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possibility

気がつけば、彼はいつも同じTシャツを着ていた。
そのTシャツが洗濯されているときは、別のTシャツを着ているけれど、それもそのお気に入りのTシャツが洗濯に出されているときに必ず決まって着る、Tシャツ。
そのために、彼の服装はジーンズ+お気に入りTシャツ、洗濯中に着るTシャツ、・・とパターンが決まっていた。

首周りがのびかけているけれど、彼の躯にぴたりと合うほどに馴染んでしまっている、それ。
洗いざらしの生地の手触りが、長く彼が愛用していることがうかがえた。

そんなTシャツが洗濯中だと、なんだか申し訳なく思ったフランソワーズは、その日、リビングルームでのんびりテレビを見ていた彼にむかって「すぐに乾くから、待ってね」と、一言言ってみたら、彼の顔に描かれた?マーク。それと一緒に、なにが?と聞き返して来る視線にたいして、あら?と首を傾げた。
彼女は反射的に、「ううん、なんでもないの。」と応えて、ちらり。と、リビングルームから見える庭に干している洗濯物たちに視線を向けた。


お気に入り。と、言う訳ではないらしい。
ただ、それが着慣れているから、手に取るだけ。のようだった。



ああ、そうだわ。と、思い出したようにフランソワーズは、リビングルームを出てランドリールームに置いている、洋菓子が入っていた缶の箱を持って戻って来た。
その缶の箱があまりにも可愛かったので、捨てるのがもったいなく思ったフランソワーズが、それをランドリールームに置いて、”ポケットのもの”を入れておく箱にしたのだ。

そんな缶の箱の存在を知ると、同居人たちは自然と意識して洗濯前には自らのポケットの中身を確認するようになり、いつしか、ポケットの中を確認しないまま洗濯物を出し続ける、ジョーのポケットの中身を保存する専用の缶の箱。に、なってしまった。


缶の箱の中は、ポケットに押し込まれてくしゃくしゃになった数枚のレシートに、1000円には満たない、小銭たち。
4つほどスタンプが押されたカードと、街で配られていたどだろうポケットティッシュ。
メモをしていたのだろうポストイットの残骸と、印刷された文字が握りつぶされたような折り目のせいで読めなくなった、名刺。
使い捨てボールペン。
チューイング・ガムの紙くずが丸まっていたり、そのままの形を綺麗にのこしていたり、色々、たくさん。
その紙くずのイラストが示す香りが缶の箱にうつっていた。


缶の箱の蓋を開けて、それを彼に渡す。
ゴミだと解っていても、プライベートなポケットの中のものなので、フランソワーズはそのままそっくり缶の箱に保存していた。

彼は、「ああ、ごめんね。いつも」と、”いつも”同じ台詞を言いながら缶の箱を受け取って、中のものを選り分け始める。
選ばれたものは再び彼のジーンズのポケットにしまわれて、残りは屑篭へ直行。

「このガム、梅味なんだけどさ、あんまり酸っぱくなかったんだよ」

つまんだチューイング・ガムの紙くずをフランソワーズに見せながら報告した、それもひょい。と、リビングルームの4つ角の1つに隠されている屑篭へ投げ入れられる。

「梅の味が酸っばくないとダメだなんて、そんなの変だわ」

空っぽになった缶の箱を受け取り、蓋をしながらフランソワーズはジョーに言った。

「・・・うん。そうだね、確かにそうかも。・・・じゃあ、あれはあれで美味しかったってことだね」

フランソワーズの言葉に少し考えるように、瞳がきゅっと右斜め上に動いた後に、ジョーは言った。

「決めつけるのは良くないわ、何事にもよ?色々な可能性があるのに、それを知らないまま消しちゃうことになるわ。ね?」

ジョーはお行儀よく、うん。と首を縦に振ってフランソワーズの台詞に同意すると、また、先ほどと同じようにリビングルームのソファに座ってテレビを見始める。
空っぽになった缶の箱をジョーから受け取ったフランソワーズは、ランドリールームに缶の箱を戻すためにリビングルームから出て行った。

「そうだよね、決めつけるのは良くないよね」

フランソワーズがリビングルームからいなくなって数秒間をあけて、独り言を呟いた。
うん。と、フランソワーズに向かって首を縦に振ってみせたのよりも、力強く、自分の台詞に同意を示すように、首を縦に動かした。






キミへの気持ちが・・仲間だから、ダメだなんて・・・・さ・・・・。
決めつけなくていいよね。






end.













