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Day by Day・36
(36)


地下の研究室から1階のリビングへ戻るのに、いつも使う通路は避けて戻る。ギルモアの寝室の隣にある収納室を潰して作った方の階段を一歩上へち進めるごとに、足が重くなっていく。
躰が正直にジョーの気持ちを表していた。




行きたくない。
会いたくない。






引きずるようにして、鉛のような足を一歩一歩階段へ乗せて行く。



フランソワーズへの気持ち。
言葉にできない気持ちを”形”にした音は、”好き”と言うもの・・。



初めての感覚が、胸に・・・・淡く咲くのは、初恋だから?





さくらが自分へむけてくる、気持ち。
真っ直ぐに投げてくる、素直な感情。


はっきりと、”好き”だと言ってくる強さに戸惑う・・・・。



さくらも、同じなのだろうか?
自分がフランソワーズへの想いで感じるそれと、同じ想いを彼女は抱いていているのだろうか?




そう考えると・・・・・辛い。
彼女のために、はっきりとした態度を取るべきである。と、頭では解っている。

そうしたい。
そうすべきだ。



自分の想いはさくらには向いていない。
その気持ちが変わることも、ない。

彼女が望むことを、何一つ自分は叶えてあげることはできない。




さくらのように、
もしも、さくらにすることを・・・自分がフランソワーズから・・・・



自分が抱く気持ちをフランソワーズに知られてしまったら?
彼女の口からはっきりと、否定の言葉を聴いてしまったら?












ずぶり、と絡まる生温かな感触。


・・・・心地良い。
入ってしまえば、後は重力に身を任せて、ただ・・待てばいい。


抗うことを止めて。
静かに温かな闇沼へと沈んでいく、だけ。
二度と這い上がってはこられない。と、思う。

消えてしまう。



俺はきっと、消えてしまう。









残るのは・・・・・・・・・サイボーグ009だ。
俺が消えても彼がいる。




彼なら大丈夫。
僕は平気。



やらなければ、いけないことがある。
サイボーグとして、世界のために、人々のために戦うことが僕の宿命。


僕は戦うために生まれてきた。
僕を生み出した、悪をこの世から消すために。


戦わなければ!
最強のサイボーグ戦士として・・・・!














俺が消えても、僕がいる。


紅の防護服に身を包み、黄色いマフラーが硝煙舞う風に靡く、僕がいた。
僕は穏やかに微笑んでいた。



「いいよ、消えても。僕がいるから・・・・僕なら003を護っていける。さくらの気持ちも受け止められる」

「・・・・どうやって?」

「今まで通りだ」

「今まで、通り?」

「そうだよ・・・・そうやって今まで生きてきただろ?」

「・・・今まで・・」

「003を大切に護る。ずっとずっと、大切に、大切に・・・・・009だからね」

「さくら・・は?」

「受け入れてあげるよ。彼女がそう、望んでいるんだからね。今まで関係した子たちと同じようにさ」

「それ、じゃ・・・・ダメだ」

「どうしてだい?・・・上手くいっていたじゃないか?」

「どこ・・・・が?」

「さくらも、満足だろう?僕を手に入れることが出来るんだ。好きな相手にかまわれて、抱かれて、幸せな時間を過ごして、さ。彼女は”ただ”の人だよ。・・・・また離れていくさ。時間の問題だね。それまでお互いが楽しめたらいいよ。・・・・プライベート・ミッションだ」

「っっ・・・・ぜ・・フランソワーズは・・・・」

「フランソワーズ?・・・・003だろ?」

「違う、フランソワーズ。だ」

「変なことを言うな、003だよ。僕が護るのは003だ」

「違う・・・違う、違うっっ!!!003はフランソワーズだっ!」

「イラナイよ、フランソワーズなんて・・・って言うか必要ないだろ?・・・003で十分だよ」

「っっっ?!」

「変なこと言うよね?”俺”は。・・・そんなの、僕のメモリには何もインプットされてないよ?何?その・・・言葉・・・初めて聞くよ・・・・載ってない・・知らないよ・・・何だい?それ・・・」

