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Day by Day・42
(42)


グレートがコズミ邸から戻ってきたのは、翌朝。
リビングルームでアルベルトが朝食前の珈琲を楽しみながら、朝の連続ドラマを見終わった直後だった。


「よぉ、相変わらず優雅な朝だなあ」
「お疲れサン、コズミ邸に泊まってきたのか?」


グレートは持っていた箱をテーブルへ置いてから、倒れ込むようにソファに座り、手足を大の字に広げて大きく深呼吸した。


「いやあ・・・ちょっと色々足を伸ばして調べてみたんだ、ほら、例のリンツ氏の相手もよ」
「そりゃ、気が利くな・・・何か飲むか?」
「このまま一眠りするから・・・酒をたのまあ」
「朝っぱらからか?」
「寝る前の一杯だよ、頼むぜっ。あっと、この箱、冷蔵庫に持っていってくれや、我が輩の姫への愛の証!」
「・・で?中身はなんだ?」
「コズミ博士御用達、和菓子屋の抹茶ロールケーキだ。多めに買ってきたから、今日の茶菓子に喰おう」
「冷蔵庫が、菓子だらけになってきたな・・」
「なんだあ?みんな買ってきてるのか?」
「外に出たヤツは必ずな・・・・」
「で、アルベルト、お前は何を買ってきたんだ?」
「・・・・・シュークリーム。行った先に長蛇の列を作っていた店を見つけたから、並んでみた」
「お前がか!」
「日本人は、品物よりも、それを購入するために”並ぶ”と言う行為が楽しいらしい」
「・・・・お疲れサン。それ、喰えるのか?」
「もうない、昨日の夕食のデザートだったからな」
「なんだあ、残してくれてないのかい?冷たい奴らだなあ!!」
「いないヤツの分など、知らん」


アルベルトは立ち上がってキッチンへと赴き、冷蔵庫から缶ビールを取り出していると、朝食の準備をしていた張大人が一言、アルベルトに向かって言いかけたが、「グレートが帰ってきた」の言葉に、何も言わず再び朝食作りに手を動かし始めた。

リビングルームへ戻り、よく冷えた缶ビールをグレートに手渡して、再びソファに座ったアルベルト。受け取ったプルトップを勢いよく開けて、ぐびり。と一口飲むと、ぷはああっと息を吐いて、美味そうに破顔させたグレートは、しばし、ここちよく弾ける苦みある炭酸を喉で楽しんだ。


「で、どうだった?」


テーブルに置いてある4つ折りにされた朝刊を、アルベルトは膝に乗せる。


「ああ、色々わかったぜ・・・・。だが、B.Gもブラック・マーケットも何も出てこなかった。お陰サンでなあ」
「・・・他は?」
「創立メンバーってのは、もともと大学内の、ある教授が開いていた勉強会が始まりらしいぜ」
「勉強会・・か」
「詳しいことは、今日のミーティングでだ。ジョーに一応報告してくるが・・・。寝てるんだろうな、まだ」
「・・・・いや、起きてるだろ。オレが起きたときには、珈琲が出来ていたしな。下だろ」
「なんだ、また徹夜か?・・・・アイツ、大丈夫かあ?・・・・なんか、こう・・・無理してねえか?そりゃ、気になる問題だけどよお、そんなに根を詰めるまでには至ってねえんだし」
「報告は一眠りしてからでも遅くないだろう、グレート。帰ってきたことは言っておくから、寝てきたらどうだ?」
「んだな・・・。そうさせてもらうかねえ」


グレートは立ち上がり、缶ビールを一気に飲み干すと、それを硝子作りのテーブルに置いて、ぐううっっとひとつ大きく伸びをした。


「ミーティングは、夜になるぞ」
「おう」










####


一時機能を停止させていたフランソワーズの補助脳を起動させたと同時に、明け方ごろに頭痛を訴えたフランソワーズだったが、昼過ぎには収まり、ギルモアは聴力をレベル0状態から少しずつ、外側から調節し、失っていた音を取り戻していく。

”耳”が明日中に終われば、明後日から”眼”の方に取りかかる。
急ピッチで進められていくメンテナンスに、フランソワーズの体力の問題などもあったが、それらはイワンによってカバーされていた。
夜の時間が近づいているイワンが力を使い続けることは、彼自身の体力を著しく消耗するようで、少しずつスケジュールが押してきていたために、途中ギルモアが予定を変更して、リンツ氏が訪れるまでに、日常生活に困らない通常設定まで”眼”と”耳”を復活させ、時間を空けて003としての能力チェックを行うことに決めた。


「003としての能力は、テストと言っても大したことはせんしのう、日常で少しずつ慣らしていきながらで、ええじゃろう。一応、日に1度はここで検診するがのう」
<僕モ ソレデ 大丈夫ダト 思ウ>
「博士、この後は?」
「うむ、フランソワーズを少し休ませてから、もう少し続けるが・・・、ジョー、お前も休みなさい」
「大丈夫ですよ、博士・・・。さっき上に行ったときに、グレートが戻ってきたと聞きました。お土産があるそうですよ。お茶でも淹れてきます」
「おお、それは楽しみじゃな、昨日の茶菓子も旨かったし、夜のシュークリームも、生クリームたっぷりにカスタードが・・・・ほんのり甘くてのう」


