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Day by Day・48
(48)




クラークとミツヒロが去った後に、ジョーはフランソワーズのメンテナンスが行われている地下へ行き、そのままギルモアの助手として参加する。

いくつかのテストを終えて最終データを計るために、フランソワーズを寝台へ寝かせて意識を沈ませている間、ジョーは、”マクスウェルの悪魔”から届いた7つ目の景品である、映像をジョーはギルモアに見せることにした。


「むうう・・・。この映像をどこから手に入れたか、知らんが・・・・。これはB.Gの研究所で行われたものものじゃ。間違いない。ほれ、ここに使われている器具類は、B.Gで開発されたもので、世に出てはおらんものでな、一般で行われたものとは思えん。・・・・映像から見るに・・かなり昔ものじゃと考えられるな。儂が関わっていた”サイボーグ計画”を行っていた研究施設とは違う施設で行われたものじゃ。今現在どこかで行われたものとは思えんから、安心せい・・・・。しかし、じゃ、こんな映像が世に出回ってはたまらんわい!」
「・・・これが送られてきたアドレズも”月見里(やまなし)学院”内からだと、言うことがわかりました」
「コズミ君から連絡は来ておる、どうする?」
「これが送られて来てしまっては・・・・。僕の予想が、はずれていないことが証明されたようなものです、ね」


ギルモアとジョーは場所をメンテナンスルームから研究室へと移し、一台のコンピューター”γ”のモニターを見ながら、話していた。


「前に言っていたことじゃな?・・・・筋肉構造が間違っておるぞ!ほれ、わかるか?」
「はい。・・・”マクスウェルの悪魔”は、サイボーグを作るための・・・人材を捜している。と、思います。ゲームの内容やイベント、それらはすべてサイボーグ手術に欠かせない基礎知識・・・答えられる者だけを選りすぐって・・・。この映像が何よりの証拠です。興味がある人間なら、すぐにコンタクトを取るでしょう・・・。この筋肉だと、すぐに熱を持ってしまいますね?接続部分に負荷がかかる」


ギルモアは映像を何度も再生しながら、ジョーに気づいた点を上げさせて、それについて細かく説明しながら、話しを進めていく。



「その通りじゃ、人工筋肉自体をこれは改良し直さなければ使いもんにならん品物じゃ。・・・コンタクトを取ったのか?・・ああ!ここじゃ、これはいかんっ!!こんな乱暴な神経接続があるかっ!!こんな輩と同じB.G研究所に勤めていたとはっ」
「はい。すぐに・・・・。7つ目を手に入れた時点では次のゲームのURLは送られていませんでした。次があるのかどうかは疑問ですが・・・。博士、ここの人工血管ですが・・・おかしくないですか?」
「7つ目の景品は、009、お前しか手に入れておらんのじゃな?むう。あり得ん。これじゃと血が逆流してしまうぞ?!」
「・・・それよりも、人工筋肉の熱で血管が持たないのでは?・・・002と008が5つ目を手に入れましたが、それ以降は・・・多分、そこから先は、”専門知識”がなければ・・・・。ゲームは進められても”景品”は手に入れることはできないと思います。実際に004は僕たちよりも進んでいますから。博士、気になるのは、この膝の部分なんですが・・。」
「004がトップか?・・・ああ、見られんぞ、これは・・・ひどい、酷すぎるっ!!膝を曲げると言う機能の根本が解っておらんようじゃ!・・・まったく、サイボーグと云えど、人間として持つ機能を無視してはいかんのじゃ」
「004は景品を無視して純粋にゲームだけを進めていますから、ね。・・・博士」
「なんじゃ?」


食い入るようにモニターに映される映像から目を離さずに答える。



「・・・・イワンが起きるのはあと1週間ほどですよね?」
「うむ・・・少し遅れるかもしれんが、その辺りじゃろう」
「・・・・・・コズミ博士にできるだけのことをお願いしておいてもらえますか?僕の編入手続きは、書類上の問題はそれほどないと思いますが・・・」
「002と008じゃな?」


