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aLiCe
紛失した「妄想種」データ・・にのせていたお話です。書きファイル発見!
内容同じですが文は書き加えてます。

平ぜろの”星祭りの夜”に出ていた、不思議な女の子が出てます。





「・・・・・家はどこ?」

どこからついてきたのか、どこからやって来たのか。

「・・どうして、ついてくるの?」

いつから、自分と並んで歩いていたのか。

「あなたに用があるからにきまってるわ。おばかさんね、ジョーは、ふふふっ♪」
「・・・っ」

ツインテールの髪を跳ねさせた小学校3、4年生くらいの女の子が、いつの間にか自分の隣を歩いていた。

「・・・・フフ、びっくりした?ねえ、びっくりした?」

コンビニエンス・ストアくらいの店しか開いていない時間に、まるで学校から帰って来てすぐに友達に会いにやってきたような気軽さで、ふらふらと鈍い足取りで駅から離れたアパートメントへの道を行く自分についてくる。
のんびりと、「今の子はこんな時間まで塾通いなんて大変だなあ」などと思ったりしていたが、その子は小さなポシェット1つ肩からさげているだけ。それらしい勉強道具の詰まった鞄をもたない子どもではないことに、改めて注意深く女の子をみて気がついた。

「・・・し、しないよっ・・教会に通ってる子だろ・・っ」

偶然行き先と歩調があっただけかと思ったけれど、ぴたりと隣を歩かれて、くすくすとしたその年齢ならでわの愛嬌のある顔で見上げられては気になって仕方なく、足を止めて尋ねるしかなかった。

「ぶー、残念でした。教会なんておもしろくもなんともない所だもの、興味ないわ。無宗教なの。・・・でも、あなたのこと知ってるわ、たーっくさん!」

ジョーは左右規則正しく出していた足を止め、訝しい顔つきで彼女を睨むと、女の子は楽しそうに笑う。

「私はアリスよ。可愛い名前でしょ?気に入ってるの」
「名前なんてきいてない、教会の子じゃないんだったら・・・家はどこ?こんな時間まで1人でウロウロしてるなんて家の人が心配してる」
「心配してくれるの?」
「・・心配してるのは、君のお父さんやお母さん・・・だろ?なんでこんな時間に・・・・」

真っ暗な空の下。
街灯下で見えない星明かり。
民家が続く町中、すでに家に灯る光も、暇つぶしにもならない数しかない。

「子ども扱いしないでちょうだい」

どこの家の子だ?と、周りを伺うように首を振った。
その様子をアリスと名乗った女の子が、嬉しそうに見ている。

「家はここな辺りじゃないわ、もちろん。教会でもないわ。そして、ジョーのアパートの近くでもないから、心配しなくていいのよ」
「・・・ああ、そう。じゃあ心配しないよ」


夜は完全に静寂をまとい、人気のない色独特な香りがジョーの肩を震わせた。その震えを誤摩化すように、ジョーはジーンズのポケットに両手を突っ込み、歩き始めた。

女の子が自分の名前を知っている可能性を頭に浮かべながら。


ジョーは、教会が運営する施設に物心つく前から、1年前まで身を寄せていた。
場所が場所なだけに、地域交流のためのイベントが多く、それほど子どもの数も多くなかったために”教会の子”として今でも名前と顔はよく知られている。
教会を出て一人暮らしを始めた後も、アルバイトがはいっていない日はなるべく、教会に帰ってその運営やイベントなどを手伝いにでかけていた。

だから、教会内の子かどうかは一目見ればわかる。
今身を寄せている子どもたちの顔と名前を覚えているから。それなら、日曜学校かコミュニティに入っていない、クリスチャンの親の子か、ヴォアンティア参加者の子か。




「前はもっと優しかったわ」


年頃に不似合いなませた仕草をみせる女の子に、「心配いらないならとっととどっかへ行ってくれ」と、直接口では言わずにこころの中で吐き捨てた。

「どうしてそんなに早く歩くの?」

ジョーが歩き出すと、またジョーの隣に鳴らんで女の子が歩き出した。

「・・・」

急に歩調が早まったので、アリスと名乗った女の子はむっと頬を膨らませる。足の長さの違いもあって、どんどん離れて行くジョーの背を見つめた。
小さな女の子を真夜中に町に1人、置き去りにすることに後ろ髪をひかれるが、アリスが言った”心配いらない”と言った言葉を繰り返し振り切る思いで足を速める、


「ジョーっ!」


名前を呼ばれた、その後に「よおー・・い、ドン!」と、女の子のかけ声が聴こえた。


「バイバイ・・気をつけて」


ジョーの横を駆け足で通りすぎたアリスと言う名の女の子。
上下に揺れるツインテールを見ながら、ジョーは呟いた。










家に帰れば、きっと心配していたお母さんが抱き締めて迎えてくれるだろう。
ちょっと怒ったお父さんが、彼女の無事を安堵しながらも注意をするだろう。



兄弟、姉妹がいれば、遅かったね。と、笑って迎えてくれるんだろうな。




おかえりなさい、と。
言ってくれる誰かが待っているなら、早く帰るのが一番だよ。








・・・誰も、まっていない部屋に帰る僕とは、違うんだ。











「ねえ!!!」
「ジョーはああああっ幸せえええっっ?」
「っ?!」


ジョーから2m弱ほど前に進んだ位置で急ブレーキをかけるように止まると、その勢いを殺さずにくるっと躯を回転させて、歩調を緩めていないジョーへとがば!っと勢い良く飛び上がって抱きついた。

思いきり腹部にタックルされたジョーは、衝撃に踏ん張った足がおおきく一歩下がり、靴底がすり減ったスニーカーが叩くアスファルトの衝撃を、足首の骨に直接響かせた。


「ねえ、ジョー、あたなは”今”、幸せ?」


小さな腕がぎゅうぎゅうと力一杯ジョーを抱き締めて、ぐりぐりと頭をジョーの腹にすりつけた。

「しあわせ・・って・・?」

アリスから、甘味のある花の香りが漂って来た。


よく知っている香り。
けれど、それの香りをどうして”よく知っているのかわからない。と、同時に、どうしてその香りを、アリスがいった”幸せ”と結びつけたのかも、わからない。


「教えてジョー。幸せ?」
















ボクは。

あのとき、なんて答えたんだろう?
あの子に、アリスって名乗った変な女の子に、僕は、・・・。












”ジョー、あなたは今、幸せ?”





邸のリビングルームのソファに比べれば、座り心地が良いとはいえず、バスよりも電車の方が睡魔に誘われやすいな。なんてつまらないことを考えながら、のんびりと流れていく風景を車内の乗客をなんとなしに観察していたハズだった。


「ふふ、ジョーってば寝言を言ってたわよ」

左隣に座っていた彼女にもたれることなく、窓におでこを押し当てて眠っていたらしい。

「え?・・うそだー・・・ぁ、」
「ほんとよ」

クスクスと嬉しそうに笑うフランソワーズにジョーは口をへの字に結んで、いつものように前髪に表情を隠した。

「寝てしまうなんて・・・」

次が降りる予定の停留所よ。と、耳元にそっと語りかけられながら、腕にそえられた手に揺らされて。

「珍しいわね」

2人が呼ばれた街まで、電車を乗り継ぎ、バスに揺らされて。

「うん・・・、おかしいなあ」
「昨夜、ちゃんと眠れたの?」
「いつも通りだよ」

ジョーの答えに、「そうよねえ。いつも通りだったわよねえ」と同意したフランソワーズ。だけれども、彼女はジョーが眠っている姿など知らないはずなので、。”いつも通り”がどういう状態なのか、知らないはずだ。
彼女は今朝の様子が”いつも通り”と変わらない様子だったの指して言っているのだろうと、想像できたが、その言い方が、ジョーにとってはなんともくすぐったい言い方だった。

不意に鼻先で短く笑ったジョーを覗き込み、どうしたの?と尋ねてきたフランソワーズに、彼は「別に、なんでもないよ」と、短く答えた。
フランソワーズはその答えが不満だったらしく、小さく唇の先を尖らせた。が、それは一瞬のことで、きらりと青い瞳を好奇心に輝かせてきゅっと口角を上げた笑みにころっと表情を変えてジョーに尋ねた。

「ねえ、どんな夢を見ていたの?」
「え?」

通りすぎていく、町の一つを”昔、この辺に住んでことがあってさ”っとフランソワーズに教えたのは、バスに乗って3つ目の停留所を過ぎたときだった。

「夢、みていたのでしょう?」
「なんで、そんなこと訊く訳?」
「だって寝言を言ってたもの」
「・・・言ってないよ」
「あら、私は003よ?その私が”言った”と言ってるの。ジョーは私があなたの声を訊き間違いをすると思っていて?」
「言ってない・・よ」



夢?

夢なんかみていたかな?



フランソワーズから視線を外して窓の外へと顔をむけた。
空の一番高い位置にまで上った太陽が、ご機嫌良く白く輝いている。窓の日よけネットをおろしながら、よくこんな眩しい中で居眠りできたな、と胸の中で呟き、夢を思い出そうとこころみる。

「・・で、僕はなんて言ったの?」
「気になる?」

フランソワーズは嬉しそうにくすくすと笑う。
その笑顔が悪戯ッ子のような可愛い意地悪さを含んだ笑みだったので、よっぽど変なことを言っていたのだと思い、ジョーは顔をほてらせて下唇を突き出した。

「いい、言わなくていいよ。僕は夢なんかみてないし、寝言も言ってないから」

フランソワーズは嬉しそうに笑い続けた。









バスを降りて、なだらかな丘を散歩するように歩く2人の間に、それきり会話はなかった。


会話がなくても別になんともない。

ただ、彼女が隣にいる。
視界に彼女がはいる、ときおり触れる、気配を常に感じ取っている。


少し甘い感じの花の香りが鼻孔をくすぐるだけで、十分に自分は・・・・。
それだけで十分に自分は彼女はコミュニケーションがとれていると、ジョーは思っていた。


フランソワーズの歩調に合わせるのがいつの間にか癖になっている。
その歩みを一歩一歩意識してみた。

不意に、自分の歩調を思い出すかのように、歩き始めた。
すると途端にフランソワーズと距離ができてしまう。








不安になった。
全神経が背中へと、背後を歩くフランソワーズへと向う。けれども、速めた歩調はゆるめることは出来ずにリズムよく左右交互に規則正しく足を出して行く。

「ジョーっ!」

フランソワーズは小走りになってジョーを追い掛けると、ジーンズのポケットに手を突っ込み少し強張った感じにつっぱた彼の腕に飛びついた。

「ジョー、私も!!」
「うわっ・・」

彼女の勢いに前のめりにバランスを崩しかけて、おおきく一歩前に出る。


「私も、今、とっても幸せよ!・・・・あなたと一緒に居るもの!」
「え?」


「大分靴底が減ってるわね、買い替え時だわ。時間をみつけて見てみましょうね」と、今朝邸を出る前に言ったフランソワーズの言葉を、踏ん張った足首に響いた地面の衝撃で思い出した。


「幸せよ!」
「・・・・・それは、・・・・その・・よかった、です」


ぎゅうっと抱き締められて、腕に押し付けてられた感触と、彼女の体温がダイレクトに皮膚組織から神経を通り、ジョーの心臓へヒットする。
その衝撃にも耐えるために、ジョーは深く空気を吸い込んだ。








---ああ、フランソワーズの香りだ。






”ジョー、あなたは今、幸せ?”


”うん。”



”本当に?”


”本当に。・・・・フランソワーズと一緒にいるからね”


”フランソワーズ?”







「そうだよ、彼女がいるから、今とっても幸せなんだ」

「幸せなのね!よかったあ!!」


アリスはぎゅうっと抱き締めていた腕をぱ!っと離して、ジョーを見上げた。






「その、フランソワーズって可愛い?ねえ。私とどっちが可愛い?」



















end.