ギルモアは昨日の夕食後に出された、アルベルトが買ってきたシュークリームが気に入ったらしく、1人1ずつだった、それをグレートがいないことをいいことに、ジョーの分も含めて3つ平らげた。


「用意してきます、よ」
「しかし、な・・どれも美味いが、やはりフランソワーズが作る御菓子が一番じゃ。そう思わんか?」


メンテナンスルームを出て行こうとした、ジョーの背中に向かってギルモアは言った。


「・・・・・・そうですね」


メンテナンスルームのドアが閉められてから、クーファンの中で身を起こし、ふわり、ふわり、と浮いているイワンにむかって溜息交じりにギルモアは呟いた。


「フランソワーズの作った菓子しか喰えんクセに、”そうですね”とは、そっけないヤツじゃの?」
<恥ズカシガッテルンダヨ。博士。じょーハ 自分ノ気持チヲ 言ウノガ、 イケナイこと ダト 思ッテル節ガ アルカラネ>
「むう・・・。前に比べて大分素直になってきたんじゃがなあ・・・・。なかなか自分を出さんのう」
<ズット、ソウヤッテ 自分ヲ押シ殺シテ、誰ニモ 関ワラズニ 心開カズニ、生キテキタ彼ダカラネ・・・。デモ 僕ハ ソンナ じょーガ好キダヨ>
「儂の大切な息子の1人じゃ」
<博士、ふらんそわーずヲ 起コシタ方ガ イイね?>
「おお、そうじゃったの」


色分けされた様々なコードに繋がれたフランソワーズは、寝台に寝かされており、ヘッドフォンのような物で耳を覆っていた、それをギルモアは外した。イワンは手を使わずにいくつかのスイッチを切る。それをギルモアは確認しながら、緑色のコードの何本かを慎重にフランソワーズから外していく。



フランソワーズは、ぴりっと痺れる感覚を後頭部に感じた。

自分の意志とは無関係に浮かび上がっていく意識に、心地よさなど感じることはできない。
目覚めが良い悪いなどの問題も、微睡む余裕もなく、”覚醒”させられる。

自分が、嫌でもサイボーグであると感じる一瞬がここにある。






「聞こえるかのう、フランソワーズ?」


暗闇の中から聞こえる、優しい声。
それは、とても小さく、遠い。


「・・・・はい。でも・・・聞こえにくい・・です」
「まだ40%ほどしか、戻っておらんから、仕方ない」


ギルモアは、フランソワーズの耳元に顔を近づけて話した。


「もう終わりですか?」
「いや、少し休憩じゃ・・・。ジョーが茶をいれてくれるのでな。あとグレートの土産もじゃ、楽しみじゃのう!」


本当に嬉しそうなギルモアの声に、フランソワーズはクスクスと笑う。


「昨日のシュークリームは本当に美味しかったですわ。お茶の時のマドレーヌもしっとりしてて・・・」
「うむ。そうじゃったのう、あれも絶品じゃった。フランソワーズには悪いが、もうしばらく、お前さんにはここに居て欲しいくらいじゃのう・・・」
「あら、博士。御菓子のために私のメンテナンスを引き延ばすのですか?」
「普段から、ああやって買ってきてくれるならええんじゃが、気が利かん奴らじゃからの!」
「御菓子ばっかりだと、私、太ってしまいますわ・・。ただでさえ、ここにじっとしているだけなのに・・・」
「何、心配いらん。少々太ってもフランソワーズは可愛いのは変わらん」
「そんな・・」
「起きあがらせようかのう?」


フランソワーズが寝かされている寝台は3モータータイプベッド。
背上げ(ギャッチ)用の操作ボタンをギルモアは押した。

モーター音と共に、ベッドごとフランソワーズの上半身が起きあがっていく。枕元に置かれていた、毛の短いふわふわとした、耳が異様に長い白いウサギ縫いぐるみが、ころころと転がっていく。
ギルモアはその縫いぐるみを、フランソワーズの手に持たせると、彼女は縫いぐるみの感触に微笑んだ。


「すまんのう・・これらのコードはまだ当分、繋いでおかないといかんので・・・。不自由な思いをさせてしまって」
「・・・?」


フランソワーズの耳元から離れたギルモアの声は、メンテナンスルームの様々な機械音、ベッドのモーター音に邪魔をされて、フランソワーズには届かなかった様子で、彼女は愛らしく小首を傾げた。







####

急須と湯飲みを2つ、とマグ、そしてグレートが買ってきた抹茶ロールケーキを切り分けて乗せた皿に、イワンのミルクをトレーに乗せて、ジョーはメンテナンスルームに戻ってきた。

