RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
告白のチャンスは突然に
全てを終え、愛車を運転して帰路につく。
ハンドルを握る手がいつもよりも軽い。
躯は今まで肩にかかっていた責任から解放されて、疲れているはずなのに、普段よりもリラックスしていた。心地良い達成感から味わう疲労は、自分が生きている価値があるとしみじみと胸に広がり、全身を包み込む。

車の窓は黒い鏡となって車内を写していた。ちらりと右横にいるもう1人の自分に視線をむけたとき、すれ違った車のライトが眩しすぎて、瞳を細めた自分が映っていた。
その光に助手席で眠る彼女が起きてしまわないかと、少しだけ緊張しながら、車を走らせ続ける。


窓に頭を預けた彼女の静かな寝息は、エンジン音に邪魔されて途切れ気味なボリュームのカー・ラジオのせいで聞こえてはこない。
いつの間にか瞬く事なく降ろされた、瞼を縁取る睫毛の落とす影が、車道脇に立つ寂しげな白に彼女の頬を一定のリズムで左右にゆれていた。

『お待たせいたしました、このコーナー、密かに人気があるんで嬉しいですよ!』

街から離れた国道で、キャッチできる電波は限られるため、放送局の選択肢などなく、ノイズがないチャンネルに合わせた。

『懐かしドラマ主題歌特選!!ああ~、これこれ好きだったっと懐かしい気持ちで、当時の自分もついでに振り返ってくださいね!』


ラジオから流れ出したイントロに、ああ、懐かしいな。と、呟いて。

「・・・なにから、伝えれば、いいのか・・わからないままときはながぁれて♪・・」
「・・・・・・・・」

歌詞を覚えていた自分に対して、笑いつつ。

「誰かが誘う 甘い言葉に♪」

そのまま歌い続けて。

「・・・あの、風になる」

彼女が僕の声に起きてしまったなんて、気づかないままに。

「あの日、あのとき、あの場所でキミに出会えなかったら・・・」

歌い終えた、とき。

「・・・初めて聴いたわ、009が歌ってるの」
「!?」

フランソワーズは預けていた背をバックシートから離し、彼女の躯を軽く拘束するシートベルトをひっぱりながら腕を伸ばしてカー・ラジオをoff。

「・・・・・・・・・・・黙って聴いてたの?・・ひどいよ、寝たフリしてたわけ?」
「とっても素敵な歌声だったんですもの、起きない方がおかしいわ」

慌てた僕は、運転中にも関わらず、彼女へと振り向いた。

「ふふ、よそ見運転はダメよ、いくらあなたが”最強のサイボーグ”でも、ね」


アクセルを踏む足を押して、スピードを上げるとメーターがくん!と跳ねた。

「もう一回、歌って」
「やだよ」

ハンドルを握る手が急激に汗ばみ、ラジオの曲に合わせて調子よく歌ってしまった自分から視線を外すようにまっすぐにぽつぽつと灯る信号機へ集中する。

「なにから伝えれば♪いいのか、ぼくらは見知らぬ、2人のまま・・?」
「・・・・・・飛ばしすぎだよ、それ」
「だって、他のところは覚えてないもの」

再びバックシートに背をあずけたフランソワーズが、首だけを傾けて僕を見ている。
どんな瞳を僕に向けているのか、そちらへは絶対に視線をむけないと思う僕だから、わからない。

けれど・・。


「・・・・・・・・・・・・・このままカラオケでも、行く?」
「あら、素敵ね。009とカラオケなんて想像したことなかったわ」
「カラオケに誘うの自体、初めてだよ」
「と、言う事は。誘われるのね、いつもは」
「誘われても、行かなかったけどね」
「それじゃあ本当に”カラオケ”自体がが初めてになるのかしら?」
「初めてってわけじゃないよ・・・。ほら、張大人の店」
「あ、そうだったわね。宴会用の部屋にはカラオケセットがあったわ、ギルモア、コズミ博士専用になっちゃってるけれど。009が歌ってるの見た事ないわ」

クスクスと笑う声が、耳に届く。

「僕自身、張大人の店で歌った記憶なんてないから、歌ったところを見た事がないのは当然」

このまま邸に帰るのは、もったいない気持ちがするむくむくと僕の胸で育つ。

「行ってみようか?・・・今回の”お疲れ会”なんてのを含めて」

全てを終えて、愛車を走らせて帰路に向う、僕たちは。

「リーダーの命令なら、逆らえないわ」
「・・・・・・ミッションは終わったよ」

寄り道することに、決めた。

「・・・・じゃあ、ジョーが・・・・・誘ってくれてるの?」









「・・・・そうなるかな」







キミがあんまり、素敵だから。
好きという言葉が言えなくて。




あの防音がされているのかいないのか、わからないような部屋で、キミと2人きり。
僕は、どんな顔でこの歌を歌えばいいのか・・・。





これはもしかして、チャンスなのかな?








end.










スポンサーサイト
⇒ 続きを読む
web拍手 by FC2
その日、両想い。
週刊雑誌は、興味のある特集記事があるときのみ購入。
月刊雑誌は、興味あるない関係なく、決まった数を決まった日に購入する。

毎月12日。

ジョーは朝食をすませると、邸をふらりと出て行く。
そのふらり。に、フランソワーズがついて来るようになったのは、いつ頃からだろうか。

ギルモア邸の最寄り駅から券売機の上に掲げられている路面図を見上げたジョーは、往復30分内で行けそうな駅を選び切符を買うが、自分の分だけではなくフランソワーズの分も購入する。
いつの間にか彼女が毎月の買い物についてくるようになり、その度にいちいち「どこまで行くの?」と「どうしてその駅を選んだの?」と訪ねてくる質問を省くためジョーがフランソワーズの分も購入する。
ジョーから渡されたキッブを受け取ったフランソワーズは、駅名を声に出して確認する姿も、毎月同じ。

