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バスルームで鉢合わせ/彼女はボクのすべてを見ていた。

季節の変わり目に降る雨は、とても気分屋だ。
とつぜん機嫌を損ねた空は、秋空にそよぐ海風が気分良くて、駅から珍しくバスを使わずに邸へと散歩がてらに歩いていたジョーをおそった。

ぽつり。ぽつり。と、大粒の雫が落ち出して、どんよりと重たげな雲が早足に青を覆い、空を低くしはじめると、絶妙なaccelerandoで降り始めた。

アスファルトを叩くリズムがクリアに耳に届く。
ぼつん。と、Tシャツがドット柄に濡れる。


うわ!と、逃げるように走った。
なだらかな傾斜を描く道を色濃く濡れ染めるよりも早く、どんどん雫で雨色に染められいく服。

まるでジョーを引き止めるかのように、ジーンズが重く足に絡み付く。


「ついてないなあ・・」


走るのが無駄に感じてしまう。が、その足を止める事なく邸へと走り込み、玄関先で乱暴にスニーカーと靴下を脱いだ。
背負っていたバックパックをその場において、つま先だけで急いで向かう先は、バスルーム。


「フランソワーズっ!」


邸のどこかにいるであろう、彼女の名を叫ぶ。


「フランっ?!」


吹き抜けの広間を抜けてリビングルームへ。
誰もいない。

そのままダイニングルームへと入っていき、キッチンをカウンター越しから覗くが、いない。
しかし、そこに夕食の準備をしていただろう跡がみられた。
今日の夕食は、和食らしい。
シンクのふちに絶妙なバランスで、フランソワーズ愛用の”はじめて・シリーズ~これで料理上手な彼女になれる~和食編”が置いてたあった。

写真入りで、1つ1つ事細かく説明してあるのが気に入っているらしい。


「フラ~ンっ!」


聞こえていてもおかしくないはずである。
”邸”にいれば、だ。

ジョーは足跡を残すように、フローリングの床を濡らしながら、ダイニングを抜けてバスルームへと向かった。


「ったく、どこへ行ったんだよ!・・・聞いてないんだけど、でかけるなんてさあ・・」


夕食の準備の途中に出て行くなど、何かあったのだろうか?
それなら、何かしら連絡があっておかしくないはずだ!と、ぶつぶつ呟きながら、濡れた服を脱ぎ捨てて、汚れ物用のかごにポイ!と放り込んでいく。


「あ、靴下・・・あとでいっか・・・」


ベルトを外し、ジーンズはカゴにはいれず別にする。

ギルモア邸の浴室は「24時間風呂」に改装したばかり。
そのために、湯船に24時間いつでも適温、適量のお湯が入っており、いつでも入浴が可能になった。

昼夜関係ない暮らしを、何度注意しても止めない、ギルモア。
彼が湯船につかりたい時間も様々で、それに合わせていたら、用意をするフランソワーズの生活もおかしくなってしまう上、邸を出入りする家族の数も様々。

全員が揃えば、大変なことになる。
夜派、朝派、シャワーのみ、しっかり浴槽につかりたい(←ジョー)タイプもいて、ランドリー・ルームも兼ねる広い脱衣所は、賑やかにケンカの原因となり、使用率も高ければ、そうじの手間も増える。


”お風呂掃除をしなくてよいシステム”


TVのコマーシャルにこのうたい文句が出た瞬間、フランソワーズはギルモアにおねだりしたのだ。
可愛いフランソワーズのおねだりを、ギルモアが拒めるわけがなく、翌日にはニコニコ顔の業者がさっそく姿を現した・・・ことがまだ記憶に新しい。


ざっとシャワーを浴びて、大人が余裕で2、3人同時につかる事ができる広さの湯船に、ジョーは手足を伸ばして、肩というよりも顎までしっかりと浸かった。


「・・・・・ふああ・・・ぁあ・・・」


---フランソワーズ、いったいどこへ行ったんだろ?










