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春の装い
「ごめんなさいっ!待たせちゃって」
「ううん」


ジョーの姿に気がついたのは、ずっとずっと遠い位置。
そこから走っても、息切れすることもなく彼の元へと誰よりも早くたどり着く自信があった。けれど、両手に下げたたくさんの紙袋。と、履いている5cmのピンヒールがフランソワーズの決断を鈍らせた。

それ以前に。と、フランソワーズはこころの中で呟く。


繁華街で”オリンピック選手”以上の身体能力を披露することになるのは、さすがにね。と。


「慌てなくてもいいよ、約束の時間より、1分早い」


はにかむような微笑みを浮かべながら、ジーンズにつっこんでいた携帯電話の液晶画面に表示されているアナログ時計に視線を落とした、ジョー。


「でも、待たせたことには変わらないわ」
「思ったよりも早くついただけだよ」
「どれくらい?」


携帯電話を定位置でもあるジーンズの右ポケットにおさめると、ジョーは歩き出した。


待ち合わせの場所は、百貨店。
西側エントランスの、大きなファイン・アートが描かれた壁画前。


「どれくらいかな・・・邸を出たのは、12時前くらいだったけど」
「え?・・・でも、待ち合わせは2時よ。それじゃ・・・」
「ん?ここにくる前にちょっと寄りたいトコロがあって」
「寄りたいトコロ?」
「うん」


どこ?っと、衝動的に口から出てきそうな2つの音。を、フランソワーズはぐっと飲み込んで我慢する。


「それで、用事は済んだの?」
「うん」


日曜日の午後。





スプリング・セールには少し早い時期。


けれど、西口エントランスから入った2人は、その人の多さに視線を合わせて驚き合い、1階のアクセサリー売り場からはじき出されるようにエスカレーターへと向かい、地下の食料品売り場へ直接向かった。


「ものすごい人・・」
「さすが、日曜日」
「・・・・気温が上がれば、みんな外で過ごすと思ってたわ」
「ピクニックとか?」
「お花見よ」
「まだちょっと早いよ」
「そうなの?」
「ニュースでは、あと2週間くらいだって言っていたよ」


フランソワーズが先にエスカレーターに乗る。
同じ段には乗らず、フランソワーズの背後にジョーが立つ。

フランソワーズはエスカレーターの進行方向ではない向きに躯をひねり、段差がある分、ジョーをジェロニモを見上げるような感覚で綺麗なラインを描く顎を、あげた。

エスカレーターと同じ速度で動く手すりにジョーは軽く右手をのせ、視線を先ほどまでいた1階のフロアに理由なく、なんとなく、固定させていた。・・・ために、下っていく速度に合わせて彼の視線があがっていく。

フランソワーズは左右に分けて持っていたガサガサとかさばる紙袋を両手で持ちながら、ジョーと、彼の視線の先にある風景を交互に見ながらため息を吐いた。


「ジョー・・・」


エスカレーターとフロアを区切るセーフティ・ウォールは透明なプラスティック。
寒い冬にしまわれていた”足”は、春色の軽やかなファッショんとともに、季節が変わったことを告げていた。


「・・の、H」
「え・・・」


つん。っと。躯をエスカレーターの進行方向へと戻したフランソワーズは、自分の前に人がいないことをいいことに、高さを換え始めた段差を飛び越えた。


「H」
「・・・フランソワーズ・・別に、・・・見てたわけじゃ・・・」


フランソワーズのように飛び越えはしなかったが、ジョーは長い足を延ばして彼が立っていた段がフロアに吸い込まれる前に、エスカレーターから降りた。


「聞こえませーン」
「・・・・・荷物、持つよ。邪魔になると思うから」


ジョーは苦笑いしつつ、フランソワーズの持っている紙袋へと手を伸ばす。


「結構よ、重くないもの。どうぞ私のことはお気になさらず、じっくり楽しんでくださいませ」
「・・・いや、あの、だからね・・・」


フランソワーズの手にある、荷物を奪うまではいかないけれど、少し強引な感じで彼女の手からジョーは自分の手に荷物を移動させた。


「・・・・持つよ。僕は何を買うのか知らないし、それに今日は、”荷物持ち”のためにいるんだから、ね?」


手から荷物がなくなったフランソワーズが、ちらっと隣に並んだジョーを見る。
いつもの、少し照れるような微笑みが、何かを誤摩化そうとしている上に、加えられた”ちょっと乱暴だったかな?大丈夫?”と言う、メッセージが入った瞳に、”もっと早く言って欲しかったわ”と、言うメッセージを送った。


フランソワーズの避難めいた視線。に、少し勘違いをして。


「大根とか、人参とか、ごぼうな、感じにしか・・」


呟く。


「食料品でも、今日のお買い物はお野菜じゃなくて・・・・」
「いや、そうじゃなくて・・・」




ごにょっと続きを口の中で言ってしまった。





「ジョーのH!!!!!!」











003が、そのささやきにもならない声を聞き逃すはずがない。



真っ赤になったフランソワーズはジョーから逃げるように混雑する食料品売り場に消えていく。
消えたフランソワーズを探すこともせず、エスカレーターのサイドに設えられている、背もたれのないベンチへと足を運ぶと、そこにどっかりと座り込んだ。


「性能良すぎるよ・・・フランソワーズ・・・・・声には出してないのに・・」


フランソワーズの朱がうつったジョーは、このまま加速して帰ろうか。と、言う考えが頭によぎった。











end.









*9が何を言ったか、募集してます。
 思いつかなかったです。

 ・・・フランソワーズは膝頭が隠れる丈しか着ない印象があるので。
 タイトルが・・・(汗)
 なんか、いいのがあったら、換えたいです。


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Feel Me
弾丸を環状に並べた回転弾倉(シリンダー)が回転するときの金属の摩擦音さえ、まるで、カーラジオのチューニングを合わせるためにもたつく指先のように、見えて、聴こえた。

脳が目で見た情報を捉えるよりも、早く。
瞬きする瞬間よりも、短く。


人間が耳にする音の限は20~2万ヘルツ。
人間の聴力の6倍の猫。


私は、・・・・。







「女一人・・・軽いな」
「えらい別嬪さんで、可哀想な気がするが・・」
「何をやったか知らないが、・・・依頼された仕事だ」











湿気のないカラリと乾いた風に、少しだけ励まされて。




<2時の方向に3人>




亜麻色の髪が揺れて、振り返った。


「Miss」


栄えているとは言いがたい、繁華街。
滅多にやってこない観光人に向けて、法外な金額をふっかけてくる人力タクシー。


「Miss, cheep! cheep!! good car, faster !! faster! I am very good!」


ガラがよい。と、お世辞にも言えない視線にむかってにっこりと微笑む。


「No thanks」





男はさっと視線を下から上へと流し、亜麻色の髪の女性の身なりで、彼女が”どれくらい”かを判断する。

その視線が亜麻色の髪の女性と合った。


耳に、撃鉄(ハンマー)を親指で引き起こす、音。
経験上で知った”音”の違いを勝手に計算して予測する。

どの銃を使用しているかなんて、無駄な情報だけれど。と、ため息をつく。


目の前で、必死に勧誘している男は、そのため息を、自分に向けてのものだと、勘違いしたようだ。


「Miss, I am good! good guy! good driver!very very safe taxi!!」
「あ・・」


男は、女性の隣にあるスーツケースに手をかける。と、同時に、彼女の手首も掴み、ひっぱった。






風が通り抜ける。
昨晩の名残のある香りのせいで、思い出してしまった時間に緊張する。




「勝手に彼女に触んなよ」
「・・・ジョー」


日本語じゃ駄目よ。と、言葉を添えたけれども、彼には聞こえてない様子で、人力タクシーの運転手の手から、フランソワーズを、スーツケースを取り戻す。


「?????」


ジョーが乱暴に男を振り払う。
先ほどの、”事”の勢いが残っていたのか、力加減がいまいちのために、男はどん!っと尻餅をついた。


「二度と触るな」
「だから、ジョー、日本語・・」


尻餅をついた男は眼を驚きに見開き、ぽかん。と口を開け、魔法か手品か、突然目の前に現れた青年を見上げ言葉をなくしていた。






***


「まったく、ここの国の人はしつこい!」
「生きるために、一生懸命なのよ。そういう言い方はよくないと思うわ」


唇を尖らせて文句を言う姿は、一瞬で銃を持つ”プロ”を気絶させた人と同一人物とは思えない。

通りを歩く、現地女性の視線をさらっていく、青年の隣を歩く亜麻色の髪の女性。


「フランソワーズを狙うなんてさ!!」
「だって、ジョーは強いもの・・・、私は女だし、ね?」
「ボクより、フランソワーズを狙う方が命の保証ないのにさ」
「?」
「だって、キミにはボクがいるだろ?」
「・・・」
「ボクだけを狙うなら、”サイボーグ009”だし、いいんだけど」
「いいんだけど?」
「フランソワーズは、ボクの、・・・」
「ボクの?」