「ここは初めてね」

彼女が切符を確認している間を待つことなく、ジョーはさっさと改札口を通り駅構内へと入っていく。
通勤通学ラッシュを過ぎた時間なので、自分を見失うことなどないだろうと言う態度だ。
もちろん、フランソワーズがフランソワーズである故に、見失ったとしても簡単に見つけ出すだろうから放っておけた。けれど、改札口を抜けてホームへ続く階段を上がりきったとき、ジョーは振り返る。

「フランソワーズ、電車が来るから急いで」

耳をすませて聞こえてくる音に、電車とホームまでの距離を勝手に算出してくれる補助コンピュータが備えられた、脳。

「はーい」

軽いステップで階段を駆け上がってくるフランソワーズを確認する。
ばあああっと、ホームへと入ってくる前に鳴らされたクラクションと同時に、フランソワーズが、ジョーの隣に立った。

「質問があるの」

構内アナウンスが響く。

「何?」

電車から降りてくる人の邪魔にならないように、一歩引いて躯を進行方向とは逆によける。
隣に立っていたフランソワーズもジョーに倣うが、降りてきた人の勢いにぶるかりそうになるのを、ジョーが彼女の腕をつかんで、自分の胸に寄せた。

「ジョーは何型?」
「新型」
「・・・そうじゃなくって」
「プロトタイプ・地上戦闘型」
「違うの、私が聞きたいのは」

引き寄せたフランソワーズの腕を押して、電車に乗ることを促す、ジョー。

「新型インフルエンザはAだったよね」
「予防用の点滴、あれ嫌いだわ」
「キミの場合は特に注意しないいけないから、仕方ないよ」

二人は電車に乗り込み、さほど込んでいない車内でジョーはフランソワーズに空いている席へと誘導して座らせて、自分は右手をつり革にのばし、フランソワーズの正面に立った。

フランソワーズはそんなジョーを見上げて、微笑む。

「それじゃなくって、血液型を聞いてるの」
「血液型?」
「そう、血液型」
「そんなの聞いてどうするわけ?」
「占いをするの」
「占いって・・・また?」

電車が動き出す。
窓枠がとらえる風景が左から右へと流れ始めて、そのスピードが上がっていく。

「そうよ、駄目かしら?」
「別に・・」

ジョーは興味ない会話だと、そのまま口をつぐみ、フランソワーズから視線を外して窓の風景を眺めた。

ありふれた、日本の、どこにでもみられる空と街並み。
ジョーが会話を続ける様子がないことを悟ったフランソワーズは、ジョーを見上げたままニコニコと笑っているだけ。

そっと、窓から視線をおろすと、フランソワーズのカチューシャが飾られた髪が窓からの陽光にきらきらと光っている。


各駅停車の5つ目が今日の目的地。

「次で降りるよ」

4つ目の駅を発車した電車。

「ねえ、何型なの?」
「さあ、・・・検査をした記憶はあるけど、何型だったかな」

ゆるやかなカーブを描き、路線を滑る電車内の中は静かだった。

「思い出せない?」
「・・・思い出したら言うよ」

ジョーとフランソワーズの声が響く。
予想以上に響いたので、ジョーはボリュームを落とした。

がたん、ごとん、と電車が電車らしい音を踏みながら進む。

「そういうフランソワーズは何型なわけ?」

つり革から手を離したジョーは躯を進行方向へと向ける。
フランソワーズは速度を落とし始めた電車の揺れに捕まることなく、すっくと座席から立ち上がった。

「私?」

少し驚いたように瞬きを3回繰り返した、フランソワーズ。

「そう」

フランソワーズをドア口に立たせて、電車の揺れに流れてフランソワーズが転けないように、銀色の棒をつかむことを、口ではなく視線だけで告げる。
フランソワーズの腕がジョーの指示通りに動くと同時に、彼女の背後に立ったジョーは、電車がホームに滑り込んでいくのをフランソワーズの肩越しから眺めた。

「私の血液型に興味ある?」
「・・・・・・聞かれたから、聞いただけ」

フランソワーズの左耳後方の方が、右耳寄りもボリュームが大きかった。

「さて、私は何型でしょうか?」

ご乗車ありがとうございました。と、運転手のアナウンスと重なった声。
ドアが開く。

目の前に、きちんと列を作って電車を待っていた人々が、突然現れた異国の少女に目を見開いて、フランソワーズの動きに注目する。

その注目の視線を彼女はものともせずに、逆にその注目に答えるかのように軽やかにホームへと降り立ち、くるり。と、ジョーへと振り返った。

フランソワーズがきているフレアスカートが彼女の動きを、ドラマティックに演出する。

「わかんないよ、そんなの」

ジョーの返答を予想していたかのような余裕の笑みが、その場にいた学生らしき男を魅了した。

「ジョーと一番相性が良い血液型だと思うの」
「・・・なんだよ、それ」

ホームを降り、改札口を抜けていくフランソワーズを追いかけるように歩くジョーは、ときおり自分と同性の視線がフランソワーズにまとわりつくのを、優越感に近い感情で眺めていることに気づいて、舌打ちをつく。


