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その瞬間(とき)

偶然に出会ったその人をオレは好きになった。
オレの恋した気持ちは、あの頃とかわりなく存在する。
まだ、彼女が好きだ・・・正直に言えば。


きらきら と輝くハチミツ色の髪は、風に揺られて、さらさら と靡く。

小さな顔には少し大きすぎる、しっとりとした長い睫に縁取られた、こぼれ落ちてしまいそうな、光の加減で蒼から碧へ移り変わる瞳の色は、この世のどんな美しい宝石も色あせてしまう。

瑞々しい潤いのある唇の色は、常夏の赤い実がどんな魔法を使っても、その色を作りだすことはできないとおもう。

天女が織る布は、この天上と地上のどこを探しても匹敵するものはないほどに、柔らかく、清く、美しく、その白さは生まれたばかりの魂までも、くすませてしまうと詠われるが、彼女の肌に較べれば、
天女の織る布なんてオレのバスタオルとかわらない。

細く、華奢な肢体。
バレエで鍛えられた優雅な仕草。
不似合いなほどに、彼女の豊かな胸は・・・オレが男なんだって認識させられた。

彼女と出会えたことが、奇跡なのに。
彼女と言う人が、この世に存在することは、神さまのイタズラなのかな?

この奇跡の出会いに感謝しながらも。
オレはその奇跡を手に入れることは叶わなかった。

彼女にはすでに心に決めた人がいたから・・・。











####

春を前にして、日差しが温かい。
ランチタイム・ラッシュを過ぎれば少し店が楽になる。

白と淡い黄色で統一された店内には、食後の紅茶の香りが広がり、パティシエである兄貴が、今日2回目のパンを焼く。
焼きたてのパンの香りに誘われて、カフェ前の大通りを歩く人たちが、ちらり と窓越しにこちらを振り向きながら、歩き去る。

昼間の忙しさか、春のせいなのか。
穏やかな空気がオレを眠りに誘いかける、が。こんなところ(バイト中)に寝てしまうわけにはいかない、オレ。

いくら身内の店だと言っても、それはそれ。これはこれ。

けじめは、けじめ。

オレ、大人!

・・・おれ、オトナ?




ドアのチャイムが ちりりんっ と鳴る。




奴がきた。



店内で見る限り、彼の髪色は日本人にしては明るいブラウンだが、陽にあたるとそれは、淡い栗色へと変化する。
整った顔立ちは日本人離れをしているが、かといって西洋人と言われても困る。
なんと形容していいのかわからないぐらいに調和された、その造形は、少し甘い作りになっていて、道行く女性たちが99.9%の確率で足を止め、彼に出会ったこと自慢げに話すことになるんだろう。

オレよりも背が高く、細身な優男の印象だけど、職業柄、その辺の男よりもしっかり作りこまれている。
見たくなくてもたまに見えてしまう、腕や首周り、腰などのポイントが、明らかに鍛えられた躯だと主張している。


こんな奴がいることが、この世の罪だ。


奴は、カフェのドアを開けて、店内に入ってくる。
レジ前に立つオレを見つけて、人懐っこい・・・笑顔をみせる。
それは同性のオレでさえ、心臓の音が一度大きく跳ねてしまう。


そんな顔をすることを・・・本人は、自覚なし。

当たり前すぎて気づかないだけなのか?

奴のキャッチフレーズはきっと・・・
「老若男女問わず、恋のときめき・プレゼント」



・・・見境が無さ過ぎる!


「よ!らっしゃい!」
「なに?その八百屋か魚屋みたいな挨拶は・・・」

奴は声までパーフェクトだ。
優しく、淡く、耳に心地よく響くテノールのそれは、耳元で吐息交じりに囁かれれば、女神さまだって彼に跪いてしまうだろう・・・って、なんでオレがそんなことを想像しなきゃいかんのだ?!


「野郎用の営業だ」
「はは、似合ってるよ・・・席、いい?」


オレは奴を「彼女」の定番の席に座らせる。
奴がここに来るのは、「彼女」のためだから。


彼女の名前は、オレの奇跡。
フランソワーズさん。

奴の名前は、オレの失恋原因。
島村ジョー。


オレの恋は、この男のせいで終わった。
まあ、オレが勝手にこの男の「彼女」を好きになっただけなんだけど。

オレの胸の痛みは、信じられないほどに軽く。
失恋したとわかった翌日には、失恋原因の、この世の女で俺に惚れない女はいない!と言う台詞が似合いそうな・・・。



島村ジョーとは友人関係。





オレってこころが広~い!