####


「ひどいわっ!ジェットっ」
「うっせえってめえが悪ぃんだよっバイクいじってる時に、脅かすんじゃねえよっっ」
「脅かしてなんかないわよっ、ジョーがまだ帰って来てなかったら、夕食のためにお使いを頼もうとしたんじゃないっ!もういやああっっ、気持ち悪いっベタベタするっ!!」
「ったりめえだろ、化学合成油を頭からかぶっちまったんだからよっ!燃えちまうぞってめぇ!」
「いやあああああああああああっっ!!」
「買ったばっかのカラにしちまいやがってっ」
「アタシのせいじゃないわっジェットが悪いのっ」


どかどかっと、乱暴な足音と口喧嘩の声。


「・・・・ん?フランソワーズと、ジェット?」


ほっこり温まり、ふわふわと思考を春色に染めていたジョーは、耳にした声に反応した。


「おらっ!」


ばあああん!とバスルームのドアが開く。


「へえ?!」


その音に飛び上がるジョーあわてて、近づいてくる足音にむかって叫ぼうとしたが、遅かった。


「とっととオイル落とせっ、その間に足りねえの買って来てやるからよっ」
「待って、ジェッっフラッボクがまっっ」
「ジョー?っまっsジエ」


浴室のドアが乱暴に開けられて、ジェットに抱きかかえられたフランソワーズは宙を舞う。


「あ、ジョー、風呂使ってたのかよ?」


投げた先に、見つけたジョーにむかってのんびりと言った言葉が彼の耳に届いた瞬間。
どぼおおおおおん、と浴槽に投げ込まれたオイルまみれのフランソワーズ。


「きゃあっっ!!」


を、しっかりと湯船で受け止めたジョー。


「ちょうどよかったぜ、あと頼むな!オレ買い出し行ってくるからよ、車使うぜ?」


ぱたん。と、ドアを閉めて去って行く、ジェット。
ジョーは、腕に、服と靴を履いたまま油まみれのフランソワーズを抱えて湯船につかったまま固まっていた。





「何事だ?」


車のキーをリビングルームの鍵置き場から見つけて、ジェットはそれを手に玄関へ向かう途中、自室から出て、階段を降りてくるアルベルトに声をかけられた。


「よ、フランソワーズの奴がバイクいじってるときに邪魔しやがって、頭から化学合成油をかぶっちまったんだ。で、風呂場に投げて来た」
「・・・・お前・・・・・」
「心配ねえって!ジョーが風呂に入ってたからよ、なんとかすんじゃね?」
「・・ジョーが?・・・・それじゃ、2人仲良く混浴中か?」
「さあな、あ。暇ならなんかオイルが落ちそうなもん、持って行ってやってくれよ!」


じゃ!と、片手を上げてジェットは玄関を出て行く。


「わかった」


邸のドアが閉まり、にやり。と片方の口角をあげて微笑んだアルベルトがいた。












####


「も!乱暴ものおっっ!!・・・あ、ジョー、おかえりなさい♪」
「・・・た、ただいま」



湯船に広がる波紋が収まったころ、やっとジョーの口が開く。


「・・目は・・・・その・・・大丈夫?」
「大丈夫よ!」


フランソワーズは足を上げて、履いていたつま先が丸い白のかかとがない靴を見せた。


「お洋服のままならまだ・・・靴のままお風呂に入るなんて、初めて」
「・・・ボクも初めてみたよ」
「脱いだ方がいいのかしら?」
「靴はさすがに、ね」


フランソワーズは靴を両足とも脱いで、ぽい、と湯船の外に放った。


「お洋服、もう駄目かしら?」
「しっかり洗ったら大丈夫だよ、きっと・・・・でも、生地が痛むね」
「ジョー?」
「なに?」
「・・・お夕飯少し遅くなっちゃうわ」
「え、ええっと...仕方ないよ。別に気にしないで」


湯に浮かぶオイル。
フランソワーズは額にかかる前髪をかきあげて、カチューシャを外し、それを適当におくと、湯を手のひらにすくって髪をすすぐ。


「ジョー?」
「なに?」
「・・・一緒にお風呂なんて初めてね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


長い沈黙の後、ジョーは答えた。


「そうだね」


至って冷静に、にっこりと微笑みむジョーの抑揚のない声がどことなく機械的に感じる。


「良い湯加減ね!」
「そうだね」
「このオイル、大丈夫かしら?お風呂壊れたりしないかしら?」
「そうだね」
「明日にでも工事をしてくださった方に連絡したほうがいい?」
「そうだね」
「ねえ、ジョーはいつも髪から洗うの?躯から?」
「・・・・」
「アタシは髪からなの!」
「・・・・・フラン」
「なあに?」


リビングルームでお茶でも飲みながら会話するのと、なんら変らない態度のフランソワーズ。


「…・・・ボクも髪からだよ」


にっこりと何事もなかったかのように笑ってみる。


「同じね!」
「・・・・・そうだね」


この状況をどうやって切り抜ければ良いのだろう・・・。
いや、それ以前に、フランソワーズ・・・・?何も思わないの???