折りたたみ式の簡易テーブルの上にトレーを置いて、急須から緑茶を3人分注ぎ、ジョーは、マグに半分ほど淹れた緑茶をフランソワーズの手に慎重に持たせようとしたとき、彼女の手にある耳が異様に長い白いうさぎに気が付いた。


フランソワーズの耳元に顔を寄せて、言う。


「キミの、友達を手から離してもいい?緑茶をいれたんだ」


人の気配が近づいたと思ったら、突然、ジョーの声ととにもフランソワーズの頬に、耳に、触れる息。
フランソワーズの躯がびくんっと揺れる。
その反応にジョーは近づき過ぎたのかと、ぱっと身を離した。

ギルモアは横目で2人の様子を伺いながら、緑茶の入った湯飲みと、2切れ乗せられた抹茶ロールケーキの皿の1つを手に持ちメンテナンスルームを出て行こうとした。


「博士?」
「研究室の方に、ちょっと見たいもんがあるでの、イワンも来るか?」


クーファンの中で1人、ミルクを飲むイワンは、その声に誘われて、すい~っとギルモアの後を追って研究室を出て行く。


「・・・・ギルモア博士?」
「博士は用事があって、研究室の方へ行った、よ」


先ほどよりも距離を開けて、ジョーはフランソワーズの耳に向かって言った。
うさぎの縫いぐるみを左横に、フランソワーズの躯にぴったりと寄り添うように置いて、フランソワーズが膝の上に置いた手に、ジョーはマグをそうっと持たせる。
緑茶の入ったマグを、フランソワーズは慎重に持ち上げていき、右手でマグの縁を確認しながら、親指にくちびるにを当てた。
親指をつたって、くちびるを移動しマグの縁につける。

ジョーは黙ってフランソワーズのその仕草を、イスに座って見守る。


熱い湯気がフランソワーズの顔を覆い、緑茶独特の芯のある香りが、鈍く痺れる感覚のあった後頭部をすっきりと払い除けていく。
ふうっと息を吹きかけて、少しばかり熱い湯気を追い払う。
くちびるに触れた、予想よりも熱い温度に、フランソワーズはもう一度、ふうっと息を吹きかけた。

薄く啜った緑茶の苦み。
傍にジョーがいるという、フランソワーズの意識を、緊張を、和らげる。


「ロールケーキ、いる?抹茶のだよ」
「・・・・ええ、いいかしら?」


ジョーは、フランソワーズの手からマグをそっと引き取ると、その手に、一口サイズに細かく切られたロールケーキを乗せた皿を、フランソワーズの、マグを持っていた手に乗せた。
それから右手にデザートフォークを持たせて、彼女の手に自分の手を添えて、お皿の上に乗る、一口サイズに切られたロールケーキをさした。

お皿とフォークの先が少しばかりふれ合って、かちん。と鳴る。ジョーはフランソワーズの手から自分の手を離し、それが合図のように、フランソワーズは器用に自分の口へと運ぶ。


「美味しい!・・・クリームと生地の間に、餡が塗ってあるのね?」
「そうなの?」


近づかない代わりにジョーは、大きめの声でフランソワーズに話しかけた。


「食べてないの?」
「・・・1切れあるけど甘そうだから、やっぱり止めとこうかと」
「大丈夫よ、ジョーでも食べられるわ。スポンジがとても濃くて苦みがあるし、クリームも甘くないの。餡の甘さだけで、とってもシンプルだわ」
「・・・本当に?」
「本当よ。絶対に大丈夫」


顔はジョーの位置に向いているが、その瞳は遠くを見ながら、フランソワーズは嬉しそうに、そして、自信満々に言い切った。
テーブルの上に置かれた、薄く切られた抹茶ロールケーキを1切れだけ乗せた皿を手にとって、スポンジ部分だけ剥ぐようにして、フォークを動かした。


「クリームも一緒にね?」
「・・・・え?」
「見なくてもわかるわ。ジョーはいつも甘そうなのを避けて味見するもの」
「・・・・」
「クリームも絶対大丈夫よ」


よけた、少しばかり硬いクリームをスポンジと一緒にフォークにさして、口の中に放り込んだ。


「どうかしら?」
「・・・・・」
「大丈夫でしょう?」
「・・・・・」
「ね?ジョーでもこの甘さなら大丈夫でしょう?」
「・・・・・・・うん、これなら・・・。美味しいよ」
「ふふ。私の言った通りね!」


満足げに微笑むフランソワーズを見ながら、ジョーは、その瞳が自分をとらえていないことに、胸が切なく泣く。



”ジョーは、あの、フランソワーズの笑顔を独り占めしたくないの?”

”誰かの手で幸せになったフランソワーズで、ジョーは満足?自分の手で、ジョー自身で彼女を幸せにしたいって想わないの?”


ピュンマの声が、言葉がジョーに語りかける。










ーーー俺の手で?