「ジョー、思い出せた?」

駅を出て左右を見渡せば、98%の確率でみつけられる24時間営業の店。

「・・・わからないよ」

コンビニエンス・ストアの雑誌を並べた棚から迷うことなく目的のものを腕に抱えたジョーの隣で、フランソワーズは手には新商品のお菓子の箱。

「それじゃ、占いできないわ」
「占う必要があるわけ?」
「だって、ジョーの血液型が解らないと、一番相性の良い血液型が解らないもの」

フランソワーズの手にあるお菓子の箱を、見る。

「お菓子だけ?」
「自分で買うわ」
「・・いいって、ついでだし」

フランソワーズの手から、それらを奪うようにしてジョーはレジに並んだ。

「それで、占いなんてのをまだ信じてるわけ?」
「信じる者は救われる!」
「救われたいの?」
「救われたいよりも、叶えたい、かしら?」

いらっしゃいませ。と、短く野太い声に、ジョーはジーンズの知りポケットに突っ込んでいた財布を取り出した。

「叶えたい?」
「そうよ」

レジを打つ店員がちらちらとフランソワーズへと視線を投げる。
その様子をジョーは伺いつつ、2枚の札をレジカウンターに置いた。

「何を叶えたいの?」

袋にひとまとめにされた品物を手に、レジを離れていくジョーの背を追いかける、フランソワーズ、その二人に向かって、ありがとうございました。と、短い声で見送った店員。

「何って・・・決まってるじゃない」
「何が決まってるわけ?」
「嫌な人ね」
「・・・僕が?」
「そうよ、・・・・わかってるでしょ?」

15分ほど前に降り立った駅から去るために、券売機の前に立ったジョーは、行きと同じく2枚の乗車券を購入し、その1枚をフランソワーズ渡した。

「わかってないのは、フランソワーズだろ?」

改札口前に立ち尽くす二人を気に留める事なく、流れていく人々。導線が二人に触れる事がないように湾曲して描かれる。

「・・・?」
「僕よりもわかってないよ。占いとか気にしてるくらいだから」

フランソワーズと手を取り、ジョーは改札口へと飲み込まれる流れに乗った。

「一度でも、ついてくるなとか言った事ある?キミを拒んだことあったっけ?」

ジョーの手に引っ張られるように改札口を抜けて、ホームへと出るフランソワーズは、ジョーの癖のある跳ね方をする後ろ髪を見つめた。

「でも、・・・ジョー」
「・・・次の電車まで少し間があるね」

左手にフランソワーズ、右手に、目的の雑誌とフランソワーズのお菓子。

「ジョー・・・私」
「僕はそのつもりだったんだけど、キミは違ったんだ?」
「そのつもりって・・?」

ジョーは大げさに全身でため息をつく。
二人の背後に滑り込んできた電車が作り出した風邪になびかれた髪を、フランソワーズはジョーの手と繋いでいない方の手で押さえた。
そんなフランソワーズの横顔を見ながら、ジョーはむっつりと唇を尖らせた。

「わからないならわかるまで、血液型でも、星占いでもなんでもしたらいいよ」
「・・・・」
「どの占いも結果は一緒なはずだしね」
「どんな、内容・・・・なの?」
「・・・・・決まってるだろ」
「決まって、る・・・の?」

不安気な声を出すフランソワーズに、ジョーは苛立ってくる。
ぜんぜん解ってないのか、と。腹立たしさを深呼吸することで納めた。

「003と相性が一番良い相手はこの世に009しかいない。って内容以外、他にあるわけ?」

フランソワーズの瞳が揺れる。
ジョーは意識的にフランソワーズを見ないように、ホームを離れていく電車の進行方向へと顔を動かした。

「僕の勘違いだったわけ?今まで・・・僕は・・」

繋いでいる手にぎゅ。っと力を入れる。

「ジョー、痛い・・・」

その力加減に文句を言う声が涙まじりの、フランソワーズ。

「いいよ、痛いくらいで。僕のことをわかってなかった罰」





end.







*・・・消えた妄想種では甘甘なネタ話だったのになあ。
タイトル、問題はタイトル・・・。タイトル考えるの大変です!

web拍手 by FC2
color
何色の赤だと、言えばいいのか。

無限にある赤の種類を人の言葉にあてた数の中で、自分が知っているのは、言葉を覚え始めた赤ん坊が口にする音よりも、少ない。


魅力的は色だと思う。
それは生命の奥底に眠る闘争本応を呼び覚ます色でありながらも、アダムとイブが生物学的に男と女であったと象徴する色でもある。



空は何故にその色を纏うのか。
燃え盛る炎の禍々しいほどに貪欲な激しさはないけれど、何も主張しないがために、それは不気味に感じられた。



なぜに人の中に息づく色と同じ色を纏うのか。
時にそれは醜くも悲しい色となり、時にそれは2つを1つにする神聖なぬくもりを唱える色となる。

両極端な2面性をを持つ色を、なぜに空は描くのが。
ふと見上げた空の赤に、よみがえらせる記憶はどちらなのか。







地平線が、その境目の狭間を色のない色で引く。

ゆらり、ゆらり、と、揺れるのは、自分が揺れているのか、風に揺らされているのか、風が揺らす波に揺らされているのか。

それとも、胸元にしまわれている疼きに揺れているのか。
判断しかねる揺れに身を任せて。



耳に聞こえてくるのは水の音。
色のない色は青に例えられることが多いけれど、目にする色は同じ空の色。

世界がすべて、夕日の色に燃えている。








その色を消さんと、涙するのは003。

彼女のこころは、激しく後悔と無念と、哀しみに覆われて赤い服を来た冷たい胸にすがり泣く。

愛する者への想いに染めた胸は赤く。
遠く届かない場所で戦う想い人と同じ戦闘服は赤く。

髪に飾ったカチューシャも、赤く。

救いだしてみせると、近い飛び立った仲間の髪も、目にする色と変わりなく鮮やかな色だった。






この色が消えるとき。
我々の未来は、どこへ揺れ流れていくのだろうか。










---

彼女が手にした色は、再び赤だった。
驚きと一緒に、それを咎めるように口にしたのはグレート。


「おいおい、フランソワーズ、なんだ、その・・縁起がよくないぞ?花嫁のブーケがなんでそんな・・・」


汚れのない白に身を包んだ彼女の手には、赤い色の花々。
丸くラウンドする形に赤だけでまとめられて、愛らしく整えられていたが、白一色の花嫁が持つには、そのブーケはあまりにも強く、毒々しく見える。


