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フォーマルハウト


アポロンの翼が放つ光を集めた糸は、きらり、きらりとハチミツのように甘やかに、揺れて、靡いて、オレの胸をくすぐる薫りは言葉にできないほどの酔いをもたらす。

寒水石のごとくつるりとした肌は、神が奇跡と言う言葉を作り出した瞬間に生まれただろう、造形を象る。
広く愛らしい額に天上の神々は祝福の口づけを贈り、つん。と、すました鼻筋に、ゼウスは微笑みを絶やすことはないだろう。
すり寄せたくなるほどに、無邪気な頬はナルシスがうっとりと手を伸ばすし、なだらかに顎のラインを撫でるだろう。

ふっくらとした形良いくちびるの愛しさは、プシュケがエロスを魅了したくちびるよりも紅く熟れて、朝露を蓄える薔薇の花びらよりも、艶やかに潤う。

こぼれ落ちそうなほどに大きな瞳は、ポセイドンが深海から生み出した碧の宝石。
名もないそれは、生命の碧。を、縁取る長く艶ある睫は歴史あるベネティアン・レースに使用された糸でも再現できない。

すらりとした肢体は、踊りの芸術バレエで鍛えられたもの。

ユリのように伸びる腕。
バレリーナなら喉から手が出るほど欲しがると言う、膝下が長い、弓のような足。

くびれたウェストは、コルセットをつけた時代の少女たちの羨望の的になっただろう細さ。
全体的に華奢な印象を与える躯つきだけれど、女性であることを感じさせる、豊かなふくらみは、あどけなさを残す表情と不釣り合いに感じた。










小鳥のように、小首をかしげて。
またたかせた瞼を追いかける長い睫が光を弾く。



「大地さん!」






眩しい戸惑いは一瞬にして、それが恋だと知った。
感覚を無くす痺れた痛みは永遠に、それが叶うことがないと教えた。


興奮に近い緊張。
緊張に似た興奮。

彼女が訪れる日を、指折り数え。
彼女の微笑みを、目蓋に焼き付けて。


彼女を思い出すたびに、雲にでも乗って、綺羅めく彼女の馨りと旅に出て行ってしまいそうになるほど浮かれてしまう。


恋をした。
オレは恋をした。








季節に咲く花のように、出会いの季節に恋の花を咲かせた。
その季節は・・・現実と同じように過ぎ去って、オレの恋は散っていった。



いつ、どうやって得た言葉なのか。
よくは覚えていない。

感動。とは、こころを”瑕つける”こと。




こころに瑕をつけることで、痛む。


その痛みに涙する。
その瑕は癒えても、その傷の”痛み”の記憶は永遠に。

喜びも、悲しみも、幸せも、淋しさも、全部同じ”瑕”で、その瑕を”どのようにつけたか”が、重要らしい。


瑕つけられたその痕に名前をつけよう。

オレの瑕はフランソワーズ。




永遠の恋がここにある。
この瑕とその名とともに。












「・・・・」


陽射しの強さ衰えて、柔らかさ増した陽の光が、色づいた葉がこすれ合う音の隙間を縫って、溢れ落ちた。
重なり合う影に、溢れ落ちた光は戯れて、冷たさを増した風が長い前髪を揺らした。

ジョーは手に持っていた、手のひらサイズの手帳をぱたり。と、閉じた。
ジーンズのポケットにしまっていた携帯電話を手に取ると、ある知人に電話をかけた。


「あ、グレート。ごめん、今いいかな?・・・・・いや、ちょっと見て欲しいものが、きっとグレートとすごく気にいると・・・なんていうか、感覚的な・・問題だと思うんだけど、今日、張々湖飯店は?・・・・ああ、そうなんだ、じゃ、邸で。うん、・・・・今?オレ?・・・ええっと」


ジョーは、手帳を開いた。
そして、目にとまった一節を読んだ。


「細身で華奢な躰、すらりと伸びた手足に、砂浜に打ち上げられた貝のように輝く白い肌。小さな顔に整った鼻と、サクランボのような艶やかな唇。長く クルリ とカールした睫に縁取られた大きなエメラルドグリーンのこぼれ落ちそうな大きな瞳は、光の加減によっては深い碧色に見えるときもある、トルマリンのような色彩。絹糸のような光り輝く柔らかな亜麻色の髪はゆったりと、肩にそっと寄り添うように、歩くたびに ゆらり と靡く。人を待ってるんだけど、ね・・・・」
『フランソワーズか!』
「・・・わかるんだ?」
『ジョー、それお前が考えたのか!?』
「いや・・・まあ、見せたいものの中の、ひとつ?」


手帳を閉じたジョーは、その手にこの手帳の主が用意した珈琲を飲んだ。


「・・・・・もらったんだよ・・・これ書いた人のお兄さんに・・・。本人に返した方がいいと思ったんだけど・・・お兄さん曰く、ちゃんとパソコンに清書したのを本人は持ってるから、心配ないって、・・・・うん。3冊あるウチの1冊らしい、よ・・・グレート好みだろ?」


珈琲を慌ててテーブルの上に置いて、少し腰を浮かせて手帳をジーンズの尻ポケットに突っ込んだ。


「フランソワーズが来たから、また後で・・・」


携帯電話を切り、それをテーブルの上に置きながら立ち上がり、微笑んだ。







ハチミツ色の髪が弾く光が彼女を包み込む。
あいらしく愛しい声が、心地よく自分の名前を音にする。


「ジョー!!」


腕に閉じ込める細く華奢な躯に、背にまわした手のひらで、感じる体温。
エロスさえも魅了する形良いふっくらとしたくちびるの色は熟れたサクランボ・・・・らしい。

くくく、と笑い、ジョーはフランソワーズの頬に自分の頬をすり寄せて囁いた。


「俺は一生言えないし、考えつない、よ・・・ごめんな?」
「?」
「・・・でも」
「ジョー?」


ジョーはフランソワーズの額にキスを1つ贈った。


「言葉じゃなく、俺は・・・キミを・・・・」



この躯で奏でる。
キミをこのくちびるで、指で、腕で、・・・全てを捧げて演奏するのは、俺だけだろ?


