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Day by Day・7
(7)

ジョーとさくらは、ブッフェタイプの量り売りの店で昼食を買って戻ってきた。2人が席についた時にはすでにジェットは食べ終わり、満足げにコーラを飲んでいた。

食後、ピュンマは見たいところがあると言い、別行動をすると言い出した。誰もそれを嫌がりはしない。車を停めている駐車場に3時に集合と言うことで、話がついた。

さくらは熱帯魚などの小さい魚たちが見たいという。
彼女は、ちらり とフランソワーズに視線を送る、多分ジョーと2人になりたいのだろう。ジェットは2人について行くかもしれないから、彼を引き留めるのが、さくらを応援すると言う形になる、と頭の中で機械的に考えたフランソワーズ。

「私は、せっかくだからみんなにお土産を買いに行くわ、ジェットはどうするの? 良かったら付き合ってよ」
「・・・・おお、いいぜ」

さくらはフランソワーズの言葉を聞くとほぼ同時に、ジョーの腕に自分の腕を絡めて、彼を引っ張った。

「じゃあ、ジョーは私につきあってね!!」
「ああ・・・」

お土産用のショップは、エントランスの右側に大きく場所を取っていた。
店の中でフランソワーズは、みんなへのお土産にいろんな海の生き物を象ったクッキーの詰め合わせを手に取った。とても凝った作りで、日本のこういう細やさがフランソワーズは好きだった。
博士には、何も飾り気のない研究室に飾ってもらおうと、綺麗な海の写真を数枚。そしてイワンには、イルカの刺繍が施されたベビー用タオルケットにした。ずっとイワン用に軽くて丈夫なものを探していたのだが、季節的な所為か、フランソワーズが欲しいと思っていた物がなかなか見つけられなかったのだ。今、手に持っているそれは、肌触りも良くフランソワーズが探していた理想のものとピッタリだった。

「イワンにか?」
「そう!ずうっと探していたのよ、素敵だわ、ここで見つけられるなんて!!ほら、イルカの刺繍が可愛いでしょ?ふふふ、ドルフィン号用にも、色違いを買っておこうと思うの」
「ふ~ん」
「ジェットは、何か買うの?」
「オレか?・・・別にここじゃあ欲しいもんはねぇかな~、そういうおめぇは?」
「私?」
「自分のもんは買わないのかよ?」
「・・・私も特に、ないかな・・・」

ジェットはフランソワーズの顔を見つめる。
いつもと違って、彼は戯ける様子もなく・・・その態度は、フランソワーズがよく知るジェットだと思った。彼との付き合いは長い。普段の彼は何かとてもはしゃいでいる感じがするが、本来の彼はとても落ち着いた・・・アルベルトと性格的によく似た部分があることを、フランソワーズは知っている。そんなことを言ったら、アルベルトは怒るかもしれないが。

「なんであんなコト言ったんだ?」
「なあに?」
「なんで、オレなんだよ?ジョーに付き合ってもらえば良かったじゃねぇか」
「・・・あら、あなたは私と一緒が嫌なのね?」
「そうじゃねーよ」
「じゃ、いいじゃない」
「本当にいいのかよ」
「ええ、いいのよ」
「お前、バカだろ?」
「まあ!失礼ね!」
「ジョーも大概バカだけど、お前も相当だな」
「なによ、それ!失礼ね、あなたよりはバカじゃないわよ!」
「い~や、お前はオレより確実にバカだよ」
「もう!」

フランソワーズはこれ以上話しても意味がない、とばかりに手に持った品と一緒にレジへと向かう。精算している時に、ショップの入り口から見慣れた栗色の髪の青年が、黒髪の少女と一緒に店に入ってくるのが見えた。フランソワーズは思わず、2人を意識的に見ないようにした。
それから数秒ほど間を開けて、ジェットがジョーを呼ぶ声が聞こえた。

「何を買ったの?」

ジョーとさくらに合流したジェットとフランソワーズ。
ジョーはフランソワーズの手にある水族館のロゴが入った袋を見て訊ねた。

「ええ、みんなへのお土産と、博士に・・・。イワンにね、ずっと探していた素敵なものを見つけたのよ」
「良かったね。それで、キミの分は?」
「?」
「キミは何も要らないの?」
「ジェットと同じことを訊くのね?」

