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Little by Little・5
(5)







見つめ合う、視線。


手に感じる、フランソワーズのぬくもり。
振り払う事も、離す事もせずに、彼女は自分の手を握っていてくれる。


オークション前に見た、篠原当麻と繋がれた、手。
他の、誰にも、触れさせたくない。と、勝手な独占欲に占拠される思考。


彼女は誰の者でもないのに・・・。
俺のものでも、”まだ”篠原当麻のものでも、ない・・・、だれの者でもに、はず。


けれど、以前から彼女は自分の知らない”誰か”を想っている節がある。
その人物が一体どこのだれなのか、見当がつかない。


顔のない男の影がフランソワーズの隣に立つ、それだけの想像で、ちりちりと音をたてて心臓が焼け焦げた匂いを放つ。


「・・・ジョー?」


名前を呼ばれて、焦げた心臓が跳ねる。
青の輝きに胸が縮こまる。



繋がれた手が、ここにある。
その、振りほどかれる事がない手に、勇気を貰う。


「Francoise」


補助脳の力を借りずに発音するのは彼女の名前、彼女の国の、彼女が人であったころから呼ばれ続けられている、音で、呼ぶ。



想いを舌にのせる緊張に身を委ねる前。
薄く、息を吸い込んだ後。



「・・・・・・・行こう、か」
「え?・・」


ジョーの視線が、009の鋭い感覚が、自分たちにむけられた気配に気づかないわけがなかった。
何かをいいかけて、止めてしまったジョーを不思議そうに見上げていたフランソワーズも、彼の視線をおった先にいた人物に気づいた。


「当麻さん・・・、アルベルト」


繋がれている手がどちらともなく震えた。
そして、どちらともなく手が離されると思った。



お互いに、自分からではなく、相手が離すだろうと、思った。


学院へと続く小径から近づいてくる、当麻。
その後方に、彼の半分以下のスピードで歩を進めるアルベルト。



手が離れない。



フランソワーズは当麻を見ていた視線を地に落とし、どうして離さないの?と、緊張に喉を締め付けられた。

繋がれた手が、再び震え出す。


それがジョー自身からなのか、繋いだ先の彼女からなのか、わからない。
どうして離さないんだ・・・?と、近づいてくる篠原当麻よりも、フランソワーズを見つめた。


「フラン、島村・・・・」


当麻の声に、視線を上げたフランソワーズ。そして、足を止めて3人から距離を保ったアルベルトは、興味深げにその様子を見守る。


「よかった、2人とも大丈夫なんだね?・・・」


明るい声を出して、当麻はにっこりとジョー、フランソワーズにむかって笑った。


「ええ、当麻さん。何もないかったわ・・・。大丈夫よ・・」
「・・・みたいだね」


当麻は体を捻るようにして自分の方を向いているフランソワーズの、前に立つ。
そして、見下ろすようにして彼女の背後に隠れていた繋がりに視線を走らせ、そのままそれをジョーへとむけた。


「そういこと?」


当麻の問いかけに口で答えずに、視線だけを合わせた、ジョー。


「当麻さん?」
「・・・」
「島村、そういことなんだね?」
「・・・」



まっすぐに、ジョーを射抜くシナモン・カラーの瞳。



「・・・ぼくは、フランソワーズが好きで、彼女に交際を申し込んでいる」
「っ当麻さん!」
「・・何度か”2人”で外出もしていることを、リーダーの君だし知っているだろう?・・彼女からは返事はもらっていないけど・・・、友達からゆっくりと時間をかけて、彼女の気持ちがぼくに向いてくれることを望んでいるんだ。もちろん、彼女の状況も、特殊な環境もすべて理解した上でだよ・・・。サイボーグだからって、恋愛をしてはいけないなんて、法律もルールもない、そうだよね?・・・009」


わざと、彼のサイボーグの名を呼んだ。



「・・・・自由、だ。サイボーグだからと言って”人”としての人生を諦める必要は、ない、から」
「リーダーの、009が認めてくれるなら、安心したよ・・・それで」
「フランソワーズ」


