・」


その声に、ジョーは素直に腕の力を緩めた。


ほうっと、首もとにかかる、ぞくぞくと自分の背を腰を刺激する吐息。













何かが、おかしい。















目覚めるのは、もったいないけれど。

確か・・・フランソワーズと出かける約束をしていたはず。
そろそろ起きないと、彼女のご機嫌を損ねてしまう。



夢の中の彼女よりも、現実の彼女の方が・・・・。












「約束の時間に起きられないくらい素敵な夢なの?夢の中のお相手は、キャシー?ヘレナ?イシュキック?それとも、アルテミス?・・・もしかして、アタシの知らない他の女性かしら?」



---hえ?



腕の中に・・肩がむき出しの、見上げて来る、こぼれ落ちそうなほどに大きな碧の宝石を、縁取る睫がまたたく風に顎先が・・・。


「・・・・・・・・え。ええ?」






「朝の方が夜よりも元気なんじゃなくて?」





?!





ぴったりと隙間なく抱き合わさっている躯。




「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ」


布団の中での絶叫に、フランソワーズは思わず耳を塞ぐ。


「ひどいわっ!私は別にジョーを暗殺しに来たサイボーグでもなんでもないのにっ!!そんなに驚かなくてもいいじゃないっ。戦闘中はよくあなたの隣に寝てるのにっ」


















暗殺用サイボーグより、たちが悪いっ!













腕からフランソワーズを離した瞬間、ジョーは加速装置を噛んで、部屋の角に逃げ込み、背中を壁にすりつける様は、なんとも情けない。







「でも、アルベルトの言った通りね!すっごく効果があるわ♪」


---アルベルトだとっ!?


「も!目覚まし時計が鳴ってもおきないんだもの!」


ジョーのベッドの上で、躯を起こしたフランソワーズの、普段では絶対に考えられない露出度の高すぎる服(?)に、ジョーは彼女を直視することができない。


「ふ、フランソワーズっ!!!なんて格好でっそれにっ!!何考えてんだよっボクだってっ男だぞ!」
「あら、ジョーって女だったの?」
「っ?!そうじゃないっっっっっっ!!少しは考えて行動してくれよっ!普通っ男のベッドにそんな格好で潜り込んでくるかよっ!!常識で考えてくれっ」
「だってジョーが起きないんだものっ!!」
「普通に起こしてくれたら起きるよっ!」
「起きないわよっ約束した時間はとっくに過ぎてるのよ、それに、あんなにきつく抱くんだもの、つぶれちゃうかと思ったわ・・・痛かったのよ、とっても・・」


そういって、フランソワーズは胸の前で交差させた両腕で、左右の二の腕を撫でながら、頬ほんのりと染めて俯くが、瞳は上目ヅカイにジョーを見つめる。





そんな薄っぺらな服でっ!


なんてポーズをとるんだっ!

そんな顔しないでっ。







やばいって!
ボクだって健全なっ・・・・くそっ!!!




「そうだわっ、ねえ、ジョー」
「なんだよっ!!」
「も・・・そんなに怒らなくてもいいんじゃなくて?ジョーが悪いのよ?起きてくれないんだもの」


いつものように拗ねてみせるが、いつもと違う。




やばい

やばっ・・・・




「あのね、アルベルトがジョーに聴きなさいって言ったの」
「何をっ」

























アルベルト、殺すっ!


シュンッ。と、空気を切り裂く音。が、フランソワーズの耳に届いたときには、そこにジョーの姿はなかった。



「・・・・も!教えてくれないのネ!意地悪っ今日はいっぱい、我が侭きいてもらうんだからっ!」







































*おまけ*

「アルベルとおおおおおおおおおおおおおおおっ」


ジョーの声とともに、突然リビングルームに手品のごとく姿を現したのは、先ほどの悲鳴の主。


「ああ、起きたのか。ま、あの悲鳴を聞けば起きたのは分かるがな」
「フランソワーズに変な事教えんじゃねえよッ!」
「変な事だと?」
「そうだよっ!」
「変じゃないだろう?男のそういう事を知っていても良い年頃だしな」
「そういう問題じゃないだろっ!」
「で、教えてやったのか?」
「教えられるかよっ」
「・・・。あの子も年頃だし、あれほどにキレイなんだ、男がどういう生き物か、知っておいた方が良い・・・・。”もしも”のことがあったとき、傷つくのは男でなく、女なんだぞ?」


アルベルトの言葉に、ぐっと。息を詰めるジョー。


「・・・・・・・」
「男がどういう眼で女を見ているか、そして、それがどういう結果を生むのか、オレたちが100%守ってやる保証がない以上、彼女もいつまでも”こども”でいられないだろ?」
「そんなこと、起きるもんか・・」
「ん、なんだ?」
「ボクが生きている限りっフランソワーズがそんな危ない目に合う事なんて永遠にないよっ!」
「・・・それなら、とっとと自分のものにしてしまうんだな。とるぞ?」
「?!」

ニヤリ。と、左口角を上げて嗤ったアルベルト。


「あ、ここにいたのね、ジョー・・・あ、アルベルト。ありがとう!ジョーはすぐに起きたわ、あなたの言った通りよ!」
「フランソワーズっこんなヤツの言う事なんて、一生聴かなくていいからっ行こうっ」
「え?!あ。あ、あの、ジョー?!」


フランソワ-ズの腕を引っ張りリビングルームから出て行くジョー。
そんな2人を見送り、珈琲を飲み終えると、胸いっぱいに空気を吸い込み、心地よく吐き出した。


「ああ、ぎるもあてーに帰ってきたな、・・・・いい朝だ」









*もじもじ?・・・・・・・・・・・(--;) ごめんなさい*
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Day by Day・73
(73)






朝、5時19分。

ギルモア邸から月見里(やまなし)学院まで、バスと電車を乗り次いで、およそ3時間はかかる。
昨夜のうちに”飛んで”戻ったジェットに対して、朝早くからちょっと腹を立てているのはピュンマ。


「昨日ちゃんと言ったんだよっ”今日”から学院に戻るって。結局あの後だってずるずる邸にいたんだし、数時間くらいの差なんだから、僕も一緒に連れて行ってくれたらいいのに!気が利かないやつだよねっ」


キッチンに立つフランソワーズにむかってプリプリと文句を言い、彼女が用意した朝食を口へと運ぶ。


「ジェットだもの・・・・。ピュンマ、カフェオレのお代わりは?」
「あ!もらうよっまた、週末に戻って来るからね」
「ええ、待っているわ」


キッチンからピュンマの2杯目のカフェオレをトレーに乗せて、キッチンから出てきたフランソワーズは、ジョーが壊し、イワンが直した、ダイニングテーブルに近づく。と、そこでドアが開いた。


「用意できた?」


ダイニングルームのドアを開けたのは、ジョー。


「もう少し!」
「車を表に出しておく、よ」


ジョーはダイニングルームへと躯を覗くようにして傾けた姿勢で、ピュンマに言った。


「うん!5分後にっ」


学院へ戻るピュンマを駅まで送るのは、ジョー。
2杯目のカフェオレを飲み干したピュンマは、フランソワーズに見送られてギルモア邸を後にした。

明日は、当麻とジョーが学院に戻る。


ピュンマを見送り、玄関の扉を閉めたフランソワーズを見ている人物がいた。


「お早う・・フラン」


2階から階段を降りて来る当麻。


「お早うございます、当麻さん」


フランソワーズは早足で扉から離れ、吹き抜けの広間を通りすぎ、当麻の前で足を止めることなく、リビングルームのドアへと消えて行く。






はっきりと音にして伝えた気持ち。



”ぼくは、フランソワーズ、あなたが好きです”






当麻にとって、告白した日の事を、遠い昔の出来事のように感じているが、告白した日から実際は、片手で指を折ることができる日数しか過ぎていない。

この数日の間、ギルモア邸で過ごし、フランソワーズの様子から、彼女が誰を想っているのか、だいたいの予想がついていた。
しかし、彼女の想い人である、自分のルームメイトの気持ちは、彼女ほどはっきりと読み取ることができないでいた。
それは、彼が”島村ジョー”でない、サイボーグ009で自分の前にいるためだろうか?と、考える、当麻。


サイボーグ。







この邸の主、ギルモアを覗いた全員が、その躯の90%以上を機械化されている。



---それが、どうしたと言うのだろう?



自分を拒む理由が、”他の誰か”が好きだから。なら、わかる。
けれども、”サイボーグ”だから。を理由にする、フランソワ-ズの気持ちに納得することは、彼女を諦めることはできない。


「・・・ぼくは”サイボーグ003”を好きになったんじゃないんだ。留学生としてホームステイをした、普通の女の子、”マリー・フランソワーズ”を好きになったんだ・・・・」


















####

「ジョー、・・・駅までじゃ?」
「こっちのが、早く着くよ・・・学院近くまで送って行く」
「でも、それじゃ・・・」
「少し走りたいんだ・・理由に、なってくれないかな?」
「・・・わかった」


助手席に座っているピュンマは、座席にシートに力を抜いて背を預ける。
早朝のために、通り過ぎる車はどれも心持ち、法定速度よりも早いように思えた。


「話してくれるのかな・・・?」


邸から40分ほど車を走らせたころ、徐ろにピュンマが呟いた。


「・・・」
「ジョーは、何を考えているのか。あと、・・・・・」
「・・・別に、何も考えてない、よ・・」


ハンドルを切って、大きくカーブを曲がり高速へと入って行く。


「・・・訊いた?」
「?」
「篠原秀顕は、補助脳があったからこそ・・・」
「うん、補助脳をメインコンピュータに繋げるのを手伝ったのは、僕だよ?」


ああ、そうだった。と、言うように、ジョーは口元だけで笑った。


「補助脳があったから。と言っても、表向きには・・・あれだけの規模を1人で・・”伝説”的人物になるよ・・・名前、残るかも、な」
「言わないんだよね?」
「補助脳のことを篠原さえこ、に?・・・・言わないよ。言う必要もない・・これ以上、彼女に関わらせるのも、関わるのも・・・・・別の意味で危険だから」
「うん、でも・・・・・・、篠原先輩は?」
「彼は・・、”篠原”の人間じゃなくなるから、ね・・・、問題外だよ」
「え?」





爆破事件のために棚上げになってしまっていた、さえこが当麻に用意し、007が彼女の個人弁護士から手に入れた書類。
それは、篠原に関する全ての相続権放棄のサインだった。


「当麻には、私が別で贅沢しなければ一生食べて暮らしていけるだけの資産を用意しているわ・・・。私で終わりにするのよ、篠原なんかに指一本関わらせるつもりはない・・・・、彼がサインをするのと交換条件で全てを話すつもり。まあ、サインしなくても、・・・・勝手にそれ相応の手段を使う予定ではいるけど」


小石川美凉。
それが、当麻の生みの母の名前。


「・・・・ちゃんと美凉の忘れ形見がここにいますって、向こう(小石川)にお返ししないとね。そういう気持ちになるまで、時間が必要だったのよ・・・だって、当麻だけだもの・・。私のそばに、家族と呼べるのは、当麻だけだったから、本当なら、生まれてすぐに美凉の両親に預けることもできた、そうすべきだったけど、できなかった・・・から・・・」


当麻が20歳になったのを機に、篠原の籍から外し、彼を小石川へと養子に出す事をさえこは考えていた。








「今日の昼前に、篠原さえこが邸へ繰る予定なのは、言ったよね?そのときにでも、篠原に言うか何かするだろう」
「そうだね・・・」
「石川の事は・・・父親の事は一生言わないらしい、よ」
「どうして・・・?」
「さあ・・・、そこまでは知らない」


迷いなく、アクセルを踏む。
ハンドルを正確にコントロールしていく。


「怖いなあ・・・女の人って」
「?」
「だってさ・・・僕らが”サイボーグ”って知ったとき、生まれたての子猫みたいにブルブル震えて、怖がっていたのにさ・・・あっという間に・・・・」
「ああいう人だから、いいんだよ・・・。どんなに小さな事でも、”きっかけ”さえあれば、自分を立て直すことができる。さっぱりとね。”切り替え”が上手いんだ」
「へえ・・・」


”女性”としては、どうだろう?と、ピュンマは思う。
あまりにも逞し過ぎるのではないか、と。


「篠原さえこの方が・・・・・・、彼女には補助脳なんてないから、ね」
「・・・うん」



ピュンマは運転するジョーの横顔を、ちらり。と、盗み見て、彼の様子や態度、そのハンドルさばきから、いつもの彼であることを確認し、口を開いた。


「人工知能(AI)は・・・、その機能の43%バグってた」
「・・詳しく教えてくれ」


ピュンマはギルモア博士に口止めされている事を、言った上で、ジョーに説明し始めた。
その間、ジョーはずっと黙ったままフロントガラスの先にある、整えられた道を見つめ続けていた。



「・・・・・人の中にアイツらは隠したんだっ。彼自身は”普通”に生活していたんだっ見つけられっこないじゃないかっ・・・、最低だよっ」


吐き捨てた言葉とともに、ピュンマは視線を膝に落とした。
握りしめた拳が、震える。


「人工知能(AI)は・・・予想を遥かに超えた働きを・・・長い間の”秀顕”自身の影響で、かな」
「・・・その辺は、わからない・・・・。彼の脳内で何があったのか、もう、彼自身が、彼の”脳”と繋がってはいないから・・・・」
「・・・・・人工知能チップだけじゃ、ね・・・・。008は、彼の”役割”と僕との・・」
「うん・・・・、じゃないと進められなかった部分もあったし・・・。他のみんなは知らない。僕だけだよ。でもさ、009・・。僕たちが裏切った次点で、その計画は無効化されている。無効化した次点で、なぜ秀顕は」
「・・・処分されなかったか?」


ピュンマは、微かに頷いて、シートベルトを引っ張るようにして、少しばかりそれを緩めた。


「不明虜な事が多すぎるんだよ・・・」
「そうだね」
「おかしいことが多過ぎる・・・彼がしたことは、意味があったの?何が目的だったの?」
「・・・・・それは・・・・・・・・、」


それは。と、口に出したものの、ジョーには言葉を続ける事が出来なかった。
同じ事を何度も、あの夜に訊ねた言葉。


”あなたの目的は?”と。






「ごめんね・・・009、こんな話しになって。でも、みんな感じていることだと、思う・・・。彼は自分がサイボーグになりたかったんだったら、補助脳のデータで十分にできたはずだよ。だって”四友”を手に入れていたんだよ?ボグートとも関係があったし・・トーマス・マクガーの資料に、交流会の・・・。彼らは結局、なんだったの?」


言葉を止めてしまった、ジョーの口から、その続きが流れる様子が見受けられない。
スムーズに走り続ける車は、まもなく高速を降りる。


「謎は、謎のままでいいんじゃない、かな・・・・。必ずしも、答えを出す必要なんかないと、思うよ・・・それが、人である、証拠なような気がする」
「・・・・・答えがないこと、が、答え?」


静かに、ジョーは頷いた。


「彼自身が”人”であることを訴えたかったんだよ・・・」
「・・どういうこと?」


ジョーは、ちらり。と、ピュンマの方へ視線を送る。
ピュンマの視線とぶつかった。



「自分が人間だって、言いたかったんだよ・・・・”篠原秀顕”だって・・・言いたかったんだ。誰でもない”篠原秀顕”だって・・・。俺たちが、半分以上を機械化されている、俺たちが”人間”だと、主張するのと同じように・・・」


ジョーは独り言のように、囁く。


「ずっと1人で戦っていたんだ、きっと。1人で、自分と戦っていたんだ」
「・・・」
「俺たちに、会いたかったんだ・・・・。遊びだ、暇つぶしだなんて・・・言いながら・・・・。彼は待っていたんだ、ずっと。自分が、何者であるか・・・・を、知るために。”人間”であることを主張しながらも、B.Gから与えられた役目を忠実に守りながら・・・・・・変、だよね?矛盾しまくってる・・・。人工知能(AI)が秀顕氏を取り込んでいくプロセスの中のどこかで、狂っていたの、かな・・・。よく解らない・・・、想像しかできない」
「・・・・」
「43%が、”篠原秀顕”氏だったのかも、な・・・・・。確かめようがない、けど、ね」


ピュンマは時間をかけて、ふぅ・・っと、穏やかに息を吐いた。


「優しいなあ・・・ジョーは」
「・・・・優しい?」
「そういう風に、考えていたんだね」
「・・・・・」
「きっと、他のみんなだったら・・・。もっと単純に”面倒臭せえ訳わっかんねえ事件起こしやがってぇっ!で、ぶん殴って終わり。スッキリ、事件解決で宴会開いてるよ、とっくにね」
「・・・」


ピュンマが仲間の”誰か”ではなく、ある特定の人物の口まねしたので、ついジョーの頬が緩んだ。


「・・・善が人の中に存在するのと同じように、悪も存在するなら、その悪が成長する”理由”があると思う。その”理由”は、様々に・・・・有りすぎて、1つに絞るなんてできない。けれど、その”悪”が成長する前、一緒に共存していたはずの”善”に・・・俺は希望を持っている。・・・・・絶対悪なんて、ない。・・・甘い考えかもしれないけれど、ね」
「ジョーらしいね・・、うん。ジョーらしい・・・甘くなんかないよ、僕も、そう思いたいから」


ピュンマは体ごと捩って、カーウィンドウの外を見た。
いつの間にか、高速を降りて、街を走っている。



「・・・孤独だったと、思うよ・・・・・・・彼には俺のように、”仲間”も博士も・・・いなかったんだ。・・・”仲間”が欲しかったの、かな?」


---僕たちのような、仲間・・・・。






高速を走っていたときよりも、スピードが落ちた車。
走り過ぎ行く街の景色は、同じストロークで色を塗ったように、滲んで見えた。


「・・・・・それで、あんなに”愛人”作るわけ?」
「・・・・・・・・、それはっ・・」


ピュンマの言葉に驚く、ジョー。
話しがおかしな方向へと向かって行く気配に、ジョーは苦笑する。


「ねえ、さっきのだけど。その考えがどうして恋愛に活かされないのか、教えてくれないかな?」
「・・・さっきのって?」
「ジョーにだって”幸せ”だっ!って思えたときがある。それを知らないなんてことはない。どんなに辛く、苦しく、厳しい状態で、戦ってきた、暮らしてきた中でも”幸せ”だと思えた瞬間があるはず。胸の中にしまい込んでいる、その”幸せだと思えた”瞬間”をかき集めて、さ・・。ジョーがフランソワーズと一緒に幸せになる道が決してない、ことはない。僕は希望を持つよ、その幸せをジョーとフランソワーズが共有できる日が来るって!・・・甘い考えかな?」
「・・・p。ぴゅ、ピュンマ・・・・」
「甘い考え?・・・人の善悪云々よりも、とっても簡単なことだよ?」
「・・・・強引だよ、それ」
「そお?同じ事だよっ!・・・・・・・・そろそろ、その手をのばして、捕まえてもいいころじゃないかな?」
「・・・」


うん!っと、1人で頷き納得するピュンマ。






それ以後、2人に会話はなく、ジョーはピュンマを学院から少し離れた場所で降ろし、邸へと車を走らせた。
別れ際に、ピュンマは言った。


「ジョーはね、欲張りなんだよ。フランソワーズの”全部”を完璧に幸せにする必要なんてないんだ、そんなの神様だって無理だよ!1秒でも、それ以下でも、彼女が”幸せだわ”って思う瞬間を1つでも多く作る、それが大事なんだよ」















####


ギルモア邸の正門前に1度だけ、そのハンドルを握ったことのある車を見つけた。

2階の自室には行かず、そのまま、長方形の箱を手に、リビングルームへと足をむける。
邸の誰も使うことのない香りが、ドアをあけた瞬間にジョーの鼻孔へと届けられた。
強いムスクの香りによって篠原さえこがいることを、彼女の姿を捉える前に確認する。

邸の前の車が、彼女のものであるとわかっていたが。





「こんにちは・・・」

リビングルームの、白い革製のソファに、篠原さえこ、当麻の2人だけ。
ジョーが怪訝に眉を寄せると、さえこが答えた。


「・・・席を外してもらったのよ、当麻と話しがしたかったから」


硝子作りの珈琲テーブルの上に広げられた書類を見て、2人だけの事情を把握する。
彼は頷いて、「隣にいます」と、一言残し、ダイニングルームのドアへと消えていく、その姿を、当麻は視線だけで追いかけた。


リビングルームにて、当麻は、母、さえこの提示した書類に、何も言わずにサインした後、小説でも朗読するかのようにまとめられた、さえこの話しを、自分の出生についての話しを聴かされた。


「祖父や祖母とは縁遠かったから、増えるのは大歓迎だから。だけど・・・・ぼくは永遠にあなたの息子なのは変わらないよ、お母さんは、さえこさん意外考えられないし・・・育ててくれたのは、さえこさんだから・・そうでしょう?」


弁護士を通して美凉の父母と連絡を取り合い、近々当麻は彼らに会うことになっている。
彼がその後、養子になるかどうかは、まだわからない。

そして、当麻は未だに、石川斗織が自分の父親とは知らされていない。





「生意気なことを言えるようになったのね?・・・あなたも」
「さえこさんに育てられたから・・・」


テーブルに広げられている書類を片付けながら、さえこは微笑んだ。


「思ったよりも・・・あなたが驚かないから、ショックも受けてないようだし・・・。そっちの方がなんだか淋しいわ」
「・・・なんとなく、なんとなくだけど・・・・気がついていたと、思う」
「いつから?」


書類をひとまとめにして、膝の上に乗せたそれらを、チェックするさえこ。
冷静なフリをしているが、動揺する手は微かに震えている。


「学院の寮に入ったときに、”今日からはもう、お母さんと呼ぶ必要は無い”って、言ったのは、さえこさんだから、・・・あのとき、なんとなく・・・」
「その割に、何も言わないし、訊いてこなかったわね?」
「・・・訊いても、さえこさんのことだから教えてくれないと思っていたんだ」
「あら、そう・・・、でも正解よ。いい感じに育ってくれてよかったわ」
「いい感じって・・・」


