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Day by Day・8
(8)

明日の朝はいつもより早く起きなければならない。
宵っぱりな上に、朝が弱いジョーは、早めにシャワーを浴びて部屋に戻ろうとしていた。
リビングで1人酒を楽しんでいた、グレートにふいに呼び止められる。

「もう寝るのか?」
「早いからね、明日」
「ああ、また”あの娘”と出かけるって言ってたな、買い物だろ?」
「アルベルトとピュンマもね」
「フランソワーズも一緒か?」
「そう」
「・・・ジョー、お前に頼みっていうか、まあこれは、全員の願いであるからして。なんていうかな、役としてはお前が一番似合ってるし、姫も素直になるだろうからして・・・ちょっと、ここ、座れや、ジョー」


####

ジョーはいつもの車に、アルベルト、ピュンマ、フランソワーズを乗せてコズミ邸へ向かった。コズミ邸で待っていたのは、さくら。ピュンマは博士に頼まれた書籍類を両手一杯にもって、さくらと入れ替わる。
4人を乗せた車は、雑誌で取り上げられる、今一番人気のショッピング・モールの駐車場へと滑り込む。ここにある「店」が今日の目的地だった。

日本で唯一支店を出す「ローレライ」と言うセレクトショップは、遠く海外に住むさくらの母親が指定した店だった。彼女の家はどうやらそれなりに「裕福」らしく、独り暮らしではないにしろ、自分の手をはじめて離れて暮らす娘を心配して、その店で服を購入しろと言われた、と言う。
来週、さくらの通う予定の、日本でも指折りのお嬢様大学が催す、9月入学の編入生・帰国子女のための交流会を兼ねたパーティが開かれるという。
さくらの母親が、娘が恥をかかずにすむようにと、自分が指定した店で、その日に着るドレスを購入するように、と強く言ってきたのだ。

ショッピング・モールは郊外にあり、流石に車がないと不便な場所であったため、コズミ博士を通して「お願い」されたのだ。
車が要ると言われれば、同行するのは自然とジョーということになる。その電話を取ったのは偶然にも、留守にしていたギルモアに代わってアルベルトだったことで、なぜか彼も同行することになった。男2人でドレスの買い物に付き合うのは、どうかと思うと言う意見があり、あまり気乗りしないフランソワーズも行くことになった。

ショッピング・モール内でもトップ・フロアにある店舗は、ここまで来るまでにひやかしで観ていた店とは大きく異なった。

店に一歩踏み入れたさくらに、アルベルトと同世代?くらいの品の良い女性が4人のそばにやってきた。

「真鍋さまでございますか?」
「ええ、さくらです」

さくらは臆することなく答えた。その様子を観る限り、慣れているのであろう。

「いらっしゃいませ。さくらさま、お母様より承っております」
「お願いしますね」
「今日の担当の藤川と申します、ヨロシクお願い致します」

女性はにっこりと微笑み、さくらと同行した3人を観た。

「いらっしゃいませ。紳士物も取りそろえておりますので、どうぞ気軽に手に取ってみて下さいね。そちらのお嬢様も、私どもの店はカジュアルなものもございますので、お気に召したものがございましたら、遠慮せずにお試し下さい」

場違いなところに来てしまった・・・と思う3人の緊張を察したのか、優しく話しかける。
「じゃあ、私、ちょっと母が選んだって言うドレスを試着してきます、着てくるから意見を聞かせてね!」

さくらは3人に向かってそう言ったが、視線は常にジョーに向けられていた。
店の中にある試着室へと案内されるさくらを見送って、所在なさげに立ちつくすジョーとアルベルト。フランソワーズは、やはり女の子。店内に並べられている品々を、マネキンが着る美しいワンピースに、いつの間にか吸い寄せられて店の中を歩きまわる。
広すぎる店内にいる客は、平日のためなのか、この店が特別な・・・所為なのか。
試着室に居るさくらを除いて3人のみ。
ふらふらと歩くフランソワーズを目で追いながら、入り口の壁際に立つジョー。そんな彼の隣に突っ立っていたはずのアルベルトは、いつの間にか移動して、店内左奥にある紳士物が置いてある場所にいた。何にたいしても自分流の拘りがあるアルベルトだ。この店の雰囲気にでなく、その質に興味があるのだろう。

