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Day by Day・75
(75)





「・・・息子の当麻です」

篠原邸を訪れた、香田ルリ子は焼香を済ませた後、篠原秀顕の1人娘、さえこ、そして息子だと名乗った青年と対峙していた。が、当麻と名乗った青年が本人でない事は、一目でわかっていた。


「一つだけ、お伺いしたく、恥を忍んで参りました・・・」
「なんでしょう?」


ルリ子は、その事には触れずに、さえこにだけに向かって言葉を綴った。
隙を見せない、篠原グループの代表。として、接するらしい、さえこのその態度に、彼女のプライドを感じる。


「お顔は・・・?」
「あの人らしい、笑みでした・・・死因は、急性心不全でしたので苦しんだ筈なんですけれどね・・。そういう様子もなく」


ジョーの脳裏に、秀顕の最後の言葉と、009の手が、スーパーガンのトリガーを引いた感覚が甦る。



---fulfillment・・・・だ---


ニヤリ、と。秀顕は009にむかって皺の深い、薄い唇で微笑み。




今、ジョーの視界に入る祭壇に置かれている、遺影も秀顕であった形を納めた箱も、彼は眼を逸らし続けている。と、同時に、胸の内ポケットに忍ばせて来たものが、じわじわと熱を持ってジョーを責め始めていた。



「探しものが、見つかったんですね・・・」






呟やかれた、ルリ子の言葉にジョーは意識を彼女へとむけた。


---探し、もの・・・。


009であるべきだと、妙な感傷に思考が捕われていることに、自分を叱咤しながら、ルリ子の言う”探しもの”に関して意識する。
彼女はもしかしたら、と。その可能性を考えて始めた。


「それだけが、知りたかったんです。ずっと・・・それだけを求めていらしたのですから、満足でございます」
「あなたへの保証は、弁護士を通して責任ある形で対応させていただきます」
「いいえ、・・・その必要はありません」


さえこに向かって、厳かに言い切った。


「必要がない?」
「他の方々はどのようになさったかは、存じ上げませんが、私のことは、お忘れ願います」
「それで、いいんですか?」
「はい」
「・・・後悔なさいませんね?」
「はい」
「わかりました。後ほど、その件に関して、弁護士がお宅へ伺います」
「はい・・・、それでは、失礼いたします」


用件だけのやり取り。
そこに、故人に関する言葉はない。

ルリ子は、すっくと立ち上がり、音もなく足を進めて玄関へ向かう。
その姿を見届ける事も、見送る事も、さえこはせずに、そこに座したまま微動だにしなかった。

当麻と名乗ったジョーは、立ち上がり、さえこに代わってルリ子を追いかけた。


<香田ルリ子と接触する>











####


梅雨明けを告げる空の高さが、じわじわと肌にまとわりつく湿気を軽く感じさせる気にさせた。


ジョーは、呼びかけることもなく、篠原邸の正門を抜けて、香田ルリ子と並んで歩いた。
まるでジョーがそうすることを知っていたかのように、ルリ子は何も言わないまま、歩き続ける。




ふうう~ん。と、ナナツボシ天道虫が、ルリ子の喪服の背にぴたり。と、止まった。

篠原邸を離れて、どこへ向かうのか。
駅とは違う方向の道を歩きながら、ルリ子の方が先に言葉にした。


「お名前を、・・・お訊ねしても差し支えございませんか?」
「当麻、です」
「・・・・」


ちらり。と、ジョーへと視線をむけたルリ子は、視線を足下へと落としながら、少しだけ、その歩みを緩めた。
そんなルリ子の様子を見ながら、ジョーは彼女が自分が偽っていることを知っている事を、確信する。


