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Chocolate Sundae
家族(仲間)は心配してくれる。

連絡を取っているのか?と・・・。
ちゃんと会っているのか?と・・・。



週に1度、かな?と、曖昧に答える。
そんなところだけ、よく似てきてどうする?と、なじられた。


似ているならと、曖昧に笑いながら話題を変える。





心配してくれる家族が去年のクリスマスにプレゼントしてくれた、カメラ付きのパソコンだけれど。
これで気軽に顔を見て話せるだろう。と、プレゼントしてくれた、それだけれど。

インカムなんかも、一緒にプレゼントしてくれた、それだけれど。
メールチェックするたびに、それを今日も使わなかったの、ごめんなさい。と、謝る。


淋しくないなんて、嘘はいわない。
けれど淋しいとは、彼には言わない。



言わない、言えない、言いたくない。
言いたくない、言えない、言わない、言うのがコワイ。



もしも言ったら、何かが変わるのだろうか?

もっと彼の傍にいられるの?
もっと一緒の時間を過ごせるの?


ううん、変わらない。




だから、コワイ。











言わない方がいい。
変わらなかったときがコワイから。


秋の夜空はしん、と冷えて、空気が澄み、群青色の空に星はなく、くっきりとした月光が部屋の窓から差し込んでくるけれど、部屋の奥のベッドの中で、毛布に、布団に頭からかぶってしまっている私には届かない。






今朝、リビングルームの電話が鳴った。


「帰れない。」

聞こえた。



電話に出たわけではないのに、聞こえた。
彼の”帰れない”の声。


すぐに、電話に出た家族が私へと振り返って、取り次いでくれようとしたけれど、彼は”急ぐから”と、言ってあっけなく電話を切った。

心配そうに見つめてくる、コードレスを持った家族の1人が言った。


「こんな薄情なやつ・・・・で、お前、いいのかよ?」






曖昧に笑う。
曖昧に答える。
曖昧に暮らす。



曖昧に・・・・ごまかす。



気づかないふり。






もう、わからないの。

液晶画面に映し出される、彼。
週刊誌や、ポスターや、ウェブページの、彼。


何かを通して知る彼。
私と彼のファンと何が違うの?







ある日、インタビューを受けていた。


『いよいよ母国GPですね!』
『はい』
『調子はどうですか?』
『今のままでいけば、・・・クルーを信じてますから、あとは自分のコンディション次第です』
『母国ですからね、日本には応援してくれる特別な人がいるんでしょうね?』
『・・・・大切な、家族が、そしてファンのみなさんがいますから、全力を尽くします』
『F1ファン以外の女性ファン層も広く、気になるところですけれど・・・?』
『今は、走る事が一番ですし、それ以上も以下もないです』
『レースが恋人ですか?』
『・・・走っている間はそうですね』



曖昧に微笑んで、曖昧に涙が浮かんで、曖昧にこぼれた。

それでも彼をおいかける。
一粒の砂ほどになった彼の存在でも、私のこころはその一粒を必死で抱き続ける。








***


吐き出す二酸化炭素でいっぱいになった布団の中は、少し息苦しくて、少し熱い。
顔にかかる湯気のような熱が重い。



甘えたら、何かがかわる?
言ったら、何かがかわる?

もしも変わらなかったら?
もしも今のままだったら?



後悔する。




淋しい夜も。
息苦しい布団の中も。
熱いくらいの湿気も。

曖昧に慣れた。





流す涙にも慣れた。
彼の居ない日々にも慣れた。




他に何に慣れるの?
他に何かあって?


瞼をぎゅうっと閉じて、明日の予定を曖昧に立てる。
毎日を同じように繰り返すから、少しだけ曖昧に変化をつける。



朝起きて、いつものカフェオレ。
朝食はトーストでなく、フレンチトーストにしよう。
メープルシロップじゃなく、はちみつをつかってみよう。
ウィップクリームにバナナとチョコレートソースをかけて、バニラアイスを添える。
それはおやつにしよう。

温かいお部屋で食べるアイスクリームは美味しい。



そう、明日は小さなチョコレートサンデーを作ってみよう。
のこりのカステラを細かく切って、背の高いグラスのコップの底につめるの。
コーンフレークも重ねようかな?・・・そうしよう。


明日はチョコレートサンデーの日にするわ。



甘くて、冷たくて、美味しい日。
甘くて、冷たくて、美味しい気持ち。





ジョーを想う気持ちに似ているわ。
そして、冷えきったあなたがベッドに潜り込んできたときの、感触にも・・・。



「ただいま・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・帰れない。って言ったわ」
「・・・・日本に居るのにさ、それって淋しいよ」
「・・・・・・・」
「こういうとき便利だなあ、って。009で良かったって思う」


