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Day by Day・47
(47)




「”サイボーグの設計図”を”景品”として出していた、オンライン・ゲームの管理人。”マクスウェルの悪魔”は、調べた通り、寄宿制の男子校、私立、月見里(やまなし)学院の内部からゲームを更新、管理している確率が高い。それは今も変わりないよ」

「6年前に恩田の前から失踪したトーマス・マクガーが大学院で始めた、勉強会が今、”交流会”となって存在している。コズミ博士が学会で知人に進められて参加した、”交流会”に出された研究資料は、トーマス・マクガーの物。B.Gからの流出と言うよりも、一個人が管理していた物。トーマス・マクガーの個人的研究資料であった。とても危険な物。サイボーグ手術には欠かせない物。」

「”マクスウェルの悪魔”がゲームの”景品”として出していたっつう、”サイボーグ設計図”は、未完成・・・。それによっ、穴だらけで、重要なもんがちっとも揃っちゃいねえ!・・・ギルモア博士の見解では、B.G内でサイボーグ計画が持ち上がったときに使われていた物の一部、だと・・・。ギルモア博士がB.Gの研究施設にスカウトされる少し前の物、っぽいぜ。オレたちの誰のものでもなかったては、一安心だぜ。その辺はイワンが起きてからっつうことで、より詳しく解るかもな!」

「日本で妻子を捜していたトーマス・マクガーは、養子に出されて行方不明だったの息子、中井・マクガー・T・アンドリューと篠原さえこの間に生まれた、篠原当麻と会う。篠原当麻はトーマス・マクガーにとっては、孫・・・か」

「篠原グループ代表の篠原秀顕の孫でもアルヨ。将来は篠原グループを背負う運命ネ」

「篠原グループは、多くの事業に手を出していたな。移植で有名な篠原総合病院中心に、製薬会社、医療機器開発、研究施設か・・・。最近は確か・・・」

「義足や義肢などを作る技術者のための研究施設だよ。篠原技研」

「それに、学校経営。」

「オンライン・ゲームの”景品”がどこまであるのかも、問題になってくるな。”交流会”については引き続き、クラークから訊いた”勉強会”だったころの参加者を中心に調査を進めていくんだろう?トーマス・マクガーについては、恩田が言ったことの裏付けが必要だな。・・・・・トーマス・マクガーの日本滞在の目的は、”息子”に彼の”遺産”らしきものを渡すことだった。だが、息子は行方不明。渡したと言う、恩田の言葉を信じれば、今、孫である篠原当麻がそれを所持しいることになる。恩田が言うことを信じれば、だ。もしくは母親の篠原さえこだ」

「トーマス・マクガーの研究資料・サイボーグの設計図の所有者は、”マクスウェルの悪魔”って言うことはだよっ!篠原さえこか、孫の当麻が”マクスウェルの悪魔”じゃねえの?」

「・・・・002の言うとおり、その可能性は、ある。もしもトーマス・マクガーから篠原さえこ・当麻が受け取った物が、彼がB.Gで研究していた物であれば、の話し。それでも、イマイチ決めてに欠けるけれど・・・・。”交流会”がトーマス・マクガーの研究資料を持っていたから、ね。彼らの中にいるかもしれない。けれど、”マクスウェルの悪魔”は日本にいる可能性が高いのは、事実。・・・・・トーマス・マクガーが亡くなったのは今年の2月。篠原親子とトーマスが接触したのは亡くなる1週間ほど前。”サイボーグの設計図”を景品にしたゲームが始まったのは、今からおよそ半年ほど前、3月あたり、だ。・・・・B.Mに人工臓器について情報を求めていた人物がいたのも、半年前くらいだった、ね。今後の景品によるけれども、”マクスウェルの悪魔”が、”交流会”で使われた資料のように、設計図の資料が揃っていなかったら?・・・・探す、よね?”サイボーグの設計図”を完成するするために・・・。
オンライン・ゲームの目的は、あくまでも僕がゲーム内容を見ての推測だけれど、”マクスウェルの悪魔”が”サイボーグの設計図”の完成をさせるために、作ったゲームなのかもしれない。・・・”マクスウェルの悪魔”が篠原さえこ、もしくは当麻と決めつけるには安易で早すぎる。・・・・まずは、篠原さえこ・当麻が、トーマス・マクガーから何を受け取ったか知る必要がある。今後は篠原グループ。経営する月見里(やまなし)学院に絞ってみよう」


リビングルームに集まった夜の時間の001、地下のメンテナンスルームに居る、003とギルモア。そして。恩田光弘を千葉の自宅へと車で送っていった007を覗いた、00メンバーたちのミーティングが続く。


「交流会の方と、ゲームは続けるのか?」
「・・・もちろん、だ。どちらもこのままにはしておけない。けれども、今はこっちをメインに動く」
「どう動くんだよ?」
「恩田が言った裏付けを005、交流会の方と合わせて調べて欲しい。002、004,008は今まで通りにゲームを続けて。僕もそのまま続けていくつもりだ。007には、潜入捜査を」
「007をどこへ潜入させるの?篠原親子の方?それとも学校?」
「・・・・・・まずは篠原親子かな」
「どうだ?篠原親子の方は、003に行かせてみては?」
「え?」