ギルモアはモニターから視線を外して、009を見た。



「007の報告にも寄りますが・・・。イワンが起きて準備ができ次第・・・・行きます」
「動くか・・・。うむ・・・・・・。寄宿制男子校か、002が悲鳴を上げそうじゃな」
「できれば、004、005、006のうちの1人・・・学校内に出入りが出来るようにして欲しいのですが」
「うむ・・。寄宿制なら食堂か何かあるじゃろうが、004なら、ドイツ語教師、005は・・・歴史か何かかのう・・・・・コズミ君に相談してみよう」
「お願いします」
「ジョー、この足は何日持つと思う?」
「・・・・術後、12時間が限度でしょうね、まず神経系の拒否反応による痛み、人工筋肉の発熱による組織破壊・・・・すぐに取り外すでしょう。膝の構造上、歩けても走れないことがわかるはずです」
「ほっほ。こいつらより、お前の方が優秀じゃわい!!」


ギルモアは嬉しそうに、ジョーの背をばんっと叩いた。


「フランソワーズの様子を診てきてくれるか?そろそろええじゃろう、起こしてやらなくてはな」
「・・・はい」
















####

その日の夜、ギルモア邸のリビングルームには007と夜の時間のイワン、地下に籠もったままのギルモア以外が揃った。


「・・007から連絡は?」
「あった。コズミ博士の家寄って、また学校へ戻る。こっちへは明日の夜になる。」
「・・・そう、わかった」
「こっちはよ、そんなたいした収穫はなかったぜ?」
「僕の方もだよ、忙しいって言うことだけは解ったよ・・・毎日あんなスケジュールで体を壊さないか、そっちの方が心配になるよ!!」
「でかいグルーブだけあって、裏は色々見苦しいな。そこにB.Gがつけ込んでいた様子はないが・・それは今の話しであって、過去、どうだったかは、もう少し時間がいる。グループの本社が関わってなくてもその傘下のどれかが関わっていた可能性もないから、な」
「おっと、忘れてたぜ。ピュンマお前のコンピューター、テレビに繋いでくれ、写真があんだよ」
「はいはい」


ピュンマが自室から持ってきていたコンピューターをTVに繋ぐと、画面がピュンマのデスクトップを映し出した。
ジェットが持っていたUSBから、ファイルを開く。


「あっっっ!その青のファイルじゃねえ!!それは開くなっ!!」
「も~っ!!ちゃんとファイル別に名前をつけてよっ!!どれだよっ」
「これは、後で見せてやるぜっ。後でな!」
「・・・・後でね、はいはい。で、どれ?」
「その緑色のファイルだよ」


002と008が言い合っている間、004は003の様子を伺うように視線を投げかけたので、003はその視線に、気づいて不思議そうに004を見る。


「なあに、004?」
「訊いたんだが・・・もういいのか?」
「ええ。今後もチェックは続けるけれど、それは改良された部分のデータを取るためなの。もうほとんど、以前と変わらない状態よ」
「そうか・・・」


004は003の言葉を確認するように、009へと視線を移動させると、009は003の言葉を固定するように頷いた。


「それなら、話しは早いな。クラークから訊いたホームステイ制度ってのを調べてたんだが」
「こっちが篠原当麻ってヤツだ、たまたま自宅に居たから、撮ってきた。さえこや秀顕はどこでも画像が拾えるけどよ、こいつは載ってなかったからよ!」


004の言葉を押しのけるようにして002が撮った写真画像がプレビューで開かれて、TV画面に映る。


「ホームステイ制度って言うのは、ある一定条件をクリアした家庭が、留学生を受け入れるんだが・・・篠原家もそれに登録されていた。受け入れていたのは医療関係者が主にだがな・・・009、007が学校なら、003は篠原の家に潜入する、前にオレは提案したんだが、どうだ?留学生として、ホームステイさせる・・・内側から探ってもらうのは?」


ジョーの目の前に映し出された、篠原当麻。
祖父である、トーマス・マクガーの血が濃いのか、日本人離れした顔立ちに、ブラウニー・カラーの髪。優しげな目元。


「あ。この制服って・・・月見里(やまなし)学院のだ・・」
「へえっ!以外とかっけーじゃん!つうか、やっぱ息子だからか?」
「002、ちょっと黙る。」
「そうネ!004、もう1回言うアルヨ?・・・・003を、ホームステイさせるアルか?」
「篠原の家は、ホームステイ制度に登録していて、そう数はこなしてないが、留学生を受け入れている。クラークから訊いてわかった。調べてみたんだが、今現在は誰も受け入れてないから、コズミ博士の口利きか、もしくは、クラークに協力してもらって、フランソワーズを留学生として潜入させてトーマス・マクガーが渡したものと、この2人に”マクスウェルの悪魔”の可能性が’あるかどうか探ればいいと思ってな。普通に通って”外”からだと今日の時点で難しいことがわかった。008、家のセキュリティとか、調べたんだろ?」
「すっっっっっごいよ、普通の家なのに、まるで領事館や大使館なみ!最新式のものが揃ってたよ。うん、あれはちょっと僕、感動したな!」
「・・・・っと、言うことだ。009」

