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Day by Day・50
(50)



篠原邸、3階に設けられた部屋は、秀顕の書斎、扉続きの資料室。彼のプライベートルーム、そして、アップライト・ピアノが置かれた、サン・ルームと小さなキッチン。
一見、2世帯住宅のように感じられる作りだった。

009は003に案内されながら、用心深く周囲を伺う。
現在、邸内にはホームステイ中のマリー/フランソワーズこと003,以外は住み込みのハウスキーパーのみ。


「ここが、書斎。今はさえこさんが使用していると聞いているわ。・・・ひと通り視てみたけれど、何もそれらしいものは見つけることはできなかったの。彼女は、ここへ寝に帰って来ているみたいだし・・・」


003はさえこが本当に邸に帰宅しているのかを調べるために、寝ずに彼女の帰宅を待っていた日があった。
深夜、静まりかえった住宅地に、”耳”で聴かなくてもわかる車のエンジン音。
ぴたり。と篠原邸の前で停まり、数分後、再び走り去っていった。


003はそれらを”眼”を使ってみていた。
正門前に取り付けられていた、セキュリティを解くために、素早く暗証コードを打つ手の動きから、彼女がここの住人であることが解る。
午前13時50分ごろに帰宅したさえこは、3時間後、再び邸を出て行く。
近づいてきたエンジン音が、それを003に教えてくれた。


邸内でのさえこの動きを”眼”で追っていた003だが、彼女は3階へは足を向けずに、そのまま2階の彼女の寝室へと入っていき、部屋突きのバスルームを使った後、服を着替え、外出の準備をし、眠ることもなく、再び邸を去っていった。

翌日も、同じ時間帯に篠原邸へと帰ってきたさえこは、3,4時間ほどの仮眠を取り、陽が昇りきらない、肌寒さ残る薄闇の中、出かけていった。


当麻が言う通りに、彼女は当麻が邸にいることを知っているはずであっても、声をかけることも、様子を見ることもなく、去っていく。
それは、朝の早い当麻を気遣ってのためだろう。と、マリー/フランソワーズは当麻に言ったが、彼は寂しげに微笑んで首を力無く左右に振り言った。


「ぼくの物心ついたころから、さえこさんは、ああいう人だったから」












####

003の言う通り、表のセキュリティ体制に較べて邸内は、拍子抜けしてしまうほどに、無防備な状態であた。003に案内された、秀顕の書斎の机の上に置きっぱなしされている資料や、棚に納められていたファイルを手に取る009から溜息が漏れる。


「・・・こんな大事なものを放っておくなんて、な」


ジョーが手に取ったファイルは、篠原グループが関わる来年度の篠原グループの新規プロジェクト・スケジュールとその予算案だった。


「009」


短く、003から呼ばれて手に持っていたファイルを元に戻した。


「・・・この奥?」
「ええ、ここが資料室らしいの・・だけど」
「・・・・・・キミは”視た”だけで、触れていないね?」
「ここだけは表のセキュリティと同じで、ドアを開けた回数、時間、すべてが記録されてしまうから・・・。暗証番号は、毎月変わるみたいよ。メイ子さんもこの家ではここの番号は教えられていないわ」
「カメラは?」
「壁に、カラープレートカメラが4台(DSP)広角タイプ。天井に、センサー付き暗視カプセルカメラ・集音・パッシブセンサー機能・広角レンズ型が2台。・・・あと、各窓にはガラスセンサー」
「・・・一般に市販されているタイプだね。問題ないよ。ドアの方は008からの連絡待ちになる、な。このタイプは篠原本社のものと同じだから、ね」
「どうするの?」
「・・・・・勘違いしてもらうんだ、よ」


009はドア前にいる003のそばに立ち、脳波通信で008を呼びだした。


<008>
<どう?>
<003から報告されていた通りだ。そっちの準備は?>
<今、篠原邸のセキュリティ・システム回路に進入中・・・・。うん・・・っと、そこは、表のセキュリティとは別回路だね・・・>
<出来る?>
<うん、大丈夫。5分以内には解除できるよ・・・ついでに室内のカメラもいじっとくから、ゆっくりどうぞ!>
<わかった>