*ジョーとアリスの関係ってタイムとラベルができる女の子(と私は決めつけ)なので、
未来の・・子孫とかそういうのと結びつけてしまいますです。
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風のない街
 音のない音に、彼女は敏感に反応した。


「・・・ジョー・・・・」


 眼の見えない子猫のように擦り寄せて押し付けて来た素肌は、先刻の情事を示す残り香だけをまとっていた。
高まっていた熱は感じられず、こちらの体温を奪う勢いで冷たく冷めている。


「ただの、風だ・・・・」


 強化された瞳が窓の外へ向けられた。


「・・・?」
「・・波音、だよ」


 彼女を腕の中に再び捕らえて、亜麻色の髪を鼻先でかき分ける。うなじからうっすらと浮かぶ、やわらなかな骨のラインに沿わせてキスをする。


「でも・・」
「今日は風が強いからね・・・裏の雑木林が、だよ」


 彼女を捉える腕に力をくわえて、抱き締める。甘えるように躯を半回転させた彼女の腕が、助けを求めるように首にまきついてくる。


「・・・怖い」
「フランソワーズ・・、大丈夫だ・・・ここは僕もいるし、・・・みんなもいるだろ?」


 幼子をなだめるように、膝上に抱き上げてしっかりと腕に抱き、躯を揺すった。


「怖くないよ・・。怖くない」





 慣れ暮らしたギルモア研究所と、今日でお別れ。


「ジョー・・」


 彼女がおびえるその音を、もう二度と僕らは耳にすることはないだろう。


「大丈夫だよ」
---本当に、大丈夫なんだろうか?



 彼女を安心させるために抱く腕は、自分を落ち着かせるために彼女へとよせる唇は、震えているのをごまかすため。

 躯をゆりかごのようにゆするのは、・・・僕自身も恐れていることを悟られないように。









また、始まる。






「・・・・・・ジョー」
「フランソワーズ・・」


また、始まるんだ。





「009」
「003」


 覆われた紅の下に隠れた肌は、あの日のように触れ合うことができない。擦り寄せ合わせて体温を共有し、なぜキミが僕じゃなくて、僕がキミではないのかと、意味があってないような言葉で戯れることもできない。




あの日、あの夜のフランソワーズに今度はいつ、逢えるんだろう。


「009っ!ぼぅっとしないでっ」


 003の叱責をくらって僕は白昼夢から引きはがされて、戦場=現実に連れ戻される。


「ごめん・・」
「しっかりしてっ!加速できなくてもっアナタの強さはこの地上最強よっ」


 怖いって、冷たい躯を押し付けて生まれたての子猫のように小刻みに震えていたのに、さ・・。
 ベッドの上でのキミと今のキミは、本当に同じ女性とは信じられない。


「003」
「待って・・・、今・・・向こうで誰かが無線で連絡を・・・取ってる・・・」


 あの日の夜と同じように、彼女は強化された瞳で遠くを見つめ、耳を澄ませた。


「敵に・・おうえ・・ん、が・・・・来るっ・・」


 僕の右腕に伸ばされた手が、赤色に触れた。


「・・・フランソワーズ


 あの日と同じ、凍ったように冷たく震えている手が布を握りしめる。




「大丈夫だ、003。・・・・・加速装置なんてなくても指一本他の男にキミを触れさせやしないさ」
「?!」
「・・・女性型の量産サイボーグ兵士には出会ってないからね。そうなると、みんな”男”だろ?」
「いやらしい!今の状況でそんなことを考えていたのっ」
「それくらい、僕は余裕ってこと、だよ」



 余裕だとキミにいうことで、自分に言い聞かせた。









 フランソワーズ。
 この戦いが終わったら。

 風のない街で暮らそう。





 誰にも、何者にも僕らの存在を報せないように。
 キミを不安にさせる悪戯な音など、聴こえない場所へ。



「生きて、僕たちは帰るんだ、フランソワーズ。・・・・もう一度、キミを抱きたい」




 キミを震わせるのも、その髪を揺らすのも、僕だけでいい。





end.









*9よ・・・、そのために生き延びるか・・・。

がんばれ。
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デコピン/ボクは二度と彼女にデコピンしないと思う
「ジングル~べええる♪、ジャングルべええる♪、ベンガルべええる♪すっずがあ、なある~♪」
「はい?・・・・ジャングル?・・・それよりベンガル・・・て?」
「猫よ!」
「・・・ベンガル猫が、どうしてジングルベルを鳴らすわけ?」
「ドラちゃんにもついてるわ!!」
「・・・そうだね」
「韻をふんでみたの」
「そう・・・。勉強してるんだね、その意味のわからないアレンジも、ちゃんと勉強されての成果だったんだね?..そういえば来年は寅年だったね」


ジョーとフランソワーズの2人は住んでいる邸の2階、ジョーの部屋前にある収納室にいた。
十分に部屋として使用できるほどの広さと見晴らしの良い大きな窓があるけれども、室内の形が細長い不自然な長方形のため、私室としては誰も選ばなかった。


「ツリー、どこおお?!」
「去年、どこにしまったのさ?」


そのために、いつの間にか「日常生活の中であふれたものを収納しておく部屋」となっていた。


「この辺よ!」
「オーナメントや電球類はあるけど・・ツリーはないよ?」
「え~・・・、ジョー、食べちゃったの?」
「なんで、食べるんだよ・・・」


大きな窓が設えられた壁に沿って置かれた業務用の棚。


「だって、ないなんておかしいじゃない!」


下から2段目に置かれていた箱をフランソワーズが取り出した。


「本当にここに?1階の収納室や、地下は調べてみた?」
「一緒にここに閉まったのっ。こうやって、オーナメントをおいて、で。ジェロニモが・・」


収納棚の隣に、スキー板と紛れて枝をきっちりと縛られて立てかけられている筈のクリスマスツリーが、見当たらない。


「私がオーナメント類を持って、で。ジェロニモがツリーを抱えてくれて・・・で、ジョーはアルバイト先の忘年会にうきうき♪と出掛けていて手伝ってくれなくって、それで・・・お土産は喜九屋のアイスクリー・・・・」
「・・・そんなことまで覚えてるの?」


約1年分の埃をかぶったツリーオーナメントの入った箱を抱え、去年ツリーを片付けた12月27日の午後を再現してみせるフランソワーズ。


「ジョーが食べてないのなら、誰が食べるのよ?」
「・・・なんでボクが食べるんだよ、”木”をさあ・・しかも作り物だし・・・」
「食べたもの!最後の一個!・・ツリーを飾り付けた後に半分こにしようって思ってたのよ、それなのにっ」






---ん?


会話がどこかで食い違っている。


「最後の一個?」
「そうよ!」


「どうしてこう話がぽんぽん飛ぶのだろうか?」と、ジョーは下唇を押し出す形で埃っぽい収納室内で大きくため息をついた。
女の子は会話があっちいったりこっちいったり、耳に入って来る内容のまとまりなさにいつも驚かされるが、フランソワーズも例にならってその1人。


「・・・・最後の一個」


ぷうっと頬を膨らませたフランソワーズは、手に持っていたオーナメントの箱を床に置いた後、大きな瞳をきっとつり上げてジョーにむかって抗議の姿勢をとった。



---どっから話しが・・・。去年のお土産が、・・・喜九屋のアイスクリームがお土産で、・・・あ。



「もしかして、昨日の夜にボクが食べたあのアイスクリームって、フランソワーズのだった?」
「食いしん坊さんなんだから!」


---どっちがだよ・・・。




「名前、書いてなかったよ?」


どうしても食べられなくない食品は名前を書いておくこと。


「最後の1個は私のって決まってるでしょ?」


それが、”大家族”であるギルモア邸の規則(ルール)。たとえ、1年の半分以上を4人(ギルモア、フランソワーズ、ジョー、ジェロニモ {イワンは食べられないので含まない})での生活だとしても、だ。


「・・・・そんな規則(ルール)いつできたわけ?」
「今♪」
「今なら、食べたのは昨夜だからカウントされないよ!」


中指をまるめて親指にひっかけ、中指を伸ばそうとする力を加えた形でフランソワーズのおでこにむかって親指を弾くように離した。


「いったーぃ!」


ペチン!と軽い音を収納室に響かせ、デコピンを一発。
ぱっと両手でおでこを押さえながら、フランソワーズから向けられた視線にジョーの体温がぐん!と急上昇。

顔からこぼれて堕ちてしまわないかと心配になるほどの、大きな瞳が一瞬にして、きらり。と強い光を放ち、言葉にしようがない厳しさを含む凄みを増した。


「なにするの!」



---あ、・・003だ。


「何って、デコピン・・・、ごめん。そんなに痛かった?」
「死んじゃうわ!」


それは、003の瞳の光。



「いや、それはないって」
「でもっジョーは009なのよ!最強のサイボーグが繰り出すデコピンにどれほどの殺傷力があると思って?!」
「大げさだなぁ」
「大げさじゃないの、気をつけて!」


普段は花が咲くように明るく、無邪気でおもしろ可愛い不思議な魅力を振りまき、愛らしい仕草で魔法をかけたように邸のすみずみを管理する女の子。
 

「ええっと・・ごめん」
「痛いのよっ」


だけれど、ひととき、何かの閃きをこころに宿せば、一瞬にしてぞっとするような鋭敏できりりと肌を冷たく緊張させるようなオーラを放ち、003である彼女が姿を見せる。


「ごめんって・・・・・木が見つからないのなら、さ。ほら」
「・・?」


たとえきっかけが”デコピン”でも。


「オーナメントがあったって飾れないし。・・まあ、食べてしまったお詫びも兼ねて、デパートへ行かない?」
「新しいツリーを買うのっ!?」
「それはまだ。誰かが移動したかもしれないだろう?みんなに訊いて一応他を探してからだよ」
「間に合わないわ!」


だからこそ、フランソワーズと003は間違いなく同一人物だという証明でもあって。


「まだまだ間に合います。いっそのこと25日後のセールで買った方がいいかもよ?」
「まあ!なんてことを言うのジョーっ!クリスマスにツリーがないなんて!いけませんっ」


小さな子どもにむかって叱るような、お姉さん目線でフランソワーズはジョーの鼻を人差し指と親指できゅ!とつまんだ。


「駄目なのよ、ジョー。必ずツリーはクリスマスのイブ前。最低でも1週間前には飾らなくて駄目!」
「了解、わかったよ、でもさちゃんと探してk・・・」


フランソワーズの持つ2面性のギャップに、ジョーはたまらなくなる。


「ねえ、ジョー」


おねだりするときに少しだけ艶を増す、フランソワーズと003のちょうどバランスのよい中間の声。
ジョーの鼻からは離れた手を、甘えるように彼の腕に添えながら、空を見上げるように、かくん。と首をそらせた彼女の動きと同時に、009の感よりも、”男ゆえの感覚”がジョーを襲った。


「?!」


腰辺りの皮膚がやけたようにじわりと燃え上がり、尾骨をスパークさせるように響かせながら心臓に達した衝動。それが血管を駆けてゆく合間に、想いの化学変化によって甘味を増し、自分がどれほどフランソワーズに捕われているかをきりきりと締め上げるようにうずく下腹部で理解する。




---ヤバ・・・い・・・。




いくら湿気大国日本でも、寒い冬は空気がからりと乾燥する。
収納室に入る前にフランソワーズがいつも持ち歩いているリップを、語尾をくっとあげて話すのに相応しい、少し尖らせる形をするとハート型になる可愛らしい唇にのせていたのを見ていた、ジョー。
自然と目がそちらに注目しながら、ごくんと大きく喉を鳴らした。




---ヤバ・・・い・・・な、・・こ、こ、ここから脱出しなくちゃ・・・。ヤバい、ヤバい・・ヤバい、ヤバいっヤバいっこれっヤバいっ!!





触れられている手が、じゅうじゅうと気持ちよい音とたてて焼かれる感覚に、どくどくと反応する心臓は決してフランソワーズには知られたくない場所へと集まっていく。
空気の入れ替えのために開けた窓のブラインドは降ろされたまま。ルームライトは付けておらず、日中だけれど置かれている物たち威圧感も重なって室内は薄暗い。


「ねえ、(クリスマスツリーが)どうしても今、欲しいの・・・」


()部分のフランソワーズの声を009脳が潔く都合よく排除。





---あああああああああああああっ!!げっんかいっっ!