「・・・本人を、ご存知なんですね?」
「秀顕さんのことで、知らない事はありません」
「知らない事は、ない?」


胸ポケットに入れたものが、一段と強く熱を持ち、ジョーの胸に焼き付く。



「いいえ、言葉を間違えました」


歩を止めて、ジョーを見つめたルリ子。
彼もルリ子に従って、足を止めて、ルリ子を見た。


「探しものが、何だったのか。誰の手によって秀顕さんは、・・・天に召されたのか、は存じ上げません・・・」
「・・・・・」


再び、ゆったりと、歩を進め始めた、ルリ子。
ひと呼吸置いて、ジョーも止めていた足を重く動かした。


ジョーは浅くなりつつある呼吸を、意識して深く肺に吸い込む。
数ブロックほど、2人は無言で歩いた。



009であるジョーの経験がすべてを察した。
ルリ子は、”知っている”と。




バスが通る大通りへの道を外れて、住宅街へと入っていく。
古くからこの土地に住む人間が多い事を現すような、家が並ぶ。
ランドセルを背負った子どもたちと、多くすれ違うために、近くに小学校があるのだろう。と、ジョーはルリ子の様子を窺いつつも、たまに縦笛を練習しながら歩く、低学年の子どもたちに視線をむけた。
聞き覚えのある、もしから、自分も吹いたことがある、フレーズが空へと吸い込まれていく。

遠くなる、縦笛の音に紛れるようにして、ルリ子が離し始めた。


「私は、篠原の家に勤めていた母に連れられて、幼少時を過ごしました。秀顕さんはご兄弟がいらっしゃりませんでしたので、妹のように可愛がってくださいましたの。・・・そのまま母と入れ替わるように、お勤めにつきました。お嫁に出ても、しばらくは続けてましたのよ・・・・。主人を、早くに亡くしましてね。秀顕さんは、親身になって助けてくだすったのです。とても、とても、繊細でお優しい方でしたの。でも、私は、その恩ある方を”ご当主”の命令に逆らう事ができずに、・・・裏切りました」
「う、ら・・ぎる?」
「ええ・・・・。私と秀顕さんの仲にお気づきになられたから。私には主人との間に、2人子を成しておりました故、子を護る母でありました。・・・・それでいい。と、秀顕さんは全てご存知でした」


ルリ子は物心ついた頃から、秀顕を知っている。

彼が、不慮の事故にあった日も。
そのために両足を失った事も。
ある日突然、新しい足で歩き始めたことも。
それによって、苦痛を強いられる日々を送っていた事も。

繰り返す必要ない、足以外の手術のために、使えていた当主からの命令で彼の食事に色々な薬を忍ばせたことも。

想い通じ合った仲であった。と、ルリ子は信じていた。けれど、年頃になると、すぐにやってきた縁談話が、当時の篠原家”当主”からの紹介だっために、断ることもできなかった事も。


走馬灯のように老いた胸に少女のころからの記憶が駆け巡った。



「お名前を、教えてくださらないのなら、なんとお呼び申し上げればよろしいのでしょうね・・・」
「・・・」


ジョーが、足を止めた。
数歩、歩み、振り返るようにして、ルリ子は振り返ると、足を揃え、姿勢を正した。


「どうぞ、お好きなように・・・・、私は逃げも隠れもいたしません」
「どういう、意味、です、か?」
「当時のことを知るのは、秀顕さんのことを知るのは、私が最後ではないでしょうか?」
「・・・・どこまで、ご存知なのです、か?」
「どこまでも」
「・・・・・・」
「秀顕さんのすべてを、どこまでもで、ございます・・・。それだけです・・・」
「どうして、俺、に?」
「・・・・・・・ご子息ではなかったから、としか、言いようがございません」


