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Day by Day・43
(43)




「ここは、ワタシが片付けるアルヨ」


床にこぼしてしまった珈琲を慌てて片付けようとしたジョーを押しのけて、張大人が、さっと片付けた。


「疲れた状態で、メンテナンスなんてされちゃあ、姫が可哀相だぞお!休めっ今日は吾輩がしっかり見張ってるからなあ、朝までゆっくり休むんだぞ?なんなら、可愛いお姉ちゃんに変身して、添い寝してやってもいいぞ?」


グレートが、地下のメンテナンスルームへ向かうと思われたジョーを引きずるようにして、2階の彼の自室へと連れて行く姿を見送りながら、ピュンマは低く溜息をついた。


「・・・ジョー・・・どうしたんだろう?」
「ちょと、いいアルか?」
「どうした、大人?」


張大人は、床を綺麗に片付けてソファへと座り直す。


「・・・フランソワーズも大変ネ。でも、それ以上にジョーはもっと、もっと大変アルヨ・・・。よおおく、よおおおおおおおおおおっく、考えて欲しいアルヨ」


張大人の言葉に、ジェットは眉をひそめた。


「どおいう意味だよっ」
「・・・・・・ジョーは、何もかも背負い込んでしまうタイプね。009として、リーダーとして、ギルモア博士の助手として、フランソワーズのために、みんなのために、今回のことに、前回のこともね・・・。ずっと、ずっと、人100倍頑張ってるネ・・・・。色々なことを全部、全部、背負ってしまって、ジョーのこころは、頭は、いっぱいになってパンクするネ。」
「うん。大人の言うとおりだと、思う・・・・。最近は特に・・・」


ピュンマは顔を曇らせてリビングルームのドアを見つめた。


「だから、アルヨ。・・・・ミッション以外のときは、年齢相応の普通の男の子として、接してあげて欲しいアルヨ。・・・・ワタシなら逃げ出してしまうし、怖くて、怖くてたまらないアルヨ?・・・好きな子の躯の中を見るなんて!ジョーは医者でもなんでもないアルヨ?・・強いネ。ジョーはすごく強いネ・誰にも真似できないくらい、立派に、フランソワーズのことを考えて、想いやっているアルヨ」
「・・・大人、なにがいいたいんだ?」


アルベルトは、手に持っていた缶ビールに少しばかり力を込めた。


「ジョーの気持ちを察してあげて欲しいね。フランソワーズの気持ちも大切だけれど、みんなそっちに偏り過ぎてないアルか?・・・・ジョーはまだまだ、大人になりきれない”男の子”アルヨ?みんな009のときのジョーのイメージが強すぎて、本当のジョーを見誤ってるような気がするアルヨ・・・」
「本当のジョーって、どういうことだよっ!」
「ジョーはまだ、こどもネ。・・・・こころはまだまだ成長途中アルヨ。だから、求められるものが大きすぎて、こころが追いついてない気がするネ。・・・フランソワーズに対しての気持ちを”男”として対応しろと言うのは、可哀相アルヨ?少し余裕をもって接してあげて欲しいアル」


張大人の言葉に、膝を抱えて、小さく、小さく、まあるく蹲って眠るジョーの姿が、ジェットの脳裏に甦り、彼は視線を苦々しく床に落とし、自分に言い聞かすように言葉を吐き出した。


「そんなに、ジョーは柔じゃねえしっ!大人が言うほど、こどもじゃねえよっ!!」
「よおく、考えて欲しいアル。ジョーはまだまだ、こどもアルヨ。サイボーグになってもワタシらは”人間”アル。こころ、までもそんなに急には”大人”にはならないネ。躯や頭脳は人100倍かもしれないアル。・・・でも、こころは違うネ。道を間違うこともあって、手探りで、いっぱい、いっぱい新しいことに挑戦して、経験して・・・・自分を見つけていく年令アルネ。ジョーはそういう時期だと思うアルヨ。恋愛もそうだと思うネ」
「・・・009であるジョーだから、と。オレは期待し過ぎていたか?」
「もう少しジョーに、プライベートなことには、ゆとりをあげて欲しいアルヨ。もしも彼が間違った方向へ進もうとしたとき、進んでしまったときこそ、ワタシらの出番だと、思ってるネ」