「反対だ」
「行くわ」


009と003の声が重なり、2人の視線も重なり合った。


「・・・反対だ、よ」
「なぜ?004の言う通り、私が留学生として家に入って生活しながら”眼”と”耳”を使えば、誰にも怪しまれないわ」
「・・・・キミはまだ、完全にメンテナンスが終わったわけではないんだ」
「以前と同じ状態だと言っただろ?009」
「改良部分のテストは引き続き行っていく。まだ当分は、003が動くのは認めない」
「テストも兼ねりゃあ、いいじゃんかよ?この間のレストランの時みたいによ!」
「・・・・こっちに帰ってくるなら、いいけれど・・ホームステイ先で何かあったとき、困るのは003。キミだよ?相手は”病院”関係者なんだ。もしもの時にそちらへ連れて行かれたら、どうなる?」


009の意見は正論であった。
サイボーグである以上、絶対に”病院”へ運ばれるような自体は避けなければならない。


「”もしも”を考えていたら、何もできないのは確かだよ?それを言ったら、ここにいる全員に同じことが言えるんじゃないかな?」
「相手の”家”へ行くアルヨ。009が慎重になるのはわかるアルネ」
「007は学校で手一杯だ。」
「・・・学校の方へは、僕、ピュンマ、そしてジェットが行く。これは007の案で、すでにコズミ博士が動いてくれている。イワンが起き次第、学院に短期留学生として編入する」
だああああああああああああああああああああっっ!!なんだってっっ!!おいっ!!」
えええええええええええええええええええええっっ!!本当に?!学校に行けるのっ僕!!」


2人の雄叫びに、全員が耳を塞ぐ。


「うるさいアルヨ!」
「よかったな。ピュンマ。」
「ふざけんなよっ!!009っっ男子校だぜっ!男子校っ!!しかもっ寄宿制!!!!男だらけなトコなんてゴメンだっ!!!」
「良い機会だ、そのトリ頭の再教育にはもってこいだな。賛成だ。それで・・・007を篠原の方へ行かせる予定か?・・・学校からこっちへの連絡係にさせる予定じゃないのか?007を」
「・・・・・連絡係を兼ねてもらう」
「それは、ちょと007が大変アルヨ?」
「同感だ。」
「悪いが、009・・・。イワンが起きるのを待っている余裕はないだろう?7つ目の”景品”の内容では・・・・、学校もそうだが、いますぐに動けるのなら篠原の家も調べ始めるのが、普通じゃないか?」
「安全だと思う。003は留学生、無理しないならきっと大丈夫だ。」


落ち着いた、しっかりとした口調で、009を諭すように言う。


「005・・・」
「・・・・・・反対する理由も理解できるアルヨ。でも、ここは003が行くべきなような、気がするアルヨ?心配なのはワタシたちも一緒ネ。だから、万全のサポートで送り出してあげるヨロシ」
「・・・・006」


それに続いて、006も009の不安を取り除くように、005の言葉に自分の意見を添えた。


「行くわ、ずっとメンテナンスで、何もできなったんだもの・・・・」
「・・・・・004、ホームステイに関する資料は?」
「持って帰ってきている。申し込みもすぐにできるが、少しばかり008の手が必要だ」
「なんでもするよ!」
「海外留学サポートの、篠原が登録している会社のデータの改竄、フランソワーズの経歴などをでっち上げて欲しい」
「へへへ。それくらいお安いご用さ!イワンがいなくても、ちゃああんと、フランソワーズをホームステイさせてみせるよ!!」


008は、自信満々に004の言葉を引き受ける。その様子を見ながら009は考えを変えずに意見する。


「・・・・それなら、003でなくても僕でも、いい」
「009。留学生に見え辛い。」
「わざわざ、ホームステイしなくても出来る」
「009、あのセキュリティを回避しながらは、そうとう手間がかかるよ?盗まれたとか、そういうのでで騒がれたりしたら面倒になるしね。もしもその所為で、研究資料があったとき、世に出てしまったら元も子もないよ。セキュリティシステムについては・・・明日には、それらがどの位の物か、まとめて報告できると思うけど・・・」


