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何だか芯がもやもやする/ハロウィンの呪い?

爆発音がSurround soundのように、ぐるりと時間差でまわる前、ビジュアル的には凍って眼に映った。

手に持つ、従来の銃とは形が異なった、まるでSF映画に出てくる”未来”の武器を連想させるそれから放たれる光。
奥歯を噛み締めて、止めた空間。
加速を解いて、動き始めた秒針の音が、かちん。と刻んだ1秒。


目の前が爆煙に包まれる。
熱風から守るように、腕で顔を覆った。


頭の中に直接響く声、声、声。


手に入れる情報を自分の意思とは無関係に処理していく、コンピューター(補助脳)。
それはごく自然に”自分が思いついた”的になじむ。


大地を踏みしめて、膝を曲げる。
笑ってしまいたくなるほどの高さまでジャンプする。
重力を感じないほどに、軽やかに。


追ってくる、黒いラバースーツに包まれた・・・敵。
自分とは違う改造を施された人間の、一点だけを狙う。


苦しみもがき、地に落ちていく彼らを踏み台に、高く、高く、上を目指す。
見下ろした地上は戦火の炎と煙に見えなくなった大地。

視界に入る紅と緋。








次の動きをトレースする。






加速を解いて、銃を、スーパーガンを構える。
仲間の赤毛が同じ加速装置を使ってボクの背後につく。


「相変わらずっ最新型はいい動きをするぜっ」
「002!」


ひじをつかまれる。

宙に浮く躯。




「このままLポイントまで!」
「オッケー!」


ごおおおっとジェット音がうなる。
数回旋回し、目的方向へと一気に飛ぶ。





見下ろす大地、見上げる空。








その狭間を行く赤と緋。














「よお、009」
「・・・・」
「お前、003のことどう思ってんだ?」
「彼女の眼と耳は、・・・戦闘には向かない、だから今回は」
「違う、違うっ!」
「?」


鼓膜が裏返るような感覚。
押し返すように息をのむ。


「女としてだよ!」
「は???」
「おっと、行き過ぎるっ離すぜっ」


躯が90度ローテーションし、ぱっと離された。
重力に従い足から落ちていく。





「009っ!003はてめえに、ほの字だんだぜっっ!!」

















遠のいていく002の声。

落下速度を和らげるために、躯を丸め込んで回転する。
下から放たれる閃光。


それを視界に捉えながら、奥歯を噛み締めた。





---なんだって?




止まった空間を駆けながら、頭の中でリピートする002の声。





---ほの字って・・・アイツ、アメリカ人だろ?!





加速を解くと同時に打つ、スーパーガン。





---って、・・・・003がボクに・・・ええ?!






その光りが敵を打つ前に、再び加速する。





---ちょ・・・待ってよっ。








<009、ドルフィンの用意ができたわ!戻って!!>

「うわあっ?!」










003の声に、驚いて踏ん張れなかった。
どすん。と、尻餅をついた、その隙を逃さずに、襲いかかってきた黒い人。


「っ?!」


が、宙に浮いて手足をジタバタと動かした瞬間、ひょいっと遠く彼方へと投げ飛ばされた。


「大丈夫か?009」
「005、あ。・・・ありがとう」
「通信聞いた。いくぞ」
「う。うん」





---い。行きたくない。







どんな顔で003に会えばいいのか、わからない。



「009」
「?」
「うまく行けばハロウィンに間に合うぞ」
「・・・え?ハロウィン???」
「003がジェックランタンを作りたがっていた」


どきん。と、心臓が跳ねた。
なんで、ここで003の話題が出るんだ!?


みんなグルか?!


「どうした?」
「い、いや、ほら、うん。あの、・・・日本はハロウィン、そんなに浸透してない、から」
「そうなのか?」
「う、うん」


<そこから1km離れた場所に、ドルフィンをおろすぞ009、・・005も一緒か?>
<004、一緒にいる>


「走るよ、005!」
「おう」







予定通り、ドルウィン号に迎えられて。
002は何食わぬ顔で、ボクの前にあらわれる。


作戦中も。
検査中も。


003が気になって、気になって、気になって、もうひとつ、気になって。
自然に視線が彼女を追いかける。








ボクに”ほの字”らしい、003。
002の言うことだから、どこまでが本当か・・・。










003?