004の言葉に、009は驚いた。


「学校の方が、でかい上に、広い・・・そして危険も多い。目立つことはできない、そうだろう?なら007は学校へ行かせるべきだと思うが?」


009は004の考えに同意するように頷いたが、しかし、口から出た言葉は違った。


「・・・・003は今でもメンテナンス中、だと思って欲しい。だから、まだ無理だ」
「テストを兼ねてなら、いいんじゃねえの?今日・・・っつっても昨日か、もう。今日だって何も問題なかたしよ!」
「けれど、すぐに邸に戻ってきた、だろ?」
「甘ったれてんだよ。ま、アイツの社会勉強っつうことでやらせてもいいじゃねえの?外からだっていいじゃんかよ」
「・・・003については、ギルモア博士と相談してから、だ。002、004,008は篠原さえこ・当麻について、だ。居住地を調べて、実際に見てきてくれ。篠原グループの本社、そして、篠原グループが関わる会社もリストアップしてほしい。できれば、本社の方をまわって見てきてくれないか?篠原さえこ、その父、秀顕のスケジュールもできたら、頼む」
「007はどうするつもりだ。」
「帰ってきてから、学校の方へ行ってもらう、よ・・・明日は。004の言う通りに、ね」
「ワタシはどうするアルネ?」
「明日は、みんな出払うだろうから、Mr.リンツのことを頼む。恩田さんが”迎えに来る”と言っていたから、明日、彼はここを出るだろう」
「009は、どうする。」
「・・・・少し揺さぶってみようかと、ね」
「誰をだ?」
「”悪魔”に決まってるだろ?・・・・俺は意外と短気なんだ、よ」


















####

ミーティングが終わって、それぞれが自室へと戻るが、ジョーは地下のメンテナンスルームへと向かった。早く終わればミーティングに出る。と、言っていたフランソワーズだったが、結局彼女はミーティングが終わった後でも、その姿を現さなかった。

メンテナンスルームのドア前でロックがかかっているか、いないかを調べてから、ドアをノックした。


「ジョーか?入っておいで」


微かに聞こえた、ギルモアの声にメンテナンスルームのドアを開けて部屋へと入る。
すでに、003の”眼”と”耳’の調節、そしてテストを終えて、コンピューターにそれらのデータを保存しているところであった。


「・・・終わったんですか?」
「うむ。ちょっと長くかかったが・・・・フランソワーズが焦らせるもんでなあ」
「博士っ」
「・・・・焦らせる?」


怪訝にフランソワーズを見る、ジョーの視線から、フランソワーズは目を逸らした。


「いや、なあに・・・。みんなが色々と動いておるのに、1人でここにいるじゃろう?寂しいんじゃよ。みんなと一緒に、動きたいんじゃ。なあ、フランソワーズ?」
「いくらジョーが009でも、そんなことまで報告しなくても・・・・・・」
「・・・・今回キミが受けたのは、とても繊細な神経なんだ、よ?ミッションのことは、気にしなくていい。本当に003の力が必要になったとき、言うから」
「・・・・・」




ーーーそれだと、遅い・・・・・・。003でいるために・・・









「ジョー、もうここはいいから、フランソワーズを連れて上に戻りなさい」
「・・・博士は?」
「儂はここで少しばかりやりたいことがあるでの、何、いつものことじゃて、放っておいてくれ。さあ、フランソワーズ、部屋にお帰り。明日、邸内で”耳”のスイッチを入れてのレベルを計って、”眼”は透視の方と拡距離を見るからのう」
「・・・はい」
「・・・・・・もうそこまで、進んだんですか?」
「うむ。今日できるかぎり、進めてからのう・・・・・・。明日の具合で、神経ケーブルを取り替える以前の状態に戻るじゃろう、じゃがまだ”馴染んで”おらんかもしれんし、それはフランソワーズ自身の問題じゃしなあ。データー上では、何も問題ない。しかし、改良を加えた部分のチェックは続けるぞ?」
「・・・・・はい、博士。ありがとうございました、お休みなさい」


フランソワーズの頬に笑顔でギルモアはお休みのキスを贈り、フランソワーズもギルモアへと贈る。
2人の”お休み”の挨拶を見届けてから、ジョーはフランソワーズと共に、メンテナンスルームを後にした。


「・・・・・・焦る必要なんてない、から」
「・・・」
「躯の方が大事だから・・・・。それが、キミでなくても、ほかの誰でもあっても、俺は同じことを言う、よ」
「・・・ええ、でも」
「・・・・・今は自分のことに集中して」


1階へと戻る階段の途中、ジョーはフランソワーズへと振り返り、足を止めた。
フランソワーズはそのままジョーの隣を通り過ぎて、1階、キッチンの隣に通じるドアを開けた。