当麻は苦笑する。
さえこは膝の上で、書類の束を整えて、それらを再びアタッシュケースの中に仕舞い、ソファに座る足下へ置く。


「さて、おじいさまのことは、知っているわよね?」


姿勢を正して、話題を替えた、さえこ。


「はい」
「急だけど、お年だったのよ。いつでも”お迎えが来てもおかしくない状態だったわ。やっぱり”爆破”は、あのおじいさまでも・・・・ね。時期が時期だから”社葬”は、”あやめ祭”の後に行うわ、そっちにあなたは出席する必要ないわ、言わなくても解るわね?でも、その影響があなたにも及ぶかもしれない。当分、学院と、ここのお世話になりなさい」
「・・・はい、・・・・?」


当麻の視線がさえこから外れて、ドア口へと向かったので、さえこは振り返るようにして、吹き抜けの広間へと通じる方のドアを見た。


アルベルトは、片手を上げて「失礼」と短く言葉をかける。
さえこは、そんな彼に口の端だけで微笑んで、再び当麻の方へと向き直ると、気にすることなく話しを続けた。


「・・・だけど、死んだ人間を、いつまでも病院に放っておくわけにはいかないのよ、”篠原”秀顕だから。わかるわね?」
「・・・」
「内々に、簡単に済ますわ、それには本家の”孫”として出てちょうだい。愛人たちの処理に、あなたの顔があった方が便利なの。それが”篠原”でのあなたの最後のお勤めだと思ってくれていいわ」
「・・はい」
「あとは、自由よ。当麻は好きに生きてちょうだい。私が生きている限り、お金に不自由だけはさせないわ」
「ありがとう、ございます・・・・」


さえこの、さえこらしい、さえこだからこその、言い方に、当麻は微笑んだ。
以前よりも、より、さえこを母として慕う気持ちが強くなる。

それが、さえこ流の自分への愛情なのだと、感じるから。


「礼なんて余計よ、私がそうしたいから、するだけ」


2人の会話を耳にしながら、アルベルトはリビングルームを通り抜けて、ダイニングルームのドアへと向かう。


「これで、話しは終わり。次はあなたたちね?」



アルベルトを呼び止めるようにして、さえこは声をかけた。
当麻はソファから立ち上がる。

いまだに、彼は”事件”の全容を知らないまま。
そして、彼自身が知る必要はない。と、思っている。そのために、当麻は自らリビングルームを去ることを選んだ。


ダイニングルームへのドアを開けて、アルベルトはダイニングルームへ躯を傾ける。


「ジョー、オレたちの番、だそうだ」


庭で昼食後の一服を楽しんでいたジョーは、アルベルトの声に振り返り、手に持っていた煙草を、丸い銀色の携帯用灰皿に入れた。














####

ダイニングルームに姿を現した当麻の前に、”島村”がいる。


「明日の用意をしておいてくれる?・・・朝、早いから」


当麻は頷くだけで、その問いに答えた。


「珈琲を持っていくアルヨ!」


キッチンから顔を出した張大人に向かってジョーは頷き、リビングルームへと歩き出す。


当麻の横をジョーが通りすぎるとき、彼が喫煙していたGARAMに含まれる、インドネシア産の香辛料、クローブ(丁字/ちょうじ)の甘味ある独特な煙草の香りに、自分との違いを感じさせられる。


目に見えない違い。
サイボーグか人か、などではない。


男としての違いに、当麻はこだわる。

肌で感じる、経験の差のような、隔たり。
同性であるがために、意識する。

同じ異性に好意をもっている、かもしれない。
自分が好意を持つ女性のこころにいる、男。と、感じているがために、自分は雄として彼に接しようとしている。







「島村、・・・煙草って・・いつから吸いはじめた?」
「?・・・・・さあ、・・・気がついたら、吸っていたからね・・・覚えてないよ」


足を止める事なく、当麻をみることもせずに、ジョーは答えた。が、リビングルームのドアを押さえているアルベルトの隣に立ったところで、振り返った。


「興味ある?・・・損することばっかりで、特になるようなことは、ないけど?」
「じゃ、なんでお前さんは吸い始めたんだ?」


当麻に向かって言った言葉にたいし、アルベルトがジョーに訊ねた。


「だから、気がついたら、手にもって楽しんでたんだ、よ」
「いつ?」
「そういうアルベルトは?」
「彼くらいの年だな」


立ち止まって自分たちを見る当麻を、顎で指した。


「へえ・・意外と遅かったんだ」
「普通だろ?・・・で、お前はいくつでだ?」
「・・・ああ、吸ってるな。って思ったのは・・・ん・・・中学?」
「それは、いくつだ?」
「12、3、4、あたり?」
「・・・不良」


左の口角を上げて、にやり。と、嗤うアルベルト。


「・・・不良らしい不良、不良の代表でした。・・・せっかく買ってきたのに、いらないんだ?」
「買ってきた?」


ダイニングテーブルの上に置かれていた長方形の箱を、グレートが持ち上げてみせた。
それはピュンマを学院に送り届けた帰りに、ジョーが立ち寄った店で購入したものである。


「あれか?」
「あれ、だよ」
「例のか?」
「例の、だよ」
「よし、いい子だ」


アルベルトは小さい子どもにするように、ジョーの頭を撫でてやろうとする。が、それを、ジョーは大げさに躯を傾けてよける。しかし、アルベルトの手がおいかけて、ジョーの髪をぐしゃぐしゃにとかきまわした。


「やめろって・・」
「いい子だから、いい子してやっている」
「ちょっ・・・いい加減に・・」
「煙草の量が増えてるな?減らせ。前のほうがちょうど良い感じだったぞ」
「なにが、いい感じなのさ?」


そんな会話が遠ざかり、ドアが閉められたことによって、ダイニングルームから2人の声が消えた。
閉められたドアを見つめる当麻の背に向かって声をかけたのは、トレーに3人分の珈琲を乗せてキッチンから現れた張大人。


「当麻君、お昼にするアルヨ!今持ってくるから座るヨロシ!!」
「あ、はい・・」


張大人に促されて、当麻はダイニングテーブルに着き、ぐるりと、首をまわした。


「姫なら、イワンのママになってるんだが、呼ぼうか?」


その様子を見て、グレートが話しかける。


「い、いいえ、・・・」
「ま、そのウチ戻って来るさな」
「・・・はい」











####


ジョー、アルベルトの2人はリビングルームにて、さえこと”あやめ祭”の打ち合わせをおこなった。

あやめ祭を機に、月見里(やまなし)学院に集まる”秀顕”が裏で関わっていたと思われる人間たちと、”篠原”グループは完全に手を切る予定であり、00メンバーは、自分たちの”ミッション”をこなす上で、篠原さえこをサポート、協力する。

津田海は当初の予定通り、あやめ祭のオクーションに参加するが、それは”サイボーグ技術”によって作られた足ではなく、現在の篠原技研が可能である技術をつぎ込んだ義足。
篠原秀顕、石川斗織、両名の声に集まった人間達の間で、どのような反応が返ってくるのか、最悪の事態も想定して行動したとしても、招待されている人間だけが、会場に姿を現すとは限らない。


しかし、今回のプロジェクトを組んだ人間である、篠原秀顕は故人となり、片腕と思われた石川斗織は事故以来、意識が戻らない。この状況にたいして、漣のような裏での囁きが00サイボーグたちの耳に聞こえ始めていた。





”篠原”は終わった。と・・・。







それでも、安心することはできない。

”マクスウェルの悪魔”が運営していたゲームが、どこまで、どのように伝わっているかにもよる。
独特なゲーム参加方法によって、現時点ではゲームに参加していたプレイヤー、全員の身元を00メンバーは把握しているが、その参加者がどこへ繋がっているかは、未だ調査中であった。
001の能力により、プレイヤーとして関わっていた某国政府の動きを追うことができた。が、彼らは今回の事に関しては介入してこない。と言う、001の声に調査を打ち切った。


オンライン上から突然消えたゲームに、噂は耐えないが、それは放っておいてもいずれ薄れていくものと、判断する。



009の指示により、”マクスウェルの悪魔”が使用していたコンピュータは、専門業者によって破棄させ、使っていたハードディスク(HD)はすべて、さえこの護衛役である007により、ここ、ギルモア邸へと持ち出されていた。
篠原秀顕が使用していたコンピュータも、さえこの許可を得て、篠原グループの経営やプロジェクト関連のみ、別に保存させた上で、持ち出された。

月見里(やまなし)学院で使用されていた、今回のミッションに関係していたコンピュータ類はギルモア邸の地下にあるメインコンピュータと繋げていたために、すべてのデータが移行済みである。が、008の手によって今日、明日中に、それらのコンピュータのハードディスク(HD)を、取り出し、002が持ち帰って来る予定であり、もちろん、石川斗織が使用していたものも含まれる。


1粒の砂さえも、取りこぼすことがないように、徹底的にこの世から”サイボーグ技術”を、”トーマス・マクガー”の痕跡を消していく。


3人の話し合いはスムーズに行われ、2時間ほどでまとめられた。







篠原さえこは007を護衛役として邸から去り、004は遅い昼食を取った後に、夜間警備員として、四友工場へ向かった。
004、005は臨時で追加された警備員のために、1週間ほどで、その勤めを終える予定であるが、今のところ、それらしいものは見つかっていない。





イギリスの交流会に関しての情報は、コズミ博士を通してクラーク・リンツから情報を得ていたが、今のところ動きはない。













####


空の色が朱をさしはじめて、傾いた太陽が月を見上げるころ、イワンがひとつ、大きなあくびをして、口にくわえていたおしゃぶりを落としてしまった。


「ぼくが拾うよ」


さえこと、グレートを見送った後、ジョーに話しがあると言われ、ダイニングルームにいた当麻が、リビングルームに入ってくると、早足にフランソワーズに近づいて、彼女の足下に落ちた、黄色のおしゃぶりを拾い上げた。


「当麻さん、・・・あの、ジョーは?」


リビングルームには、今、ソファに座るフランソワーズと、その腕に抱かれたイワン。そして、彼女の隣に腰を下ろした当麻だけだった。


「呼ばれているからって・・・・ギルモアさんの部屋へ行ったみたいだけど・・・・」


当麻には、邸に住むギルモア以外の住人がサイボーグである。と、明かし、イワンの存在までも知らしたが、それ以外のことは、以前となんら変わりなく秘密で通している。


「ジョーのお話しは、・・・どうでしたの?」


当麻から、おしゃぶりを受け取る、フランソワーズ。


「今後のことを少し。ぼくはほら、何も知らないからね。・・・知ろうとも思わないし、知る必要ないと、思ってるけれど」


告白して以来、今までと変わらない態度の彼女にほっと、安堵の息を胸中吐きつつも、変化のない彼女にたいして、腹立たしさよりも、悲しみに肩が重くなる。

避けるなり、なんなりの反応があったほうが、逆に何かしらの期待が持てたような気もする。



矛盾した気持ち。














---サイボーグであることなんて、理由にならないんだよ。













フランソワーズは、腕の中にいるイワンに視線を落していた。
むずむずとくちびるを擦り合せるように動かしたイワンは、あくびをかみ殺しているように見える。


「今後のこと?・・・・でも、当麻さんは・・」
「祖父の葬儀がね・・・。そのこと。と、あやめ祭でのことを少し、なにかあるみたいだね?護衛?っていうのかな・・・、フランがついてくれるんだって?」
「え?」


続けられていた、当麻の言葉に、ぱっと視線を上げた。


「・・・・訊いてない?ええっと、オークションも、フランがぼくを、って形になると言われたんだけれど?」
「ジョーが・・・そう、言ったの?」
「島村から訊いてない?」


フランソワーズは、イワンを縦に抱き直して、その小さな肩を盾にするかのようにして顔を埋めて、当麻から視線を外す。


「ごめんなさい、私はまだそこまでのことは・・・でも、ジョーが当麻さんに言ったのなら、そうなのでしょうね。彼からはまだ指示が出てないだけなのだわ」
「島村、が・・・、全てを決めているんだね・・・」
「彼は・・リーダーですもの」
「リーダー・・・だね、確かに」


ダイニングルームでの彼は009と呼ばれる、サイボーグのリーダーだった。
会話の中で、当麻の前で、彼はフランソワーズとは呼ばずに、003と呼ぶ。

当麻はその度に、”フラン”と言い直す。
009であった彼は、その当麻の言葉にたいして、何も反応を示さなかったが、最後に。




「003、を。と考えているけれど、状況に応じては、変わってくる。・・・・003が篠原のそばにいるのは、1日目のオークションと、3日目の後夜祭の間だけ。あとは、・・・・・フランソワーズの、自由だ」







その009の言い方で、島村ジョーが近く感じた。












当麻は、深くしっかりと腹に空気を吸い込み、咥内にたまった唾液を飲み込み、胸にうずくまっていた言葉を口にした。


「・・・・ぼくの気持ちは、フランにとっては迷惑でしかないなら、ちゃんとそういって欲しい」
「あ、の・・・それは」


怖々と視線を当麻へとむけるが、当麻の瞳を見る事を、無意識に避けて、その視線は彼の首もとで止まった。


「ぼくは、ぼくなりに考えて、そして事実を受け止めた上で・・・。気持ちを伝えた」
「・・・」
「・・ギル・・・ピュンマが言っていたんだ。躯を改造されても、それは”躯”であって、こころまで、魂まで改造された訳じゃない。だから、”人”であることは変わらないって。色々な”人”がいる。自分たちも、その”色々”な人の一部分なんだってさ・・・。だから、理由にはならない。フランが”サイボーグ”だから、ぼくの気持ちを受け入れられない理由にはならないんだよ」
「だけど・・・、私、は・・・」


フランソワーズは言葉を音にしようとするが、はっきりとした形で単語を作りだすことができない。
頭の中に舞う言の葉は、イメージとして捕らえられて、それをどうのように、言葉に置き換えればいいのか分からなかった。


「フラン、・・・・・自分で自分の可能性を、”サイボーグ”だと言うことだけで、決めつけたら駄目だと思う。たとえ、生きる時間が分かれてしまう日が来ようとも、その日まで”幸せ”であれば、いいんじゃないかな?昨夜、そういう話しをしてたんじゃないの?君と、君の仲間たちは・・・。”今”を大切にしよう、と言う事、だよね?だから、ぼくは、ぼくの”今”を大切にするために、”今”の自分が選んだのは、フランソワーズ・・・君のことが好きだ。と、いう気持ち。そして、君もぼくに少しでも・・・違うな・・・。フランが、”今”からぼくと過ごしてくれるかもしれない時間に、”幸せ”を感じてくれることを望むよ。・・・・まだ出会って、日も浅いし、ぼくと言う人間がわからないよね?だから、いくらでも時間をかけてみて、ぼくをちゃんと観てくれないかな?」
「・・・・」


イワンの肩越しから、視線だけを当麻のシナモン・カラーの双眸へと動かした。


「好きなだけ、時間をかけてくれていいよ・・・。返事なんかに、こだわらない。ただ・・ぼくはぼくの気持ちをフランに知って欲しかっただけだから・・」


当麻の瞳は和やかに、そして温かくフランソワーズの、こぼれ落ちそうなほどに大きな碧い瞳に微笑みかける。


「・・・・私は、サイb・・」
「関係ないよ」
「いいえ、当麻さんっ・・私は」
「フランがサイボーグでも、なくても、ぼくにとってそれは問題になんてならない。ぼくは”サイボーグ003”を好きになったんじゃない。普通の女の子、”フランソワーズ”を好きになったんだから」


黄色の、イワンのおしゃぶりを当麻はフランソワーズへと差し出した。





---普通の、女の子・・・、私、が?











フランソワーズの心臓が、ぎゅうっと鷲掴みにされた。と、同時に、喉奥が焼け付くように痺れる。



「でも、・・・当麻さん・・・・私は・・」





「ぼくがサイボーグじゃないから、恋愛対象にならない?」
「っ・・!」


意外な言葉に、驚きに見開かれた碧空の瞳。
こぼれ落ちそうなほどにおおきな、その碧を覗き込み、当麻はおだやかに微笑み続ける。


「ごめん。変なことを言って・・・出会えたことが運命なら、この運命はぼくが選んだ運命なんだ」
「・・・」
「好きになる相手が、サイボーグである、ない、関係なく、フランソワーズと出会う運命だったんだよ。フランソワーズもぼくと出会うために、きっと・・・ね?」
「・・・・」
「サイボーグであることを理由に、自分で壁を作ったらだめだよ?」
「・・当麻さん・・・・・ちが・・」
「いくらでも、ぼくと島村と比べたら良いよ、・・・でも、”サイボーグ”と言う事を除いて、頼みたいな・・・・」
「私はっ」
「・・・フランが、島村に好意を持っていることくらい・・・それでもいいんだ。解っても、フランを好きだと言う気持ちは変わらなかったから」
「!」
「今、フランが島村のことを好きでも、明日はわからない・・・。日本ではね、こころって。ころころ変わるって言う意味があるから”こころ”って言うんだよ、知ってるかな?」


イワンに助けを求めるように、フランソワーズはイワンを強く抱きしめた。


「明日の用意・・・って言っても、突然ここに連れてこられたからね、別にないんだけど・・・」


ソファから当麻は立ち上がる。


「あなたが好きです。何度でも言うよ・・・ぼくはそういう人間なんだ・・・部屋で、明日の用意をしてるね、それと」
「・・・」
「今年であやめ祭は最後、フランと3日間一緒にまわれるなんて、嬉しいよ」



遠ざかる当麻の足音。
リビングルームのドアが閉まった後に、聞こえたイワンの声。


<・・・彼ハおーぷんダネ、僕ガイルノニ。彼ハ僕ノコトヲ ドウ捕エテイルンダロ、赤ン坊ニ 色恋沙汰ガ ワカラナイトデモ?>


イワンの言葉に、フランソワーズは躯の緊張を解いた。


「イワンの事は・・・同じサイボーグ。と、しか博士は説明されていなかったでしょう?」
<ソレデモ、昨夜ハ 僕ガ話シテイルノ、聴イテイタヨ?>
「信じられないのかもしれないわ、普通は疑うし、びっくりして、逃げちゃうかもしれないのよ?でも、当麻さんは、イワンの前でもごくごく普通に接していらっしゃるわ・・・」
<肝ガ据ワッタ男ダネ・・・サスガト言ウノカナ?・・・・ふらんそわーずノコト、チャント好キナンダネ>
「・・・・」
<最後ノ一言ハ 余計ダッタケド>


フランソワーズは、マシュマロのようなふくよかな肌触りの良いイワンの頬をつん。と、人差し指でさした。


「最後の一言?」
<ココロは コロコロ 変ワルカラ ッテサ>
「・・・・そう、ね」
<ハッキリ言ワナイ、ふらんそわーずモ悪イ>
「・・・ええ、でも言葉にするのが、怖い」
<さくらニハ言ッタ>
「あの時と、また・・・違う、の」


フランソワーズはイワンを抱き直した。


<じょーハじょーデシカナイシ。当麻ハ当麻ダカラ>
「え?」



あふぅ、と、大きくあくびを1つ。
眠たげに瞬きを繰り返し、小さな手で目をこする、イワン。


<僕ダッテ 誰ニモ負ケナイクライ、ふらんそわーずガ大好キダヨ>

イワンの夜が訪れようとしている。
眠たげに、重たくなった瞼を押し上げて懸命に、困惑する表情の大好きなフランソワーズを見上げる。
フランソワーズはイワンの躯をゆったりと揺すり始めた。
小さな背中をリズム良く、やさしくたたく。


「私も、イワンが大好きよ・・。大好き」
<僕ガ一番ダヨネ?>
「ええ・・・一番よ」



何度も、ちいさくあくびを繰り返し、テレパシスで、彼女へ何かを伝えようとするが、思念は眠りの森に漂う霧に混じって、フランソワーズには届かなかった。











デモ、愛シテイルノハ・・・・・
   

ドウシテ、ハッキリ言ワナイノ?



何ガソンナニ、怖イノ?











































<?>


明け方近くに、イワンは一度目を覚ました。
見上げる天井は、自分にあてがわれた1階のコモンスペースに置かれたベビーベッド。

寝入ったばかりの時間は眠りが浅いために、ごくたまに、誰かの強い”思い”に引きずられて、目が覚めてしまうことがある。

よくミッション前の緊張する空気によって、夜の時間への寝入りを不快なものにさせられて、イワンはその能力(ちから)を暴走させてしまうことがたびたびあった。


<・・・じょー?>


自分を目覚めさせた、”思い”を辿る。






地下の研究室。
メイン・コンピューターに繋げられた、人から切り離された欠片の前にいる。
ギルモアから拒まれてしまった009は、それと繋がる方法が、ない。


<・・・・・・起きて、たのかい?>
<・・・何シテルノ?>
<よかった、訊きたい事があったんだ・・・>
<何?>
<・・・・人工知能(AI)のことなんだけど>


009と、短い会話が終わろとしたとき、イワンは再び夜に呼ばれた。


<無駄ナ、コト・・・・・好キダネ・・>
<これで、終わる、かな・・・>
<・・・・ソレデ、満足スルナラ、・・・スレバ・・イイ・・・・>
<ありがとう、・・・おやすみ、イワン>
<・・じょー・・・>
<?>
<・・ーイ?・・・・・・・・・>
<?・・・おやすみ、イワン・・・いい夢を>






何ガ ソンナニ 怖イノ?
怖ガッテイタラ 何モ始マラナイヨ。








ソノ手ハ、誰ノタメニ、アルノ?
