冷たい躯を押し付けられて。
冷えきった空気が温めた空気を追い出していく。


「思ったより、冷えるね」
「・・防護服を着ればいいのに」
「どうせさ、・・・それに面倒だし」
「・・・・・・」
「ただいま。・・・もう寝るの?」
「寝ていたの」
「ふうん・・」


背中から抱きしめられて。
ウェストにまわされた手を直接肌で感じる。
膝を曲げた、彼のそこに座るような形で重なり合って。

耳元に触れるくすぐったい感触に、私は振り返る。


「おやすみなさい・・」
「・・・・・・・・駄目だよ」


背中から抱きしめられていたけれど、私の顔を覗き込むようにして躯を移動させる。
彼の手が、腕が、慣れたように触れて、なぞって、すべり、私をシーツから抜き出していく。

布団から、冷えた空気に白い煙が微かに散る。


「・・・いや」
「・・・・・・どうして?」


はっきりとは拒めないから、曖昧に拒む。


「フランソワーズ?」


いつもは、・・・・・・何も言わずに押し切るくせに。
今日に限って、耳を傾ける彼が憎い。


「いや・・・・」
「・・・・僕のこと、もう、・・・嫌?」
「す、き・・・・よ。、でも・・・・・・いや・・」


彼の手が、再び動き出して、私を形作る。


「いや・・・・・いや、いや。いや・・・・」
「・・・・・・・・何が?」
「いや・・・・いや・・・」
「・・・・・いや、だけじゃ、わからない・・・・」


否定を作り出す、喉を何度も彼のくちびるが往復する。
すがるように、あまえるように、ねだるように、泣きつくように。




「本当に僕がいや、なら・・・・・・・・本気で拒めよ」









言えばいい。
寂しい。って、傍にいてくれないのが辛いって。

ろくに連絡もくれなくて、長い間放っておいて、突然風のように現れて、私を抱くくせに。
何も言ってくれない。


レースが、恋人なんでしょう?
私なんか、・・・・思い出したときに、でしょう?







私は、あなたの、なに?




「いっ・・・・・・・・・・や・・・・っぁ」
「・・・・嘘つき・・・・・・・」





言わない、言えない、言いたくない。
言いたくない、言えない、言わない、言うのがコワイ。




知るのがコワイ。



言わない、私が悪いんじゃない。
何も言わない、彼が悪い。




「ちゃんと・h・・僕をっ」





絡み付いた、チョコレートソースはベタベタして気持ち悪い。
ぺろり。と、舐めると気持ち悪いはずのベタベタしたそれは、甘くて美味しい。

甘くて、美味しい彼への、ベタベタした気持ちを隠して。












「っ・・・h・・・・み、・て!・・fr・・・んっ」
「・・・・i・・yあっっ」



甘く、冷たく、溶けていく。


溶かされていく。
甘く、冷たく、溶けあっていく。



「Fr・・・・nっ」
「・・・・・い・・・!」










結局、私が弱いから・・・・・・、いや。
曖昧に、私は自分から目をそらす。
あなたに依存して、生きている私から目をそらす。



あなたがそばにいない、私は曖昧にしか存在しない。




「Francoise・・      」


落ちた私を抱きしめた彼の、最後の言葉がなんだったのか曖昧にしか聞き取れなかった。













***



甘いものを食べきった後、妙に喉が渇く。
からからに渇いた感覚とは違うけれど、同じように水をもとめる。


私だけになった部屋の中で、彼の匂いが染み付いた躯が、憎くて愛おしかった。
けだるい躯を動かすだけの気力が、どこに残っていたのか。


バスルームに入って熱いシャワーを用意する。
洗面台に取り付けられている鏡に映った自分をちらり。と、見る。







”I'm with you, here. "


朱の痣が舞う左の胸上に、油性ペンで書かれたいびつなハートの中に走り書きされた、ことば。










「・・・・・・ジョー」


















***


「で、ヤツは邸にもよらずに次のレースか?」


家族の1人が、呆れたように、私を慰めるような優しい視線で話しかけて来た。


「日本にいて、会えなかったとは、な・・・」


私は、曖昧に笑う。
チョコレート・サンデーを食べた日からまた、同じ日々が始まる。



「いいの、彼の気持ちはここに、だもの」
「それは、それは・・・ごちそうさま」


家族の誰もが、フランソワーズの曖昧ではない笑顔に気づいた。


「Chocolate Sundaeを食べられるのは、次はいつかしら・・・」
「なんだ?・・寒くなっていくんだぞ?」
「ふふ・・・寒いから、食べたくなるのよ」











end.





*せっつね~!!ってのが書きたかったのですが・・・・?
 私には無理?
 ここの9は何もかも解っている大人9であってほしかったんですけどね。
 サンデーに連載していたので、サンデーとか考えないでくださいね。
 え?だれも考えない!?
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