「・・・・フランソワーズ?」


ジョーは地下からの通路から抜けて、ダイニングルームへと入っていったフランソワーズを追いかけて行く。


「お休みなさい、ジョー・・・」



フランソワーズは、ジョーの方へは振り返らない。
ジョーに背を向けたまま、リビングルームへと続くドア前に立ちドアノブに手を伸ばした。






ーーー003として必要とされない私は、ただの・・・・






「フランソワーズ?」
「・・・部屋に戻るの、でしょう?」


ジョーはフランソワーズの肩越しから、彼女の背に覆いかぶさるようにして腕を伸ばし、リビングルームのドアを開けられないように押さえて、その手に、腕に、体重をかける。


降れるか、降れないかの距離。
フランソワーズは背に、ジョーを感じる。


「・・・・どうしたの?」
「・・・ドアが開けられないわ」
「・・・・いつもと違う気が、する」
「・・・・・気のせいよ?」
「・・・そうは思わない」
「ジョー・・・手を離して、部屋へ戻れないわ」
「・・・何かあった?」
「何もないの」
「・・・博士は大丈夫、と言ったけれど。それはデーター上のことだから、キミの気分は?本当に大丈夫?」


距離が近い。
音量を必要としない、距離。

低く囁くように、フランソワーズの耳に届く、いつもよりも空気が混じった優しいジョーの声。



心臓が締め付けられて、痛い。
うまく呼吸ができない。





ーーーいつか、キミを003から解放してあげる、からーーー








「私は003だもの、平気。何も、ジョーが気にするようなことは、何もないわ」
「・・・・・そう」


体重を掛けてドアを押さえていた腕から、力を抜いた。
フランソワーズはドアノブを握りしめて、それをまわす。

かちゃり。と金属がぶつかる音が鳴り、力が入っていないが、ジョーの手が未だにドアを押さえるように置かれているため、いつもよりも重いドアを、自分の方へ引き寄せるようにして開けた。


ドアに圧されてジョーの手が、そこから離れる。
触れてもいないのに、フランソワーズの背に伝わり続けるジョーの体温。



「003はキミだけど・・・・・。できれば、”フランソワーズ”でいてほしい、よ」
「・・・・」
「・・・・フランソワーズ」
「ひどいわ、ジョー」
「ひどい?」
「・・・・・・・私は003よ。それ以外でも、何者でもないのに」


フランソワーズは身を滑らせるようにして、リビングルームへと入っていき、ジョーは彼女の後を追うように歩く。


「キミが、003でいる・・・」
ーーーよりも・・・キミが、フランソワーズでいるほうが、いい。

ジョーが言いかけた言葉を飲み込んだ。


「必要が、ない?」


消えた言葉の続きをフランソワーズが呟いた。


「・・・何を・・・・。必要がないはず、ないだろう。・・・・キミは、フランソワーズだろ?」
「003だから・・・。003でいるわ」
「・・・・・だけど」
「私は必要ない?」
「必要ない?・・・・どうしてそんなことを言うの?」
「・・・どうしてかしらね?」
「やっぱり、少し変だ、よ」
「・・・疲れただけ」
「003」


”003”と、呼ばれたのでフランソワーズはリビングルームのドアを開けて出た先の、階段下で足を止めた。


「・・なに?009」


フランソワーズは003として、009の声に答えて彼を見た。


「・・・・キミは大切な、・・・・・・・かけがえのない、仲間(ひと)だ、よ?」
「・・・・」
「・・・003として出会ったけれど、今、俺の目の前にいるのは、フランソワーズだから」
「明日は午後から調節を始めるの、今まで参加できなかった間のミーティング内容は、だいたい博士から聞いているけれど、明日のミーティングまでは、ちゃんと把握しておくわ、009・・・・。お休みなさい」


フランソワーズは一息に言い切ると、階段を駆け上がっていった。
ぱたぱた と、彼女の履くピンク色のスリッパが軽い音を立てて遠ざかり、数秒後、ぱたん。とドアの戸が閉められる音を聞いた後、ジョーは踵を返してリビングルームへと入っていった。






ーーーここに居る私は、フランソワーズではなく、003だから・・・
ーーーここに居るキミは、003ではなく、フランソワーズだから・・・・







いつまでも、あなたのそばにいたい。
いつまでも、キミは幸せでいて欲しい。


私は、003だから、
キミは、フランソワーズだから、



ここに居させて。
ここに居て欲しい。


















####

恩田光弘を千葉の自宅まで車で送り届けたグレートが、疲れた躯に自室へ向かう前の一杯の安らぎを求めて、広間を抜けてリビングルームのドアを開けると、ジョーが独りソファに座っていた。


「おお、まあだ起きてたのかあ?」
「お帰り、グレート。お疲れ様」
「いやあ、意外と道は空いていたんだがなあ、ジョーのようにはいかんなあ、オレは一杯もらうが、どうだあ、付き合わねえか?」
「・・・いや、いいよ。少し話しがあるんだけど」
「そうか、・・・・ちょいと待っててくれや、呑みながらでもいいかあ?」


グレートの言葉に、ジョーは頷いた。
ジョーの了解を得て、早足にキッチンへと赴き、冷蔵庫から冷えたビール缶を1本手に持って、再びリビングルームへと戻り、ソファに座るジョーの隣に座った。