008が、自分の目で見てきた篠原邸のそれらを思い出す。


「・・・それなら、002か0008でもいいだろう?」
「002は向いてないアルヨ!余計な問題引き起こしそうで、却下したいネ」
「んああ?!・・・・・・006、オレだってやるときゃやるぜ?!・・でもよっ野郎の家なんてゴメンだぜ!」
「002、目立つ。」
「008がいなくなったら、002やオレのサポートが居なくなって困るな、ゲームの方を放る気はないんだろ?009」
「・・・003」
「行きます」


まっすぐに009を見つめ返す、空色の瞳は深さを増して、瑠璃色に輝き、その光は戦場で見る003の色。
ジョーは深く息を履きながら、彼女の瞳の色が絶対に自分の意志を貫き通す強さを秘めていることを知りつつも、最後の砦としてギルモアの名をあげた。


「・・・ギルモア博士の意見を聞いてから、だ。003、いいね?」


TV画面に映し出された002が撮った、篠原当麻。
ジョーのこころにざわり。と、何かが蠢いた。
















####

各自の報告を済ませ、明日も引き続き調査を進めることで、ミーティングを終了させた。
フランソワーズはその足で地下へと向かったので、ジョーは彼女を追いかけて行き、ギルモアが居るであろう研究室前でフランソワーズを呼び止めた。


「ジョー、私の気持ちは同じよ。行くわ。私は003よ。そのための”眼”と”耳”だもの」
「・・・・・・どうして?」
「・・・009。ミッションだから、よ」
「フランソワーズ・・」
「違うわ、003よ」
「・・・・確かに、キミが留学生として篠原の家に入り、トーマス・マクガーの渡したとされる物を見つけ出し、それが何であるかを探ることも、1つの手だけれど・・・。けれど、わざわざそんな遠回りをしなくても、僕が彼らの家に忍び込んででも、出来ること、だ」
「私じゃ、無理だと思っているのね?」
「・・・そういう意味で言っているんじゃないっ!ただっ」
「そういう意味にしか聞こえないわっ」
「・・・フランソワーズ?」
「違うっ!!003よっ」


語気を荒げ挑むように、フランソワーズはジョーを見つめた。


「・・・・・・・・変だ、よ」
「変じゃないわ・・。変なのは、009。あなたの方」


確かに、今までの009であれば、これほどまでに003が篠原の家へ行くことに、拘っていない。
006が言うように、003が潜入するための段取りを組み、今日中にシナリオを調え終えるはずである。

けれども今は、フランソワーズの言葉、ひとつ、ひとつに苛立ちを感じ、ジョーは必死で自分の感情を押し殺して、009でいようと、009として判断しようと言い聞かせる。が、上手くいかない。ジョーから出てくる言葉は、003としてではなく、フランソワーズに対しての言葉。


「・・・・そうかもしれない


呟いた言葉は、小さく掠れたものだった。


「009?」
「・・・・・・そう、なんだと思う」
「・・・昨日、ジョーは言ってくれたでしょう?私もあなたにとって、大切な仲間だって・・・それなら、仲間なら信じて欲しいわ、心配してくれるのは嬉しい。ありがとう・・でも、私も同じ00ナンバーなのよ?」
「・・・・・・信じている、よ。でも」



ーーーでも・・・・









今日のキミを思い出す。


色とりどりの洗濯物が邸をのぞきに来る潮風に揺れて、キミが手に取る洗濯物に戯れる風。


海の匂い。
空の広さ。

囁くように聞こえる、どこか遠くで車が走り抜ける音。
ギルモア邸から徒歩20分ほど坂を下ったところにある、停留所に泊まったバスのアナウンスが、風に乗ってときおり聞こえた。

耳に心地よい波の音。
砂浜に降りる光。
海カモメが鳴き、空に描くライン。


白い雲の形がどこか夏を感じさせて、



世界は





明るく光に包まれていた。






キミの髪は天使の輪を作り、風に靡いてはきらきらと輝いて、伸ばされた手にピンク色の洗濯ばさみ。
背伸びした後ろ姿は、華奢で折れそうなほどに細いライン。
両手に抱えた、太陽の香りに胸が好く。