====74へと続く。




・ちょっと呟く・

書き直しナンバーワンの座をゲットした73!
何度書き直したか(泣)

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ちゅ。   (002編)

秋の香りを感じるのは、色づいた木々の葉。
木漏れ日の色が、紅葉する葉に負けないほどに朱みが帯びたころ、別行動していた”ヤツ”らと落ち合うために、向かう指定の場所へ。

目的地まで、舗装された道を使うと、大きく迂回しなければならない。


「おい、チビ。通るんだよっ」


近道のために、猫の額のような公園を通り抜けようとした。


「っ!外人がっ日本語、話してはるわっ!」


コンクリートで固められた、ジェットの腰の位置にさえ届かない柱が、大人2人が並んでギリギリ通ることができる幅で立っている。


「・・・・悪ぃかよっ」


ジェットが通ってきた入り口は、彼の背後にあり、ここを抜ければ、目の前に約束のバス停がある。


「すっげえ!あたま!」


ずいっ!と指を指したのは、ショートカットヘアに、白と黒のボーダー柄のシャツ。
赤のオーバーオールを着た子ども。



「フンっ、オレの自慢の髪だぜ?」
「・・・別にカッコいいとは思わへんねんけどな」


子どもに、ふんっ。と、鼻で笑われた。


「っ・・・!あああああああああっうるせえっチビっどけやっ!!」


子どもを無視して公園から出ようと、ジェットは足を一歩踏み出す。が・・・・。


「チビチビ言うなやっチビ言うヤツの方がチビやねんえ!」


出入り口の柱の間に、ばん!っと、腕を組んで仁王立ちになる、子ども。


「うっせえっ!!変な日本語使いやがって」
「変やないわっ!関西弁やっアホっ」
「?!アホだとおっアホ言うヤツがバカなんだぞっバカチビ!」
「?!っっなんやて!アホやてゆうよりバカのほうがっあかんねんっ!」
「・・・あかん???」


ジェットは聞き慣れない日本語に、目を白黒させる。



「ウチより、でっかいクセにっ!大人はなあっ!もっと子どもを大切にせなあかんねんでっ!少子化で子どもは貴重やねんからなっ」
「へえへえ」


手をひらひらと、”あっちへ行け”とでも、言うように動かし、足を再び前へ出そうとする。が・・・。



「ああっ!お前は鼻ばっかり大人になった、ピーターパンしょうこうくん(症候群)やなあっ!!」
「????」


ジェットの足が止まる。



「鼻と髪の毛ばっかり成長しはったからっ!それやから、子どもにたいしてケンカ売れるんやっ!!」


びしいいっっ!と、人差し指をさされた。


「チビっ!どけっ」


ぐしゃぐしゃっと、自慢の赤毛をかきむしり、面倒臭そうに、足を前へ出そうとした。が・・・。


「イヤやっ」
「ああ?!」
「ここはウチのキチやねんからっ」


子どもは、両手両足をのばして、道を塞ぐ。


「そこを通らねえと、行けねえんだよっ!」
「うるさいわっ!ここはウチのキチって言うてんのがわからへんのかっ!頭いってんちゃう?」
「あたま・・いく?」

再び、ジェットは”翻訳”に苦労する言葉に、戸惑いながら、「オレは基地から出ようとしてんだけど?」っと、胸の中で呟いた。


「さてはっ!お前っアクのてーおー、スカルモンの手先やなっ!!」
「はあ?!」


---スカルモン?!


微妙に、こころ当たりがあるような、ないような、名前が出てきたために、呆然と子どもを見下ろした。



「ウチのキチをはかいしに来はったんやろっ!そんなんさせへんねんからっ」
「・・・おお、させんな、させんな」


ジーンズに手を突っ込んで、大きく足を持ち上げた。が・・・・・・。


「とおっ!!」


子どもが、その足をめがけて、思い切りキック!


「っイテっっっ!!!っ何しやがんだよっチビっ」
「アクはほろびなっいくでっ!!」


何かのヒーローモノのポーズを、ばっちり決めて、戦闘態勢に入った。


「っ!おおっ来いっ!!」
「いやああっっ!」


正義をかけた戦いの火ぶたが切って落とされた。








待ち合わせしている、バス停で。
フランソワーズがなかなか姿を表さないジェットに、痺れを切らしたころ、不意に、耳に届いた小さな子どもの声と、聞き慣れた、声。

初めは、近くの公園で親子でも遊んでいるのだろうと思っていたフランソワーズだったが、”親”だと思っていた声が、どうしても、自分のよく知る、待ち合わせの相手だとしか思えず、声のする方へと躯を動かした。


「・・・ねえ、ジョー」
「ん?」


バス停のベンチで、単行本を開いていたジョーは、立ち上がったフランソワーズに声をかけられて、視線を単行本から外し、彼女の傍らに立った。

「あれ、あそこ・・・」
「え?」


フランソワーズの指差す方向へと視線を向ける、ジョー。


「ほら・・・」

バス停前の大通りを挟んだ、雑貨ビルの隣に、木々が寄り添うように立っている。
点滅信号前の、その場所が”公園”であることに気づく。


「あ、・・・ジェット?と・・・」


樫の木だろうか?
公園の入り口と思われる場所に大きく立つ木は、自然の強さを主張するように、舗装されているアスファルトを盛り上げて、雄々しく立っているために、ジョーとフランソワーズの視界には、ちらり。ちらり。と、赤いつんつん髪の長身の男が見えて、その下に、同じ赤の・・・・服を着た子どもが見え隠れする。


「・・・いつまで・・・・遊んでるのかな?」
「どうしましょう?」


白熱する戦いの声が、聞こえ始めてきた。
どうやら、かなりの苦戦を強いられている002。


「・・・・・喉、渇かない?」
「え?」
「あっちにさ、カフェがあったよ。そこからでも見えると思う」


さきほど歩いてきた先にあった、店を思い出して、ジョーはフランソワーズを誘う。


「んふふ♪ケーキも食べていいかしら?」
「いいと思うよ。・・待たせるジェットが悪いんだしね」
「ジョーは、食べないの?」
「フランソワーズの一口もらう」
「だめ。だってジョーの一口は大きいもの!」
「でも、食べるよ?」
「も!」


抗議するように、ジョーの腕を捕らえる。
そのままジョーは歩き出したので、腕を絡めたまま、2人はカフェへと向かった。







「なあ、名前教えてくれはる?」


夕闇の色が、汗ばんだ躯に心地よい風をジェットに届けた。
子どもがオーバーオールの胸ポケットにいれていた携帯が鳴り、どうやら”帰ってこい”と、言われたようだ。


「???」
「名前や、名前!アクのてーおーの手先や言うても一戦まじえたから覚えておいてあげるさかいに、言ってみいや」
「・・・・・何語やねん、それ?」
「あ、うつってんで?」


けらけらけらっ、ジェットに向かって笑った。


「っ!ジェットだ、ジェット!」
「変な名前やなあ、あんた、苦労するで?」


同情するように、眉を悲しげに下げてみせる。


「っチビのくせにっ」


ジェットは、その子どもの頭を両手でわしゃわしゃっ!!っとシャンプーでもするように、かきまわす。と、子どもの体がぐいんぐいん揺れた。


「まあ、ええわっ!!ウチそろそろ行かなあかんねん、この辺で堪忍してな、遊びとおても、ききわけのええ大人にならへんとあかんで?」


乱れた髪を、小さな手で撫で付けながら言う。


「だああっ!!誰が遊びたいって言ったっ誰ガッ!」
「顔に書いてあるやんっ!」
「行けやっとっとと!誰か待ってんだろっ!!」
「せやっ!しんかんせん乗ってかえるよてえやねん、時間ゲンシュや言ってはったんや!ま、そういう訳やさかいに、泣かんでなあ?」


ジェットを気遣う子どもに、舌打ちしながら答える。


「誰が泣くかっ!」
「最後や、ちょっとかがんでみいや」


子どもは、おいでおいでと、ジェットにかがむ事をせがんだ。


「ああ?」
「ほらあ、はよせえへんと、時間がなくなるやろお!」


ジェットのジーンズを掴んでぐいぐいっと引っ張る。


「ったく、なんなんだよっお前はっ」


嫌々ながらも、ちゃんと子どもと同じ目線にまで、膝を折ったジェット。







ちゅっ。






「ウチ、きよかって言うねん!またこっち来れたら遊んであげるわあっジェット!!」


触れた頬に手を当てて、走り去る”きよか”を見送った。


「・・・・・・女の子だったのか」









街頭に灯が点る。


「へへ・・・、ま。ええ女になってまた、来いやっ!!」














*ベタ。だ・・・でも、ベタ。が似合う気が・・す、る・・・。
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複雑な心境/恋する証拠(あかし)




「駄目っ!ジョーっいやっ、いやよっアタシがとるのっ」


外見からは予想ができなほど、流暢な日本語を話す、可愛らしい、お人形のような西洋人。


「・・・はい、どうぞ、取ってください」


そんな女の子と同じテーブルに座る、日本人?


「どれ?ねえ、どれ???」
「・・その、赤いのっ・・・て、立ち上がらなくていいからっ!座って、座るんだよっフランソワーズっ・・・座って取ってよ・・・いちいち立ち上がらなくてもいいだろっ」


周りから聞こえてくる、自分たちにむけられている笑い声が気になって仕方がない、ジョー。
そんな周りの様子などおかまいなしに、フランソワーズは、そわそわと、運ばれて来るジョーの”マグロ”が乗った皿を見つめている。


「きたわ!」
「・・・・そうだね」
「取るわよ!」
「はい、がんばってください」


嬉々として、目の前にやってきた皿に、白い手を伸ばして持ち上げた。


「取ったわ!!ジョーの分♪」
「すごいね・・・ありがとう」


フランソワーズが、ジョーの前に手にとった皿を置いて、満足げに腰を下ろした、とたんに・・・。


「次は、ねえ?次っ!!」


躯を捻って、チェーンコンベアを見つめ、ジョーへ次のネタを催促する。


「・・・・フラン・・・・・・いや、まだ、これ食べてないし・・って、言うか。フランソワーズ、キミ、さっきから全然食べてないよ?」


ジョーはフランソワーズの前に置かれている、ハマチを観た。













####


「あのね!ぐるぐる回るのが食べたいのっ」


イワンを連れて、コズミ博士とアメリカのボストンで開かれる学会に出かけたギルモア博士。
そのために、邸には居残り組の、3、6、7、9。


オーナーの張大人は朝から晩まで元気に中華鍋を振り回し、そんなオーナーと漫才でもするかのように、グレートは張々湖飯店を手伝う。

大学にバイトで通うジョーだけれど、フランソワーズ一人になってしまうことが心配で、事前に今週いっぱいは休む事を伝えた。
それを知ったために、張大人とグレートは店を閉めることを止めて、いつも通りに店へと出かける。
そのために、(夜にはちゃんと張大人とグレートが帰って来るけれど)基本、ギルモア博士とイワンが帰ってくるまでの間は、ギルモア邸にいるのは2人だけ、となる。


そんな3日目。
2人きりの昼食を、いつものように用意しようとしたフランソワーズを、ジョーは外へと誘った。
そして、帰って来た答えが、”それ”だった。


「ぐるぐる?・・・ええっと・・・それって、何?」
「ぐるぐる回っているのよ!お皿にほらっフレッシュなお魚のがっベルトコンベアなのっ」
「・・・・回転寿司?」
「そうっ!それっぐるぐるしてる所で、お寿司しましょ!!」


とび跳ねるようにして、”外食”を喜ぶ、フランソワーズ。
ね?ね?と、おねだりする彼女を観る、ジョーの頬があがる。


「回転寿司より、ちゃんとした鮨屋へ行こうよ、そっちの方が美味しいよ?」


ジョーは、大学の研究室で可愛がってもらっている人たちに、何回か食事に連れて行ってもらった鮨屋を思い出した。


「いや!ぐるぐるしてるのを取るのっ」
「別に・・特別なことないよ?ただの寿司だし・・」
「いいのっ観たいの、取りたいのっ」


どこで、”回転寿司”など知ったのか。
フランソワーズのお願い、通りに、今ジョーは、フランソワーズとともに回転寿司のチェーン店に来ていた。











ジョーの、”食べてない”の言葉に、フランソワーズは、自分の前に置かれている皿へと視線を落とした。


「だって・・・」
「だって、何?ボクの分ばっかり取らないで、フランが食べたいの取りなよ」
「緑色が・・」


フランソワーズの目の前に置かれて、ぺろり。と、裏返ったハマチに鮮やかな緑色。


「あ、ワサビっっ!」
「・・・ここのは、・・・全部入っているのかしら?」
「ごめんっ、気づかなかったっ!!」
「あのね、除けてもね、つんつんしてね、鼻が痛いの・・・・アタシ・・・駄目だもん・・・ワサビ」


フランソワーズのはしゃぎぶりに、そんなフランソワーズを観る周りの視線に、彼女が小皿にワサビをよけているの事に気づかなかったジョーは、慌てた。


「気づかなかったボクが悪いっけど、言ってよっ!!・・すみませんっワサビ抜きで、ハマチと、甘エビ、あとっホタテをお願いしますっ」


ジョーはチェーンコンベアを挟んだ、内側にいる寿司職人に向かって、フランソワーズの好きなものを頼んだ。
「へい!かしこまりましたっ」と、寿司職人をイメージさせる、声が飛ぶ。


「ごめんなさい」


今までのはしゃぎぶりとは180度変わって、しゅん。と、ジョーのむかい合う席で小さくなる、フランソワーズ。


「別にっフランのせいじゃないし、謝らなくていいよっ!気づかなかったボクが悪いんだしっ」
「でも、・・・ワサビが食べられないなんて、やっぱりお寿司に失礼でしょ?」
「ええ?何それっ?」
「だって・・・お寿司にワサビは、その料理の大切な・・・スパイスだもの・・・・・・・。アタシ、ここを選んだの間違ってたわ」
「間違ってないっって、ワサビが食べられない日本人はたくさんいるからっ!」
「・・でも」
「ワサビなしを頼んだからっ、これ、食べなくていいからっ!!」


フランソワーズの前にある、”ワサビあり”の皿を自分の方へと移動させる。と、ジョーの目に飛び込んで来た、黄色のネタ。


「あっ!玉子っ。フランソワーズっ玉子が来るよっ、あれはワサビがないっ!!ほら、取らないとっ」
「玉子っ」


ぱっ!と、俯いていた顔を上げて、チェーンベルトの上を流れる皿に視線を戻す。
黄色く、黒の海苔のベルトを巻いた玉子巻きを見つけたフランソワーズは、備え付けのイスから立ち上がった。


「ジョーっ!あれをアタシ取るわっ」
「うん!がんばってっ」


周りの笑い声が大きくなった気がした。が、もうジョーは気にしない。
フランソワーズだけをみる。

ワサビ抜きは、チェーンコンベアに乗せられてはやってこない。
フランソワーズに好きなだけ、ぐるぐる回るチェーンコンベアから寿司を取らせて、一生懸命にジョーは食べる。


「いやあああああっんんっそれ、アタシが取るのにっ!!」


あまりにも楽しそうなフランソワーズを観ていると、胸がむず痒くなり、イジワル心でフランソワーズが食べられる数少ない”ワサビ”が必要としないお寿司。を、ジョーがチェーンコンベアからひょいっ!と取る。


「たまにはボクだって取りたいよ、で、これはフランのだから」
「自分のくらいっ自分で取るわっ」
「あ、そう?じゃあ、ボクも自分のは自分で取るから、フラン、もういいよ?」
「っっ?!・・・イジワルっっっ」
「あ、サーモンと、イクラがくる、取ってくれるかな?」
「イクラはアタシのっ!」
「だからっ立たなくても取れるだろうっ!」


本当は、フランソワーズが立ち上がって寿司をとっても、別にいいと思っている、けれど。
立ち上がったフランソワーズに、チェーンコンベア内の若い職人がある”意を含んだ”視線で彼女を観ていることに気がついた。
その視線に、ジョーは・・・なんとも言えない、口では言い表す事ができない、ごちゃごちゃした、気持ちになる。
ご機嫌のフランソワーズは、花が咲くように愛らしく微笑みかえすから余計に、ジョーの胸中で複雑に絡み合う、糸。



その糸は、フランソワーズにたいする”気持ち”。





フランソワーズが、どんなにはしゃいで、周りの視線を、注目を集めても気にしない。
立ち上がろうが、バレエを踊り出そうが、恥ずかしさに負けそうになっても、彼女の傍にいる。けれど・・・、フランソワーズに送られてくる異性からの視線を、気にしない。とは言えない。



気にしない、理由が無い。
気になる、理由はある。






もしも、彼女が・・・・だったら、気にしないだろう。逆に優越感に浸っていたかもしれない。
でも、彼女が・・・・なんかじゃないから、気になる。


気になる。




その視線を送る男たちと変わらない、同じ位置にいる自分だから、気になる。








「ジョーはサーモンね?アタシがいくらなの♪」


二つの皿をテーブルに置いた、フランソワーズ。
ジョーは複雑な気持ちで彼女を見つめた。





---ボクって・・・仲間、だけどさ・・・・。それだけ、なのかなあ・・・彼女にとって・・・。










「も!そんなにいくらがいいの?じゃあ、1個ずつね?」


イクラを一貫、器用にお箸で持ち上げる。と、それを醤油に入った小鉢にすこしだけ浸す。


「はい、どうぞ」
「?!」


イクラがフランソワーズの手に持つ箸で、ジョーの口元まで運ばれた。











ぱくり。と、一口で食べてしまう。
















イクラの味なんかわからない。
フランソワーズの行動もわからない。

チェーンベルトを回るネタの数よりも、悩みのネタはつきない。





---なんだかなあ・・・・。






「サーモン、もらうわね?」


フランソワーズは、ジョーの前にある皿からサーモンを一つ取ると、イクラの乗った皿に置いた。









視線が、痛い。
けれど、少しだけジョーはその視線に優越感を感じている。






言葉で表現できない、複雑な気持ちは恋する証拠(あかし)。


好きな子と一緒にいたいから。
喜んで、ずっと笑っていて欲しいから。




好きな子のためにがんばる、恋する青年の名は、島村ジョー。
または”サイボーグ009”。








*おまけ*


「ジョー、あのね、あの、・・・まぐろ、頼んでくれる?」


フランソワーズは自分でワサビ抜きを頼まず、必ずジョーにお願いする。


「いいよ、まぐろだけ?」


ジョーが、自分が頼んだものを注文している姿が、ちょこっと恥ずかしいけれど、嬉しくて、幸せな気分になる。



そのときだけ、彼の”特別”な感じがするから。
その瞬間だけ、彼の”恋人気分”でいられるから。







「ありがとう、ジョー」
「どういたしまして、まだ、大丈夫?食べる?」
「食べるわ!」
「・・・デザートもあるけど、ここで食べる?」
「ん~・・・どうしましょ?」
「少しだけ、余裕をもってくれるかな?」
「どうして?」
「ん?期間限定オキナワ特産物フェアが、やってるだろ?」
「?」
「デパートで、やってるんだってさ。そこにオキナワ名物のアイスクリームが売ってるらしいよ、行かない?」
「行くっ!!!」
「マンゴーとか紅イモのアイスがあるみたいだから、まあ、時間をあけて行くけどね」
「すぐでもいいわ!」
「駄目だよ、お腹壊すから・・・夕方にしよう、いいね?」



くすぐったい。
ジョーの優しい言葉が。
フランソワーズのこころを甘くくすぐる。


デートって、言いたい気持ち。
けれど、ジョーはきっと、違うって言う。



仲間だから。
仲間の中で、唯一の女の子だから、でしょう?


「ジョー、あの、ね?」
「なに?」
「・・・・いいの?」
「何が?」
「だって、・・・・アタシとずっと一緒だと、・・・」
「別に?大学の方は休みを取ってるし、心配ないよ?」
「・・・・そう」






















いつか、言えるかな?
いつか、言えるかしら?



キミが好きだって。
アナタが好きって。













*もじもじな心境?回転寿司店で?・・・・ムードもなにもないなあ・・・この2人(笑)
 まあ、少年誌目指すから(←わけがわからない!)
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Day by Day・74
(74)


何ガ ソンナニ 怖イノ?
怖ガッテイタラ 何モ始マラナイヨ。








ソノ手ハ、誰ノタメニ、アルノ?







怖く、ない・・・・。
その逆で・・・・。





安心した・・・
安心したよ、ね・・・?



N.B.Gが存在を知って、嬉しかった・・・?


また、戦える。
また、必要とされる。


もう、無理しなくていいんだ。
平和を望んでいる”ふり”をしなくて、いいんだ。

また、あの戦いの日々が始まれば、いいんだ。




そうすれば・・・・。



護れる。
そばに、一緒にいられる。

ずっと彼女を独り占めできるよ?
だって、彼女は同じサイボーグだから。



戦い続く先に、訪れる事がない平和を夢みながら、明日を待つことができる。




霧のような、夢は・・現実になる必要なんかなかった。

平和なんていらない。
平和の中で生きる事なんて許さない。






我が侭勝手な主張。
個の叫び/俺の願い。









---B.Gが築き上げたかった世界は、B.Gが滅んでこそ、動き出したんだねえ。いや、滅んだのではないねえ、花が散ったことにより種を撒いた---


そうだ。


風となって、B.G(花)を散らし、その種を巻いたのは、この手・・・で・・・・・・
この手は、この腕は・・・。






---ニヤリ、と。篠原秀顕は009にむかって皺の深い、薄い唇で微笑み、手が、009の前髪を押さえていた手が、重力に従い落ちた。---





スーパーガンのトリガーを引く感触が、甦る。
何度も、何度も、何度も、何度も・・・・。


笑っている。
満足げに、笑っている。



繋がった、と言いたげに。
次の、新しい・・・・。








「ちっっっg・・・・」







戦うんだ。
必要とされいるから。


戦うんだ。
求められているから。



戦うんだ。
戦わないと・・・・誰にも、何にも、どこにも、・・・・・。




終わっては駄目だ。
終わらせてはいけない。

悪は滅びたらいけない。
悪が続くかぎり、僕/俺は、必要とされ続ける。

誰にも捨てられない。
誰にも置いて行かれない。


戦っているかぎり、居場所がある。
戦っているかぎり、俺は存在する価値がある。
戦っているかぎり、1人じゃない。





サイボーグになったから。
俺という人間に、生きている価値がうまれた。





「うあっs・・g・・・う」
「・・島村?」






完全体の、サイボーグ009に成り損ねた。
サイボーグになってさえも!?











「・・島村っ、しま・・?」













中途半端。
人であっても、サイボーグになってさえも?