依頼された仕事を終えて、帰路につく。
国際線の空港へ向かうためにローカルの空港へと向かう。

”人力”タクシーじゃない、”タクシー”を捕まえるために、専用の乗り場で待つこと30分。タクシー内に料金をデジタルで計算するようなものはなく、”人力タクシー”と同じく交渉で決まる。





世界地図を縮小プリントすると省略されてしまうほどの小さな、小さな、国。



依頼のあった仕事は通称”運び屋”と呼ばれる内容のもの。
運ぶのは、”003が聞いた情報”。


秘密裏に行われた”会合”に居合わせることなく、小細工も何も、種も仕掛けもなく、手に入れる。


ただ、同じホテルに泊まっただけで。













聴こえ過ぎて、視え過ぎて。
勝手に聴いて、勝手に見える・・。


プライバシーと言うものを完全に無視した能力。

そのために、見えない、聞こえない、世界に憧れる。
完全な闇が、自分は、何も見ていない、聞いていない証とばかりに。


見たくない、聴きたくない。と、ミッションがある度に、特に、今回のような”依頼”のときは、それを強く痛感する。







「・・・ボクの、その・・・」



けれど。



今は、・・・ジョーを見ていたい、から、・・・見えなくなることを恐れる。



そして。







「・・・その、なあに?」



タクシーに乗り込み、道とは思えない道を走る。
今日は昨日に増してさらに気温は高く、暑い。

窓を全開にすれば、走る車の速度にあった砂埃が入り込む。




「そ、それより!さ、なんでボクたちが狙われたか・・バレてるって事だよね?」
「依頼されたって言っていたわ」
「・・・依頼か・・・・、ボクたちがこの国に居る事を知っているのは、ギルモア博士を通してきた、シュワルツ博士と秘書のケリーさん・・」
「ねえ、ジョー・・・」
「何?他に何か聴こえた?」











あなたからちゃんと、”言葉”で聞きたいから、聴こえなくなることが、怖い。









「聴こえないの」
「え?」
「・・・ちゃんと言ってくれないと、いくら私でも、聴こえないし、ジョーがどう思ってくれているか見えないわ」
「!!」



フランソワーズは、右側のドアについたバーをクルクルとまわして、窓を閉めた。
躯をジョーの膝上に乗るようにして、動かすと、彼の方の、左側のドアのバーも、同じようにまわして、窓を閉めた。


「さ!これで少しはマシになったわ」
「・・・な、」


躯を元の位置戻す。


「003でも、聴こえないときは、聴こえないの!・・・その、昨夜は・・・・・何も言ってくれないまま、で・・・・」
「だから、その・・・わかってる・・だろ?」


ジョーは俯きつつ、視線をフランソワーズへと向けたまま、言った。



「何でも、聴こえて、視えるけど、・・・ジョーのことは、ちゃんと私にむけて言ってくれた言葉じゃないと、嫌よ」
「・・・」
「聴こえてしまう、声、じゃなくて・・・、私のために、私にむかって・・・私にだけに言って欲しい、の」





文法がおかしい英語で、”熱い、窓を開けろ!”と、運転手が言い出した。





ジョーは黙って、自分の腕が触れる位置にある、バーをクルクルとまわし、躯を伸ばしてフランソワーズの膝を超えて、彼女の側にあるバーをまわして、両方の窓を再び全開にする。


ゆっくりと伸ばした躯を、フランソワーズの膝上から、彼女の耳元へと移動させた。





はっきりと。



フランソワーズにだけ、フランソワーズに向けて、フランソワーズのために。

その能力とは関係のない、位置で。














「キミを抱いたのは、キミを愛してるから・・・言葉なんかより、ボクがどれほど・・・、とにかく、感じてほしかったんだ・・ボクを・・・」




ボクを見る、じゃなく。
ボクを聴く、じゃなく。






ボクを、感じて欲しかった。










end.









*何が書きたかったかと言うと。
 いつも書く”パターン”の”その後”を目指してみたんです(汗)
 けど、結局変わんないですね・・・告白もので終わってしまいました。
 しかも、・・・後で、ですか(笑)

 あと、ミッションの、ドンパチものの練習したかった、時間がないと無理とわかりました。
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Little by Little ・13
(13)






瞬く星の明かりを背に、彼女は空から、まるで・・・。










「フラっs、危ないっ!」


声に出すと同時に足が動く。
当たり前のように、それが当然とばかりに、フェンスを軽々と超えた彼女を受け止めようとする。

コスト削減気味な、適当に設えられていた青緑色のフェンスは、1度目の衝撃の余韻から抜けきっていなかったのか、大きく傾く。
003が、それくらいのことでバランスを崩すわけなはない。と、009の声が聞こえた。しかし、躯を宙に浮かせたときに風に煽られたスカートにフランソワーズが気を取られた瞬間を、ジョーは見逃さない。そのスカートの裾がフェンス内に移動したフランソワーズを追わずに、飛び出していた金網の針にひっかかったことも。


びっ。と、布が裂ける音に、フランソワーズの表情が固まる。


フェンスの高さは、ジェロニモより低く、ジェットより心持ち高い。
助走をつけることなく、軽々とそれを飛び越えるくらい、サイボーグである自分たちには簡単なこと、だ。


「や・・・」


ジョーの腕が、伸びる。


フランソワーズを肩で受け止め、しっかりとフランソワーズの足を右腕で支えながら躯をフェンスに寄せ、ひっかかったスカートの端部分へ左手を伸ばして外す。

ジョーの肩に下腹部が乗るようにして抱き止められたフランソワーズは、勢いづいて彼の背中側にむかって前のめりに倒れ込みそうになった。
その勢いを殺すかのようにジョーは大きく一歩引いてバランスを取り、フランソワーズを肩から自分の胸へと移動させ、何事もなかったかのように、彼女を地面に着地させた。 



「・・・・・」



ジョーに抱き受けられた衝撃に、止めてしまっていた息を、彼の胸にむかってはあっと吐き出した、フランソワーズ。

たかが、フェンスを飛び越えるくらいのことで。と、フランソワーズは情けない気持ちになると同時に、恥ずかしさの波に胸が襲われて躯を強張らせる。

フェンスが夏の夜空に揺れて鳴り響いていた。
・・・・が、大きくたわんでいたそれも、次第に元の位置へと大人しく戻り、辺りに静寂が訪れた。


「だ、い、じょうぶ?」


先に、口を開いたのはジョーだった。
戸惑いと言うよりも、驚きにのどが引きつっていた。

彼の腕は、フランソワーズをおろしたときと変わらない位置に、軽く彼女の背にまわされている状態。


「大丈夫?フランソワーズ・・・?」


答えない、フランソワーズを怪訝に思い、その顔を覗き込むようにして近づけると、さらり。と、長い前髪が傾けた首と同じ方向へと流れた。


「・・・フランソワーズ?」


普段の半分以下の音量に関わらず、さらに声のボリュームをおとす。
声帯を震わせなかった空気がフランソワーズの頬をかすめた。


「・・・・・ごめんなさい」


蚊の鳴くような弱々しい声を絞り出し、答えた、フランソワーズ。
利き腕で彼女の背をそっと”いつものように”撫でることで、フランソワーズの”ごめんないさい”を受け止める。


「怪我は・・ない、・・・よ、ね?」


ジョーのささやきに、こくん。と、かすかに頷いたフランソワーズは、ジョーとは視線を合わせないようにして、地に落としていた視線を動かし、その動きから数秒遅れて自分の左肩に唇を寄せるように顔を、街灯の光り届かない夜の闇へとむけた。


「・・・・・・・・スカート、で、ああいうことはしない方がいいと、思う、よ」


フランソワーズの横顔を見下ろす、ジョー。
長く上向きの睫毛が風を作り出しながら、フランソワーズの紅い頬に陰をつくっていた。


「それなら」


フランソワーズの唇が、動く。
彼女の唇の動きが、ジョーにはスローモーションのように見えた。


「・・どうして、独りで行こうとするの?・・・・一緒に行くって言ったの・・・に・・・」


深く、胸に吸い込んだ空気。
ジョーが愛煙する甘みのあるスパイシーな香りがフランソワーズの肺を満たす。


「・・・・待っていてと、言ったはずだよ、・・・」


フランソワーズを抱きとめたときと同じ衝動だ。と、言い訳する。
1人でフェンスを超えた、言い訳。


「いつも、そう言って」


前に訪れたときにはなかったフェンスの、向こう側に、行かなければ、と。
躯が勝手に、動いた。と、言い訳する、ジョー。


「・・・1人で、・・・・ジョーは、常にみんなのことを助けてくれるのに、私、(たち)は、あなたの力には、・・なれない、の?」
「・・・みんなに、助けられてる、し・・、それに、いつだって、力になってもらってる」