「ジョーフランソワーズ、ツリーはココじゃないってさ、」





---p・・た、助かったっ!!






心やさしき海の戦士、ひょっこり収納室のドアから頭を出して地上最強のサイボーグ戦士を救った。


「ピュンマ!そうかっ!わかった!!ありがとおおおおぉぉぉぉっ見て来るっボクが見て来るよっ!!」
「うわっあぶないよっ!


加速したと思うほどの勢いで収納室を出て行くジョーに、ピュンマだからこその反射神経で彼をよける。が、勢いにしたたか廊下の壁に背をうった。


「・・・いてて、もう・・まったくまだまだだなあ」


その勢いとスピードに驚きぽかーんと見送ったフランソワーズが、呟いた。



「そんなに・・嬉しいなんて・・。私ジョーの気持ちわかってなかったわ」
「嬉しい?」


フランソワーズの言葉に、ピュンマは自分が2人の間を”邪魔をした”か”救った”かのどっちかを計りかねる。
収納室前の廊下に数分感、気配を計sて様子をうかがっていたピュンマは、自分の男の感を信じて行動したのだけれど。


「ここにね、今までつかっていたツリーがなかったから、新しいツリーを買いましょうって話をしていたの」
「ふんふん」


ピュンマは収納室へと入りフランソワーズへと歩み寄りながら、彼女の言葉に相づちをうつ。


「でもジョーは、・・・あまり乗り気じゃなくってね。普通誰でも新しいのを買うって思うとわくわくするハズなのに」
「なるほどお」


フランソワーズに自分が男である”生々しさ”を絶対に知られたくないらしいジョーを察する、ピュンマ。
そんな無駄な正義感などかなぐり捨てて行動すれば、こんなじれったい思いなどしなくていいのになあ。と、ピュンマはジョーがある意味”公私混同”している姿に同情する。


---彼女を”守る”の意味で、自分で自分の首を絞めているとしか思えないねえ。




「きっと・・・私たちには言えない事情があるのよ。今まで使っていたツリーじゃないと駄目な・・。察してあげられなくて、申し訳なかったわ・・・」
「ま!それはそれでもういいんじゃない?ツリーは裏のガレージにあるんだ。ジェロニモがすぐにオーナメントを飾れるようにって、掃除したんだって昨日」
「まあ!そうだったの!!」
「だから、これはこれでおしまい。それよりさあ、フランソワーズ」
「なあに?ピュンマ」
「僕と一緒にオーナメントを持っておりようよ。こんな埃っぽいところからさっさと出ないと、喉とか痛めちゃうよ?」


ピュンマは収納室に入っていき、オーナメントの箱を抱えた。


「ええ。そうね、そうしましょう♪」


フランソワーズもピュンマにならってそれらを手にもつ。


「それでさあ、(僕は一昨日日本に返って来たんだよ)久しぶりの日本だし、もちろん張大人とフランソワーズのご飯も楽しみだけど滞在中はたっぷり楽しめるからさ、どう?僕と一緒にちょっと食べ歩きにでない?」
「素敵!行くわ!行く行くっ!!ピュンマっすぐに支度するわ!」


収納室から出て、ジョーの部屋、ピュンマの部屋と通りすぎていきながら、2人は楽しそうに会話する。


「じゃあ、ジョーも誘ってよ。車を出してもらいたいな」
「あら、ジョーはいいの。昨夜は美味しいアイスクリームを1人で楽しんだんですもの!2人で行きましょう!」
「・・・・いいの?」
「い・い・の!車でなんてっぴゅーっと通り過ぎちゃっておもしろくないわ!ねえ、駅前のゲームセンターにも寄って行きましょうよ♪ね?」
「うん、そうだね。たまにはのんびり公共交通機関を使っても楽しいよね」
「うふふ♪素敵、素敵、何を食べようかしら♪」
「あ、ちょっとだけ、おもしろそうなお店は調べてあるからさ」


ピュンマは楽しみにしてて、と。ウィンクを1つ、可愛い妹との久しぶりのデートにピュンマはウキウキと心を弾ませた。









end.










*おまけ*


<ジョー、どこにいるの?僕がフランソワーズとデートしちゃうよ?>
<っ!>
<”早く”すっきりさるか落ち着かせるかして合流しよーねー。僕は待つ気なんてないからねー>
<っっ!!>
<あ、何か”おかず”になるのそばにある?>
<っっs!!!>
<いらないかー。ジョーの補助脳のメモリって一度は解析したいよねー(笑)>
<うあああああっうるさいっピュンマっっ!!>
<あはははっ♪>


*おまけでしたー・・・*
















今ごろになぜ?!と、自分が一番思ってます(苦笑)
来年まで置いておくのもなんなんで。・・・アップです。




ビバ☆黒ピュンマ(笑)

付けたし↓

そして、・・・私はむっつり大魔王らしいです(友人談)
こういう話しは大丈夫でしょうか?・・・地雷の方いらっしゃいます???(ちょっと不安)

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Little by Little・23
(23)



「・・気分はどうかの?」


滞在先の主であるアイザック・ギルモアが穏やかに微笑みをその顔にのせて、ベッドに椅子をよせて篠原当麻のを診察していた。


「お早うございます、ギルモア先生・・。気分はいいのですが、正直ベッドの上にいることの方が辛くなってきました」


長くベッドの上で過ごしていたための全体的な気だるさは拭えないけれど。


「もう大丈夫じゃな・・・、どれ、今朝は一緒に朝飯を食べようかの?下のダイニングルームでな」
「はい・・でも、すぐにとは・・・その、シャワーとかもういいですよね?」


当麻は眠気を吹き払うかのように軽く利き手の甲で目元をこすった。


「気になるか?病人だったから仕方なかったろう。ジョーとアルベルトの看病では、その辺りまでは気をまわしてもらえんかったか?」
「・・・ぼくの気分の問題です。さっぱりしたいんで」
「かまわんが、疲れんようにさっとじゃぞ?よく髪を乾かすこと、そして、ベッドの上とは言わんが今日、明日中は邸内で大人しくしておくこと、よいね?」


確認するように当麻の顔を覗き込んだギルモアの、名を挙げたアルベルトとよく似たアイスブルーに少し緑がかった瞳にむかって当麻は頷いた。


「フランソワーズ」
「はい」
「・・・・」


同じ室内にいながら、当麻を診察している間フランソワーズは手に水のはいったグラスをのせたトレーを持って、じっと背をドアに貼付け、ギルモアからの指示を待っていた。
ギルモアが彼女を呼んだことで、やっとその足が当麻がいるベッドへと近づく。


「お早うございます、当麻さん」


フランソワーズはギルモアの斜め後ろに立ち、当麻にむかって微笑みながら言葉をかけた。


「・・お早う」


約1週間ぶりに当麻はフランソワーズをその、シナモンカラーの瞳に写す。
当麻が体調を崩し、夏風邪をこじらせて高熱に身をおかされている間の看病は、ギルモアが言ったようにジョーとアルベルト、そしてメンテナンスに入る前のジェロニモがこなした。


「お水と、こっちのお薬は・・・」
「朝食前に一錠飲んでおいてくれるかね?栄養剤のようなもんで、薬もこれで最後じゃな」


トレーを当麻へとグラスを受け取れる距離にまで移動させていたフランソワーズの手に合わせて腕を伸ばし、自分が良しとする距離を保った。
フランソワーズが取ろうとしている距離よりも遠くに線を引く。


「・・・・」


冷たすぎることもなく、自分の体温よりもひんやり冷えたグラスコップ1杯の水と、ラムネのような形の、味のない白い薬と一緒に喉に通した、当麻は、1/3ほど水を残して、それをまたトレーの上に置いた。
当麻が薬を飲み終えたのを見届けて、ギルモアが椅子から立ち上がった。


「じゃあ、儂は先に下におるでな」


フランソワーズも一緒に部屋を出て行くのだろう。と、予想して、当麻は何か彼女を呼び止める理由を探すが、頭にもこころにも何一つそれらしい文字が浮かんでこない。


「当麻さん、ダイニングでお待ちしてます」


フランソワーズはいつもと変わらないハズの笑顔で言葉を残し、当麻が予想した通りにギルモアと一緒に部屋から出て行った。


「・・・・うん」


ドアが閉められた音を聞いて、当麻は今、止まってしまっていた時間の流れを感じた。










####


バスタブが勢い良く熱い雨を弾き、当麻の体を伝いながれる泡をすべらせた。
使用しているゲストルームのユニットバスで、一週間ぶりのシャワーを浴びながら、わだかまっているものをすべて一緒に洗い流してしまいたかった。


「・・・・・なんなんだ、ろう・・」


ベッドに伏していた間の出来事も交えて、すべてが夢の出来事であったかのような感覚におちいる。



「・・あの、笑顔は・・・」


1週間以上寝込んだ当麻を渾身的に看病したのは、フランソワーズではなく月見里学院でルームメイトだった、島村ジョー、だ。そしてそんな彼を見兼ねて、アルベルト、ジェロニモが看病に参加した。


「・・・・フランが、・・それとも・・」


---・・・ぼく自身が・・・・・。







妄想とした意識の中で訊いた、いくつかの言葉が当麻の脳裏に甦る。


『彼は僕が看ます。・・・ああ、博士・・002のバイタル・チェックデータと術中の人工心臓をサポートする血液循環・・・』


『ジョー、オレが代わる。フランソワーズをここには近づけさせんから、心配するな・・・。地下のジェットにだけ集中しろ。お前さんが決めたことだろ?優先させるべきは一体何か、見えてないのか?』


『・・・・・フランソワーズの気持ちは、よくわかる、から・・』


『・・・人が幸せになるのに”条件”や”資格”、”許可”や”権利”なんてない。判断するのは”自分”のみ。それは愛も同じだ。覚えておけ。』




アイロンがかった半袖のシャツに袖を通しているときに、あやめ祭のためにホテル用にまとめていた荷物が、きちんと洗濯されてゲストルーム内のチェストに収まっていることに気がついた。

彼の持ち物が、あやめ祭が始まるまでの間に毎週末訪れていたときと同じようにゲストルーム内に納められている。
月見里学院の秋学期が始まるまでの間、ギルモア邸に当麻が滞在することを認めているように。








「よ!ぼっちゃん、具合はもういいのかい?」


久しぶりに与えられていたゲストルームから出て、ダイニングルームへと顔を出した当麻を笑顔で迎えたのは、ダイニングルームとキッチンを仕切るカウンターテーブルのチェアに座った、グレートだった。


「よかったアルヨ!さあさあ座ってね!!」


キッチンからカウンター越しに首だけが見える張大人も、同じように嬉しさいっぱいの笑顔で当麻のために朝食を準備する。


「みんなは・・どうしたんじゃ?」
「アルベルトはクラークんとこでさあ、ピュンマと海は病院で、とっくに朝食を済ませて出ましたよ!」


張大人から教えてもらったことを、さも自分が彼らを見送ったといわんばかりのグレートの物言いに、苦笑しながら張大人は彼に朝食の配膳を促した。


「博士、今朝はジョー、食べるアルか?」


先にダイニングテーブルについて、朝刊を読んでいたギルモアに促された当麻は、10人の大家族が余裕で食卓を囲むことができるテーブルの、ギルモアの隣の席についた。


「フランソワーズに呼びにいかせたわい」
「・・・と、噂をすれば」
「?」


リビングルームへと通じるドアとは違う、バスルームやイワンの部屋のある方角のドアから姿を現したフランソワーズに、ダイニングルームにいた者の視線が集まった。


「これはこれは、姫、今日もお美しいこと変わりなく・・我が輩っ」
「フランソワーズ、ジョーと一緒じゃないアルか?」


グレートの長台詞が始まる前、朝食をのせたトレーを彼に押し付けた張大人は大きな声でグレートの”我が輩”の後の言葉に自分の質問をかぶせた。


「おいおい、大人!我が輩の姫へ愛ある朝n」
「朝っぱらからうるさい男アルね!モテない証拠アル!」
「・・・今はちょっと手が離せない、ですって」


二人のやかましいやり取りの声に消されてしまうほどの音量で、フランソワーズはジョーの様子を報告した。


「アイヤー・・!いっつも”手が離せない”アルよ!いつ離せる日が来るアルか・・???」
「・・・まったく、みんなが揃うときには顔を出せと言っておるんじゃがなあ・・。何がそんなに面白いのか・・」
「いや、博士。博士がそれを言ったらおしまいなんじゃ・・・・?」