「話しってなんだあ?・・・・ってか、ジョー、大丈夫?」


プルトップを開ける、真空だった缶内に閉じこめられていた空気が抜けて、ぷしゅっと音が鳴る。


「・・・・なに?」
「いや、ちょいと顔色が悪いように見えるが・・・?なんだ、具合でも悪いのかあ?」
「気のせいだよ。それより・・・月見里学院に潜入してくれ。より”深く”だ」
「・・・・構わんが・・何を探す?」
「学校経営者、教師、生徒名簿。コンピューターが置かれている部屋はすべてチェックを入れてくれ。出来れば、メインで使用している人間についても。クラスルームなら、それらを管理している人間を。あと経営状態も」
「篠原さえこと、父親だなあ、経営者ってえのは・・・そういえば、息子も同じ学校の生徒なんだよなあ」
「・・・・恩田に訊いた?」
「車ン中でな、色々突いてみたぜ、なんか他にも出てくっかなあってな。17歳だってよお、高校3年生って言っていたなあ、恩田は」


グレートは美味しそうに缶ビールを飲む。


「他には?」
「トーマスの息子、アンドリューだったか?彼は医学生だったらしいなあ。蛙の子は蛙。養子に出された先の名前は使ってなかったようだなあ。トーマス・マクガーも、息子が’本名”で学生していたから、簡単に通っていた大学までは突き止めていたらしい。アンドリューはハーフだからってえ、養子先も国際結婚した夫婦にもらわれたようだぜ。その夫婦は今はアメリカに住んでいるってよ。成人してからアンドリューとは、メールのやり取りだけで、居所は夫婦も知らねえらしい・・・」
「メールアドレスは?」
「ぬかりなく・・・・。あとでピュンマに探らせないとなあ」
「それで?」
「コズミ博士には、無事にクラークが世話になる予定の人物とコンタクトが取れたと、伝えておいたあ」
「助かる・・・ありがとう」
「あと、コズミ博士も月見里学院に呼ばれていたことがあるって言ってたろ、ついでにその辺りも訊いてみたら・・・・。面白い提案をされてなあ」
「・・・・・面白い?」
「ああ、こいつあ吾輩も賛成だ。オレが調べるよりも手っ取り早いかもしんねえ」


にひひ、っとグレートは嗤う。


「ちょうどいいと思うしなあ。ピュンマも日本の学校ってえのを経験できる、あいつは大学に入る前に、そういうのに慣れていてもいいと思うし、ジェットは再教育が必要だろお?たしか、ジョー、お前は途中で辞めちまったんだろ?高校?」
「・・・・気が付いたら、勝手にそうなってた」
「ま、今更かもしんねえが、青春をやり直してこいやあ、ちいっと時間はかかるが・・・。手続きはコズミ博士がしてくれるそうだあ。秀顕氏とは、それなりの付き合いがあるらしくて、その辺はまかせてもいいだろう。ああ、ギルモア博士にはコズミ博士から説明してくれるらしい」
「・・・・・・・・・・・まてよ・・それって」
「オレが連絡係で通えばいいし、寄宿制っつても週末の金土日は帰れるらしい。詳しい資料は速達で届くだろう。制服があるらしいから、採寸しに、指定のデパートへ行かなきゃなんねえなあ」
「・・・・・グレート、まさか」
「見た目も年齢的にもちょうどいいからなあ、お前達3人は!ジョー、ジェット、ピュンマ、の3人で私立月見里学院に、短期留学生として、編入させるんだ!!いいアイデアだろう?」
「・・・・勝手に決めないでくれ」
「コズミ博士はノリノリだったぞお。それにその方が都合がいい!」


グレートは缶ビールが温くなる前に、一気にそれを飲み干した。















####

「いやあ、すっかり時差呆けが治ってよかったです。やっぱりミツヒロに会うこと、緊張してたんですね、自分は・・・。本当にすっきりです」


朝早くに目覚めたクラークは、リビングルームのソファに座ってアルベルトが淹れた珈琲を受け取りながら、朝から腹筋をフルに使った滑舌の良く話す。


「昨日は、遅くまでミツヒロはここに居たんですか?」
「何時だったか、覚えていないが・・・話しが終わり次第、帰った。仕事が終わったらこっちへ迎えに来ると言っていたからな。恩田さんのところへ行くんだろ?」
「もう少し、ここに居たいのが正直な気持ちですね!ここは賑やかで楽しいですから」
「・・・・ジョーがいるからか。」
「そうですねえ♪でもMr.ジェロニモのその、しっかりとした、優しいけれど芯のある声が聞けなくなるのも寂しいですね。アルベルトもですよ?もちろん、ミツヒロはこんなに美味しい珈琲を淹れることできないですから」
「そりゃどうも」

アルベルトは、マグに注いだ珈琲を飲み干した。

「ギルモア邸以外にも、ホームステイ予定のお宅がありまして、そちらも行ってみたかったです。あちらには高校生!の息子さんが・・・ふふっ」
「・・・・いかなくて正解。」
「私が得た留学生奨学金制度は民間企業の融資で成り立ってますね。その1つに、留学生の日本での生活サポートしてくれるホームステイ制度があります。コズミ博士のお知り合いがその1つを紹介してくれたんですね」
「・・・便利。」
「そうです。生活に慣れていない海外からの留学生をサポートしてくれます。素晴らしいですね」
「ホームステイ、か・・・・。ジェロニモ、そろそろオレは行くが、あとを頼むな」


硝子作りの珈琲テーブルの上に置いていた、半分ほど吸い終わった、”Roth-Handle”と書かれた紅い箱と安物の使い捨てライターを手にとって、アルベルトはソファから立ち上がった。