人にもなれない。
サイボーグにもなれない。




「っぐ・・・・・・ああっっ・・・・・・」





半分の体。
半分の血。






「・・島村?・・・島村っっ?!」




---そこは人の欲だけだと思うねえ。善悪じゃないんだ。私利私欲の”個”が放つ”願望”が同じものを望むものを引きつけて、輪になり、目的達成後は、散っていく。まるで、餌に群がるハイエナのように。そこに”肉”があるから寄り付き、”骨”になれば散っていく。我が身可愛さに身を隠しながらも虎視眈々と個の欲を狙っている。---





そうやって生きてきた。
そうしなければ、生きていられなかった。




独りで生きていくために。
同じ孤独を共有する人間と、夜の闇を体をすり寄せて耐えた。
時に、その孤独が重く、苦しく、辛く、悔しく、悲しく、・・・・・・。
同種の個が集まり輪になり、凍えた体を温めるため、現実を忘れるため、刺激と興奮に酔うことに夢中になった。
それは、闇の中に瞬く幻影。

朝がくれば、儚く散り、跡形も無く消えてしまう。





「うぁ・・ああm。。。。あ、あ、ああ・・・・・・っっ」





裏切りは許さない。
誰一人として、幸せになってはいけない。

黎明の中に身を焼きながら、夜を待つ。
同じ肉を食い荒らした仲間だからこそ、闇に産まれて闇に生きて、闇に暮らした者が。


今更、だ。






幸せになってはいけない。
そんな権利はない。





---覚えておきなさい、私、が・・・篠原秀顕だ---



君のために用意されていた。
君のために生かされていた。

君のせいで忘れ去られた。
君のせいで私は殺された。






俺が殺した。
俺の手が伸ばす先には、必ず・・・・・。


必ずっっ!








ソノ手ハ、誰ノタメニ、アルノ?

ソノ手ハ、何ヲ、シテイルノ?







構えたスーパーガンが、その胸にあてがわれた。
スーパーガンのトリガーを引く、慣れてしまった、感触。

愛らしくふっくらとした形良いくちびるが、微笑みを形作りながら、最後の言葉を音にして、手が、009の手と重ねられていた彼女の手が、重力に従い落ちた。



---・・・・・ジョー・・・?







「うああああああああああああああああああああああああああああああっっっs」
「島村っs?!」





当麻がベッドから飛び起きると、同時に、その手にもった携帯電話を、交換したばかりのアルタイル寮にいる、彼らにコールする。


「島村っ、おいっ?!島村っっ!!!」
「うあああああああっっイヤだっっいやだああああああああああああああああ」
「!!っっ」
「あぶねえっっ!」


駆け寄った当麻の腕を振り払ったその力は、まるでホコリでも払ったかのように、当麻を彼のベッドが置いてある壁際へと吹っ飛ばした。瞬間、加速装置を使い、壁と当麻の間に躯を滑り込ませたジェット、続いて部屋に飛び込んで来たピュンマはジョーの躯をベッドに押さえつけた。


「落ち着いてっっジョーっs!!!!!ジョーっっ!!」
「っああああっっ・・・あ・・・・・・は・・・」
「ジョー・・・・」














時間は前日の午後にさかのぼる。






####

学院の正門前に立つ、3人の生徒。


「車?」


平穏に学生生活を送る、篠原当麻と島村ジョー。
2人が月見里(やまなし)学院へ戻ったのは4日前。


「電車は使わないから・・・タクシーを呼んでもらった」
「っだよ、用意いいじゃんか!」
「・・・で?」


ジョーはジェットを問う。


「で?って何だよ?」
「・・・・・・ジェットがなんでここにいる?」


篠原秀顕の密葬が身内で行われる、今日。
当麻はさえこに言われたように、家にも戻り、葬儀に参加する。それに付き添うのは009。と、予定外の002。


「センパイの家で葬儀だろ?つき合うぜっ!」
「・・別に、つき合うようなことじゃないよ?」
「っだよ、大勢の方がいいんだぜっ!こういうのはよっ!!」
「お祭りじゃないんだけど・・・」
「何事もよおっ経験だぜ!経験っ!!」
「・・・頼むから、さ」
「ああ?」
「制服のまま、吸うな、よ?」


ジョーの言葉に、にやっと笑ったジェットは、胸元を軽く叩いた。
その位置はブレザーの内ポケットのあたり。


「け!外人だからいいんだぜ?」
「理由にならない・・、ヘンな言い訳に”外人”を使うなよ」
「んじゃよっ!いつ使うっつんだよっ」
「永遠に使う必要ないと思うけど?」


2人のやり取りを黙って聴いていた当麻に、ジェットが話しかけた。


「でよ、センパイは、そのまま制服で参加かよ?」
「うん、学生だしね・・・。君達もだろ?」
「知らねっけど?」


ジェットはジョーを観る。


「制服でいい、と言われている。004と007は用意したみたいだけどね」
「003は?」
「・・・彼女も、だろうね」
「フランも来るの?!」
「・・・・ああ」


当麻はフランソワーズが参加することは、ジョーから聴かされていなかったために、驚く。
その態度に、ジェットは、ふん。と、ジョーに向かって意味ありげな視線を送る。


「知らせてなかったのかよ?」


フランソワーズは、003として、訪問者を”視る”予定である。


「必要ない、報告義務もない」


ジョーの突き放した言い方に、ジェットが口を開こうとしたとき、連絡していたタクシーが学院正門前に停まった。



「でも、それじゃあ・・・ピュンマは?」


タクシーに乗り込みながら、ふと、当麻が呟いた。


「んあ?彼奴は居残り。海の見舞いもあるしよ!」
「・・・津田は」
「来週末には学院へ戻って来るだろう」


ジェットの代わりに、ジョーが答えた。


津田海は、篠原総合病院に滞在している。
来週始めに、一度彼の実家へと戻り、あやめ祭前には学院へ戻って来る予定である。















####

ごく内々に、との事で、密葬と言う形にしたと聴いていた。が、アルベルトが予想していた以上に質素で慎ましいものだった。
あやめ祭後に、大々的に社葬を行うことが決まっているとしても、日本で5本の指に入るほどの大企業を作り上げた、一国の主。と言うべき、人間の葬儀とは思えない。

わざとなのか?
それとも、これが”篠原秀顕の本当の姿、なのか。

長く病院の霊安室に安置されていたことを理由に、すでに遺体は荼毘に付され、骨壺を入れた白い箱に納められて、篠原邸のリビングルームに、白菊だけで統一された花の香りが漂う、祭壇飾りに置かれていた。
祭壇には、木位牌、遺影写真を入れた黒の額縁、家名・家紋入り提灯飾り、盛物一対、焼香台が置かれている。
道路案内板も、近くのバス停にのみ、遠慮がちに出ていた。


「ジョーたちよりも早く着いてしまったようなだあ」
「そのようだ・・・」


住み込みのハウス・キーパーである、メイ子に案内されて、リビングルームに通されたアルベルト。そして、彼女とはホームステイをしていたために、面識がある、フランソワーズ。そのフランソワーズはメイ子とともに、キッチンへと向かい、今、リビングルームにはアルベルト、さえこの護衛役として行動するグレートがいた。


「日本風ってやつだ、初めて見る・・・が、これは”仏式”らしい。浄土宗だってよ」
「法然上人か?」
「南無阿弥陀仏だってきいたぞ」
「西山派か鎮西派、どっちだ?」


リビングルームのドアが空き、和装に身を包んだ、喪主であるさえこが現れた。


「西山よ」
「光明寺が総本山になるのか・・・」
「ねえ、あなたたち本当に外国の人?その辺の日本人より詳しいわよ?」


呆れたような、おもしろがるような、不思議な笑みを浮かべながら、2人に近づき、フローリングの床に業者が敷いた紺のカーペットの上に座布団が置かれた、その一つに腰をおろした。
グレートはアルベルトの正面に、彼と同じようにして、座布団の上で胡座をかいて座っている。


「当麻も、すぐに着くわ。学院を出る前にリーダーさんから電話をもらったから」


そこに、人数分のお茶を入れたフランソワーズが姿を現した。


「社葬で身内の恥は晒したくないもの、いったいこの男のために誰が来るのか知らないけど、私が雇った探偵と父が個人的に雇っていた弁護士を通して、今日のことは報せておいたのだけど・・・」
「その中に、今回のことを知る人間がいるのかどうか、探らないといけないんでね」
「大変ね」
「几帳面な奴なんで・・・」
「あてにはしない方がいいわ、この通り、未だあなたたちだけだもの」


祭壇にある、遺影に視線をむけたさえこ。


「やっぱりね・・・・、こういう男だったのよ。人は死んで初めてその人間の生きた跡を知るっていうけれどね、この通りよ、何もないわ」
「・・・・」


アルベルトの隣に座ったフランソワーズは、静かに急須から湯のみに緑茶を注ぐ。
喪服を所持していない、アルベルトとフランソワーズは前日車を走らせてデパートで規正のものを適当に購入したのだが、フランソワーズは見事に、そのツーピースを仕立てたかのように着こなし、トレードマークのカチューシャも、黒のサテン生地で作られた幅があるものをつけていた。

場にそぐわない言葉だが、喪服を着たフランソワーズは普段にはない、女性としての色気を感じる。永遠に変わらない容姿だが、アルベルトの目には、少しずつイワンのように”成長”してるかのように見えた。





「それとも、ルリ子さんの家での方が、よかったのかしらね?」


自嘲気味に嗤ったさえこ。
愛人たちの中でも、最も長く篠原秀顕と連れ添った、本命と言われる女性であり、その付き合いは、さえこの母よりも長いと言った。しかし、さえこは一度も”ルリ子”と言う女性と面識がなく、どんな女性であるか、知らない。

その”ルリ子”には、他の愛人たちと同じように秀顕の弁護士を通して今日の日を伝えてある。


「自分の夫の葬儀にさえも帰ってこない妻、だし。・・・愛人達も、どうだかね。ケチではなかったから、それなりに満足しているのかしら?こんなところまで足を運ぶ必要が無い程度に」
「そのときは、申し訳ないが・・・、リストを譲ってもらいますよ」
「今日が済めば用済みになるわ、勝手にどうぞ」


フランソワーズがさえこに出したお茶を、彼女はそっと両手に包んだ。










####

当麻、ジョー、ジェットを乗せたタクシーが、篠原邸に着いたのは、それから20分ほど経った頃。


誰も00サイボーグ、住み込みのハウスキーパーをのぞいた関係者意外の訪問者はなく、時間通りに訪れた僧侶の読経が始まり、形ばかりのそれは、1時間ほどで終わった。


「ジョーは・・・・経験あるのかあ?」
「教会でなら、ね。仏式は初めて」


ジョーは1度も、遺影と、祭壇におかれた白い箱を、見なかった。
じっと視線を下に下げたまま、あるいは、誰かへとその視線を定めた状態で、過ごした。


「このまま戻るのか?」
「・・ああ、リストはアルベルト、ギルモア邸に持って帰ってくれ」
「わかった」
「ジェットだけでも、よかったんじゃ・・・と、吾輩は思うのだがなあ?」
「タクシーを呼ぶ、よ。もう、ここに居ても仕方ない」
「そうかもしれんな」


玄関から庭に出て、煙草を吸うグレートとアルベルトといたジョーは、グレートの言葉には返事せずに、携帯電話を取り出した。


「・・・煙、こっちに流さないでくれる?・・・匂いがうつる」


ふうっと、アルベルトが吐き出した煙に、眉間に皺をよせ、立ち位置を2、3歩ばかりずらした、ジョー。


「お、優等生なお言葉ですな!」
「我慢してるんだ、これでも・・・、石川に入った寮監が厳しくてね・・・」
「な~るほど!それでジェットはこっちに羽伸ばしかあ!」
「目をつけられつつあるからね・・大人しくしていて欲しいんだけどさ」
「話しを変えるが・・・」


ジョーが携帯電話に登録している、タクシー会社の番号を液晶画面に出すよりも早く、アルベルトは彼に話しかけた。


「お前さんは、あれを放っておくのか?」


”あれ”と、さした言葉の意味を、ジョーは訊きかえしはしない。


「ジェットと、篠原を呼んでくれるかな?グレート・・・」
「ん..?あ、ああ、うむ・・・いいが、・・・」


煙草を地面に落として、それを踏みつけながら、グレートはアルベルトを見上げるようにして視線を送る。と、アルベルトは、短くなった、それを咥内に吸い込んでいた。
グレートは、髪のない頭をさするようにしながら、くるり。と2人に背を向けて玄関へと歩き出す。
その背が、アルベルトの吐き出した煙によって、ジョーの視界から薄く消された。


「お前はどうしt」
<009、004、007、こちらに女性が向かってくるわ・・・・>


グレートが玄関に入って靴を脱いだとき、003からの脳波通信。


<やっと1人かあ・・・>
<・・・初老の女性が・・・、正門前まであと、26m>













####

「・・・・お焼香だけさせていただければと思いまして、このような場所へ訪れることができるような人間ではないのですけれど」
「香田ルリ子さん、ですか?」
「・・・・・はい」


さえこは、玄関先で穴があくほどに、目の前にいる女性をみつめた。
初老の女性は、ただただ視線を足下にさげ、じっとさえこの視線を受け止めている。

喪服に身を包んだその手には、紫水晶の数珠が握られており、品良くカットされた髪は、前髪のあたりに白が目立つが、それはわざとそうしたように見える。

一連のパールが、薄暗くなった室内で清らかな光を放っていた。


<009、人間よ・・・>
<わかった>
<・・・・>
<どうかしたか?003>
<い、いいえ・・・・・004、なんでもないわ>


さえこの背後に立つ、フランソワーズと当麻。
グレートはその2人のさらに後ろにいた。

アルベルトは玄関入り口前から、ジョーととにも様子を窺っている。


「・・・・・どうぞお上がりください」


薄く、低く、細く、けれど芯のある声で、さえこはルリ子を祭壇のある、リビングルームへと通した。
フランソワーズ、当麻、そしてグレートの前を通り過ぎるとき、ルリ子は、深く、3人にむかって頭を下げた。
項垂れるような状態のまま、さえこの背について行ったために、その顔を見ることはできない。

ジョーはすぐに2人の後を追うその途中、指示を出す。


「007観て来てくれ、他の人間がいないかどうか」
「了解」


009の命令に、007は玄関から出て行った。
入れ違いに004は邸内に入り、009のそばに立つ。


「003は004と・・・002は、どうした?」


足を止めて周りを見回した。
そこにトレードマクーのつんつんとした赤毛がない。


「メイ子さんと一緒にキッチンだと思うわ・・・・夕食を店屋物にするから、それを決めるのに・・」
「・・・夕食って・・・・・ジェット・・」


フランソワーズからの返事に、ジョーは眉間に皺を寄せつつも、その声は穏やかに、”ジョー”であった。


「それなら、我々はそっちへ参加しよう、外周りは007で十分だ。それに003がいるから邸周りもいいだろう、009」
「・・・・・・遊びにきたんじゃないんだけど?」
「訪問者がたった1人じゃな・・・、009は?」
「全ての話しに加わる事にしているから、リビングルーム」
「そうか、わかった」


004が話しをまとめた。


「・・・・・」
「まだ、一度も話してないだろう?」


009がリビングルームに向かい、その姿が消えたところで、アルベルトは廊下に当麻と並んで立つフランソワーズに声をかけた。


「・・・ケンカ中か?」
「違うわ、それに・・遊びにきたわけじゃないのよ?」


短く答えたフランソワーズを慰めるようにして、当麻は彼女の背に腕をまわし、フランソワーズに微笑みかける。


「ぼくのせいかな?」
「え?」


当麻を見上げるフランソワーズ。


「ずうっと、ぼくがフランのそばにいるからね・・・ヤキモチを焼いているのかも」
「・・・そんなことあり得ないわ」
「嫉妬されても、何があっても、フランのそばにいるから」
「ジェットに報告してくるわ」


”報告”することなど、ない。
けれども、それを言い訳にするようにしてフランソワーズは、当麻の腕から逃れ、逃げるようにしてキッチンへと早足に向かった。


「大胆だな・・・日本人だろ?」


玄関先の廊下に残されたアルベルトと、当麻。


「ヨーロピアンの血も混じってます」
「”彼ら”は、言葉にさえしてはいないが、ちゃんとお互いを認めている、・・・好きあっているんだが?」


フランソワーズが消えて行った方向へ視線を置いていた当麻が、アルベルトへと躯の向きをかえた。


「そういう風には、見えません・・・。フランの気持ちを知っても、ぼくの気持ちは変わりませんでした・・・いえ、知ったからこそ、なのかもしれない」
「サイボーグだぞ?」
「理由になりません」


きっぱりと、言い切った当麻の潔さに、アルベルトは溜め息を吐きながらも、当麻にむかって言葉を続けた。


「彼女を連れ出すのか?オレたちから・・・・」
「いいえ、それは無理なことですから・・・」
「無理?」
「彼女がサイボーグであると言う事実から、目を背けたりしません。そのままの彼女、全てを好きになったんです。仲間を家族だと言った彼女を、その家族から連れ出すなんてこと、しません。けれど・・・」



再び当麻は視線を廊下奥にある、フランソワーズがむかったキッチンの方角へとむけた。

当麻の胸にフランソワーズにたいする、気持ちが溢れ出す。
言葉にできない想いは、ギルモア邸滞在中に観た、フランソワーズの何も無い、何も無い部屋のイメージしか浮かばない。

当麻の表情が、瞳が、すべてをアルベルトに語る。


「島村ができないことを、ぼくはできると信じてますから・・サイボーグでない、ぼくだからこそ」
「・・・・」


当麻は廊下を歩き出し、アルベルトから離れてフランソワーズの元へと向かう。
アイスブルーの瞳はジョーと変わらない青年の背を見つめた。


「ま、お手並み拝見というところか・・・しかし、だ」



---ジョーは君が思っているよりも、かなり低年齢なガキで・・・・・。
  



<おい>
<・・・004?>
<放っておくのか?・・・すこしは褒めてやれ、いつもと雰囲気違って素敵だとか、黒が似合うとか、一言くらい綺麗だ、の言葉はないのか?>
<っっ!?何をっ。004までっ002もっ、007もっここへ何しに来てるんだよっっ!!それにっあれは喪服だっ不謹慎だっ>


ジョーの回答に、なんともいえない安堵の嗤いが込み上げてくる。


---やっぱりな・・・。
   ヤキモチではなく、滅多にみることがない黒に身を包んだ、
   いつもと違うフランソワーズに、
   言葉が見つからないだけか・・・。


同じ日本人でも、やはり人それぞれか。と、アルベルトは口の端を微かに上げて嗤った。


”本命には何もできない”


007が言っていた事を思い出す。


「やれやれ・・・2ndグレードのガキ以下のジョーに、太刀打ちできるのか?」



廊下を歩き出し、リビングルームのドア前を通るとき、少しばかりその中の様子を覗いた、アルベルト。
さえこ、ジョーはまるで親子のように並び、ルリ子と名乗った初老の女性と祭壇を前にして対峙するように座っていた。

003ほどではないにしろ、人以上に強化された聴力で簡単にその会話を聴くことができた。


「・・・息子の当麻です」










---なるほど、な。























====75へ続く


・ちょっと呟く・

え?
まだあやめ祭しないのって???
・・・スミマセン。
このイベントないと、恋糸絡まりません・・・。
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9月19日/ 嵐の予感


爽快感突き抜ける、青。
白い雲が、世界で一番輝くとき。
熱さで潤い無くした喉に、販売機で買った缶ジュースが、キン!と冷えて、痛いくらいに冷かった。

そんな季節が柔らかく、緩やかに下り坂になるころ、木々に揺らぐ陽の光がつくり出す、影がなんとなく、可愛らしい。
汗でぴたりと、シャツが肌にまとわりつくことなく、陽射しの眩しさに目を細める仕種をしなくなった、このごろ。

色なき風が韻かせるのは、季節が変わる足音。







カフェAudreyに、秋の新作ケーキが並んだのはもう、1週間以上前。

春の長雨ならぬ、秋の長雨。
バイト先に向かう途中に、空を見上げて、ああ、やばいかも?と、思いつつ。
また、部屋まで戻るのが面倒で、一駅ほどの距離の間は大丈夫だろう!なんて、天気予報なんて当らない。と、自分に言ったことを、後悔した。

お見事ですっ・・・・。
切れ目がない雨の糸は目の前の視界を、曇り硝子のように、幻想的な世界に変えていく。

アスファルトが弾く雨。
耳後心地良い?と、勢いある雨の音に、潔く、諦めてみた。



傘もさほど役には立たないだろう。




なんて、のんびりと。
通りなれた道だからこそ知っている非難場所は、ちょうど店と家との中間地点にある、市立図書館。
飛び込んだエントランス。に、飛び込んで来た”携帯電話禁止”のポスター。

オレは、ポケットから携帯電話を取りだしたついでに、義姉さんに素早くメールを送る。






”雨、やられた。バイト、遅れる。ごめんなさい、図書館にいる。大地”



送信を押した、その10秒後。
携帯電話が揺れた。



”オッケー”


早っ!

短っ!




義姉さんからのメールをチェックしたあと、マナーモードに切り替えた携帯電話をしまう。
そのまま、中に入ってしまえばいいのに、オレの足はエントランスに留まった。

もう1つ奥にある、自動ドアを通れば、そこは知識の世界。
今週初めに買い逃した雑誌も、きっとあると、思う。

オレは、知識の扉を開く事なく、振り返って外を眺めた。






そういえば、リーディングの宿題が出てたよな。
なんだっけかな?あの、本のタイトルは・・・。

・・・このままサボっちまおうかなあ、バイト。
確か、今日はフランソワーズさん(と、香奈恵さん)が通うバレエスクールはお休みのハズ。
雨だし。


来ないとだろうな。
ジョーの奴、・・・レースの合間を縫って帰って来てるしなあ・・・。







バイトしがいがないなあ・・ってことですね。











外の湿気に蒸した空気が、知識の世界から零れた、冷たいエアコンディショナーの空気に清められていく。













会える日を、カレンダーを見るたびに数えてしまう。

金曜日の午後。
土曜日のランチ+レッスン後の甘いモノ補給。
たまに火曜日か水曜日。




フランソワーズさんが来る日は常に店にいる、オレ。
未だに、未練たらしく片思い。

実りのない片思い。




講義のスケジュールも全て、フランソワーズさんが店に来る日に会わせている、オレ。



彼女に、彼がいると知っても。
彼女の、彼と知り合っても。

彼女が、彼にぞっこんで、分かれる気なんてさらさらないの、解っているけれど。
目の前で、ちゅっちゅっちゅっっちゅ!!・・・・見せつけられてるけど。


それでも、好きな気持ちは、止まらない。


止まらない、止められない。
彼女を知れば知るほど、彼を通して、彼女を知れば知るほど。



オレは、好きになる。
オレは、恋をする。

オレは・・・・・。















「・・・面白いな」
「!?」


背後の、”知識への世界”へと通じる方の自動ドアが開いた。
冷えきった、痛いと感じしまう空気が流れ出して来る。

オレは、人の声に振り返った。
その声が、オレに話しかけてきたからだ。






「雨宿り・・・か?・・・送って行ってやろうか?」
「え?あ、あの・・?!」



オレよりも背が高い。
冷たい、切れ長い、ウェッジウッドカラーの瞳。

一目で、その人が自分とは違う人種であることが、わかる。


「カフェのバイト、を、しているのだろう?・・今から行くのか?」


シルバーのような、少し・・変わった色の髪。
低く、落ち着いた声。

その声を作り出した唇が、ニヤリ、と左口角をあげる形で嗤う。


「えあ、う。は、は、はい、バイトですけど・・はあ・・あの?」


ウィンタースカイ・カラーの光沢あるシャツを彼のためのオーダーメイドのごとく、ぴたり、と着こなして、第一ボタンが開いた、首もとから、細いチェーンがきらり。と、光って見えた。

皺ひとつない黒のスラックス。

雨の街を歩くには上等そうな靴。

黒の手袋を、右手だけに。


外国の雑誌から抜け出したような・・男性に声をかけられた。



オレっ、そ。、spた。その気ないっすよ!?