ジョーは軽くため息をついて、また視線をフランソワーズに戻す。
彼女は先ほどから、マネキンが着ている薄いサーモンピンクの春物のワンピースを見ている。そうかと思うと、またふらふらと歩き出した・・・・かと思うと、引き寄せられるかのように、また同じマネキンに近づいていく。

彼女はそのワンピースを触りたいのか、手を出そうとするが、一瞬躊躇して・・・すっと両手を後ろにまわし、細く、白い左の手首を右手で握った。

きゅっとフランソワーズの右手に込められただろう力が、ジョーは同じ力で自分のの心臓を握りしめられたような感覚に陥った。

ふと、自分に向けられた視線に気がついた。
50代に手が届きそうな、小柄なショートヘアがよく似合う女性が立っていた。退屈そうに壁際に立っている、ジョーが気になるのだろうか?ジョーは壁から離れ、まっすぐにその女性に向かって歩き出す。
ネームタグに”入江”と書かれてた文字が見えた距離にまで近づくと、ジョーは、女性に話しかけた。



入江は、笑顔でフランソワーズのそばに近づいてきた。

「こちらでよろしいですか?」

ワンピースに見入っていたフランソワーズは、女性が近づいてきたことに全く気がつかなかったのだろう、とても驚いた。

「素敵な色でしょう?先週入荷したばかりの春物ですよ」
「え・・・ええ。とても可愛らしいワンピースですね」

フランソワーズは入江の笑顔につられて、笑顔で答える。

「この色はフランソワーズさまの髪の色にも、瞳の色にもとても映えると思われますよ、ご試着なさいますか?」
「あの・・・!?」

突然、入江の口から自分の名前が出てきたので、彼女はさらに驚いた。
フランソワーズのそのようすを嬉しそうに見ながら、入江は話し続ける。

「全て島村さまよりお話は承っておりますから、ご安心下さい。さあ、お好みのものがございましたら遠慮なくお申し付け下さい!今は春物がメインに商品を出しておりますが、夏物もございますから、ね!」

この小柄な日本人女性の言葉がどこかよその国の言葉に聞こえる。
話しが飲み込めないフランソワーズは、助けを求めるように、店内にいるであろう、ジョーとアルベルトの姿を探した。アルベルトではなく、ジョーは入江から少し離れた場所に立って、フランソワーズを見ていた。
ジョーは動揺の色を表情に出すフランソワーズに気づき、少しだけ恥ずかしそうに、けれどもしっかりとした足取りで彼女のそばまでやってくると、ハッキリと言った。

「僕は・・・こういうのわからないから、入江さんにお願いしたよ」

「え?ジョー??」

「好きなのを選んで。僕がぜんぶ買うから」

ジョーはそういうと、入江に向かって広い店内にある品々を示しながら話しかけた。

「入江さん、あそこの棚にある白の・・・シャツ?と水色のスカート?ひらひらしたのがついてる・・・それと、右側の人形が来てるレースみたいなのと、その隣にある棚の黄緑色のこれに似た感じのを、彼女が見ていたから」

「!?」

入江は満面の笑みでジョーを見た。
そして「少々お待ち下さい」とレジの奥にあるスタッフルームに小走りに向かい、ドアの奥に向かって何事か話している。

入江と共にスタッフルームから出てきた若い女性は、先ほどジョーが入江に話した品々を手際よく集めて、試着室へと運び、フランソワーズが見ていたワンピースも、マネキンの隣にハンガーで掛けられていたサイズが違うものを同じように試着室へと運ぶ。

「ほかにございますか?」

「・・・・」

呆然とジョーの顔を見つめるフランソワーズ。
何か面白いものを見つけたような、悪戯っ子のような笑みを浮かべるジョーは、入江に言う。

「入江さんも彼女に似合うと思う物を選んで下さい。彼女はフランスから服らしい服を何も持ってこなかったので、お願いします」
「はい、かしこまりました。でしたらコーディネートも考えて選ばさせていただいてよろしいでしょうか?」
「・・・いい?フランソワーズ?」