テーブルに着いたジョーにメニューを渡す。


「何にする?」
「珈琲・・・あとは」
「フランソワーズさんが来てから?」
「先に食べると、怒る・・・」
「そして、ジョーは泣くっと!」
「うるさい」


オレはジョーの分と、自分の分の珈琲を淹れる。
我が儘が云えるは、身内の店!


珈琲をトレイに載せて戻ってきた時、
ジョーが、ウィンドウの外を・・・愛おしそうに見つめていた。
いつもある有り触れた風景を、ジョーはもう二度と見られない、と。
とても眩しそうに、そして、切なげにに見入っている・・・姿をオレはよく見かける。




それは、彼がF1レーサーだからだろうか?

刹那の判断ミスで、命を落とす。
限界に挑み続ける過酷な職業。
テレビや雑誌で垣間見る世界はいいとこ取りで、ジョーと知り合うまで、本当の意味で・・・何も知らなかった。


「オレ、いまから休憩な」
「サボんなよ・・」
「マジで休憩なんだよ、付き合ってやるよ」
「いらない」
「オレの優しさがわかんないのか?」
「わかりたくもない」
「ああ!なんでフランソワーズさんのような可憐で美しい、清らかな聖女が、こんな男の彼女なんだ?!」


オレはわざと大げさに言う。

トレーから珈琲を2つ、テーブルに置いてジョーの向かい側に座る。
ジョーはオレが持ってきた珈琲の香りを少し楽しんでから、カップを持ち上げた。
男のくせに長い睫が、ジョーの顔に陰をつくる。





オレの人生の7不思議の一つ。



じいっとオレは、ジョーをみる。


オレとジョーはそんなに年は変わらない。
・・・そういえば、正確な年令しらねーや・・・

けれども、ジョーはオレなんかよりも、10年も20年も生きてきたような・・・もう何もかも知ってしまっているような、変な風に落ち着いている。

義姉さんは、たまに言う。
フランソワーズさんも、ジョーも・・・大変な人生を歩んできたんじゃないかって。
それがどんな人生なのか、目の前にいるジョーからは何も見えないし、訊こうとも思わない。
人には、みんなそれなりに「色々」だし。


この2人と出会ってから。
この2人を知ってから。
オレはいつも疑問に思う。


どうして、フランソワーズさんはジョーがいいんだろう?
どうして、ジョーは、ランソワーズさんなんだろう?

この2人が一緒に居るとき。
悔しいけれど、オレは幸せを感じる。
胸がじんわり温かくなる。
それと同じくらいに、切なくなる。

不思議な気持ちが入り交じる。


オレがじいいいいいっとジョーをみていた。
ジョーはオレの視線に居心地が悪そうだった。


「そんなに見るなよ、気持ち悪い」
「なあ、訊いていいか?」
「なに?・・・やらしーこと?」
「!!??ちげーよ! ここは女性に人気のカフェだぞ!昼間だぞ!・・・・・・・それは後だ」


むかつくことに、こいつは今はフランソワーズさん一筋だけど、それ以前は、経験豊富だってことが先日わかった。

・・・・それはまた別の話だけれども。


「で、何?」
「なんでフランソワーズさんなんだ?」
「?」
「お前だったら、もっとこう・・・フランソワーズさんとは違う意味ですごい女性と付き合っても不思議じゃね~し」


よく、3流ゴシップ誌なんかが、ジョーのルックスと来期注目のF1レーサーって言う目立つ職業から、いろんなことを書き立てているのを知ってる。

でも実際に、それらが・・・まったくの嘘とは言い難いことも・・・先日発覚。


・・・それは、まあ、別の話・・・



オレは知ってる。

どんな女性が言い寄っても、それこそ神に命令されても、ジョーはフランソワーズさんを手放すことはないってことを。

だから、それはなんでなんだろう?





「フランソワーズだから」





一言で片付けやがった!