押し付けられたトレーを持って、ギルモアのそばに立ったグレートは、こっそりと当麻の様子をうかがった。


「・・ぼくが呼びにいきましょうか?」


そのグレートが、当麻の発言にトレーの上にある張大人特製薬膳エネルギーチャージ100%の熱々な朝粥をテーブルに落としそうになる。


「あっっっちっちちちのちいいいいいっ!!」
「アイヤイヤイヤー・・のヤー・・・気にしなくて良いアルよ!当麻くんは我が家のゲスト様様ね!そんなことしなくて良いあアルのことよ!!」


こぼしてはいないが、張大人はキッチンからテーブル用の布巾を持って飛び出して来た。


「そうそう!その通り!ぼっちゃんのお手を煩わせるようなコトではございませぬぞ!」
「そうアル!呼ぶなら”通信”でも十分ぶんぶんアルからね!」
「そうだ!通信!通信がある!そうアルなあ!なあ大人!」
「あるアル!そうアル、あるあるアルミ缶の上にあるみかんアル!」
「おお!!”アルミ缶とあるみかん”たーシャレてるねえ!大人!あんたのシャレおシャレだねえ!」
「それで、島村は彼の部屋ですか?」


彼の部屋かと聞いている自分であるが、フランソワーズがダイニングルームへと入って来たドアの方角には2階への階段はない。
当麻の言葉に慌てふためくグレートと張大人の二人は、同時にジョーへと脳波通信を飛ばす。


「儂の部屋じゃよ」


ギルモアはグレートにむかって「はよ食わせんか」と、無事であった朝食の配膳を催促しながら、にっこりと当麻に笑ってジョーのいる場所を教えた。


「ギルモア、先生の?」


しかし、それは嘘。


「そうじゃ。探しものをさせっていたんじゃよ・・・・。当麻くん、ジョーのことは気にせんで食べなさい」
「当麻さん」


いつの間にか、グレート、張大人2人の後ろに立ち、彼らの背中にそっと手を添えて落ち着くようにと仕草で伝えたフランソワーズが、当麻に向って声をかけた。




『・・・・・当麻さん・・、を、たくさん、傷つけたの・・、私のせいだわ・・・・私・・の、せい・・』




フランソワーズが呼んだ声のイントネーションが、呼び起こした、フレーズ。




「ジョーのことはお気になさらないで。・・いつものコトだもの」




自分の腕に点滴を打つジョーの背後に立ち、泣くのを必死で堪えた喉でひきつらせた声。
その声にむかって言いたかった言葉を思い出した。





---・・・君を苦しませたり悲しまたりするために・・好きって言ったんじゃ、・・・ない・・よ。











『ごめんなさい・・・当麻さん・・・・・・・ごめんなさい・・・、ごめんなさい・・・』




ギルモアから視線をフランソワーズへと移した当麻の耳に、熱と薬のせいで夢と現実を彷徨っていた間に聞いた、フランソワーズの言葉がこだまする。




『ごめんなさい・・・。ジョー・・・・・・・。私・・は・・・・・』






「彼は何か一つのことに集中し始めると、”それ”しか頭に入らない人だから・・」


フランソワーズはずっと微笑みをその顔に浮かべている。
ジョーにたいして『手のかかる弟』のような物言いをするフランソワーズに、大きく相づちを打つグレートは、トレーに載せていた粥のはいった器とレンゲをギルモアと当麻の前に置いた。




『私は、・・・・だから、・・・・・・許してくださらないと、』




「とっても美味しそうね!いい香り。・・大人、私の分もお願いできて?」



テーブルの上に置かれた朝食を見て嬉しそうに張大人に話しかけるフランソワーズに、当麻は微かに眉間をぴくりと動かし、疑問を投げかける。








---何を許せって・・・・・?


許すもなにも、ぼくはまだ変わらずにフランソワーズのことが好きなんだよ?






・・・・好きでいたいんだ。

















そんな顔・・・で、笑わないで。





####


<ジョーーーーーーーーッ!!ダイニングルームに今すぐに来るんだあっっ>
<大変アルっ!当麻くんがあんさんを呼びにいくと言てるのコトっ!!地下の存在がバレるアルーーー>


ジョーの通信機の音量が壊れそうな勢いの大音響。


「っ・・・」


002と005が横たわるベッドを前にして、彼らの改造データを読みふけっていたジョーは、突然の出来事に、座っていたいデスクチェアからひっくりかえりそうになった。


「・・・・いつになったら音量の”加減”がわかってくれるんだろう」


耳鳴りならぬ、頭鳴り。
キーンとハウリングしたスピーカーの気持ちになったジョーは額を押さえつつデスクチェアから立ち上がる。


<・・・了解。・・・だけど、あと・・さm>


「30分くらいでそっちへ向う」と言おうとしたけれど、再び大音量の通信で彼の意見は却下されたけれど、すぐにフランソワーズが、グレートと張大人を追い掛けるように通信をいれた。


<ジョー、・・・・・。心配しないで、先に朝食をいただいてるわね>
<・・・変に思われてもなんだし、今からそっちにいくよ>


フランソワーズへは、彼女の回線(チャンネル)に指定して言葉を返した。


<でも、さっき手が離せない・・って・・・・>
<・・・・俺と一緒にいるところ見られたくない?>
<!>
<彼は夏の間いるんだし、だろ?>
<・・・そんな風に考えたことなんてないわ、私・・>
<・・・・・ごめん、・・気にしてるのは、・・・キミじゃなくて俺だね>


彼女からの通信が返ってこないのを機に、ジョーはデスクチェアからたちあがった。




「・・・少しの間、ここを離れるから」


並んで眠る二人に向って言葉を口にするが、当然、こちらも返事は返ってこない。
ジョーはデスクチェアから立ち上がって、ぐっと両腕を伸ばして座りっぱなしだった躯を伸ばし、大きく行きを吐き出した。
それからメンテナンスルームを出て、キッチンの隣の収納室を改造して作った出入り口を使わないように通路を出ると、いつもとは違う方向へと歩き始めた。


<エントランス側(階段下にある地下階段)からそっちに行くよ>


一応確認のために、ダイニングルームにいるメンバーに通信を送った。


<駄目だ、ジョー!>
<?>
<博士の部屋で調べものしていることになってるアルヨ!>
<・・了解。博士の私室に直通のエレベーターを使う・・・>


ジョーはくるっと180度方向転換する。
通り過ぎたばかりのドア、ギルモアの書斎へと歩を戻した。





地下に設けたギルモアの書斎と、ギルモアが使用する寝室は直通できるように改造していた。”もしも”のときに備えて、すぐに非難できるようにである。
ギルモアの寝室を出ると、イワンの部屋となっているコモンルームに出る。そのイワンの部屋を共有するドアは、あと2つ。ジェロニモと張大人の部屋。

飾り窓にかけられている紗のカーテンは、眠っているイワンのために直射日光を避けている。
日が移動してもイワンの顔に日光が直接当たらないようにベッドの位置は今は使用されないジェロニモの部屋のドア寄りに少し、移動していた。


そのベビーベッドへと近づいたジョーは、夜の時間を堪能しているイワンを覗き込んだ。
すー、すー、と、聴こえる鼻づまりのない健やかな寝息の規則正しさが、ジョーの頬を緩めて、乱れたとは思っていない気持ちに平穏をもたらせる。

ふくふくとした白にピンク色に色づいた頬は、”美味しそう”と例えるフランソワーズの言葉を思い出させた。
ジョーは、触り心地の良い毛布から手が離れないような感じ。と、例えたいとこころ密かに思っていた。


爪が頬に触れてしまわないように気をつけながら、指の腹でそっと撫で、イワンに話しかける。


「・・・・朝のミルクはすませた?」















『・・・・ジョー・・・・聞いて欲しいことが、あるの・・』



あやめ祭3日目の夜。



『私は、・・・・だから、・・・当麻さんが、・・許してくださらないと、・・』



月見里学院からフランソワーズをホテルへと送り届ける道中に、ジョーはフランソワーズの中に居続ける人の話を聞いた。


その存在の大きさと、愛おしさと、恋しさ。
それを無意識に出会う人に重ね、取り返せない思い出を追い掛ける、未練。

重ねてしまった相手に、してはいけない態度で接していた。
そんな身勝手な心で、篠原当麻の好意を利用していた。







そんな醜い最低な自分は、俺に好きだと、想われていることに答えられる人間じゃない。



『当麻さんが、・・許してくださらないと、・・・私には、・・・・、この先の、ジェットが言うような、ことは、・・考えることは、何も、・・・ジョーに、・・・想われている・・資格なんて、好きだなんて、言う権利なんて、・・・ないわ』


フランソワーズの口から告げられた内容に、戸惑いや悲しみよりも、自分と”同じ”であることに、そちらの方にジョーは気持ちが大きく揺さぶられた。




---ジェロニモの言う通り、今なら・・少しはわかる・・。誰かを好きになっても良い、悪い、とか、そういうのに、”資格”や”権利”なんて・・・いらないってこと・・・。でも、今のフランソワーズの気持ちは・・すごくよく・・・わかるから。



フランソワーズが胸に落としている影の理由と、彼女がそう考えてしまう気持ちを、ジョーは深く自分のことのように理解できた。
ジョー自身、フランソワーズを好きだと言う”資格”なんてない。と、思い込んでいたから。そして、今までの彼の人生に様々な影を落としていた理由の1つでもある。




---今まで通り、”家族”で”仲間”・・・で、・・か。






ベース(サイボーグ)は変わる事は、永遠にない。自分たち。
それなら、これからの未来(さき)は、永遠に、このまま・・・?










それは、自分とフランソワーズにとって良いこと?悪いこと?












正直に、ジェットに指摘されるまで、気持ちを伝えたら、それで終わりだと単純に思っていた。
そこから先のことなんて、想像もしていなかった。

なぜなら、今手に入れた結果など、考えていなかったから。








フランソワーズに抱く気持ちを伝えて、受け取ってもらえて。
しかも、彼女も俺が抱いていた気持ちと同じ気持ちで、俺を想っていてくれたことが、わかった。今。




映画や小説のようにthe endで幸せの中で幕を閉じ、人生が終わるわけじゃない。ことに、ジェットに指摘されて気づいた間抜けさと、形容しがたい高揚感に支配されたが、それは一瞬で吹き消さなければならない状況となってしまった。




「篠原が・・許す・・・・・、か・・」


ベビーベッドの柵に腕を載せて顎をのせたジョーは、ふにん、ふにん。とイワンの頬をつついた。



---篠原が許す、許さないの問題じゃなく、フランソワーズ自身が・・・自分を許さないと・・。




「キミのmamaはみんなにはとっても優しい人なのに、自分に厳しすぎて真面目で・・ストイックすぎるんだよ・・・」


柔らかく弾力のある頬の跳ね返しに、今度は肉厚のたっぷりある頬の厚みを計るように軽く、むにん。とつまんだ。




<<<似た者同士ッテコトダネ>>>




いやいやをするように、顔を軽く左右に揺すったイワンが、うーっと声出すと、上半身を右側にねじった。


「・・・初めて見た」


腰を鳴らすようなストレッチをしている状態から、ぼってりと、寝返りをうったイワンに、ジョーはちょっぴり感動した。


「つかまり立ちが出来たんだから、・・・寝返りはできて当たり前・・だね」


眼の前にあるまんまるい後頭部。
いつもはたくさんの空気を含んでふさふさの髪が、長く枕におされていたせい頭の形にそってぺったりはりついる。


「・・・つむじは左回りなんだ」


枕にべったりと顔を突っ伏しているイワンのつむじを確認しながら、ジョーはそっとイワンのおでこに手を差し入れて、彼の枕に埋まっていた顔を自分の方へと方向を変えさせる。
息苦しくないならそのままにしておいた方がいいのかも、と思いつつも、大丈夫だとは思うが見ている方にはあまり良い寝相とはいえなかったからだ。