「カフェ・Audrey、違うか?」
「!」


オレの正面までやってくると・・手袋をはめた手を顎にあてて、オレを見る。


「・・・写真で見るより、本人の方がいいな」


写真!?


「少し、ここの図書館は冷房がきつくてな・・・名前だけは知っているが・・カフェには行った事がない。ついでだ。寄っていこう」


独り言のように、呟いて、エントランスの端に置かれていた笠尾規模から黒のスティックのように細長い傘を手にした。








あ、あの、その、ええっと、オレ・・あなた、誰ですかあああああああ?!




「ん?・・・あ、ああ。すまん。いつも彼女から話しを訊いているから、つい・・・初めてだったんだな、そういえば」
「あの。ええっと、はい。スミマセン・・・」


オレはきっと、・・・迷子になった子どものように、かなりパニックになった情けない顔をしていたんだろう。
その人は、そんなオレを観て苦笑しながら、顎にあてていた手を差し出された。


「初めまして、井川君。井川、大地、だな?・・・アルベルト・ハインリヒ。だ。・・・写真はフランソワーズから見せてもらった」


”フランソワーズ”と、その美しい魔法の名前に、オレのこころが跳ねた。


「この間、ジョーがいけなかった彼女の舞台を観にいってくれたらしいな、礼を言う。家のもの全員、その日の都合がつかなくて、・・・・・ジョーも、スケジュールの調整をかなり無理したみたいだが、その日には間に合わなかったから、な。ありがとう」



”ジョー”は訊かなかったことにする!


「ふ、ふ、フランソワーズ、さんの・・・?」
「同居人、だ。・・まあ、兄と言ってもいいか?」


オレは、差し出された手と、アルベルト・ハインリヒと名乗ったその人を交互に見つめた。


「フランソワーズが、世話になっているそうだな?・・ありがとう」
「え?いえ、っっそんな。こちらこ、sこsksああp」


舌がもつれたのを誤摩化すように、差し出された手を、オレは握った。
・・・冷たい。

かなり、図書館内は寒いのだろう。
躯が冷えきっている、その人を観た。


「すまん。・・・低体温でな。冷房にやられたようだ・・・・」



一瞬だけ、辛そうな色が、瞳に浮かんだのは気のせいかな?
よっぽど、館内が寒かったんだろうな、きっと。














それが、アルベルトさんとの初めての出会い。


「じゃあ、あの、ジョーとも、その・・・?」
「そうなる。が、あのバカは知らん」
「!!」
「彼奴は・・・大切に可愛がっていた子を・・・。惚れたフランソワーズも、フランソワーズだが・・・・。なんでわざわざ、あんな甘ったれた、格好ばかりの、癖のあるロクデナシで、うじうじ、くよくよした、悲劇のヒーローぶった男を・・・まったく、人間は何かしら欠点があると言うが、”男の趣味が悪い”のが、フランソワーズの欠点だったとは・・・人生上手くいかんものだ」



お、おお、おおおおっ!!
ジョーをそんな風に言えるなんてっすごいっ!!



「それなりにまとまっているのが、気に入らん」


---ん?







「彼奴のどこがいいのか、オレにはさっぱり理解できん」



アルバルトさんの溜め息が、雨に混じる。
幾分強さが弱まった雨の中。


アルベルトさんが手に持つ黒の傘に並んで、歩く道。
通い慣れた道が、知らない街に変わる。


何が、どうして、どうなって、初めてあった人と1つの傘をシェアしているのか・・・・。
”フランソワーズ”さん魔法(マジック)!




歩幅も、歩くペースも、少しオレの方に傾けられた傘からも、オレを気遣ってくれている空気を感じる。


「今日の天気のような男だからな。じめじめと、過去ばかり観て、自分のことばかりで、周りが見えてない。まず、自分ありきの、勝手な奴だ。彼奴が女性の母性を惹くようなパーソナリティなら、赤ん坊のまま、成長してない精神と言う事だ。男として、母性を目覚めさせるのは、夫婦になってからでいい。母親じゃない女に、母親役を求めるなど、それならフランソワーズじゃなく、熟年離婚を経験された女性とつき合えば良い。ジョーにはよく似合う」


ジョーをけちょん、けちょんに言う、アルベルトさん。
本気で言ってるんだろうけど、そこにはジョーへの、・・・愛情を感じる。


「ま、そういうことだ。・・・・応援するぞ?」


濡れた空気似合う人だと、思った。


「えあpがbdfbps・・・あ、ghお・・・’ぴrgjぱ・・・ば、バレて・・・ます?」


隣を歩く、その人を視線だけで見上げた。
ニヤリ、と。この人の独特な、ちょっと意地の悪い嗤い方。


「写真を観たら、すぐに解ったぞ。・・・素直でいい」


うっそおおおおおおおおっ!!


「ジョーも、それくらい・・・な」
「?・・・でも、ジョーは・・・フランソワーズさんのこと」
「わかっている。が、彼奴のそれは、見ていて痛い。・・・・・ああいう人の愛し方は、気に入らん」


ふう。と、溜め息を一つ。


---観ていて痛い、愛し方?










「だが、君のおかげで・・・・・・」
「?」
「・・・danke」




冷たい瞳の色が、まるで・・・フランソワーズさんの瞳の色のように一瞬だけ、優しくなったように見えた。




「店だ、そこだろう?」
「あ。はいっ、そうです」



雨は、降り続く。
白黒写真の世界に、少しばかりイタズラに色を塗って失敗した、そんな街。






ドアのチャイムがちりりん。と、なる。
初めてのお客様の名前は・・・・。







「いらっしゃいま・・・あら、大地!今日はもう来ないのかと思ったわ」


義姉さんの声。


ちらり。と、視線をアルベルトさんにむけた。


「こんにちは、アルベルトさん、いらっしゃいませ!いらしてくださったんですねっ」



あれ?




「こんにちは、お邪魔しますよ」
「!もしかしてっ愚弟をここまで、送ってくださったんですか?!」


義姉さんの声に、オレの視線はアルベルトさんの肩へ・・・・。


「偶然にあったんでね、・・・・・席、いいですか?」


っていうかっ!




「それと、・・・前はピュンマに、フランソワーズの・・・・、ありがとうございました」
「いいえ、いいえっっ、こちらこそっウチの愚弟がスミマセンっ!さ、お席にご案内させてください!」



あのっ!?







「大地っ!!ぼうっとしてないでっ来たなら働くっ!アルベルトさんにエスプレッソ!それとっ」
「”胸を焦がす言い訳”(ダークチョコレートとチェリーリキュールのケーキ)を、いいですか?」
「!!新作をご存知なんですね?嬉しいですわ」


テーブルに案内する義姉さんは、よそ行きの顔と声・・。
憧れの人がにあった女学生のような・・・。




それよりもっ!!



「フランソワーズから訊いてましてね、買って来るとか言いながら、結局こちらでいただいて、自分だけ満足して帰ってくるんですよ、あの子は・・・。オレ好みの味だ、と言いながら、買ってこなかったんです」
「あら、そうなんですかあ?・・・・大地っ!」
「はいっっっ!!」




義姉さんとアルベルトさんは面識があるっ?!


驚いて、2人を観ていたオレ。
そのオレに向かって、アルベルトさんが嗤う。



「本当、話しに訊いていた通りの子、で・・・面白い」
「ええ、もう・・・話した通りの義弟(おとうと)で、お恥ずかしい・・・」


義姉さんも、オレの方へ向き直って・・・2人の嗤いが・・・・っ


怖いっ!!!!!!!!!!



義姉さんっいったい、いつ、どこで、アルベルトさんと?!
いやっ、それよりっいったい何を言ったんだっ?!!


「義弟さんのような子に、フランソワーズを任せられたら、どんなに安心か・・・」
「島村っちさんじゃないと、駄目ですよっ!」
「試してみたいな、フランソワーズが本当に駄目かどうか」


!?


「セッティングしてやろう、フランソワーズとどこか2人で行って来るといい」




えええええええええええええええええええええええええええ?!



「島村っちさんが怒りますよ?それに、大地じゃ、フランちゃんの相手にならないです!」
「いや、十分だ。最近、ジョーは面白くないからな、イギリスに行く前に、彼奴を少しイジメておきたい」


席に深く腰をおろした、アルベルトさんが、腕と足を組み、にやり。と嗤った。


「仕事が当分ないんでな・・いい暇つぶしができそうだ」


アルベルトさんの、その一言が今までの会話の全てを集約していた。
実は、アルベルトさんって・・・。


「オレたちが”手を出せない”ように、フランソワーズがジョーをがっちりガードしていて、なかなか彼奴で遊べなくてなって、退屈していたんだが・・・」


意地悪な嗤いを浮かべる、アイスブルーの瞳に、片方の口角があがった口元。


「・・・面白い」














フランソワーズさんっ
何やら嵐の予感ですうううううううううううううううううううううっ!




え?・・でも、あれ?え?あの、????


フランソワーズさんとっデートさせてくださりまするでございますんですか!?


「呼び出そうか、早速」


!!!!


「ああ、心配しなくてもジョーは省く。・・・お楽しみの最中だろうがな」
「まあ・・・それじゃ、無理じゃないですかあ?」


昼間っすよ!?


「何か・・・フランソワーズを釣れそうなの、ありますか?」
「・・・・主人の、ハロウィンのための試作ケーキが、使ってください、ふふ・・」


義姉さん?!


「それはよかった。電話、いいですか?」
「どーぞ、どーぞv」





アルベルトさんが電話をかけた先は、フランソワーズさんの携帯電話。
数分後、アルベルトさんの携帯電話の着信履歴がすべてJOEの名前でいっぱいになり、彼の携帯電話は揺れ続けた。
エスプレッソを楽しみながら、面倒臭そうにして、その1つのコールに出た、アルベルトさん。


「ま、オレの誕生日プレゼント、と言う事で許せ。フランソワーズを借りる」


ニヤリ。と、嗤いジョーに言った、一言に、オレはアルベルトさんを尊敬するとともに、ジョー撃退最終兵器。と、命名の後に師匠!と、こころの中で叫んだ。





ケーキに負けた男、島村ジョー!

ヘッへ~ん♪
オレにもやっと幸運の女神が微笑んでくれるときが来た!!














「・・・面白いな、当分日本で楽しめそうだ」



end.

















*あとがき*

おめでとうございます・・・アル様。
ジョーと大地君を使って、何やら悪だくみでございますね?

8がお誕生日ネタだったので、4も?と、思いつつ。
みんながみんな、自分のケーキを買いにくるの・・・変(嗤)ですからね!

萌子さんは面識ありです。
香奈恵さんとフランと3人でショッピングした帰り、ジョーの代わりに迎えに行ったとき、会ってます。(そういうプロットもあった)
香奈恵さんと気が合ったので、お茶しました。その時に(笑)

香奈恵さんとアルベルトは、何回かデートしてます。
はい、そういうプロットもありました。

アルベルトはヒルダさん一筋ですけれどね!
デートくらいしますよお!で、香奈恵さんだと、同種?で気が合う。と、言う感じです。
9ネタで意見が合うんです(笑)


ここ、39、93サイトなので・・・4と香奈恵さんのストーリーは・・まあ(悩)

そんなわけで、
お誕生日おめでとうございますっ 4! 
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切なくて息苦しい/アタシは平気、なの。

街から離れた、海沿いの。

最寄りの駅からバスで27分。

右へ左へとカーブする、路の途中。

誰がいったい何の目的で建てたのか、見当し難い場所に隠れるようにひっそりと建てられた洋館。






平日であるにもかかわらず、バスは1時間に2本のみ。
週末など、2時間に1本となり、海水浴に訪れる人々のために、臨時バスが出る季節にならない限りは本数は増えない。


不便きわまりない場所に立つ、邸の交通手段は専ら”車”である。
だいたいは、グレートと張大人はそれぞれに車を持ち、免許のない、ギルモア、フランソワーズは運転手役を快く引き受けるジョーによって、様々な用事を済ます。
そのために、90%の確立でジョーとフランソワーズは、一緒に邸を出て、帰って来るのである。





今日はその10%の日だった。




「ええ、そうよ?」

「いつものデパートなの」

「心配ないわ!もう、平気よ。ちゃんとここまで来れたんですものっ、帰りだって・・・」

「・・・わかるけど・・・・、でも、ジョー・・・」

「本当に?・・・じゃあ、そこで待ち合わせね?」

「も!それくらいわかるわよっ、心配性なんだからっ!!ギルモア博士のこと、言えないわよ、ジョー!」

「じゃあ、4時に」


「あとでね」









携帯電話を切って、ふふ。っと、愛らしく形よいくちびるが左右に引っ張られて、頬が上がり、携帯電話の液晶画面が表示する、通話時間と、そこに乗っている、通話相手の名前に、胸が軽く弾む。

たまに。
ごくたまに。

フランソワーズは1人で、ふらり。と街に出る。
行き先は同じ。
そして、同じコースを辿る。


お昼前にギルモア邸を出て、お昼頃に、目的地の駅につく。
フルーツとメープルシロップたっぷりの、ボリュームあるフレンチトーストを出してくれる、カフェでお腹を満たして、デパートへ。

さすがに、男の人。とは一緒には行きづらく、待っていてもらうこともできるが、それでは気になってゆっくりと見ていられない、選べない、女の子の女の子な買い物。

週末に行く、大型スーパーでも事足りるのだが、それはそれ。
やはり、色々と”好み”もある。

チョイスも多い方がいい。



フランソワーズお気に入りの店から、”秋物入荷”のメールが届いたのがきっかけで、今、彼女は1人で街に出てきていた。


ジョーはコズミの紹介で、火曜日と木曜日のみ、大学へ雑用アルバイトに出かける。
そのときが、フランソワーズが1人で出かけられるチャンスなのである。


が、しかし。

昼間にジョーがギルモア邸に電話を入れたことがきっかけで、フランソワーズが1人で街に出ていることを知ったジョーは、すぐに彼女へと電話を入れて、帰りは自分が、彼女のいる場所まで迎えにいく、と言うのであった。


「あと、2時間しかないわ・・・もう。少しだけデパート以外の場所へも足を伸ばしたかったのにな・・」


ジョーが迎えにきてくれる、嬉しさ半分、正直、残念な気もする。



子泣きじじいストラップが揺れる携帯電話。を、ギルモアが出先で可愛いから衝動買いしたと言い、フランソワーズにプレゼントした、パリの街のスケッチ風の絵がプリントされた、ショルダーバックにしまい、歩き出す。


「ええっと、見ておかないといけないのわ、っと」


小さな金色のエッフェル塔をかたどったチャームがきらり。と光り、揺れた。









####

”夕食は、ジョーとどこかで食べてきなさい。G”と、フランソワーズの携帯電話にメールが届いたのは、ジョーと待ち合わせしている駅についたとき。


待ち合わせ時間2分と14秒前。
点滅する大通りの交差点を渡った向こう側に、彼は居た。




フランソワーズが知らない、表情で。
フランソワーズが知らない、人と。

フランソワーズが知らない、ジョーを、見つけた。






意識しただけで、会話が聞こえてくる。



聴きたくないっ!と、首を左右に激しくふると、微かな目眩に足下がふらついて、後ろからイヤホンを耳に音楽を聴く学生とぶつかる。

睨まれるような視線をぶつけられて、フランソワーズは慌てて頭を下げた。が、学生はフランソワーズが”外人”だったことに一瞬の動揺を見せて、無表情に歩き去った。


「・・・・」


視線を再び、ジョーが立つ方向へと、おどおどと向けた。


女の人。


ほんのりブラウンに染めた髪をふうわりと、ゆるいたて巻き風にまいて、薄いピンクのドルマンスリーブニットはV字に襟ぐりが広く、その隙間から白のレースがのぞいている。
上半身にボリュームが出るために、スカートはマーメイドタイプなぴっちりと、腰のラインが出た濃いデニム生地のスカート。同じ生地でひらひらとした飾りが裾を縁取っている。
かかとが低いけれども、華奢な、いまにも壊れてしまいそうな、そんな印象のミュール。


きちんとお化粧された・・・上向き加減の顎に添える指先は、キレイにネイルケアされていた。
ときおり、爪先が不自然に光るのは、なんだろう?と首を傾げる。

グロスに艶めく、くちびるは楽しそうに動く。


「・・・」





可愛い人。
お洒落な人。



ジョーと一緒にいる可愛くて、お洒落な人。

ごくごく自然に2人は街にとけ込んでいた。
駅を忙しく歩き人々の中で、時折、フランソワーズの視界から消える2人。

真剣に何かを話している。と、思ったら、次に2人は笑い合った。



可愛くて、お洒落な人の手がジョーの腕に伸びて、彼に触れた。








「ジョー・・・」


ミシン糸のような細くて頼りない声を、出して彼を呼ぶ。

キレイに舗装された、路面に響く人の足音、行き交う車。大型バスのアナウンス。電車が駅を去り、訪れる。がちゃん、がしゃん。と、自動改札口が休む事なく働き続けて。

どこからか、”いらっしゃいませ~””ありがとうございした~”と、リズムある声が聞こえた。




「ジョー・・・?」




クラクションの音。
ざわざわした、がやがやした、音。


人の声。





雨の匂い。
むっとした湿気。

無料駐輪場で、誰かが起こしたドミノ倒し。


何人かの人が、自転車を起こすのを手伝う。
ジョーも手伝うために、歩み寄る。
一緒にいた人も、同じように。




フランソワーズは駅西口の正面入り口を前にした大通りを挟んだ、点滅信号機の隣に立ちつくす。
青。
歩くマーク。
赤。
止まるマーク。

青。赤。青。赤。青。赤。青赤。青赤青。赤青赤。青赤青赤青。赤。青・・・・。









人々は、アスファルトの上に書かれた白と灰色のストライプを無視して踏みつけていく。





「何してるの?」


ジョーの声。


「だって、せっかくだから”白”の部分だけで渡りたいのよ」


アタシの声。


「なんだよ、それ?・・・別に’白”の部分以外を踏んでも何もおきないよ?」
「わかってるわ、でもなんだか、面白いの」
「ふうん。こんなの当たり前だし、そんな風に考えた事なかった」


ジョーは、アタシの真似をして、横断歩道を”白”の部分だけを踏んでいく」


「まねっこしないで!」
「いいだろ、別に」
「アタシが考えだしたんだから!」
「他の人もきっとしてるよ、ほら信号が代わるから、早く」


跳ねるように、スキップするように、いつもと違う歩幅で彼と手をつないで渡った横断歩道は、どこの?







どこの、横断歩道だったかしら?










思い出さなきゃ。
どこだったかしら?
どこ?


あの、橋はどこ?







探さなきゃ!









くるり。と踵を返したところで携帯電話が鳴った。
足を止めて、携帯電話を取ろうか、どうしようかに迷った。



JOEの文字。
待ち合わせの時間を18分ほど過ぎていることが、切れたコール音の後に光る、液晶に移しだされていた数字によって報らされた。

メールも、届いた。


読まない。


留守番電話にメッセージがお預かりしました。の、マークが出る。


聴かない。







---だって、アタシは別に・・ジョーのなんでもないもん。

  1人でバスにも、電車にも乗れるわ。
  お買い物だってできるわ。
  子供じゃないもの。
  日本にいるから、ギルモア博士とイワンと一緒にいるから、たまたま、そこにジョーがいるのよ。
  別に、・・・・・ジョーがいるからじゃないわ。

  パリに帰らないのも・・・・。
  まだ、勇気がないから。
  帰ったら、突然日本へ呼び出されたり、メンテナンスへ通ったり、落ち着かないし。
  アタシがいなくなったら、誰が邸のお掃除に、お洗濯をするの?
  張大人もグレートもお店が軌道に乗って忙しいのよ?
  放っておくと、博士なんて地下に閉じこもっちゃうわ。
  誰も博士の健康やお体のことなんて、気にしないもの。
  それに、イワンのお世話だって、そうよ。
  同じお洋服ばっかりで、寝てるばっかりだからで汚れないだろ~、なんて、
  お風呂も滅多に入れてあげないわ。
  日光浴もしてあげないのよ、きっと。
  
  そうよ。

  今日は一人で来たのよ?
  もっといっぱい見たいものがあったのよ!




  なのに、2時間ちょっとしかショッピングできなくて、のぞきたいお店もあったけど、
  行きたい場所もあったけど、我慢して、必要なところだけまわって、きたのよ!



  なんで、ジョーの時間に合わせなきゃいけないの!








  アタシ、1人でも平気だもんっ










鳴り続ける携帯電話にぶら下がる子泣きじじいは、泣きそうな顔。
受信。のボタンを押した指先が、悲しかった。



「なに?」
ーああ、・・・・よかった・・・・・。フランソワーズ・・どうしたの?何かあった?今どこにいる?待ち合わせの駅、わからない?どうしたんだよ、約束の時間過ぎてるよ?キミらしくないじゃないか、どうして電話にでなかったんだい?何度も電話したし、メールも・・・。遅れるなら電話してくれよ、心配するだろ?