アルベルトは張大人の言葉をゆっくりと噛み砕いて、理解する。
いつの間にか肩に力が入っていたのか、それを意識的に緩めて、温くなり始めた缶ビールを一口飲んだ。


「確かに、プライベートなことだ、な・・・・。違う意味で、蹴られてしまったようだ」


アルベルトの言葉に、ジェットは反応して視線を彼に向けた。


「それでもオレは間違ったことをしたつもりはねえぞ、言ったことも後悔してねえっ」
「もっとジョーのこと、信じてあげないとね。僕たち」


ピュンマはにっこりと微笑みながらジェットに言った。


「だって、彼は僕らの009だもん!!・・・・信じてないとね、彼がフランソワーズを想っている気持ちを」


張大人はピュンマの言葉に何度も頷き、ジェロニモは微笑んだ。
アルベルトは黙って残りのビールを飲み干して、ジェットはソファから立ち上がってリビングルームから出て行く。
ピュンマは抱え込んでいたチップスの袋から一枚それを取りだして、パリッと食べた。









####

グレートに無理矢理押し込められた自室のベッドで、いつの間にか眠ってしまったジョーは、慌ててベッドサイドに置かれた3つの目覚まし時計を確認した。時間をセットされていなかったそれらは、どれも8時20分をさしていた。

閉めきられたままのカーテンの隙間からのぞき込む、朝陽は眩しく白い。



ジョーは昨夜の服のまま、慌てて自室を出て階段を駆け下りいった。
早足にリビングルームを通り過ぎる途中、ソファに座るアルベルトの姿が目に入るが、ぱっと手を挙げて挨拶をしただけで、早々にキッチン横にある通路を使って地下へと降りていった。


メンテナンスルームのドアを開けて、ジョーの目に飛び込んできたのは、ベッドの上の白い華奢な肢体。


「ごめんっ!!」
「っっ?!!」


フランソワーズは、メンテナンスルームにいるはずのないジョーの声を聴き、手に触れているもの全てで、空気に晒されていた肌を必死で隠す。

ジョーはくるり。と、背を向けてフランソワーズから視線を全身で外した。


「おおっ?!」
<博士、どあヲ ろっくスルノ 忘レテタネ>
「すまん、すまんっ・・・ジョー、しばらく外で待っていてくれんか」


ジョーは加速装置を使ったような速さでメンテナンスルームから出てドアを閉めたとき、微かに聞こえたギルモアの声に、溜息をついた。


「大丈夫じゃ、フランソワーズ。儂の影に隠れて何も見えとらんからな、安心せい」






ーーー影に隠れてどころじゃ・・・・。


メンテナンスルームのドアに背を預けた状態で、深呼吸する。
目蓋を閉じれば、しっかりと瞳に焼き付いた絵が鮮明に映し出される。優秀な補助脳がメモリ内にその絵を納めてしまうことを、必死で抗うように首を力任せに左右に振った。

どくどく、と。奇妙な音を立てて走り始めた心臓。
全身の沸騰した血がぐるぐると、駆けめぐる。
どっと吹き上がる汗に、顔が熱い。


頭の中で飾られた絵に、ジョーはなすすべもなく立ちつくす。


まあるく白い華奢な肩。
細い首筋から影を落とす鎖骨。

柔らかそうな自然の曲線を描き、折れてしまいそうに細い線へと繋がってシーツに消えた。








<じょー、モウ 大丈夫ダヨ>


イワンの声が直接ジョーの頭の中に届いたことで、やっと一歩、その絵から離れることに成功する。


<・・・・見テイナイ。ソウイウコト ダカラ。心配シナイデ>


赤ん坊のイワンの、変な気遣いにジョーは苦笑する。
足の裏にまで届きそうなほどに全身で空気を吸い込み、深呼吸を繰り返し、落ち着くことに全神経を集中させて、再びメンテナンスルームのドアを開けた。


「博士、何かいりますか?フランソワーズはカフェオレ、いる?」
「イワンのミルクを頼めるか?フランソワーズは何かいるかの?」
「・・・・・」
「儂は珈琲を頼むぞ」
「はい。・・・フランソワーズは?」


フランソワーズは俯いて紅い顔のまま、何も言わない。
見られていない。と言われて、そうであることが事実だとしても、見えていない自分にとっては確認しようもなく、恥ずかしい。


「カフェオレをいれておいで、ジョー」


フランソワーズの代わりにギルモアが苦笑しながら答えた。










####

フランソワーズの聴力が戻り、視力回復のための作業が続く。
調査に向かったメンバー以外は、自室での作業に追われ、食事以外にはほとんど顔を合わさない日だった。
ジョーはギルモア、イワンと共にほとんどを地下で過ごし、合間をみつけては研究室でトーマス・マクガーについて調べていく。
002から送られてきた招待状を、すぐに管理人である”マクスウェルの悪魔”へと添付メールで送信し、返事を待つ。




翌日の朝。

夜通しフランソワーズの視力回復に努めたイワンに、夜の時間が訪れた。
ジョーが作ったミルクを、ギネスブックに載るような速さで飲み干したかと思うと、視力が60%回復したフランソワーズの腕の中で、夢の世界の住人となった。