キミの生きる世界が、あった。
キミが生きていた世界を、見た。




”ここ”であっては、いけないんだ。





帰ってこないで。
戻ってこないで。



そのまま、そこにいて・・・・・・。










そのまま、こっちへは来ないで・・・・。













「・・・ジョー?」
「・・・・・・なんのために、俺は戦ってきたんだろう?」
「ジョー?」
「・・・・・何も変わっていない、ね?」
「・・・・・」
「・・・B.Gは、消えたはずで。この手で、この手で・・・確かに・・・・・なのに、また・・・」
「ジョー・・・。今回は違うわ」
「同じだ、よ・・・。何も変わってはいない、結局、俺は・・・・」



ーーーキミを戦いの世界にしか、連れて行けない。




目の前に立つ、フランソワーズを見つめる。
心配そうに、レースのようにに繊細に縁取られた睫が揺れて、地下の白い無機質な光に空色の瞳が鮮やかに自分を映して、形良く愛らしいくちびるは、薄く開いて、言葉を選ぶ。

ジョーをのぞき込むように、少しだけ傾けた仕草が、可憐で・・・。ジョーは自分の無力さに打ちのめされる。









こんなに、大切なのに。



こんなに、想っているのに。






「・・・どうしたの?」
「・・・・・・・・ごめん、ね
「・・・・どうして、ジョーが謝るの?」










こんなに、キミのことが好きなのに。









「・・・・キミを003から、解放させてあげられない」
「・・・・・・・ジョー、どうしてそんなことを言うの?私は003。”解放”なんてして欲しくないわ。私は、00ナンバーの、一員よ?今までも、これからも、ずっと・・・変わらないわ」
「・・・違う、そういう、ことじゃくて・・・・・」
「意味がわからないわ・・・ジョー。私が003でなくなったら、サイボーグである私の存在理由がなくなってしまうのよ・・・ひどいわ、そんなの。もう・・・私は人にも戻れない。完全な機械でもない・・・。003でなくなったら・・・。私はいったい誰なの?」


フランソワーズは一歩。また一歩と足をすすめてジョーとの間、30cmほどの距離に立ち、フランソワーズはジョーの、琥珀色の瞳に映る自分をまっすぐに見つめた。


「・・・・・・キミは、フランソワーズだ、よ」









キミのために、キミに触れない。



キミのための誓いを、自分の弱さを言い訳に破ってしまった。












今日だけ。

今だけ。と・・・・・。



















####

伸ばされた、両腕が背中にまわされて、彼へと引き寄せられた。
包まれた香りは、珈琲と少しばかりの煙草の香り。

一瞬のことで、何が起きたのか解らなかった。





耳に届いた言葉は、彼の鼓動に紛れた”ごめん”と言う言葉。





頬にあてられた布越しの広い胸。






彼の腕の中にいる。


肩に、感じる彼の重み

腕に、感じる彼の力

胸に、感じる彼の温もり

背に、感じる彼の腕の優しさ

髪に、感じる彼の吐息





戦闘時、何度も彼の腕の中に護られて、庇われて戦渦をくぐり抜けた・・・ときの、それとは違う。
今までの、どの”とき”にも当てはまらない、感覚。





1度だけ、


・・・・・・・・・そう。

1度だけ、・・・・・・あれは、彼と一緒にでかけたバレエ公演の帰り。


私の過去を彼に話したとき。




優しく、受け止めてくれた腕。
抱きしめてくれた、温もり。
聞こえてきた、彼の心音に・・・・私はジョーが好きと言う気持ちを隠した。







「・・・・・・ごめん」
「・・・・」


フランソワーズは、ジョーの腕の中で首を左右に振った。


「・・・・ごめん、ね」
「・・・・・・・・・・・・謝らないで」
「・・・・・・・・・ごめん」
「・・・・・・・ジョー・・」
「ごめん・・・・」
「謝ること、ないの・・・・・」
「・・・・フランソワーズ、ごめん・・・・」
「・・・・・・・・・・それ以上、謝ったら・・あなたが”漢字の書き取り”をすることになるわ」


フランソワーズの言葉に、ジョーは腕の中にいるフランソワーズをのぞき込んだ。
恥ずかしげに、頬を薄く染めて花が咲きこぼれるように微笑みながら、フランソワーズは言う。