「009、資料室の中にある金庫に”トーマス”のものが入っているわ。アタッシュケースの中にマイクロフィルム、シート状、フィッシュタイプの244コマに納められてるわ、シートは・・4,5枚くらいかしら?重ねられているから、よく解らないわ」


003は”眼”を使って室内を透視、拡大していき、金庫内にあるアタッシュケース内のものを確認した。


「シート状か・・・リールタイプじゃないんだ?」
「ええ。コマは35mmではなく16mm」
「面倒だな・・・スキャンして電子化された物とか、他には?」
「残念だけど、それだけよ」



”眼”のスイッチを切り、003は009を見る。


「・・・・・持ち出しになる、ね。003、邸にマイクロフィルムリーダーに、プリンターあったかな?」
「ドルフィン号にはあったと思うけど・・・」
「・・・邸に引っ越すことになって、マイクロフィルムで保存していたデータは全て電子化したから・・・捨てたかな?」
「009が?」
「いや、僕は捨ててない」
「私もよ」
「あのときのゴミ当番って誰だったか、覚えてる?」
「・・・あの時期は確か、色々と処分するものが沢山あったから、ほとんどジェロニモにお願いしていた気がするの」
「・・・複製するしかない、な」


軽く溜息を吐いて009はロックがかかった扉を見つめた。


<008、マイクロフィルムリーダー、まだ邸にあったかしら?>
<あるんじゃない?・・・邸の裏にある倉庫にでもさ。捨ててないなら>
<008は捨ててない?>
<僕は捨ててないよ!・・・・ああいうのって捨てるのもったいなく感じるから・・。誰かに聴いてみるよ、あ・・・・>
<008?>
<今、”ドア”のセキュリティ回線と繋がった・・・・・いつでもドアのロックを解除できるし、防犯・監視カメラも切れるよ>


009は、ポケットにつっこんでいたナイロン製の手袋をはめて、資料室のドアノブを握った。



「003、とにかく中身だけを邸に持ち帰る、よ。夕方にキミの本来のステイ先の”ホスト”のフリをした007がここへキミを訊ねてくる。それに僕と008が同行して、同じようにこれを返しに来るから、いいね?」


003は009の言葉に頷くと同時に、008から通信を受け取った。


<いつでもいいよ!009>



カチッと、金属音が小気味よく書斎に響いた。












####

当麻は家から5分ほど歩いた先のバス邸からJRの駅に向かう。
歩いていける最寄りの駅は私鉄で、そちらを使ってJRへと乗り換えることもできるが、なんとなくバスの方が楽しく思えて、あえてバスを使っていた。

いつもと同じ時間に、同じようにバス停についたら、乗る予定であったバスがちょうど、1ブロック先の点滅信号で停まっていた。


「・・・あれ?・・・・・・乗り遅れた?」


携帯電話を取りだして、時間を確認する。
時刻表に記載されている時間よりも10分早い。

次のバスまで15分ほどまたなければならくなった当麻は歩いて、私鉄の駅へと向かおうと歩き出した。
ふと、携帯の液晶画面に映し出された日付が目に留まる。


「・・・・・・あと、2日で・・・・・・・・・・・・」


駅に行くために、横断歩道を渡らなければならなかたが、当麻は渉らずに自宅へと戻り始めた。

明日は土曜日。
授業も午前中しかない。











ーーーだから。










もう1度、携帯電話を取りだして、日にちを確認した。
楽しい時間は通常の10倍は早く時間が経ってしまうことを、実感する。



ーーー驚くだろうな・・・マリー。



何処へ行こう?




何をしよう?


















ぼくが彼女に持っている気持ちを、いつ言おう・・・・。















道行く人の波とは反対方向へと歩きながら、今日どうするかを真剣に考えてながら、家に戻ったときのマリーのリアクションを想像しては、笑いがこみ上げてきて、頬が上がる。



ーーーなんて、言おうか・・・・。学校へ行かなかったこと、マリーは怒るかな?それとも呆れる?