ジョーはフランソワーズの横顔から視線を外すと、彼女の背後にある、2ヶ月ほど前に訪れたときにはなかった、あちら。と、こちら。を隔てるためにあるような青緑の色のフェンスを、見つめて下唇を巻き込むように噛んだ。





街灯の光に満たされた向こう側。
光り届かないこちら側。




光にあふれていたはずの、こちら側。












『ここ』はずっと変わらないと、思っていた。













####


「あんな小さな子を今更引き受けるなんて・・。やっとこの間○○ちゃんが中学校を卒業したところなのに・・・」
「手がかからない年の子ならまだしも、今年小学校入学するって、ねえ」
「最低でもあと10年は面倒見ないといけないわねえ」
「神父さまのお体が・・心配だわ・・・」





友達に”おじいちゃん”と勘違いされる、神父様がいた。


お兄さんが、1人いた。
お姉さんが、2人いた。

一緒に、教会で暮らした。




教会で育った。と、週末に遊びに来るお兄さん、お姉さんたちがいた。






今まで着ていた服じゃ駄目だと、新しく買いそろえてくれた。
初めて自分の服を、靴を自分で選んだ。







初めてのデパートで。


ランドセル。

教科書。

文房具。


小学校へ入学するのに必要な物を全て”新品”でそろえてくれた。




入学式には、たくさん写真を撮ってくれた。
おめでとう。と、お祝いしてくれた。


初めて”自分だけが主役”のパーティをした。



名前が”漢字”じゃない”カタカナ”表記だと、泣いた。
同時に半分、日本人じゃないと、知った。



こんな名前嫌だ!っと言った。




神父様に初めて、怒られた。

裏山に、子どもだけで遊びに言ってはいけない。と、何度も注意された。











「ここに、教会があって」


力が抜けてしまいそうな感覚に教われて、フランソワーズの背にある腕に力が入り、自然とフランソワーズを抱きしめた。

左に顔を向けていたフランソワーズは、ジョーの腕に抵抗することなく、彼の胸に右頬を寄せるようにして、触れた。


「・・・・・ここに、は・・・」








危ない。と、言われていた。

夏休みに入ってすぐに、駄目と言われていたのにも関わらずに、黙って遊びに行った。
毎日が日曜日!と、浮かれていた。
遊びに夢中になって、教会に戻る約束の時間が過ぎていることに気がつかなかった。
日が落ちたために、散歩コースの道からはずれていたことにも気づかなかった。


自分を含む5人。


たくさんの大人たちが、探してくれた。
初めて本物のパトカーを見た。

神父様が、地面に額がひっついてしまうほどに、ずっと頭を下げて、様々な大人たちに謝っていた。




一緒にいた友達たちは、彼らの両親にたくさん、たくさん、抱きしめられていた。


無事でよかった。と、いっぱい、いっぱい・・・。





俺はどうしていいか解らず、ただ、ピカピカ光る赤いライトを点したパトカーのそばに突っ立って、それらを見ていた。



友達たちと同じように、神父さまに抱っこしてもらいたくて、自分から神父さまの所へ駆け寄ろうとしたとき、見覚えあるけれど、名前の知らないお兄さんが、俺を力一杯に蹴った。



「神父様はもうお年で、無理できねえんだよ!迷惑かけんなら別のとこ移れ。書類とかそういう手続きはしてやるっ」



石ころのように簡単に転がった、俺。
誰も助けてくれない。



声を上げて、泣いた。
周りの大人たちは、迷惑そうに眉をひそめて俺を見下ろす。


俺を蹴ったお兄さんは、ち。っと、舌打ちして、その場から離れていく。


一緒に住んでいる、お兄さん、お姉さんが、すみません、すみません。と、言いながら、やってくると、俺の腕を乱暴に引っ張って立たせた。


「いい加減にしてよっ!泣きたいのはこっちなんだからさ!!」
「立場ってのをわきまえろっっ、ジョーっオレらは”違う”んだぞ!何かあったら全部オレらのせいに、神父様のせいになんだかんな!」
「泣いたって駄目なんだからっ!」




自分のいる環境を、自分がどういう人間なのかを、知らされた。








騒動の翌日、神父様は泣いて腫上がった瞼の俺を見て、ホットケーキを3枚焼いてくれた。いつもは蜂蜜なのに、缶に入ったメープルシロップをたっぷりかけてくれた。


食べ終わった後、神父様の膝の上で1日を過ごした。



お兄さん、お姉さんたちから、”ジョーが赤ちゃんになった”と、からかわれた。





あの日以来、友達たちはもう一緒に遊んでくれなかった。
遊んでくれなかった、じゃない。


遊べなくなった。










事件から1週間も経っていない、日。
教会のお兄さんに頼まれて、お使いに出た先の店前にいた女性から、声をかけられた。


「ジョー、くん?」
「うん!」
「こんにちは、・・・」
「こんにちは!」
「私が、わかるかしら?」
「うん!わかるよっ!いつもチョコレートが入ったクッキーを持ってきてくれるよね!」
「ええ・・・、ジョーくんがたくさん食べてくれるから、とっても嬉しいわ」
「大好きだよ!!すっごく美味しいもんっ。ね、また持ってきてね!!」
「・・・・ええ、もちろん・・ジョーくん、チョコレート好き?」
「うん、大好きだよ!」
「・・じゃあ、神父さまのこと、・・・好き?」
「うん!大好きっ!!」
「そう。・・大好きな神父さまのために、ジョーくんは、何かしたいわよね?」
「?」
「あの教会は神父さまのお家、よね?」
「うん!そして、僕のお家!!おにーさんとおねーさんのお家!」
「ええ、そうね。・・・ねえ、ジョーくん。でも、ジョーくんの”本当の”お家なのかしら?」
「・・・本当のお家?」
「そう。教会は、違うでしょう?」
「でも、神父さまは教会が僕のお家だって言うよ、僕の名前もあるよ!」
「ジョーくんの名前?」
「うん!マリア様のところに、ね、書いてくれるって!ちゃんと”漢字”でっ!お母さんがつけてくれた名前があるけど、神父さまがもう一つ、別に名前をくれるって、それはね、僕が神父さまの子どもだって言う事のことで、だから、お母さんがくれた名前とは、また違うから、使わないんだけど、でも、神父さまがくれたのは、僕用の、僕と神父様とだけのなんだよ!すっごく、難しい漢字がいっぱい並んでるのをね、神父さまが見つけて、取ってくれたんだ。ちゃんとね、意味もあるんだけどね、すごく勉強しないと解らないんだよ、難しいって、おにーさんも、おねーさんも、僕が大人にならないと使えないって言うの。でも、すぐわかるようになるよ!だって僕のだもん。毎日練習するよ!漢字で書けるように、すぐになるよ!」
「・・・そのお名前を、次のお家で使うのはどう?」
「次の、お家?」
「そうよ、そこはもっと大きな教会で、綺麗で、ジョー君と同じ年のお友達たちがたくさん住んでいるわ」
「神父さまも一緒?」
「・・・いいえ、神父さまのお家はここですもの、いらっしゃらないの。でも、別の神父さまと、シスターがいらっしゃるわ」
「・・・・・・・僕、ここに居たら、駄目なの?」


チョコレートチップ・クッキーを手に毎週礼拝に訪れる、いつも綺麗な服を着た女性の、後ろに立っている男の顔を、俺は忘れない。

綺麗な服を着た女性の顔は、覚えていない。
俺を石ころのように、蹴った男の顔は、今でもはっきりと覚えている。


「・・神父様はもう、年なんだよ、・・・お前がいたら、神父様はいつ、ゆっくりできんだよ?会いたきゃいつでも会えんだし、ここに住まなくったってさ・・・。やっと○○が中学卒業して、手が離れたのによ・・・これでやっとって、思ってたらお前来るし・・・」





そのとき、何を考えて、何を思って、俺を蹴った男と、綺麗な服を来た女性と一緒にタクシーに乗ったのかは、思い出せない。





移った施設から、何度も抜け出しては、”ここ”へ帰ってきた。
けれど、教会内に入ることも、神父様に会うことも、できなかった。


神父様が何度も、俺を心配して施設を訪問してくださったけれど、俺は会わなかった。




どうしてかは、わからない。



俺が施設を抜け出すたびに、”あの男”が俺に会いにくる。
施設を替えるたびに、・・・問題を起こすたびに、警察沙汰になると、一番に連絡が行く先が、なぜか、俺を石ころのように蹴飛ばした、男になっていた。

