RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
あと1cm/ボクと彼女との距離は?


「ジョー~~~~~~~~~~、はっ!わかってないっ!わかってないんなっ!!わかってなああああああいのら!」


グレートの雄叫びがリビングルームに響くと、今夜の生け贄が決まった証拠。
そそくさと、ギルモアに抱かれたイワン、張大人、フランソワーズは生け贄(ジョー)だけを残してリビングルームを去っていく。

グレートと飲むのはキライじゃないジョーにとって、仲間たちが考えているほど、生け贄になることに不満はないが、今夜だけは、内容が内容だったので遠慮したかったが、しかし、そいうときだからこそ、彼なのだ。


生け贄になった原因は、スーパーへの買い出しに出かけていたジョーとランソワーズが、一緒にリビングルームに入ってきたとき、ドアを開け、それをホールドしていたのは、彼ではなく、彼女だったから。

たったそれだけのことが、気に入らなかったらしいグレートは、呑み始めて1時間もしないうちに、ちくり、ちくり。と、ジョーを詰りはじめた。


たとえジョーが両手いっぱいに荷物を持っていた状況であった。としても、だ。
関係ないらしい。







施設で育ったジョーは、彼と同世代の女の子たちと寝食を共にして育った。もちろん、部屋割りは同性同士であったが。
今のギルモア邸での生活も、その延長線上にあり、今までの生活とそれほど変わりなく感じる。

言えば、女の子と生活をする。と言う事に、平均的一般人男性に比べて慣れている。
姉妹がいる環境で育った。と言うのと、近いのかもしれない。それは、あくまでも”近い”であって、同じではない。家族。と言う環境とはかけ離れていたからだ。

だからこそ、ジョーにとってフランソワーズと一緒に暮らす事にたいし、他の仲間たちが気にする、心配するような問題(ジョーと彼らとの間に問題の意味の”差”はあるけれど。)は、何もない。

ついでに言えば、ジョーは”日本人”の自分にしては、それなりに仲間たちからの影響(お小言)もあり、できる限りの誠意(と、仲間達とは違う、ちょっと特別な意識)をもってフランソワーズに接している。と、考えている。






「男っていうものはらなあ、ジョーっつ!!」


酒を飲んでいるグレートが酒に飲まれるまで、しっかり、きっちり、ジョーは”生け贄”の役目を果たさなければならず、酔いの勢いが最高潮に達したグレートの、役者として鍛えた流れる舌から紡ぎだされる言葉は、フランソワーズにたいする扱い云々から始まり、紳士とは、淑女とは、に移り、自分の豊富な恋愛の軌跡を振り返ると、彼なりの恋と愛の定義をお得意のシェークスピアの台詞に混ぜて語りだした。
うんざりした様子のジョーに気づくこともなく、右から左に通り抜けいくグレートの話は、最後に決まって、


「で、2人はどこまで進んだ関係だ?」


と、アルコール臭くなった息でいやらしくささやき訊ねるのだ。


「どこといれても、そんな”関係”なんてないよ」


と、ジョーは口を突き出すかのようにして答えると、首根っこを捕まえられて、ぎゅうっと、グレートの腕に絞められた。


「だ~~~~~かあああああああああああらっっ!!なんでそうなんらよおおおおおお!いいかあああ、お前がそんなだかあああっっ姫が可愛そうなんだおっっっ」


アルコールくさいグレートの息がジョーにかかり、空気の色もアルコール色に見える。


「いたい、いたいよ、グレート・・・離してくれって・・酔っぱらいが、もう・・・・どうしてフランソワーズが可哀想なんだよ?可哀相なのは、ボクだよ・・まったく、いたいって・・・離せよ」


首にまわされた腕を、009の力でぐいっと離し、けほっと、擦れた息を吐き出す。


「う、うう、うううう。う・・うう・・・ううううああああああ、こいつは、こいつはああ」


泣き出した。
どうやら、最終段階に入ったようだ。

ソファに深く腰掛けていた背中を丸めて、腕で、ずずずっと鼻をすすると、そのままごしごしと、ウサギのように亜各区はらした目にたまる、熱い涙を、来ていたシャツの袖に滲ませる。


グレートが泣き出した。と、言う事はそろそろ”寝る”準備が始まった合図。


「ごめん、ごめん、グレート・・ボクが悪いんだよ、ぜ~んぶ、ボクのせいだよ」


ここは何も言わずに慰めて、彼が言う言葉を全て自分のせいにする。
それがどんなに身に覚えのない理不尽な事であっても、だ。



言葉をかけながら、丸くなったグレートの背中をなでてやると、短い嗚咽が聞こえ始める。
そして、それが鼾に変わるのに、それほど時間はかからない。

















「今日は意外と早かったわね?・・・さすがジョー、グレートの相手はジョーにかぎるわ」


リビングルームに姿を現したフランソワーズの手には、タオルケット。
彼女のそのタイミングの良さに、ジョーはいつも驚かされる。

ソファの上にごろり。と、躯を横たえて、真っ赤な顔に大いびき。効き手にはしっかりお気に入りの酒瓶を抱えているグレートに、そっと手に持っていたタオルケットをかけてやり、酒瓶の代わりに、抱き心地良さそうなクッションと入れ替える。