「だって、・・・」



新しく新調された防護服は、青だった。
まるで彼女の瞳を写し取ったような、青だった。


「嫌いじゃなかったのか?その色は・・辛いことばかり思い出すって・・・」
「そうね、でも・・」


手に持ったブーケに負けないほどに、美しいその頬を染め上げて、フランソワーズは言った。


「・・・変な話しなんだけれど、この色が1つもないと私はすごく不安なの」
「なんだい、そりゃあ・・・」


新調された防護服に、赤い色のマフラー。
それは過去の戦歴を染めた色のように思われた


「彼の・・・色、だもの・・」
「心配せんでも、これからはどんなに泣いて叫んでイヤがっても、永遠にジョーはフランソワーズのもんだろう?」


グレートは振り返って、壁際にひっそりと立つもう1人の今日の主役へと視線を向けるが、きっちりと結ばれたばかりのタイを緩めようと首もとに指を突っ込んだところで、そのタイを結んでやった男に注意されていた。


「そうね・・・。でも、寂しいのよ」
「どうしてだあ?今日という日は人生で最高の日だろう!」


まるで舞台に立ったように大げさに腕を振り上げて今日と言う日を、祝おうと、踊りださんばかりに、グレートは花嫁の控え室にいる家族たちを盛り上げようとする。


「ねえ、グレート」
「?」


小さな教会の2階の1室が、日曜学校に使われる部屋らしく、窓のない左側の壁に寄せられた机や椅子が、今日は学校ではないことを伝え、いつもは聖書の言葉を書くために壁に釣られているホワイトボードが、教会の倉庫から出された大きな姿見と換わっていた。


「赤は・・・」


フランソワーズがグレートを呼び寄せて、その耳にそっと内緒話を持ちかけようとしたとき、木造のドアが厳かにノックされた。


「そろそろ、時間ですが・・・」


ドア近くの壁に、着慣れない礼服に躯を固くしてもたれていたジェットがドアノブをひねり、神父を部屋に迎えた。


「とってもお綺麗ですよ・・・」


言葉途中に、部屋に入って一番に目に留まったフランソワーズの姿に、感嘆の声を上げた。


頬を染めて恥ずかしげに伏せた瞳。


<赤は”私たち”の色でもあるでしょ?・・・・、だから、よ・・>








「大丈夫、かな?」
「ええ・・」

赤いブーケを持つ彼女に、緊張気味に近付いてきた人の胸にも、揃いの花が飾られている。





グレートは目を細めて2人を視界に留めた。


「・・・ねえ、奇麗だよの一言くらいあってもよくなくて?」
「・・・・・・・ええっと、・・・うん、よく似合ってる」








赤をその手に、胸に飾った2人の覚悟。
その手を取り合い、次の戦いに挑むために・・・・。








教会の鐘が厳かに鳴り響く。

2人を祝福するために。
始まりと終わりを示す、鐘が鳴り続く。











end.









web拍手 by FC2
My sweet pumpkin
木漏れ日落ちた路面に重なる陰が、秋風に揺れた。
淡く風と戯れる木の葉が、衣替えの途中であることに気づいた。
夏の照りつける太陽から肌を守ってくれた風が、長袖で肌を守る布地をすり抜けて、ほらね。と、ばかりに北の息吹を教えてくれた。




街が西洋の風習を少しずつ取り入れて、オレンジと紫におどけたかぼちゃのお化けたち。
9月がすぎて、10月へと月が変わる。
透き通った空気にこうこうと輝きをましてゆき丸みを帯びていく月が、日本の秋の象徴だったはず。ススキを飾り、月見団子を頬張った日がどこか遠い。

流行は和風の物と云われているけれど、”和風”がはやると云うことにいまいち不可思議さを感じて仕方がない。

和風って、日本風っていうことで。
ここは日本と云う国で。

和風ブームが再ブームに再ブームを重ねてるらしい、いったいここは、どこの国?
ちゃっかり便乗したAudreyで使用するリボンも、和風チックなのが加わってます。
兄貴がるんるんで買ってかえってきた、和紙をひねって7色カラーのリボンが視界にはいり、今、自分が箱に詰めている物をしみじみと眺めた。


「はい、・・・これらは和ブームに貢献している和菓子のライバル、洋菓子です」
「・・・大地?」

オレは名前をよバレエショー・ウィンドウ越しに立つお客様へと振り返る。



朝っぱらからなんで、



そんなにっ、



色気ふんわりさわやかさん(ハート)!

なんだよっ!





島村ジョーっ
去年デビューしたF1パイロットがシーズン中に何のんびりとっ。



「・・・独り言多いけど、大丈夫か?」
「うっせー、ジョーっ!日本人なら和菓子を食え!」


スプリンクラー噴射機フェロモンを放射して、つい予定もないのにふらっと(ジョーについて)お嬢さんたちを店に誘いこんでんだっ!!


「別に和菓子でもいいけど・・」
「じゃあなんで店に来たんだよっ?!」
「・・・フランソワーズが指名したから」
「だーっ!それならなんでフランソワーズさんが買い来ないにこないんだよっ」


少し戸惑いがちに視線を泳がしたが、オレと視線が合った瞬間にふっと余裕の笑みをみせた、ジョー。
オレンジ色の光が眩しい季節に染まって、ジョーの瞳の色がメープルシロップカラーに潤んでいた。彼は人なつっこそうな笑顔を作るくせに、態度や雰囲気はまったく逆で、そのアンバランスさが、目を離せなくさせる。


「まだ、朝の10時・・20分だ、・・・夜まで待てないか?・・待ってくれても時間とれるかわからないけど」


西洋人とも東洋人ともその神秘的な顔立ちとルックスから判断つきかねる、ジョーは国籍不明。日本人?と言われれば頷ける部分もあるが、トータル的にヤツは”島村ジョー”意外の何者でもない。
そんな日本国籍のプライベート一切合切非公開なF1パイロットが、なぜに小さな街のカフェで店の開店と同時にケーキを買っているのか。




---ジョーの正体を掴もうと、どっかに記者が潜んでいたりしないかな?