「・・ジョーが言ったのよ?”ごめん”を言ったら、漢字の書き取りって・・・ね?」






ジョーは不安なのだ。と、フランソワーズは少しばかり安堵する。
B.Gとの戦いの後、小さなミッションは重ねていたものの、日本に住居を構えてから、今回のミッションは、予想を超えて大きなものになりつつある。

彼が009であるための、責任。
それぞれが”人”として社会に入っていこうと、考え始めたときに起きた、今回のミッション。





ジョーは優しい。
だから、こころを痛めている。

みんなを再び、戦いに連れて行くことを。
・・・・みんながそれぞれに決めた道へ行く時間を奪うことを、悲しんでいるのかもしれない。





頼ってくれていると、自惚れていい?
今だけでも、あなたの不安を私が癒していると、勘違いしてもいい?






私は003で、あなたが009であるから・・・・。
今がある。


どうか、このまま。






このまま、009のそばにいさせて下さい。
このまま、009のそばにおいて下さい。



私が003でいる限り。








彼のそばに。
誰でもない、サイボーグである仲間として・・・・・・。









今だけでも。
















神様、お願いします。













####

ピュンマの行動は早く、アルベルトの手際も良く、ギルモアの許可も条件付きで下りて、ピュンマが進入し、改竄したデータは何も怪しまれることなくスムーズに進んだ後、留学生・海外サポートセンターからの連絡が新しく用意したフランソワーズ宛に届いた。

フランソワーズのホームステイ先が篠原の家に決まり、ジョーとグレートが話し合って決めたシナリオをフランソワーズは何度も復唱して暗記する。


マリー・F・アルヌール(17歳)
飛び級で進学し、日本のT大学(コズミ研究室)へ、インターンとして1年間配属されるため、語学、日本の生活環境になれるために滞在する予定であったホームステイ先(ギルモア邸)が、諸事情に急遽スケジュールの変更を余儀なくされたために、緊急で彼女の新しいホームステイ先を求めたところ、篠原邸へフランソワーズ・アルヌールの滞在を求め、”許可”したとの通知を受け取った。と、言うことにした。

手続きのミス。として、篠原邸へは留学生・サポートセンターとのやり取りが続き、ピュンマの機転を利かせた留学生サポートセンターの”手を加えた”メール内容に、篠原邸から受諾のメールが送られてきたのは、2日前。

事前の調査によって手に入れた、篠原邸の図面、セキュリティシステム、邸内で働く人間、そこに出入りする人間関係。それらを何度も打ち合わせして覚える。

今回の003のミッションは、トーマス・マクガーが篠原さえこ・当麻に渡したとされる”トーマス・マクガーの残した物”を見つけ、それが彼の研究資料か、もしくは、サイボーグの設計図かを調べ、手に入れる、もしくはそれらをコピーして持ち帰ること。
そして、彼らが”マクスウェルの悪魔”であるかどうかを調べることである。






DURASのトランクケースは、エナメルの光沢に、キルティング加工がされたベージュカラーの物を、娘の初めての旅行(?)に浮き足立つ、ギルモアがネットで購入し、その他にも足りない物があってはいけないと、篠原邸へ行く前の003の能力テストに、調節などをジョーに任せきりにして、インターネット・ショッピングにあれやこれやと大騒ぎする。

他のメンバーも、いざフランソワーズが篠原邸へ潜入することが決まると、ミーティングの時に言っていた言葉を忘れたかのように、引き留めようとする言葉が、ちらりほらり、ギルモア邸のダイニング・テーブルの上を行き交い、フランソワーズを呆れさせた。

そんな中、ジェットだけは何も言わず、大人しくフランソワーズが出発する日を待ち、アルベルトは、フランソワーズにいくつか言葉をかけて、彼女の緊張を解きほぐそうと、気をかけていた。





「やけに、大人しいじゃないか、ジェット・・・。お前が1番騒いでいそうなのに」
「・・・・・ミッションでも、ここから離れるのはフランソワーズにとって、良いことなんだよ」
「ジョーは、どうしてる?」
「腹、括ったんだろ?・・・・いつも通り009してるぜ・・ったく、ちったあ、狼狽えろっつうの!」