ほお、っとジョーが深い溜め息を吐いた後、フランソワーズの耳に、優しくも切なく、甘くも心細く、降り注ぐ彼の言葉。


黙ったまま、ジョーの声を聞く。


じいいん、と。

痺れる。

きゅううっと。

縮こまる。



吸った息を、肺が拒否する。

苦しいから、肩で息を吸う。

たっぷりと口に含むが、薄くしか喉を通らない。


吃逆するかのように、肩が揺れる。


お腹がひくひくと、肩にあわせたリズムで動く。


真一文字に引いたくちびるの線。
内側に入り込んだ舌くちびるを、噛む。



もう一度、大きく息を吸い込んだ。
今度は足先までしっかりと、吸い込めた。


「アタシ、1人でも平気なのっ」
ーフランソワーズ!?
「ジョーの、ジョーのっ・・・ジョーはジョーの予定があるでしょっ、アタシは1人でだってお夕飯食べて帰られるものっ!1人で邸まで帰れるわ!!」


ジョーの声が聞こえる、けれど、携帯の電話を切り、そのまま電源をOFFにした。









一緒に飛んで、跳ねて、渡った白の橋。


ふわふわした気持ち。

どきどきした気持ち。


渡った先に、何か”ちょっといいこと”へ繋がっている気がしたから。





探したい。
見つけたい。


あの白の橋のかかる横断歩道を渡れば、大丈夫っ。

















####

「・・・・最終バス、言っちゃったのね・・・」

駅からギルモア邸までバスで27分。
迎えに来てもらえば、15分ほど。


駅のバス停時刻表を、いくら睨んでもバスはやってこない。
ちらり。と構内の時計を確認する。


この時間なら、もう張大人もグレートも帰ってきているはず、と思う。
けれど・・・。




OFFにしたままの携帯電話の電源を、ONにするのが怖かったために、歩いて帰る事に決めた。




人気がなくなった駅は、眩しい白の蛍光灯のために昼間のような明るさ。
元々それほど利用者が多い駅じゃないために、終電2本前の電車で、駅を降りたのはフランソワーズを含めて片手で指を折っても、あまる。



一歩駅構内を出ると、藍色の空が薄い膜を張って星をかくしていた。


耳を打つ音は、雨。










ああ、っと溜め息を吐く。

フランソアーズの髪は既に濡れている。
ぴたりと張り付く布が電車内の冷房に冷やされて、ぬるい自分の体温を気持ち悪く感じた。

すでに濡れてしまっているから、いくら濡れても関係ない。と、思いっきり路面にできた水たまりへジャンプ。


ばしゃん。っとあがる水しぶき。
波紋が慌ただしく広がり、狭まっていた間隔がすこしずつ長くなり、水たまりを覗き込んでいる、フランソワーズを鈍く写す。

素足に履いていたサンダルが、生温い雨水に浸る。









躯中に降り注ぐ、雨が。
薄く皮膚を切り裂くように、痛い。









「変な顔・・・」


雨雫が水たまりへと、落ちていく。


「帰りたくないな・・・」
「そのまま一晩、ここにいる?」
「?!」


振り返った先で、駅からの昼間のような光が浮かび上がらせたのは、傘をさし、腕を組んで憮然と立つ彼、だった。


「・・・・・あ・・」
「んだよ」





雨の音はさああっと響き、ぱちぱち。連続的に鳴る。


「1人で、帰れるんだろ?」
「・・・・」
「1人で、平気っていったよね?」
「・・・・」
「いったい、どういうつもりだよ?・・・待ちぼうけさせられて、連絡が取れたら、ドタキャン?それに、こんな時間まで・・・どれだけみんなを、博士を心配させたと思っているんだっ!」
「っ・・・」
「携帯電話は繋がらないっ!連絡しないっ!通信回線もオフっ!行き先も何も言ってないっ!!”もしかしたら”ってどんなに心配したと思ってんだよっ!!わかってんのかっ自分の立場っっ、みんなっ走り回って探しているんだぞっ今っ」
「・・・・・」
「何か事件に遭遇したのかっ!何かに巻き込まれたのかっ!!心配したんだぞっ」
「・・・・」
「なんとか言えよっフランソワーズっ」


雨の音が消える。
声を荒げ、怒りをぶつけてくるジョーのせいで。

痛いなあ。と、フランソワーズが思っていた雨の音が消える。



「・・・あのね・・・・・・邪魔したく、なかったの」
「っだよ、それっ!」
「邪魔したく、なかったのよ・・・・・アタシなんかのせいで。ジョーにだって、色々予定があるでしょ?」



視線は、ジョーの手が待つ傘の柄の部分。
彼を見る事ができない。





「約束したよ?・・・電話でっ!ちゃんと4時に駅で待っているって言ったよね?!・・・ボクの予定はっ、キミと駅で会うことだった!」
「でも・・・」
「でも、なんだよっ!」







一緒にいた人と楽しそうに、嬉しそうに話していたのを、邪魔したくなかったのよ。


だって、そうでしょう?












ーほんのりブラウンに染めた髪をふうわりと、ゆるいたて巻き風にまいている。





アタシなんかと一緒にいたって、いっつもジョーは・・・・面白くないでしょう?



ー薄いピンクのドルマンスリーブニットはV字に襟ぐりが広く、その隙間から白のレースがのぞいている。
上半身にボリュームが出るために、スカートはマーメイドタイプなぴっちりと、腰のラインが出た濃いデニム生地のスカート。同じ生地でひらひらとした飾りが裾を縁取っている。





知ってるの。



ーかかとが低いけれども、華奢な、いまにも壊れてしまいそうな、そんな印象のミュール。



ジョーは優しいから。




ーきちんとお化粧された・・・上向き加減の顎に添える指先は、キレイにネイルケアされていた。
ときおり、爪先が不自然に光るのは、なんだろう?








嫌って言えないの、知ってるのよ。・・・・・・アタシ。








ーグロスに艶めく、くちびるは楽しそうに動く。










だから、・・・1人でも平気ってわかって欲しかったの。









グロスに艶めく、くちびるは楽しそうに動いてたもの。








あ。・・・・・傘が・・・・。







「無事で、・・・・・・・よかった・・・・・・・」







痛いのは雨じゃない。








「何も、・・・本当に、何もなくて・・・・・よかった・・・・・・」




痛いのは、きゅううっと締め付ける喉でも、胸でも、靴擦れした左足の小指でもなかった。







痛いの。
ジョー、痛い。


痛い。
ジョー、痛い・・・・。














痛いのは、ジョーを好きって想う気持ち。
痛いのは、力一杯に抱きしめられたから。




痛い。
痛い。







ジョー、痛い。
ジョー、いたい、イタイ、居たい。
ジョー、居たい。





ジョーと一緒に居たい。











「生きた心地しなかった・・・・どこに行ったか、見当がつかなくて、ボクはキミのことを何も知らないんだって、悔しかった」












「ジョー、風邪・・・ひいてしまうわ」






力任せに、ジョーの腕がアタシを閉じこめる。
苦しくて、嬉しくて、痛くて、甘くて、温かくて、恥ずかしくて、そして、悲しくて。







吸い込んだのは湿気。
空気じゃないから、息苦しい。














「無事で、よかった」










彼の言葉が息苦しい。












「・・・・・・ごめんなさい」









  
 

彼の優しさが、009の優しさが、息苦しい。
嬉しくて、だけど、切なくて、だけど、だけど、だけど・・・・・・。














「2度目はないよ。・・・・・いいね?」
「はい」
「・・・・・最低限のルールは守ってくれ」
「はい」
「報告義務があること、忘ちゃだめだ」
「はい」
「・・・・・それで、どうしてあんな風に電話を切ったんだい?」



腕を緩めて、覗き込んできた瞳は、もう、怒っていない。
そして、訊ねておきながら、アタシの答えなんて期待していない。




「傘、どっかで買いなよ・・・キミの方こそ、風邪ひいたらどうするの?」





いつもの彼の声に、優しさに。

切なくて、上手く息を吸えなかった。









「・・・ジョー」
「ん?」
「横断歩道」
「?」
「横断歩道、渡りたい」










白の橋のむこなら、きっとこんな気持ちも忘れさせてくれると、思うの。


アタシ平気なの、よ?
ジョーなんていなくても、平気なの。


・・・・・痛いけれど。
一緒に居たいけれど。

































*おまけ*


落とした傘を拾い上げて、閉じた。
雨は、もう気にしない。



「コンビに寄って帰ろうか?・・・・そこの、大通りの横断歩道だろ、渡りたいの」
「!」
「あれ・・・?違った・・・?」


ジョーはフランソワーズの手を取り、歩き始めた。



「・・・・お弁当も買ってくれる?」
「食べてないの?」
「お腹空いたの」
「食いしん坊だな・・・、いいよ。デザートもつける」
「じゃあ!」
「・・・集めてる、細胞クン・シリーズの食玩でもいいよ・・・・」
「やった!」
「・・・・・なにが可愛いの、アレの」
「赤血球チャンと白血球クンと、顆粒球さん、リンパどん、単球博士は、揃ったの!」
「全部、血液に含まれる細胞だね・・・」
「だって、まだ第一弾ですもの!」
「・・・いや、それ無理がある企画だと、思わない?」



横断歩道前の信号が、青で点滅している。


「あ!走ってっジョーっ」
「危ないからっ、次でいいよ」


ぐっと、繋いでいた手に力を入れて、今にも走り出しそうなフランソワーズを止めた。


「でも!」
「走ったら、踏み損なうかもしれないだろ?ゆっくり、白だけ踏んで渡ればいいよ」


ジョーが笑う。
ジョーは覚えてる。
ジョーが知ってる。



「ん?」


信号待ちの間、フランソワーズはジョーの横顔を見上げる。


「・・・・ジョー」
「なに?」
「・・・・・・・・・・・ぷっつん・プリンも食べたかったりして?」
「ああ、もう・・・好きなだけ買いなよ。キミが二度とドタキャンしない、行方不明にならないように、しっかり”餌付け”しておかないとね!」
「嬉しい!」


満面の笑みで答えた、フランソワーズ。


「・・・・・・・・意味わかってる?」
「え?いっぱい美味しいものを、ジョーが食べさせてくれるんでしょう?」
「当ってる・・けど、なんか、違うような・・・」
「そうでしょ?」
「・・・・・そうかな?」
「そうよ!あ、渡りましょっ」


跳ねるように、飛ぶように、ふわり、と。

白の橋を渡って。



「やっぱり、変だよ・・・?」



















*切ないので、終わらせるのが辛かった・・・、修行不足*
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Day by Day・75
(75)





「・・・息子の当麻です」

篠原邸を訪れた、香田ルリ子は焼香を済ませた後、篠原秀顕の1人娘、さえこ、そして息子だと名乗った青年と対峙していた。が、当麻と名乗った青年が本人でない事は、一目でわかっていた。


「一つだけ、お伺いしたく、恥を忍んで参りました・・・」
「なんでしょう?」


ルリ子は、その事には触れずに、さえこにだけに向かって言葉を綴った。
隙を見せない、篠原グループの代表。として、接するらしい、さえこのその態度に、彼女のプライドを感じる。


「お顔は・・・?」
「あの人らしい、笑みでした・・・死因は、急性心不全でしたので苦しんだ筈なんですけれどね・・。そういう様子もなく」


ジョーの脳裏に、秀顕の最後の言葉と、009の手が、スーパーガンのトリガーを引いた感覚が甦る。



---fulfillment・・・・だ---


ニヤリ、と。秀顕は009にむかって皺の深い、薄い唇で微笑み。




今、ジョーの視界に入る祭壇に置かれている、遺影も秀顕であった形を納めた箱も、彼は眼を逸らし続けている。と、同時に、胸の内ポケットに忍ばせて来たものが、じわじわと熱を持ってジョーを責め始めていた。



「探しものが、見つかったんですね・・・」






呟やかれた、ルリ子の言葉にジョーは意識を彼女へとむけた。


---探し、もの・・・。


009であるべきだと、妙な感傷に思考が捕われていることに、自分を叱咤しながら、ルリ子の言う”探しもの”に関して意識する。
彼女はもしかしたら、と。その可能性を考えて始めた。


「それだけが、知りたかったんです。ずっと・・・それだけを求めていらしたのですから、満足でございます」
「あなたへの保証は、弁護士を通して責任ある形で対応させていただきます」
「いいえ、・・・その必要はありません」


さえこに向かって、厳かに言い切った。


「必要がない?」
「他の方々はどのようになさったかは、存じ上げませんが、私のことは、お忘れ願います」
「それで、いいんですか?」
「はい」
「・・・後悔なさいませんね?」
「はい」
「わかりました。後ほど、その件に関して、弁護士がお宅へ伺います」
「はい・・・、それでは、失礼いたします」


用件だけのやり取り。
そこに、故人に関する言葉はない。

ルリ子は、すっくと立ち上がり、音もなく足を進めて玄関へ向かう。
その姿を見届ける事も、見送る事も、さえこはせずに、そこに座したまま微動だにしなかった。

当麻と名乗ったジョーは、立ち上がり、さえこに代わってルリ子を追いかけた。


<香田ルリ子と接触する>











####


梅雨明けを告げる空の高さが、じわじわと肌にまとわりつく湿気を軽く感じさせる気にさせた。


ジョーは、呼びかけることもなく、篠原邸の正門を抜けて、香田ルリ子と並んで歩いた。
まるでジョーがそうすることを知っていたかのように、ルリ子は何も言わないまま、歩き続ける。




ふうう~ん。と、ナナツボシ天道虫が、ルリ子の喪服の背にぴたり。と、止まった。

篠原邸を離れて、どこへ向かうのか。
駅とは違う方向の道を歩きながら、ルリ子の方が先に言葉にした。


「お名前を、・・・お訊ねしても差し支えございませんか?」
「当麻、です」
「・・・・」


ちらり。と、ジョーへと視線をむけたルリ子は、視線を足下へと落としながら、少しだけ、その歩みを緩めた。
そんなルリ子の様子を見ながら、ジョーは彼女が自分が偽っていることを知っている事を、確信する。


「・・・本人を、ご存知なんですね?」
「秀顕さんのことで、知らない事はありません」
「知らない事は、ない?」


胸ポケットに入れたものが、一段と強く熱を持ち、ジョーの胸に焼き付く。



「いいえ、言葉を間違えました」


歩を止めて、ジョーを見つめたルリ子。
彼もルリ子に従って、足を止めて、ルリ子を見た。


「探しものが、何だったのか。誰の手によって秀顕さんは、・・・天に召されたのか、は存じ上げません・・・」
「・・・・・」


再び、ゆったりと、歩を進め始めた、ルリ子。
ひと呼吸置いて、ジョーも止めていた足を重く動かした。


ジョーは浅くなりつつある呼吸を、意識して深く肺に吸い込む。
数ブロックほど、2人は無言で歩いた。



009であるジョーの経験がすべてを察した。
ルリ子は、”知っている”と。




バスが通る大通りへの道を外れて、住宅街へと入っていく。
古くからこの土地に住む人間が多い事を現すような、家が並ぶ。
ランドセルを背負った子どもたちと、多くすれ違うために、近くに小学校があるのだろう。と、ジョーはルリ子の様子を窺いつつも、たまに縦笛を練習しながら歩く、低学年の子どもたちに視線をむけた。
聞き覚えのある、もしから、自分も吹いたことがある、フレーズが空へと吸い込まれていく。

遠くなる、縦笛の音に紛れるようにして、ルリ子が離し始めた。


「私は、篠原の家に勤めていた母に連れられて、幼少時を過ごしました。秀顕さんはご兄弟がいらっしゃりませんでしたので、妹のように可愛がってくださいましたの。・・・そのまま母と入れ替わるように、お勤めにつきました。お嫁に出ても、しばらくは続けてましたのよ・・・・。主人を、早くに亡くしましてね。秀顕さんは、親身になって助けてくだすったのです。とても、とても、繊細でお優しい方でしたの。でも、私は、その恩ある方を”ご当主”の命令に逆らう事ができずに、・・・裏切りました」
「う、ら・・ぎる?」
「ええ・・・・。私と秀顕さんの仲にお気づきになられたから。私には主人との間に、2人子を成しておりました故、子を護る母でありました。・・・・それでいい。と、秀顕さんは全てご存知でした」


ルリ子は物心ついた頃から、秀顕を知っている。

彼が、不慮の事故にあった日も。
そのために両足を失った事も。
ある日突然、新しい足で歩き始めたことも。
それによって、苦痛を強いられる日々を送っていた事も。

繰り返す必要ない、足以外の手術のために、使えていた当主からの命令で彼の食事に色々な薬を忍ばせたことも。

想い通じ合った仲であった。と、ルリ子は信じていた。けれど、年頃になると、すぐにやってきた縁談話が、当時の篠原家”当主”からの紹介だっために、断ることもできなかった事も。


走馬灯のように老いた胸に少女のころからの記憶が駆け巡った。



「お名前を、教えてくださらないのなら、なんとお呼び申し上げればよろしいのでしょうね・・・」
「・・・」


ジョーが、足を止めた。
数歩、歩み、振り返るようにして、ルリ子は振り返ると、足を揃え、姿勢を正した。


「どうぞ、お好きなように・・・・、私は逃げも隠れもいたしません」
「どういう、意味、です、か?」
「当時のことを知るのは、秀顕さんのことを知るのは、私が最後ではないでしょうか?」
「・・・・どこまで、ご存知なのです、か?」
「どこまでも」
「・・・・・・」
「秀顕さんのすべてを、どこまでもで、ございます・・・。それだけです・・・」
「どうして、俺、に?」
「・・・・・・・ご子息ではなかったから、としか、言いようがございません」


向かい合って立つ2人。

ルリ子の言葉に009として、どこまで何を彼女が知っているかを探らなければと、使命感が胸によぎる。が、次のルリ子の行動に、それは、瞬時にジョーの脳裏から消えた。


「・・・ありがとうございました」


ルリ子は深く、深く、ジョーに向かって頭を下げた。


「え?」


ジョーの躯が驚きに固まる。


「な、・・・?」


ゆっくりと頭を上げて、ジョーを見据えた、ルリ子。
その表情は穏やかに、優しい。


「あ・・・・・」





一日、一日が、競い合うように、陽を長く留めておことする季節。
夏物の制服といえど、半袖のカッターシャツに羽織ったブレザーの下は、汗でじっとりと濡れていた。

どこをどう歩いたのか解らない。
からり。と、渇いた風が、住宅地に漂い始めた夕食の時間を覗きあるく。

夏の装いですれ違う人々は、奇異の眼に宿した好奇の色で首を2人に残しながら、歩き去る中、ルリ子が握りしめる、紫水晶の数珠が映るアスファルトの影が綺麗だった。


「・・・・やっと・・・・あの人は・・誰のものでもない、私だけの人になってくださいました」


胸元に飾られた真珠よりも、柔らかな珠が、ルリ子の頬を、つうっ。と、すべり落ちた。


「あなた、だけ、の・・・?」
「はい・・・。私だけの・・・」


数珠を持った手を、心臓近くへと寄せて、両手を握り合わせる。



その仕種に、ジョーは反射的に銀色の、親指の爪ほどの大きさの四角いプレートをブレザーの内ポケットから取り出した。

指先に摘んだそれは、妙にヒンヤリとジョーの指に吸い付いて、今まで重くジョーの胸をひりひりと焼き付けていた熱が嘘のように引いていく。

ルリ子の胸前で合わさっていた手をそっと取り、ジョーは手のひらにそれを握らせた。








「・・・・・ここに、います、よ」



本当は、さえこか、当麻に。もしくは、遺骨とともに、納骨時に墓へと考えて、持ち出した人工知能(AI)。補助脳から外してしまったそれは、ジョーの手によって壊されて、ただの小さな銀色のプレートと成り果てていた。


ジョーは秀顕のすべてを、人として還したかった。
自分が手にかけたのは、あくまでも・・・・人でない彼であったと、言い訳するように。



人でありながら、人ではなく。
人として生きながら、人として生きられなかった。




自分たちと違い、篠原秀顕は、人として土に還り、愛してくれる人の胸の中で生き続ける。

ルリ子以外の、人の中でも。
その功績によって社会的にも。

血としても。


生き続ける。




人として、役目を終えた。
自分は、人として彼を還すために・・・と、言い訳する。






「あなたの目的は・・・?」

「完全体に、なること・・・だ」

「・・・・あなたは・・・どこにいるのです、か?」

「”ここに”ちゃんといるんだよ、私はちゃんと、いる」

「・・・・あなたは、誰、ですか?」

「覚えておきなさい、私が・・・篠原秀顕だ」




秀顕がサガシテイタのは、ツナガリたかったのは・・彼女・・・・だと、信じたい。




---そして今、カンゼンタイになったんだ。
  プロトタイプサイボーグコードナンバー00・・・9の、手によってだ。










彼は、還っていった。
愛される胸に。



これで・・・・。













007は羽を忙しなく動かして、ルリ子の背から離れると、ジョーの肩へと移動した。
そして、ジョーは静かに、ルリ子から離れて行く。



<009・・・!!>
<いいんだ、よ>


ルリ子は何も言わずに、離れて行くジョーの姿を視界の端に留めながらも、手に握らされたその銀色の四角いものを大切に、大切に、手のひらに乗せて、指で撫で続けた。









「fulfillment・・・・だ」














幸せだったんだよ。
彼なりに。
















####

ジェットから彼の携帯電話の番号を渡された。


「なんでもいいからよっ、ボタン一つでコールできるように、しといてくれねえか?」
「・・・いいけれど」
「なんかあったら、009だけじゃ、ってな。ま、念には念を入れてってやつだ!」


言われた通り、スピードダイアルの2番に、彼の電話番号を登録した。


「ジョー、・・・落ち着いた?」
「・・・・・あ、ああ・・・・・・・・」


当麻も、まさか、こんなにも早く、その番号をコールすることになるとは、思わなかった。


「センパイ、怪我ねえか?」
「あ、うん・・・。ありがとう・・・」












祖父の密葬のために自宅へ赴き、夕食後に戻った学院。
その日の夜。




ジョーの声に、当麻は目覚めた。
魘される、ジョーのその様子に不安を感じた当麻は、ベッドから跳ね起きるようにして、デスクから携帯電話を手に取って、スピードダイヤルを押しながら、ジョーが眠るベッドへと駆け寄り、声をかけた瞬間。埃を払うくらいの、軽い一振りで、当麻は壁際まで吹き飛ばされた。
加速装置を使い駆けつけたジェットが、壁との間に入り、クッションとなってくれなければ、どうなっていたか、わからない。