「・・・・」

「好き?って・・・・・・・・それって戦いに必要なことかな?邪魔だろ?いつ、そんなワードをデータに取り込んだんだい?」

「データ?・・・・だって・・・・?」

「・・・こんなモノがあるから、いけないんだよ。捨ててしまった方が良いと思う。冷静な判断ができないだろ?面倒臭いじゃないか・・・色々と。人らしい情報なんて消去するに限るよ。”俺”もよく知っているだろ?無駄な”感情”は一瞬の判断を鈍らせるんだ。特に、”情”と言うものは、ね」

「・・・・・それでいいの、か?」

「そうやって生きてきただろ?・・・何を今更、新しい情報に拘るの?”僕”には必要ない、よ。捨ててしまって欲しいね。”俺”が一番キライなものだったじゃないか?・・・どうせ、また傷つくのは”俺”だから、消去すべきだと、思うよ?」

「・・・・・・・・・好き、なんだ・・・・」

「無駄だよ、邪魔だ。・・・・エラーが起きているじゃないか・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・エラー?」

「好き、なんて僕には必要ないね。だから、エラーが出るんだろ?」

「・・・ダメ、なのか?」

「ダメに決まってるじゃないか・・・・人になってしまったら、戦えないよ!」

「俺は、人間だ」

「・・・・・僕はサイボーグだよ」

「俺は、人間なんだっっっっっっっ」

「・・・・・・・・・でも、僕はサイボーグ。そして彼女もだよ」

「知ってるっ!解ってる!それでもっっ知ってしまったんだよっ!!!俺は彼女が好きなんだっ、フランソワーズがっフランソワーズっっがっっ・・・・・・・好き、なんだっ・・」





「・・・じゃあ、”俺”はどうするんだい?」

ーーージョー、お前はどうしたいんだ?ーーー







アルベルトの言葉と、”僕”の言葉が同時に突きつけられた。





「俺は・・・・・」



















気が付けば、1階のコモンスペースへと続くドアの前に立っていた。











####

「お・・・・ジョー、リビングルームにいるぜ・・」

ダイニングルーム奥にある廊下側から、ドアが開かれたので、ジェットはそちらに視線をむけるとジョーが入ってきた。フランソワーズと向かい合う形で、彼は手に缶ビールを持っていた。フランソワーズはジョーの方へは振り返らずに、用意していた紅茶ではなく、ジェットにぶつかってこぼしたために飲めなかったオレンジジュースを、再び新しく注いだコップに視線を落としたままであった。

ジョーは微かに頷いて、足早にダイニングルームを通り過ぎる途中、フランソワーズへと視線を向けたが、彼女の顔は俯かれたためにルームライトに照らされた、光に揺らぐ亜麻色のカーテンの奥にしまわれていた。



リビングルームには、さくら、そしてアルベルトの姿がそこにあった。
フランソワーズが淹れた紅茶には手をつけずに、置かれたまま。
アルベルトは、ジョーがリビングルームにやってきたことを確認するかのように、じっとジョーをアイスブルーの瞳で見る。その視線にジョーは瞳を逸らさなかった。

「・・・・オレは邪魔だな」

アルベルトはソファから立ち上がり、フランソワーズが用意した紅茶を手に持ってジョーの後ろにあるドアへと歩く。アルベルトが持つ紅茶からジョーの鼻腔に、温かくなった空気にみえなくなった湯気の放つ紅茶の柔らかな香りが届いたとき、ダイニングルームへと移動して、アルベルトは後ろ手にドアを閉めた。


さくらは、閉められた音にスイッチを入れられたかのように、睨んでいた紅茶から視線をハズして、ぱっと顔を上げて、ジョーに困ったような・・・そして甘えるような微笑を向けた。


「・・・お仕事、こんな遅くまでがんばってるなんて、すごいっ」
「・・・・・・今、何時かわかっているの?」
「ごめんなさい・・・本当に、ごめんなさいっ・・・さっき、アルベルトにも怒られたの」
「アルベルトが怒るのは、当然だと思う」
「・・・どうしても、どうしても・・・言いたいことがあったの・・さっき、おじ様とここを出るときに、言えなかったから・・・」