「ジョー?」
「なに?」
「・・・ここまでくるのに、廊下とか汚しちゃったの」
「掃除なら手伝うよ」
「ありがとう♪」
「フランソワーズ?」
「なあに?」
「・・・・・あのさ」
「ええ、なあに?」
「変に思わないの?」
「なにを?」
「いや・・・何をって・・・この、状況を」
「え?どおして?」
「・・・・・・・ボク、入浴中なんだけど?」
「あ!ごめんなさいっ!!ジョーまでオイルまみれになっちゃったわね・・・」
「いや、それはいいんだけどさ」
「?」




もしかしたら人生最大のピンチなのかもしれない。

---人間、本気で追いつめられると妙に落ち着いているもんなんだね・・・。


「ねえ、お洋服脱いだ方がいいかしら?」
「・・・・・・・・・・・ふ・・・・・脱がないほうがいいよ」
「あら、そお?」
「髪のオイルが取れるまで、そのままでいようね」


湯船に投げこまれたフランソワーズと一緒に、オイルにまみれた湯に浸り、(受け止めた状態のまま)身動きが取れないジョーは、この状況をごく普通の”ミッション”として捕らえ、009の補助脳がフル稼働中であった。

引き攣り始めた微笑みをたたえながら、ジョーは視線をフランソワーズの化学合成油にまみれた髪にだけ集中することで理性を保ち、これは猫っ、これは人語を話す猫っ!と、叫ぶこころは限界が近い。


そんなジョーに間もなく救いの手が差し伸べられようとしているが、その手が必ずしも良識ある救いとは限らない。


---補助脳の役立たずっっ!!





####


ジェットから放り投げられたフランソワーズを抱きとめて、彼女を膝に抱えたまま、どうすることもできないジョー。

もちろん、彼は入浴中であったがために、フランソワーズのように服を着ていない。


「・・・えっと、普通、服とか着て入らないよね?」
「やっぱり脱いだ方がいい?」
「・・・・・・・着ていてください。いや、ボクが・・」
「あら!そんなことを気にしていたの?」


一生懸命に髪を湯船ですすぎながら、フランソワーズはクスクスと笑った。


「そ、そんなことって・・・フラン?」
「見慣れてるから、気にしないで!」
「っはいいいいいい?!」
「ジョーの裸なんて、メンテナンス中のお手伝いで見慣れてるわ!」
「ええええええええええええええええええっっ?!」
「今更なにを驚くの?当たり前じゃない!見慣れてて。変なジョー!ジョーだってアタシの見慣れてるでしょ?」
「見慣れてるわけないだろっ!!!」
「え?そうなの?」
「当たり前だよっっ!」
「あら、アタシはてっきり・・・・、じゃあ、アタシばっかりが見てたのね?」


フランソワーズは少し困ったように、眉根を寄せた。


「み、見てたって、・・・・何をどこまで・・・・フランソワーズ・・・・?」
「ふふ、全部に決まってるわ。だから、気にしないで?」


にっこりと、花が咲く笑顔とは対照的に北極圏の熊が気絶した。


「嘘だろ・・・・」
「やっぱり不公平よね?アタシだけ見たなんて、・・・・ごめんなさい」


ジョーの、009の、すべての思考回路は火花が散る。と、同時に、フランソワーズは着ていたブラウスのボタンを外しにかかったので、慌ててジョーがそれを止めた。


「何やってんだよっ!」
「え?・・・だって、不公平でしょ?だから・・・」
「ッスットオオオオオオップ!!!」


<誰でもいいっ!風呂場に来てくれっっ!!頼むっ!>


009の絶叫が脳波通信で送られて、やっと(不適な笑みを浮かべた)004が救いの手を差し出した、が・・・・。
その手は天からではなく地の底からの手だったと、009は後に語った。






*・・・・なんだこれ?鉢合わせ?・・・鉢合わせなのか?!
 もじもじ9、私ってば本当に好き勝手に・・・9ファンの人に怒られませんかねえ・・・・。
 いや、私9ラブですけどね!
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