*私はガムが苦手です。自分で買うことはないです。
そして、梅味なんてもってのほか!!
梅・・・食べられません。そうなんです、酸っぱいのはさっぱりダメなんです。
それにしても夏のSSじゃなかったのかーっ(涙)
・・年下の男の子を意識して書いたんですが、なってない。なってない。

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Morpheus
頭が妙に重く感じたと同時に、目の周りがじんわりと温かくなる。
不意にこみ上げて来る空気の固まりが喉もとで止めようとしたけれど、かみ殺して散らす事は不可能だった。

隠すように手で覆い、口が開いてしまうのを必死でこらえる。
じんわりと温まった目のまわりの温度より、少し熱い涙が悲しくもないのに、目尻に溜まる。

意識が遠のいていくというよりも、心地よい場所へと誰かに連れられていく感覚。
すべてから解放されていいよ。と、囁かれているような、気分。
重くなっていく瞼はニュートンの法則にのっとって、リンゴがなぜ落ちるのか。の、疑問と同じく、重力に従って落ちていく。

抵抗しようとしても、無駄なのよ。と、自分の中でだけ言い訳を繰り返した。



睡魔の甘くて優しいささやきと、さらさらとした感触の、香り良い眠りの粉。
少しだけ、不思議な出来事を信じているからこそ、おとぎ話の法則に従わないわけにはいかない。


---睡魔の存在を不定しては、いけないわ。

そんな言い訳を頭に浮かべているときには、すっかり深い夢の中であることに、本人は気づいていなかった。

必死で睡魔と戦っているようで、実はそれ事態が夢の中での出来事だったことを。







かくん。と、彼女の首が傾いた。
その動きを見守っていた人が、腕を伸ばす。

「・・・・」

ゆらり。と、揺れた頭はまた、元あった位置に戻る。
これが船を漕ぐ、と言うことか。と、妙に納得しながらジョーは姿勢を正して、フランソワーズを覗き込んだ。

しっかりと閉じられた瞼。
それを縁取る繊細に細い睫毛の長さに驚き、くるん。とカールしている事を発見する。
すっと通った鼻筋に、丸い形よい鼻頭が少しだけ角のない窓からの光を反射させていた。

ずるいよな。と、誰に言うでもなく呟いたジョーは、フランソワーズの躯をそっと包み込むように腕を彼女の肩へとまわして、自分の方へと体重をかけさせるように、誘導させる。
首もとにもたれさせた、フランソワーズの頭を軽く撫でながら指に絡ませた蜂蜜色の糸のゆれる光に瞳を細めた。



サイボーグは”サイボーグ”として優秀であっても。
人として完璧ではなく、機械としても、完全ではない。

人と機械を両方を持ち合わせた”サイボーグ”でも。








どうしようもない、こともある。

「・・・ごめん・・・・・、こんな方法でしか、キミに安らぎを与えられなくて」

首もとにかかる重さに、唇を寄せてキスを1つ。
彼女の望むことをすべて叶えたい。それが、自分が009である証のような気がしていた。







けれど、史上最強の戦士と言われても。
それぞれのマイナス部分を、人としての脆さ、機械としての不都合さを併せ持つ。

プラスな部分だけを寄せ集めたら、どれだけ楽だったか。










『どうして?』

迎えに行った先で聴いた、フランソワーズの口癖を涙混じりの声のままジョーは耳奥で再生する。
その、”どうして”に応えられない自分の弱さを誤摩化すように、魔法の粉を忍ばせた唇で彼女の声を塞いだ。







---キミが目覚めるまでに、”どうして”の声になんらかしらの答えを見つけなくては。

深い眠りのそこにたどり着いただろうフランソワーズの規則正しい息づかいを、胸に受け止めて、ジョーは想いを巡らせる。




この世にキミを悲しませる全ての、原因。
キミの”どうして”に応えられる男になりたい。



ジョーはもう一度、花の香りがするフランソワーズの頭部に唇をよせた。
2人が座る座席シートの前に取り付けられている、四角い液晶モニターが、まもなく到着する空港までの距離と時間を示し、白い点線の矢印が、小さな島国を差している。















「これ、かな・・・?」

重たいカートを押して通り過ぎようとしたアテンダントが、ジョーの声に反応して2人へと決められた微笑みを貼りつけたまま視線を移す。
ジョーはその視線に微笑み、呼びの毛布がもらえるか。と、頼んだ。





















---キミの口癖を直す、そんな言葉を言わなくていいようにする。が、答え。






目覚めたフランソワーズはきっと文句を言うだろう。


『どうして?』




舌奥に残る苦みに気づかない、003ではないから。








end.







*タイトルの モルフェウスは、ギリシャ神話の神様 ー夢の神; Hypnos の息子さんです。





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