「ジョー、ちょっと見て~!」

少し離れたところから、さくらがジョーを呼ぶ。
ジョーは振り返り、そのままさくらの方へ歩き出す。

その後ろ姿を見ながら、ふいに、赤いあの服を着ているジョーの背中と重なった。
ジョーであってジョーでない、009の後ろ姿と。

「フランソワーズ、もしかしたらピュンマがもう待ってるかもしれねぇから、先に行ってようぜ」

ジェットはジョーから預かった車の鍵を見せる。
さくらは買い物をするつもりらしく、ジェットの言葉に頷き2人は駐車場へと向かった。
駐車場にピュンマの姿はなかったが、5分もしないうちに、彼は小走りで駆け寄ってきた。

「ごめん!待たせたかな?」
「いんや、俺たちも来たトコだ、ジョーとさくらはショップで買い物中」
「そうなんだ」

15分ほど待っただろうか。
ジョーとさくらが駐車場に戻ってきたとき、さくらはとても大きなシャチの縫いぐるみを両手に抱えていた。

「可愛いでしょ!!」

縫いぐるみをぎゅううっと抱きしめて笑う。


ずうっと、ずうっと遠い昔にフランソワーズは・・・さくらのように笑ったことがあるのを思い出した。


####

映画館は駅ビルの最上階にあった。
”シアター10”と言う単純なネーミングの通りに、10のシアターがあり、様々な映画を上映している。駅ビル地下の駐車場に車を停めたとき、開場まで20分ほど時間に余裕があった。「さすがジョーだね」と、ピュンマが笑った。
予定していた時間よりも遅く水族館を後にしたのだが、予定通りに駅ビルに到着した。

「褒めてくれても、何も出ないよ」

少し照れたように、ピュンマに答える。

「ええ?褒め損なの、ボク?」

笑ったまま少し困ったような顔をする。

####

映画は前評判も良く、その通りに面白かった。
ジェットは映画にとても満足していたし、ピュンマも興奮してストーリーについて語り、さくらは、好きだった映画の俳優が出ていたと言ったが、どうしてもその俳優の名前が出てこないらしく、「思い出せそうなのに思い出せなくって気持ち悪い!」っと叫ぶ。ジョーは、エレベーターに乗り込む前に、フランソワーズが見入っていたポスターを少し離れたところから見ていた。

フランソワーズは、うっとりと・・・輝く宝石のような瞳を潤ませて、夢見る少女のようにポスターを見入っていたかと思うと、その下に書かれていた文字か写真かに、大きな目をさらに大きく見開いて・・・時を止めた。


”パリ・○○○バレエ団海外公演・眠りの森の美女”
”天才・Choreography、コレオグラフィー/アラン・モルディエ 来日”

大きく目立つように書かれた文字と写真。


車に乗り込んだ時の彼女の顔色は、夜のライトのせいではなく異様に白かった。


####

さくらをコズミ邸まで送っていき、ギルモア邸へ戻る車内。
ジェットとピュンマは後部座席で眠り込んでいた。
さくらが居なくなった後、ジェットが「狭いから前に乗れ!」っとフランソワーズを助手席に押し込んだ。

こころなしか、いつもよりゆっくりと走っているように感じる。

バックミラーでジョーは後部座席で熟睡する2人を確認して、その目線をフランソワーズへ ちらり と向けた。

「気分・・・が悪い?」
「ううん、大丈夫よ、ちょっと・・・疲れたのかもしれないわ」
「そう。寝ていてもいいよ?」

ジョーの言葉に、首を左右にふる。

「・・・・ジョー?」
「なに?」
「ありがとう」
「なにが?」
「お友達」
「・・・うん」

車が走り去る音。
エンジン音。
風をきる音。

信号が赤で止まると、微かに聞こえる街のざわめき。

穏やかな寝息。

「フランソワーズは・・・」

アクセルを踏み、車を走らせる。
右折するために、ハンドルをきる。

「フランソワーズ、キミは・・・」
「私たちは・・・何処へ向かっているのかしら?」



「・・・明日だよ」




「そこは、戦いのある明日?それとも何もない平和な明日?」

「キミがいる明日」

「・・・私がいる明日?」

「うん」

「ジョーは・・・何処へ行くのかしら?みんなは・・・何処へ行くの?」

「何処にも行かないと思う」
「違う、そう言う意味じゃなくって・・・」
「同じだよ。ずっと一緒に居る。何処に行っても、同じ場所に還ってくる」

「・・・サイボーグだから?」

夜の海が見えはじめた。
なだらかなカーブが続く。
いつもより丁寧にそのカーブに沿って車を走らせる。


「人で在り続ける限り、仲間である限り、フランソワーズが・・・キミが生きるている明日が続いていく限り」


「・・・ジョー・・・私、怖いわ。この穏やかな、平和な日々が怖いの。あんなに求めていたのに、焦がれいたのに・・・。可笑しいでしょ?ずっと、ずうっと戻りたいと願っていた生活が今、あるのに。それが怖いの・・・。求めてしまうの、003に戻りたいって思ってしまうの。戦いの中に身を置いたほうが楽だったって・・・思うの」