「どこへ行かれるんですか?」
「仕事でね、・・・見送りはできないだろうから・・お幸せに」
「また、遊びに来ますから!」
「・・・そうだな、ジョーに会いにだろ?」
「ヤキモチですか?ふふ、自分もまだ捨てたものじゃありませんね!」
「ま、元気で」
「はい、仕事がんばってください」


アルベルトがギルモア邸を出てすぐに、彼を追うようにジェット、ピュンマも出かけて行った。
クラークはダイニングルームに呼ばれて、フランソワーズが用意した朝食を済ませた後、彼女が淹れた紅茶を飲みながら、ポケットから取りだした四角い藍色の箱をテーブルに置いて、キッチンに立つフランソワーズを呼んで、それを見るように促した。
フランソワーズはクラークからひとつイスを開けて席に着き、彼がテーブルに置いた箱を手のひらに載せて、そっと箱の中を覗いた。


「どうです?」
「・・・・素敵ですね」
「あげます」
「?!・・・そんなっ」
「これを渡したのは1年以上も前なんです。でも、彼女はずっと部屋の鏡台の引き出しに閉まったまま、渡したとき以来、身につけるどころか、箱さえも開けた様子がありませんでしたから、大丈夫ですよ。なにも縁起が悪くないです!」
「悪い、悪くないの問題では・・・・」


箱に入っていたは、エンゲージリングと思われる、スクエアカットのダイヤモンド。


「彼女がなぜ、身につけるどころか置きっぱなしにしていたのか訊けませんでした。訊けていれば、ここに自分はいなかったですね。きっと。・・・・・これを返してくれたとき、彼女はとっても綺麗で、すごく、すごく綺麗でした。自分はバカだなあ、と思いました。・・・・・売ったり、捨てたりすることも考えたんです。考えただけで出来ませんでしたし、どうして日本までこれを持ってきたのかも、自分でもわかりません。もしかしたら・・・」
「・・・・・?」


クラークは言いかけた言葉を飲み込んで、緑がかった瞳をきらきらと輝かせながら、まっすぐにフランソワーズを見て言った。


「・・・・ミツヒロの家に持っていくの、どうかとおもって」


フランソワーズは手に持っていた藍色の箱をテーブルの上に置いて、蓋を閉めた。


「いただけませんわ、高価なものですもの・・・・それに」
「深く考えないで下さい。ただ、ギルモア邸に女性があなたしかいなかったから、そう思ってください。こちらにお世話になった感謝の気持ちと、あなたとお友達になりたい記念。だと、・・思ってください」
「・・・・これを、これをお返しになられたときの、婚約者だった方は・・・悲しんでいらして?」
「・・・全部話して、その日の内に彼女は自分の家に来て、これと一緒に。・・・笑ってました、とても綺麗に、綺麗に・・・・笑ってました」


クラークはテーブルに置かれた藍色の箱を手に取り、その箱を自分に返した日の彼女を思い出す。










初めて、会った日よりも。

初めて、キスした日よりも。

初めて、体を重ねた日よりも。










彼女は綺麗に、とても綺麗に微笑んで、言った。












”やっと、私が好きだったクラークに逢えた。”





「・・・・気づいていらっしゃったのでは?・・クラークさんがお話になる前から・・・。ずっとクラークさんを見ていらっしゃったんでしょう?ミツヒロさんとお別れした後もずうっと、好きだから、愛しているからこそ、気づくことも、あるんです。悲しまれていらっしゃらなかったんでしょう?」
「”クラークらしい”って、言いました。”私の好きなあなたは、やっぱりこうでなくっちゃ”とも・・・・」
「ご存じでなかったのは、クラークさんだけだったんですわ、きっと。・・・・当事者だから知らないことってありますもの、それに・・・」


フランソワーズの、パライバトルマリンのように神秘的な蒼がきらり、と魅力的に輝いた。


「好きな人だからこそ、その方らしく生きて欲しいんですわ。たとえ、生涯を共にするパートナーになれなくても、愛する方がこの世界のどこかで幸せでいるとことを・・。そういう愛し方もあるんです・・・きっと、婚約者だった方は、クラークさんが、クラークさんらしく生きられることを望まれて・・・。それは、自分のそばではなく、ミツヒロさんのそばであると、わかってしまわれたのかもしれませんね・・・・。女はそういう愛し方も・・できるんです」




彼女は、ミツヒロが好きな自分を好きで居てくれたのかもしれない。
都合のいい解釈だけれど、そう思ってもいいかもしれない。


見合い。だった。
けれども、彼女のことは前から知っていたし、彼女も自分のことを昔から知っていた。
もちろん、彼女もミツヒロのことは知っていた。
自分が同性である”ミツヒロ”と恋愛していることまでは、知らないはず・・・・。











おもしろい。













人は、面白い。と思う。












「ミ・・・フランソワーズ。そう呼んでもいいですか?」
「はい」
「やっぱり、これはあなたにあげません」


フランソワーズは、クラークが大切に手の中にしまった藍色の箱を見つめて、クスクスっと笑った。


「ええ、見せていただけて嬉しかったです」
「でも、”あげる”と言った言葉に、嘘をつきたくありませんから、一緒にお買い物に行きましょうね。あなたに似合う、指輪をプレゼントしたいです」
「気になさらないでください」
「いいえ、絶対に!!約束です・・・・指切りしましょう!ミツヒロに教わったんです」


クラークは藍色の箱をポケットにしまい、フランソワーズの瞳の前に軽く拳を握った手に小指だけを立てた。無邪気に微笑むクラークの、その小指にフランソワーズは自分の小指を添えた。


「ミツヒロさんと、お幸せに・・・・」
「・・・ありがとうとざいます。落ち着いたら、遊びに来ますね。そして買い物です!!」
「私とでなくて、クラークさんはジョーと行きたいのでは?」
「ええ、もちろん♪Mr.シマムラとも行きたいです、けれど・・・・・心配しなくても行けますからね」
「?」





ーーーフランソワーズを誘えば、もれなくMr.シマムラもついてきますね!