さくらはジョーに座らないの?と訊ねるような仕草を見せたが、ジョーはそれに答えず、ドアから数歩ばかりさくらに近づいただけだった。

「なに?・・・・・それは今日じゃないと、今じゃないといけないことだったの?」
「・・・うん」

さくらは、ぎゅっと膝の上で拳を作ってから、一度視線を床に落として、ゆっくりと立ち上がると、ジョーのそばへと近づいた。

背の低いさくらは、ジョーの鳩尾(みぞおち)辺りに頭のてっぺんが来る。
近づきすぎると見上げるのがしんどいので、2歩半ほどの距離を開けてジョーの顔を真っ直ぐにみた。

「・・・・私、行きたいところが、あるのっ」
「訊いた、よ。それ・・・」
「うん、行ったわっ!でも・・・ジョーは勘違いしてるって言うか・・・私の言葉が足りなかったからっ」
「場所とかは、今じゃなくても良かったと思う、よ」
「そうじゃないのっ・・・・・・」
「仕事の状態によっては、無理かもしれないし、みんなの予定もきかないとまだ、わからない」
「っっそれが、違うのっ」
「・・・・なにが?」
「み、みっ・・・みんなでじゃないのっ
「・・・」
「ふっ」

ーーー2人でどこかへ行きたいの、連れて行って!
「2人でどこかへ行きたいのっっ、連れて・・・・・みんな、じゃ・・なくてっ2人で、ジョーと2人で行きたいの・・・・さっき、それが言えなかったから・・・」


黒真珠のようにつるりとした、瞳に浮き上がってくるのは、さくらの想い。


どこに”好き”だと言う相手に、ここまで積極的になれる勇気が生まれてくれるのだろう?ジョーは、海水ではない水に濡れゆく黒真珠を見つながら、疑問に思った。


可愛い、と思う。





だけど・・・それ以上はなにも思わない。



知っている。
フランソワーズのことが好きだから、今、さくらがどれだけの勇気を振り絞ってここへ戻ってきたのか、気持ちを言葉にしているのか・・・イヤと言うほどに、理解できた。




それでも。
それでも・・・・。
さくらの気持ちを受け入れることはできない。しない。


「2人で。は・・・ごめん」
「・・お、お仕事がっ忙しいなら、それが終わるまで待ってるわ!終わらないなんて、ないもの・・・」
「・・・・仕事は関係ない、よ。さくら・・・2人だけで外出は無理・・・・・できない」
「ふ、2人で・・はダメ・・・なの?」
「・・・・・・ごめん。中途半端なことは、さくらのためにもならない。自分のためにも。・・・みんなとだったら行くよ・・・。でも・・・・2人は、ない」
「っっ・・・・・ど、どうし・・・て?・・・変に、変な風に考えなくてもいいじゃ・・・ないっ!きっと、私が誘えばっジェットだって、ピュンマだって、みんなっ・・あ!そう、きっとアルベルトだって一緒に、私と2人で外出してくれるわよっ・・・だからっね?」


掠れる声が、震える。
息苦しそうに忙しなく上下する胸。

ぐっと我慢して、涙をこぼさないように堪える、瞳。
色を失いつつある頬。


「・・・そうだろう、ね。でも、俺は違う。・・・・・解って欲しい」
「ふ、ふ、2人で、出かけたいのっ・・・・」
「さくらとは、2人で出かけられない」


ジョーの迷いのないはっきりとした言葉に、琥珀色の瞳はしっかりとさくらを見つめ続けている。
ぎゅうっと握り込んだ拳の中で手のひらに爪が食い込んでくる痛さが、さくらを支えた。


「難しく、・・難しく考えないで?・・ね?」
「みんなとだったら、どこへでも一緒に行く、よ・・・難しく考えてない。・・・・さくらが、自分の気持ちに正直に・・・言ってくれる言葉をとても大切に思うから、誤魔化さないし、偽ることも、しない・・・これが、俺の答えだ、よ・・・・」


ぐっと唇を噛みしめて、さくらは咥内に溜まった唾液をごくりっと飲み込んだ。


「・・・・そう、なの・・・みんな・・で。なら、いいのね・・?」
「みんなで、なら」
「・・・・・・・わかったわ」
「さくら、俺は」
「訊かないっ!!」


力が入ってしまった拳を解くことは咄嗟には難しく、そのままの手でさくらは自分の耳を塞いだ。


「特別に想っている人がいr」
「言わないでっ!!訊きたくないのっまだ、まだジョーはっ時間が必要なのよっ私が焦っただけだからっ!気にしないでっ・・・お願いっお願いよっ!」
「・・・・・・・・・さくら・・・」


