RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
Trick or treat!
歩道に舞う枯れ葉がちょっとだけロマンチックに見えた。
艶やかな緋色が敷かれて、目に沁みる落ち葉のカーペット。
木々の葉が彩り豊かに、緑に朱に、黄色に・・・バラエティに飛んでいるように思えても、その色はきちんと街になじんで秋を伝える。

こころもち夏の空よりも優しくなった空は穏やかに。
秋の雰囲気は四季の中で一番オシャレに感じるのはオレだけだろうか?



ただ歩道を歩くだけで、落ちてくる色鮮やかな枯れ葉が、少しだけ特別な今日を演出してくれた。

いつどこで季節は変わったのか。

腕をなでた風の冷たさに、長袖のシャツを羽織るようになったのは、いつだったろう?
痛いくらいに冷えきった缶ジュースを求めて、ワンブロックごとに販売機を無意識に視界に入れていたのは、いつだっただろう?



ドアを開ると、流れ出る冷えきった風に人心地ついていた夏は去り、露出度が減った女の子たちが両手で包むようにティカップの紅茶の香りを楽しむ。

そんな風景が当たり前になった、10月も終わり。


イベントらしいから、それに便乗するのが商売というもので。
カフェ”Audrey”もハロウィンケーキをショーウィンドウに並べる。


リンゴとカボチャとシナモンをベースにした3つの新作。


”魔女の初恋はリンゴのプティング”
”ジャックの秘密(彼はキミが好き)/かぼちゃのタルト”
”大好きな君にTrick or Treat!”








売れ行き上々!

商売繁盛!

井川家は安泰でございます!
(ありがとうございます!)






ほっこり暖まった懐ににんまり、頬が高くなる。

夏はガッツリバイト三昧だった、オレ。
・・・と、言っても、オレが本当に欲しいものは、金じゃ変えないんだけどさ。



いつもは通らないその道は、義姉さんに頼まれて寄った花屋からの帰り道。

車の通りもなく、かさかさと踏みしめる落ち葉に視線を落として。
両手に持つ、観葉植物のライムカラーが妙に浮いて見えた。

その色だけが、その手に持つ色が、変わりきれないままの季節を語り、諦めきれないオレの気持ちを表しているように、思えた。


---・・・・フランソワーズ、さん・・・・。






揺れる花の香りは、フランソワーズさんの香り。
晴れた青空色の宝石はきらきらに輝いて、彼女の瞳に映し出されたすべては、喜びに歌いだす。
宝石を守るように縁取るレースは、光を弾いて、彼女の瞼の動きを重たげに追いかけながら、頬に影をおとす。

彼女の癖は、頷くと同時に、ミルクのみ人形のように瞼を閉じてしまうこと。
その仕草が愛らしくて、愛らしくて。

1つのケーキじゃ足りなくて、追加オーダーするたびに、恥ずかしげに、頬を染める色は、完熟の桃よりも甘い。

彼女のお気に入りのアップルティをいれたカップに添えるくちびるの動きから目が離せない。





瞳を閉じて。
・・・ふっくらとした、愛らしいそれがティカップの温度に温まって色濃くなり、少しだけ形を崩したくちびる・・・・。


柔らかいんだろうなあ。







思わず、抱きかかえてしまう1鉢のライム・ポトフ。
元気にのびた葉が、オレのくちびるに触れる。


その冷たさに、オレは・・・、泣きたくなった。




瞬きするたびに、クローズド・アップする、フランソワーズさんのくちびる。と、交互に浮かび上がるのは、ヤツと彼女のキス。


ちゅ。と、音が聞こえる、軽いキス。

いたずらに、くちびるをなぞるだけの、キス。

甘えるような、紅茶に解けた角砂糖のようなキス。

小鳥たちのまねをする、ついばむような、繰り返しのキス。

火傷するほどに、熱した空気を作り出すキス。

細い首をのけぞらせて、訴えるキス。

ヤツの名前を何度も、喉奥で呼び続けるキス。





キス、キス、キス・・・・そして、キス。






彼女のくちびるからこぼれ落ちる吐息を、拾い上げるのはオレじゃなく、ヤツ。




島村ジョー。
F1レーサーに昇格した、男。







通称、へたれっち。
つい最近?、昇格して、島村っちとなった。




ヘタレな男、らしい。
どこがどうヘタレかは、フランソワーズさんの親友で、うちのお得意様である香奈恵さんから聞かされたけれど、そのヘタレ具合が”格好良い”と感じてしまうのは、なぜだ?



「Trick or treat!」
「うわあっ!?」


自分の世界に浸っていたオレは、背後から近づいてくる、その足音が耳に入っていなかった。

どん!っといきなり背中を押されて、心臓が飛び出しそうになる。


な、なんだ?!