学校行事に、進路相談。
どうやってそれらの情報を得るのか・・・。


必ず、やって来る。





「頭いーんだな・・、高校あきらめんな。推薦されてる学校や奨学金、駄目だったら、最低公立くらいなんとかしてやる・・、大学、国公立にいけるんなら、俺が保証人になってやるから、学生ローンでも組めよ。それくれえ、軽々入れるような奴らが行く高校に推薦もらえんだからな、・・・」
「・・・奥さんに怒られるよ?」
「オレのやり方に文句言わせるような、女はいらねえ」
「・・・・」
「・・・お亡くなりになられた神父様が、お前にしたかったことをオレが全部してやんだよ」
「・・・・未成年に煙草の味までしっかり教えるなんて、神父様は想像してなかったんじゃない?」
「お前が勝手に人の煙草で覚えたんだろ?・・・えらくなったら煙草代を徴収させてもらうかんな」
「たかるの?」
「親の面倒みんのが子どもだろ?」
「誰が、”親”だよ・・・都合良過ぎだよ、それ・・・殴る、蹴る、喧嘩の仕方しか教えなかったクセに」
「上等だろ、お前がナメられねえようにしてやったんだからな」
「・・・それはどうも」
「腕っ節もそこそこ、顔は一丁前、大学失敗したら、オレの店で働けよ。あっと言う間に左団扇で生きていけんぞ」
「・・・まだ高校にも入ってないのに」
「こういうことは、先に先にって、考えんのがいいんだろ?なあ、澄(ジョウ)」








教会に身を寄せた子どもたちの名前、全員の、名前が刻まれている、一番最後に、ある、神父様がくださった、漢字の名前。


こっそりと、神父様の様子を伺い、教会の裏の小さなガーデンに建つマリア像の台座に刻まれた”漢字”の名前を撫でる。




その中に、未成年に煙草の味を教えた男の、名前も・・・当然のごとく、あった。













####

押し当てている左の耳がスイッチを入れなくても捉える、ジョーの心音。
顔をゆっくりと動かして、フランソワーズはジョーを見上げた。

ジョーの心音が少し遠ざかる。


「・・・ここに、名前があって」


ジョーの腕に、さらに力が入った。
彼の心音が先ほどよりも強く聴こえる位置に、かわった。

「・・・・神父様は、教会にいた子どもの名前を、マリア像の下に彫ってくださる、から」




Tシャツを通りこして。
人工皮膚を超えて。

作り物の心臓しかない胸が、焼けていく。





「この奥は、・・・・・暗いし、危ない」


ジョーの腕の強さに、フランソワーズの胸にじんわりと甘みある色が溶けだして滲む。


「003、よ・・・私の担当だわ」


その甘みを吸った心臓が、戸惑う。


「命令、違反」


強く、強く、さらに強く、腕に力を入れた。
身長差をなくすように、少し前かがみに体重をフランソワーズへと移動させる。












頬が重なる。









「009、命令、だったの・・・?・・・ごめんなさ、い。日本語、まだ勉強中だ、か、・・ら・・」


直接ふれあう皮膚(頬)の温度。
汗ばむ手の平をごまかすように、ぎゅうっとジョーのTシャツの、左右の脇腹あたりを握りしめる。


「・・・漢字の、書き取り、け、って・・・い・・」


頬の熱がさらにあがる。










「・・・・ジョー」


フランソワーズは握りしめていたジョーのTシャツから1本、1本、慎重に力を抜いていき、Tシャツから手が離れると、ジョーの背へと恐る、恐る、腕をまわし、彼に負けないほどの力で、ジョーを、抱きしめた。




過去に2度、”フランソワーズ”として、ジョーの腕に抱きしめられた。
(day14/48)









これで、3度目。と、無意識に数えたフランソワーズの躯が、かっ。と火照る。


お互いの体温が混じり合う。
夏の空気から浮き立ちながら。




ジョーの熱がフランソワーズを染めていく。
腕に抱くフランソワーズの柔らかさに、溺れて。


フランソワーズにジョーの煙草の香りが移る。
着やせするタイプの、見かけ以上に広いジョーの胸にすべての体重をあずけた。




フランソワーズの腕の力を強める。
お互いの想いを、お互いの腕に、こめる。





布越しに感じる、共有する機械の躯。


生身ではないはずの躯だと、生身でないことを一番知っている自身が信じられないほどに、抱き合う躯は、燃えるように、熱く、柔らかく、たくましく、華奢で、広く、愛おしく、離れられたくない。と、遠い街灯がぎりぎり届く距離に、うっすらと形作る陰は1つ。


「・・・漢字、は・・・”澄”を、練習、して、欲しい・・・・」
「・・・・?」
「・・・澄(ジョウ)」
















####


当麻のナビゲーションに従って、レンタカーを運転する張大人。
フランソワーズの携帯をしっかりと握りしめ、液晶画面が示す地図をにらみ、時折フロントガラスから見る夜の街と、運転する張大人を見る。


「・・・どこアルかねえ、ここは」


張大人の呟きに、当麻は答えなかった。
そんな当麻にむかって視線を流し、フロントに反射する対向車線からのライトに小さな目をさらに小さく細めて、独り言を続けた。


「こんな場所を、フランソワーズが知ってる筈ないアルから、きっとジョーと関係ある場所ネ。でも、聞いたことないアルなあ・・・。ジョーが日本を離れる前に住んでいた場所はワタシ知ってるアルからして・・・」


アクセルを踏む力を弱め、ブレーキをへと移動させながら、当麻の様子を窺う。


「次の交差点を左折してください。大通りから離れます・・・あの、シャッターが閉じている、写真屋かな・・・、あの角を、です」
「アイアイね!」


3色の信号機。
防護服と同じ色が点滅していた。


当麻は腕時計の文字盤を見た。
通り抜けていく対向車線の車のライトが、ストロボライトのように当麻に軽い目眩を与える。暗い車内の中、長短の張りが指す数字に、ため息が漏れる。

そのため息を重くさせたのは、ホテルに居るであろう、フランソワーズの”家族”から未だに彼女が帰ってきたと連絡がないこと。

今向かっている先が、フランソワーズに関係があるとは思えない場所。







島村ジョーに関連する場所であるから。



「アイヤー・・・」
「・・・・天王山」


のろのろと、人が歩く速度までに落として、大人が運転する車が進む。
ライトが照らし出す細道に飛び込んできた、案内板。

白のそれに大きく書かれていた、地図。
閉め切っていたカーウィンドウをあけて、当麻は窓から顔をだすようにして、書かれている文字を読んだ。


「山アルヨ・・」
「公園、散道・・・に、ハイキング・コースがあるみたいです・・・ね。その途中に、学校が・・・・多分、専門学校とか、そういうのだと思いますけど」
「こんな時間にジョーとフランソワーズがハイキングするとは思えないアルヨ」
「学校にも用があるとは思えません」
「・・・さっきの新築の立派なお家から、ここまで、フェンスに囲まれた空き地と駐車場に田んぼばっかりネ」
「でも、・・・地図はここを示していて・・」
「この付近にいるいうことアルか?」


---こんな時間に、こんな場所・・・ジョーがフランソワーズを連れてブラブラするはずないネ。絶対に此処じゃないアルヨ・・・ワタシの感は四千年アル!



張対人は、車のエンジンをその場で切った。
彼の持つフランソワーズの携帯電話を貸すアル。と。当麻へと腕を伸ばした。

受け取った携帯電話を、慣れたように操作する。
まるっこい指が迷いなく動くさまを当麻は見つめた。



ーーー・・・・アイヤイヤー・・ギルモア博士。・・・これじゃ、2人が移動を止めない限り、いつまでも追いかけっこネ。



フランソワーズの携帯電話が指し示すのは、彼女が向かった先を順に追うものであり、”今現在”の場所を指し示すようには設定されていなかった。




大人は、2人の現在地を知る。




「当麻くん、ちょうどいいネ。ちょっと話したいアルヨ・・・」


ギルモアが設定した状態に戻し、当麻にフランソワーズの携帯電話を返した。


「なんですか?」


携帯電話を受け取った後、当麻は車内の室内灯に手を伸ばしスイッチを入れた。


「フランソワーズとジョーは、両思い。愛し合ってるネ・・・・・」











====14へと続く



・ちょっと呟く・

っ6!!が、・・・連載を終わらせました(笑)

亀のような進み具合で、申し訳ありません・・・。
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雨が止んだ、そのときには・・・

暖かな日が続いていたので、浮かれて履いたオープン・トウのサンダル。
急な雨に冷やされた空気にさらされ、アスファルトを跳ねる雨水に唇の両端が下がり、への字を描いた。