フランソワーズは、ジョーと入江の顔を交互にみる。
ジョーはフランソワーズにかわって、入江に答えた。

「いいみたいですよ、フランソワーズをお願いします」


そんな3人の姿を遠くから、興味深げに眺めているアルベルトがいた。
入江に手を引っ張られて、試着室へ連れて行かれるフランソワーズを見送ったジョーが振り返った先にアルベルトを見つけて、彼に歩み寄った。

ジョーが口を開こうとしたが、一寸早くアルベルトが話し出した。

「これはこれは、王子様。姫のご機嫌はいかがでしたか?」

ジョーをからかうような、グレートの口まねをするアルベルトはよっぽど機嫌がいいようだ。

「やっぱり、見てたんだ?」
「お前にしては、えらく気が利いたことをするじゃないか?」
「・・・そう?」
「誰の入れ知恵だ?」
「グレート・・・こうでもしないと、フランソワーズはずっと冬服のまま春も夏も過ごすだろうって言われた」
「・・・まあ、あのままだったらそうだろうな?」
「今日は、さくらも服を買うための買い物だから、ちょうどいいって、昨日教わった」
「教わった?」
「彼女に有無を言わせずに服を買わせる方法」
「それが、あれか?」
「そう」

ジョーは夕べのことを思い出す。


ーーー・・・ジョー、お前に頼みっていうか、まあこれは、全員の願いであるからして。なんていうかな、役としてはお前が一番似合ってるし、姫も素直になるだろうからして・・・ちょっと、ここ、座れや、ジョー。

グレートは、ぱんぱんっと自分が座るソファの隣を叩いた。
酒は飲んでいるが、いつにもまして真剣な顔で言われたので、ジョーは言われるがままに、席に着いた。

「なに?」
「・・・フランソワーズのことさ」
「フランソワーズ?」
「明日は、さくら・・ちゃんだっけかなあ?その娘の服を選びに、わざわざ今流行の店に行くんだってな?」
「ああ、うん。車がないと不便な郊外にあるんだ」
「うむ・・・でな。お前、フランソワーズの服とか気になったことないか?」
「フランソワーズの?」
「姫は・・・ドルフィン号では気にならなかったかもしれんが、こう・・なあ、平和な生活の中で、あの服の数は・・・少なすぎると思わないか?」
「・・・俺そういうの、わからないから」

グレートは自分の手にあったグラスをテーブルに置いた。

「そうか、まあ、そうかもなあ。でも、やっぱり女の子があれは、可哀相だ・・・ジョー、お前そのさくらちゃんって娘と、何回も会っててどう思った?」
「どうって?」
「・・・較べるって言うのは口が悪いが・・・多分、なあ女の子として、フランソワーズはあまり良い身なりじゃないだろ?もちろん、そんな服なんてもんに左右されないくらいに、姫はどんな宝石にも負けないほどに美しい、どんなに香り豊かに咲き乱れる花々も、フランソワーズのそばに置けば、色あせてしまうくらいに、姫は美少女だがな!・・・でも、それだけじゃあ・・・。せっかくこんなに平和なんだ、姫にだって年相応、と言うか、その、改造される以前のような、女の子が女の子らしい生活を取り戻してやりたいって、な」
「それは、俺らが言うことじゃない。彼女自身がどうしたいかだと思う」
「正論だ」

グレートはグラスを持ち上げ、グラスの中にある液体を飲み干した。

「だがな、ジョー。誰しも一歩踏み出せない時、誰かが背中を押してやることで、前へ踏み出すきっかけになることも事実だ。そういうのも大切だと、思わんか?」
「それが、フランソワーズには必要?」
「きっかけはなんだっていい、ただ男として、何か女性にしてやるんだったら、そして今の姫のためには、この方法が良いんじゃないかと、思ってな。ジョーできるか?」
「・・・それが、フランソワーズのためになるなら」
「あのままだと、姫は、春になろうと、季節が夏になろうとも、セーターを着たまま過ごすことになるぞ?」
「?!」
「なる、ならない、は。ジョー、お前次第だ!」