「・・・・甘くないだろ?キミには・・物足りない?」
「十分に美味しいわ!・・・私は別に”甘い”ことだけで御菓子の好き嫌いを選んだりしないの。前にも言ったはずよ?」


フランソワーズは少しばかり、小鳥のように首を傾けて瞬きを繰り返す。
長い睫が重たげに揺れて、目蓋の動きを追っていく。

手に持つフォークを慎重に皿の上に戻し、2切れ目をさすが、柔らかなロールケーキでは、それをフォークにさした感覚が得られない様子で、気づかずにロールケーキをさしたフォークを持ち上げて、再び皿の上におろした。
それを見たジョーは、持っていた皿をテーブルに置き、フランソワーズの手に、先ほどと同じように自分の手をフランソワーズの手を包むように添えた。


「わかりづらいね、柔らかいと」
「・・・・・・・・ごめんなさい」


フランソワーズの声が、先ほどの明るさを失い、低く落ちる。


「謝るのは変だよ?」
「・・・・・・迷惑ばかりかけてるもの、ジョーに」
「迷惑にならない」
「・・・・・・・・・嘘」
「嘘じゃない、よ」


ジョーが動かしたフランソワーズの持つフォークが、ロールケーキをフランソワーズのくちびるに触れさせた。


「余計なことは考えないで、グレートがせっかく美味しいのを買ってきてくれたんだから・・」


フランソワーズはくちびるに触れた、やわらかなスポンジをぱく。と食べた。









ーーー無理だ、よ・・・・。




ジョーはフランソワーズから離れて、再びイスに腰掛けた。

2人の間にそれ以上の会話はなく、かち、かち、とフォークと皿がふれ合う音が、低音で唸り続ける機械音の中で異質に響く。


ジョーは、抹茶ロールケーキを食べる気分にはなれなかった。







ギルモアとイワンが1時間もせずにメンテナンスルームに戻って来てから聴音テストを繰り返した後に、フランソワーズは、再び、意識をギルモアとイワンの手で深く沈まされていった。
次ぎに目を覚ましたとき、聴力は以前と変わらない状態に戻っているはずである。













####

ミーティングが始まる前に、ダイニングルームで食事を済ませ、全員がリビングルームに揃っていることを、脳内通信でメンテナンスルームにいるであろうジョーに連絡すると、地下からではなく2階から、ジョーはリビングルームへと入ってきた。


「下にいたんじゃないのか?」


張大人が用意した珈琲を受け取りながら、ジョーはパーソナルチェアのフットスツールに腰掛けた。


「・・・ちょっとね。・・・・・始めよう、008」
「うん。さっき夕食の席であらかた、009に話した内容は報告したんだ。メールアドレスから”マクスウェルの悪魔”を辿ってみた。使っているアドレスはhメール。誰でもアカウントが持てるから、当てにならない情報だよ、きっと。彼が使っているサーバー元からアクセス解析、IPアドレスを振り分けて、住所を特定してみた。いやあ、怖いねえ。米国家安全保障局(NSA)が住所を特定する技術の特許を持ったらしくってさ、アクセスするだけで割り出してくれるサイトがあるんだもん。色々いじってみたけど、やっぱり”学校”に繋がってしまうんだ」
「んじゃよ、008、オレたちの方もバレてんじゃねえのかよっ」
「あ、それは大丈夫。僕たちの使っているのはIPが固定されないようにしてるから、ギルモア邸のネット回線は、1度、地下のメイン・コンピューターに通してる。僕たちの使うコンピューターで、セキュリティホールなんてないよ、心配ないから。ハッカーやクラッカーが興味をそそるようなものもないしね。でも一応は、ここに住む前に言ったように、個人的な情報はネットに接続するコンピューターには載せないでって言ったの、忘れないで」
「008が学校について言う前に、5枚入手していた”ラムダ”についてだが・・」


004が珈琲をテーブルに置き、少しばかり躯を前に傾けた。


「そいつは簡単に割り出せたのか。」
「うん。チャットでちょっとね、意外と簡単に・・」
「本名は大沢勇一、都内の総合病院でレントゲン技師。自宅は勤務先から電車で30分ほどのマンション、独身。で助かった。既婚者でパートナーが専業主婦だったら上手くはいかなかったな・・・。部屋に邪魔させてもらった。デスクトップ2台、ラップトップ3台の・・・マニアックな本に埋もれた部屋だった。ざっと調べたが、B.GにもB.M(ブラックマーケット)のそれらしい物は見あたらなかった。探していた物は、メインで使われていたコンピューター内で見つけたんで、それをUSBで拾ってきた。あと、ギルモア博士にもらった”ウィルス”をお礼に置いてきたぜ」