「本当に、やわらかいんだ・・」


頭の重さにぶにゅりと片頬が枕に押しつぶされて、イワンのぶっっくりとした唇がおもしろいように歪んだ。


「変な顔・・っf・・あはは・・・・イワンのこんな顔、貴重すぎる」


加速装置の使用で壊しまい、新しく買い直した(改良はまだしていない)携帯電話をジーンズの尻ポケットに入れていたと記憶していたため、手をそちらへとまわした。


「・・・・あれ?」


携帯電話らしい感触がポケットのどこにもなく、ベビーベッドに預けていた躯をのばして、自分の腰回り何度か確認した。


「・・どこに置いたんだろ?」


ジョーはちらりとベビーベッドの中にいるイワンへと視線を投げる。
眠りが深い様子で、当分は同じ姿勢だろうと判断し、その場からさっと音もなく離れた。


「お!やーっとおいでなすったな!我らがリーダー殿!」


開けられたままのドアから、姿を現したジョーにいち早く声をかけたのは、グレート。


「・・・お早う」


ダイニングテーブルにむかって軽く片手を上げて朝の挨拶をするが、その足は止まることなくすたすたと、ダイニングルームを通り過ぎていく。


「え、お、おい、・・・おーいジョー、ジョーぉぉぉ?ジョーさんやーい・・ダイニングルームはここだぜーえい?」
「アイヤー・・・朝食を食べに来たんじゃないアルかー?」


リビングルルームへと続くドアにまっすぐに向うジョーを、テーブルに着いている全員の首が彼にならって移動する。


「今、手が離せないからちょっと待って」


リビングルームへと消えた、ジョーに向ってグレートはレンゲに掬った最後の一口をばくりと食べた。


「ジョーだから、まあ・・仕方ないこったで」
「寄り道ばっかりアルよ、・・ここにくるまでに朝食以外で興味惹く何かを見つけたアルな・・・」
「朝食のコトはすっかり頭から抜け落ちとるんじゃろうて・・・。ジョーは人間の三大欲がちと欠けた男じゃからなあ」


テーブルに着いていた大人が立ち上がって、食べ終えた食器を片付け始めた。


<おい、聞いたか大人>
<人間の三大欲いうたら、あんさん・・・睡眠ネ>


「珈琲か、(冷温)紅茶、(冷温)ジャスミン茶、どれがいいアルか?」


フランソワーズがさっとキッチンへと足を向け、トレーを持って戻って来ると張大人が重ねた食器をのせて、またキッチンへと入って行く。


<欠けてるなあ>
<食欲は?>


「儂は、そうじゃなあ冷たいのでジャスミン茶をもらおうかの」


<見事に欠けてる、食べるときは食べるがなあ・・>
<そいで、最後は・・・>


ギルモアが自分の隣に座っている当麻に尋ねるように視線を投げかけた。


<それは我が輩、今後にこうご期待!>
<ワタシはノーコメントにさせてネ・・・>


「ぼくは紅茶を、お願いします・・あの、ぼく手伝います」
「病み上がりのゲストさんをこき使うなんてとんでもないアルよ!手はここに十分あるから、ゆっくりするヨロシ!」


張大人は隣で朝食で満腹になった腹をさすっていたグレートの手首を掴み、「役立たずだけれど、しっかり教育中あるよ!」と挙手させた・・・ところで、ジョーが再びダイニングルームへと戻って来た。


「・・・・おかしいな」


手には、ピュンマの(部屋にあった)デジタルカメラ。
首をひねりながら、またすたすたと歩いてダイニングルームを通り過ぎて行く。


キッチンから水音が聞こえ始めて、、フランソワーズが食器洗いをしだしたことがわかった。
その音に、ジョーは反応してくるりと躯を方向転換させると、キッチンカウンター越しからフランソワーズに尋ねた。


「・・・見当たらないんだ」


ざーっと流れる音に、かちゃかちゃと食器が触れ合う音に紛れたジョーの質問。


「書庫じゃないかしら?」


食器を洗う手は止めずに、首だけをジョーの方へと傾けてささやくように答えた。


「あ。ああ・・。そうかも・・・」


グレートが調べたあやめ祭3日目のプロムパーティを欠席した、篠原当麻以外のもう1人の学生、六間口護(ろっけんぐち まもる)の報告をを受けとったのが携帯電話だったことを思いだした。


「ジョー?」


今度は、フランソワーズがジョーの名前だけで尋ねた。


「すぐ戻る、よ」


彼女の質問に正確に答えて、また、くるりと躯を方向転換させると、ダイニングルームから出て行った。


「・・・も少し周りにも理解できる会話をせんか?」


二人の主語のない会話に、意味がわからず、ぽかーん。と口を開けているグレート。
”それらしい”と言う意味に”脳波通信”の多様で、”ない”人間には通じないことに非難を込めたギルモア。
張大人は、グレートの隣から、いつの間にかキッチン内へと移動していて、食器洗いをしているフランソワーズの横でぬっと腕を差し出して「ちょっとごめんアルネ」とテーブル用の布巾を濡らして絞り、ひょこひょことまたダイニングテーブルに戻って来て言った。


「いつものことアルが、ジョーは本当にマイペースね。寮では当麻くんにたくさん、たくさん迷惑をかけたんじゃないアルか?ワンちゃんっぽくみえてジョー本来の気質は猫ちゃんアルから・・・」


手際良くテーブルを拭く大人は、当麻の眼に今の2人がどのように映り、感じたのか様子を探る。
それは、彼を思ってのことだ。


「迷惑なんて・・・、島村は今までのどのルームメイトよりも・・一緒に・・・居て、」


当麻は文を途中で切り、言葉をかえた。


「・・・・・いなかったですし、・・色々忙しそうで、ほとんど1人のときと変わらなかったですから」








今までのどのルームメイトよりも・・一緒に・・・居て、居心地よかった。























振り返ってみれば、フランソワーズと一緒に居るときの心地よさに似た、空気だった。


















####


ギルモアは張大人の用意したジャスミン茶と一緒に、所用があるからとダイニングルームを後にした。
グレートは当麻の体調を気遣いながら、彼をリビングルームに誘った。


ジョーはフランソワーズに「すぐ戻る」と言いながら、結局はダイニングルームへとは戻ってこなく、昼ちょっと前にようやく自分の腹の空腹感に耐えかねたように、キッチンにひょっこりと顔を出して1人朝の残りの粥を温めていた。
ちょうどそのとき、昼食の用意をしようとキッチンへとやってきた張大人に見つかり、「お昼が入らないアル!」と嘆かれてしまった。


「みんなが食べるときに一緒に食べないアルから駄目駄目ヨ!」
「・・・つい」
「ジョーの”ついうっかり”は、可愛くないアル!」
「可愛いとかそういうので、判断するのはどかと思うけど・・ごめん、大人」


ぷんぷん文句を言うが、残り粥だけじゃ足りないだろうと、手早くそれに合うものを作り始める、張大人。


「いったい何してたアルか?」
「・・・携帯電話が見当たらなくて、・・ピュンマのデジカメを借りてイワンの変な顔の写真を撮ったんだ。・・・それから携帯電話を探しに(地下の)書庫へ行って、見つけて、ピュンマにカメラを借りるために部屋に入ったと連絡を入れた。そのままそこで、前回のオーバーホールの記録(ギルモアの走り書きメモ)を見つけたときに、ああ、そういえば朝ご飯食べてなかったなって気づいて、今ここにいるんだけど・・・」


ジョーが午前中の行動を話している間に、彼の朝昼ご飯ができあがった。


「地下の2人の進み具合はどうアル?」


ジョーはキッチンを出て、ダイニングテーブルではなくキッチンカウンター・テーブルののチェアに座った。
朝、そこにグレートが座っていた場所だ。


「日本を離れるからね。細部にわたってチェックをいれてる・・・・。いただきます」


座った途端にレンゲを掴み、ぱくぱくと勢い良く食べ始めた。


「ジェロニモは(邸に引っ越して来る前)ドルフィン号で軽く全身をみてるから、もしかしたらジェットよりジェロニモを先にして取りかかるかもしれない。ジェットは、・・怪我が多い分」
「慌てないで食べるアル」
「ん・・」


キッチンから出た張大人はカウンター・テーブルのジョーの隣に腰を下ろした。


「パーツが・・第一世代ということ考慮しても、ひどく新旧入れ乱れていて、応急処置のままの部分とか出て来たり・・・。・・・・このお粥、すごくおいしいよ」
「アイヤー・・・、応急処置だけして、そのまま問題ないからと博士にお願いせず放っておいたアルね!あのトリは!・・・山車は鶏ガラ使ってるアルヨ、今度はジェットで作るアル」
「食べたくないよ、そんなの・・腹壊す」


ぷりぷりと怒る超大人に苦笑しながら、ジョーは食べる事と報告を続けた。


「・・・それでさ、滅多に全身のチェックをさせないから、・・・話してるだけで、疲れてくるよ・・・。今のぼくはジェットのメンテナンスで役立ちそうな事はないな」
「アイヤー・・・予定より遅れそうアルか」
「確実に。だからジェロニモには悪いけど、アメリカ行きは9月まで伸ばしてもらうよ・・8月の頭にって聞いていたけれど、ジェットを何回かに分けて見ないと・・・今、博士がジェットの中を見ながらそのスケジュールを考えてる」
「アルベルトが先になるかもネ」
「それも考えてる。ジェロニモのメンテナンスに入る前、アルベルトをスキャニングすると思う。今日、彼が返って来たら、教えてくれるかな?・・・・あ、そうだ、」


皿と口の間を忙しなく往復していたジョーの手が、ぴたり。と、止まった。


「そうだ。張大人に話があったんだ」
「ワタシにあるか?」
「うん」


ジョーは手に持っていたレンゲを置き、隣に座る張大人へと躯の向きを変えた。


「”マクスウェルの悪魔”のゲーム参加者のサーチを頼んだときに、張大人が、見つけてきた閉鎖されてる中華料理店についてなんだけど」
「アイヤ!そんなことは気にする事ないアルヨ、別に今すぐって話しじゃないアルから、放っておいていいネ」


張大人は苦笑いを浮かべながら両手を左右に”バイバイ”するように振ってみせた。


「次にイワンが目覚めたら、書類に必要な細工をしてもらってそれで完成する。・・あとは代理人(弁護士)をグレートに変身してもらってか、コズミ博士に紹介していただいてか、を決めて欲しいんだ」


ジョーの言葉にびっくりしながら、張大人は、会話の先を促した。


「そ、それは・・・・・どういう風に、違うアルか?」
「・・・僕らが管理することになると、”永遠”にその土地は誰の手にも渡らない。一般社会の管理会社と弁護士に頼むと、”もしも”のときの条件に当てはまった場合、その土地や店などは、他人の手に渡るという形になる」


”もしも”のとき。





再び戦地へと赴かなければならない日を指している。




「・・・・・・張大人次第だから、今すぐってわけじゃないよ。だから、よく考えて決めて欲しい」
「・・・」


張大人は首だけをジョーへと向けて、彼の話を聞いていた。
ちゃんと彼と真正面で話すべきないようだけれど、興奮と驚き、そして胸の中で拭いきれない不安に、躯が固まってどうにも動かすことができなかった。


「・・店と土地の管理を、僕たちの手でこの邸と同じように管理するか、しないか、と」


ジョーは固まっているる表情の張大人ににっこりと微笑み、再び躯をカウンターテーブルと平行になるように戻し、レンゲではなく、箸を手にして張大人がぱぱっと作ってくれたおかずを食べ始めた。