その日の夜、予定していたよりも2日早く、フランソワーズのメンテナンスが003としてのテストを残して、終了した。


「まずは、慣れることじゃ。儂がいいと言うまでは”スイッチ”を入れてはいかんぞ?まだ細かい調整とテストを残しているからの。これからは決まった時間にそれらを少しずつチェックする。開発したばかりの、新しいものじゃ、しばらく様子をみなければならん」
「はい、博士」
「今夜まではここにいなさい。健康診断のようなもんじゃ、明日の朝には躯に繋いでる全てのケーブルを外すからのう・・・」
「はい」


レースのような長い睫に縁取られた、生命の光が感じられる、フランソワーズのこぼれそうに大きな空色の瞳にギルモアはほっと、安堵の息を吐いた。


「じゃあ、ジョー・・・後はお前に任せるぞ?儂はゆっくり風呂にでもつかってくるわい。明日の朝は早いからのう」
「はい。博士、お疲れ様でした」
「・・・ありがとうございました、博士」
「うむ。2人とも夜更かしせずにな、ジョーも出来ることは明日にしないさい」


ギルモアはフランソワーズの頬に、おやすみのキスをひとつ贈る。
フランソワーズも、それに答えるように、キスを贈った。
ゆっくりと足を進めて、メンテナンスルームを出て行くギルモアをジョーとフランソワーズは見送る。






ドアがゆっくりと閉められて、部屋には2人だけとなった。
ジョーは視線をギルモアが去ったメンテナンスルームのドアからフランソワーズへと戻す。


「がんばった、ね」
「・・・・ありがとう、ジョー」
「俺じゃなくて、キミの”友達”に言ったら?」


ジョーは微笑んでフランソワーズの膝の上にいる、耳が異様に長い白いうさぎの縫いぐるみを指さした。


「ウサギさん、ありがとう」


フランソワーズはくすくす、と笑いながら”ウサギさん”の頬にキスをひとつ贈った。


「驚いたよ、セービングカプセルが開いたら、キミの手にいたから」
「・・・・イワンが、もたせてくれたの」
「どっちが赤ちゃんかわからないね?」
「んふふ、そうね・・・。でも・・・・・」
「でも?」
「こうやって触れているだけで、安心できたわ」


”ウサギさん”をフランソワーズは撫でたり、握ったりしてみせた。


「気分は、どう?」


ジョーは身近にあった、イスを引き寄せて座る。


「大丈夫よ。何も問題はないわ」
「何かいるものとか、ある?」
「・・・・いいえ」
「・・・そう?」


手に持っていたファイルを見ながら、フランソワーズに繋がれたコードを確認し、いくつかの計器が示した数字を書き込んでいく。

フランソワーズは、黙ってジョーのその作業を見つめながら、手に持っていた”ウサギさん”を強く握りしめた。


「・・・これで、いい。それじゃあ」
「あ・・あの」


イスから立ち上がりかけたジョーをフランソワーズが呼び止めた。


「・・・どうした?」


呼び止めたものの、フランソワーズは困ったように視線を泳がせて俯いてしまう。
ジョーはイスに座り直して、俯いてしまったフランソワーズをのぞき込む。


「・・・・電気を、消さないで欲しいの」
「・・・明るすぎて眠れない、よ?」


メンテナンスルームに取り付けられた蛍光灯は、影を嫌うかのように、真夏の太陽よりも眩しい白い光は煌々と、メンテナンスルームに充ちている。


「ええ、そうだけど・・・」
「・・・・・怖い?」
「・・・・・・・・窓が、ないでしょう?」
「ああ・・そうか・・・・」


メンテナンスルームのルームライトを消すと、作動している計器、コンピューター類が放つ光以外は完全な闇になる。それはここが地下でもあるために。そして、完全な密室であるために。
ここにいれば、目が覚めても朝なのか、夜なのか、まったく判らない。


「・・・・似てるから、ずっといた”あの”研究施設に」
「・・・・・・・ごめん。・・・・気が付かなかった、よ」
「ジョーが、ジョーが謝ることじゃないわっ・・・・、私が・・・。ずっと今まで・・イワンかギルモア博士に、ジョーがいたから・・・」
「・・・・・・・・・ここにいる、よ」
「え?」
「キミが眠るまで、ここにいる、よ。俺」


ジョーの言葉に、フランソワーズは慌てて首を力任せに何度も左右に振ったため、軽い目眩に襲われて躯のバランスを崩す。と、素早く立ち上がって、フランソワーズの背にジョーの手が伸ばされ支えられた。