ジェットの背後から伸びた壁の亀裂が、そのように当麻に言わせる。


「おい、ピュンマっ外どうにかしろよ、これで誰かくるんじゃねえの?」


こん、と、壁をノックする、ジェット。


「あ、大丈夫だよ・・隣は空室だから」
「へ?・・そうなのか・・・・」


ピュンマの言葉を確認するように、ジェットは当麻から離れながら、彼を見た。


「うん・・・こっちは。誰も使ってないんだ」
「それに、ほとんど帰ってるよ、家に」
「週末でラッキ-だったな、ジョー!」


おどけたように言う。
ピュンマはジョーの様子を窺いながら、彼から離れた時。
空気の摩擦音が、シーツを軽く焦がした。


「っっジョー?!」
「っだ!加速装置使いやがった!」
「え?・・・島村が、消えた・・・?!」
「だああああああああああっ!アイツは何考えてんだよっ!!」
「・・・篠原先輩」
「・・・・・・・」
「ジョー、薬を飲んでるの?」


呆然と、ジョーが消えた跡に残った焼けこげたシーツを見ていた当麻に向かって、ジョーのデスクに置かれていた、馴染みあるピルケースを手に取った。


「どうしたよ、ピュンマ」
「聞いてる?・・ジョーに何か問題あるようなこと・・・」


手に取った、それをジェットへと投げた。
ピルケースを片手でキャッチしたジェットは、それをカシャカシャと振ってみる。


「・・・薬って、アイツどっか悪ぃのかよ?」
「・・・・・・起きてるかな、博士・・・」
「邸に連絡いれるか?」
「・・・朝まで待とうよ、ジェット・・・・あの、先輩」


ピュンマは、当麻の座るベッドまで歩み寄り、彼の隣に腰を下ろした。
ジェットは2人から離れて、ジョーのデスクに置かれて、チャージされている状態の携帯電話を手に取ると、ギルモア邸、ではなく、四友工場へ臨時の夜間警備についているであろう、004に連絡した。時間的に、彼がギルモア邸に戻っていてもおかしくない。そう判断したからだ。



「スミマセン、・・・先輩が知る範囲で、ジョーに何があったか詳しく教えてください」

















####


音も無く、気配もなく。
部屋に侵入して来た人物は、彼女の部屋に鍵がついているが、それを使用しない、彼女であることをしっていたために、難無く彼女の部屋へと入る事ができた。

暁月夜の空は、まだ彼女が眠りの時間であることを示している。
カーテンが覆い、部屋に彼女の香りだけが漂う。

何も無い、部屋。
ベッドが中央に置かれて、その隣に簡易テーブルとイスが2脚。
テーブルの上におかれた携帯用のスタンドミラーと濃紺の小さな箱。
数冊の絵本に、日本語の書かれたノートが開かれていた。

見覚えが無いシャープペンシル。
それを、手に取る。


トップに赤いマフラーをした、ウサギのような犬のようなキャラクターが座っている。


ふっと、侵入者は微笑んだ。


開けられたままの、クローゼット。
内扉に、取り付けられている姿見が、侵入者の背を象る。



元の位置にシャープペンシルを置き、健やかな寝息に耳だてる。
フランソワーズは、生きている。
規則正しい、微かな肩の揺れが、その寝息が何よりの証拠。


---・・・・・フランソワーズ。



そっと、ベッドサイドまで近づくと、絹糸のような亜麻色の髪を広げたフランソワーズが、瞼を閉じて、ジョーに背を向けて、眠りについていた。

スーパーガンを握る、利き手で拳を作り、それを目の前まで持ち上げて、見つめる。
トリガーを引く感触はいつだって、どんなときでも思い出せる。


それは、戦い続けてきた、証拠。
忘れてはならない、感覚。








---・・・俺は・・・。







夢の中の言葉は、すべて真実。
認める、よ・・・。








そうやって、生きてきた。
そういう風に、考えていた。



俺と言う人間が、どういう人間か・・・見た夢に、現れていた。
篠原秀顕の言葉は、俺を思い出させた。


サイボーグにされる前の、俺を・・・。



彼は還っていった。
何もかもから解放されて。



俺は、どこへ行く?
俺は、どこへ還る?





構えたスーパーガンが、その胸にあてがわれた。
スーパーガンのトリガーを引く、慣れてしまった、感触。



躯が震えた。
喉が異様に渇いている。










愛らしくふっくらとした形良いくちびるが、微笑みを形作りながら、最後の言葉を音にして、手が、009の手と重ねられていた彼女の手が、重力に従い落ちた。



---・・・・・ジョー・・・?



動かなくなったキミでもいい。
キミが、俺の還る場所であってほしい。




一房の絹糸を、スーパーガンを握るその利き手に取り、躯を折って、くちづけた。
フランソワーズの髪から手を離して、彼女のベッドから離れる。



夢は、正直だ。








止める事が出来ない想いが、形になって頬を伝う。




どうしたらいい?












キミの幸せのために、誓った言葉。




誓ったはずなのに・・・。



あの日に、あのときに。


キミのために、キミに触れない。と・・・。


好きだから、キミのために。と。
好きだから、沈めよう。と。
好きだから、キミに知られてはいけない。と。

フランソワーズのために。
自分のために。



キミが明日を生きていくために、俺は選んだ。
キミのそばにいる。
キミを護る。


ずっと、ずっと、ずっと、キミが誰のものになっても・・・
キミが誰を想い、好きであっても・・・・




好きだから、この気持ちを深く、深く、深く、誰の目にも触れられない、誰の手にも届かない場所へ。



沈めてしまわないと・・・・。(40)
この想いを、沈め続けなければならなかったのに。














少しずつ浮上した想いは、完全に俺の胸を支配して・・・
もう止められない。


だから





現実に、この手がトリガーを引く前に。


それを手にする前に。
それを選ぶくらいなら。





俺は。








---ソノ手ハ、誰ノタメニ、アルノ?











フランソワーズの部屋を出る。
そっと彼女の部屋のドアを後ろ手に閉めた。


「夜這か?・・・そんな根性がお前さんにあるとはな」


薄暗い廊下に立つ1人は、腕を組んで背を手すりに預けている。
もう1人の人物は、静かに、大樹のごとく佇んで、フランソワーズの部屋のドアの真横に壁に背を預けてたっていた。


「・・・・警備、は?」


フランソワーズの部屋に続く廊下の先の、飾り窓が紺に白を混ぜつつあった。


「だいたい、この時間には戻ってきている」


反射的に、ジョーは長い前髪で、表情(かお)を話しかけて来た人物から隠す。


「・・・・」
「で?」
「・・・・何?」
「いくら009でも、勝手に003の・・・女性の部屋に無断で入ることが許されると思っているのか?」
「・・・アルベルト」
「なんだ?」
「・・・・・・・・」
「何が言いたい?」
「何事もなく、無事にあやめ祭が終わったらイギリスへ・・・行く。交流会を調べて完全に潰しておきたい。同行を頼む」
「・・・泣くほどの決意がいる、ことか?」


アルベルトは、組んでいた腕をほどき、ジョーへと伸ばすと、彼の頭を抱き寄せた。


「ついでに、ドイツへ寄るぞ?・・・お前さんはここに戻って来るんだろうな?」


固い、機械の手に頭を抱きかかえられて、ジョーはぽつり。と、つぶやいた。


「眠りの森の・・・だっけ?・・・・そんな魔法を、フランソワーズにかけられたら、いいのに」


誰にも、誰の手にも、触れさせたくない。
永遠に、俺だけがキミを見つめていられるように。


誰も、彼女を傷つける事ができない。
誰も、彼女の夢を邪魔する事が出来ない。



永遠に、彼女は幸せな彼女だけの世界にいられるだろう?









「バカ野郎・・・・・彼女は悪い魔法使い(B.G)に拉致られて、過去からの長い眠り(コールドズリープ)から目覚め、絶望の日々の中で、やっとお前さんに出会ったんだぞ」
「俺が・・・目覚めさせたわけ、じゃない」
「だが、お前さんは俺たちの、彼女の希望だった」


アルベルトは、ジョーの頭をぽん。と、叩いた。
そんな2人を見守っていた、ジェロニモがジョーの背後から口を開く。


「自分のこころに自分自身が負けているからだ。ジョーはジョー自身に負け続けている。・・・・支えてやる。ジョーは強い。お前は気づいていないかもしれないが、オレは知っている。みんな知っている。自分に勝て。」


ジョーはアルベルトから離れて、振り返るようにしてジェロニモを見上げた。
彼には涙を隠すつもりはない様子で、濡れた瞳をさらけ出す。


「・・・」
「決めたなら言い訳するな。逃げているうちは、何も始まらない。決めたのなら、戦え。ジョー、自分と戦え。」


ジェロニモの言葉に、怪訝な顔でアルベルトはジョーと同じように、ジェロニモに視線をむけた。


「いいのか・・・な?・・・・」
「ジョーの腕を拒む女性など知らん。今までにそんな子いなかった。」


ふん。と、鼻息を鳴らしながらジェロニモは断言した。










---ソノ手ハ、誰ノタメニ、アルノ?




現実に、この手がトリガーを引く前に。


それを手にする前に。
それを選ぶくらいなら。





俺は。








この想いをまっすぐに、後悔なく伝えることを選ぶ。
それが、どんな結果になろうと、も。



「・・・ふられたらイギリスへ行く、よ。ついでに、傷心旅行を兼ねてヨーロッパをまわる、案内役頼む、よ・・・アルベルト」


アイスブルーの瞳が驚きに見開かれ、そして、呟いた。


「ほう、ふられるのを前提に言っていたのか?・・・009にしては、弱気だな」


ニヤリ。と、片方の口角を上げて嗤う。


「五月蝿い。・・・・俺にとっては、今後の人生のすべてをかけたミッションだ」



ぐいっと、腕で濡れた瞳と頬を拭った。
デネブ寮を出るときにのみ、最低限に押さえて使った加速装置だったが、痛み焦げた服の匂いが今更、ジョーは気になりはじめた。


たかが告白するくらいで!と、笑い合いたいアルベルトとジェロニモは、微笑み合うだけで我慢する。






---やれやれ、恋愛に関しては小学生並みの男が、どうでることだか。



「着替えて、朝飯を喰ってから学院戻るといい。」
「ついでだから、そのまま今すぐフランソワーズに告白して帰ればいいだろ?」
「・・・・・軽く言うなよ」













今日が終わる。
明日が訪れる。


これからの未来に、キミの隣に立つ俺を、夢みて。
これからの日々を。





キミと過ごす毎日を手に入れたい。
いつの日か、フランソワーズの世界の住人になる日を、願い。



「オフィシャルに、言うんだな?」
「・・・・ああ、俺は、フランソワーズが・・・好きだ、よ。」
















連載もの、第一部・Day by Day 完

====連載もの第二部・新章『Little by Little』へ続く




・ちょっと呟く・

ま、そういうことでして!(←逃げ!)

気持ち新たに、新章『Little by Little』へいきます。
(実は、「でい~」の連載当初から決まっていたのです・・・次のタイトル)

相変わらずの片思い。
9、3への果てしない(長く苦しい茨)の告白道・編(笑)に突入。
何せ、”バミューダ・ラブ・トライアングルですからねえ。

9がんばれよ~(←無責任で適当な呼びかけ)



名前変わっても、次回は”あやめ祭”ですから(笑)
連載ものなので、伏線は続きます。
いっぱい93絡みネタを振ってますからね!
あれや、これやら、忘れてませんよ!!




傷心旅行先がヨーロッパって贅沢だなあ。

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手をつなぐ/特別なことじゃないけれど
「え?」


手に持ったメモから視線を外して、彼女を見た。


「前に確か、友達にフランス人がいるとか、どうとか言ってなかった、島村くん?」


明るく染めた髪を緩く巻いて少し甘いけれど、どこか胸をくすぐられる香りを身につけている、彼女。
一度、そのポーチから転がった手のひらに乗るダイヤモンドカット型のピンク色のボトルを拾った事がある。


「そういえば、そんな話しをしたね、うん。いるよ」


初めて彼女に会ったとき、こぼれ落ちそうに大きな碧の瞳の人がたまに購入する雑誌から出て来たような印象を持った。


「オオガミ教授がどうしてもこの作家の文を引用したいって。でも、原文じゃなくて日本語がいいらしいの。すでに出版されている翻訳があるんだけど気に入らないらしくって・・・。母国語がフランス語で、日本語が堪能な人に翻訳し直してもらいたいって言われて・・」


彼女から差し出した文庫本。
艶やかに少しのばした爪がベージュピンクにグラデーションしている。
研究室にくる女子大学生に囲まれていたときに、不意に耳に入った情報から、 ネイリストという職業の妹さんがいるらしい。

個人情報を無意識に収集する癖は、どうしても避けられない。けれど、それが悪い事ではないと意識できたのは、会話のない空気にちょっと息が詰まりそうになったときの使用したときだった。

私はいつも妹の練習台なのよ!と、困ったように笑いながら答えていた。
”ネイルサロン”なんて店と、ネイリストという職業ががあることを初めて知った日になった。


「また色が変わってる」
「あ、うん。昨日もまた妹の練習台になったの。最近はスカルプやジェルをしたがって、困ってるの」
「?」


コズミ博士を通して紹介されたバイト先。
雑用係のアルバイトとして週2回、火、木曜日に訪れる都内の大学。
最近はジョーが雇われている研究室の多忙により、ほぼ毎日通っている。


水沢美奈子は緩く巻いた髪を撫でるようにして耳にかけながら、クスクスと微笑む。
目の前にいる彼の反応が新鮮で面白いからだ。


「・・・・それで、ええっと...?」


解析するのも戸惑う単語が出てきたのでジョーは話を戻す。


「ええ、っと、そうそう。・・・もしも島村くんの、知り合いのフランス人の方が日本語に不自由ないのなら、お願いできないかな?」
「・・・日本語はばっちり、話せるけれど、翻訳となると・・・大丈夫だとは思うけれど」


美奈子が座っていたデスクから立ち上がったので、彼女のお気に入りのベビードールの香りがふうわりと、ジョーに届いた。


「周りに、なかなかいなくって・・・そんなかしこまったものじゃなの。いくつかの翻訳をみてもらって、それらをよりオオガミ教授好みに仕上げてもらう、みたいな形で。だから、ねえ、島村くんのお友達にお願いできない?」
「・・・」
「?」


両手を顔前で合わせて、片目を閉じて”お願い”の仕種。


「・・・うん、聞いてみるよ」
「よかった!」


満面の笑みで微笑んだ美奈子は、ジョーの服の袖を掴んで次の資料の整理に必要な備品をリストアップする事を頼んだ。






####


間を空けず、フランソワーズは短く「Oui」と、答えた。


ギルモア博士も反対することもなく、どちからと言えば、フランソワーズがそれを引き受けたことを喜んでいるように思える。

その日のうちに研究室の秘書である、水沢美奈子の携帯電話に連絡を入れた。教授のスケジュールに合わせた、翌週の火曜日。


フランソワーズを連れての大学出勤となったジョー。
普段は電車とバスを使うが、ジョーは車でいくことに決めていた。


ギルモア邸の正門前に書庫から出された車を目にして、フランソワーズは少し驚いていた。


「あら、電車じゃないの?」
「車でいくんだよ」
「どうして?私、ちょっと楽しみだったのに・・・」
「楽しみ?」


助手席のドアを開けながら、ジョーは不思議そうにフランソワーズを見る。


「”通勤ラッシュ”で、ぎゅうぎゅうされるの!カーブのときに、こう、押されて、もうっ痛いじゃないっ、近づかないでよっおじさん、鞄がじゃま!!新聞読まないでよ、迷惑だわ~!なんて思うのよ?」
「・・・フランソワーズ・・・ドラマの見過ぎだよ、それ」
「残念ね、せっかくの日本なのに・・・・違うの?」
「いいから、早く乗って」




---だから、車なんだよ。あんな電車になんか乗せられないって・・・・。




フランソワーズを助手席に押し込んで、早々にアクセルを踏みジョーは車を走らせた。









ハンドルを握る手が意味の分からない緊張で汗ばみ、気持ちが悪い。
何度も膝のジーンズに擦りつけて拭う。



”おでかけ”
”初めての大学”
”プライベートにいく知らない街”に、フランソワーズのこころは浮き立っている。


助手席で調子が外れた鼻歌を歌いながら、車窓から見る街に大きな瞳をさらに大きくして好奇心に輝かせた碧。
まるで子猫が初めて猫じゃらしで遊んでもらったような、昂揚感に満ちている。

お気に入りのワンピース(シフォンの薄い藤色がかった、ふわふわした感じの裾に小花が散った)を着たフランソワーズは、すごく可愛いい。と、ジョーは目を細めて彼女を見る。

自分が胸に秘める感想を、邸に住んでいる仲間たちはいとも簡単に言葉にしてフランソワーズへと贈り、彼女を喜ばせた。が、まだ一度も、そのワンピースを着たフランソワーズにたいして、ジョーは言葉をかけたことがない。



「ねえ、ジョー・・どうしたの?気分でも悪いの?」


いつもなら車中で何かしら話しかけてくるはずのジョーが、20分ほど車を走らせているにも関わらず、一言も声をかけてこないのでランソワーズは不安になった。


「別に、悪くないよ」
「変なの。・・・・朝ご飯、足りなかったのかしら?」
「別に、変じゃないよ」
「ねえ、大学構内を案内してね?私、日本の大学なんて知らないもの!」
「時間があったらね」
「あるわよっ!ね?絶対にね?ね?ね?」
「・・・忙しくなかったら」
「も!意地悪ねっ」


ぷい。と、フランソワーズは再び窓の外の世界へと、こころを移す。





信号が赤に変わった。
アクセルから足を離して、ブレーキに乗せる。

ちらり。と、助手席に座る、フランソワーズに視線を送ると、いつの間にか自分を見つめられている碧に心臓が跳ねる。



「熱は、ないのよね?」



のびてきた白の、柔らかな手の感触が長い前髪を揺らすことなく、するりと滑り込んでジョーの額にあてられた。



車内に満ちるのはフランソワーズと言う名の香り。
このまま大学なんかにいかないでどこかへ隠してしまいたい。


「運転できないからっ」
「あ、ごめんなさいっ」





---どうして今日、そのワンピースを着るんだよ?







####


1時限目に間に合うように、急がなければならない学生たちの遅刻が決定する。
原因は、朝の陽の光を弾き綺羅めく蜂蜜色の髪の人のせい。


「広い!すっごく広いのね!!」


両手を広げてくるくるっと、回ってみせる彼女。
ふうわり、とスカートが広がり、膝下長い芸術的な足がジョーの目に飛び込んできた。


「・・・フランソワーズ、声大きいっ、スカートっっ・・・」


そんな彼女を追いかけてジョーは彼女の隣に立って注意する。
ジョーのお小言右から左に聞きながしながら、落ち着かない様子のフランソワーズ。


「ね、お昼は”学食”に連れて行ってね!!ね?」
「そんな単語、いつ覚えたの?」
「月9!」
「・・・ああ、グレートが中古で引き取ってきたビデオのだっけ?」
「大学と言えば、学食よ!」
「いや、勉強でしょ?」


車の中でのジョーは無口で、機嫌が悪いのだと思っていたフランソワーズだったが、今はいつもの彼である様子に、ほっと安堵する。


「あら、ご飯は大切なのよ?お腹がすいたら勉強できないもの!」
「アイスクリームはないよ?」
「それは多いに学生たちの勉強の意欲を削いでしまう、重大な問題だわ!」


ぷうっと、頬を膨らませて真剣に抗議する姿にジョーは微笑んだ。


「別に、アイスクリームを食べなくても勉強できるよ、アイスぐらいで勉強ができなくなる方が問題」
「できなくなるわ!」
「フランソワーズが、だろ。それってさ」


ジョーの目に、フランソワーズの背に純白の小さな翼が見える。
重力なんか感じさせない、不思議な歩き方。

踊るように、優雅に、ゆったりと、しなやかに。



フランソワーズへと送られる多くの(異性からの)視線に、その視線の先の人は、まったく気にしていない様子。

フランソワーズと一緒にいる限り、それらの視線を避けることも、逃れることもできない。
彼女が、彼女であるゆえに。
そして、そんな彼女の隣を歩くために。




気づいていないのだろうか?と、ジョーは不思議で仕方がないが、”慣れている”のだろうか?とも、思う。


「・・・・フランソワーズ、大丈夫?」
「なあに?」


今にも歌い出しそうなほどに、ご機嫌なフランソワーズ。とは、逆にジョーの機嫌が斜めになってくる。



---なあに?じゃないだろ・・・。
   


社会(マナー)を知らない学生のアカラサマに投げつけてくる、”意味”のある視線が、自分のこころの奥底にかくして気づかない”ふり”をしている、それを無理矢理こじ開けようとする。

先ほど自分たちとすれ違った男子学生の言葉。



”うおっすっげっ!!外人っ”
”やりて~っ、あんな子と一回でいいから、やってみてえよな!”