薄いスプリングコートの下は、キャミソールと七部袖のアンサンブル。
伝わってくる冷気に、固く身を縮めながら、自然と右手が左の二の腕を忙しくさする。

色のない雨が桃色に染まって、幻想的な世界を広げながらも、桜の花びらの絨毯は観るも無惨な状態になってしまった上に、とても滑りやすい。


さらさらとした霧のような雨が長々と続く。



雨さえ降らなければ満開の桜の下で、春の暖かな日差しに見守れながら、ゆっくりとお気に入りの小説を、一文字、一文字、音にするかのように読んでいける。

それは、とっても素敵なことだと、フランソワーズは花見よりも、『花見の場所取り』を楽しもうと
思っていた。


張々湖飯店から車で20分ほどの植物園に付属する公園は、ちょっとした桜の名所でもある。けれど、昨今の”マナーの悪さ”から、なぜか花見をするために”申し込み”が必要となり、申し込み希望者が多い場合は”抽選”となっていた。

運良く、指定した日が平日であったこともあり、許可書がギルモア邸に届いたのが、10日ほど前。

いつの間に、誰が?と言う疑問は言いっこなし。



「許可書が取れても、いい場所が取れる保証なんかないからな!」と、言い出したジェット。
「昼よりも夜桜と洒落たいねえ」と、秘蔵の酒をこっそりと車のトランクに積んだグレート。
「ライトアップは今年が初めてなんだってね。でも、夜の11時までだよ」と、許可書に付属していた、注意事項一覧の部分をしっかりと読む、ピュンマ。

張大人はお店の厨房で今夜のためのお弁当作りに追われて、ジェロニモはイワンと一緒にギルモア博士と子済み博士を迎えにいく。

「まあ、時間になったらそっちへ行くさ」と、面倒なことに巻き込まれないように、さっさと邸を出て行ったアルベルト。

「場所取りって、桜が綺麗に眺められるところにシートを敷いて座っていればいいのでしょう?」と、フランソワーズ。
「1人で大丈夫?」とフランソワーズを訪ねるジョーは、当日はすでにアルバイトの予定が入っていたので、夜にならなければ躯が空かない。


「ええ、大丈夫よ。ゆっくりと桜を楽しみながら本でも読んでいるわ」










***

雨が降り始めて、フランソワーズは慌てて敷いていたシートを畳む。
ちらほらと見かけた、フランソワーズと同じ”仕事”をしていた人たちは、みな携帯電話を耳に押し付けている。


すぐに止むわよね。と、今日の天気予報を信じている、フランソワーズ。
午後に曇りと言っていたけれど、雨が降る確率があるなど聞いていない。


フランソワーズが選んだ、少し広場から外れた場所に立つ桜の木に背を押し付けて、霧のように視界を霞める雨と、空気をピンク色に染める桜を見あげる。

桜の隙間から除く、雨雲の色が和紙のように思えた。


「だから・・・ああいう絵になるのね」


以前にギルモア博士とコズミ博士の付き添いで行った日本画の展覧会を思い出す。


「・・・・」


淡く可憐に、儚く散ってゆく。
雨に濡れて、別の美しさで魅せる。




「・・・・・・・ジョー」




ピンク色の世界に散る音は。




「・・・ジョー」




想い人の名前。






「ジョー・・・・」






1人でいるとき、不意に呼んでしまう、口癖。











「・・・ジョー・・・・・」










雨の冷たさがしみ込んで。
さくらの色が淡く染める。







「・・・・ジョー・・・・」










何度も、音にして散らす、想い。









「・・・ジョー」










閉じた瞼に焼き付いた、桜の景色。に、フランソワーズは想い人を描く。
耳に馴染んだ雨音に紛れてなら、誰にも聴こえないだろうと、描いた人にむかって、降らす桜色の気持ち。








「・・・・・・・好きなの・・」







雲に隠れた青が姿を見せたとき、想像の中で描いていた人が、目の前に、いた。











「ふ・・らん・・そわー・・ず・・・・?」








やっぱり1人でなんて、心配だから。アルバイトを”家の都合で”と言って抜け出した。
途中で、今にも雨が降り出しそうな曇り空が気になり、立ち寄ったのは、24時間開業の店。




途中降り出した雨に、ああ、やっぱり。と、買ったばかりの折りたたみ傘を広げたとき、聞こえて来た声を、彼女の声を聞き間違えるはずはない。






「・・・・雨に濡れる桜が・・・ね?」


反射的に舌が動く。
悲しいほどに、自分の気持ちを隠すのが得意になってしまったフランソワーズは、柔らかな和紙のような雲を見上げて、ため息をひとつ。



「・・・・・・・僕、は・・」



彼女の仕草を追うようにして、ジョーも見上げる。


「雨が降りそうで・・・それで、・・キミが風邪をひいてしまうのが、心配で・・・」
「・・・だから、来てくれたの?」
「・・・・・・・・・う、うん・・・それもあるけど・・・」








桜の下で、キミと2人で過ごせるチャンスだと、思ったことは、言えないままに。




「雨、止むかしら?」


傘をとじて、フランソワーズと同じように桜の木に背を押し付けて雨を凌ぐ。
隣と言えばいいのか、後ろとは言えない、斜めな位置からちらり、と視線だけを彼女へと送りつつ。


「う・・ん。止むといいね」


”好き”の前に降っていた自分の名前が、気のせいなんかじゃないことを確認したく。
けれど、雨の中観る桜も確かに素敵だから。と、自信がもてなくて。



「・・・・綺麗ね、桜」
「うん」












この雨が止んだら。と・・・・・。


賭けてみる。








「さっき、雨に濡れる桜が好きって言った、前に・・・さ・・・・」








end.





*うーん・・・?


写真/空に咲く花
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何だか嫌な予感がする/アタシってばすごーい!
(注意)このお話は、仮面○イダー・ブラックがわからないと、?かもしれません。なので、別のお話と差し替えた、元のお話です。

同じお題で、↓書いてます。

『何だか嫌な予感がする/009の予感は常に正しい?


内容的には、両方とも次の(25)へとちゃんと繋がります。
お好きな方を序章としてお選びくださいませ☆


仮面○イダー・ブラックは1987年(昭和62年)から放送された番組です。
仮面○イダー・ブラックRXは、1988年(昭和63年)から、ブラックの続編として放送されました。主人公を演じた役者さんが主題歌を歌うなど、当時、とっても人気が高く、ブームとなった作品です。
仮面○イダー・Jは、1994年に東映で劇場映画化された作品です。(原作者が製作に関わった最後の作品です)>



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ギルモア邸のキッチン・カウンターに置かれた卓上日替わりカレンダー『水木○げる・浮世絵/妖怪道365』の日付を替えることが、フランソワーズの1日の始まり。

「5月ね・・・」

フランソワーズはふう。と、ため息をついた。

切り取ったカレンダーは、ジョーの部屋にあるスキャナーに取り込まれ、今年の終わりに、インターネットで調べたお店でタペストリーとして作り直してもらうのだ。
(縮小画像で並べられた、1年分のカレンダーとなる予定)365日分の妖怪たちのまめ知識と書き下ろしイラストのそれに、フランソワーズは今からドキドキしていた。


そのドキドキした高揚感が一気にしぼむのは、5月の文字のせい。


「あと・・・15日もあるのよ」


そう、今月の16日はジョーの誕生日。


「どうしましょう・・・」


今月のお小遣いをすでにギルモア博士から前借りをし、絵本4冊、そして、『歴代全員大集合!仮面○イダー・食玩キーホルダー』を全種制覇のために、大人の箱買い(2つ)をしたのだった。


「春は新商品が多いんですもの・・・」


偶然に日曜日の朝、いつもと違うチャンネルに合わせたときに、見てしまった子ども向けアクション・ヒーロー・シリーズの番組を見てしまったフランソワーズは、一気に現在放送中の仮面ライダーにおもいっきり転んでしまった。

週末にたまにいくDVDレンタル・ショップで偶然みつけた、懐かしのヒーロー・特選集vol.1~以下続刊。そこで初めて知った、仮面ライダー・ブラックが、ライダー・シリーズの中でフランソワーズの一番のお気に入りとなった。

その、お気に入りの仮面ライダー・ブラック*は、フランソワーズの携帯電話、ジョーとお揃い子泣きじじいのストラップと並んで揺れていた。

ジョーの携帯電話には、仮面ライダー・ブラックRX*がつけられていたりする。
ちなみに、彼の大学のバイトにでかけるときの鞄には、”仮面ライダーJ”が揺れている。


「(南)光太郎さん、私はどうしたらいいのかしら?」


フランソワーズはカウンターに置いていたキーホルダーに話しかけた。
先月から、予約していた超絶保存版・仮面○イダーDVD全集の発売が始まったために、毎月お小遣いの半分以上が確実に消えていく。


