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青い鳥と青春のカゴ
失恋の経験値はレベル3。


小学校5年生のときにもらったチョコレートが本命でないと知った、とき。
別々の高校に通うから、と。オレ自身がどうしようもない理由で断られた、とき。




そして、オレが好きになった人が島村ジョーの彼女だった、



とき。







どうしようもない事実とともに走り出した想いは、急ブレーキを踏んだ余韻が残り、きちんとタイヤ跡までくっきりと胸に刻まれたまま、だ。
嫉妬に狂う、ほどではなくても、息苦しさに吐いた息は燃えたように焦げ臭く、真夏の太陽にじりじりと肌を灼かれたような痛みを与えられた。

切ない。と、好きなバンドが歌うが、言葉でなくて、みぞおちの少し上の辺りで、感じる。
兄貴からのお下がりのラップトップを、これまた兄貴のお下がりのM-audioというメーカーのちょっと良いよらしいスピーカーに繋げていた。

音がスピーカーによって何がどう違うかなんて、そんな大層な耳など持ち合わせていないオレは、兄貴がいちいちこだわって買い替えていく道楽に、ただ「へー、すげー。わー。やっぱり良いスピーカーはいいね、兄貴!」と、おだてた。

居候は居候なりに気を使い、兄弟関係の円満をキープしている。




コンピュータのモニターに広がる無数のネット世界から適当な動画サイトを選び出し、”作業用BGM”から”再生時間が長い”を選択した。

それをドックへとしまって、あとは放っておく。
音量を最小までしぼった音楽が、どこぞの誰かが編集した順に流れ出す。



それに何も不満はないけれど・・・・。









ルームライトを消して、デスクランプだけにしている、今。
世界はオレの周りだけが明るい。

あまり気持ちが乗らないが、期限が迫っている課題をクリックしてモニタ画面に広げた。


「あ、・・この曲知ってる」







ささやくような音量が耳に馴染む。

カーテンを閉めた向こう側。
窓に貼りつく夜の空気は、ときおり走り去る車に怯えたように震えていた。


兄貴夫婦は朝が早い。
ふと視線に入ったモニターが映し出した数字を目にして、もうキッチンへ行くことはできないな。と、胸の中でその言葉を書きながら、デスクの傍らに置いていたオレンジジュースが視界に入った。

まだ半分ほど量が残っている事に、満足する。





オレだけの部屋にオレだけの時間。

受験浪人をする前は、親に黙って夜更かししたことをまるで英雄が伝説の剣を指し示した地図に乗る地へと足を踏み入れたような、感動と緊張、分刻みで訪れる未来に心臓を高鳴らせたものだ。




当たり前のように夜の住人となる権利を得た今は、そのときの気持ちを思い出すとくすぐったいというよりも、頬がむず痒くなる。
可愛いな、と思った気になるタレントのラジオ番組を聴くために、が、夜の世界への第一歩だったことを。




広げた真っ白なテキストエディタのテンプレートに、課題のタイトルを打ち込まず、島村ジョーの、彼女である人の、名前をタイプした。










         フランソワーズ・アルヌール














なんて綺麗な名前なんだろう。
語順といい、響きといい、リズム。
舌に乗せたときの感触は、上等なフレッシュ生クリームのようにしっとりとなめらかに溶けていく。



男にしては音域が高い、流れる曲を歌えあげるヴォーカリストは、今にも泣き出しそうな声でオレにささやいた。






『手に入らないから、諦められないんだ。

手に入らないと知っているから、追いかけるんだ。

手に入ると知っていたら、キミに恋なんてしない。





憧れは憧れのままで。
恋は恋のままで。


手をのばせば消える蜃気楼のままで。

キミに翻弄されるボクは、そんなボクのままでいたいと願う。』
















叶えられない恋をごまかす歌だと、今、気づいた。
”ごまかす”という言葉よりも、叶えられない切ない恋に悩む男心とプライド。と、言った方が正しいのかもしれない。


オレは彼女の名前をマウスでなぞり、青のハイライトに包んだ。


ーーーごまか・・す・・?









誤魔化すなんて、できるわけないじゃん。

「誤魔化すかよっバーカ野郎っ!!」





瞳を閉じればそこに。

彼女の微笑みは、そこにある。
彼女の笑い声は、オレの耳に響く。
彼女の揺れる亜麻色の髪は、光をはじいて、オレの瞳を細める。

彼女の香りは、オレの頬に触れる。



彼女が呼んでくれる声にオレは世界中で一番すごいヤツになった気分になる。



彼女がオレの名前を知ってくれたときの感動を覚えているから。
地球の色といってもいい、あの青とも緑ともいえない優しくも強い光に映る自分の姿を見つけ出したときの、・・・・。















堕ちた瞬間を。





















Fall in Love

恋に堕ちた。







「ああ・・・・フランソワーズさん・・・・」











そうして今夜も課題は進まない。
彼女への想いを綴った想いが重なるだけで夜が明ける。






「ってー今日は土曜日!フランソワーズさんの日~♪」



目の下の隈を心配してくれるときの、悩ましげな蒼い瞳がもうっ堪りませんっ!!









end.












*お久しぶりです・・・大地くん♪課題がんばれっ・・留年するぞ(笑)*
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