ジョーは当麻の言葉を遮り、フランソワーズへと話しかけた。
自分の声を追い掛けるようにして、彼女を見つめ、繋がれている彼女の手のこうを、彼の親指が撫でた。


「!」


ジョーの指の動きに、フランソワーズの胸が震える。
見上げるようにして、ジョーと向き合う形に躯を動かした。


「・・・・キミは自由だ、よ。キミが望むこと、したいこと、すべてをすればいい」
「ジョー・・・」
「俺は今から005の様子を見に行ってくる。・・・動きも見られないし、報告もない。せっかくのフェスティバルだし、002や008と同じように楽しんで・・・・」


3人から離れてはいるが、しっかりとその声を捕らえる事ができるアルベルトの溜め息が、緑の色に紛れた。


「しまm」
「自由だ、・・・・・人として生きることを諦める必要は、ないから、ね・・・・。キミも”俺”も・・・」


当麻とジョーにはさまれる形で立つ、フランソワーズ。その頭上でぶつかり合った2人の視線。


「・・・フランソワーズ・・・1時間以内に」
「・・ジョー・・・」
「1時間以内に、連絡する・・・・・都内で人気のあるケーキ店が参加してるらしいから、行こう。案内する、よ」
「・・・」
「それまで、篠原を”視ていて”・・・・003、誰かが彼と行動しないといけないから」


ゆっくりと、ジョーはフランソワーズの手を離すと、アルベルトにむかって歩き出した。
フランソワーズの隣を抜ける途中、彼女にむかってはにかむように微笑む。


「そういうことだ、よ」


当麻とすれ違うさま、ジョーは囁いた。












<27点・・だ>


アルベルトはニヤリ、と、左の口角を上げてジョーを迎えた。


「004、オークションのビデオとリストの回収を頼む、それと、・・・できれば003と行動してくれ」


<・・・・・・邪魔したくせに>
<オレに見張り役をさせるとは、えらくなったもんだな?>
<・・・五月蝿い>


「了解、009・・・002たちと合流するぞ?」
「まかせる」


<それとも、2人きりでその人気の店へ行けるようにしてやろうか?>


「1時間以内には、戻ってくるんだな?」
「向こうに問題がなければ、だ・・・離れている間、004に一任する」


<・・・できるの?なら、頼む>


アルベルトの隣を通り抜けるとき、首だけを彼に残すように振り返りながら、ジョーは言った。


「そうか、なら・・・努力してみよう」
「期待しないでおく」


薄く笑ったジョーは奥歯を噛んだ。
吹き抜けた風は、ジョーが吸う煙草の薫りだけをそこに残した。

















####


005の元へ向かった009から、連絡が入ったのは約束の1時間を過ぎたころ。
問題なしとの報告が00メンバー全員に入った。

003、004、篠原当麻は、途中,002、008、そして津田海の姉たちと合流する。
月見里学院の正門が閉じられる時刻になっても、問題なし、と報告をした009は戻らなかった。


「ごめん、ね・・・自分で言っておきながら」
「何の話しだ?」


ギルモアたちと同じホテルに泊まる、ピュンマ、津田海、夢、林と別れて、ホテルに戻ると、ロビーの端っこで経営している24時間オープンのカフェにジョーとジェロニモの姿を見つけ、その席についた、ジェット、アルベルト、フランソワーズと、篠原当麻。


「ん?・・・別に」
「人気のケーキかなんかの店に案内すると、ジョーが、フランソワーズに約束していたんだ」
「そうか・・、すまないことをした。何故言わなかった?それがわかっていたら・・・」
「店はいつでもいけるし、ね・・・でも、ごめん」
「すまない。オレがジョーを引き止めた。」
「気にしないでジェロニモ、何かあったの?」
「そーだぜ!ここにジェロニモがなんでいんだよ?」