「・・・フランソワーズ、光太郎って誰?」


朝食を取るためにダイニングルームへ入って来たジョーの耳に飛び込んできた、聞き慣れない名前。
その名前に、彼の心臓が跳ねて、固まる。


「光太郎さんなのよ♪」
「だから、それ、誰だよ?」


むっとしたジョーは、早足にフランソワーズへと近付くと、真剣な顔でキッチン・カウンター越しに彼女の前に立った。


「だから、光太郎さんよ?」
「だからっ!!誰だよっ!!」
「光太郎さんは、光太郎さんじゃない♪」


ふふふ。っと笑うフランソワーズに対して、寝起きのだるさが吹っ飛び、不快感丸出しのジョー。


「どこのどいつだっ!って、聞いてるんだよっ」
「ジョーだっていつも一緒にいるじゃないの、光太郎さんとv」


カウンター・テーブルに乗り出したフランソワーズ、その人差し指が、ちょん。と、ジョーの頬をつついた。


「一緒に居る???いつも???」


ジョーの眉尾がくっとあがり、眉間にしわが寄り、なんとも言えない困惑の表情になる。


「そおよ♪一緒にいるでしょ?」


ジョーの頬を突いた指が移動し、キッチン・カウンターの上に置いてある携帯電話を手にとったフランソワーズは、繋げられている、キーホルダーをずいっとジョーの目の前に出した。


「仮面ライダー・・・ぶらっく・・う?」


力の抜けた情けない声に、きょとん。と、した瞳でで、ジョーは目の前のキーホルダーとフランソワーズを行ったり来たり。


「そう、ブラックの変身前は、南光太郎さんっておっしゃる素敵な人なの♪」
「・・・・す、素敵?」
「かっこいいのよ!ブラックまで長い道のりだけど、がんばりましょーね!!」
「え?」


フランソワーズの言葉に、なんだか嫌な予感がする、ジョー。


「これからお夕食の後は毎日30分、ライダー・タイムよ!1話も見逃したらいけなくてよ?とってもそれは失礼なの!」
「・・・毎日!?」
「毎日って・・・そんな、ボクだって見たい番組や映画が」
「だって、がんばらないといけないんだもの!」
「何をそんなに・・がんばらないといけないんだい?」


ジョーは少しずつフランソワーズから距離を取る。
フランソワーズが最近ヒーローものにハマっていることは知っていた。
今、フランソワーズが好きになっていく(ハマっていく)仮定を目の前にして、フランソワーズは1つのことに興味を持つと、とことん徹底的に彼女が満足するまで探求していくタイプであることを、悟る。


「だって、今までの全シリーズが毎月15話~30話ずつ届くのよ!」
「・・・ライダー・シリーズってまだやってる・・よ、ね・・確か・・・」
「ええ、現在はライダー・ディケイド♪」
「でぃ・・けい、ど・・」


ああ、そうだ。っと、ジョーは思い出す。

日曜日の朝早く、フランソワーズが番組が始まる前になると、ジョーを叩き起こしに来る原因の番組。
実際、リビングルームに降りてもソファの上で夢の中のため、一体何の番組を見ているのかすっぽりジョーの頭から抜け落ちていた。

フランソワーズは、とにかく誰かと一緒にテレビがみたいらしく、ジョーが駄目なときは夜の時間だろうが、昼の時間で研究室に籠っていただろうが、イワンを抱いて観る。


「ライダー・ディケイド (Decade)はラテン語で10の意味、英語で、10年紀って意味なの。ちょうど平○・シリーズ10作目って言う意味が込められているわ!それにね、その平○シリーズ歴代の仮面○イダーが総登場する、クロスオーバー的な作品でもあるの♪」
「ふ・・ふーん・・・」


ジョーの予感が現実のものとなろうとしていたのを回避すべく・・。


「それでね!」
「あ、ね、フランソワーズ・・・ほら、ボク、もう行かないと!!!」
「え?」
「ごめんね、話しはまた、帰ってきた後に聞くから!!」


じりじりと後退していた間合いを見計らって、ダイニングルームを出て行く、ジョー。
背中にべっとり汗をかいているのは、気のせいではない。


「まって!朝ご飯は~?」
「また、明日!」


意味の解らない返答をもらい、呆然とするフランソワーズの耳にギルモア邸の玄関のドアが閉まる音が聞こえた。


「もっ!!」


朝ご飯を食べないなんて!っと、ご立腹のフランソワーズ。だ、けれど・・・。


「あ!!!」


名案を思い付く。


「○×遊園地で確かっ!!」


フランソワーズは切り取ったカレンダーの紙と一緒に、ジョーの部屋のパソコンへと一目散に駆け出した。









***



ギルモア邸を出て、走って駅までたどり着いたジョーは、駅前のコンビ二でおにぎり2個と珈琲缶を買った。


「あ・・」


電車を待つ間、駅構内のベンチで手に取ったおにぎりが、ぞくり。と、背筋に普段感じる事のない寒気を感じたせいで、ジョーの手から転がってホームに落ちた。


「・・・・・・どうも、嫌な予感がする」


---防護服着てるときと、着てないときで、どうしてああも・・変わるのかなあ・・・・。


特に、このごろその差が激しくなっている気がしないでもない、ジョーだった。








***

「そうよ!これよっ!ジョーのお誕生日は、遊園地で○イダー・ショーだわッ!!」


おでかけなら、ギルモア博士がお小遣いとは別に交通費を出してくれる。
(おねだり(フランソワーズのみ有効)すれば、『何か土産でも買って来ておくれ』と、臨時収入がつく。)
フランソワーズは早速、ライダーショーのチケットを2枚(ちゃっかり学生料金)をジョーの部屋のパソコンから購入した。




「ランチはジョーのお誕生日スペシャル♪で、彼の好きなのを、たああっくさんお弁当にすればいいのよね!」


それなら、ギルモア邸の食費でまかなえる。


「アタシってば、すっごーい!!」


きゃあああ♪っと1人で盛大に自分自身に拍手をする。


「仮面ライダー VS. サイボーグ009ねっ!!」


遊園地の着ぐるみショーに、観客参加の申し込みがあり、ちゃっかりジョーの名前を書いて申し込んだのだ。


そのころ、珍しく朝早くにダイニングルームに現れたギルモアが、フランソワーズの姿を探してうろうろしていた。


「フランソワーズや・・・・。腹が減ったんじゃが・・・・」


いつものフランソワーズなら、その声をきちんと聞き取っていただろう。が、今は自分の名案に浮かれていて、聞こえていない。
















end.


25)へ続く

*・・・・ 遊園地でお誕生日デート・・・ですか。
 もじもじしてなーい!!

お誕生日へいきます!
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気づいてほしい、でも知られたくない/『C』と『R』の間に。
「気持ちいー!」


ぐん!っと両手を水色の空にむかってのばした。


「いい天気だね」


助手席から降りた彼女に続いて彼も、数秒遅れて運転席から降りる。
ばん!っと勢いよく車のドアを閉め、キーをジーンズのポケットに突っ込みながら、言った。


「ね!」


運転席側に立つ彼に振り向きながら、開けっ放しにしていた助手席のドアを閉める。


「桜は今年、観られなかったね」
「残念・・・お花見の予定がなくなっちゃうなんて」
「来年の楽しみに取っておこうよ」
「待てないわ!」


ふふ。っと笑い、見渡すかぎり人工物は自分たちが載って来た車しかない、世界へと視界をうつした。


「待たなきゃ駄目だよ、もう散ってしまったんだしさ」
「そうねえ。こういうとき、の○太くんのデスクの引き出しが必要ね!」


ミッション(004、005,008のみが動いた)事後処理のために、駆け回った2週間。
気がつけば、春は急ぎ足で過ぎ去ろうとしていた。


「・・・異次元ポケットじゃなくて?」
「ええ、だって過去に戻れるもの、だから桜の時期に帰ってもらうのよ!」
「なんだか面倒だよ、タイム風呂敷を桜の樹にかけたらいいんじゃない?」


移動はほどんど車(レンタカー)だった。
ラジオも飽きた。
ジェット、アルベルト、グレート、ピュンマ、の”お気に入り”を彼らのituneから失敬してきたが、それもすでに次に何の曲が来るか覚えてしまうほどに聴いた。
そして2人が持ち込んだ曲たちも、お気に入りのはずが、すでにお気に入り”であること事態に飽きてしまった。

ラップトップをインターネットに接続して動画を流したりもしたけれど、エア・ネット接続がなかなか上手くいかない距離にまで足を伸ばす事になってしまったために、途中でポーターブルDVDを購入。
ラップトップでもDVDを観る事ができるが、それは”今回の事後処理”に必要な細工がしてあるために、避けられた。

ポーターブルDVDと一緒に購入したDVDにも見飽きたころ、旅の途中で日本から送られきた重要書類(データ)のカモフラージュとして一緒に入っていたDVD(何かとっても夢中になれそうなDVDを送って。と、フランソワーズが催促した)は、リージョンコード・フリーで焼かれていた、日本が誇る猫型ロボットご長寿アニメ、(各メインキャラクターの声優が変わる前)の映画全巻セットだった。