「答えになってね~じゃん、それ!」
「彼女が、フランソワーズだから、フランソワーズなんだよ」
「フランソワーズ、フランソワーズって、名前言ってるだけじゃん。
じゃあ、もしもフランソワーズさんが、フランソワーズさんじゃなかったら
どうすんだよ?」



「・・・フランソワーズはフランソワーズだから。

違うなんてあり得ない。

彼女は理屈じゃない。

存在する・・・なんて言うのかな、

俺の存在理由だから」


ジョーの瞳がまっすぐにオレをみる。
色素が薄い褐色のその瞳に ゆらり と闇がみえた。




「じゃ、フランソワーズさんがどこかへ行ったら?」

「この命が続く限り探す」

「・・・フランソワーズさんが他の男を好きになったら?」
「あり得ないけど、そうなったら・・・う・・・ん・・・・」
「泣く?」
「まあ・・・泣く・・・かなあ・・」
「やっぱりな!」
「でも・・・俺・・・」
「?」
「フランソワーズが幸せなら、それでいい」
「諦めるのかよ?」
「形は変わるけど、愛し続ける」
「他の男のもんなんだぜ?」
「それでも、彼女が生きてる限り、幸せであるかぎり、俺は・・・それでいい」
「取り戻そうとか、お前が他の男のものになるくらいなら、俺と死んでくれ!とか、そういう激しいもんはないのかよ?」
「・・・・・それって我が儘。フランソワーズの気持ちを無視してる」
「そうか~?・・・ってフランソワーズさんはいっつも、”ジョーはワガママ!”って言うけど?」


「言っただろう?
俺が存在する理由はすべてフランソワーズだから。
でも、
彼女のこころは、魂は自由。
彼女が生きていて、幸せなら、その形がどう変わろうとも
俺は・・・愛し続けられる・・・」


だんだん、ジョーの声が強くなる。
だんだん、ジョーの声が熱を帯びる。
だんだん、ジョーの声が掠れていく。




俺はジョーの瞳の中にある闇に魅了されていく。



「大地」

「ん?」

「好きだけじゃ生きていけない。

けれど、

好きという気持ちが、

それ以上のものに育ったら・・・

それが全ての理由になると、俺は思う。

生きる意味・・・俺が生きる意味は、

フランソワーズが生きてるから。

それだけ。

彼女が居ない世界に、俺は居ない。

彼女がどんな姿になろうと、

彼女のこころが、

魂が、

この世に生き続けるかぎり

俺はこの全てをかけて・・・

俺が

俺である限り

フランソワーズだけ・・・

愛してる、よ。」


ジョーは真剣だ。


オレの思いつきのような・・・質問でも、ジョーは、フランソワーズさんのことだから、命を、魂をかけて答える。

オレの・・・薄っぺらいこころに、ジョーはがんがん入り込み、オレの知らない、オレが味わったことがない、新しい何かを刻みつけていく。


普段はあり得ないくらいに、恥ずかしがり屋なのに、だ。
こういう時だけ、映画やドラマの中でしか語られないような科白を、真顔で、本気で、話す男が・・・島村ジョーだ。


「・・・・人生、女の稼ぐ金だけが全て。で、生きてるっている、依存しきったヒモとかわらいように聞こえるのは、なぜだ?」




悔しいから、ごまかしてみた。(ごまかしになってるのか?)


ジョーからいつも色んなことを、教わる。
男として、人として・・・俺に深さが加わる。
それが、すごく嬉しくて、恥ずかしい。




実は尊敬しているし、憧れても・・・いたりする。

だからか・・・な?

失恋しても正直、ジョーと会えたから。
それもオレにとっちゃー奇跡なのかもしれない。



いや、別に!
ジョーが「好き」とかじゃねえぞ!
そこ、違うからなっっ言っとくけどさ、オレはノーマルだ!!



