RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
Pluie de printemps
rain02_01.gif


「雨だね・・・」

リビングルームのガラス窓いっぱいに広がる風景を、わかっていながらも口にした。

「昨日も今日も、そして多分明日も、明後日もだわ。ニュースで言っていたもの」

ティーカップの中で冷めた紅茶を飲み干したフランソワーズの溜息が、ほんのりと紅茶色にそまっているようにみえた。 彼女が午前中からずっと憂鬱そうに紅茶ばかりをすすっていることを知っているせいだろう。

「まあ、仕方ないことだけど・・・、」

季節の変わり目にはどうしても雨が続くものだ。
ジョーは遠慮がちにソファへと、フランソワーズの隣へと腰をおろした。

「だいぶんたまってそうだね」

フランソワーズの憂鬱の原因となっているランドリールームの前を通ってきたばかりのジョーは、敢えて口にしてみた。
彼女のご機嫌具合を図るために。

「乾燥機が可哀想になるくらいによ」

ティーカップから離れた唇が、つんっと拗ねた。

「あらら・・それは・・・」

フランソワーズの拗ねた横顔をチェックながら、テーブルの上に用意されているティーセットへと腕を伸ばす。

「大変だ」

ティ・コージーに仰々しく守られているティポットはまだ十分に温かかった。




リビングルームにジョーがやってくることをフランソワーズが知っていたのかどうかは、わからない。けれど、テーブルの上に用意されていたのは二人分のティー・カップ。

誰かが「憂鬱な気分の日のお茶のお相手」になってくれるのを待っていただけかもしれないが、ここは「僕」を待っていてくれたのだ。 ジョーは都合のよい方に解釈しておくことにする。




黙って自ら紅茶を注ぐジョーの姿に、何も言わないフランソワーズの顔は先程よりも随分機嫌がよくなっているように見えた。

「雨が続くとさ・・暇だよね」

ジョーがフランソワーズのティー・カップにも紅茶を注いで、ポットは空になった。

「そう思っているのはアナタだけだと思うわ」

フランソワーズの返答に、いやいやキミも暇だろ?という声がジョーの頭の中で響く。しかし、口には出さない。
出さない方がいいのだと、他の仲間達に比べて日の浅い付き合いの中で学習したことの一つだった。

「そういえば・・・さ」

ジョーはストレートのオレンジ・ペコに角砂糖を二ついれた。

「みんなは?」

ティーカップの中の紅茶を半分くらいにして、会話を再会させる。

「・・・家に居るのは私とアナタとイワンに、博士。・・・だけだと思うわ、今はね」
「思う、の?」

フランソワーズは角砂糖を入れないままだ。

「ええ、思うの。・・・気配もないし?」

ジョーが淹れたくれた紅茶を、初めて食べるスイーツを前にしてはにかむ女の子のような表情だった。

「気配?・・」

そんな表情(かお)をしているフランソワーズ、可愛らしい唇が紡ぎだした音の意味は、なんだかおかしい。

「ああ、うん。・・・そうだね、気配、気配・・・」

003らしい単語のチョイスだなあ、と首を立てに無意識に振りながら、次の会話を探した。



テレビの電源ははいっておらず、映りの悪い役立たずな鏡と化して、ただ置かれているリビングルームに、2人の会話意外の音はない。
雨足が強くなったのか、電話ボックスのように狭い箱の中でシャワーを浴びているみたいだった。




雨は降り続く。

海と雑木林に囲まれた、電線のない空だけが見応えのあるギルモア研究所という小さな看板だけが目印の、古びた洋館にも、街と同様に等しく。



「ジョーは・・でかけないの?」

雨音の中で飲む温かい紅茶を飲み干したフランソワーズから、再び会話が始まった。

「僕?」

先ほどよりもすこしだけ、フランソワーズの隣に遠慮がちに座った、1人分半の距離を縮める。

「雨の日はズボンの裾が濡れるから、いやなのかしら?」

彼の「癖」を誂う口調は密やかに、誰にも聞かれたくない内緒話のように囁かに。

ジョーの方へと体重を寄せたフランソワーズの重みがソファに伝わる。

「跳ねるのは、・・僕のせいじゃないよ」


上目遣いにジョーを観るフランソワーズの青がちょっぴり意地悪にみえた。

「雨なのに、ジョーが外出したらまた洗濯物が増えちゃうから、こうやって邸に居てくれて、感謝しているわ」



ーーーそんな意地悪なことをいう、キミには。



ジョーは、フランソワーズを抱きしめる。

「こうやって、」
「きゃっ!」

そして、抱き上げた。

「こうやってさ、キミを抱いている方がいいよ、…傘よりもさ」





end. Pluie de printemps…春の雨
スポンサーサイト
web拍手 by FC2
マンガのちから展@大阪!2014
マンガのちから展! 2014115manganotikara.jpg
web拍手 by FC2
| home |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。