ちょっとドキドキな、オレ。だけど。


「っつーか!お前っ2週間後には鈴鹿じゃねえのかよっ!こんなところをウロウロしてていいのかよっ!」
「自宅出勤・・・日本国内だから・・・」


ジョーはふと視線を上に上げて何やら頭に浮かんだ文字にむかって納得するように、うん。と一人うなずいた。


「意外と通勤には問題ないんだ、・・・・(俺の場合)」
「新幹線は日々素晴らしく進化しているけど!・・・毎日あっち方面へ通ってるのかよ?大変じゃね?往復どれくらい時間かかんだよ」


違う焼き菓子を手に、左から右へ移動しながら、ちらり。
右から左へ、移動して、ショーウィンドウのケーキを覗き込む不利をして、視線はジョーへと、ちらり。


「毎日ってわけじゃない。・・あと2、3日したらチームと合流するために向こうだけど、
・・・な」


ジョーの背後でちらろ、ちらりと、様子をうかがいながら彷徨う、恋に恋するお嬢さんたち。が気になって、俺の視線はジョーに定まらない。


うーん、ジョーがかのF1レーサーっていうのは、知らない(気づかない?)みたいだなあ。


「あ・・ごめん、邪魔だったね」


ジョーにつられて店内に入ってきた三人のうち一人が、ケーキのショーウィンドウの前にたったとき、ジョーはその彼女にむかって微笑み、2歩ほど左に移動した。


「あ、いえ、その、そんな!・・あの、ええっと、あ、あり、ありが・・すみません!」


声をかけられるなんて思ってなかった青リンゴが、今、まさに食べごろな真っ赤なリンゴに早変わり。


「ケーキ、とても美味しいよ」
「あ・・は、はい・・・・・」





ジョー・・・それやめろ。


それ以上罪を重ねるな!!

無駄に笑うなっ。
必要以上にフェロモン噴射するな!

その甘い声をなんとかしろ!
日本人らしいスタイル(胴長オレより足短い!)になれ!
髪型のスタイリングは毎朝自分でやってんのか、ただのくせ毛なのかはっきりしろ!


フランソワーズさんに言いつけてやるからな!
ジョー、お前のそれは親切でもなんでもなあああい!



立派なナンパだ!
100発100中しとめます。
オリンピック選手以上、ギネス協会に連絡しなきゃ!


僕は恋のハンターさ!なんて、レース前になにやってんだよ!







---ああ、フランソワーズさん。いいんですか、こんな浮気者で!!



「おまたせして申し訳ありませんっもう少々お待ちください!」


オレは大きな声でジョーとお客様のお嬢さんの間に割り込むように声を出した後、ふん!と鼻息あらく、背をむけてオーダーを受けた品を入れた箱を閉じた。
店名をプリントしたテープをびーーーーーーーっと引っぱり、それを張りつけた。





そのとき。


「大地、・・何、おこ・・って。・・・・・あ」
「何も怒ってないっすーぅぅぅぅxっお客様!」
「・・・・・電話、だ。・・いいか?」


携帯電話が振動したらしい。
取り出した携帯に表示されている相手の名前を確かめる動きを背後で感じた。


「フランソワーズさんなら、オッケー」


俺は背をむけたまま、答えた。


---フランソワーズさん意外なら、そのままとっとと店の外に放りだしてやる!



ジョーが携帯電話に応答したタイミング同じく、厨房の奥にいた義姉さんが店に出て来た。


「いらっしゃいませー!」


その声に、ジョーのフェロモンにあてられて、ふらふら店内を漂っていたお嬢さん方があたふたする。


「お決まりですかー?カフェのメニュー、ご覧になります?」


商売上手な義姉さんに捕まったら、最後、逃げられません。


「え?・・・」


---ん?


「・・・意味ないよ、それじゃあ」


ジョーが拗ねたような声で電話の相手に答えながら、俺を睨んだ。


店内で通話しているってことは、相手はやっぱりフランソワーズさん。


ああ!オレが話したい!
電話をかけてきて欲しいっす!



聞いてくださいっ。
おまけにケーキを1つ、フランソワーズさんのためにつけました!


「・・・わかった」


ジョーはオレを睨むような視線を投げて、電話を切った。

なんなんだよ!
オレがなんかしたかよ?!


「大地・・・ホット・・」
「へ?」
「・・・・それ、帰るときまで預かっておいて」
「あら、フランちゃんがくるの?島村っちさんお使いじゃなかったの?」


義姉さん!?・・どんだけ地獄耳なんですかっ・・・て、



「フランソワーズさん!?」
「・・・お使い中止」
「フランソワーズさんっ!ジョー、フランソワーズさんっ!?」


カフェ・スペース内にむかって歩いていくジョーは、フランソワーズさんがこちらにむかっていることを、こころなしか面白く思っていないことをその背(なんで嫌そうなんだよっ!)にありありとのせていた。


「ジョーっ!フランソワーズさんが来るってっ!?」


そんなジョーの背中に向かってオレは興奮気味に叫んだ。


「・・ああ」
「フランソワーズさん!ふらんすぁあーずさんっっがっ!!」


ジョーが帰国しているせいでっ、最近なかなか寄ってくれないフランソワーズさん!