「・・・ねえ」
「なあに、009」
「・・・・003って、名前じゃない、よね?」
「え?」
「名前」
「ええ・・・ナンバーはコードネームだもの」
「なんて名前?」


ドルフィン号で、ギルモア博士に頼まれた雑用をこなしていた009の前に、診察台のシーツの交換に現れた003に、話しかけた。


「・・・・どうして?」
「いや、なんとなく」


003はシーツを引っぱりはがすような乱暴なことはせずに、マットの下に織り込まれていたシーツの裾を丁寧にマットから離すようにして、シーツを取り去る。


「009は?」
「え?ボク?」


手に持っていたバインダーをアルファベット順に壁に備え付けのためにしまっていく、009。


「人に名前を尋ねるなら、まず自分から名乗るべきじゃないかしら?」


新しいシーツを広げながら、笑った。


「・・・ジョー、だよ。島村、ジョー」


空気を取り込んでふくれたシーツを、手で押さえながら、003は言う。


「ジョー・・・・、私はフランソワーズ。フランソワーズ・アルヌールよ」


お互い名乗り合ったものの、それ以上会話が続かない。
003シーツのしわをのばして、ぴっちりと診察台のシーツ交換をすませた。

汚れたそれも綺麗に畳んで腕に抱き、メンテナンスルームを出て行こうとする003を視界の端でとらえながら、009の頭の中で彼女の名前を何度も繰り返し、魔法の呪文のように唱えた。


ドアのセンサーが、003に反応して開く。


「あのさ、ジャックランタンってなに?フランソワーズ」


閉まりかけたドアの向こうで、フランソワーズと呼ばれた003が驚きに振り返った。
タイミングが、少しばかり遅かったと舌打ちする。


ふう、っとため息をついて、手に残った最後のバインダーを棚におさめたとき。
メンテナンスルームのドアが再び開いた。


009は振り返る。


「まあ!ジョーってば”ジャックランタンを知らないなんて!!切り殺されちゃうわよ?!」
「き。き、切り殺される?!」


そのときには、もう、009の優秀なはずの頭から、002に言われた”ほの字”なことはすっかり消えていた。


「ええ!ナイフで!いくらジョーが最強のサイボーグでもジャックには、勝てないわ!」
「な!」


後に解ることだが、この時、フランソワーズは”切り裂きジャック”と”ジャックランタン(ウィル・オー・ウィスプ)”を間違って覚えていたために、ジョーは大変な恥をかくことになる。


「たかがランタンだろ?」
「いいえ!カボチャなのよっ可愛いの♪」
「・・・可愛い?カボチャはおいしいじゃないの?」
「ジョーは食いしん坊ね?」
「どうして、そうなるの?」
「だって、カボチャはおいしいって」
「いや、ランタンの話だし」




このとき、とんちんかんな会話さえしなければ。
ジャックランタンの話など始めなければ。

2人の恋はもじもじしなくてすんだのだろう。









「ジョーって、・・・変」
「はあ?!・・・いやボクより、フランソワーズだよ・・・」















####


「今年も作るんだ?」


ダイニングルームのテーブルに並んだ、日本のサイズでは考えられない大きさの色鮮やかなオレンジ色のかぼちゃがごろん、ごろん、と並ぶ。


「もちろんよ♪」


キッチンカウンターから身を乗り出して、興奮気味に答えたフランソワーズ。
初めて、”ジャックランタン”を知った日を思い返しながら、ジョーのこころに、何かがひっかかった。


急に真顔でかぼちゃを見つめるジョーに、フランソワーズは不思議そうに小首をかしげる。


「どうしたの?」
「・・・ん?・・・・いや、何か・・・大切なこと、忘れてるような・・・・???」
「博士のご用事はすませたの?」
「ああ、さっき」
「大学は・・・今日は水曜日だから」
「うん、大学は明日」
「お昼ご飯は」
「しっかりいただきました」
「そうよね?・・他になしかしら?」
「ん~・・・なんか、そのかぼちゃに関係しているような?」
「ジャックランタンに?」