不思議そうな顔で、小鳥が魅せるように首を少し傾けたフランソワーズの、ほっそりとした小指に少しだけ力を入れて、フランソワーズの瞳が繋がれた小指を見つめたとき、クラークはしっとりと、真白いフランソワーズの瞳の頬にキスをひとつ贈った。
フランソワーズはこぼれ落ちそうなほどに大きな空色の瞳をさらに大きくして、クラークを見つめ、花が咲くように、明るく微笑んだ。




「約束です!」







人って、本当に面白いですね!

自分もまだまだ、です。

買い物にはMr.ピュンマも誘ってみましょうか・・・・・ミツヒロは嫌いじゃないはず。





















####

ジョーが自室から出てきたのは、昼近くになってからだった。

邸の中の空気がいつもより静かで冷たく感じる。
夏に向けて日本は湿度が高くなり、温度計も下がることはなく上がるばかりの季節、人気のない空気が寂しく感じたのは、久し振りだった。



ーーー慣れていたはずなのに。



ドルフィン号での長い生活は、常に10人で動いていた。
日本にギルモア邸を構えてからも、常に10人で生活している。


施設を出て以来、人と一緒に暮らす。のは、サイボーグにされてから。


施設での生活は、
生きるために必要な環境を共有する子どもの団体生活に、所属する1人。
それは”家族”でも”仲間”でも”友”でもない。


雨風をから身を守り、眠る場所を与えてくれる、箱。





太陽の光が、明かり取りの窓から差し込んで、揺れる木々が光と踊る。
静まりかえった廊下を歩いていく。

ジョーの隣の部屋のピュンマ。
廊下を挟んで、グレートの部屋。
廊下を左に曲がる、角がジェット。その隣がアルベルト。その正面にゲストルームと続いて、コモンスペース・・・。
そして、フランソワーズの部屋。



夕べの会話がずっとジョーの頭から離れない。

003でいようとする、フランソワーズ。




事は、ジョーが予想していたよりも大きくなってきている気がした。
フランソワーズはメンテナンスを理由に、今回の”ミッション”には関わらせないつもりだった。

003ではなく、フランソワーズで居続けて欲しいと願いながら、それを叶えることができないジョーは、自分の無力さに苛立つ。


ーーー躯を改造するくらいなら、いっそのこと、こころも・・・・・。


好き。と言う気持ちは、補助脳の管轄外。





冷たい、階段の手すりに触れて指先から伝わる、それに身を引き締めた。
昨夜、グレートとの会話の後に自室に戻ってチェックメールに届けられていた、”マクスウェルの悪魔”からの”景品”。



1枚目は、cyborgについての論文
2枚目は、人体図に人工骨と関節
3枚目は、人工臓器を組み込まれた人体図
4枚目は、人工筋肉と血管
5枚目は、人工皮膚

6枚目は、人工心臓



7枚目は、URLと暗証コード








映像だった。


顔は映っていない。
骨格や筋肉具合、肌の色、足や爪の形などで、被験者は、アジア人・男性・年令15歳~23歳だと推定。

もともとなのか、何かで失ったのかは解らないが、被験者には右足がなく、手術は、彼に人工の”足”を取り付けるものだった。

膝頭上15センチほどの部分から、自分と同じcyborgの足。



映像は10分ほど。
手術開始と、その途中経過。そして術後の・・・テスト風景。
被験者の失われていたはずの足は、見事に復活していた。


確かに、”景品”で得た物から身体で失われた”部分”を補うのに必要な情報は揃っている。
それはあくまでも”専門家”が”景品”として得ていない部分を補うだけどの”知識”がある場合。


ジョーが見た映像は術中のすべてではなかったが、ギルモアの元で勉強し始めて日の浅いジョーでも、その手術に”欠陥”があり、失敗であるとすぐに解った。


被験者の”人工の足”はすぐに、動かなくなる。
繋いだ神経組織の接続が上手くいっていないはず・・・・。人工皮膚と、もともとの被験者の皮膚との拒絶反応に、血液循環が・・・筋肉の構成もあの4枚目の通りでは・・・すぐに熱を持ってしまって、組織破壊が始まる。足首の関節に使った人工骨の材料は・・・人が歩いたり走ったりする”振動”に耐えられるとは思えない。摩擦ですぐに、使い物にならなくなる。


人体と機械の融合。
その最終形態と言っていい、自分。


ギルモアの元で勉強を始めて、この技術がいつか・・・・、と思いを馳せることもある。
けれども、光があれば影ができる。

この技術が常に”光”として存在するとは限らない。














気が付けば、ジョーはリビングルームの壁一面に取り付けられたガラス戸を開けて、空と海が一望できる庭に出ていた。

フランソワーズが干したのであろう、色とりどりの洗濯物が邸をのぞきに来る潮風に揺れる。


海の匂い。
空の日差し。

囁くように聞こえる、どこか遠くで車が走り抜ける音。
ギルモア邸から徒歩20分ほど坂を下ったところにある、停留所に泊まったバスのアナウンスが、風に乗ってときおり聞こえた。

並の音。
海カモメが鳴き、空に描くライン。


白い雲の形がどこか夏を感じさせて、世界は明るく光に包まれている。




ーーーこの世界は、あの映像と同じ世界?
