向かい合って立つ2人。

ルリ子の言葉に009として、どこまで何を彼女が知っているかを探らなければと、使命感が胸によぎる。が、次のルリ子の行動に、それは、瞬時にジョーの脳裏から消えた。


「・・・ありがとうございました」


ルリ子は深く、深く、ジョーに向かって頭を下げた。


「え?」


ジョーの躯が驚きに固まる。


「な、・・・?」


ゆっくりと頭を上げて、ジョーを見据えた、ルリ子。
その表情は穏やかに、優しい。


「あ・・・・・」





一日、一日が、競い合うように、陽を長く留めておことする季節。
夏物の制服といえど、半袖のカッターシャツに羽織ったブレザーの下は、汗でじっとりと濡れていた。

どこをどう歩いたのか解らない。
からり。と、渇いた風が、住宅地に漂い始めた夕食の時間を覗きあるく。

夏の装いですれ違う人々は、奇異の眼に宿した好奇の色で首を2人に残しながら、歩き去る中、ルリ子が握りしめる、紫水晶の数珠が映るアスファルトの影が綺麗だった。


「・・・・やっと・・・・あの人は・・誰のものでもない、私だけの人になってくださいました」


胸元に飾られた真珠よりも、柔らかな珠が、ルリ子の頬を、つうっ。と、すべり落ちた。


「あなた、だけ、の・・・?」
「はい・・・。私だけの・・・」


数珠を持った手を、心臓近くへと寄せて、両手を握り合わせる。



その仕種に、ジョーは反射的に銀色の、親指の爪ほどの大きさの四角いプレートをブレザーの内ポケットから取り出した。

指先に摘んだそれは、妙にヒンヤリとジョーの指に吸い付いて、今まで重くジョーの胸をひりひりと焼き付けていた熱が嘘のように引いていく。

ルリ子の胸前で合わさっていた手をそっと取り、ジョーは手のひらにそれを握らせた。








「・・・・・ここに、います、よ」



本当は、さえこか、当麻に。もしくは、遺骨とともに、納骨時に墓へと考えて、持ち出した人工知能(AI)。補助脳から外してしまったそれは、ジョーの手によって壊されて、ただの小さな銀色のプレートと成り果てていた。


ジョーは秀顕のすべてを、人として還したかった。
自分が手にかけたのは、あくまでも・・・・人でない彼であったと、言い訳するように。



人でありながら、人ではなく。
人として生きながら、人として生きられなかった。




自分たちと違い、篠原秀顕は、人として土に還り、愛してくれる人の胸の中で生き続ける。

ルリ子以外の、人の中でも。
その功績によって社会的にも。

血としても。


生き続ける。




人として、役目を終えた。
自分は、人として彼を還すために・・・と、言い訳する。






「あなたの目的は・・・?」

「完全体に、なること・・・だ」

「・・・・あなたは・・・どこにいるのです、か?」

「”ここに”ちゃんといるんだよ、私はちゃんと、いる」

「・・・・あなたは、誰、ですか?」

「覚えておきなさい、私が・・・篠原秀顕だ」




秀顕がサガシテイタのは、ツナガリたかったのは・・彼女・・・・だと、信じたい。




---そして今、カンゼンタイになったんだ。
  プロトタイプサイボーグコードナンバー00・・・9の、手によってだ。










彼は、還っていった。
愛される胸に。



これで・・・・。













007は羽を忙しなく動かして、ルリ子の背から離れると、ジョーの肩へと移動した。
そして、ジョーは静かに、ルリ子から離れて行く。



<009・・・!!>
<いいんだ、よ>


ルリ子は何も言わずに、離れて行くジョーの姿を視界の端に留めながらも、手に握らされたその銀色の四角いものを大切に、大切に、手のひらに乗せて、指で撫で続けた。









「fulfillment・・・・だ」














幸せだったんだよ。
彼なりに。
















####

ジェットから彼の携帯電話の番号を渡された。


「なんでもいいからよっ、ボタン一つでコールできるように、しといてくれねえか?」
「・・・いいけれど」
「なんかあったら、009だけじゃ、ってな。ま、念には念を入れてってやつだ!」


言われた通り、スピードダイアルの2番に、彼の電話番号を登録した。


「ジョー、・・・落ち着いた?」
「・・・・・あ、ああ・・・・・・・・」


当麻も、まさか、こんなにも早く、その番号をコールすることになるとは、思わなかった。


「センパイ、怪我ねえか?」
「あ、うん・・・。ありがとう・・・」












祖父の密葬のために自宅へ赴き、夕食後に戻った学院。
その日の夜。




ジョーの声に、当麻は目覚めた。
魘される、ジョーのその様子に不安を感じた当麻は、ベッドから跳ね起きるようにして、デスクから携帯電話を手に取って、スピードダイヤルを押しながら、ジョーが眠るベッドへと駆け寄り、声をかけた瞬間。埃を払うくらいの、軽い一振りで、当麻は壁際まで吹き飛ばされた。
加速装置を使い駆けつけたジェットが、壁との間に入り、クッションとなってくれなければ、どうなっていたか、わからない。