ジェットは6人で座れるように、テーブルを寄せた。



「・・・ジェロニモが邸を離れることになった」


席についたことを確認したジョーが、口を開いた。


「なんだよ?どういうこったよ!」
「ジェロニモ・・・説明してくれ」


カフェの一角に、身を寄せ合うようにして座った不思議な団体に、ウェイターがメニューと水を配り、去って行く。


「うむ。オレの部族は5つの小さな集落から成り立っていた。・・・・その内の1つの、オレの母方の筋にあたる娘と連絡が取れた・・・」
「彼女から会えるなら、すぐにでも、と・・。連絡を受け取ったんだ・・・。すでに博士には報告を済ませている。予定が変わってしまうけど、邸に戻り次第004と同じく005のメンテに入る。それが済み次第、・・・彼はアメリカへ帰る」
「急だな・・」
「オレも驚いた。こんなに早く連絡が取れるとは・・・。彼女の家は部族内でも、早く街へ出ていて生活や部族の歴史などを西洋学的視点から勉強していた。連絡を取り安いのは、そこからだと思った。そのことをジョーに話したのは・・いつだ?」
「2ヶ月くらい、前、かな?」
「それで、この通りだ。・・・ジョーの助けもあって、無事に連絡がとれた。」
「・・・」


ウェイターが再び彼らの席に戻ってきて、注文を取る。
フランソワーズが注文する様子がないので、ジェットが勝手に”コイツにアイスティ”と、頼んだ。


「よかったな、ジェロニモ」
「ああ・・・」
「でよ、向こうでなにすんだよ?」
「まだ、決めてはいないが、・・・部族についての本を書いているらしい。それを手伝う予定だ」
「・・・・・どうするの?」
「・・・・誠くんのことか?フランソワーズ」


こくん。と、頷いたフランソワーズの顔が、少しばかり青ざめてみえた。


「ああ?誰だよ、そいつ?」
「ジェロニモの朝のデートの相手だ」
「あの、英会話のか?そんな名前なんだ?」
「夏休みには間に合わん。が・・・、冬休みにアメリカに呼んでもいいかもしれない。と、考えている。彼も留学を希望している。ご両親に、きちんと話して了解を得た後だが。それに、今は色々と便利になった。問題ない。」
「・・・」
「それで、・・・ジェロニモが」

ジョーが話しの先を進めた。


「んだよ!?」


ジョーとジェロニモの視線が、自分に向いたので、ジェットは思わず身構える。


「ジェット、お前も帰るつもりだっただろう。一緒に帰るか?」
「へ?」
「・・・いきなり、NYではなく・・どうだ?オレと一緒に来るつもりはないか?」
「!」
「考えてみてくれ。」


フランソワーズは驚きに見開いた瞳をジェットにむけた。


「・・・・」


フランソワーズの空色の瞳が何を言っているのか、ジェットには簡単に読み取れる。


「返事、いそいだ方がいいのか?」


ウェイターが、トレーに載せて来た3つの珈琲とアイスティを、手早くテーブルの上にのせた。


「できれば、向こうにもお前を連れて行く事を事前に伝えたい。」
「わかった。あやめ祭が終わったら、返事するぜ・・、そんときゃ、オレのメンテもだな?ジョー」
「004、君に少しまってもらわないといけない・・・」
「かまわないが、いいのか?」
「そっちの方はおっているけれど、・・・今のところ動きはないし、動く様子もない。1週間ほど伸びても、問題はない、よ」
「なら、かまわん」
「・・・い、ギリス?」
「知ってる筈だが?向こうをなんとかするためにな、・・・その後はドイツだ」
「・・・・」


009が静かに告げる。


「・・・・・001の言葉通り、何も動きがみられなかった。このまま続けても変化はないだろう。あったとしても、それは全くの別件として考える。・・・このミッションは後夜祭終了と同時に終わりだ、以上」