「大地っ!うるさい!!すみません、うるさくて、このあんぽんたんな店員が、・・・おまけで、”フェアリー・マジック/3つのトリュフ”入れておきますね」
「え、あ・・あっ・・・・すみませんっ」


オレは慌ててレジ前にいる、びっくりしている様子のお客様に頭を下げた。


--あらら。
ちゃっかりお買い上げいただいたんですね・・・。


「・・ありがとうございましたー、またお越し下さいね♪」


思わぬ買い物をした(させられた?!)お嬢さんたちは、至近距離ですれ違うジョーにぼうっと見惚れて、うっかり買った品物を忘れてかえりそうになられた。


「大地、島村っちさんにお水、おしぼり、メニューに珈琲!」


店を出て行くお嬢さんたちは、進行方向に向かって歩いていくけれど、首は名残惜しげに、ジョーに向かって固定されている。


「は、はい、はい!」
「返事は一回!」
「へい!」


カフェ・スペース内最奥の、4人様用のテーブル。



いつもジョーが好んで座る席だ。
一人でも、店が混んでいない限り、(って込んでるときは席をとらないけど)そこがジョーの指定席。


「・・・・・オレが出た後に・・、すぐに邸を出たのか・・」


どっかりと腰を下ろしたジョーを追いかけるようにトレーに乗せた水と、おしぼり、そして(必要ないとは思うが)一応メニューを用意。


「呼び戻してくれればいいのに、・・」


携帯電話を恨めし気に睨む、ジョーへと向かおうとしたオレは。


---ジョーだから別に適当でいいじゃん。

「お客様は誰であれ彼であれ、お金の神さまよ!」


義姉さんにどん!っと背中を叩かれた。



---エ、エスパー?!お、オレの心を受信!?



それよりもお金の神さまって・・・。えらくダイレクトな言い方っすね、義姉さん。
も、もしかして・・うち、ヤバい・・・の?

バイトを1人増やしたいって言ってたけど、そんな余裕ないんじゃ・・・(汗)



「・・・・おまたせいたしました、浮気野郎」
「お客様は神様じゃなかったっけ?」


テーブルに、コースターを置き、その上に水の入ったグラスをそっと置いたとき、ジョーは一つ、残念そうに肩の力を抜く感じでため息をついた。


「・・・・店で食べたくなった・・らしい。・・・・俺のせいでベッドから起き上がれないから、お使いしてって頼んだくせに」


ジョーの言葉の後半(下線部分)は、さっぱりきっばりすっきり秋風に乗せてさっさと吹き飛ばした。


「ご注文を繰り返します、珈琲をホットでよろしいですか♪」


とにかく、本日フランソワーズさんのご来店決定!
ああ!生きてるってすばらしいっすね!



スマイルマイル♪
とびっきりの笑顔で、ちょっと嫌な客相手の接客を快くこなす。

ウェイターとして、兄貴思いの弟として、店のため、好きな服のため、オレってがんばってるよ、うん!
合えない日に会えるなんてっ日頃のおこないがいいってことっすよ!

フランソワーズさんっ!


あああっ、フランソワーズさん!
こころから全身全霊でお待ちしております!

とびっきりのアップルティをオレ、井川大地、今学期の単位をすべて落としてしまうことになろうとも!人生をかけて、フランソワーズさんの喉を潤すためが、生きてきた宿命!とっ肝に命じ、ご用意させていただきまして、お待ちしております!!


「・・・・日本人は和菓子、だったよな、大地?」
「フランソワーズさんは、フランス人♪」
「・・・・・・・・そういえば、香奈恵さんのマンション近くに抹茶をメインにした和風カフェができたって・・。・・・フランソワーズが行きたがってたし、すでに箱に詰めてもらってるから、そっちに・・」
「だあああああああっ!何言ってんだよっ、お前はお得意様だろ!店を裏切るのかよっ」


どこの会社の機種か判断つきかねる、えらくシンプルな割に、多機能そうな携帯電話を手にしたままのジョーにオレは飛びついた。


---電話させるものかっ!!


「日本人は日本人らしく、和のこころを大切に・・」
「フランソワーズさんはフランス人だろ!ジョー、お前一人で嗜んでろ!」

反射神経が良いか、動体視力に地震があるのか。
オレの動きがわかっているかのように、ひょいひょいっと腕をよけるジョー。

こんなところで、身体能力の高さを証明するなって!!


「異文化交流は大切だと思う、日本に住むフランソワーズに、より日本についてを学んでもらわないと、な?」
「Audreyは立派な和洋折衷!まじめな農耕民族を祖先に持つ生粋の日本人の兄貴がつくったんだからっ立派に大和大国のこころを受け継いだお菓子”西洋風アレンジされた日本のお菓子”!」
「・・・ムキになるなって、また来るから、フランソワーズ以外が・・」
「うっきーっ!なんだよっ来させないつもりかよっ!!」
「かもね」


ジョーの手にある携帯電話が、スピードダイヤルの1を押そうと動く。


「やめろっ!!ジョーっ!!フランソワーズさんのご来店を阻む奴は何人たりともオレが許さねえ!!」


オレは全身でジョーの腕に飛びついた。
客が居ようが居まいが関係ない!今戦わないでいつ戦う!!

フランソワーズさんっ、オレはあなたのためにこの命を捧げる覚悟できてますっ。


「・・ちょ・・・、落ち着けよ・・水がこぼれるっ」
「こらっ!大地っ!」


---ひっ!やば!