喜んでくれる?








10分ほど前に歩いた道を引き返す。
梅雨入り前を感じさせる、抜けきる空。
白い雲は風に凪がれることなく、同じに位置に居続けているように見えて、当麻が角を迂ってときに、少しだけその角度を変えた。

正門前に立ち、暗証コードを打ち込んでいく。
毎日8桁あるコードは毎日、下2桁だけある法則にしたがって変わっていく。





008は繋げていたセキュリティ・システム回線に突然飛び込んできた、ロック解除の動きに慌てる。
ロックが解除された。と、証明するように、正門のドアが、がちゃん。と鈍い音を立てた。











<009、003っ!篠原当麻が帰ってきたよっ>
「っっ009!当麻さんが帰ってきたわ・・・」


008と003の報告はほぼ同時。
003の”耳に”届いた、正門ロック解除の音に素早く反応して”眼”を使い確認した。
マイクロフィルムを手に、3階から2階へ降りた廊下で003と009は立ち止まった。


「彼は?」
「玄関に」
「これを持ったままだと、加速はできない」
<009、003、大丈夫?!>
「008、大丈夫よ・・・。009、私の部屋に行きましょう。多分、忘れ物か何かを取りに帰ってきたとだけだと・・・・」


当麻が玄関に入り、1階のリビングルームへと入っていったのを003が”眼”を使い確認する。


「あれ?・・・マリーは・・・部屋?」


リビングルームに入った当麻の呟くような独り言が”耳”聞こえ、次ぎに彼の足音が2階へと続く階段に向かって進んでいく。


「・・・009、彼は私を捜しているみたい。私の部屋は2階の一番奥、左手のドアよ」
「・・・・窓から、出る」















####

「当麻さん?」


マリー/フランソワーズの声がドアを隔てた廊下から聞こえた。
ジョーがフランソワーズの部屋に入り、ドアを閉めたとき、彼女の部屋に近づいて来る篠原当麻の”足音”を009であるジョーも確認できた。


フランソワーズの部屋の窓から屋外へ。
009として、そのように判断したが、ジョーの足はドアから動かなかった。



石のように固まってしまった足。
初めて聞く篠原当麻の、声。

マリー/フランソワーズと篠原当麻の、会話。






ドア1枚隔てたの向こう側の、自分が知らない・・・・フランソワーズ。


「マリー、あのさ」
「当麻さん、忘れ物?・・・早くしないと遅刻してしまうわ!」


フランソワーズの弾んだ、明るい声にジョーの胸が焼け付く。


「・・・いや、遅刻って言うか、さ」
「どうなさったの?」
「・・・・・・連絡、来たかな?」
「え?」
「マリーがステイする予定の・・・」
「あ、ああ・・・。まだなの、今日中にはわかると思うわ。夕方に心配して下さって、ステイ先の方がこちらに来て下さるの。その時にわかると思うわ」
「夕方に・・・?」
「そうよ、何か・・・」
「いや、うん。わかった。それなら夕方までに戻ってきたら大丈夫だね?」
「当麻さんは何も心配なさらないで・・・学校へ早く行かないと・・・・・」


心臓が緊張と不安に、狂ったように暴れ始める。
息苦しさを感じながら、肺は空気を求めることが出来ない。
手の平にかく汗が、気持ち悪い。

ドアに背を貼り付けて、ジョーの意識が耳に届く2人の会話に飲み込まれていく。



「・・・・・学校はもう、いいんだっ」
「いいって・・・。当麻さん、学校が休校にでもなったんですの?」
「う~~~ん・・・・そういうコトじゃないんだけど・・・うん。ま、いいよ。そういうコトにしておいて。それで、時間が出来たから、一緒に出かけよう。東都タワーに上ってみてもいいし、ポレット・タウンの大観覧車、乗ってみたいって言ってたよね?今日は良い天気だから、今から行こうよっ」
「今から?!」
「うんっ、今から行けば、夕方までには十分に遊んで帰ってこられるしさ」
「・・・でも」


