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好敵手
注意)2→3←9な関係です。93は変わってませんが地雷な方は回れ右でお願いいたします。
注意書きを付け加えたのは、半日過ぎてからです。注意書き以前に読まれてしまって、地雷だった方がいらっしゃいましたら、すみません。




003の頬を伝った雫に、どうしたの?と、声をかけようとして、言葉よりも先に動いた手が、行き場を失って宙を漂うことになったのは、ほんの少しだけ、彼女の泣き顔がいいな。と、思った不謹慎さが原因。


「めそめそすんなって、仕方なかったつーの、あんときゃ」


ひと呼吸の差。
僕の手が伸びるよりも早く、伸びた手は、僕よりもずっとずっと長く、彼女が003として生きる事になったときからそばにいる、彼女よりも1つ少ない数を持つ、彼。


「ったく、いつまで”泣き虫”やってんだよ、変わらんねーな!」
「だって、・・・」


呆れたようなため息とともに、彼の効き手がつんつんとした髪をかきむしる。


「泣いてる暇があったらよ、今度は絶対に同じ失敗はしねえって、努力すりゃいーじゃんか」
「・・・でも」


僕は冷たいドルフィン号の赤に背を押し付けて、2人の会話を聞いていた。
そのまま、ジェットに任せて去ればいいのに、足は動かない。


「ここにずっと居るつもりかよ?そろそろ出発しなきゃいけねんだからよ」
「・・・・」


そうか。と、気づく。
ジェットも、僕と同じように彼女を捜して、ドルフィン号の甲板に出て来たのか、と。

違う出入り口から、彼は僕とほぼ同じタイミングでフランソワーズを見つけた。


「ねえ、ジェット」
「なんだよ?」


手の甲で涙を拭い、すん。と、鼻を鳴らしてジェットを見上げた、フランソワーズ。
沈んでゆく太陽がつくる、オレンジ色の世界でくっきりと浮かびあがる長い、長い、二つの影が、僕の存在に気づいたように、足下まで伸びていた。


「私、また・・ジョーの足を引っ張ったのよ・・・」


フランソワーズの口から自分の名前を聞いて、どきん。と、心臓が緊張に汗をかく。


「仕方ねーだろ?あんときゃ・・」
「でも、それで・・・彼は」
「でももへったくれもねーって。それが009のやんなきゃならねーことだったし、怪我っつっても、絆創膏1つくれーのもんだろ?・・オレがその場にいたら、おんなじようにしてたぜ、アイツだって気にしてねえよ」
「・・・」
「つーか、なんでお前はよ、ジョーのときは足引っ張った、迷惑かけた、っつって泣くんだよ?」
「・・・」
「同じことが起きたって、オレにはちっともそんなしおらしいこと言わねーだろ?」


ジェットはぶすっと不満いっぱいに、フランソワーズの顔を覗き込む。


「だって、ジェットだもん」
「はあ?」
「ジェットだもの」
「なんだよ、オレだもんってよ?」
「だって、そうでしょ?」
「わかんねーよ」
「ジェットはジェットだし、だから、別にいいと思うの・・・でも、ジョーは・・・・」



---僕は?







思わず、首を伸ばして、影ではなく、2人を見ようとする。
オレンジ色が眩しくて、ジェットの姿が逆光のため、見ていた影と同じような”形”でしか捕らえられなかった。


「出て来いよ」


言葉を最後まで言い切らないままに、ドルフィン号の中へと戻って行くフランソワーズの姿は見る事ができなくて。

出て来いよ。と、声をかけられたけれど、僕の足は動かない。


伸びに伸びた影が、さらに長くなっていくのを見ていた。


「よお」
「・・・・」


影はいつしか、消えてしまい。
その影を作っていた人と僕は並んで、ドリフィン号が浮かぶ海を、見る。


「003が、お前の足引っ張ったってよ」
「・・・・うん」
「引っ張ったのか?」
「・・・・ううん」
「じゃあ、なんでそう言ってやんねーんだよ?」
「・・・・うん」


フランソワーズがそういう風に思っていたなんて、知らなかったから。と、言葉にしなくても、彼には僕の表情でそれを理解したようだった。


「なあ」
「うん」
「・・・・オレはオレらしいぜ?」
「うん」
「んでよ」
「うん」
「・・・・・・オレはオレなりに・・」
「うん」
「・・・最新型だからってよ」
「うん」
「負ける気ないかんな」
「・・・・・・・・・・・・・・・最新型とか、関係ないよ」
「ああ、関係ねえよな」
「・・・」
「けど、最新型の”009”には迷惑かけたくなくってよ、40年ものの”002”のオレには迷惑かけても、別にいいって、あべこべなこと言ってるんだぜ、アイツ」
「・・・うん」










”ジョーにだけは、足を引っ張ったり、足手まといな、私でいたくないの”













「女ってわっかんねーよな」
「・・・うん」


面倒臭そうなため息と一緒に、ジェットは僕と同じように冷たい壁に体重をあずけて、両腕を頭の後ろにまわした。
僕よりも背の高いジェットを、視線だけで見上げてみる。


「甘えてんだよな、オレに」
「・・・そう、思う」
「で、お前の前じゃ、甘えたくないらしいぜ?」
「・・・・・」
「立派にミッションをこなせる003でいたいんだってよ」


僕の視線に、ジェットが合わせる。


「・・・ジェットが羨ましいよ」
「オレはお前が羨ましいぜ?」


口の端でジェットが笑う。
僕もつられて笑う。


「オレの方が一歩リードしてるよな?」
「・・・」
「な!」


認めろよ!っと、ジェットがヘッドロックをかけてくる。
それを上手くかわしながら、ドルフィン号の中へと戻っていく。


「ジェット」
「んだよ?」


泣き顔がいいな。と、思った。
その泣き顔が、僕のせいだったことに、満足した。


「・・・違うと思うんだ」


リードしているのは、どう考えても僕だ。


「フランソワーズが泣くのは僕のせいだから」


ドルフィン号のコクピットに向かう。
自動ドアが開く。

操縦席に座った僕は、もう泣いてはいない003をちらっと、見た。
彼女の瞳のふちが少し赤くなっていることが、彼女が泣いていた証拠。

それが、すごく愛おしい。


002と僕がコクピットに戻ったころ、買い出しのために使用していたモングランをドルフィン号内に収納した。


「全員揃ったな・・・ギルモア博士、出発しますか?」
「うむ、そうじゃのう・・・とにかく空でなく海底にじゃ」


無線から、買い出し担当の006の今日の夕食の献立が報告されて、出発の号令がかかる。


もう一度、視線を003へ。
偶然、僕のと彼女のが計ったようなタイミングで合ってしまった。

戸惑い気味に微笑んだ彼女に、僕も微笑んで、力強く頷いてみせた。


瞳のふちに残る、泣いた跡がやっぱりいいな。


「ドルフィン号、出発!」





僕のために、たくさん泣いてくれる。
あの素敵な泣き顔は、僕のためにある。


<ジェット、悪いけど・・・負ける気がしない>


泣き虫な彼女が一生懸命になってくれるのは、僕のため。



ジェットのためじゃない。
僕のため。







僕の通信に002から返って来た返事は舌打ちだった。





end.


*前からちょっと書いてみたいなーっと思っていた、2→3←9な関係です。
平ぜろベースですね。そうなると。
2が4になると・・・あの小説ベースになる、と・・・。
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