グレートはジョーに向かってウィンクをし、ジョーのために用意したシナリオを語り始めた。



ジョーは夕べの出来事を包み隠さず全てアルベルトに話した。

「ふん、グレートが考えつきそうなことだが、ジョー、それが正解だ」


####

さくらの母親が用意したドレスは4着あった。
出されたそれらは今のさくらの気分に合う物ではなかったので、今日の担当だと言う藤井に素直にそのことを伝えると、彼女は心得えたもので、さくらからどういう物がいいのか意見を聞き、試着室から出て行った。
さくらは、藤井が見立ててくるであろうドレスがくるまで、ジョーと話していようと、無駄に広い試着用の個室のドアを開けた。

ドアを出てさくらの目に飛び込んできたのは、鏡の前に立つフランソワーズだった。

「とってもお似合いですよ、フランソワーズさま。春物ですが、トルソー部分がベアトップなので、こちらのレースの羽織物や、カーディガン、もしくはショールなどをお使い頂く方が、普段にはよろしいかと思います。こちらの白のジャケットも素敵ですよ。さすがに室内でないと、こう、肩を出してしまうデザインは寒いですから」

さくらは、目の前にいるその女性がフランソワーズだとは、わからなかった。
さくらが知っているフランソワーズは、いつも彼女の年令にしては、地味で保守的な・・・口悪く言えば古めかしい服装で、お洒落することが不得意な印象を持っていたが、初めて一緒にショッピングしたときに彼女がアドヴァイスをしてくれたセンスの良さは、さくらも舌をを巻いたのを覚えている。
今回、できればジョーと2人でここを訪れたかったが、アルベルトは予定外だったが、フランソワーズの同行を良く思ったのは、純粋にドレスを決めるときに相談に乗って欲しかったからだ。

さくらは彼女が一度も・・・いや。以前水族館に行ったときに買った土産物以外の買い物をしているところみたことがなかった。

今、目の前にいる艶やかで美しい女性が、あのフランソワーズだとは信じられなかった。フランソワーズは、個室から出てきたさくらに気づき、恥ずかしそうに微笑んだ。

「お母様がお選びになったという、ドレスはどうなさったの?」

その声は、さくらの知るフランソワーズの声だった。
さくらは今あらためて、服によって女性がこれほどまでに変わるのかと思い知った。
たしかに、フランソワーズは目を見張るほどの美しい女性だった。けれども、それだけだと思っていたのだ。綺麗な人。綺麗な髪。綺麗な目。綺麗な肌。綺麗な躯。
さくらが表現するフランソワーズはただの「綺麗」という音を使う女性だった。

「あの、フランソワーズさん?」
「?ええ、さくらさん・・・どうなさったの?お母様がお選びになったドレスはお気に召さなかったのかしら?」

フランソワーズが少し困ったように首を少し傾けて、小鳥のような愛らしい仕草をみせた。

「あ・・・ええ、イメージと違うから、今ね・・た、担当の人に新しくいくつか持ってきてもらって、そ、それら、と一緒に考えようと思ってるの」

さくらは明らかにワンピースを着たフランソワーズに動揺していた。
フランソワーズの着ているものは、少し大胆に肩を出すタイプなだけで、とてもシンプルなもの。さくらはそんなワンピースを何枚も持っていたし、飽きてもいた。

フランソワーズはきちんと、そのワンピースをを着こなしていた。
まるで、彼女のために作られたオートクチュールのように。

入江はそんなフランソワーズの姿に、自分の娘のように視線でフランソワーズを見ている。
「このワンピースが一番お似合い!せっかくですから、島村さまにも見て頂かないと、せっかく買って頂くんですもの、ここでフランソワーズさまだけが楽しんでいては島村さまに失礼ですよ」