「可笑しくない・・・。俺も怖かったから。自分が島村ジョーなのか、009なのか、わからなくなる時があったから。自分が何処にいるのか解らなかった。でも・・・」

「でも・・・?」

「つまんないことだって、わかったから。そう言うことを考えることが」

ゆっくりとアクセルから足を離し、ブレーキを踏む。
車が止まる。
窓の向こうから、波の音が聞こえる。

「つまらない・・・ことかしら」

ジョーは、ゆっくりとフランソワーズの方を向いた。

「俺は生きてるから、今を。生きてるんだよ、フランソワーズ。俺たちは、平和な日常でも、戦いの中でも・・・生きてるんだ、明日を生きるために。だから、何も変わらない。同じだよ」

「・・・・わからないわ」

「うん。・・・でもきっと、わかるよ」

「・・・・怖くないって思えるかしら?」

「怖くないって思えばいい」

「そんなの、無理よ」

「無理じゃない」

「無理よ!」

「どうして?」

「だって、怖いもの!」

「平和な日々が消えて、また戦いの日が続くことが?戦いの日々が訪れずに、平和な日常が続くこと?・・・自分がどこに居るのかわからない?」

「そうよ!」

「でも、キミはキミだから。何も変わらないし、同じなんだ」

「・・・ジョー、私はあなたみたいに、強くない」


ジョーはフランソワーズの言葉に驚く。


「なにを言ってるんだい、キミは・・・俺より強いくせに」


「そんな・・・」
「たぶん、みんなの中で一番キミが強いと思う」


ジョーはフランソワーズが今までみたことがないほどに、温かく穏やかに微笑んだ。


「キミが一番強いよ」


####

車はギルモア邸に着いていた。
ガレージへ車を戻す前に、ピュンマとジェットを起こし、フランソワーズと2人を先に邸へ帰らせれた。ガレージに車を戻し、エンジンを切ってドアを開けると、邸に戻ったはずのジェットが立っていた。

「ったく、色気のね~話しばっかしやがって、面白くねぇぞ。せっかく寝ててやったのによ」
「ああ、やっぱり”フリ”だったんだ」
「気づいてたのかよ?」
「・・・当然」

ジェットは手に持っていた、缶ビールをジョーに差し出す。
ジョーはそれを受け取り、車のドアを閉めてプルトップを開ける。
ジェットはガレージから出て、玄関先の柵にもたれかかり、ジョーは玄関脇に置きっ放っなしになっている錆びたスチールイスに腰掛けた。

「まあ、でも。あいつがあんなコトで悩んでるとはな~・・・あいつに相応しい日常が、望んでいた生活が手には入って・・・・喜んでんだって、幸せだろうって、オレは思っていたのによ。一番にそれを味わって欲しかったやつが、一番・・・それを拒んでいたってか?」
「拒んでいたんじゃなく、実際に手に入れた平和だからそれを失うことが怖くて、臆病になってるだけ、さ。手にしたからこそ、怖いんだ・・・」
「はっ!オレはそんなに繊細にできてねぇんで、わかんね~よ。そんなの」
「ジェットは、それでいいんだ。ジェットはジェットなりにもう、解決してるだろ?」

ジョーの言葉を聞きながら、缶ビールをぐいっと半分まで一気に飲み込む。

「で。お前はさ、どう思ってんだよ?」
「何を?」
「すっとぼけんなよ、あいつだよ、あいつ!」
「あいつって誰さ?」
「だ~か~ら~!!」

「俺ももう疲れたから、寝る」

「おい!待てよ!!逃げんなよっっっ!」
「おやすみ」

「おい、待ちやがれ!ジョー!!!!!!」


ばたん っと玄関のドアが閉まる。



「くっそ!」

ジェットは残りのビールを飲み干すと、力任せにそれを握りつぶし、思い切り海に向かって投げた。




ーーー私たちは・・・何処へ向かっているのかしら?

ーーー・・・明日だよ

ーーーそこは、戦いのある明日?それとも何もない平和な明日?


ーーー  キ ミ が い る 明 日  ーーー


「な~にが、”キミがいる明日”だよ!っなに好きなら、とっととくっつきやがれ!・・・あいつの不安や恐怖なんてあっという間に吹き飛ぶじまうってぇのによ!」





===== へ 続 く


下のnextで8へすすみます。
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・・・動いた?
少し前進?
あ~!さっさとラブラブさせたい(笑)
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