噛みしめた、くちびるの痛みよりも、慣れてしまった生温かな血の味がジョーの意識を009へと戻そうとする。








ーーー感情で動くな。












ーーー本来の目的を、行動を、すべきことを、見失うな。
























ジョーの足にゆっくりと伝わる、脳からの”信号”は、固まっていた筋肉を少しずつやわらげて、一歩を踏み出すことに成功する。



”・・・・・・終わったら、ピュンマと何処かで食べないと、ね。・・・・・出かけても大丈夫そうなら、一緒に行く?003”
”いいの?”
”・・・・彼は学校で、メイ子さんは起きてこないんだろ?”
”行ってもいいの、かしら・・”
”ピュンマも喜ぶよ。久し振りだから。あ、でも”
”・・・?”
”・・・・・食べ過ぎてお腹が痛くなって、病院に運ばれるとか・・・そういうの気をつけて、ね?”
”!!っっそんなに食べないわ”
”・・・2回目の朝ご飯になるから、な。きっと”
”・・・・・行くなら、駅前のユーモレスクに行きましょうね!とっても美味しいのよ”
”朝から、ケーキ?”
”っっそこはブレック・ファストやランチが美味しいのっ”
”ケーキも、だよね?”
”・・・・・・・・ここが、書斎よ”








<・・・・・行くよ、また連絡する>



窓が開かれたまま、雨の匂いを含んだ風が部屋に入り込む。
太陽が、グレイに色付き始めた雲へと隠れて、光翳る。











<っ待ってっ・・・・・ぜ・・・ジョー・・・・・・・>


ジョーから届いた脳波通信。
すぐに彼を呼び止めようと、通信を返したけれど、すでに009は通信回路を切ってた様子で、フランソワーズが送った通信に返事はなかった。





009と合流した008は、ジョーと一緒に駅前のカフェで朝食を取る。
ピュンマが頼んだのは、オススメとプリントされた文字に惹かれたブレック・ファストのセット。
2つのポーチド・エッグに焼きたてのトースト。カリカリベーコンに、あっさりオニオンスープとクレソンのサラダ。そしてグラノーラ・フルーツ入りのヨーグルト。食後の珈琲付き。
ジョーは珈琲だけを頼んだが、勝手にピュンマは、ジョーの分だと言って、イングリッシュマフィンのモーニング・サンドを頼んだ。

ピュンマはブレック・ファストのセットとは別に気になっていたものだったため、ジョーが食べないなら自分が食べるつもりらしい。






窓側に座って眺める、駅前の大道り。
近くに女子校があるのか、同じ制服を着た女の子達が駅から降りてくる。

何が楽しいのか。
何が面白いのか。



女の子たちはキラキラとした笑顔で学校へ向かう。
ピュンマは、まもなく”潜入”する月見里(やまなし)学院へ行くことに、”ミッション”と知りつつも、授業が受けられる、学校へ通うことができる。と、期待に胸が膨らませた。


「あ、向こうにもカフェがあるんだね!・・・なんか、可愛い感じ。あっちは男2人だと、入りずらいね・・・」
「・・・・・そうだ、ね」
「ケーキとか、置いてるかな?フランソワーズが好きそう」
「・・・」



ジョーはちらりと、視線を窓の外にある、ピュンマが見つけたカフェに視線をむけた。




”カフェ・ユーモレスク”












「・・・・好きかも、ね。フランソワーズなら・・・・・ああいう店」










持ち帰ったマイクロフィルムは、直ぐに複製された。
当初の予定を変更し、午後には008と007が再び篠原邸へ赴き、朝と同様に008がセキュリティ・システムへ進入。猫に変身した007がマイクロフィルムを背に結びつけて、邸内に侵入し、元の場所へとを戻すことに成功する。