それは、脳波通信を通し、006、008、そして、携帯電話から007に伝えられる。


「嫌よ・・・」


009のミッション終了の声に、フランソワーズが亜麻色の髪を揺らした。


「・・・・フラン?」


当麻の気持ちを代弁したかのような音に、当麻は驚いた。
ミッション、それが終了してしまえば、当麻はフランソワーズと会う機会がなくなると言ってもいい。


「嫌、嫌よ・・・どうして?・・・・・・」
「・・・・フランソワーズ、以前からこの話しは、」


アルベルトが、フランソワーズを諭すように話し始めたが、それを塞ぐように、言葉を続ける。


「ずっと一緒だったのにっ・・・どうして?急にっ、どうしてっなんでなのっ!?」
「フラン?!」


イスを倒さんばかりの勢いに立上がったフランソワーズは、駆け出すように席を離れた。


「行け、ジェット」


それをジョーが、当麻が追いかけようとしたが、アルベルトが腕を伸ばし2人を止めて、同じタイミングで立上がった、ジェットに、フランソワーズを追いかけさせた。


「ここはお前さんたちよりも・・・ジェットの方がいい」


ジョーは無言でアルベルトを見つめ、その冷たい瞳に浮かんだ意思に納得したが、当麻は、自分を椅子につなぎ止めたアルベルトの腕を払い、フランソワーズを追いかけたかったが、人である彼が、004の腕を簡単に払いのける事はできない。


「すまん。ジョー・・・」


もう仕分けなさそうに、ジェロニモがジョーに言う。


「・・・どうして、俺に謝る?」
「予定外だったはずだ。」
「一体何のさ?」


ジェロニモがちらり。と、当麻を見る。
当麻は、アルベルトに押さえられるかのように椅子に身を沈めて彼らしくなく、アルベルトを睨んでいた。


「オレたちがいなくても、お前は大丈夫か?」
「・・・・正直に言っていい?」
「かまわん」
「本音は・・・フランソワーズと一緒だ、よ・・・・」


眉を下げて、苦笑するジョーを、ジェロニモの太陽の薫りがする手が頭を撫でた。


「オレはいつでも、お前の声を聞いているぞ」
「・・・・うん」
「オレは、お前の父であり、兄であり・・・仲間であり、永遠の家族だ」
「・・・・・・・・うん」
「・・・。ジェットにその役を取られているようじゃ、まだまだだな」
「・・・・・」
「オレが行く前には、ケリをつけられんか?」
「・・・・・」


長い前髪に隠れたジョーのアンバーからーの瞳が当麻へとむけられた。















####



「待てよ!フランソワーズっ」
「嫌っ、離してっ」


掴まれた腕を振りほどく。


「どこ行くんだよっ!てめえっ」
「どこへでも行くわっみんなもそうでしょうっ!!」


振り払われた手を再び伸ばして、フランソワーズを捕まえる。


「ったく、なにを我が侭言ってんだよっ今頃っ」
「嫌っ」
「オレらがいなくても、お前にはジョーがいんだろっ!!」
「!」


足が向かうままに歩いた先は、ホテル専用の駐車場だった。


「お前のそばには、いつもジョーがいんだよっ、だからっ」
「勝手な事言わないでっ!!」


掴まれた左手首を振りほどこうとしながら、碧の双眸が、キっ。とジェットを睨みつけた。

その澄み切った色に。
まっすぐにむけられた視線に。

乱れ、揺れる亜麻色の髪から香る花に、ジェットは思い出す。






誰よりも、長くいた。
誰よりも、長く彼女を知っている。



誰よりも、・・・。







「変わらねぇな、フランソワーズ・・・お前、すっげえ、綺麗だぜ?」
「な・・・っ!」
「そうやってよ、怒ってるときとか、敵に向かってるときの、お前が一番綺麗なの、知ってるか?」


ニ、と笑ってみせた。


「ふざけないで!」
「大真面目だぜ?」
「っっ、離してっ」
「落ち着けよっ」
「!」


掴んだフランソワーズの手首を、ジェットは力任せに引き寄せて、抱きしめた。


「落ち着けっていってんだろ、このじゃじゃ馬」
「っ・・・」


細く、華奢で、柔らかく、花の薫り舞う、フランソワーズの躯を力一杯に抱きしめた。


「話しくれえ、訊けよ。なあ・・・?」
「・・・・・」


ジェットの腕の中で、フランソワーズの瞳に溢れる雫が流れおちる。


「何を訊くことがあるの・・・?あなたは、行くんでしょう?アルベルトも、みんな、私を置いていくんでしょう?」
「一緒にくるか?」
「・・・・・誘われたのは、ジェット、あなたなのよ・・・」