「何やってるの!島村っちさんはレース前の大切な躯なのよっ!あんたが身を粉にして人生すべてを捧げて来世分のローンを組んで、ぼろぞうきんのように働いても一生稼げないお金を稼いで、たっぶりうちに落としていってくださる大切な大切な人なんだから!お客様は金様よっ」
「・・・・」
「・・・・」


---義姉さん・・今はジョー以外客いないからって・・。本音丸出しっすね。
・・・だ、大丈夫なのか、な・・・うち。兄貴に後で訊いてみよう・・・かな。うん。


オレの頭をいつでもクリティカルヒットできるように、使用予定のないトレーを脇には挟み、テーブルにやってきた義姉さんの声に、オレもジョーも目が点になる。


「ね、島村っちさん、だからたっぷりしっかり、ごゆっくり♪」


にっこり輝く笑顔で、営業用・萌子スマイル。
って、一応は客でもあるジョーに言っていいんっすか、そっちの方が問題なんじゃ・・義姉さん。


「・・はい、了解しました」


了解するのかよっ!


「いいのかよっ、それで!」
「フランソワーズのためになるなら、なんでもする」
「いや、なるっていうか、・・・なってるようで、微妙になってないような」
「繋がると思うから」
「そう、かあ・・・?」
「大地、珈琲出てないのはなんで?」


オレはジョーから離れた。

「うっ・・」
「ケーキを、頼もうとしてたんです。秋の新作、持ち帰り用とは別に、・・・フランソワーズが来たら、な。大地」


義姉さんのにっこりんこな営業スマイルの隣に立ったオレ。
ジョーはちらりとカフェスペース内に飾った壁時計へと視線をなげて、追加オーダーを申し出た。

「オッケー」
「ダメよ、そんなのじゃ!・・・はい、新作ですね。・・・で、どれになさいまか?”全部”は却下ですよ、島村っちさん」
「・・・・え・・・?」


義姉さん・・・。


「”ちゃんと”ご注文を承りたく存じます」


---かわいいっかわいいわっ困ってる!!やあああんっ島村っちさんが、困ってる!戸惑ってる!うーーーーっがんばって!島村っちさん!!かわいいっ、かわいいわーーっ!



ちょっとうきうきした弾んだ声に、オレは、個人的趣味が加わってるっすよ。っと、義姉さんに言いたい。

義姉さん、あなたは兄貴の奥さんってこと忘れないでくださいね・・。
(それにしても、さっきのお嬢さん(客)たちも、ジョーの声で聴きたかっただろうな・・)


ジョーは店のケーキの名前を面と向って言うのが今更ではあるけれど、改まって言ってくれと言われると意識しすぎてしまい、やっぱり恥ずかしいのか(人前でちゅっちゅっちゅしまくるくせに!)表情を前髪にかくして視線をオレと義姉さんからそらした。
さらっとなびいた栗色の髪が、ジョーの来ているシャツをなでると、ちょっと不思議な跳ね方をしている後ろ髪が、揺れた。

薄くジョーの唇が店内を色付ける甘い香りを吸い込んで。


「・・・『想いを伝えてムーンライト(洋梨のコンポートケーキ)』『アップル・アディクト/もう君しかいらない(リンゴの身が詰まったシナモン・パウンドケーキ』『ほんのりマロンなロマン物語(ストーリー)(オードリ・アレンジバージョン・モングラン』・・・」


一息に言った。


「3つだけですか?」
「フランソワーズさんは新作を全部食べたいはずだ!なあ、ジョー!」


オレは意地悪くジョーに声をかけた。にひひ。


「・・・・・・・、『星のかけらを集めて』」
「「集めて?」」


おれと義姉さんの声が思わずはもる。
ジョーの口から軽く深呼吸の音。


「・・・フォーリン・ラブ・トゥ・ミー(メープルシロップゼリーを重ねた柿のケーキ)』」


メニューを見ることなく、声のボリューム落としてつぶやいた。


ぐふっ・・・・・ふふふふふふふふ


ね、ね、義姉さんっ?!
ああっ興奮し過ぎしすぎっ鼻息荒いっす!トレーが・・潰れてるっす(汗)
つ、潰れるもんだったかな、それって・・・。

と、とにかくっあんなぼーっとした兄貴だけど、兄弟2人きりで色々面倒見の良い兄貴でっ。
ケーキ作りくらいしか取り柄ないっすけど、そんな兄貴っすけど、捨てないでっ。義姉さんっ!


「ふふっふうっ・・・っ島村っちさん、もう一つ新作がございますが、どうなされます?」


ジョーは視線を壁に定めたままピクリとも動かない、オレと義姉さんとの空気の差がどんどん開いていく。





「フランちゃんがいないから、申し訳ないんですけどねえ」
「・・・」
「このケーキ、見た目よりも甘過ぎなくて、意外に大人な味でさっぱりとした仕上がりなんですよ」
「・・・」
「アメリカでは、恋人のニックネームらしいじゃないですか!普段、これくらいのことフランちゃんにむかっていってらっしゃるのでしょ?」
「・・・」


---ええっと、最後の一つって、なんだったっけ。









あ!
















「へへっ・・ジョーが言えないならオレが言うぜ、フランソワーズさんがいらしゃったら、オレ、言うぜ!きっとオーダーされてないってことで、フランソワーズさんが”オレ”にオーダーしてくれるんだろうしな!」
「・・・・」





---・・・んあっ?!




視線をそらしていたジョーがこっちを向いた。
その顔は不気味なほどににっこりと微笑んでいる。


---な、・・・・何を考えてる?



ちょっ・・・ジョーっ!!手を離せっり、両手で握り込むなっ。
うわっ義姉さん、携帯電話を出して・・そのランプの点滅は動画っすかっ!!





ジョーっ!おま、、何を雰囲気(ムード)をつくって?!




それはっs


その顔はフランソワーズさん用だろうっ!?


そんな顔したって、オレは絶対に、ぜえええええったいにっ
落とされないぞっ!