「ふふ、大地さん!どこまでいらっしゃるの?」


---ふ、フランソワーズさああああんん!


「え、と、こんにちは」
「こんにちは。大地さん、それでどちらへいらっしゃるの?」
「ほええ?・・・カフェまでっすけど?」


は!と気づく。

カフェは遥か彼方た後方に去り、・・・オレは慌てた。
くすくすと笑い続けるフランソワーズさん。


「私もなの、ご一緒していいかしら?」


黄色とオレンジのグラデーションが柔らかな午後。


「あ、は、は、はい!」


ロマンチックな街路樹からあたたかにこぼれ落ちる、午後の陽の光は風もなく揺れてささやき合いながら、夜の時間が長くなるよ、と教えてくれて、傾く日差しに自分の影が長くなる。

たった1ブロックの道を、並んで歩く。


「”ジャックの秘密(彼はキミが好き)/かぼちゃのタルト”がすごく好きなの」
「s、そう、そうなんっすか?」


何もかもが煌めき、輝く。


「お兄さまのカボチャのタルトはね、3層になってらして少しずつ違うのを発見したわ!色が一緒で解らなかったの、でも、ビスケットの部分がすごくとろりとした甘さが、トップのカラメルのような苦みがきいているとおもったら、しっとりと甘い一番下のかぼちゃのクリームが・・」


光が弾かれて、まるでティンカーベルのようにフェアリー・パウダーが彼女を包んでいるようにみえる。

思い出す、兄貴が作ったケーキに微笑んで、頬が高くなる。
くるん、と、カールした長いまつげが揺れて、見上げてくる碧。

耳をくすぐる愛らしい鈴の音は、ふっくらとしたくちびるから香る、香奈恵さんとお揃いだという、ローラ・メルシアのリップグロスの・・・。



彼女のくちびるから目がはなせない。
















リンゴの季節に、その色よりも美しく実る果実。
この果実を味わうために、手を伸ばせば、届く・・・かも・・・・。

















「大地、さん?」
「・・・・・フランソワーズさん」

















足が止まる。
彼女も。

まっすぐに碧を見つめる。
彼女も。







好きです、好きなんです。
あなたが、フランソワーズさんが、好きなんです。


たとえ・・・アイツがいたとしても。
この気持ちは、変わらない。

たとえ・・・あなたがアイツを愛してると知っても。
この気持ちは、変わらなかった。












「Trick or treatって言ってくださる?」
「え?」
「ハロウィンなのよ?大地さん!」


フランソワーズさんは、にっこりと花が揺れるように、ゆったりと微笑んだ。


「え?ええ?え?・・・あ、の・・・なんで?」
「言ってくださらないなら、treatはなしなのよ?」
「あ、はっはいっ言いますっ!!!言わせてくださいっトリックオアトリートっ!」



真珠のような白い手が、オレのシャツの胸元に触れて、きゅ、、と、それを握りしめると、彼女のこぼれ落ちそうな瞳が、閉じられた。





---フランソワーズさん?!




頬に、感じた・・・・果実。
今、この瞬間に死ぬことができたら・・・幸せなのかもしれない。


だけど。


最高に嬉しくて。
最高に哀しかった。




「happy Halloween!」


汚れない天使の笑顔が、無邪気に笑う。
















####

ドアのチャイムがちりりん。と、鳴る。と・・・
彼女を待っていた彼が、席から立ち上がった。



「ジョー!」



彼女は、オレには絶対に見せることがない笑顔を彼にだけに贈る。

特別な微笑み。


彼女は腕を伸ばして甘えるように、彼の胸の中におさまる。

特等席。







彼の首元に、・・・・果実を寄せて、ささやいて。
彼が彼女の顔を覗き込むように、熟れて柔らかくなった果実を、食べた。


触れて、なぞって、重ねて。
くちびるで噛む。




















オレの頬によみがえる感触が・・・痛いくらいに熱い。


「義姉さん、これ」
「遅い!!フランちゃんと一緒だったの?って、今までどこほっつき歩いてたの!?」





秋だなあ・・・・。



「大地、フランソワーズにアップルティーと新しいタルト、俺に」
「お前は二度と甘いもんを食うな!!!」
「は?」


フランソワーズさんのくちびるだけで十分だろっ!!
もう何も食うなあああああああ!!










ジョーに秘密にしといた方が・・・いいよな?
end.








・あとがき・

・・・・秋ですから。
前回、9に秋を背負って(?)もらったので、今回は大地くんに(笑)
なんもないですが。
あ、3にほっぺちゅーvしてもらったんですけれどね!

罪な女・・3(笑)って、これが”ハロウィン用?!
こんなのでいいのかなあ・・・。

もしかしたら、ちょこっと書き足すかもです・・・、今思いついた(笑)
web拍手 by FC2
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。