キッチンから出てきたフランソワーズは、考えあぐねるジョーを覗き込む。


「ん、何か・・その前?」
「ジャックランタンの前?」
「ん~~~・・・、誰かに言われた、ような?」
「そんなに大切なこと?」


覗き込んでくる、フランソワーズの蒼と視線がぶつかる。






なんだか、すっきりしない。
もやもやと、霧がかった声。


「ねえ、ジョー」
「ん?」


いつの間にかキッチンから出てきたフランソワーズは、少しだけ甘えた声をだす。


「今年は仮装してみない?」
「はあ?!」
「張大人とグレートの店がある商店街でね、仮装大会があるの!」
「・・・・それって、子供用だろ?」


何を言い出すかと思えば、やはり、ハロウィン関係のこと。


「親子参加ですもの!」
「・・・・誰と、誰が親子?」
「ジョーとイワン♪」
「アルベルトとイワンの方がしっくりくるよ?」
「それじゃ駄目なのっ!可愛くないわっ!!」
「・・・・アルベルトに可愛さを求めななかったキミの成長がボクは嬉しいよ。でも、ボクに求められても、嫌なんだけど?・・・・・で、キミの予定では、ボクは何になるの?」
「んふふふっ♪」


フランソワーズの満面の笑みに、一歩後ずさるジョー。
こういう笑いをするときは、よからぬことを考えている証拠。


「や、やっぱり、アルベルトがベストだよ!」


なすり付けてみる。


「可愛くないわ!」
「させてみないと、さ!ほら、グレートに、大人だって試してみないとさ!!」


また一歩、フランソワーズから距離をとる。


「ジョーが一番なの!」
「な、なんで?!」
「だって!鬼太郎と目玉親父なんですものっ♪」









---・・・・子泣きじじいじゃなくて、良かった・・・。








「で!なんで鬼太郎?!っていうか、どうして知ってるの?!」
「全巻、博士が買ってくださったの!」


博士・・・・。と、肩を落としたジョー。
厳しいことを言っているが、いざとなれば、フランソワーズを激甘に、甘えさせてしまうのは邸の中で博士以外にいない。


「目玉親父がイワンなわけだね?・・・もっと可愛い格好をさせてやろうよ・・」


イワンが気の毒で仕方がない。


「だって、ジョーはいつも片方の眼を隠してるし!知ってる?鬼太郎はハーフなの!人間と幽霊族の!」
「・・・・・それで?」


フランソワーズが興奮気味に説明を始めた。
その手がしっかりとジョーの左腕にしがみつく。


「ジョーもよ!人間と機械のハーフ!!」
「・・・・・・それで?」
「も!素敵でしょ!イワンに頼んで、ステージでピン!って毛を逆立ててもらうの!!」
「・・・・」


期待にきらきらと光る宝石が、まぶしい。
嫌なくらいにまぶしい。


「で、キミは何もしないわけ?ボクとイワンに仮装させておいて?」
「するわ!」
「なに?」
「猫娘にゃああんv」


フランソワーズは手をくるんと丸めて、頬によせ、招き猫のようなポーズをとった。
ジョーの脳裏に”猫耳”フランソワーズがぽわん。と、浮かぶ。


---にゃああんvって・・・にゃああんvって、か、可愛いんだけどっっっ。
   う。・・・み、みたい・・・。



「もし、嫌だって言ったら?」
「そうねえ・・・、他を考えるわ、私とイワンでもいいのだけど、なかなか思いつかなくって、鬼太郎と目玉親父がベストなのよ?今日中にお返事してね?」





リビングルームのダイニングテーブルに新聞を広げて。
オレンジのカボチャの中をほじり出す作業をしながら、もんもんと悩む青年が一人。



短パン、下駄、古い学童服にちゃんちゃんこ姿を世間にさらすのと引き換えに、短い赤のスカート姿の”猫耳”フランソワーズが拝める。



---観たい、けど・・・鬼太郎って・・・。












悩め、009。
きっと思い出しても、フランソワーズがジョーに”ほの字”であるなどと、信じられないだろう(笑)



















*おまけ*


「ねえ、ジョー」
「なに?」
「猫の耳って売ってるかしら?」
「うん。ネットで買えるし、そういう専門店にいけば買えるよ」
「専門店?」
「コスチューム・プレイする人が買うようなところ」
「・・・・コスチューム・プレイ!」


---しまった!



「ねえ、そこへ連れて行って?」



かぼちゃまみれのフランソワーズに可愛くおねだりされて、盛大に後悔のため息をついた、ジョー。

翌日の朝。
嬉々とするフランソワーズの後ろを、歩く、陽炎のようなジョーの姿を、ジャックランタンのようだったと、後に語ったのは、フランソワーズに今まで最高額のお小遣いを渡したギルモア博士である。














*というわけで、ハロウィンの呪いです(笑)
 きっかけは002の一言ですが、毎年思い出そうとして、思い出せないんですよ、9!
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