にやり、と片方の口角を上げて嗤う。


「・・・そのウィルスから足がつくことは?」
「ないよ!どこにでも落ちてるのを、少~しいじっただけだから、簡単には見破れないよ」


009にむかって008はウィンクをひとつ、余裕を見せた。


「009、お前の方には夕食前に送っておいた、見ておいてくれ」
「わかった。それで・・・008、学校について、どれくらい調べられた?」
「基本的なこと+α?」


008はテーブルに置いてある、ミルクを自分のマグにいれた。


「学校ってのは、寄宿制の男子校だってなあ、008」
「うん、そう。プライベート・スクール、私立だね。名前は”月見里”(やまなし)学院。教育システム・・・と、入学方法も少しばかり日本の一般的な学校とは異なってるね。・・・12、3歳から18、9歳まの6年制。はじめの2年間は全員同じカリキュラムを受けて後は、それぞれが成績と希望に見合った分野に分かれて専門的に勉強していく。午前中は一般教科、午後は個別に組まれたカリキュラムをこなしていく。20~30人の2,3クラスx6学年だから、約560人の生徒、教師や学校関係者を合わせて1000人未満ってところかな?」
「そんなに大きいアルか?」
「一般平均の学校に較べたら小さい、な」
「寄宿制、男子校、6年制、け~~~~っっ!死にそうだぜ、んなところっっ!」


ジェットは大げさに顔を顰めてみせたる。


「002には無理だね。入りたくても入れないよ!学校関係者の紹介文、推薦書が3通、面接、一般教科の入学試験、IQテスト、体力テスト、健康診断云々。まず、002は入学試験とIQテストで終わりだよ」
「やってみなきゃっわかんねえだろっ!」
「補助脳なしでがんばれる?」
「・・・・・・補助脳はオレの一部だぜ?」
「008、なんだあ、その推薦書に、学校関係者の紹介文てえのは。日本はそんなもんがないと、入学させてくれねえのかい?」


007が素朴な疑問を口にして、002と008の会話に割って入った。


「その辺は・・」


008は009に視線を送る。


「・・在校中の学校側が、卒業予定の生徒にたいして、受験する学校に推薦書を用意するのはあるけれど・・・スポーツ推薦や、その他の特別枠での推薦入学を考えても・・・ちょっとどうだろう。内申書が含まれないなら、一般平均的なものとは違う、な。それに学校関係者の紹介文って言うのも異質だね。エッセイや、一般教科ならわかるけれど、IQテストに、体力テスト・・・入学前に行うのも、変な気がする」
「かなり、内輪的な感じがするな・・・」
「日本国内だけでなく、海外からも入学を受け付けているから、学校内の日常会話はすべて英語なんだって」
「とっても特別な感じネ。優秀な子いっぱい集まってるアルねえ~」
「教師陣が、もう、大学並なんだよ・・・エリート中のエリート養成学校みたい。ちなみに、コズミ博士も、その学校に2,3度講義の依頼があって、行ったことがあるって。客員って言う形で、国外からも呼んでるみたいだよ。その辺の大学よりもレベルが高い授業を受けてるんじゃないかな?」
「そんなに優秀な生徒や教師が揃ってたらよっ誰が”マクスウェルの悪魔”かなんて、簡単にみつけられねえじゃんかよっ!」
「・・・・だから、都合が良いんだ、よ。”悪魔”が身を隠すには。・・・・・・1度、潜入捜査をしてみないといけないかもしれない。008、学校の場所、敷地、校舎、寄宿制の住む寮、の図面を手に入れてほしい」
「やってみるよ」

009は008の返事に頷き、次ぎに002へと向き合うように、躯を少し移動させた。


「002」
「おう」
「・・ゲーム内に学校は出てくる?」
「ああ、出てくるぜ。主人公とその友人emiの通う学校。そこもプライベート・スクールだ。でもよっ男子校でも、寄宿制でもないぜ?」
「・・・・・学校内でのイベントってある?」
「主人公は、昼休みにちょいと学校を抜け出してよ、その時に事故に遭うんだ。それと、emiと会う時は学校でだな。チャットルームはemiの部屋にいかなきゃならねぇけ・・・」
「・・・ゲーム内での学校はどんな感じ?」
「どんな感じって言われてもよ・・・」
「002、今後は学校を意識してゲームを進めてくれ。あと、ゲーム内の学校の見取り図や、主人公の住む街の地図、そういう物があれば欲しい」
「わかったぜ、その辺をまとめるよ。んでもよ、そんなもんがなんで必要なんだよ?」
「008が手に入れた図面と、照らし合わせてみる。人間は架空のものを造っていてもs、今まで生きてきた経験や記憶から完全には切り離せられないものだから、無意識にそういうものが、表れているかもしれない。もしも”学校”の人間なら、・・・関係がないところで、慣れ親しんだものが形になってるだろうから、ね」
「んなもんか?・・・ま、とにかく言う通りにするぜ」
「頼む。004」
「ああ、ゲームに参加できた時点で、全てを記録しておく。オレの部屋のコンピューターを下のメインと繋いでくれるか?」
「やっておくよ、僕が」
「頼むぞ、008」
「うん」