「危ないよ?・・・・そんなに頭を振ったら」


薄い診察着を着ているだけのフランソワーズに触れたジョーの手に、彼女の背中の温度が、その感触が、メモリ内に焼き付けられた昨日の”絵”である、フランソワーズの何も身につけていない姿を、ジョーの意志とは関係なく甦らせる。


背中に感じるジョーの手が、腕の熱が、フランソワーズの緊張をさらに高まらせて、メンテナンス中にどれほど自分がジョーを頼り、甘えていたかを意識させた。


2人の視線が絡まる。
高まった体温が、お互いを意識させる。




熱に酔う。

空気に酔う。

交わした視線に酔う。


ギルモア邸玄関のチャイムが鳴った。




















00時18分。



地下に響き渡った音に、フランソワーズが反射的に”眼”のスイッチを入れようとしたのを、009は瞬間的に阻止し、同時に脳波通信で指示を出した。


<現状報告っ>
<リビングルーム、008。僕が出るよ>
<1階コモンルーム、005。博士、イワン、任せる>
<キッチン、006アルヨ!>
<オレは004の部屋だぜ>
<自室。008、オレがサポートする>


004の自室には明かり取りのための飾り窓が、吹き抜けの広間に向かって取り付けられていた。002と004で飾り窓を挟んで左右に分かれ、玄関から見えないように身を隠し、004は5つの銃口を玄関ドアに向けた。


008がリビングルームから広間へと姿を現して、004の部屋に繋がる飾り窓を見上げると、002が親指を立てて、008に合図を送った。
008は頷いて、玄関へと向かう。


<ドアを開ける>


観音開きの、扉のドアノブに手をかけて008は外にいるであろう、”誰か”に声をかけた。


「どちらさまですか?」











####


地下のメンテナンスルームで、フランソワーズはジョーの心音を彼の胸に耳を押し当てる形で聴いた。
フランソワーズの両目をジョーはその手で覆って視界を防ぎ、頭を抱き抱えられるようにして自分の腕の中にフランソワーズを閉じこめた。


ーーーこのまま・・・・・・・で・・・・・・






ジョーの心臓が打つ鼓動の合間に浮かんだ言葉は、次の力強い鼓動にかき消される。


<・・・009、ゲストだよ>
<誰か、地下へ来て003と一緒にいて欲しい、1階に戻る>


脳波通信で届いた008の声に答えながら、ジョーは自分の腕からフランソワーズを解放した。


<オレが行くぜ、いいか?>


002が2階の収納室の1つを改造した通路を使ってメンテナンスルームへと向かい、009は002と入れ違いに、1階、003の部屋の下に位置する応接室へと向かった。






「よお、・・・・泣くほど、オレが嫌かよ?」
「ちがっ・・・・・違うわ・・・・・・・・・」
「んじゃよ、なんで泣いてんだよ?」
「・・・・・・まだ、眼の調子が、よくないの」
「・・・そんな言い訳はよっ・・・・・・。今だけしか通用しねえんだぜ?」
「今だけ、よ。今だけ・・・許して・・・」
「・・・・・・理由くらい聞かせろや」


フランソワーズは、目蓋を閉じて俯いた。
躯に残る、ジョーの腕に抱かれた感覚が、ジェットの言葉によって、より濃く肌に刻まれていく。


「・・・・・・驚いただけよ」
「何に?」
「・・・・・・・驚いた、の」








ジェットはメンテナンスルームへと足を踏み入れたときの、2人の様子を思い出す。









ーーーお前らは、ロミオとジュリエットかよっっ?!




離れたくない。と、全身で訴えながらも・・・それが叶わない。



いつからだ?
いつから、この2人は・・・。




フランソワーズは、ジョーが好きだと、さくらに言った。
今まで誰が、どんなに彼女の気持ちを聞き出そうとしても、絶対に言わなかった気持ちを、さくらに言った。

ジョーはフランソワーズへの気持ちを、言わなくても判るほどに無意識の態度で示している。
それは”アラン”の件を終えてから、よりはっきりと、誰もが感じていたこと。


お互いを想い合ってる?
好き合ってる?













違う。こいつらは・・・・気が付いてないだけで・・・・・・・



愛し合ってる。









好き、なんてもんをとっくに通り超しちまってよ。


















だからこそ。


「フランソワーズ、何もかも終わったら、ギルモア邸を出ようぜ」


ジェットの言葉に、フランソワーズは涙に濡れた顔でまっすぐにジェットを見つめた。


「その方が・・・おまえのためだぜ?」
「・・・・・・」
「いいぜ?オレが付き合ってやるからよ、出て行こうぜ・・・・・もっとおまえに相応しい場所がある」











=====44へ続く



・ちょっと呟く・

2~~~~~~!
トリ~~~~~!

9!しっかり~~~~~!!




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