「・・・・ちょっと前に土地と店を覗いたんだけど、放置されてけっこう長いね・・・・場所も商店街の中と言う訳でもなく、繁華街から外れているわけじゃないれど、落ち着いてるし、雰囲気もよかったよ。周りも問題なさそうだね、駐車場も月極があったし、駅からもそう遠くない。・・邸から往復1時間超えるのは気になるけれど、でもそれくらいなら、僕らには問題にならないし」
「み、観に行ったアルか?!」


いつの間に!と、張大人のつぶらな眼が精一杯見開かれた。


「・・・・・ちゃんと見たわけじゃないよ、事のついでみたいな感じだったし・・。契約前には、みんなで観に行きたいと思ってるんだ、すごく楽しみにしてる」
「・・・・・・・ジョー・・」
「それで、老朽化が酷いから一度建物を潰して更地にした方がいいみたいだね、水まわりも店としてはイマイチだったし・・・。一から建てるとなると建築会社も慎重に選ばないと。いくつかリサーチしてブックを作ったから、眼を通してみて。業者へのコンタクトは僕が取るから」
「・・・リサーチに、ブックまで・・・?!」
「ピュンマが手伝ってくれたんだ」
「デザインとか色々あるんだろうし、キッチン周りとかは張大人だってこだわりたいだろ?だから・・着工は早くても来年になるね・・・・急いで問題が出ても困るし、その辺は全部、張大人のペースでいこう。ごちそうさま」


ジョーは自分がおもっている以上に空腹だったようで、話している間にあっと言う間にぺろりと綺麗に食べ終えてしまった自分にたいして少しだけ鼻で笑った。


「お店ができたら、俺が・・一番目のお客になるって予約入れておくよ。忘れないでね、大人」


カンターテーブルのチェアから降りて、食べ終えた食器を手に、キッチンへと入り、自分の使った分の皿を洗い始めたジョーを、張大人は黙って見守った。


ぐずぐずとした感触が喉奥から始まって鼻がむずがゆくくすぐったくなる。
目頭が、ライターであぶられたようにどんどん熱くなっていく。どうしようもなく震え出すこころに反応する躯。






「善は急げって言うけど、慌てなくていいから。張大人が決めるまでの間は、あの土地は誰の手にも渡らない事だけ、009の僕が保証する」


皿をステンレスの水切り篭に置き終えて、水を止めると、濡れた手をぱっぱと振って水気を飛ばしながら、キッチンから出て行くジョーの姿が、滲んで見えない。


「じゃ、地下にいるから」


キッチンから出て来たジョーは、チェアに座ったままの張大人の肩に ぽん。と、手をおいた、そのとき。


「じょっおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっワタシはあんさんに一生ついていくアルよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!あんさんはワタシになくてはならんお人アルゥウウウウウウ」
「うわああああっ!?」


どおおん!と、全身で渾身の思いをこめてジョーに飛びついた。
予想できなかった張大人の行動とその勢いに、ジョーは思いきりキッチンの出入り口隣の収納室(地下へと続くドア)に背中と後頭部を打ち付けた。

その衝撃にたしいて、地下への侵入者有りと判断したセキュリティが”アラーム”を鳴り響かせた









====24へと続く。









・ちょっと呟く・


今回は96でした(おいおい)
それにしても、9はみなさんからタックルされまくってますね(笑)
すでに、8(一番飛びついてるイメージが)と6は終えてます。
全員に愛のタックルされる日も近いですね。


次は誰にタックルさせましょう?


それより、9が大人になってる・・・。
吹っ切れたか?この女は俺のもんだからな!はは~ん♪で大船に乗っているのか?!
・・・・・船に斧でばっきーん、穴を!!
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『兄と妹で五題』で3誕/2010



1.大事な妹に手を出すな。


「・・・最強のサイボーグさんとやら」
「は・・い・・・?」

ここは、国際空港@フランス。

「小学生にしかみえない”童顔”の男でも、拳で諦めさせようなんて思ってないさ」
「・・はぁ・・・」

車をまわしてくるから、待ってて!と久しぶりに会った最愛の彼女に言われた。

「けど、」
「・・・けど、なんでしょう?」


その、彼女1人が迎えに来てくれると思ったのに。

「どんな男だろうと、オレ以上の存在になんてなれっこないからな?」

それでホテルへ直行してさ・・

「・・はい・・、わかってます」

それで、まあ、夕食くらいの時間までに彼女の家に帰せばいいって思ってたのに。
(今は朝の7時・・)

「フランソワーズにとってオレ以上の男なんて一生現れないし、ましてそんなヤツなんていないし・・・」
「・・・・・・」

なぜ、今、僕は初対面の彼女のお兄さんと2人きりで、・・・この寒さ吹きすさぶ1月の空の下、並んで立っているんだろう。

「・・・それで、ええっと」
「ジョー、です」

車でくるま(な)・・あ、だじゃれ?

「ああ、そうそう。ジョー、ジョーだったな」
「はい・・(わざとだろ?名前覚える気ないだろ?)
「・・・妹がとっても世話になっているらしいが」
「とんでもないです、・・僕の方が」

うー・・早く来ないかなあ、フランソワーズ。

「世話ってどういう類いの”世話”なんだ?」
「え・・・・」

え”・・・・。そりゃ、もちろんあっちこっちも、そっちどっちも・・。
なんて、言えません・・(涙)

「もちろん、”仲間”でリーダーの君だから、ええっと・・」
「ジョー、です(わざと、だな)
「ああ、それそれ」
「・・・」
「その最強のサイボーグの、ジョーさんがてっとり早く仲間の女の子に手を出した。なんて事、ないですよね?」
「ありません!」

てっとり早くなんて、失礼な! 彼女が仲間じゃなくたって、サイボーグじゃなくったって、僕は絶対にフランソワーズを好きになってたさ!・・・・なっs、なってたっ!!考えるな!

「・・・・妹を心配するオレの、勝手な妄想ですよねえ?もちろん!あはは、そうですよえ!世界を救ったという方が、」
「そんな言い方、やめてください・・、お願いします」

フランソワーズのお兄さんは、煙草をふかして歩いていくビジネスマンらしき団体を目にして、おもむろに自分もポケットから煙草を取り出した。

「まさかリーダー様が、オレなんかの妹にあ~んなことや、こ~んなことしてるなんて!・・・・ないですよね」

声の気迫に思わず大きく縦に頷いた。
・・・ごめんね、フランソワーズ。僕は君のお兄さんに会ったその日に、・・・嘘をついてしまった。



「もちろんだ。ああ、ほんとオレは馬鹿ですね!!あははは、仲が良いだけで、それも”仲間”だからこそ、・・・・なんですよねえ?」

フランソワーズのお兄さんが僕に微笑みながら一本すすめてくる。

「・・・・はい」

眼が怖いです、お兄さん。
こんなことを考えてはいけないのかもしれないけれど、こころの底から003がお兄さんじゃなくてよかったと思いました。

「お、やっときたな下手っぴめ!」

僕は吸えもしない煙草を一本手に取ったとき、フランソワーズが運転する車がきいっと眼の前に止まった。




ああ、フランソワーズ、(もう手遅れであるけれど)キミに手を出すなって釘を刺され続け、流血中の僕を早く手当てして欲しいんだけど。 そんな時間と暇(逢瀬)は、このフランス滞在中にあるのかなあ・・・。










2.そんな××は断固認めん。


「ええっと、・・・サイボーグさん」
「ジョー、です」
「ああ、はいはい。・・・フランソワーズが、キミとパリ市内に行くって張りきってるみたいだけど」
「あ、はい・・。午後から彼女と一緒に出ます・・ジャンさんはお仕事と訊いてたんですけれど・・」

ホテルに部屋をとってあったのに(そこが僕とフランソワーズが唯一2人きりで、むふむふ♪できるところだったのに・・)
この、フランソワーズの兄貴にキャンセルを命じられて、24時間監視つきの、・・嬉しいような哀しいような、複雑な環境に身をおくことになって2日目。

「休んだから、オレ」
「は?」
「すべての有給を君が滞在中の期間にぶちあてたから♪」
「え?!」


マジかよっ!


「ほらね、やっぱり僕にとっては大切な妹で、しかも誘拐されて改造されたもんですから、リーダーさんを信頼してるのはもちろんだけど、眼が離せないっていうか・・・、今が一番眼を離してはいけない気がするんです、・・・兄の感と言うもんでしょうかねえ」

・・・・・・正解だったんだ!僕の判断は、うん。(大丈夫、まだ大丈夫だ!)

「キャンセルしてくださったと思っていたホテルがキャンセルされてない、みたいですし」

あ・・・(滝汗)・・・ば、バレてる(ナイアガラフォール汗)。

「いえ、それは・・・その、やっぱり滞在期間が長いから、・・ええっと。もしものときにやっぱり、ほら、あれですよ」
「そんな!気を使わないでください、オレ的には”ここ”に居てくれた方が、”とっても助かる”’んですからね!」

・・s、そんな・・の無理ですっ!僕たちどれくらい長い間・・・・。

「キャンセルしときましたから♪」

なにっ?!え?・・ちょ・・・。

「遠慮なく、自宅と変わらないように過ごしてください」

それができないからっホテル・・・。


ああああああああああっs・・・・フランソワーズゥゥゥッッッ・・どうするんだよおお(号泣)。











3.たとえ過保護と言われても。


「もお、兄さんったら・・・」
「なんだよ」
「言ったじゃない、彼は・・・私の特別な人って・・・」
「わかってるよ。だからほら、お前と寝食をともにしても、ちゃーんと大人なオレは受け入れてるだろ?こころが広いぞ!オレは」
「・・・そういうことじゃなくって・・ちゃんと彼を・・・、ねえ・・兄さん」
「・・そんなに好きなのか?」

僕は、兄妹のそんな会話を少し離れた場所で密かにきいていた。

「・・・・好き・・よ」」

ギルモア邸に送る絵はがきを選んでいるふりをして。

「そうか・・」
「・・・」
「・・・・・・・・・・たとえ、シスコンとか、過保護すぎるって言われても、お前はオレの妹なんだ、このジャン・アルヌールの妹に生まれて来たんだから、・・・残念だけど、諦めろ、な?」
「そんな風に言わないで、・・私はもう、子どもじゃないの・・。ねえ、兄さん、いい加減にしてちょうだいね?」
「うるさい・・。お前はオレにとってはまだまだぴーぴー泣いて手のかかる、手をかけなきゃやってられない・・ファンションなんだよっ」


ジャンさんは、腕をフランソワーズの肩にまわして、抱き締めた。


---わかってる。それくらい・・、わかってるさ。けど、そうさせてくれよ・・・。お前はオレのたった1人の妹なんだから、さ。



認めたくなんだよ・・・、まだもう少し、・・オレの生意気な妹でいろ。





ジャンさんの悪口を言うのは、こころの中でも止めようと思った。
僕には兄妹の関係なんて、わからない。けど・・もしも、僕にフランソワーズのような姉か妹かいたら、きっとジャンさん以上の態度になっていたかもしれないって思えた、から。










4.いつでも捨て身で護ってやる。

アルヌール家での滞在生活、2週間目。
フランソワーズとジャンさんの家での生活も大分慣れて来たころ、偶然バスルームでジャンさんと遭遇。


「あ・・」

自然と視線が、そこへと固定された。

「・・ああ、これか?」

彼は、バスローブを着て、緩くウェスト部分をとめていただけで、閉じきってないバスローブからひどい火傷がみえた。
それは、左の首元から鎖骨で大きく広がり左肩を覆って、腹部にまで達している、酷いものだった。

「・・・・・・事故、ですか?それとも」

ジャンさんはフランス軍所属。その訓練中におった傷?

