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Guess who?
だーれだ?



夕陽色に染まった世界の中で、消えてしまいそうな彼を、捕まえた。

「だーれだ?」
「003」

”彼への殺気”もない自分の動きなど、気配を消したとしても意味がないと知っていながら私は今の私ではない私を彼から隠した。

「違うわ」

大海原にぽつりと浮かぶ・・・戦闘機の甲板の上。

「・・・じゃあ、誰かな?」

何処からともなく吹く風に、ただ揺らされている。

「誰かしら?」

私の冷たく・・・半分しか人らしい温もりのない手が、彼の視界を塞ぐ。

「・・・キミは誰かな?」
「あたしは・・・」


手を離すことなく、彼の背後からゆっくりと移動する。
今、自分達の足下にある戦闘機が、地球を半周するスピードよりもゆっくりと丁寧に。

「・・・003じゃない、キミは、誰だよ?」

掌に感じる、彼の睫毛が少し揺れた。

「・・・あたしは」


彼の前に立つ。
顔の上半分を、私の手が覆う彼の茜色に染まる顔を観る。

「・・・あなたの味方」
「僕の、味方?」
「そう・・・そして」
「そして?」


私は、そっと、彼の唇に。


「あなたを好きな、誰か」


自分のを、捺しつけた。


「僕を好きな・・・」





粘り気のある潮風が遠慮もなく通り抜ける。

「今は・・・」

急げといわんばかりの風に背を捺されて、早足に甲板を下りていった。

「・・まだフランソワ―ズには戻れないから」




僕の視界が解放された。
茜色の夕陽に染まる世界に、無防備に投げ出され、耳に残る・・・フランソワ―ズだった人の声と、唇に残る感触だけが、・・・僕が現実に此の世に生きているんだと感じさせてくれた。


僕の後を走り去る彼女は、僕の味方である、誰か。
その彼女は、僕を・・・好きでいてくれる。

その、誰かのために、生き残ったんだと思えれば・・・僕は生きて、生き延びて、・・・ここに居てもいいのかもしれないと、思えた。



「ありがとう、フランソワ―ズ」



燃える世界が落ちて行く。
・・・やがて、何もかもが闇色に塗りつぶされるだろう。


僕が進むべき道を、見失いそうになるときは、また。




”誰か”が


また。



「・・・いや、そうじゃないな。いつまでも彼女に慰められてばかりじゃ・・・」

強く力を込めて握り締めた拳を天高く突き上げる。
今まさに、広がろうとする闇に向って、一点の星のまたたきに誓うように。


「僕は、まだ、今は・・・009だ」




end.

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Alles Liebe
「年頃の娘が、コンパクトの一つや二つ、持っていたところで何も問題ないだろう」

004に前振りもなく突然手を取られたと思えば・・・003の掌の上に、ひんやりとした冷たく、観た目よりもズシリと重たい、ものが乗せられた。

「・・・あ、え?」

驚きに観開く青のまま視線を掌に落とすと、繊細な細工が施されて銀色の高価そうなコンパクトがあった。

「多少年季が入っているが、そう悪いもんでもない」
「004、どうしたの、これ・・・?」
「・・・まあ、気にするな」

改造後の話しだった。

「あなたの?」

『従順である』ことを確認された後に返還された。
当時、004が着ていた、服。と、そのポケットの中にしのばせていた物が、戻ってきた。

「いや、・・・まあ、買ったのはオレだが、使う予定だったのは別の・・」
「え?」

今、004の目の前にいる003が髪に飾るカチューシャも、二人が出会ったころにはなかったものだ。

「・・・いや、悪い。ただ、それの使い道ってのが、オレにはわからん。だからお前さんが使ってくれ」

004が取り戻したそれらと同時期に003も同じように手にしたのだろう。
だからこそ。

「いいの?」

彼女は察しがついた。

「いいさ・・・・」

裏切り者呼ばわりされる者たちしかいない戦闘機の中で、異質なそれが何を意味するのかを。

「本当に?」

追われる者ではあるけれど、戦闘機内での生活、放浪の旅先でもそれなりに人らしい生活を取り戻しつつあるが、それでも、彼女の掌にある銀細工のコンパクトを004が購入する目的が見当たらない。
003は「自分のため」に、わざわざ004が購入してくれた、などとも思えない上に、彼が自分へプレゼントを贈る根拠がない。


仲間だから、にしては、・・・それは美しく高価だ。



「ああ、中身はこっちにちゃんとある」

ハインリヒは黄色のマフラーの下から、チェーンにつないだ指輪をみせた。
それは、今、003が手にしている、コンパクトの中に入れていたものだった。

もう、この世にはいない女性の指のサイズにあわせた装飾品。


「・・・本当に、いいのだったら。ありがとう。とても素敵だわ、・・・大切にするわね」

丸いコンパクトの中央に輝く石は、・・・きっと指輪の女性の誕生石。

「新しいのを、・・・アイツに買ってもらうまでくらい、で、いいさ」
「え?」


004は、組んでいた腕から、こっそりと親指を立てて自分の背後を観るように示した。


「あはは・・いや、別に隠れてその・・じゃなくて、なんだかとても・・・真剣な話をしていて、・・・ただ、僕はその・・・」
「009!」
「よ、・・・もう交替の時間か?」
「あのっ、あのねっ009」

003は、自分の手の中にある美しいそれを009に見せようとしたが、それを004はそっと、人差し指を唇に当てて制した。


shiiii....



「003?」
「ん、あの・・・・」

003は004へとちらりと視線を流す。
004から貰ったものだから、彼が009に知られたくない何かだったのだとしたら、自分が嬉々として009に見せるべきではない。

「なんでもないさ、009」

その表情を読み取って、004が先に釘をさす。

「え・・・う、うん。そうなんだ」


「なあ?003?」
「あ、の・・・004、その、・・・でも、」

けれど、003は009に変に・・・004との間を誤解されたくはなかった。
誤解してくれるのか、どうかもわからないけれど、彼との間に仲間以上の、男女のそういった感情はないのだと、009にだけははっきりと意思表示しておきたい。

「いや、いいよ、無理に・・・お、教えてくれなくても、・・・さ・・・・」

なんともいえない、・・悲しいのか困惑しているのか、笑っているのか拗ねているのか、複雑な色をみせる009の表情を読みながら、004は片方の口角をあげてニヤりとほほ笑んだ。


「じゃ、・・003」
「あ。ええ・・・004、あ、ありがとう」
「・・・」

004は003に背を向けて、軽やかに歩きだす。
009はドア口に立っている。
その向こうが彼が行かなければいけないコクピットへ通じる通路だ。

「悔しかったら、009」

一歩、左側へと躯をよけて004へと道を譲った009の肩に、血の通わない重たい銀色の手を伸ばした。

「1日も早く003の気持ちに答えてやるこったな」

009の肩にぐっと力をいれると、003には聞こえないはずもないが、ひそやかに囁いた。

「?!」
「004!!」

009の驚きの表情をかき消すかのように、003のとがった悲鳴に近い声が飛んだ。

「ハハハ・・・それじゃ、邪魔者はひっこむとするか」


春の蝶を思わせるような動きでヒラヒラと手を振りながら、なんとも微妙な関係にある男女を残して去って行った。




「・・・004のばか」
「あの・・・ええっと・・・その、・・・・003・・?」
「な、なにかしら、009」
「・・その、あ・・・の・・・004から、そのさ・・・な、何をもらったの、かな?」






end.



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