「ジョー、起きていたの?」
「・・・・フランソワーズ」


リビングルームから、洗濯を取り込むために大きな籐のカゴを持ったフランソワーズが、庭先に立つジョーに声をかけた。


「スリッパのまま、庭に出ないで欲しいのだけど・・?」
「・・・・ああ。忘れてた」


庭先からリビングルームへ戻ろうと、踵を返す。


「煙草を吸うのは、少し待っていてくれるかしら、洗濯物を取り込んでからに・・」
「吸わない、よ・・・。みんなは?」
「アルベルト、ピュンマ、ジェット、グレートは朝早くに出かけたわ。ジェロニモもさっき張大人のお使いに。博士は・・・」
「準備してるんだね?」
「・・・ええ」
「彼は?」
「ジェロニモと一緒に駅前まででかけたわ、昼食までには戻ってくるって」



いつものフランソワーズだった。
昨夜はやはり、予定よりも長くかかったメンテナンスに疲れていただけかもしれない。と、ジョーは思う。


「・・・・そう。今、何時?」
「11時16分よ」
「・・・・・昼まで、待つか」
「すぐに用意できるわ」
「いや、キミももう、下に行くだろ?いいよ、昼まで待つから」
「大丈夫よ。すぐだもの・・・それに地下へは彼らが帰ってくる前に行けばいいから」
「洗濯、これを片付けるんだろ?」
「・・・・すぐよ」
「・・・じゃあ、お願いするけど、これはオレがやっておく、よ。どうせ待ってるんだし、ね」


ジョーはフランソワーズが持つ籐のカゴをフランソワーズの手から受け取ろうと、腕を伸ばした。


「用意が済んだらでも、いいの・・・気にしないで」
「・・・じゃ、どっちがいい?」
「え?」
「昼食まで待つから、洗濯はキミが取り込む。朝食を今用意してくれるから、洗濯は俺がとりこむ」
「ジョーの御飯も洗濯も、私と言うのはないのかしら?」
「ない、よ」
「気にしないで、すぐなの」
「・・・・じゃ、こうしよう。キミが用意してくれている間だけ、俺が洗濯を取り込んでる。用意ができたら交代。キミが続きを。それで、いい?」


迷っているフランソワーズを無視して、ジョーは彼女の手からカゴを取り、再び庭へ出る。


「ジョー、スリッパ・・・」
「・・・忘れてた」







フランソワーズは洗濯を取り込み始めたジョーを見て、急いでキッチンへと駆け込んだ。
朝食。と言っても時間はもう昼。


新しい珈琲豆を珈琲サーバーに用意して、スイッチを入れる。
ポットをコンロにかけてから、ロールパン2つに切れ目を入れて、バターとマヨネーズを半分ずつ塗り、ちゃんと水気を切ったクレソンを挟む。

1つに、朝の分に出したポテトサラダと、薄切りのハム。
もう1つに、手早く、クリームチーズを入れてパンに挟み安い大きさに調えた、卵焼き。
バターとマヨネーズを塗らなかった、ロールパンには茹でたソーセージを半分に切って、作り置きをしている沢山の野菜と一緒に煮込んだトマトペーストを温めて乗せた。

お皿にそれらを並べて、硝子の器にレタス、キュウリ、ブロッコリー、プチトマトと簡単なサラダを用意する。
サンドイッチを乗せた皿に、アメリカンチェリーを添えて、トレーに乗せたところで、珈琲の良い香りがキッチン内に漂い始めた。


フランソワーズは、ポットの火を切って、紅茶の用意を調える。
それらをダイニングテーブルに並べて、リビングルームへと戻り、庭へ出ると、2/3ほど洗濯物を取り込んだジョーと交代する。


「・・・慌てなくていいのに、あと少しだから終わらせてから行く、よ」
「冷めてしまうわ」
「・・・・そっか」
「ありがとう」
「・・・・どういたしまして」


ジョーはリビングルームへと戻りダイニングルームへ行く途中、振り返って庭で洗濯物を取り込み始めたフランソワーズを見つめた。

背伸びをして、腕を伸ばして、洗濯ばさみを外していく。
悪戯盛りの季節の風は、洗濯物をなびかせてフランソワーズの視界を遮るかのように、彼女に触れたいかのように、戯れる。