「事故っていえば・・事故だけど、事故とは思ってないな。・・・・こいつは、戒められたってやつだ」
「?」
「フランソワーズが連れさられていくのを、数ブロック離れた場所から、オレは・・・みつけて」
「え・・!?・・その場所にいた・・んですかっ!」

ジャンさんは僕の驚き具合に、少しだけ苦笑しつつ僕の背後の廊下にフランソワーズの気配がないことを、確認して話しをすすめた。

「いたっていうより、・・バスの中から。あんときは訓練生だったから、寮生活でな。週末にしか家に帰られなくて、いつもの場所でオレを迎えに待っているフランソワーズをバスの窓から探すのが、習慣だったんだ。それで、偶然に、・・・・バスを飛び降りてフランソワーズが連れ込まれた車をおいかけたときに、ばーん!ってな」

”ばーん!”の声にあわせて、ジャンさんは手を叩いた。

「病院に担ぎ込まれて、意識不明の重体で、妹はその日から音信不通の行方不明で、・・・大変だった」

ジャンさんの瞳が、当時を思い出したのか、鈍く揺れた。
知らなかった・・、そんなこと、フランソワーズは一度も・・・・。



「・・・・ジョーも辛かったんだろう?色々と・・あるよな、大なり小なり、人にはさ」


瞳の揺れを誤摩化すように、いつもよりもぐっと口角を引き上げた笑みをみせた、ジャンさん。


「・・生まれたときから天涯孤独の身だったので、そういう気持ちは・・」
「あ、・・ああ・・・。きいてる、そうだったな。・・悪い」
「い、いえ・・ジャンさんが別謝ることじゃ、ないですよ」


ジャンさんは、ふうっと肩から息を吐き出し、バスルームを僕に譲ってくれた。

「フランソワーズには言うなよ?知らないから」

ああ、やっぱりそうなのか。

「はい、・・わかりました」
「ま、コレはそんときのってやつだよ。・・・妹を捨て身で護れなかったことを一生忘れないために、戒めるために、なくちゃならない大切なもんだ・・・、二度と、同じ事は繰り返さないってな。今度”何か”があったとき、・・護ってやりたい、・・いや、護ってやるんだ」


ぱんぱん!っと、バスルームからでていくときに、ジャンさんの手が僕の肩を強く叩いた。
同じ男として、その手の強さと大きさ、温かさに、・・・僕は少しだけ嫉妬した。






<・・・・ジョー・・>

バスルームからジャンさんを見送った後に、届いた通信。

<・・・・・聞こえてた?>

彼女の部屋は、バスルームの隣。
薄い壁が原因じゃない、・・彼女の性能の良さと、僕とジャンさんの関係を心配しての、せい。

<ジョー・・・そばにいて・・・私・・>

脳波通信を通した電子音なのに、彼女の声が涙に濡れていた。

<・・・・うん、じゃあ・・リビングにいくよ>
<・・・そのまま、バスルームに、いて。・・・・・私がそっちへ行くわ>
<でも>
<お願い・・ジョー・・、今すぐに・・愛して・・>









バスルームから一番遠い部屋でもシャワーの音が聞こえて来る。
オレはその音を聴きながら、自室のベッドで手足を投げ出して仰向けにねっこりがり、何もない天井を見上げていた。


フランソワーズが帰って来て3年が経った。
1年にそのうち3回、4月から6月の3ヶ月間ほど、日本に行った。理由は”体”のこともあったが、それだけじゃないことを知ったのは、・・・まあ、国際電話の数と届く手紙に小包を見れば、気づかない方がおかしい。




『彼に・・会ってみたい?』
『別に』
『・・・兄さん』
『なんだ?』
『彼に、・・・・会って・・くれないかしら?こちらへ遊びに来てもらいたいな・・・。・・・と、・・くべつな、人なの・・・だから、兄さんに紹介したい、な・・』




オレが護ってやれなかった間。代わって彼が護ってくれていた、と教えてもらった。 今、こうやってフランスに帰って来られて、またオレと一緒に暮らせるようになったのも、全部、彼のおかげだと。

その、彼に会って欲しいと、言われて、nonとは言えない。

礼も言いたかった。
奪われた妹をオレの手に帰してくれてありがとう、と。


改造されたと言うけれど、妹は前も後も変わりなく、オレの妹のままだった。
歳をとる事ができないと言うけれど、あくまでもそれは見かけだけの話で、オレにはちっとも関係のないことだ。

本当は、オレに会うことも、フランスに帰ってくる事も怖くて、諦めていたらしい、
その妹を、説得したのが、彼。




『君の一番の幸せを叶える事が、僕の幸せ。・・・だから、僕のことが好きなら、まず、フランソワーズが一番幸せな形を築いてくれなくちゃ、駄目なんだよ』




アムールを歌うように口にする国の男でも、そんな台詞は滅多に吐かない。
好きな女と離れて暮らす事を勧めるなんておかしいじゃないか。
そんな幸せなんかを追い掛けさせるよりも、自分の手で女にそれ以上の幸せを与えるのが本当の男ってもんだろう?

本当にフランソワーズを愛しているのか?他に好きな女が出来たからの、厄介払いじゃないのか?






「日本人は風呂好きだと言うが・・・」


不自然にバスタブを打つ水音が、かれこれ一時間以上続いている。
ここでの滞在期間一番長い風呂だ。
ときおり女の短い悲鳴のような声が混じるのも、滞在期間中、初めてのことだ。



しかも、その声は自分の全く知らない女、の声・・だ。








妹とは結びつかないことに、感謝した。
たとえ、妹自らがバスルームに足を運んだとわかっていても。


「きかれたのかもな・・しまったなあ・・・。アイツの力ってのは一応教えてもらってたけど」


1月8日の木曜日にこっちに来て。と、オレはデスクのカレンダーへと首を動かして数えた。
15日で1週間。明後日の24日の後、・・・・26日に彼は日本へ帰る。


今日まで彼は一度も妹に触れなかった(朝の挨拶のハグとキスだけは黙認したけれど)。
もしも、オレがバスルームであんな話を彼にしなければ、初日のオレの願い通りに、彼は妹に触れることなく日本へ帰っていたことだろう。


「男として、どうよ、それは・・・(自分で釘を刺しておきながら、言うべきじゃないかもしれんが)


イマイチ頼りない地上最強の戦士だ・・・・・が・・・。



バスルームの水音が止んだ。
おもわずベッドから飛び起きて、ドアを薄く開けた室内で、聞き耳をたてて息をひそめた。





何をやってんだ、オレは・・・。






「・・・・ジョー」


予想できない物音が数分続いてから、バスルームのドアが開いた。
せまいアパルトマンのために、あっと言う間にシャワー後の独特な香りが、廊下をつたって、薄くあけたドアから入って来る。



「今夜は、・・一緒に・・」






妹だとわかっていながら、それが妹の声には聞こえなかった・・・・。






「部屋に戻らないと・・フランソワーズ、駄目だよ・・さすがに」
「気づいていても放っておいてくれているのか、眠ってるか・・よ。お願い・・」

廊下に出れば、どんなに声を潜めてもドアさえ開いていれば聞こえてくる。
フランソワーズの改造云々よりも、耳がいいのはアルヌール家の遺伝なような気がした。

「・・、知らないふりをしていてくれたってことだろ?明日が怖いなあ・・それって」
「今夜は、・・・1人でいたくないの、ちゃんと明日、いつもの私でいられるように・・兄さんには私が言うわよ・・ね?」
「なんて言うんだよ?」
「・・・・抱かれたかった?」
「フランソワーズ・・・ストレートすぎる、それは却下。僕が殺されるよジャンさんに・・」
「大丈夫。返り討ちにあうから」
「・・・・お兄さんだよ、君の」
「だって・・あんな話しを、・・私、知らなかったのよ・・私のせいだわ・・ジョー、私、私・・兄さんになんて酷い傷を負わせてしまったのかしら・・・」

ああ、やっぱりバスルームでの会話を着替えてしまったのか。
フランソワーズには、この傷は彼女がいなくなった後の訓練中の事故だと言っていたから。


・・・ショックだったんだろう。




ごめんな、フランソワーズ。
嘘をついて。

本当のことを離さなくて。お前を悲しませたくは、なかったんだ。


終わった事に、・・過ぎてしまった事・・に、さ。


「・・・君のせいじゃないよ、・・・すべては・・だろ?・・それも終わったんだ」
「でも・・でも・・・・・。ジョー・・、今夜は一緒にいて・・」



・・こういうとき、オレに直接泣き言を言うお前だったのにな?



「・・・一緒に、いたいのは、僕もだよ・・・」

行方不明になっていた間の出来事も含めて、オレにとっては、妹に関していえばオレに知らない事などないと思っていた。



「部屋に来て・・それが駄目なら、私がジョーの部屋にいくわ、兄さんが起きる前に部屋に戻るから・・・」
「・・・・・・・」



けれど。


「・・・フランソワーズ」
「お願いよ・・一緒に、いてちょうだい・・」





オレは部屋のドアをそうっと閉じた。
鍵をかけて、ルームライトを消し、ベッドへと潜り込んだ。


明日の朝一番に、ミレーヌの部屋へ行こう。
そろそろ出張から戻って来てるはずだしな。・・こっちから行かないと彼女は、絶対に連絡してこない。
フランソワーズに遠慮して・・・、もうそんな必要はないと言う事を解らせるために、ジョーに会わせたらいいな、うん。


そうしよう。


24日の朝に、ミレーヌを連れてこっちに戻って来たら良い。



フランソワーズには、ミレーヌにいて”オレの友人の姉で、家が近いことを理由に一緒に食事をする”くらいの仲としか説明してなかったから、な。

びっくりするだろうな、フランソワーズ。いや、その前に怒るか?
・・・その辺はジョーに押し付けておいたらいいか、こういうとき男がいると便利だ。

便利だけど、面倒くさくなくて助かったけど、こういうの・・・・寂しいかも・・な。


「・・・・・もう、オレの前で泣く必要がなんてなくなってしまったんだな・・」


オレの部屋の隣、ジョーに使ってもらっている元は物置にしていた小さな部屋の、ドアが閉まる音が壁伝い、聞こえる。



ドアが開き、閉じるまでの間がいつもよりも長く感じた。





「Bonne nuit、・・良い夢を・・・」



オレとミレーヌ、お前に、そして・・・お前のスペシャルな彼氏と一緒に、誕生日を祝おうな。










バレエ一筋でそっち方面は大人しすぎて、別の意味で心配してたんだが・・・・。フランソワーズもアムールの国の女だったんだな」


・・お前が大切に愛されているなら、それでいい・・・か・・・。











5.知らない事などないと思っていた。


「兄さんがいないわっ!」

朝早くに僕の部屋から出たフランソワーズが、5分もせずに舞い戻ってきた。

「えっ・・・ええ?!まさかっ・・昨日のことがバレて?!・・家出・・とか・・・・」


昨夜は久しぶり、・・・本当に久しぶりに、彼女と仲良くできたので(お風呂場と、部屋で♪)・・・セットした携帯電話のアラームが鳴るまで、ぐっすり夢の住人だった。
そのせいでまったく、ジャンさんが家を出て行ったことに気づかなかった。


「これ!」

フランソワーズが握り込んでいた、紙を受け取ってそれを読む、その速度を知っているかのように、フランソワーズが暗唱した。


「『せっかくの有給だから少しは”彼女”にもまわそうと思う、24日の朝にはそっちに戻る。




後は、ジョーになんでもしてもらえ。


フランソワーズを頼むな、ジョー』・・・で、彼女って誰よ!!」





「・・・さ、さあ・・」
「私っジャンに彼女がいるなんて聞いてないわよ!知らないわよっ!

フランソワーズが僕に噛み付いてくる。部屋を出て行く5分ほど前までまとっていた、しっとりと昨夜を引きずった甘えるような香りはもう、ない。

「私がジャンについて知らない事なんてないはずなのにっ!酷いわっ!誰よその女っ」

僕の胸ぐらをグっとつかみあげる勢いのフランソワーズ。
その怒り方がなんだか気に入らない僕は、怒りを追い払うかのように彼女の背中に手をまわしてぽんぽん。と、その背を叩く。


とにかく、僕はジャンに彼女の恋人として認めてもらえたってことなんだと思うよ。
そっちには・・気づいてくれないのかな?





24日の朝までは、2人きりなんだよ?