002が珈琲に砂糖を3杯ほど入れて、スプーンでぐりぐりまわし、張大人が湯飲みに淹れた、ジャスミンティを啜った。


「じゃ、次は吾輩かな?」
「・・どこまでわかった?」
「クラーク・リンツ、あいつぁB.Gとは関係ないねえ。元々家がでっけえスイス貴族の家系らしくてよ、18世紀あたりで移り住んだ我が産声上げた、故郷、イギリスで、産業革命に乗ってぐんっと財をなし、貿易まで手を広げた一族の出らしい。今でもそっちの方じゃあ、ちょっと名の知れた名門のお坊ちゃんだってよお。医者、学者、なんかになった人間も多いらしいなあ。コズミ博士の力を借りて、足を伸ばしてみたが、なんも出てこねえ。優秀、真面目な植物生理学専攻の兄ちゃんだ。んでよ、そのリンツ氏が世話になるっつう予定の相手は、よ。恩田光弘、日本人。美術学校なんかに行くための学生相手に塾を開いている。それじゃあ喰えないんで、イラストの仕事や、ウェブデザインなんかの、何でも屋だなあ。本業は、絵本作家らしいが、出版されたこたあない・・・。元ルームメイトって、コズミ博士は聞いてるらしい、住まいは千葉だ。独身の40間近の男でえ、親とは早くに生き別れたらしい、完全な独り身だ。・・・・でもよ、どうも、恩田はリンツ氏が来日することを知らないっぽいんだよなあ・・・・」


007は冷めてしまった珈琲を一気に飲み干した。


「知らないアルかあ?」
「どうしてそう思う。」
「こちとら、変装のプロだぜ?ちょいっとばかし・・・あ、ポチっとな」


へそのボタンを押して、ウニウニと姿を変え始めた007の姿は、イギリス人女優、シエナ・ミラア似の美女に変わっていく。


「これで、近づいたんだ、もう一発よ!・・・・って思ったんだけどよお、なかなか気を許さねえっつうか余計に硬くなっちまって、ありゃ、女経験ないぜっ絶対に!・・・ま、とにかくだ。留学仲間がこの辺りに住む友人宅の世話になる予定で、いつ日本に来るか聞いてなかったが、もう来日していてもおかしくないから、探している。って、聞いたんだ。そしたらよお、親切丁寧に流暢なイギリス英語で、”この辺りで外国の方を見かけたことがないし、自分も何人か国外に友人がいるが、来日する予定の者はおりませんよ”だってさ」


007は大げさに両手を広げて肩を竦めてみせ、元の姿に戻った。


「・・・・007、コズミ博士は何か言っていた?」
「人には色々事情があるからなあ、だってよ。リンツ氏の滞在が1週間を越えるようなら、連絡くれ、と。知り合いに留学生を受け入れるホームステイ制度に参加している家を知っているから、そっちに行ってもらうから。と、伝えるように言われたよ」
「・・わかった。その時は、コズミ博士の言葉に甘えさせてもらおう、005と006の方は?」


009の言葉に、005と006が顔を見合わせて、005の方が口を開いた。


「以前から、調べがついていた、いくつかのB.Mは、何も変わらない。新しい情報として流れてきたものも、何もB.Gを臭わせるもの、なかった。」
「けど、ちょっと気になるのがあったネ、005?」
「むう、半年ほど前に・・・人工臓器についての情報を探しているらしい人物がいたようだ。」
「それが、誰かまだわからないアル。でも、今はぷっつり、情報を求めなくなって消えたネ。綺麗さっぱりアル。」
「・・・いつくらいから、消えた?」
「動いていたのは、2ヶ月程度だったようす。」
「002、いつからそのオンラインゲームは始まった?」
「ん~~~~~・・・知らねえけどよ、あれは、かなり新しいぜ?1番の古株だっつうのでも4ヶ月前くらいからだぜ、きっと。その前に居ても、止めちまってたらわかんねえしよ」
「009、なんでもゲームの方と繋げて考えるのは、危険だ」
「・・・・ああ、わかっている。3枚目の景品は人工臓器だった・・・。もしもそれを探している人間が、このゲームで手に入れた人物なら、もう情報を求める必要はないかと、ね・・・」
「臓器だけじゃ、何も役に立たないよ。そもそも、その臓器1つ1つの設計図がないんだからさ」


008はこくり、と珈琲を飲んで喉を潤す。
007は空になったマグをのぞき込み、立ち上がった。


「お代わりいるやつ、いるかあ?」


その声に促されるようにして、ミーティングが一時中断することになった。
グレート、張大人、そしてジェットがキッチンに向かい、新しく珈琲サーバーにセットする豆を手動ではない、電動式ミルでひき、張大人はお湯を沸かし始めた。
ジェットは棚から買い置きのスナック菓子をいくつか取り出し、その中にあった3,4種類の味の違うポッキーの箱と一緒に両腕に抱えてリビングルームに戻ると、どさどさとテーブルに置く。


「さっき夕飯を食べたところだぞ?」


呆れたように言いながら、アルベルトはポッキーの箱を手にとって、同じ製品であるのに、味が違うポッキーの箱を見比べた。


「いいじゃんかよ、こういう話ししてりゃ、イヤでも腹が減るんだよっ」
「・・・・日本人ってアレンジが得意だよねえ、1つのものを基本にどんどん改造していくの。電話や電気、車、もともとのオリジナルは他の国なのに、今じゃあ、日本が造ったみたいに勘違いされそうだよね?」