フランソワーズが篠原邸へ赴く前夜、煙草を吸うために庭へ出たアルベルトに付き合って、ジェットは、缶ビール片手に、木造のガーデン・チェアに腰を下ろした。


「落ち着いてる、か・・・・・。そのわりに、ピュンマと博士と・・3人で何か作っていたぞ?」
「ああ?」
「・・・ジョーは”ウサギ”になるみたいだ」
「はあ?」
「ウサギ」
「なんだよっそれっ?・・・クラークの趣味じゃねえの?!・・・バニーガールじゃなくて、バニー・ジョー?!日本の萌えってヤツか?!」
「・・・萌えってお前・・・・・。ミッションでも、短期間、お前が高校へ行くのは大賛成だ」
「オレは絶対に行かねえぞ!」
「・・・定期連絡は携帯電話からのメールのみ。携帯電話の傍受を防ぐためにギルモア邸、それぞれメンバーへは電話はしない。パソコンも篠原邸からのケーブルを使うから、そこからの連絡は万が一のことを考えて禁止。・・・・連絡係は007。長くて2週間、短くて1週間の間、ジョーはどうるするつもりだろうな?」
「知らねえよっ!携帯電話があるじゃねえかよっ」
「バカ。フランソワーズからメールが送信されたら、俺たち全員が一斉に受信するように改良したろ?」
「ふんっ」
「・・・・・2人はどうするんだろうな?」
「ミッションじゃんっ!仕方ねえだろ?・・・・・それによ、アイツがそんなことに気をまわすような、器用なヤツかよっ」


人差し指と、中指に軽く挟んだ、細い白に灯る紅。
その灰を、ガーデン・チェアと対になった円形のテーブルに置かれた、ジェットが飲み終えた1本目の缶ビールの中に落として、再び口に銜え、吸いこんだ煙を肺に流し込み、喉で味わいながら、煙を、羅紗色の布に輝く星月夜の空へと吹きかけた。


「器用になる、何かがあったのかもな・・・」














####

待ち合わせは、篠原邸最寄りの駅。
指定の時間よりも早めにジョーが運転する車に乗り込み、駅へと訪れた。
車を降りる間際に、グレートが、腕時計に変身して、フランソワーズの左手に。それをジョーが確認してから車から降りて、トランクケースを車からおろした。


「・・・・グレート、夜には戻ってくるように」


ジョーはフランソワーズの左手の”腕時計に”話しかけると、時刻を指す針が、手に代わり親指を立てて”了解”のサインを出した。


「俺は、ここで待機しているから・・・、キミが篠原邸からの迎えが来るまで、いいね?」
「ええ・・・わかったわ」
「・・・・・気を付けて。ギルモア博士がおっしゃった”条件”を忘れないように、ね」



駅前の、人通り激しい道に寄せた車。
行き交う人々の目に、自分たちはどういう風に見えているのだろう?と、思い浮かんだ、小さな疑問は街の雑踏に消えていく。


「行ってきます」
「・・・・うん。気を付けて・・・フランソワーズ」


フランソワーズのいつもと変わらない微笑みに、その表情からは不安は見えない。
ジョーは、ミッションであるとわかっていても、003と呼ばずに、”フランソワーズ”として送り出した。


フランソワーズはトランクケースを押して、待ち合わせの駅前の”ドーナツショップ前”に立つ。
ジョーは車に乗り込んで、バックミラーをフランソワーズが見えるように、動かした。








”ドーナツショップ”前に立って、1分もしない内に、2人の男がフランソワーズに話しかけてきた。
フランソワーズは、アルベルトに言われたように、すべてフランス語で対応する。と、男達は去っていく。バックミラー越しに見る、それにジョーは苦笑するしかなかった。

篠原邸からの”迎え”が来るまで、繰り返される誘い。
その数の多さに、グレートからジョーへ脳波通信が送られてきた。



<ジョー・・・・今後、絶っっっっっっ対にっっっ吾輩は003を1人で街に行かせないぞ!!>
<・・・そうだね>
<いいか!絶対だっ!!ジョーっ、邸に帰ったらすぐにこの件についてのミーティングを開くぞ!!>
<007、キミには邸に戻ってから報告をしてもらった後、すぐに学院の方へ向かってもらわないといけないから、今度、だね>
<・・・009!!そんな悠長なっ>
<・・・・・・心配ないよ、彼女は003だから>
















=====49へと続く




・ちょっと呟く・

らぶらぶ や~~~~~~んっ(丿>ロ<)丿 ┤∵:.  なんでやね~んっ!
君たち片思いですから!


引き離してあげるね(*´ー`) フッ



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