「じ。、」


重ねられたサクランボ色は、ついばむように熱い吐息を吸い込まれた。
首を傾けて、紅に埋め込まれた白をなぞり、絡めてくる熱は大胆に演奏準備に入ろうとする。


”・・・・ケーキ、持ち帰りでいい?”


脳波通信を通して伝える。
言葉を音にする口は今、別の仕事で忙しいために。





”ど、どうしたの・・・?”
”どうも、しない・・・よ”



続けられる口づけは、注目を浴びている。
フランソワーズは、息継ぎの間を上手く利用して、ジョーのくちびるから逃れる。

瞼をひらいて、フランソワーズは驚きと愛おしさにジョーを見つめた。



「どうして、泣いてるの?」
「・・・・・ん・・」
「何が哀しいの?」
「・・・・・n・・」


褐色の瞳を滲ませて。
震えるくちびる噛み締めて。

隠れている表情を確かめるように、そっと長い前髪をフランソワーズははらう。
伝う雫は幾筋もジョーの頬に線をひき、秋色の光に染まりながら、フランソワーズの瞳に映し出された。



「綺麗・・・」


嬉しそうにフランソワーズは呟くと、腕を伸ばしてジョーの首に絡まり、背伸びをして、くちびるをよせ雫を味わう。


「・・・・ねえ、どうしたの?・・何があなたを哀しませるの?」




オレは恋をした。



「可愛い人・・・ジョー・・ああ、もう・・・」




季節に咲く花のように、出会いの季節に恋の花を咲かせた。
その季節は・・・現実と同じように過ぎ去って、オレの恋は散っていった。




「泣きたいのね?」






いつ、どうやって得た言葉なのか。
よくは覚えていない。

感動。とは、こころを”瑕つける”こと。





「愛してるわ、ジョー・・・、愛してるわ」






こころに瑕をつけることで、痛む。





「ジョー・・・、好きよ」






その痛みに涙する。
その瑕は癒えても、その傷の”痛み”の記憶は永遠に。

喜びも、悲しみも、幸せも、淋しさも、全部同じ”瑕”で、その瑕を”どのようにつけたか”が、重要らしい。





「好き、愛してるわ、私はあなただけを愛してるわ」






瑕つけられたその痕に名前をつけよう。

オレの瑕はフランソワーズ。






「フランソワーズ・・・・愛してる、よ」








永遠の恋がここにある。
この瑕とその名とともに。





「俺を、俺だけを、愛して、キミが俺から離れたとき、この世は終わる、よ」
「ジョー・・・」
「本気で壊すから、覚えておいて、世界はキミの手の中だよ」
「・・・j・・?」


フランソワーズは腕を弛めてそっと振り返った。
ジョーの視線がちらり。と、放った先に、いた人。


「・・・・見捨てないで」
「!?」


強気の言葉に、弱気な言葉。
世界を壊すと脅しておきながら、すがるように、見捨てないで呟いた。

音もなくしゃくりあげる、肩に、フランソワーズは弛めていた腕に渾身の力でジョーを抱きしめた。
ジョーは甘えるように、花の薫り舞う亜麻色の髪に涙に濡れた顔を埋める。


「・・・フランソワーズ・・・・」
「秋は、夜が長くて美しい季節なの・・・・」
「・・・・・・・」
「愛して、ジョー・・・あなたの涙が枯れるまで・・・・あなただけの私であることを感じて」


yesの意味でジョーはフランソワーズの頬に唇をよせつつ、ジーンズに閉まっていた手帳を取り出すと、フランソワーズの背後で最低レベルに落とした加速で、手帳を燃やした。

一瞬で、灰になることもなく、この世から消えた言葉と彼女への想いは紅葉する葉よりも鮮やかな色を放った。


「・・・帰る、よ」


亜麻色の髪に埋めていた顔をあげて、ジョーはフランソワーズの瞳を覗き込む。


「壊れないで、ね」


不安げにまたたく褐色の瞳。


「壊さない程度に、愛して?」
「・・・・保証できない、な」


かすかに口元で笑ったジョーは、フランソワーズを抱きしめていた腕を弛めると、彼女もそれにならう。
テーブルの上に置かれた携帯電話を拾い上げ、代わりに珈琲代を置いた。


じっとジョーの動きを見ていたフランソワーズは、溜め息をひとつ。


「・・・・ケーキは?」
「なし」


またひとつ、フランソワーズは溜め息をついた。






end.










・あとがき・

気温もおちていき、季節の代わり目。
秋は何気にしっとりと物悲しさに愁える(愁傷、哀愁、悲愁)季節。ってことで!

大地くん出てきません・・(汗)
でも、彼の想いに9かなりやられてますね。

えっと、大地くんはお兄さんに手帳を取り上げられたのは、事実です。
いい加減、諦めて次にいけ!と、言う意味で、兄のムチ(笑)

取られてもへっちゃらだも~ん!ってパソコンに清書してましたが、まさか、その手帳がジョーの手に!とは、知りません。
ジョーも言う気はありません。



7は・・・?
えっと、7のお誕生日に続きます(→逃げ!)
いつだろう・・・(汗)





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