ピュンマがアルベルトの手にあった、箱を1つ受け取って、”つぶつぶイチゴ味”を開けた。


「無知なやつはそう思っているかもな」
「食べたら、ぽいって捨てられちゃう箱に、こうやって綺麗に絵に写真、中だって、わざわざ4つの袋に入れて・・・過剰包装気味に感じるんだけど、便利って思うんだよね、こういうのを」
「んな5,6本で満足できるやつあ、そうだろうけどよ、俺には迷惑なだけだぜ?ちまちま喰うかよ、こんな細っこいもんでよ、1箱だって足りねえのに!」


ばりっと、かっぱえびせんの袋をあける、ジェット。


「こういうのって、女の子向けに考えられてるんだろうねえ」
「・・・だろうな」


ピュンマが開けた”つぶつぶイチゴ”味のポッキーの1袋を受け取って、しげしげと眺めるアルベルト。



「ところで、ジョーはどこ行ったんだよ?トイレか?」
「2階に行った。」
「すぐ戻ってくるだろ」










新しく入れ直された、お茶が揃い、009以外のミーティングに出ていた全員が揃う。が、009はリビングルームに姿を現さず、少しばかり待ってから、002が痺れを切らせて、脳波通信を009に飛ばした。


<おい!!何やってんだよ、009!!>


何度か声をかけるが、応答がなく、その様子をみていた004がソファから立ち上がったとき、リビングルームのドアが開き009が姿を現した。


「・・・ごめん」


落ち着いた様子で、ミーティングを進めることを促した009に、002が睨む。


「人が呼んでやったんだぜ、返事くらいしろよっ!」
「・・・え?」
「通信だよっ!つ・う・し・ん!!!」


009は先ほど座っていたのと同じようにフットスツールに腰掛けた。


「ああ、回線を開いてなかった、よ・・・ごめん」
「なんだよ、そりゃあ・・・」


気が抜けた声を出す002。それにたいして、008が心配そうに009を見た。


「どうかした?009・・・・、回線を開いてないなんて、さ」
「いや、なんでもない。考え事をしていると無意識に、開いていない状態になりやすいだけだよ」
「それなら、いいけどさ・・・」
「005と006は引き続き、B.Mの動きを追ってくるかい?」
「アイアイね!」
「了解した。」
「・・・・できれば、人工臓器を調べていた、と言う人物についても手を伸ばしてみてくれ、時期的なことといい、少し気になる。ただの気のせいならいいけれど・・・008が言ったように、3枚目は人工臓器を配置し終えた人体図だ。1つ1つの人工臓器の設計が抜けている。・・・手に入れた人間が、本気でそれを知りたいと思えば動くだろうから・・・・。あと、今2階で、004が送ってくれた2枚をさっと見たんだけれど、人工皮膚と、筋肉、だね・・・これもすべて人体図で・・・。細かいことは全て省かれている」
「ああ、その通りだ」
「ギルモア博士に早いうちに見てもらいたいけれど・・・今は・・・」


ふっと、視線を床に落とした009の仕草に、005が話しかけた。


「003は、元気か?」


005の言葉に、視線を彼にむけて、009の頬が緩む。


「難しい、な。元気・・・、と言えばそうだね。食欲がないみたいだったけど、甘い御菓子はしっかり全部食べるよ、70%の聴力が戻った。今、どれくらい進んでいるのか判らないけれど、明日中には聴力が通常設定値までに戻る予定だ。明後日に視力の方にかかるけど、聴力よりも時間がかかることになると思う。さすがに、イワンが、ね。夜の時間との戦いになってきてるよ」
「間に合いそうか?」
「・・・うん。イワンが眠ってしまっても、通常設定値まで取り戻すことに、何も問題ない、よ。003としての能力テストは、リンツ氏が来ていても日に1度のチェックで少しずつやっていく予定だ。日常生活の中で、まずは003が慣れていかないとね」
「メンテナンス後は、あまり無理させない方がいいんじゃねえのか?」
「無理をさせるつもりは、ない」
「あいつ、ぜって~、客のリンツに気を遣って、あれこれやるぜえ?」
「003だからね・・・きっと、うん。気をつけてあげなくちゃ!」
「そうネ!008の言うとおりね。003はとっても気の付く良い娘だから、お客さまがいるのに、のんびりなんてできないアルよ!」
「その辺は、みんながカバーすればいい。それだけだ。そうだろう、009。」
「005の言うことが正しいな」
「この前みたいに、熱なんて出すようなこたあねえようにしないとなあ?」
「・・・・イワンが、ギリギリまで頑張ってくれているから、大丈夫だと思いたい」