007はその足で偵察を続ける月見里(やまなし)学院へと向かい、008は公共交通機関を使い、ギルモア邸へと帰った。



その日のうちに、ギルモア邸で電子化されたマイクロフィルムが00メンバーが見守る中、解読された。そして、イワンが眼を覚ました。













####

当麻に急かされるようにして、出た街。
むかった先は、ポレット・タウン。浜竹町駅から”日登り橋”よりポレット・ステーションまで20分かかる水上バスを使った。


世界最大級の観覧車を目の前にして、感動の溜息に混じった・・・淋しさ。
チケットを購入し、乗り込んだゴンドラで当麻がいつの間にか買っていた缶ジュースを手渡された。


「・・・・迷惑だった?」


ゆっくりと自分たちを乗せたゴンドラを上へ、上へと運んでいく。
空へと近づいていく風景を見ながら、フランソワーズはドルフィン号で離陸するときの風景を思い出した。観覧車の頂上に辿りついても、ドルフィン号で飛ぶ空の高さには絶対に届かない。
ジェットに抱えられて飛ぶこともあるが、その十分すぎるスピード感は、初めの恐怖心さえ乗り越えれば、人類が夢見る”空を飛ぶ”こと、の素晴らしを体感できた。


ゆっくりと、ゆっくりと、時間をかけて空へと運ばれていく、箱。





「・・・・・・マリー、迷惑だったかな?」
「・・・・あ。・・・・・・え?」


いつも通りにふり舞っているように見えるが、ときおり吐く溜息に、遠くを見る視線の方向に、美しく宝石のように輝く蒼瞳の輝きが失われていることに、気が付いていた。


「・・・元気がないね?」
「そんなことないわ、少し怖いの・・・・・。ほら、もうこんなに地上から離れてしまって」


そう言って、当麻から視線を再びゴンドラの窓から街を眺めた。


「・・・・・・もうすぐ、新しいトコロへ行くんだよね、マリー」
「ええ。1週間と言う約束ですもの」
「・・・・・・・・会える?」
「・・・会える・・って?」
「週末とか、学院がない日とか・・・・・会いたいな」


当麻の言葉に、マリー/フランソワーズの躯が強張る。



「・・・・・・・い、忙しくなると思うわ」
「勉強が忙しいのは、ぼくも一緒だし・・・・マリーと会うために時間を作る。そういうの苦にならない。ならないどころか、・・・・・嬉しくて、幸せだと思う。ぼくの言いたいこと、解ってくれるかな?」
「・・・・・」


躯を壁際ににひっつけるようにして、ゴンドラ内をぐるりと囲んだ銀色の冷たい手すりのようなものを、握る。

マリー/フランソワーズの視線は、おもちゃのようになった地上に釘付けのまま。


「このまま、さようなら。じゃ、嫌なんだ。・・・・・マリーに会えたこと、一緒に過ごした時間、すべてがぼくにとって・・・この世に神さまがいるなら、彼の足にキスをしたいくらい・・・・感謝してる。まだマリーを知って5日目だけど・・・・・・・。でも、ぼくにはもう、十分なんだ。時間なんて、過ごした日数なんて、関係ない」


当麻の言葉が、フランソワーズの胸に重く、熱く・・埋まっていく。


ーーー怖い。




身が竦む。
息が止まる。


当麻と言う人物は、信頼できる。
フランソワーズはそれをよく知っている。
それにも関わらず、当麻が自分に向ける、視線と言葉がフランソワーズを怖がらせた。


フランソワーズ自身も混乱する。


何が、そんなに怖いのか。
何を、そんなに恐れているのか。






















「・・・・・家を出たあともぼくと、会ってくれるかな?」













当麻は、胸に並べていた2文字を喉を通さずに、そのまま自分の胸に留めた。
会えなくなる。
そのことだけに焦って答えを求めている自分にブレーキをかけた。


マリー/フランソワーズが怖がっているように思えたから。
狭く、逃げ道のないゴンドラ内。

地上から遙か遠く離れた、空の上。



当麻は、マリー/フランソワーズを追い詰めてしまったと反省しつつ、キュッと胸が縮む痛さに息を飲み込むことで耐えた。



長期戦。



ーーーマリーは、ぼくと同じようには感じてくれていなかったんだ・・・・・。







自分の勘違いを恥じつつ、けれども拭いきれない考えが脳裏をよぎる。






ーーー・・・・・だったら、どうしてマリーは・・・。








マリーが魅せる、視線。しぐさ。表情。言葉。
何度か付き合ったことがある、彼女たちが自分にみせた・・・それらと似ている、いや。同じものであったと当麻は考える。







ーーーぼくじゃない、誰かを見ている・・・・・・?・・・・ぼくを通して誰か・・別の?