ジェットの背後から伸びた壁の亀裂が、そのように当麻に言わせる。


「おい、ピュンマっ外どうにかしろよ、これで誰かくるんじゃねえの?」


こん、と、壁をノックする、ジェット。


「あ、大丈夫だよ・・隣は空室だから」
「へ?・・そうなのか・・・・」


ピュンマの言葉を確認するように、ジェットは当麻から離れながら、彼を見た。


「うん・・・こっちは。誰も使ってないんだ」
「それに、ほとんど帰ってるよ、家に」
「週末でラッキ-だったな、ジョー!」


おどけたように言う。
ピュンマはジョーの様子を窺いながら、彼から離れた時。
空気の摩擦音が、シーツを軽く焦がした。


「っっジョー?!」
「っだ!加速装置使いやがった!」
「え?・・・島村が、消えた・・・?!」
「だああああああああああっ!アイツは何考えてんだよっ!!」
「・・・篠原先輩」
「・・・・・・・」
「ジョー、薬を飲んでるの?」


呆然と、ジョーが消えた跡に残った焼けこげたシーツを見ていた当麻に向かって、ジョーのデスクに置かれていた、馴染みあるピルケースを手に取った。


「どうしたよ、ピュンマ」
「聞いてる?・・ジョーに何か問題あるようなこと・・・」


手に取った、それをジェットへと投げた。
ピルケースを片手でキャッチしたジェットは、それをカシャカシャと振ってみる。


「・・・薬って、アイツどっか悪ぃのかよ?」
「・・・・・・起きてるかな、博士・・・」
「邸に連絡いれるか?」
「・・・朝まで待とうよ、ジェット・・・・あの、先輩」


ピュンマは、当麻の座るベッドまで歩み寄り、彼の隣に腰を下ろした。
ジェットは2人から離れて、ジョーのデスクに置かれて、チャージされている状態の携帯電話を手に取ると、ギルモア邸、ではなく、四友工場へ臨時の夜間警備についているであろう、004に連絡した。時間的に、彼がギルモア邸に戻っていてもおかしくない。そう判断したからだ。



「スミマセン、・・・先輩が知る範囲で、ジョーに何があったか詳しく教えてください」

















####


音も無く、気配もなく。
部屋に侵入して来た人物は、彼女の部屋に鍵がついているが、それを使用しない、彼女であることをしっていたために、難無く彼女の部屋へと入る事ができた。

暁月夜の空は、まだ彼女が眠りの時間であることを示している。
カーテンが覆い、部屋に彼女の香りだけが漂う。

何も無い、部屋。
ベッドが中央に置かれて、その隣に簡易テーブルとイスが2脚。
テーブルの上におかれた携帯用のスタンドミラーと濃紺の小さな箱。
数冊の絵本に、日本語の書かれたノートが開かれていた。

見覚えが無いシャープペンシル。
それを、手に取る。


トップに赤いマフラーをした、ウサギのような犬のようなキャラクターが座っている。


ふっと、侵入者は微笑んだ。


開けられたままの、クローゼット。
内扉に、取り付けられている姿見が、侵入者の背を象る。



元の位置にシャープペンシルを置き、健やかな寝息に耳だてる。
フランソワーズは、生きている。
規則正しい、微かな肩の揺れが、その寝息が何よりの証拠。


---・・・・・フランソワーズ。



そっと、ベッドサイドまで近づくと、絹糸のような亜麻色の髪を広げたフランソワーズが、瞼を閉じて、ジョーに背を向けて、眠りについていた。

スーパーガンを握る、利き手で拳を作り、それを目の前まで持ち上げて、見つめる。
トリガーを引く感触はいつだって、どんなときでも思い出せる。


それは、戦い続けてきた、証拠。
忘れてはならない、感覚。








---・・・俺は・・・。







夢の中の言葉は、すべて真実。
認める、よ・・・。








そうやって、生きてきた。
そういう風に、考えていた。



俺と言う人間が、どういう人間か・・・見た夢に、現れていた。
篠原秀顕の言葉は、俺を思い出させた。


サイボーグにされる前の、俺を・・・。



彼は還っていった。
何もかもから解放されて。



俺は、どこへ行く?
俺は、どこへ還る?