「・・・『君だから、君だけで、満たされたい・My sweet pumpkin』・・」
「・・・・・・・////////(ごくん)」
















ジョ・・・ーぅ・・・ぁぁぁあああああっ。ああああああああああっっっ・・・
「あああああああああっっっっっs!!何だよっおいっ?!手をはなせっ馬鹿野郎っ!」
「大地、今の間はなに?ねえ、何、なんなの?フランちゃんのライバルだったの?」


顔が痛いっ熱いっ。
全身が火にあぶられたみたいに火照る。


ジョーの手を振りほどき、テーブルにあった自分が用意したグラスの水を一気飲み。
何を慌てるっ?!


オレはっ

オレはっオレはっオレはっ
オレはっオレはっ

オレはっ

オレはっ



お、れ、はああああああああああっ!



オレはっノーマルだ!
フランソワーズさん一筋なんだああああ!!









オレ、パニック!






「・・・・大地、・・・・・冗談だから、な?」
「うわあっっうわあああっっ!!」
「・・本気にするなよ?俺にはフランソワーズがいるし、フランソワーズ以外、・・・それも男は、悪いが・・」


ジョーっ・・困るなっ。
本気で困るなっ!!





上目遣いに申し訳なさそうな顔でオレをみるなっ。






「どうしよう・・・。困ったな・・・これって、浮気になるのか?なあ、大地」
「ぎゃあああああっ」





うああっジョーっ頼むっ。馬鹿っ!
オレにむかってフェロモン大噴射しなくていいっっ!






「島村っちさん、これをにっこにこ動画に載せていいかしら?」
「・・・俺だとはっきりとわからない程度に囲うしてくれるなら、どうぞ」
「浮気の証拠動画になっちゃいますけど?」
「・・・・・・・・・あ、そうか。・・どうする、大地?」
「やめてくれーっ!」



載せないでええええええええええっっ!!
男に見惚れて顔がトマトなオレがっオレがっ・・・・映ってるんだからなっ。


「・・・大地、一応念を押してもう一度言うけれど、フランs・・」
「知らねーよっ!オレはお前なんか知らねーっ!」
「・・・・・・・・ふられたってこと?俺、大地なんかに?」
「島村っちさんを振るなんて、大地っ!100億光年早い!!ほらっ!もおうっ遊んでないで珈琲!」
「遊んでんのはっ義姉さんとジョーっdえ・・・」






ドアのチャイムがちりりん♪っと鳴る。


午前中の光は、まだ誰にも触れられていない真新しいシーツのように、清々しい。
カフェ内の証明を変えたわけでもないのに、彼女が、ドアをくぐっただけで、




彼女が放つ、光が満ちていく。







お菓子の甘い香りにまじったフローラルの香りが、ぶるかることなく調和して。
彼女がカフェにいるときだけ香る、特別なフレグランス。


すぐにわかった。




モーツァアルトを魅了したカナリアの鳴き声よりも美しく響き渡るソプラノ。
彼女が、偉大な作曲家と同じ時代に生まれなくて良かったと思う。
もしも彼女がいたならば、きっとモーツァアルトはこの世に名曲を残していなかったはず。


フランソワーズさんに夢中すぎて!
作曲してる暇なんてない!


は、もしや!






逆に、人類は偉大なる曲を生み出してもらうチャンスを逃した?!











「おはようございます、萌子さん、大地さん」
「あら、フランちゃんいらっしゃい」
「・・・フランソワーズ」


ジョーはフランソワーズさんを迎えるために席を立ち上がった。


「慰めて、・・・大地に振られたんだ」
「まあっ、大変!」




なあああああああああっ!ジョーっ!お前っ!!

って、フランソワーズすわあああっっんっ。
・・・・・何も疑問を持たずに、そのままジョーの言葉信じるんっすか!?


ことの経緯を尋ねてはくれないんっすか!?



「見て見て~フランちゃん、これはとっても売れるわよ!!」


義姉さん?!

どこでですか?!
何にですか?!


・・・本気でカフェ経営危ないんっすか、義姉さん・・・・。










って、見せないでくれーっっ!!








end.




***その日の夜***白文字です

「レース前のジョーって・・・とってもとっても我がままで、甘えん坊になっちゃうのね」
「・・・・少し、ナーバスになってるせい、かな」
「それで?」
「うん、それで・・・大地を使ってリラックスしようと、してみたけど」
「してみたけど?」
「・・・・・・・・・・フランソワーズじゃないと満たされない」


ジョーはデスクに置かれた、半分だけ食べたケーキに視線を投げる。
うっすらとぬくもりがのこっているだろう、2つの白いマグが、ルームライトではなく、部屋を染めるオレンジ色に染まっていた。


「明日のお夕食はかぼちゃの甘辛煮にしましょうね」
「・・・かぼちゃはもういいよ」
「好きでしょ?」
「好きだよ、フランソワーズが」
「ええ、知ってるわ。そうじゃなくって・・」



『君だから、君だけで、満たされたい・My sweet pumpkin』



「・・・・好きだから、食べたいな」
「デスクにあるわ、まだ半分残っていてよ」
「そっちじゃなくて、・・・」
「もう・・・・・」


シーツの波に沈んで行く、2人。









「ね」
「なに?」
「・・・・・呼んでみて?」
「呼ばれたいの?」
「聴いてみたいわ」
「・・・・・・・・・愛してるよ、My sweet pumpkin」
「ふふ♪」




end.













*あとがき*

お久しぶりです。
シーズンが秋、カフェ日和。
今回はジョーののりがよい(笑)

鈴鹿なので(汗)
日本だから。
レース前でちょっと興奮気味というか気持ちが高ぶっているのか。
そんなジョー。を、初めて見る大地くんが振り回されたのでしたー。


萌子さんはいつもレース前くらいのテンションを、ジョーに希望してます(笑)
web拍手 by FC2
| home |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。