震える細く、薄い肩。
堰を切ったように流れ始めた、涙。
それ以上、言葉を続けることはジョーにはできなかった。


「言わないでっ・・・・・私のことをちょっとでもっ”友達”だと思うならっっ」
「・・・・」


さくらは、ごしごしと、腕で、手で涙を必死になって拭っていく。その姿を黙って見つめていたジョーの後ろで、ダイニングルームにいたジェットがドアを開けた。


「夜中にでけえ声、出してんじゃねえよ。さくら・・・・」
「う、うるさいなあっ私の勝手でしょ!もうっっ」









####

ギルモア邸まで車を運転してきたとはいえ、午前2時をまわった時刻にさくらを1人、コズミ邸に帰すわけにはいかず、帰る!と言い張るさくらを宥めて、今夜はギルモア邸に泊めることにした。


2階に用意されているゲストルームは、いつ、誰が来ても泊まれるように、常にフランソワーズが調えていた。
さくらは一言もフランソワーズと口をきかないまま、同じ女性同士と言うことで、フランソワーズに案内されてゲストルームへと向かう。


「何か困ったことがあったり、必要なものがあったら、言ってね。私の部屋はさっきカウチが置いてあったところの隣・・・一番端っこの部屋だから・・・・」

ゲストルームのドア口に立ち一言そう言うと、フランソワーズが部屋を出ようとしてさくらに背を向けたとき、投げられた枕がフランソワーズへは届かず彼女の足下に落ち、鈍く太い音を立てた。


「狡いわよ・・・一緒にっ・・・・・一緒に住んでるんだもの・・・・狡いわよっ」
「・・・・・」
「言いわよね!朝もっ昼も夜もっずっと一緒だものっ!!たくさん話して、たくさん時間をかけてっ色々なことを知って、知ってもらって・・・狡いわっ!!」
「・・・・・ずるい、かしら?」
「ええっそうよ!狡いわ!!」


フランソワーズは振り返らないまま、さくらにむかって静かに言った。


「一緒に住んでいても、いなくても・・・・・こころの距離は近かったり、遠かったり、人それぞれだと・・・思うわ」


さくらに言葉を返す隙を与えずに、フランソワーズはゲストルームを出ていった。





ゲストルームを出て、階段を下りたところでフランソワーズは、自室へと戻る途中のアルベルト、そしてジェットの2人と会い、お休みのキスを贈りあった。


「・・・さっきの話し、よく考えておくんだ・・・・いいな・・」
「・・・・・・」
「無理になんて言ってねえよ・・・その気があれば、だぜ?・・・ずっとこのまま、ここに住むつもりは・・・・オレとアルベルトにはねえってコトで・・・そんで、ついでだからよっ長え付き合いだしな・・・・・・」
「このまま、みんなで一緒に暮らし続けたい、なんてことは・・・言うな。考えるな・・・・今はそうでも、この先は違うと、考えておけ」
「・・・・・・おめえが、ここに残りたいって言うんなら、それはそれでいいんだしよ」
「・・・おやすみなさい、アルベルト、ジェット」


フランソワーズはリビングルームに入り、ドアを静かに閉めた。
片付けるつもりでリビングルームに戻ってきたフランソワーズだったが、硝子造りの珈琲テーブルの上に置いたままになっていた、さくらに出したティーカップが見あたらない。

ダイニングルームへと向かいキッチンを覗くと、そこにジョーがいた。
ダイニングテーブルの方を振り返って、置いてあったはずのジェットが飲んでいたビール缶も、アルベルトが使ったティーカップに、フランソワーズがオレンジジュースをいれたコップが姿を消していた。