ジェットの胸に頬を押し付けて言った。


「お前がが同行したって、ジェロニモは文句言うようなヤツじゃねえよ」
「いや・・行かないで・・・・」


頬をすりつけるようにして、首を左右に揺らす。


「だったら、一緒に来い」
「いや・・・よ、どうして、このままみんなと一緒にいられないの?」
「・・・なんでだろうな?」
「わからないのに、行くの?・・・だったら、行かないで」


ジェットはゆっくりと、腕を離して、フランソワーズの顔をのぞくように視線を彼女へと落とす。


「フランソワーズ・・・」




見上げたフランソワーズの瞳に移る、ジェットは、フランソワーズが初めてみる、彼だった。


「j・・・t?」


優しく、温かく、慈しむように瞳を細めて。
微笑んでいる、ジェット。








「・・・ジョーのこと、好きか?」


穏やかにやわらかく、囁くような問いかけに、フランソワーズは数回瞼を瞬かせた。


「じぇ・・ト?」
「ちゃんと訊かせてくれ、お前は、ジョーが好きなんだろ?」
「・・・」


ジェットから視線を外し、顔をそらしたフランソワーズ。


「フランソワーズ、お前はオレとは来ない。アルベルトとも、だ・・・オレたちは言ったよな?ギルモア邸に仲良しこよしで、住むつもりはないってよ。そして・・・お前が望むなら、フランスでもどこでも、連れて行ってやるってよ?・・・・覚えてるか?・・・日本から出ようって誘ったこともあったよな?」
「・・・」
「オレは、お前が戦っているとき、003として、必死で敵を探っているとき、追っているときが一番、綺麗だと思う。戦っているときのお前は、最高にいい女なんだぜ?・・・・・けどよ、ジョーはそれを認めねえんだよ」
「・・・」
「ま、お前は知らないだろうけどよ、ジョーが仲間になってそれほど経ってねえときに、アイツがお前のこと、すごく綺麗な子だって、言ってよ・・・。オレたちがからかったんことがあってよ」


ジェットは優しくフランソワーズの亜麻色の髪を撫で始めた。
再び、ジェットへと瞳をあげる。


「戦闘中、003にずっと見惚れてたのか!って・・散々な・・・。そしたら、違うって怒ったんだぜ」
「・・・・」
「003はイワンのミルクを用意しているときが、一番綺麗だっ!てな・・・。ミルクが熱すぎないか、ちゃんと分量はあってるか、ひとつ、ひとつ、きちんとイワンのために、用意している姿が、一番綺麗だってよ・・・。そのときだけは、ちょっとだけ嬉しそうに微笑んでるから、綺麗だってよ」
「・・・ジョー・・・が?」
「ああ・・・。X島を出て追われてる緊張状態の中、・・・微笑んでるお前が見られるのは、そのときだけだから、ってよ」
「・・・・」


こぼれ落ちる雫が頬を伝い、幾重にも線をひく。


「そういうヤツだから、好きになったんだろ?・・・ジョーのそばだから、どんな戦闘中でも、笑ってられるんじゃねえのか?・・・そうだろ?おまえを不安にさせねえために、ジョーは、いつもお前に笑いかける。・・・それに、答えるように、微笑み返すじゃねえかよ・・・、初めて見た時、オレはぶん殴ってやろうかと思ったんだぜ?戦闘中になにを、ニコニコ笑いあってんだ!って・・・な・・・」


髪を撫でていた手が、フランソワーズの雫を拭う。





フランソワーズは瞼を閉じる。

そう・・・。
どんなときでも。

彼は、微かに、その口元を弛ませて、言う。


”大丈夫だ、003”














「・・・ジョーは、よ・・・魔神像に飛ばされる前でさえ、お前のために笑ったんだぜ?」


ジェットの手がフランソワーズの涙で濡れた頬を包む。


「オレが・・・オレたちなんかいなくても、たった1人、お前のためだけに微笑んでくれるヤツがいれば、いいだろ?・・・・フランソワーズ、ジョーが好きか?」
「・・・・・」
「訊かせろよ、好きなんだろ?」