003である彼女が、聞こえてないはずない。












「ジョー?・・・具合が悪いのじゃなくて?」


急に黙りこんでしまったジョーを見上げてたフランソワーズは、歩みを止めて軽やかにジョーの正面に立つ。
細くて折れてしまいそうな、踵のあるサンダルにも関わらず、トウで立つように、精一杯背伸びをした。

見惚れるほどに美しい動きで、ジョーの両頬を捉えると、引き寄せる。
ジョーのおでこに、こつん。と、あてられたのは、フランソワーズのおでこ。



「ん~~・・・ちょっと熱いかしら?」



フランソワーズの碧の瞳しかない世界。








「え?ええ、えええ?ええええっ?ジョーっ?!」



”人間”なら、病院送りになってるかもしれないほどに、ジョーの体温が一気に上昇。






キミがあまりにも、可愛くて。
キミが花のように、微笑んで。



そのワンピースが似合いすぎるんだよ。



だから、さ。
なんて言うか・・・。



くっそっっっ!
ボクはさっきのヤツラと、ちがっっっ・・・・。






・・・・・う。勘弁してよ・・。











まったく・・・。
迷惑なくらい可愛いんだよ、キミは・・・・。





奇妙な男の独占欲。
お洒落をして、いつも以上に可愛い彼女だから。








それもこれも似合いすぎる、そのワンピースのせいだ!!
普段ボクとでかけるとき、それ、着ないくせに。


他のメンバーとなんて、ちょっと駅前に。でも、着ていく癖にさ。


「離れろって・・・こんなところでっ」
「ジョー・・・大丈夫???」


フランソワーズの気遣いなど無視してジョーは早足に研究室へと歩き出した。







####


「世の中には本当にお人形のような人がいるのね・・・びっくりちゃった。それに、島村君のお友達が、女の子だったのも、ね」
「え?」
「男の人だと思ってのよ。・・だって、島村君、一度も彼女の名前とか話し、したことないじゃない?」
「そうだっけ?」
「そうよ、・・・一度もないわ、秘密だったのかしら?」
「いや、別に・・?」
「でも、どこで知り合ったの?フランスの女の子なんて」


水沢美奈子にフランソワーズを紹介した後、彼女は教授の部屋へと案内された。
オオガミ教授が”男”でなくてよかった。と、今更ながら思いつつ、ジョーはいつものように、研究室の雑用に精を出す。


頭を切り替えるには、ちょうどいい。





研究室の秘書である水沢に頼まれて、大量にコピーした書類を14枚1パックにする作業が続いている。
テーブルに並べた書類を一枚ずつまとめて、それを地道にホッチキスでとめていく。


「コピーしたのをそのまま自動でパッケージにしてくれるのがあるんですって、次回の予算で買ってくれないかしら・・・」


ポーチから取り出したハンドクリームを手の甲に出して、薄く伸ばす。
そんな美奈子の仕種を見ながらジョーの手は動き続けた。


「それで、彼女とはどこで知り合ったの?」
「・・・共通の友人が多くて」
「ふうん・・・。そうなんだ・・・、お友達、なのよね?」
「・・・うん、まあ、・・・そうか、な・・・」


ホッチキスが、ぱちん。と、鳴る。

重ね上げられていく書類を目にして、壁にかけられている時計を見上げた。
まだ、フランソワーズが部屋に行って15分ほどしか経っていない。


ばちん。と、美奈子のホッチキスが鳴る。


「可愛い人だったわ。きらきらしてて」
「・・・そう?」


心の中では、ジョーは大きく頷くが、それを顔に、態度には出さない。


「目がとっても大きいし、綺麗な・・・ずっとちっちゃいころ、兄のビー玉があまりにも綺麗な碧色だったの、それが欲しくて仕方なくって、・・・そんなこと思い出しちゃったわ」


ぱらぱらぱら、と、まとめた紙が全部そろっているかチェックする。
再び、ばちん。と、ホッチキスが、鳴る。


4階にある研究室前にある、視聴覚室に2人きり。
ジョーは美奈子から仕事を頼まれることが多く、2人で作業することが少なくない。


「顔から落っこちそうだよね」
「!」


ジョーの発言に驚いて手に集めていた紙から視線を上げ、笑った美奈子。


「よく目にゴミが入るって、こするんだ、駄目だって言うのに・・・」


瞳をこする仕草のフランソワーズが、ぽん。と、ジョーの目の前に現れて、にやけそうになるのを、我慢する。


「・・・よく会ってるの?」


ジョーの表情が、柔らかくなったことを見逃さない。


「会ってるっていうか・・・」


美奈子の言葉がジョーの頭に、ウィキペディアで調べた”同棲”の言葉を思い出させた。
慌ててその言葉を、ジョーは掻き消す。


「どうしたの?」


ジョーの手の動きが止まったのを、不思議そうに見た、美奈子。
こころなしか、彼の頬が紅い。


「う・・ん、と、あの・・・・・まあ、お世話になってる人がいて」
「ああ、島村君をこの研究室に紹介してくれた、コズミ博士?」
「の、友人がボクの身元保証人、みたいな人で、・・・彼女も同じなんだ」
「え?」
「日本に彼女にいるのは、そういうことで、それで、ボクと同じ人とお世話になっているから、その・・・」
「?」
「そういうこと、なんだよ」


ジョーの手が、止まっていた分を取り戻すかのように、動き出した。


「ふうん・・・、なんだか意味深」


美奈子はそれ以上、ジョーを追求するようなことをしない。


「べ、別にっ・・・・そんなことないよっ・・ちょっと複雑なだけ、かな?」
「複雑、ねえ・・・複雑・・・・」


ばちん。と、ホッチキスが鳴る。


パッケージとなった書類を箱に収めて、それを手に視聴覚室を出る。
研究室内の美奈子のデスクに、作業前にはなかったカラフルなポストイットが、大量に張られていた。


「その箱は、間違えないように、その棚に置いておいてくれる?」
「メモしておこうか?」
「う~ん、使うのは午後、すぐだから」
「メモしておきます」
「あはは、お願いね」


ぺぺぺっっと、張られていたポストイットのメモを取り目を通す。


「忙しいなぁ・・・」


美奈子は、ふうっと、溜め息をついて、デスクに座る。


「もう、こんな時間なんだ・・」
「お昼までに、やらなくちゃいけないのは・・・」
「午後の会議に出す珈琲の用意?」


箱にマジックでキュキュっと簡単に印をつけたジョーは、それを棚にしまいながら訊ねる。


「それもだけど、さっきのパッケージと、スライドモニターに、ビデオデッキ・・・、北館の会議室は古いから嫌なのよねえ・・・あと・・・」
「PCは使うのかな?」
「聞いてないわ・・今日はいらないと思うのだけど」
「一応、確認しておきます」
「発表するのは、ウノ教授と、サガミ助教授に・・・」
「お見えになられるゲストの方が使われるのなら、用意して置いた方がいいかもね。それだと、北館だから、プロジェクターを運ばないといけないと思うけど・・」


美奈子は、ポストイットをデスクの上のスケジュール表に張り直しながら、微笑んだ。


「助かるわ・・ホント。島村君の前の人は機械類まったく駄目だったから、そういうことまで頭まわらなかったのよね・・・」
「運ぶのに、人手がいるかも」
「セミナーの学生が手伝ってくれるわ」
「聴講できるんだ」
「ウノ教授のグループだけね」
「へぇ・・・」
「興味あるなら、島村君も参加して大丈夫よ?」
「いや、フランソワーズがいるから、今日は・・・」


美奈子は、じっとジョーを見た。
ジョーは美奈子のデスク前に立ち彼女の視線を受け止める。


「?」
「アルヌールさん」
「?」
「アルヌールさん」
「え?・・・」
「私の名前は?」


きょとん、と。何度か瞬きを繰りかえした、ジョー。


「・・・水沢さん、ですよね?・・・・え?」
「そうよ、水沢です。だから、アルヌールさん」
「え?・・・」
「女の子のファースト・ネームを呼び捨てで、お友達なの?」
「え・・・・ええっと、・・え?」
「じゃあ、私のことせめて”美奈子さん”でもいいわよね?」
「あの、でも、それは・・・彼女は、その・・・」
「美奈子、でもいいんだけどなあ・・・」
「!?」


上目遣いに、ジョーを見る。
固まったジョーに小さく溜め息をついた美奈子はデスクの上にある、スヌーピーが赤い屋根に寝そべっている、時計に視線を移した。


「お昼前には終わるって、言ってたから、そろそろ”アルヌール”さん、戻って来ると思うけど?」


美奈子の言葉の30分後にフランソワーズはオオガミ教授の部屋から出て来た。
ちょうど、ジョーは美奈子とともに、午後に必要と思われる機材のチェックをしていたときだった。


「ジョーっ」


彼の名を呼びながら、まっすぐに駆け寄ってくるフランソワーズの姿を視界に捕らえて、ジョーを見ていた。


「おかえり」


ほっと、したような。嬉しそうな。
照れたような、笑みを浮かべて、ジョーはフランソワーズを出迎えた。


「ただいまっ!」


フランソワーズが研究室に入って来た途端、いつも薄暗く感じる部屋が天井を吹っ飛ばして、春のような柔らかくあたたかな陽の光を部屋中に満たしたように思えた。


「おつかれさま」
「フフッ♪変な気分だわ」


ぴょん、と、跳ねるようにしてジョーの前に立つ。と、躯の向きをフランソワーズに向かい合うように動かした、ジョー。
美奈子の視線がジョーから、フランソワーズへと移った。


「変?」
「だって、いつもと立場が逆だもの!」
「ん?」
「そうでしょう?いつも、私が”おかえりなさい”で、”おつかれさま”でしょう?」
「ああ、そういえば・・・そうかもね」
「で?」
「で、なに?」
「それと?」
「それと・・・?」
「おかえりなさい、おつかれさま、それと?」


おねだりでもするように、ジョーに次の言葉を催促するフランソワーズ。


「ああ、そっか。どうだった?ちゃんとできた?またトンチンカンな事を言ったりしてない?教授にご迷惑をおかけしていないか、心配で、胃が痛かったんだけど?」
「違うわ!!それにっ”トンチンカンな”は余計なのっ・・・・・」


口紅も、グロスもつけていないくちびるだけれども、愛らしいチェリーカラーをつん!と尖らせたが、すぐに、顔色を変えて、こぼれ落ちそうなほどに大きな瞳を悩ましげに、瞬かせた。
彼はくすくすと笑いながら、ぽんぽん、と、フランソワーズの肩、というよりも二の腕を撫でるようたたいた。


「そうだ・・約束の、学食に連れて行ってあげるよ?ちょうどいい時間だし、今日の分はこれで、終わりだからね」
「!」


確認するように、美奈子をみたジョー。



「あ、島村君」


ジョーの肘に伸びた美奈子の手。


「アルヌールさんを紹介してくれたんだもの、お昼、ごちそうするわ。学食じゃなくて外へいきましょう?」


美奈子は手をジョーの腕に添えた。


「・・・フランソワーズ・・に、学食に連れて行くことを約束していたんです、彼女も・・」
「でも、せっかく来てくださったのに、学食なんて。お礼もしたいの。・・ほら!この間、大塚さんたちと行ったレストランはどうかしら?」
「えっといつの?」
「この間よ!」
「この間って・・しょっちゅう大塚さんたちに昼ご飯を連れて行ってもらうからなあ・・・」
「もう、島村君っ!ほらあ、すごく美味しいランチセットがある、日替わりのよ!」


困ったなあ、思い出せないよ。と、笑うジョー。
美奈子はジョーの服を引っ張るようにして、なんとかしてジョーが思い出すように、色々なアイテムを投げかける。

フランソワーズの視線が、ジョーの腕に甘えるように巻き付いた、彼女の手に、向かったと同時に、早口に言う。


「じゃあ、私は学食行くから、ジョーは外へ行って来たらいいわ!」
「っフランソワーズ」
「お昼を食べたら、そのまま帰るんだもの!別行動しましょ!どうせジョーは午後もお仕事でしょう?」


花が咲くようにわらってみせた。


「・・・今日は午前中まで、ってお願いしてる。から、仕事はないんだよ」
「え?・・・島村君、午後は戻ってこないの?」
「聞いてませんか?」
「いえ、知っていたけど・・・あの、準備を手伝ってくれるのかと思っていたのよ・・・その・・・」


美奈子の視線は碧の瞳を不安げに見つめた。
”おかりなさい、ただいま”を言う合う関係と知って、美奈子の胸は穏やかではない。





美奈子の視線から、嫌でも女である、”感”が働く。


---つれて帰る?どうして?どこへ?なぜ?貴女と彼は?


そんな必要あるの?








ないわよ、別に・・・。
ジョーが私を子ども扱いしてるだけだもんっ。





フランソワーズは投げかけられた視線から逃れるように、そろり。と、一歩、後退して、研究室から出て行こうとする。


「ドコヘ行くの?」


ジョーは美奈子にむけていた視線を、フランソワーズへと戻し、振り返って腕を伸ばし、彼女の手を、しっかりと握ることで、捕まえた。

美奈子の腕を振りとくようにして。


「学食っ」
「どこにあるか、知ってる?」
「聞くわっ」
「誰にさ?」
「誰でも、大学内の人だったらみんな知ってるでしょ?」


ジョーに握られた手が、嬉しいけれど、イヤだった。
水沢美奈子に見られている。


嫌でたまらない。








「ありがとう、水沢さん。その気持ちだけフランソワーズと一緒に受けとっておくよ」
・・・ジョー?

美奈子はジョーの言葉に驚きの視線を、フランソワーズの双眸とほぼ同時にジョーへとむけた。


「学食へ行くのを楽しみにしていたし、約束していたから。それに、午後の準備はこれで十分だと思う。セミナーの人たちが助けてくれるなら、ボクの出番はないし。・・・申し訳ないけれど、予定通りに帰らせてもらいます。ちゃんとフランソワーズを家までつれて帰らないと。彼女をここまで連れて来たのは、ボクだから」


そうだろう?と、フランソワーズに問いかけの視線を投げかけて、微笑んだ、ジョー。
少しだけ、さっきよりも力を入れて握られた、フランソワーズの手。

そっと、ジョーの手を握り返したフランソワーズは、こくん。と、頷いた。
温かくて、強い、しっかりと握ってくれている手が、009のものでなく、ジョーである、彼の、手。



頷いたまま、頭を上げることができない、フランソワーズ。




「ん?・・・大丈夫だよ。心配しなくてもちゃんと、邸まで送るから。そのために、車で来たんだよ?フランソワーズを1人にさせるようなこと、しないから」
・・・・そうよ、ね


小さく呟いた。


美奈子が、納得したかのように、緊張をといた。
彼女は、ここまで連れて来た”責任感”から、自分の誘いを断ったのだと思う。




---ジョーは009だもん、優しいもの・・・・・・だけど。


---キミを1人で大学内を歩かせるなんて、誰がするもんか!・・・・それに。



















それに?


「行こうか?それじゃあ、水沢さん、また木曜日に」
「ええ・・・、今日はありがとうございました、アルヌールさん。また日を改めてお礼をさせてくださいね」
「・・・・失礼します」




手を繋いだまま歩き始める。
美奈子の視線がそこへ絡まる。

研究室を出て、校舎の廊下を歩き、キャンパスを、手を繋いで歩く。














だけど?



「おうっ島村っ・・って・・・何だッお前、彼女がいたのかよっ!っひゃ~っ可愛いじゃんっ」
「ぼ、ボク達は別にっ!」
「あ、あの・・っっ!!」

手が離れると思った。
けれど、繋がれた手を、ジョーは自分の背に隠しただけで、離さなかった。


どちらとも、離せなかった。


ちらり、と。ジョーはフランソワーズを見る。
ほぼ同じタイミングで、フランソワーズもジョーを見上げた。








微笑み合って、誤摩化す。
まだ、言葉にする勇気がないために。






---それに、キミと大学へなんて・・・まるで、さ・・・なんと言うか、まあ、よく考えると・・・。



---だけど、リーダーの責任と言うだけじゃないって、少しだけ思ってもいいのかしら?だって・・・。






だって私たち。
手を繋いで・・・大学内を歩いて、まるで普通の・・恋人同士みたい。

手を繋ぐなんて、そんなに特別なことじゃないのに、ね。


「・・・よく似合ってるよ、その、ワンピース」
「!」





手を繋ぎ続けていることを、誤摩化すように早口に言った。


「みんなみたいに、何も言ってくれないから・・・似合わないんだと思ってたわ」
「・・・違うよ」
「だって、何も言ってくれないもの」
「あの、さ・・・」
「なあに?」
「うっ。・・・・・あ、え。うん、あの。」
「?」
「・・・・・・・いいかな?」
「なにが?」
「その、ええっと、あ。の、この、ままでも、さ?」


長い前髪に、紅く火照る顔を隠す。


「変なジョー!」
「あっ!」


繋いでいた手を、ぱっと離して、フランソワーズはジョーの腕を抱きしめた。


「ね!学食で、私ね、カレーうどんなの!」














end.


*おまけ*


「!」
「フランっ」
「ジョー、熱いわ!!朝、調子が悪いみたいだったしっ、具合が悪いの我慢してるのね?!」
「駄目!博士に診ていただかなくっちゃ!!」


抱きしめた腕を引っぱりながら、フランソワーズは車を停めている方向へと歩き出した。


「フランソワーズ!!」


抵抗するジョーの腕を、さらに強く抱きしめる。と、ジョーの顔がさらに茹で上がる。


「ほら!きっとたくさん熱があるんだわっ」






いやっ!!
違うっs!!!
腕にっ。

腕にっ!


そのワンピースって!言うかっ・・・強くっ押しつけっっるっなああああああっ!!




ヤバいっ





腕に、その、感触っ・・・・っ!



やばいんだよっ!!





見かけより、フランソワーズって・・・・、いがいと・・。
ジェットが言っていた通りかも・・・。




って、ちっが~~~~~~~~~~うっ!!



「ジョーっどうしたの?!」




うあっ!
ああああああああああああっっ!!!


やわらっじゃないっ!






”うおっすっげっ!!外人っ”
”やりて~っ、あんな子と一回でいいから、やってみてえよな!”





うっ。





「ねえ?どうしたの?いっぱい痛いの?!」


ジョーの腕にぶら下がるように抱きしめて、見上げて来るフランソワーズ。
胸元が大きく開いたデザインのために、上から覗くような視線は、寄せられた生地の合間に見えてしまった。



桃色レースに包まれた、腕に感じる感触の原因。







まじ、やばっ!!




「や、や、や、やややや、やっぱり、さ!!!学食行こうよ、お腹すいた!」
「ええ?!駄目よっ」
「いいんだよっ!行くよっ」
「デザートは邸に帰る途中、どこかに寄ってね!」
「了解っ!」


---可愛いだけじゃなかったのか・・・。

















*む・・・。なんだかイマイチで、まとまりがないっ。
この前に書いた、”アタシ一人でも平気だもん”に出て来た女は誰だ!?にお答えるために、書いたのですが・・・・。
おまけ。・・・おまけにする必要あるのか?!(笑)。
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シグナル

触れ合ってはいないけれど、彼が博士の言葉に、こころを戸惑いの揺れに波立たせた。
どんなに激しい戦火の中でも身を守ってくれる防護服。に、包まれているはずの肌が、ぴりり。と、感じた。


「・・・・わかり、ました」


サイボーグのリーダーだけれど、その彼が唯一逆らう事が出来ない人物。
父である、ギルモア博士の命令では、009もさすがに文句を言う事はできない。
加えて、009の優秀な補助脳が考えつくかぎりの計算をした上で、それが最も有効的な作戦であることも、ちゃんと彼は解っている。



仕事に私情は挟まない。






はさんでは、いけない。










けれど、甘えん坊で、独占欲の強い彼に、それができるの?









想いが通じ合い。
夜を共有するようになって、まだ1ヶ月も経っていない。


メンバーたちのからかう声に、否定しながらも彼は堂々と、私をいついかなるとき、腕を伸ばしてその傍らに立たせるようになったのは、ほぼ同じ時期。




「メイスン博士と003を、・・・・・一緒に、行動させます」
「うむ。その方が、自然じゃろう」


早熟の天才、メイスン・コルビー博士はギルモア博士の隣に腰を下ろしていた。
009の声に、少しばかり私情な喜びを挟んだ、その表情と一緒に立ち上がる。


「よろしく、003、・・・あ。003じゃ変だね?フランソワーズって呼ぶのを許してくれるかな?」


私の頭の中にある信号機が黄に点滅した。


「本音を言うとさ、サイボーグたちに護衛されると聞いて想像していたのは・・・。ま、いいや!君のように綺麗な人と一緒にずっと居られるなんて!!」


009を無私して、メイスン教授は私の前に立った時、ぴりっ!と、私の肌に電流が走る。

彼の手が私の背に添えられて。
有無を言わさない力が加わる。




駄目よ!
ジョーっ。


赤信号なんだからっ。














ミッションに私情は持ちこまいって約束で、同じ部屋にしてもらったんでしょ!
私たちっ。



みんなっ!
傍観してないでっ助けてよ!!















ギルモア博士もいらっしゃるのよっ・・・!



ジョーっ!



ここは、部屋じゃっ。



みんなもっ。見てるのよっ!!




メイスン博士に釘を刺すくらいならっ別にっっ・・・・。
あ、ちょっと!!






もっっ!!!!!!!!








・・・・え。まだ・・・・・。
f・・・っ。





え?え?え?え?え?










ジョー・・・・・・・、ひ、どいわ・・・・・。








はあ・・・。と、熱い溜め息が009のくちびるからこぼれ落ちて。
私は、その溜め息を吸い込むくらいの位置に、くちびるを寄せていた。






「・・・・・メイスン教授、003が”護衛”しますが、あくまでも彼女は003であり、個人的な私情は持ち込まないでください」


持ち込んでるのはあなたじゃないっ!



「・・・・私情をはさむなら、先に言っておきますよ」





ジョー?









「フランソワーズは僕の”彼女”っ、すっごく大変だったんだからなっ!!余計なちょっかい出すなよっ」


きゅうっと抱きしめられた。








憧れていた009が、今、崩れていったわ・・・・・。
ジョーってば・・。




みんなもびっくりしてる。
博士、顎が外れていらっしゃるわ!!



それよりもっメイスン教授・・・。




まだ、14歳なのよっ!!
子どもなのっ!


映画だって保護者同伴指定される年齢なのにっ!!






「ジョーっ!ちゃんとプライベートとミッションを分けられないのなら、ドルフィン号の部屋割り、元に戻すわ!」
「!!だってっ、コイツっ」
「メ.イ.ス.ン教授!!」


ぐうっと手に力を入れて、彼の胸から、腕から逃れた。


「人前でっ!こんなこといけないのよっ。公私混同するような009なら、ミッションが終わるまで元の部屋割りで過ごしますっ」
「やだ!!」
「ジョーっ」


これ以上の我が侭を言えば、わかってるわよね?


「・・・・・・・・・・わかった」



頭の中の信号機の色が赤が青に変わる。
なんとか、スムーズにミッションを遂行できそうで、ほっとする・・・・けれど。



ねえ、ジョー・・・。
私の憧れていた009は、どこへいってしまったのかしら?



別の信号機が点滅し出すのを見ないことに決めた、そんな今日。












*・・・・なんだこりゃあああああ?!
 って・・叫ぶ。
 消し決定なのです。これネタで書き直します。

 でも、なんかもったいないので、載せてみた。
 もったいないおばけ、コワイですから!
 メモってことで。
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