構えたスーパーガンが、その胸にあてがわれた。
スーパーガンのトリガーを引く、慣れてしまった、感触。



躯が震えた。
喉が異様に渇いている。










愛らしくふっくらとした形良いくちびるが、微笑みを形作りながら、最後の言葉を音にして、手が、009の手と重ねられていた彼女の手が、重力に従い落ちた。



---・・・・・ジョー・・・?



動かなくなったキミでもいい。
キミが、俺の還る場所であってほしい。




一房の絹糸を、スーパーガンを握るその利き手に取り、躯を折って、くちづけた。
フランソワーズの髪から手を離して、彼女のベッドから離れる。



夢は、正直だ。








止める事が出来ない想いが、形になって頬を伝う。




どうしたらいい?












キミの幸せのために、誓った言葉。




誓ったはずなのに・・・。



あの日に、あのときに。


キミのために、キミに触れない。と・・・。


好きだから、キミのために。と。
好きだから、沈めよう。と。
好きだから、キミに知られてはいけない。と。

フランソワーズのために。
自分のために。



キミが明日を生きていくために、俺は選んだ。
キミのそばにいる。
キミを護る。


ずっと、ずっと、ずっと、キミが誰のものになっても・・・
キミが誰を想い、好きであっても・・・・




好きだから、この気持ちを深く、深く、深く、誰の目にも触れられない、誰の手にも届かない場所へ。



沈めてしまわないと・・・・。(40)
この想いを、沈め続けなければならなかったのに。














少しずつ浮上した想いは、完全に俺の胸を支配して・・・
もう止められない。


だから





現実に、この手がトリガーを引く前に。


それを手にする前に。
それを選ぶくらいなら。





俺は。








---ソノ手ハ、誰ノタメニ、アルノ?











フランソワーズの部屋を出る。
そっと彼女の部屋のドアを後ろ手に閉めた。


「夜這か?・・・そんな根性がお前さんにあるとはな」


薄暗い廊下に立つ1人は、腕を組んで背を手すりに預けている。
もう1人の人物は、静かに、大樹のごとく佇んで、フランソワーズの部屋のドアの真横に壁に背を預けてたっていた。


「・・・・警備、は?」


フランソワーズの部屋に続く廊下の先の、飾り窓が紺に白を混ぜつつあった。


「だいたい、この時間には戻ってきている」


反射的に、ジョーは長い前髪で、表情(かお)を話しかけて来た人物から隠す。


「・・・・」
「で?」
「・・・・何?」
「いくら009でも、勝手に003の・・・女性の部屋に無断で入ることが許されると思っているのか?」
「・・・アルベルト」
「なんだ?」
「・・・・・・・・」
「何が言いたい?」
「何事もなく、無事にあやめ祭が終わったらイギリスへ・・・行く。交流会を調べて完全に潰しておきたい。同行を頼む」
「・・・泣くほどの決意がいる、ことか?」


アルベルトは、組んでいた腕をほどき、ジョーへと伸ばすと、彼の頭を抱き寄せた。


「ついでに、ドイツへ寄るぞ?・・・お前さんはここに戻って来るんだろうな?」


固い、機械の手に頭を抱きかかえられて、ジョーはぽつり。と、つぶやいた。


「眠りの森の・・・だっけ?・・・・そんな魔法を、フランソワーズにかけられたら、いいのに」


誰にも、誰の手にも、触れさせたくない。
永遠に、俺だけがキミを見つめていられるように。


誰も、彼女を傷つける事ができない。
誰も、彼女の夢を邪魔する事が出来ない。



永遠に、彼女は幸せな彼女だけの世界にいられるだろう?









