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Day by Day ・ 2
(2)





4日目の朝。

泣き腫らした瞳は、昨日のことを夢ではなかったと証明しているように思えた。
目覚めたその部屋には彼の姿はない。

そして、汗にまみれた夜着を脱ぎ捨て、熱いシャワーを浴びた。

すべてを忘れ去ろうと、洗い流そうとする。
シャワーを浴びながら、フランソワーズは耳の調子が未だにおかしいことを確認する。
ずっと聞こえる無機質なノイズは、日に日大きくなっていく。


ーーーこれのせいであんな幻聴を訊いたのよ・・・。








###

5日目の昼。

彼女が不調を訴えた耳の調整が行われた。
博士は、ノイズが酷くて辛かったろうと、自分のことのように悲しんだ。

メンバーのほとんどが彼女の回復をこころから喜び、そして「無理するな」と彼女に家事一切に手を出させない。


「姫は姫らしく、お茶でも飲んで座っていればいいんだよ」


グレートは買い出しに出たときに買ったという、甘ずっぱいジャム挟んだ、花の形を象ったクッキーと一緒に、ティーセットをリビングに用意する。

温かな紅茶の香りを胸いっぱいに吸い込む、両手で小さなカップを包み込むようにして。そして、そっ と口に含んだ、ほんのり甘い紅茶。


「美味しい・・・」
「それは良かった。元気になってくれてほっとしたよ・・・」
「心配をかけてしまって、本当に申し訳ないわ、ごめんなさい・・・」
「な~にを謝る必要がある! 姫のためならたとえ火の中水の中!我々ナイトは
姫を守るために生きているのであるからして・・・」
「ふふ、ありがとう。・・・」
「・・・珍しくあいつがオロオロとして・・・心配しておったよ」
「・・・え?」


グレートは囁くように小さな声で言った。


「みんな心配していたが、あいつは・・・この世の終わりみたいな感じだったかな~」
「・・・誰が?」
「あいつが」
「・・・」
「今回は敵から受けた傷でもなんでもなく、博士さえも原因がわからんって
言ってたしな」
「ただの、風邪よ・・・たぶん」
「我らの姫は・・・もう少し自分を大切してくれると嬉しいんだけどなぁ・・・・」
「・・・グレート?」
「あいつは、本当に死にそうな顔だったぞ?」
「・・・・仲間だもの。009も心配してくれたのね」


それは、グレートに言うというよりも自分に言い聞かせる、と言ったような言葉。


「誰がジョーだと言いましたかな?」
「?!」

グレートの一言に弾かれたように顔を上げ、大きく目を見開いたフランソワーズ。
そんなフランソワーズの様子を、からかうつもりはなく、真剣に見つめ返すグレートだったが、すぐにいつもの戯けた笑顔になり「お茶のお代わりは?」と勧めた。








####

6日目の夜。

帳大人がフランソワーズの回復を祝って、いつもよりも豪華な夕食がギルモア邸のダイニングテーブルを彩った。

フランソワーズはみんなの優しさにとても感謝していたが、たかだか「熱を出した」くらいでここまでしてもらっては、少しばかり気が引ける。ギルモア博士は、そんなフランソワーズの気持ちを察したのか、彼女にそっと囁いた。

「みな、何か”理由”が欲しいんじゃよ・・・どんな小さなことにでも、どんな些細なことにでも、今この時が平和だと確認したいんじゃ・・・」




平和。
戦いのない日常。
当たり前のことが、当たり前にある世界。




不安なのかもしれない。




戦いがないことに。
銃を握っていないことに。
防護服を着ていないことに。

当たり前のことが、当たり前に感じないから。





幸せ が 平和 な この日常 が 怖い。








慣れてしまってはいけないと、自分を律する。
いつまた戦いが始まるか解らない。
だから、甘えは許されない。






美味しい料理を堪能し、いつしかリビングへと移り酒盛りへと変わっていた。

フランソワーズは、夕食の片づけを少し手伝ってから自室へ戻ろうとしたとき、ちょうど2階のバルコニーで一服終えたジョーと、コモンスペースで鉢合わせした。

彼女はにっこりと微笑んで小さな声で「おやすみなさい」と言う。
会ったのが他のメンバーだったなら、彼女はその頬にキスをしていただろう。
けれども、日本人の彼にはその習慣がないらしく、初めてそれを知ったとき、フランソワーズはとても寂しい気持ちになったことを思い出した。フランソワーズにとっても当たり前の習慣が、彼にとっては違う。





当たり前のことが、当たり前でない世界の住人。

ジョーは何も言わない。
フランソワーズも、彼が何かを言うことなんて期待していない。
ジョーの横を通り過ぎて、自室のドアノブに手をかけたとき、ジョーの声がフランソワーズを呼び止めた。



「もう、怖い夢はみてない?」


フランソワーズは、その声に振り返る。


「・・・ひとりで泣くなよ? 泣くときはちゃんと僕を呼んで、いい?」


ジョーはゆっくりとフランソワーズに近づいていき、彼女の肩に手をおく。
その手は緩やかに動き、彼女の頬に触れた。


「おやすみ」


フランソワーズのおでこにキスを一つ。
瞼に、一つ。
そして、両頬に一つずつ。

優しくて甘いおやすみのキス。



ジョーは風のようにその場を立ち去った。
残されたフランソワーズは・・・ただただ立ちつくすだけ。



「・・・ジョー・・・・?」




=====  へ 続く

(チャレンジは片思いのはずなのに・・・らぶらぶ???)
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