車の旅の間、ずっと齧りついて観ていたフランソワーズ。
運転しながら、フランソワーズにつき合おうことになったジョー。


旅の終わりには、どの映画にどんなアイテムが出て来たかを答えることができるようになり、各映画の主題歌、エンディングを空で歌えるようになっていた。
2人だけの超マニアッククイズ大会も開かれて、小さい頃に観ていたことのあるジョーは、フランソワーズの知り得ない質問をして、彼女をからかいつつ、彼女の好みにあったDVDをセレクションしたグレートに、少しだけヤキモチを焼いたことをごまかした。
(ホラー・妖怪好き、水木ファンで、ご当地キャラ?、食玩・コレクターなので、・・・一般に愛されている猫型ロボットにハマるなんて想像もできなかった)


明日の今頃は日本へ戻るために空の上。

空港で、ジェット、ピュンマと落ち合うことになっている。
アルベルトは、1週間遅れで日本へ戻ってくる。


「ジョー、タイム風呂敷はロマンチックじゃないわ!」


ギルモア博士、フランソワーズの合同誕生日会以来、久しぶりに家族が揃う。


「フラソワーズ!」


運転席側から、ゆっくりと歩み寄って来たジョーを無視するかのように、フランソワーズはきゃあー!っと歓声をあげながら、田舎道からはずれ、視界を水色と緑で半分にされた世界へと駆け出す。

燃費の悪い軽自動車がやっと通れる舗装されていない道を挟むかのように広がる、草原へと。


「ジョーっ!!」


50mほど走った先で、振り返り、大きく両手を振るフランソワーズに、ジョーは目を細めて、手を振りかえす。
古いヨーロッパの映画を観ているような、そんな光景が、ジョーの目の前に広がっていた。


「いや・・・それより開拓時代?・・大草原の小さな家?」


フランソワーズにむかって振っていた手を止める。と、ジョーは走り出した。


「30秒間!ボクから逃げ切れたら、今日のランチのデザートはフランソワーズが決めていいよ!!」
「?!私っ!トプフェンクヌーデルが食べたいのおおっ!」
「だったら、がんばって逃げなよっ!ボクが勝ったらポティツェだからっ」
「きゃああああっ♪だめええっ」


ざあああっと、吹き抜ける新緑の風が2人を追いかけた。















####


「何してるの?」
「ん・・・・」


ひとしきり広い草原を走り回ったあと。
2人は視界ギリギリに自分たちが乗って来た車が見える距離に、並んで座った。

スカートが汚れることなど気にせずに、その場に座ったとたん、熱心に草花へと視線を移したまま黙りこんでしまったフランソワーズを、何にも区切られることなく広がる日本とは少し色味の違う空を眺めながら尋ねた。


「・・・・何か落とした?」
「ん・・・」


「もうちょっとしたら、行くよ?」
「ん・・・」


「同じ空でも、日本と違うと思わない?」
「ん・・・」


「ネットで子泣きじじぃのTシャツが売ってたよ?」
「もう、持ってるわ・・・」
「え?」
「ん・・・・、ジェットが誕生日にくれたの・・・」
「・・・・そうだっけ?」
「当日じゃなくて、クリスマス前に・・・見つけたから・・・・・・・誕生日プレゼントなって・・・・」
「ふうん・・」




10分後。



少しずつ移動して、先ほどいた場所から1m弱ほど左に進んだ2人。



「・・・・もしかして」
「ん・・・」







「これ?」
「!」




ジョーの手が、緑色の葉をフランソワーズへと差し出した。


「そう!四葉のクローバー、幸運の葉♪」
「・・・・えっと、あのさあ」
「すごいわ!ジョーっ!!」
「あの、これってさあ、それだけの意味じゃ・・・」
「さっきからずうっと探しているのに、見つけられなかったのよ!もうっ」
「・・・フランソワーズにあげるよ」
「いいの!?」





kiririkuzerozeromania










---知っているのかなあ。


ポケットから取り出したレースのハンカチに大切に、ジョーからもらった四葉のクローバーを包み、助手席にいるフランソワーズはご機嫌に、西遊記をモチーフにした猫型ロボット映画の主題歌を、ちょっとおかしなリズムと外れた音で歌っていた。














四葉のクローバーを英語で書くと、ある意味が隠れていること。



『c.l.o.v.e.r』
『c』と『r』」の間にある意味。













その、意味に、気づいてほしい・・・でも、今はまだ、知られなくない、ような・・・。










「今度また見つけたら、フランソワーズにあげるよ・・・」
「ふふ、いいの?」
「・・・・うん」
「私がジョーの幸運を取っちゃうわよ?」
「別に、いいよ。フランソワーズみたいにボクは欲張りじゃないから」
「も!ひどいわ、別に欲張って、あれもこれも幸せになろうなんて思ってないわよ!」
「まあ、ささやかに、欲張ってくれたらいいよ、ってことで。今日のデザートはポティツェね」
「ねえ、欲張って2つ頼んでいい?」


フランソワーズの言葉に、ジョーは微笑む。

「今日は幸運(ラッキー)だからね、いいよ」






四つ葉のクローバーに隠れている言葉を、キミが見つけるのが早いか・・それよりも、ボクが・・・。
























end.



*2人の出張(?)費用は決まっているので(笑)ポータブルDVDやら何やらを買ってしまい、節約のためデザートは1つを半分ことなっています。
お小遣いももらってますが、フランソワーズは家族のお土産に使い切ってしまいました。
ジョーのポケットマネーで後半過ごしてます。が、ジョーはしがないアルバイト。
ユーロにちょっと赤字気味(笑)

・・・どら○もんのアイテムがあれば、93はサイボーグじゃなくて、人間に戻れるとか、言いっこなしですよ!・・・って私だけでしょうか?・・タイム風呂敷あれば、とか。色々考えてしまいました。



**もじもじ入り口のイラストを『ぜろぜろマニア』の水無月さまからいただきました!**
せっかくなので、イラストをもとに妄想いたしました。
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待ち遠しいよ。
桜前線が通過した後に、残ったのは、さわやかな黄緑色の生命力溢れる新芽たち。
木々を彩っていた華やかさは去ったけれども、さっぱりとした空の青と、黄緑色のコントラストを見上げたフランソワーズの腕に、目覚めたばかりのイワン。
むにむにとイワンが揺らすプラスティックのまあるい形ををした、黄色のおしゃぶりが日の光を弾いていた。

目に見えて肌で感じられる、冬から春へと移り変わる季節のはっきりとした変化ではない、毎日、呼吸しているのが当たり前の中に、見落としがちな小さな変化。


綺麗な顎をついっとあげて。
直射日光を避けるように、大きな桜の木の下に身をよせたフランソワーズ。を、見上げるイワン。


この木から桜の雨が降っていたころ、イワンは夢の中だった。
夜の時間の前には、自分の親指の爪ほどのつぼみがぽつぽつと顔を出し始めて、目覚めたときには、それは消えて、今度は新緑の芽がぽつぽつと、顔を出していた。



「桜を逃しちゃうなんて、残念ね、イワン」
「来年ガアルヨ」


赤ん坊独特の体温の高さを胸に抱きながら、その口からこぼれた言葉の冷静さに、苦笑するフランソワーズ。


「待ち遠しい?」


ジョーのように、軽くイワンを”高い、高い”をすることが、ちょっと怖いフランソワーズは、抱き直
すようにして、胸の位置から肩の位置へとイワンを移動させた。

少しでも、彼をぐんぐんと伸びる枝に近づけるように、と。


「ソウデモナイ」
「桜は嫌い?」
「特別ナコトナンテ何モナイ、タダノ植物ダヨ」


つん。と、すまして、桜の花に何の情緒も抱かないイワンに、フランソワーズはくすっと笑った。



「嘘つきね、イワン」
「?」
「あなたはとっても嬉しそうに、にこにこと、ずっと笑っていたのよ」






***




夜の時間のイワンが満開の桜を愛でられないことを、一番悲しんだのは、誰でもないジョーだった。

花見のため?その肴が目当て?どっちなのかは今ではどうでもいいかもしれないけれど、集まった家族たちとでかけた。

そういうとき、夜の時間のイワンは、クーファンの中で眠らせておくのが常だ。けれど、ジョーは花見の間中、イワンを膝に抱いて、ことあるごとに彼に話しかけていた。


「眠っているときも、おしゃぶりって、不思議なんだけど・・・」
「あら、駄目よ・・ジョー。なくなったらイワンの機嫌を損ねるわ」


そんなフランソワーズの注意を聞きながらも、そっとイワンのおしゃぶりを取り除く。


「・・・ね。みてよ、フランソワーズ」
「あ、ジョー・・・おしゃぶりを戻して」
「笑ってるよ、イワン」








眠っていてもね、フランソワーズ。
イワンはちゃんと解るんだよ。








ジョーは芝生の上に敷かれていたビニールシートから、立ち上がった。
腕に抱くイワンを、咲き誇る桜の重さにしなだれて低くなった枝へと連れて行く。
フランソワーズも、ジョーについて、行く。