「バカ野郎・・・・・彼女は悪い魔法使い(B.G)に拉致られて、過去からの長い眠り(コールドズリープ)から目覚め、絶望の日々の中で、やっとお前さんに出会ったんだぞ」
「俺が・・・目覚めさせたわけ、じゃない」
「だが、お前さんは俺たちの、彼女の希望だった」


アルベルトは、ジョーの頭をぽん。と、叩いた。
そんな2人を見守っていた、ジェロニモがジョーの背後から口を開く。


「自分のこころに自分自身が負けているからだ。ジョーはジョー自身に負け続けている。・・・・支えてやる。ジョーは強い。お前は気づいていないかもしれないが、オレは知っている。みんな知っている。自分に勝て。」


ジョーはアルベルトから離れて、振り返るようにしてジェロニモを見上げた。
彼には涙を隠すつもりはない様子で、濡れた瞳をさらけ出す。


「・・・」
「決めたなら言い訳するな。逃げているうちは、何も始まらない。決めたのなら、戦え。ジョー、自分と戦え。」


ジェロニモの言葉に、怪訝な顔でアルベルトはジョーと同じように、ジェロニモに視線をむけた。


「いいのか・・・な?・・・・」
「ジョーの腕を拒む女性など知らん。今までにそんな子いなかった。」


ふん。と、鼻息を鳴らしながらジェロニモは断言した。










---ソノ手ハ、誰ノタメニ、アルノ?




現実に、この手がトリガーを引く前に。


それを手にする前に。
それを選ぶくらいなら。





俺は。








この想いをまっすぐに、後悔なく伝えることを選ぶ。
それが、どんな結果になろうと、も。



「・・・ふられたらイギリスへ行く、よ。ついでに、傷心旅行を兼ねてヨーロッパをまわる、案内役頼む、よ・・・アルベルト」


アイスブルーの瞳が驚きに見開かれ、そして、呟いた。


「ほう、ふられるのを前提に言っていたのか?・・・009にしては、弱気だな」


ニヤリ。と、片方の口角を上げて嗤う。


「五月蝿い。・・・・俺にとっては、今後の人生のすべてをかけたミッションだ」



ぐいっと、腕で濡れた瞳と頬を拭った。
デネブ寮を出るときにのみ、最低限に押さえて使った加速装置だったが、痛み焦げた服の匂いが今更、ジョーは気になりはじめた。


たかが告白するくらいで!と、笑い合いたいアルベルトとジェロニモは、微笑み合うだけで我慢する。






---やれやれ、恋愛に関しては小学生並みの男が、どうでることだか。



「着替えて、朝飯を喰ってから学院戻るといい。」
「ついでだから、そのまま今すぐフランソワーズに告白して帰ればいいだろ?」
「・・・・・軽く言うなよ」













今日が終わる。
明日が訪れる。


これからの未来に、キミの隣に立つ俺を、夢みて。
これからの日々を。





キミと過ごす毎日を手に入れたい。
いつの日か、フランソワーズの世界の住人になる日を、願い。



「オフィシャルに、言うんだな?」
「・・・・ああ、俺は、フランソワーズが・・・好きだ、よ。」
















連載もの、第一部・Day by Day 完

====連載もの第二部・新章『Little by Little』へ続く




・ちょっと呟く・

ま、そういうことでして!(←逃げ!)

気持ち新たに、新章『Little by Little』へいきます。
(実は、「でい~」の連載当初から決まっていたのです・・・次のタイトル)

相変わらずの片思い。
9、3への果てしない(長く苦しい茨)の告白道・編(笑)に突入。
何せ、”バミューダ・ラブ・トライアングルですからねえ。

9がんばれよ~(←無責任で適当な呼びかけ)



名前変わっても、次回は”あやめ祭”ですから(笑)
連載ものなので、伏線は続きます。
いっぱい93絡みネタを振ってますからね!
あれや、これやら、忘れてませんよ!!




傷心旅行先がヨーロッパって贅沢だなあ。

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