以前、寝返りを打った拍子に割ってしまった、まだ1/3も空けていない瓶にたいして、酷く落ち込んでいたグレートを知っている彼女だから。


フランソワーズは、グレートがリビングルームで寝てしまうまで、もしくは部屋に戻るまで、ずっと起きていることを、ジョーは知っている。

だから、生け贄になることは、それほど嫌じゃない。と、言う事になるのかもしれない。















フランソワーズは飲み散らかされたテーブルの周りを片付け始めた。

ジョーは絨毯が敷かれた床に座り、グレートが横たわるソファにもたれかかると、後頭部をコツン。と、グレートの膝に押されて、”手伝うとか、なんか気の利いた言葉でもかけてやりやがれえ”と言う、グレートの言葉を聞いたような気がした。が、睨んだ先のグレートは、気持ち良さげに、大口をあけて眠っている。


「お水、いる?」


片付けの手を休める事なく、フランソワーズはジョーに訊ねた。


「・・・いい、自分で」と、言いかけたが、フランソワーズはすっくと床かから立ち上がり、中身がまだ無事なつまみたちを手に、キッチンへと歩いて行き、そして、氷入りの冷たい水と一緒に戻って来る。


「そんなに見ないで・・恥ずかしいじゃない・・・」
「・・・ごめん」


フランソワーズの声に、やっと彼女から視線を外す。




どこまでの関係と言われても・・・・。






珈琲テーブルの上に置かれたグラスを取ると、指に凍みるような痛さが心地よく、自分がグレートに流されて普段よりも呑んでしまっていることに気がついた。

フランソワーズの手が忙しそうに、テーブルの上や、その周りを片付けていく。
白く、細い腕がジョーの目の前を忙しなく往復する。
彼女の動きに会わせて、肩先で揺れる、金糸のようなキラキラした髪が、さらり、と。なびいた。

ハチミツ色の髪が溢れ弾く、ルームライトの光が滲み、フランソワーズがぽおっと柔らかい何かに包まれているように見える。ジョーはそれが何か確かめたく、まだ一口も飲んでいないグラスをテーブルに置いて、揺れて彼女の周りで戯れる光に触れようと腕をのばす。









自分に向かってのばされてきた手に。
ジョーの手に。

フランソワーズの躯が緊張に固まった。
大きな瞳がさらに大きく開かれて、その手が進む先を視線で追う。











その手が彼女の、彼女に、触れる、あと1cm。













花の香りがジョーの鼻腔をくすぐらせて、そこにフランソワーズがいたことを形作る。
宙に漂う、行き場を失った手をどこへ納めていいのかわからずに、指だけがぴくり。ぴくり。と動いた。


「邪魔してしまったのか、のう?・・・・スマンかった」


フランソワーズが吸い込まれていったドア口に立つ、ギルモアの口から申し訳なさそうな呟きが、波紋となって空気を揺らし、ジョーの耳に届いたときには、ダイニングルームへと続くドアが閉まる。


「・・・・・・いえ、邪魔じゃないです」


閉まったリビングルームのドアに向けてではなく、宙に浮いた自分の手にむかって言った。










施設で育った自分は、同世代の女の子たちと寝食を共にして育った。
もちろん、部屋割りは同性同士。

今のフランソワーズとの生活も、その延長線上のようなもので、以前の暮らしとそれほど変わりない、はず。


変わらないのだ。
変わらない、のだ・・・、同年代の年頃の女の子と一つ屋根の下、でも。


問題ない。
ちょっと特別な気持ちはあるけれど、問題ない。








じゃあ、この手はなんだ?

この手はどこへ行こうとした?
何をしようとした?





ええっと、・・・・・・・・。





ゆっくりと引き戻した手を、ジョーは見つめる。
その手を開いたり握ったりして、繰り返し、ふうっと溜め息をついた。












・・・呑み過ぎた。と、言う事で。




自分に自分で言い訳をしつつ、あと1cmの距離に、舌打ちした・・・自分に驚き、


そして、呟く。












「問題あり、だ・・・・・・」






















































*らぶ・コメって難しい・・・向いてないかも~・・・のんびりもじもじってことで*
web拍手 by FC2
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。