「ジョー?」
「・・・・ついでだから」
「ついで・・・って」


珈琲サーバーの電源が入っている。セットしたばかりのために、浅く漂い始めた珈琲の香りにフランソワーズは気が付かなかった。


「私が片付けるわ・・・ジョーはまだ起きているつもりなの?」
「・・・・もう、洗い終わったから大丈夫だよ。・・終わらせておきたいことが、あるんだ」


フランソワーズの方へは振り返らずに、ジョーが手にっていたカップソーサーをステンレス制の水切りカゴに置いた。


「ジョー、ありがとう」
「・・・・これくらい、ね」
「・・・・・・休んだ方がいいわ、ずっと地下に籠もっているでしょう、この頃・・・」
「俺よりも、キミの方が疲れてる・・・だろ?」


濡れた手をシンクに向かって水気を飛ばすように動かそうとしたとき、横からハンドタオルが、すっと差し出されたので、それを受け取った。
柔らかなタオルの感触が、水で食器を洗った指先を温める。ジョーの手がタオルの中で震えているのは、冷えてしまった空気のせいではなく、触れていた水のせいでもない。


「私は、遊んできただけですもの・・・」
「・・・・楽しかった?」
「ええ、とっても」
「・・・・・・行ったの?・・ピュンマが行きたがっていたところ、その」
「寄生虫博物館?ええ、行ったわ」


フランソワーズはにっこりと微笑んだ。


「・・・大丈夫だった、の?」
「寄生虫くらい、平気よ?」
「・・・・・・・普通、女の子ってそういうの嫌がらない?」
「それって失礼だわ、ジョー。あれくらいで怖がったり、気持ち悪く思ったりする人は女性じゃなくても男性にだっているわ」
「・・・・・そうだろうけど」
「あれくらい平気。だって・・・」


言葉を飲み込んでしまったフランソワーズは、キッチンとダイニングルームを仕切る、カウンターテーブルの上に置かれた、ひびの入ったコップが目に留まった。フランソワーズの視線の先が捕らえた物に気づいたジョーは、キッチンカウンターに近づいて、持っていたタオルを置いた手でそのコップを手に取った。


「・・・リビングルームのテーブルにあったんだ、ヒビが・・・ね」
「・・・私が、落としてしまったの、それ」
「怪我、しなかった?」
「割れてないから、大丈夫・・」


キッチンに香ばしい珈琲の香りが満ちていく。
静まりかえった邸内で囁くように行き交う声だけが空気に漂う。


「・・・・気に入ってただろ?・・これ」
「え?」
「・・・・・・よく使ってた、だろ?」
「・・・飲んでいくと、最後に青い鳥の絵が・・・見えてくるの。それが・・・可愛くって」


つるりとした白い陶器には細い線で描かれた鳥かごと四つ葉のクローバ。鳥かごの入り口は、大きく開かれていた。

ジョーはコップの底を覗く。
青い鳥が1匹、コップの内側の底に描かれており、それは、フランソワーズが初めて買い出しに出かけた先のスーパーで購入した物だったことを思い出した。

黒いラインが、フランソワーズの言う青い鳥の絵の手前で止まっている。


「・・・・知らなかった、よ。こんなところに絵があったなんて」
「んふふ、使っていてもコップの底なんてあまり見ないものね」
「・・・・・・残念だね」
「仕方ないわ、落とした私が悪いんですもの」


小鳥のように首を傾けて、少しばかり眉根を下げて微笑んだフランソワーズ。
ジョーはコップをそっとキッチンカウンターの上に置いた。


「・・・・探しにいこうか?」
「え?」
「探しに行こう、か・・・・・・同じものが見つかるかどうか、わからないけど・・・新しい、キミ用のコップを探しに、行こう・・・」
「・・・・こ、コップはたくさんあるのよ、私用なんて必要ないわ」
「・・・・・・行こう、よ」
「忙しくなるんでしょ?・・・・そんな暇ないと思うわ」
「・・・・・行きたいんだ」










ーーーじゃあ、”俺”はどうするんだい?ーーー
ーーージョー、お前はどうしたいんだ?ーーー







”僕”の言葉が・・・アルベルトの言葉が”俺”にむかって投げられた。



「好きになって、次はどうしたい?」






ただ・・・・。



「・・・・ジョー?」
「一緒に・・・・・2人で行こう」


















フランソワーズと2人で居たい。





=======37へ続く

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ひどくないデスカ?ジョーって・・・・・。

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