「ジョーっまだそんなに遠くへは行ってないはずよ!」
「・・・・・駄目だよ」

眼のスイッチを入れそうになった、彼女をぎゅうと抱き締めて、腕の中で抵抗する彼女を、昨夜の余韻を残したままの僕が、キスをした。




end.







お題もと/Fortune Fate
イラスト/ふわふわ。り

ちゃんとジャンをこういう風に書いたのは初めて・・かも???


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1月25日に感謝します。
 ギルモアはふと視線を、膝の上に抱えながら書き込んでいたノートから外した。2、3度強く瞬きを繰り返し、老眼鏡がかかっている右耳の付け根にたまったかゆみを払う。

 吐き出すタイミングを逃して肺の底に溜まりつつあった古い空気を意識して出し切り、膝上のノートの2行ほどの文章をさらりと読み返す。

「うむ。まあ・・・ここはこれでいいじゃろうな」

 独り言を呟いてからノートを閉じた。
 手に持っていた万年筆のキャップを、自分が座る安楽椅子の前にあるガラス作りのローテーブルの上に置いたはずだと、探す。

「はて・・・どこにやってしまったのか・・」

 ギルモアは、老眼鏡を外しながらリビングルームの安楽椅子に腰を落ち着けるまでの行動を振り返った。










「博士、今日の夕食は張大人のお店ですからね」
「忘れないでください」

 朝食もまだ済ませていないと言うのに、もう夕食の話しかと、ギルモアは双子座のようにぴたりと隣り合って立つジョーとフランソワーズにむかって微笑んだ。

「やれやれ・・昨夜のパーティもまだここに残っとるのに」
「今日は博士が主役のパーティなんですよ?」
「そうです!昨日は昨日!今日は今日!!お散歩でもなさってしっかり胃を空っぽにしていてくださいませ、ね?」

 嬉しそうに秘密めいた微笑みと視線をかわす2人を微笑ましく見つめ、その日の朝食を軽めに終えた。

「・・・フランソワーズ」
「はい、博士」
「それは・・どうしたんじゃ?」

 朝食後、地下の研究室へと降りていったギルモアに、お茶を運んで来たフランソワーズ。その指に今までには見られなかった輝きがギルモアの注意を引いた。

「あ・・」

 トレーをデスクに置いて、ぱっと両手を背に隠した、フランソワーズの頬が赤く染まる。

「・・・ジョーから、か?」

 探るような上目遣いを投げかけた、ギルモア。その視線に、さらに頬を染め上げていくフランソワーズだけれど、こくん。と、素直に頷いた。

「昨日・・もらったんです、彼から・・・」
「どれ、見せなさい」

 ギルモアは手のひらをフランソワーズに見せながら、腕を伸ばした。

「え・・・」
「いいから、ほら・・わしに自慢しなさい」
「は、博士!」

 デスクチェアから立ち上がり、残念ながら左手ではない、フランソワーズの右手を取るとその薬指に光るシルバーの指輪をまじまじと見つめた。

「可愛いのお・・リボンの形かあ」

 フランソワーズの薬指を結ぶシルバーの細いリボン。

「誕生石・・やらではないのはチト寂しいのお」
「・・・今の、私にはこれで十分なんです、・・・いいえ、十分過ぎます・・」

 ギルモアは厚みのある自分の手とは対象的な白くて小さく、その手に似合った指輪と一緒にそおっと両手で包んだ。

「・・・おめでとう。よかったのお」
「ありがとうございます、博士。・・・博士も、おめでとうございます」

 手の中に包んだフランソワーズの右手をそっとあけて、改めて彼女の手とその指輪を見つめた。

「ジョーが、選んだのか?」
「・・・・はい」
「そうか・・・・・」

 そっとシルバーのリボンをギルモアの親指が撫でた。

「右手なのは、理由があってか?」
「・・・・・・はい」
「聞いてもいいかの、フランソワーズや・・・」

 フランソワーズのその指輪の感触を楽しみながら、視線をフランソワーズへとあげた、ギルモア。

「・・・・左手は、彼が夢を叶えたときにって」
「夢?」
「はい、私はその夢がまだ何か知らないのですが、・・・きっと手に入れるから待っていて欲しいって言われました」







ジョーの、夢....?











「博士?」

 所用で昼食の時間がずれてしまったジョーが、リビングルームで万年筆をじっと睨んでいたギルモアへと通りかかりに声をかけた。

「お・・おお、ジョー」
「どうかなさったんですか?」
「ん、いや・・・なに、・・・この万年筆のキャップが見当たらんくてなあ」
「どこに置かれたか覚えていらっしゃらないんですか?」
「そのテーブルの上に置いたはずなんじゃが・・・見当たらんのじゃ」

 安楽椅子から立ち上がろうとしたギルモアに、そのままで居てください。と、声をかけながらジョーはギルモアの周りをさっと見渡した。

「その前はどこにいらっしゃったんですか?」

 膝をついて、カーペットの敷かれた床に落ちてないか、探し始めた、ジョー。

「地下の研究室じゃ、そこでこのノートと万年筆だけを手にもって移動してk」
「あった!」
「おおっあったか!」

 ジョーは、安楽椅子の左側の毛足の長いカーペットと椅子の足のちょっとした段差に埋まっていたキャップをつまみ、ギルモアの膝上にあるノートの上に置いた。

「博士は、キャップとか消しゴムとか、そういうのを膝の上に置く癖があるの、気づいていらっしゃいますか?」
「むう?」

 初耳じゃ、とばかりに眉間に皺を寄せたギルモア。

「無意識なんでしょうね、」

 ジョーはそんなギルモアにくすっと笑った。

「作業なさっているときは膝上になんでも置かれるじゃないですか、特に筆記用具系は。・・なくされるのが多いのはそのせいだと思うんですけれど。ご自分では机に置いたと思われているようですが・・だいたい膝の上に置かれてますよ」

 膝立ちの状態でギルモアの膝を指差した。

「博士は気づいていらっしゃらなくて、こうやって膝から落ちてしまうんです、研究後の博士の椅子周り、いつも色んなのが落ちてますからね」
「そうかあ・・、気づかんかったなあ」
「また、見つからなかったときがありましたら、椅子周りの床を探してみてください」

 ジョーはギルモアの膝上にあるノートにちらりと視線を投げた後、その場で立ち上がり、ギルモアに背をむけた。

「待ちなさい、ジョー」
「はい」

 くるっと再びギルモアの方へ躯を戻した。
 ギルモアはジョーを見上げる。

「今日はの、儂の誕生日じゃ」
「はい!みんな楽しみにしてますよ、すでに張大人の店で準備中ですから」
「・・・お前とフランソワーズは?」
「僕たちは留守番役です」
「ほお、みんなの姿が見えんと思ったら、そうじゃったのか」
「はい」
「それで、ジョーや」
「はい?」

 なんとなくギルモアの話が長くなりそうな予感がしたので、ジョーは近くのソファに腰を下ろした。


「なんですか、博士」
「ジョーの夢とは、なにか教えてくれんか?」
「ぼくの、・・・夢?」
「ふむ、ジョーの夢じゃ」

 突然の質問に戸惑いよりも驚きを載せた顔が少しだけ傾いた。

「・・・ぼくの夢ですか、・・・・ええっと色々あるんですけれど」
「絶対に叶えなければならん、一番の夢は?」







「それは、もちろん・・・、博士、NBGを倒して、世界に争いのない本当の平和が訪れる日がくることです!!」








「でかすぎるっ」
「は?」
「それじゃあ、いつまでたっても・・」

 人の夢を聞いておきながら、ぶつぶつと文句を呟くギルモアにジョーは困惑する。

「博士?」

 苦笑まじりの呆れた表情がジョーをじっとみつめる。

「ジョーらしいと言えばらしいがのお・・やれやれ」

 ギルモアは視線を万年筆のキャップへと変え、それを手に取ってぱちりと閉めた。

「ちょっと散歩してくるでな。なに、近くの海岸までじゃ」
「今日は風もなく温かいですから散歩はいいですけれど、・・・ちゃんと厚着ででかけてくださいね」

 ギルモアが安楽椅子から立ち上がったので、ジョーもならって立ち上がり、ギルモアにカーディガンを着せた。そのギルモアが手に取ったトレンチコートよりも防寒にすぐれたダウンジャケットをすすめ、玄関から送り出した、。










 1人、海岸へむけて歩いて行く。
 一歩、一歩、確実に足を左右に前へと出して。
 目的の場所までまっすぐに。途中、横断歩道や階段で、足が止まる事があるけれど、進めて行った足はいつしか、目的の海岸の砂を踏んでいた。






 冬の晴れた海は空気が澄み、冴え冴えとした青が美しかった。


「ジョーの夢が叶う日まで、わしは何がなんでも生き続けないとのお・・・。じゃないと、フランソワーズのウェディングドレスが見られんということじゃてな」

 ざああっと寄せる波音の数を数えながら、自分の歳を数えた。

「まったく、・・・でかすぎるわい。009の夢は・・・。フランソワーズもそんな男のどこがええのか」


 悲観的な思いはない。
けれど、誕生日を迎えるという事は一歩彼らとの別れに近づいたと言う事。
 祝いのムードに浸れないと言うのが正直な思いだけれど、それを口にするのは憚られた。



 楽しめるときに、楽しまなければ、そんな思い出と日々をつくらなければ。
今度、いつその時が訪れるのか、解らない身の上なために。

「・・・誕生日か」

 砂場にゆっくりと腰をおろして、ギルモアは考えた。
自分が生まれて来た意味を、なぜ自分は今ここにいるのだろうかと。



もしも意味があるのなら、その意味は・・・・。

彼らをサイボーグにするため。
世界のために戦う戦士を生み出すため?




「違うわい・・そんな勝手なことが言えてか・・・」

 ギルモアは冷たい砂を掴み、ば!と海に向ってなげた。
 風のない今日、それは力なくギルモアのズボンの裾をよごした。


「・・・・・・・わしは、わしの存在が、彼らの運命を変えてしまった。その責任を取るために、何をせねばならんのか、今日この日から考えて行こう」






時間(いのち)に限りがある故・・。





 まず、手始めに。

「・・恋仲になった2人の幸せを護ることかの?」


 人のいない海辺でぽつりといるギルモアはよく目立つ。
ゆっくりと立ち上がって腰回りの砂を払っているとき、彼に近づいて来るよく知る気配が二つ。

「博士、いつまで散歩していらっしゃるのっもう日が暮れてまいりますのにっ!」
「そんなところに座り込んでっ、風邪をひかれたらどうするんですかっ!」

 気がつけば冴え冴えとした青は暖かみのある色を加えて青色ではなくなっていた。
 ギルモアはどれくらい長く、その場に座り込んでいたのか皆目検討がつかなかったが、立ち上がろうとしたときに、冷えて固まって動かし辛かった膝や腰などで、自分が散歩に出ていた時間を計算する。

「・・すまん、すまん。ちょっと色々考えとってな、考え事をするのはここに限るんじゃ」

 砂浜を蹴って駆け寄って来たジョーとフランソワーズは、冷たくなったギルモアの手をこするように握り、しきりに心配する。

「大丈夫じゃ!今夜の酒であったまる予定じゃからな!!」

 そんな2人を大きく広げたその腕にぎゅううっと抱き締めた。
 ぎゅうううっと抱きしめかえしてくれる2人は、とても温かかった。

 冷えきった体を、こころを・・・温めてくれる。




「今日・・博士が生まれて来てくださったことに、感謝しますわ」
「ぼくも、・・感謝します、ギルモア博士」












博士が生まれていなければ・・・。

改造されて”成功”していたとは限らない。
BGの手から無事に脱出していたとは限らない。



アイザック・ギルモアという存在が、この世に生まれてきてくれたから。



私は、大切な仲間と出会い、ジョーと出会い、恋をしました。
僕は、父と呼べる人ができて、仲間を得て、愛を知りました。

それが哀しい運命の糸で繋げられた先にあったことでも。














「「お誕生日、おめでとうございます」」
「ありがとう・・ジョー、フランソワーズ・・・」







end.













*ギルモア博士のお誕生日用のようでそうでない・・・?でもイベントに置いておきます!
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