「当麻さん。今はまだ何もわからないの・・・・。お約束することはできないけれど、また・・・・遊びに来たいわ・・・・」


フランソワーズは当麻にむかって微笑んだ。
彼の口から”告白”の言葉が出なかったことに安堵した笑顔で。


「・・・いっぱい、遊びましょう!・・・・今日は夕方には戻らなくちゃいけないけど、明日、明後日は朝から夜まで!!」


当麻は笑う。
フランソワーズの携帯電話が、マナーモードに切り替えられていて、彼女がメールに気がついたのは、ショッピング・モール内のレストランで昼食をすませたとき。




メール内容は007がすでにマイクロフィルムを元へ戻したため、今日予定していた007、008、009の篠原邸の訪問をキャンセルすること。
003がホームステイ中に調べた事柄から、篠原当麻が”マクスウェルの悪魔”である可能性がなくなったこと。

これ以上、篠原邸にいても意味がないので、明日の午後にはギルモア邸へ戻ること。
004と009が篠原邸へ向かいに行くことが書かれていた。


夕方の訪問がキャンセルになった、と。それだけを当麻に伝えて、2人が篠原邸に戻ってきとときには、午前1時を過ぎていた。

その日、初めて003は009への報告を怠った。






時間は気にしていた。
けれども、今日で最後だから。と・・・。
携帯電話でメッセージを送れば00メンバー全員にメールが一斉送信されてしまう。ギルモアからのホームステイの条件の1つでもあった。




”いつ、何が起きても、メンバーの誰かが、直ぐにかけるけられるように”






009に、ジョーに、指定された時間に篠原邸にいなかったことで、余計な心配をかけているのではないか、何かあったのかもしれないと勘違いされてはいないか、などと不安になったが、フランソワーズの持つ携帯に誰からもメールが届いていないため、自分が大げさに考えていることに気が付いて恥じた。

今日、すでにジョーとは会っている。

そのため、わざわざ報告の必要はないと思われて、連絡がこなかったのかもしれない。
携帯メールを何度も確認するが、昼間に届いた003宛のメールのみ。


指定された時間に報告できなかった=篠原邸にいなかった。ことに、・・・・何もジョーは思わない。感じない。仲間として心配されたとしても・・・・・、などと考え始めたフランソワーズは、久し振りに逢ったジョーの姿に、自分がどれほど彼に惹かれているか、想っているか、を嫌と言うほど再確認させれられた上、003として気を張りつめていたこころが緩んで、雫となって頬を伝った。






フランソワーズが眠るベッドのまくらに座る、
柔らかな、ふわふわとした短い毛並み。
糸で縫いつけられた、目尻が下がった小さな瞳。
くたくたとした異様に長く作られたウサギの耳は、少しとぼけた印象の、フランソワーズのお友達だけが知っている。


何度も送られてきた、通信。
何度も、何度も、何度も。


今、フランソワーズが耳に隠したケーブルを繋げれば、繋がるかもしれない。

















朝、ジョーがこの部屋を去る前に、そっと手に取ったウサギさんにキスをひとつ、残していった。

「・・・・・ずっと彼女と一緒にいられて、羨ましい、よ」












====51へと続く


ラグビーさんからゲットした当麻君・イラスト!は、コチラ



・ちょっと呟く・

9はもんもんです。
モンモンしてます。
3が当麻と出かけたの知ってるだけに、悶々です。


(’-’*) フフ・・・・・・。

さくらちゃんにちょっかい出してないといいけどね。いじけて(笑)

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