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レンズ越しにみる世界は青かった。

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I have a fairy by my side

「あれ・・・?」

ジョーの、声のトーンでフランソワーズは彼が何を探しているのか解るようになっていた。

「何処に置いたの?」
「ココ、だと思うのだけど・・・?ないんだ」

不思議そうに、首を傾げてみせるジョーは、キツネにでもいたずらされたような表情だ。

「ないのなら、ココにはないってことじゃなくて?」

ジョーと対面するように立つフランソワーズは、思わずジョーの仕種につられて、同じ方向に首を傾げてしまった。

鏡合わせにように、同じ仕種で見つめ合う二人の横を何事もない様子で通り過ぎていく、ピュンマ。
彼の心の声は聴こえないが、言いたいことは、表情からしっかり読み取れた。


「え~・・・じゃあ、車の鍵を僕は一体何処に置いたんだい?」

不満そうに唇を尖らせてみせるジョーは、フランソワーズに甘えているとしかみえない。
普段の彼、紅い戦闘服を身につけているときの彼しかしらない場合、あまりの大きなギャップに腰を抜かすだろう。

「置いた本人がわからないことを、アタシが解るわけないわ」
「でもさ、ここに君が、車の鍵を何処にでも置くからいつも探さなくちゃならなくなるんだって、キートレーを買ってくれただろ?」

此処に。を、強調するとともに、空っぽのキートレーを持ち上げた。
底が浅い、濃茶色の本革で作られた正方形のそれは、フランソワーズが一時的に自国へ帰国するハインリヒに買って来てくれるように頼んだ物だ。

彼女なりのこだわりを持ってジョーのために選んだのだが、彼からは、そのこだわりに理解を示してくれる様子がみられなかった。

「ええ、そうよ」

あまり、物も対してこだわりがなく、必要なときに必要な物があり、問題なく使えたらいい、という考えである。
ミニマリストのように思えるが、フランソワーズが選んで買ってきてくれる物を素直に喜んでいるので、単に物にたいしての感心が薄いだけのようだ。

「それで僕はココに置いたんだ、間違いないよ」
「断言できるのね?」

ジョーは、力強く頷いた。

「ジョーがそこまで言い切るのなら、鍵を持ち去った誰かがいるといるということよね?」
「ストレンジャーに同機できるのは僕だけだよ?みんな知ってるから・・・鍵を持って行っても、意味がないんんだけどなあ」

そうね、とジョーの言葉に深く頷きながらフランソワーズは考える。

ーーー今回は一体どこに置き忘れたのかしら?

ジョーの言葉を疑いたくはないけれど、今までの経験からフランソワーズは素直にジョーの言葉を飲み込むことはできなかった。
好きな人だけれど、頻繁に同じことを繰り返されては、さすがに呆れてしまう。

ーーーそんな彼だからこそ、アタシは好きになったのかもしれないのかしら?

なぜ、彼を好きになったのかしら?と考えはじめたフランソワーズの姿に、ジョーは、フランソワーズはいつでも、どんな些細なことであっても真剣に僕のことを思ってくれているんだ、と感動していた。

彼の孤独な生い立ちから、たかだか、車の鍵ひとつ見当たらないくらいのことでは、誰一人として立ち止まってジョーの言葉を聞き、親身になって一緒に探してはくれなかった。

彼女に、こころ惹かれ始めている気持ちを意識しながら、ジョーは言った。

「昔にさ、」
「?」
「物をなくしたときに言われたことがあるんだ、きっとそれは、妖精のせいだって」

突然、今の状況からあまりに掛け離れた単語が出てきたため、フランソワーズの思考が止まる。

「・・・?」

一呼吸置いてからようやくジョーが放った単語の意味を理解して、彼女はゆっくりと問い返した。

「妖精・・・?」 
「うん」
「あの・・、お伽話に出てくる?小さな、羽根のある?」
「羽根があるかないかは、妖精の種類によりけりかもだよ、ない妖精もいるかもしれないしね」

車の鍵が見つからない、と困っていた先ほどよりも、真剣な様子で眉間にシワを寄せた。

「あ、ええ、そうね、羽根があるないは、確かにアタシは実際にみたことがないから言えないことだわ、ごめんなさい」
「ううん、大丈夫だよ」

フランソワーズは、気持ちを整えるように深く胸いっぱいに空気を吸い込み、姿勢を正した。


今年は例年に比べて、冷夏だった。
夏らしい、刺すような陽射しを肌に感じることのないまま、カレンダーは9月に変わった。
最寄りのスーパーで、ハロウィン用のデザインが施されたお菓子が店頭に並んでいたように思う。

季節の変わり目は、寒暖の不安定さが人の心にも多少なり影響する。
・・・が、彼は、そういった影響のせいで『妖精がいる』と言ったようではない。

「誰だったか思い出せないんだけど、・・・誰だったかなあ、雑誌で読んだのかな?あ、ああ・・・そういえば、もうすぐ発売日だ」

---あ、話しが変わってしまうわ。

ジョーはよく話しが飛ぶ。
その時々で、興味のあるトピックスへ躊躇なく進むため、ジョーとフランソワーズが話していると、度々、仲間達から会話の流れについていけないと苦笑されていた。

「な、なんだか素敵なお話に、思えるわ、妖精がジョーの車の鍵を隠しちゃうなんて」


ジョーは雑学好きなところがあるため、なんでもに興味を持つが、仕入れた元を覚えて居ないことがほどんだ。・・・しかし、もしも。


もしも、それが。


「ああ、うん。そう考えるとさ、なくしたときのイライラとか、焦りが少し紛れるだろう?」


満面の笑みをみせてるジョーに、フランソワーズは、嫉妬した。

もしも、それが雑誌やテレビなどではなく、・・・過去にジョーと関わり合ったことのある女性なら。

「そうね・・・・妖精だなんて・・・・・、発想、可愛いし素敵、ね・・・」

今ではなくても、彼の胸のなかで素敵な想い出の欠片となり、存在している、誰かは、こんなにもジョーを明るく微笑ませている。

離れていても、会えない日々が続いても、・・・。
変わることなく、彼は何かが見つけられないときは、かならず、妖精の話しがとともに思い出してくれるのだ。

ーーーいいな・・。

きっと、離れてしまえば、思い出してはくれないだろう。
誘拐され、サイボーグに改造されて、戦いつづける日々のことなど。
その中でしか存在していない自分は、戦い終えた後に思い出されるどころか、苦い記憶として、忘れ去られてしまうことだろう。

「で、さ?」
「え、あ、ごめんなさい・・・・なにかしら?」
「何処にかくしたんだい?僕の車の鍵を、さ?」
「?」

自身の思考にとらわれていた、フランソワ―ズはジョーが何をさして話したのかすぐにはわからなかった。

「ん・・・っと、」

零れ落ちそうなほどに大きな瞳を、不思議そうに瞬きさせるフランソワ―ズをみつめながら、微かにジョーは頬を染めた。






「妖精と、いえば・・・この邸では君、しか・・・その・・・ええっと・・・」


照れてしまって上手く、言えない。
言ってしまった後に後悔する。


「ま、いいさ、キミ(妖精)が知らないのなら、そのうちどこかで見つかると思う」


後悔して、不思議そうな顔で固まっているフランソワ―ズを置いて、ジョーはそそくさと自室へと逃げた。








end.
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