「桜だよ・・・たくさん、たくさん、綺麗に咲いてる、イワン。綺麗だよ、来年はちゃんと起きていようね」









いつもはおしゃぶりを吸っているために、見えないイワンの口元。

「笑ってる・・・ね?フランソワーズ」
「・・・・見えてる?イワン・・・とっても綺麗な桜よ」


ジョーは腕の中のイワンをフランソワーズの方へとみせた。




「僕たちの目を、通して、僕たちの・・・今の気持ちを感じてくれてるんだよ」


イワンのくちびるが、おしゃぶりを恋しがるようにむにゅむにゅっと動く。と・・・。



「あ、笑った・・・、ジョー、イワンが笑ってるわ」
「うん」










満開の桜の下。
そよぐ風に舞うはなびら。





「フランソワーズ」
「なあに?」


にこにこと、滅多に観る事が出来ないイワンの満面の笑みに、フランソワーズは釘付けになる。







「来年の桜が待ち遠しいね」
「また夜の時間かもしれなくてよ?」
「・・・意地悪だなあ、フランソワーズ」


フランソワーズはジョーの腕からイワンを抱き受ける。
イワンを抱いたフランソワーズごと、ジョーは抱きしめる。




ジョーの背後で、3人を冷やかす家族たち。
そんな家族たちにむかって首だけひねり、ジョーは言った。




「来年は4人家族かもしれないよ」
「!!」




家族たちが遠くで驚きにひっくりかえる。








「はは、・・・冗談だって」
「もうっ!そういう冗談はいやよっ。ジョーの方が意地悪だわ!!」


背中側から抱きしめられているフランソワーズは、ジョーへと振り向き様に、彼の腕から逃れようとするが、ジョーは腕に力を入れて、逃さない。


「待ち遠しいね、イワン」


フランソワーズの腕の中にいる、イワンに話しかけた。












***




『ソウカモシレナイ』
「?何か言った、イワン?」



フランソワーズは、昼食の準備の時間が近付いている事に気づき、抱いていたイワンをベビーカーへと移した。

短い朝の散歩が終わる。










「僕テキニハ、ふらんそわーず似ノ妹ヲ希望シテオコウカナ。ガンバッテト、じょーニイッテオイテ」
「?!」





待ち遠しいよ、ジョー。







桜が?
それとも?











『ソノ前ニ男トシテ”けじめ”ヲ ツケナイトネ』
---意地悪だなあ・・・イワン・・・・。











フランソワーズの歩調にあわせて進むベビーカーの中で、イワンは笑った。



「じょーガ邸ニ帰ッテ来タヨ、夜ニハ、どるふぃんデ出発スルミタイ」
「まあ、そうなの?急いで帰りましょう!」










待ち遠しいよ。


桜が。


ジョーの、男のけじめ(?)が。






もしかしたらの、新しい家族が。








待ち遠しくて、わくわくするね。








イワンは嬉しそうに、笑った。











end.













*やっと近所でも桜が咲きました!
そして、がんばって"<br>を打ち込みました(笑) めっちゃ面倒です・・・。  





写真/空に咲く花 ⇒ 続きを読む
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願いを夢に描く。
ステージIの眠りから、ステージIIIまで、およそ2日かかる。
その間、無意識に半径700m以内にいる何らかの思考の念が僕の脳に様々な影響を与える。

寝入りどきに見る夢は、その人物と僕との関係に大きく左右されることが多い。

だいたいは、邸にいる家族の夢だけれど、不意にギルモア邸近くを通りかかった乗用車を運転する男の意思が飛び込んできたりもする。
パチンコで消えた今月のお小遣いを、なんとか巧く奥さんから割り増してもらえないかと、あれこれ計画を立てていた。
その計画がぽん!っと僕に伝わってきて、機嫌がよければ、たまにアドヴァイスしてあげたりもする。




その逆もあったりして。






完全なステージIIIに入ると、僕は外界から完全に切り離される。

ステージIVのとき、僕自身まだちゃんと分析できていない。
この状態のとき、僕の能力はとてもナチュラルで安定した状態で解放されているのではないかと考えている。

その辺りは、今後のギルモア博士との研究課題として進めていく予定だ。






目覚めの時間が近付くころ、僕は意識的にある思考の念を探し始める。
その念のご機嫌具合によって、僕の寝起きの良さが決まると言っても過言ではない。
いつから、そういう習性ができたのか、覚えていない。

僕はそうすることによって何からの精神安定を求めているのだと、考えていた。




僕は001/イワン・ウィスキー。



父による脳改造手術と、0歳児の状態でのサイボーグ化により、成長するのか、しないのか、わからない躯になった。



15日ごとに訪れる、昼と夜の時間。

人の世の1ヶ月が僕にとって1日にも満たない。






無防備な赤ん坊の姿の状態で”夜”を迎えるときの不安は、ときには僕のテレキネシスの暴走に繋がる。
(ここ数年はそういう感情的な子どもっぽい暴走はしなくなったけどね)



それは、昼を迎えるときも同じだった。
(けれど新しく覚えた”習性のおかげで滅多に暴走しなくなったんだ)





目覚めたとき、まったく知らない人間(たまに違う異星人)に囲まれていたことが何度あったことか。






やれやれ。
天才(エスパー)も大変なんだよ。


せめて、この躯が・・・大人であれば、少しは状況が違っていたかもしれない。って、何度思ったことか。















たとえば・・・。











「どこへ行くの?」


ジョーの声。


「イワンのミルクの用意をするのよ」


僕が探していた人の、声。


「え?・・・・まだ起きてないよ?」



何度目かのレム (REM) 睡眠に入った僕は、半覚醒状態。
しっかりと彼らの声を捉えることができる。
そして、自分がどこで、どういう状態であるのかも。


「もうすぐ起きるわ、だってイワンが呼んだんですもの」
「呼んだ?・・・・イワンがキミを?」


僕はどうやらリビングルーム用のベビーベッドの中にいるようだ。
ジョーの思念がフランソワーズのよりもずっと強いのは、僕について考えているから。


彼のこころを覘いている訳じゃないよ。
かってに流れ込んでくるんだ。

半覚醒状態の僕の場合、ちょっとしたことで、簡単に人物と波長と合ってしまう。これは遠隔感応力が強くなっているためだ。精神感応力とも言うかな?でも僕の場合はその距離範囲が広いから、前述の遠隔感応力の方がピッタリとくる。
これらのある程度のコントロールは可能だけれど、完全に覚醒したときと比べれば40%以下。

こういう時は気をつけないと、意外と強く相手と何もかも共有してしまって、精神的ダメージを負ってしまう場合がある。



だから、僕はあえて彼女を追う。



守られて、愛されている、彼女を追う。





「・・・ボクには何も聴こえないよ?」
「聴こえるんじゃないの、感じるのよ」
「・・・・・何も感じないk・・・・イワン?」


ジョーが僕を抱き上げた。
たくましい腕の中に、抱かれる。













たとえば・・・、


そう、たとえば、もしも僕が改造されたのが、ジョーと同じ年だったら。
僕が彼と同じ視線で物を観て、聞いて、感じることができる、大人の躯であれば。








彼女が僕を、では、なくて。

彼が彼女を腕に抱く、ように、僕が、彼女を・・・。














「・・・・駄目だよ。フランソワーズはボクのだから」










彼女を追う僕を、彼が遮った。















僕は彼女を追う。
彼女のこころを追う。


たくましい腕に守られ、支えられている、彼女を追う。

















これは僕の夢。

ほんのつかの間に体感する儚い願い。










僕の腕が003/フランソワーズを抱きしめて、守り、支えて、愛し、愛される、009/ジョーであれば・・・・。





と。












夢をみる。











「・・・・イワン、君がボクと同じ年だろうと、立派な男だろうと、フランソワーズはボクのだよ」










・・・・・・・夢くらいみさせてよ。



「ダメ。夢だろうと、なんだろうと、ダメなものはダメ」









ったく!





















僕はジョーの腕の中で思いっきり盛大に激しく、泣き叫んでやった。





「ジョーっ!!!イワンに何をしたのっ?!」


キッチンから駆け出して来るなり、僕をジョーの腕から救出してくれる、フランソワーズ。


「なっ!何もしてないよっ!!」
「嘘!!」










へっへーん♪
今日の午後のデートはこれでキャンセルだね!
















end.






















*・・・イワンはミステリアスです。

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