「う・・・なんだよ、それ・・・人が一生懸命、質問に答えてやってるのに」

「まあまあ。そんだけフランソワーズさんが好きってことか・・・」

「言葉じゃ表現できない方が大きい」




確かにそうかもしれない。

ジョーとフランソワーズさんをひと目・・・
ひと目みるだけで、すべてが胸に刻まれる。
きっと彼らの関係を語ることはどんな言語の天才だって無理だと思う。



ドアのチャイムが ちりりんっと鳴った。
「その瞬間(とき)」オレの人生が、決まった。



噂の彼女が店内に入ってくる。
今日もまた愛らしく、美しい。

テーブル席の方へ、誰かを捜すような仕草を一瞬だけみせてから、彼女はまっすぐにオレたちのテーブルにやってきた。


そして・・・・。



この世界は彼らだけの世界だと宣言された・・・。



テーブル席にやってきたフランソワーズさんは、ジョーを見るなり、彼女のその細い腕で抱きしめた。

みんながフランソワーズさんを見る。
まず、世界から音が消えた。

彼女はジョーを抱きしめながら彼の頬にキスをした。

そして、世界から彼ら以外の色が失われた。

ジョーの膝の上に乗るようにして、彼女は強く、より、深く、
彼をその腕に抱きしめて、彼もまた彼女を・・・強く、より、熱く、抱きしめた。

時が かちり と とまる。

彼と彼女だけが息をすることを許された世界。






「ジョー、1人でケーキ食べてないわよね?」







世界に音が戻った。
世界が色鮮やかに、光る。
時間が流れ出す。


彼らは、人に、この世に溶け込んだ。


不思議なことに、誰も彼らを見ない。
まるで存在していないかのように。
彼らが・・・真っ昼間から、抱き合っているのにもかかわらず。


「食べたらキミ・・・怒るだろ・・・・・・?」















####

まだ、オレが知らない遠い未来の話し。

オレが戯れで書いた短編小説を、大学の先輩が冗談で、ある出版社の新人賞に応募した。佳作に入賞して・・担当がついた。

本になった。

もっともっと名のある賞に送られた。

・・・賞をもらってしまった・・・


幸か不幸か・・・オレの出世作となり、名前が残ってしまった。
オレが書いた、人生最初で最後の恋愛をテーマにした話し。

シリーズ化や連載ものにしないか、映画やドラマにしないか、と散々言われた。



断った。



オレは二度と愛や恋については書けなくなっていた。
もう、オレが表現できるすべてがそれに、書かれていたから。




今だにその短編は、再版がかかりファンレターが届く。
来年には、7カ国語に翻訳されるらしい。

印税はすべて
必要のない戦争で
家族や親を失った、こどもたちのため寄付されるようにした。



彼らはそれを喜んでくれると思ったから。



その短編は・・・
ジョーとフランソワーズさんを書いたもの。
(当たり前だけど)

様々な理由から、架空の話し、としたけれど、
それは嘘で・・・すべて、実際にオレが体験した、目にしたこと。

オレは、2人に出会えてよかった。
オレは、2人をずっと忘れない。
オレは、2人を信じてる。
オレは、2人が、この世のどこかで愛し続けていることを、知っている。

だから

みんなに2人のことを知ってほしかったんだ。

愛が存る。

魂で共鳴し
魂で語り合い

魂は偶然にも2つ別れて

一つは遠い東の島国へ。
一つは遠いヨーロッパの国へ。

それは出会うべくして出会った。

どんな形であろうとも。

形じゃない。




「フランソワーズを愛した人」
著書・井川大地



兄貴はセンスがない!っと
オレの本(全てのタイトル)を見るたびに怒る。

よけいなお世話だ。












end.



・あとがき・
シリーズ第二弾「その瞬間(とき)」

このお話は、大地くんが失恋して1ヶ月経つか経たないかくらいの時期です。


あれ?・・・ギャグの予定だったのに(笑)

ジョーと大地はどんな風に仲がいいのか書いてみよ~っとしたら、
なんで?なんで?こうなっちゃうの?
大地君、好青年っていうか、真面目くん過ぎますよ?
ジョー・・・君も、もう少し肩の力を抜いてください・・・。


しかも「ついでに」大地君。
キミの将来が決まったよ・・・(笑)


フランソワーズはシリーズ化してから、
一言くらいしか出演しない(笑)
まあ、他ではメインで動いてますからいいっすよね?

次回は香奈恵さんとフランソワーズでいきましょう・・・か?

では!
・・・あ、キリリクつくってみようかな・・・と思ってます。
このコーナー限定(笑)
大地くん、いじってみませんか? もれなく9,3ついてきます(笑)


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