さくらは、店員の言う「島村」と言う名字に聞き覚えがなかった。

「ね、ジョーはまだ店の中にいる?」
「ええ、いると思うわ」
「わ、私、ドレスがそろうまで、彼と話してる」

入江は2人の会話を聴いて、にっこりと微笑む。

「フランソワーズさまもご一緒に、さあ」

入江は恥ずかしがるフランソワーズをさくらと一緒に強引に試着室から連れ出した。



ジョーは息をのむ。

恥ずかしそうに、その頬を染めて・・・さくらと入江に隠れるように現れたフランソワーズは、明るい照明にきらきらと輝く細絹のような美しい亜麻色の髪をゆったりと揺らし、剥き出しになった華奢な肩、その白い肌は真っ新な雪のように輝き、眩しい。
ほっそりとした肢体は春色に相応しい薄いコーラルピンク色のソリッドタイプののワンピースに包まれている。
線の細い躯には不似合いな豊かな胸を、柔らかなシフォンが幾重にも重ねられたデザインが包み、なだらかにウェスト部分まで繋がっている。ゆったりとしたデザインだが、生地がとても柔らかくピッタリとフランソワーズの肢体に合っている。ロウ・ウェストのカッティングにもかかわらず、体の凹凸が同性から見て羨ましいほどにはっきりしていて、バランスがとれていることがわかる。
フレアに広がるようにデザインされたスカート部分だが、細く長い足に沿うようにフランソワーズの膝頭上で戯れるが、フランソワーズが一歩踏み出すごとに、揺れる裾から露わになる、彼女が滅多に見せることがない太ももが、生々しくジョーの眼に飛び込んでくる。

「そんな隠れるようにしてらしたら、島村さまがちゃんと見ることができませんよ、さあ、フランソワーズさま」

入江はフランソワーズの背中を押して、ぐいっと彼女をジョーの目の前に立たせた。
じょーの隣に立ち、試着室から出てきたフランソワーズに、アルベルトが満足そうに微笑んだかと思うと、その肘でどんっっとジョーの脇腹叩く。

「よく似合ってるじゃないか、フランソワーズ。お前のために作ったみたいだな、それは・・・ちょっとまわってみせろ」

入江はアルベルトの言葉に、満足そうに頷いた。

アルベルトは、フランソワーズの柔らかな小さな手を自分の顔近くまで持ち上げ、フランソワーズがターンがしやすいようにリードする。
長年バレエで鍛えてた、日ごろから魅せる優雅な動きは、特にそのターンに活かされた。スローモーションのように、ふうわり と、ジョーの目の前でまわってみせる。
アルベルトは、ジョーの目にフランソワーズがターンする姿が隅々までみることができるように、心がける。くるり と、優雅にまわってみせた時、フランソワーズがおこした風から彼女が纏う香りがジョーに届いた。それはフランソワーズがフランソワーズである証拠で、ジョーが幾度も彼女を守るために、その躯を抱きしめたときに一瞬香る、それだ。

「よし、アンコールだ」

調子に乗って、もう一度フランソワーズにターンを要求するアルベルトは嬉しそうだ。
促されてフランソワーズは、いつの間にか笑っていた。
とても幸せそうに、神秘的な色を持つ瞳を細めてジョーを観た。


風に舞う亜麻色の髪。

ジョーを捕らえた瞳。

広がる柔らかなスカート。

細く白い、しなやかな足。


瑞々しく潤いを持った唇からこぼれたのは、自分の名前だった。

「・・・ジョー?」




「島村さま、あまりにもフランソワーズさまお綺麗なので、言葉がみつからないのでございましょうが、黙ったままでは女性は不安になってしまいますよ?」


憧れるかのように眩しげに、フランソワーズに魅入ってしまっている青年を少しからかう口調で注意した。

「あ・・・・・」

アルベルトはフランソワーズから手を離し、ジョーの隣に立ったかと思うと、背中を軽く叩いた。

「え・・・と・・・・・うん」

何を1人納得してるのか、ジョーは深く頷いた。
そして彼の甘いベージュの瞳はやさしく、フランソワーズの瞳をみて言った。


「こんど、いっしょに・・・あのポスターのパリの・・・バレエ公演を観にいこう・・・か?」




####

さくらは、藤井の意見となぜかアルベルトの意見もあり、ラベンダー色のタイトなドレスを選んだ。それは、さくらの母親が用意していた4着のうちの1枚だった。

さくらがそのドレスに決めた一番の理由、それはジョーの一言だった。

「キミらしいね」

ただ、その一言を訊いただけで、さくらはこのドレスに決めた。


ジョーは言葉通り、フランソワーズが選んだものと、入江がフランソワーズのために選んだ物を、すべて彼が購入した。フランソワーズが店内で観ていたものを中心に、それらに合わせて入江は春から夏にかけての2シーズンに必要なものをコーディネートした。もちらん、あのワンピースも含まれていた。品数はさほど多くないが、いろいろな組み合わせによって大きく印象がかわるように、入江が色々と工夫したのだ。

