RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
リクエスト
「ダメだ、よ」
「いや」
「だから、ダメ」
「いやよ!」
「いいから、フランソワーズ・・・・言う事訊け、よ」
「い。や。よ。」


新緑眩しく、木漏れ日が降りそそぐ午後。
ここ、"Audrey”のオープン・スペースのテーブル席で、言い合いするカップルは、同じみの二人。
いつもは店内のテーブル席につく2人だけれど、今日は珍しく外のテーブルについた。

風薫る季節に相応しい、陽の光に輝くフランソワーズさんの髪は天使の輪を作り、ときおり戯れに通る5月の風が、彼女のとろけそうに甘い蜂蜜色の髪をくすぐる。

「・・・・なんでも言う事、訊くんだろ?」
「でも!そんなのは却下!」

寒水石のようにつるりとした、白い頬をぷうっと膨らませて、長いまつげに縁取られたブルー・トルマリンの瞳が少しばかり潤んでいる。

注文された、フランソワーズさんお気に入りのアップルティーと、新作”憧れのあなた色”(レモンの蜂蜜付けタルト)。そして、ジョーの珈琲をトレーに乗せて、珍しくケンカ(?)する、2人のテーブルへと運んだ。


「おまちどうさまっ」
「・・・・・フランソワーズ。絶対だ、よ」
「いや!」


いったい、何を揉めているんだ?





オレは、テーブルに注文の品を乗せながら、2人の顔を交互に見る。
拗ねるように、愛らしく形よい唇を尖らせながら、置かれたケーキに乱暴にフォークを突き刺したフランソワーズさん。そして、それを面白そうに見つめるジョー。

栗色の髪が陽の光に透けて、金茶色にかわる。
頬杖をついて、フランソワーズさんの顔を覗き込むようにする仕草に、琥珀色の瞳が悪戯に光る。

フランソワーズさんはケーキに集中する様子で、必死にジョーの視線から逃げている。


「ジョー、いくらお前でもフランソワーズさんがいやがる事なんてすんなよっ」


そんなのっオレが許さねぇぞ!



「・・・・言い出したのは、彼女」



オレから受け取った珈琲をひとくち飲んだ。


「言ってないわっ」
「・・・・・言った。リクエストになんでも答える、だろ?」
「・・・・」

フランソワーズさんは大きな固まりをパクリ。と口に放り込んで、話す事を拒否する。
口いっぱいに頬張った、ほっぺたが可愛いっす!


「リクエスト?」
「・・・・誕生日、の」
「え?・・・・ジョー、誕生日なのか?」
「・・・・5月16日」
「へえ、・・・・あ、それで”リクエスト”?」
「・・・・・プレゼント、何がいいか決められないから、一つだけなんでも言う事をきく、って」


フランソワーズさんは、オレとジョーの会話を聴いてません!とばかりに、アップルティーを こくん。と飲んだ。閉じられた目蓋に、その表情がお人形のように可愛いっす!


「・・・・で、何をお前はリクエストしたんだよ?」
「?!」


オレの質問に、動揺したフランソワーズさんは手に持っていたティーカップを かちゃんっ と、音を立ててテーブルに落とした。フランソワーズさんはジョーを睨むが、ジョーは、くくくっと喉を鳴らすように笑い、フランソワーズさんを愛しげに見つめる。

「・・・・16日に、fr・・」
「だめええええっっ!! 言っちゃダメよ!」

フランソワーズさんの絶叫が行き交う人々の、店のテーブルにつく客の注目を集めた。のは、ほんの一瞬。立ち上がらんばかりに、身を乗り出したフランソワーズさん。襟ぐりの広いカットソーが、重力に負けて・・・ああ!!!目がっっ見てはいけないっ!


慌てるフランソワーズさんの鼻先をジョーはつんっと人差し指で触れた。
それは、「落ち着け、よ」と言っている風に見える。


「・・・・言わない、よ」

ゆったりと、言葉を紡ぐ。
今日はのんびりと余裕だな、ジョー。・・・誕生日はお前でも嬉しいのか?


「・・・・・」
「・・・・・・・言わないかわりに、だ。訊け、よ」

ジョーの言葉使いは命令口調。
けれどその声は優しい。ジョーの容姿に似合いすぎるほどの、低音がほどよく響くテノールの声に甘いイントネーションが含まれて、オレの顔まで熱くなる・・・・。


ジョー、頼むよ。オレ、男なんだよ・・・・




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかったわ


風に揺れて触れ合う葉の囁きのような、か細い声でジョーのリクエストを承諾したフランソワーズさん。ジョーはその言葉を聞き逃さずに、にやり。と笑った。


・・・・本当に、嬉しそうっていうか、楽しそうだな、お前・・・










「で、何をリクエストしたんだよ?」
「・・・・言えない、よ。言ったらフランソワーズが聞き入れない、だろ?」


2人が店を去る間際、フランソワーズさんが義姉さんと話し込んでいる隙にオレはジョーに近づいて訪ねた。


「いいだろっ! 黙っておくから」
「・・・・・すぐバレるから」
「ここからじゃ、聴こえないって!」
「・・・・・・・・・・・いや、絶対に聴こえる」


ジョーは頑にフランソワーズさんに何をお願いしたのかを教えない。
オレは気になってx100000000000 仕方がないんだ!



「・・・・じゃ、ヒント」
「!」
「・・・・・・・・・・フランソワーズしかできない。フランソワーズしかだめ。フランソワーズじゃないと意味がない。フランソワーズだから」
「ジョー・・・・・それ、ヒントじゃねえ」




「・・・・十分に、ヒントだ、よ。」







フランソワーズだけ。
フランソワーズだから。



その日は、そばに居てほしい。
できれば・・・・









「ジョー!! 言ったら無効よ!」




だからっっなんなんっすかあああああ!













end.









・あとがき・

・・・・勢いで書くと、こうなります。
ええ、いったい、何をお願いしたんでしょうね?
web拍手 by FC2
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。