冷めていた珈琲が新しい、熱いものに代わって、ジョーの前に置かれていた。それを手にとって静かに口に含み、その苦みに頭を切り換える。


「一応、コズミ博士から持ち込まれた資料についての調べは進めているが・・・資料からの、あれ以上の情報を得られることはないと思っている、今後も引き続きトム・マクガーのB.Gでの部署や役割、彼の足跡を探し出したい。どんな小さなことでも、だ。それはみんなにお願いする。トム・マクガーに関連すること、少しでも思うものがあれば、集めて欲しい」
「わかったぜ」
「うん」
「うむ。」
「探すアル~」
「了解」
「そっちの方が、難しそうだなあ・・・イワンが言うにゃあ、もう仏さんになっちまってんだろ?」
「・・・・時間も、かもしれない。彼がいつごろB.Gの研究員だったのか、研究員として働いていた場所が”B.G関連施設だったのか・・・。ギルモア博士が003に集中している間、この景品に関してはまだ言っていない。もしかしたら、博士から何かしらの情報が得られるかもしれないけれど・・・、今は」


009の言葉に全員が頷いた。


「博士のことだ、こんなものを見たらあっという間に、こっちに頭が取られてしまうかもしれんな。こんなものが世に出てしまうことを、一番恐れているのは博士自身だ」
「次のミーティングは3日後、リンツ氏が来る前日に、だ。002はさっきのことを。ゲームもできるだけ進めてほしい。あと、これからは、主人公がなるべく、ゲーム内のトム・マックガーと接触出来るように動いてみてくれないか?」
「おう!やってみるぜ」
「接触した内容は、記録しておいてくれ」
「了解っ」
「008、004のコンピューターの件を頼む、よ。忙しいだろうけど・・・004は008を助けて欲しい。それと、ゲームの方も参加出来ることになったら、どんどん進めて。007、ピュンマが言う学校を1度見てきて欲しい。006、005は引き続きB.Mの方を頼む、007のサポートも一緒に・・・」
「まかせるアル」
「わかった。」
「じゃ~、008、ちいっとばかしこっちに、その”学校”についての資料を送ってくれな」
「うん、了解」
「・・・今日はここまで、だ」


ジョーの一言に、そこにいた全員が少しばかりの緊張を解いた。
空気の色が、穏やかにゆるむ。

そこから、ミーティングの延長線上のような雑談が繰り広げた。
好き勝手に、ジェットが広げたスナック類を手に取り、しまいにはアルコールまではいってくる。


「行くのはいいけど、”男子校”って言うのが、ひっかかるよなあ、おい。女子校だったら、楽しみがもっとあったろうになあ!」
「っんな楽しみがあったら、グレートじゃなくてオレが行ってらあ!」
「ジェットじゃ目立ちすぎるよ!」
「それにしても、目的はいったいなんだ?・・・ゲームの景品にサイボーグの設計図・・・この”マクスウェルの悪魔”は一体何がしたいんだろうな」
「どうやって手に入れたんだろうね、こんなの。イワンが死亡確認してるって言うから、トム・マクガー本人じゃないよね?」
「それじゃあ、誰アルか?」
「誰かに託したのかなあ?」
「盗まれたっつうのもあるぜ?」
「盗まれたっていってもよお、そりゃどこからだあ?・・・・この、トムさんに家族っていたのかい?」
「いるなら、探した方がいい。」
「でもよっ、B.G研究員だぜ?そんな悠長に、”家族”なんか持ってられたのかよっ!」
「・・・・ギルモア博士。独身」
「博士は、独身貴族って言えるアルね。結婚できなかったじゃなくて、しなかったタイプね、きっとネ」


1人、何度も頷きながら納得する張大人。


「研究員でも既婚者はいただろう。全員未婚って言う方がおかしいよ?」
「その辺は、ギルモア博士に直接聞いた方がいいな」
「な~んで、B.Gの研究員が所帯持ちか、そうじゃないかってのを気にしなきゃなんねえだよっ!!オレらがよ!」


ぐしゃぐしゃっと赤毛の髪を赤毛を掻きむしる、ジェット。


「前線に出ていた以外の人間、B.Gと言うことさえ知らなかったかもしれない。」
「それはあるかもしれんな」
「研究施設に”B.G関係です”、ここは”B.G研究所”です。なんて看板、出してねえだろうしよっ」
「・・・それじゃあ、ゴーストってついてる名前が哀しい気がするよ、僕」


ぱりっっと、チップスをかじり、1人でコンソメパンチ味の袋を抱えながら、呟いたピュンマは、ちらり、と視線をジョーにむける。

ジョーは黙って、珈琲を飲みながらみんなの話しを聞いている。
ピュンマの目に映るジョーは、同じリビングルームにいながら、どこか・・・遠い。




いるようで、いない。

009からジョーに戻ったとき、彼の存在感はなくなってしまう。
今日はいつもよりも・・・・。









ーーー消えてしまいそうだよ・・・ジョー?
















「おい、ジョーっ」


ジェットの声がリビングルームに響く。と、ジョーが手に持っていたマグが床に落ちて、黒い液体が床に広がっていった。








=====43へ続く




・ちょっと呟く・

あ、珈琲こぼした。

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