ジョーの手から、ほのかに洗濯物と潮の香り。





夢にまでみた、憧れた日常がここに・・・。
彼女が居て、自分が居て、家族と呼ぶ仲間がいる。








ときどき自分がサイボーグであることを、忘れてしまう時間がある。
それは、キミがいるから。


キミがフランソワーズだからだ、よ。







邸内では持ち歩くことがなかった携帯電話が、小刻みに揺れた。






今までに送ったメッセージの言葉。

”気持ちは変わらないから。友達以上には思えない。”
”今は、みんな仕事が忙しい。”
”ありがとう”
”嬉しいし、こんな自分にそこまで思ってくれて、ありがとう。けれど、さくらの気持ちを受け止めることはできない。”
”今でも、未来でも、気持ちは変わらないと思う。”
”メールで申し訳ないと思うけれど、会っても同じことを言うと思う。何も変わらないよ。”











####

ダイニングルームで、フランソワーズが用意した食事を食べ終わり、紅茶を飲み終えてから、食器をシンクに入れてマグに珈琲を淹れた。

立ち上る珈琲の香り。

キッチンに立ったままで取りだした、ジョーの携帯電話に届いたメッセージの送信者は、さくら。
送られてくる内容は、同じ意味のものをを言い換えた言葉が並ぶ。
ジョーはドラフト・ファイルに保存したままのメッセージを開いて、書きかけのそれを見た。



”気づいていると思うけれど、・・・・俺はフランソワーズのことが   ”






続きを打ち込もうと指を動かしたとき、再び携帯電話が震えた。
メッセージではなく、着信。


「ピュンマ?」
『ジョー、起きてる?』
「起きてる、よ。どうした?」
『トーマス・マクガーがなくなった病院って、篠原総合病院?』
「いや・・・確かめてない。何か問題でも?」
『もしも、そうなら・・・遺留品くらい盗めるだろっ!ってジェットが言うから、気になって・・・』
「確認しておく・・・・けれど、決めつけるにはまだ早い」
『今さ、僕は篠原さえこの方を追ってるんだけど、彼女ってば分刻みのスケジュールで、まいるよ・・・。ジェットは彼女の”家”と親族関係を、アルベルトは篠原グループとその傘下の系列会社を・・』
「ピュンマ」
『なに?』
「・・・あ、いや・・こちらからアルベルトに連絡する」
『あと、コズミ博士からメールが来て、色々変なこと聞いてくるんだけど?』
「何を?」
『今どういう風に日本に滞在しているのか、ビザのこととか、家族構成とか、生年月日に、・・・なんか色々。すごく変なんだよ、いつ頃イワンが起きるかってのも気にしていたもん』


ジョーは昨夜のグレートとの会話を思い出した。


ーーー見た目も年齢的にもちょうどいいからなあ、お前達3人は!ジョー、ジェット、ピュンマ、の3人で私立月見里学院に、短期留学生として、編入させるんだ!!ーーー




「・・・・帰ってきたら説明する、よ」
『・・・なんかすっごくイヤ~~~~~な気がするんだけど?』
「俺にとってはすでに・・・」
『ええ?!ジョーっ何、なんなの?!』
「・・・それじゃ、邸で」
『ええええっ!?ちょっとジョーっっ!』


ピュンマの動揺する声を聴きつつ、ジョーは電話を切った。すでに頭の中からさくらの事は消えていたために、メッセージは再びドラフト・ファイルに書きかけのまま保存された。











####

寝ているイワンの世話と、地下にあるギルモアの書斎から戻ってきた張大人が昼食の用意をし始めて、
フランソワーズが地下へと降り、30分ほどした後、ジェロニモとクラークが邸へ戻ってきた。

張大人にが用意した昼食を食べ終わるころに、仕事を早めに切り上げたミツヒロが、予定よりも早くギルモア邸に訪れた。
慌ててクラークは荷物の整理に2階に駆け上がり、ギルモア邸へ来たときと同じ、シルバーのトランクケース2つを手に、ミツヒロと共に、ギルモア邸を去る。


見送ったのは、ジェロニモ、ジョー、張大人の3人。



「たくさん、ありがとうございます!」
「アイヤ~・・・。みんな忙しくて、ココにいないの、申し訳ないアルヨ」

「いえいえ、みなさんがお忙しいことは知っています。また近いうちに遊びにきます。みなさんにヨロシク言ってください。絶対に来ますね!自分は、フランソワーズとの約束もあります。だから、近いうちに必ず来ます」
「・・・・約束?」
「はいっ。ふふっ・・・・」


クラークの意味ありげな含み笑いに、ジョーは眉を顰めた。


「気にしないでくれ。こいつバカだから・・・・」


ミツヒロは自分よりも背の高いクラークを呆れたように見上げた。


「気をつけて。」
「御飯食べに来るアルヨ!」
「何か他に訊きたいことがあれば、電話をしてください」
「・・・ありがとうございます、その時は、よろしくお願いします」
「篠原さんのお陰で○○○教会に・・・・トーマスはいます、から」
「・・・・・お亡くなりになったのは、篠原総合病院ですか?」
「いいえ、XXX赤十字病院です・・・何か?」
「いえ・・・お気を付けて」
「クラークが世話になりました・・・・」


ミツヒロが乗ってきた車に、クラークのトランクケースを積み込んで2人はギルモア邸を去って行った。









=====48へ続く




・ちょっと呟く・

クラちゃん去る(笑)
いえ、一時退却です・・・。事件を進めるために!!

9と3の今後は・・・、また私の悪い虫が・・・。

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