「お前ばっかりが格好が良いっていうのが、気に入らん」

アルベルトはそう言って入江をに声をかけた。

「服はこいつがすべて責任持つが、オレは靴と、そうだな必要な小物を担当しようと思うんだが?」

財布から例のカードを入江に渡したアルベルトにたいして、入江は驚いたように彼をみたが、すぐに笑顔で答えた。

「お姫様には王子様は2人もいらないんですけれど・・・あまりお節介なことをなさったら、背中に大きな蹄の痣が消えなくなってしまいますよ?」

くすくすと笑いながら、入江はアルベルトからカードを受け取り、フランソワーズのために2足のパンプスと夏用のサンダルも2足。そしてカジュアルな踵がない黒のバレエシューズを1足選び、ショルダーバッグ、夏に向けてのカゴバッグに、一年中使えそうなトートバッグを選んだ。

精算時にジョーとアルベルトにカードを返すとき、入江は付け足すように言った。

「アクセサリー類は、どちらか本当のフランソワーズさまの王子様が、
彼女のために選んでプレゼントなさってくださいね」


####

2人の荷物は嵩張らないように、きれいにまとめられた。
それらを手慣れた様子でジョーは車のトランクへ移ししていく。
アルベルトは内ポケットから出した煙草に火をつけ、ジョーにもそれを勧めた。

さくらとフランソワーズは、レディス・ルームに行っていた。
フランソワーズは得に用はなかったのだけれど、さくらが彼女の腕をつかんで放す様子がなかったために、付き合うような形になった。

彼女たちが戻り4人は車に乗り込み、コズミ邸に車を走らせた。

ギルモア邸に戻ってきた時間は、意外にも早く、張大人が用意した夕食に間に合った。
ジョーとアルベルトが両手に持った、大きく店名のロゴが入った、いくつもの袋を見たメンバーたちは、嬉しそうに微笑み合う。コズミ邸から一緒に戻ってきたピュンマは、コズミ博士行きつけの和菓子屋で購入した、華やかな色とりどりの和菓子を自慢げに、夕食後のデザートとしてみんなに振る舞った。なんでも今日は、「雛祭り」といって女の子のためのお祝いの日だと言う。

グレートは特に嬉しそうにして、ジョーが自室へ戻るとき、彼の肩に ぽんっ!と手を置くと、グレート得意のウィンクをして、囁いた。

「ジョー、よくやった!ミッション・コンプリートだ!」


翌日。

キッチンに立つフランソワーズの装いは、少し胸元が開いたライトブルーのコットンの半袖に、お揃いの色の七分丈カーディガンは、袖に細いベルベットのリボンが通されている。黒の膝丈のボックススカートは、ウェスト部分に太いベルトのようなリボンをフランソワーズの細いウェストを強調するように飾られたいた。

派手でもなく、地味でもなく。
それは一見、なんともない普段着だったが、上質な生地であつらえられ、計算されたカッティング。彼女が動くたびに、フランソワーズの良さをぐんっと引き立たせた。


ジョーの部屋に置かれたパソコンに繋がるプリンターに、昨晩、彼が予約したものの確認証明書がプリントされたままだった。

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島村ジョーさま

パリ・○○○バレエ団海外公演・眠りの森の美女

チケットのご予約承りました。

チケット ?・・・・・・

ご予約日 ○月○日○曜日

公演日  △月△日△曜日

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===== 9 へ 続きます

・ちょっと呟く・

あれ?
島村っちさん???
デート?
・・・・まだ駄目~(笑)


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