ぼろぼろと溢れる、涙。
触れられた頬に、ジェットの気持ちが伝わる。


「・・・本当の、・・・お前で、フランソワーズが、フランソワーズでいられる、最高に綺麗に微笑むお前でいられるのは、ジョーの前だけだって、それはとっくの昔に、わかってんだ・・・」








ここにも一つ、フランソワーズが見失っていた、見つけられなかった想いがあった。





















「好き・・・・・・。私、ジョーが・・好きなの・・」

「やっと、言えたな・・・フランソワーズ・・・すっげえじゃん!」

















ジェットは親指を寄せて彼女の涙を拭い、その額にキスをひとつ贈った。



「・・・・・ちゃんと気持ちを伝えろ、いいな?時間がかかってもいい、焦る必要なんてねえ、けど、ちゃんとオレに言ったように、ジョーに伝えろ。アイツに振られたら、オレがこの足でお前を迎えに来てやる!!っつーか、アイツをまた宙へ連れてって今度こそしっかりこんがり燃やしてやるからよっ!!」



ジェットは、泣き止まないフランソワーズを、そっと再び腕に抱き、亜麻色の髪を撫で続けた。



「オレたちは、永遠に離れねえ。たった9人の仲間だぜ?物理的な距離なんか問題じゃねえだろ?」
「でもっ・・・・・・でも・・・」
「お前には、ジョーがいる・・・。信じろ、オレの、この002様のことをよっ!それによお・・・いますぐどっかにいっちまうわけじゃないんだぜ?」
「っh・・・っん・・・わかってるわ・・・わかっ・・・わかってるわ・・だけど・・」
「ったく、そんな調子で、どうやってさくらと戦うっつうんだよ?」


突然出て来た名前に、フランソワーズはジェットの腕の中から顔を上げて見上げる。


「フランソワーズが負ける訳ねえだろ?なんたって、お前は003なんだぜ?」
「・・・」
「篠原の事も、ちゃんとしろよ」
「・・・・当麻、さんの・・こと」
「わかってるよ、みてりゃあ、お前がちょっとばかしはあいつに惹かれてるくれえわよ・・・。でも、それは一時的なもんだぜ?言っておいてやるよ、お前は逃げてんだよ、ジョーのことが好きすぎて、それを言えねえまんまで、その思いを散らすために、当麻を使ってんだぜ・・・」
「・・ひど・・・い、わ・・・そんなっ」


白い手がジェットの胸を押して距離をとる。


「人間なんて、そんなもんだろ?・・・ジョーにむけられなくて溜まった思いを、都合よく現れた篠原で解消してんだよ、お前は」
「っそんなこと、」
「ないなら、とっとと、期待させるようなことしねえで、振りやがれ、アンタなんて、爪の先にほども想ってねえってよ」
「・・・・・」
「怖がるな、・・・人を傷つけないで生きて行くなんて無理なんだからな!お前の甘い考えだぜ、欲しいものがあれば、掴みたい何かがあるなら、人を蹴落として、傷つけても、掴み取れっ相手をかまうな、自分だけを見てろ」
「っ・・・」
「そして、踏み台にした奴らの分まで幸せになれ、なるんだよっ、ならなきゃなんねえんだよ!」


ジェットの胸に押されたフランソワーズの手を、握る。


「ジョーを想っているだけでいい、なんて、馬鹿な考えで諦めるな。この手が誰かを傷つけたなら、オレが全部そいつらの、恨みつらみを引き受けてやる、篠原に言え、さくらに言え、そしてジョーに伝えろ」
「ジェット・・」


握った手を離して、一歩、フランソワーズから離れた。


「・・・・なあ、フランソワーズ」
「ジ・ぇ・・」
「ジョーじゃなきゃ、許さねえぜ、オレは・・・・・なあ!オッサン」


ジェットの声に、振り返ったフランソワーズ。
彼女が泣いていたことを、いく筋もの光る路が証明し、アルベルトが苦々しく口元を歪めた。


「いい加減に戻ってこい、・・・怪しまれるぞ?」
「で、オッサンが迎えにきたのかよ?なんで、ジョーじゃねえんだ?」
「・・・ジェロニモを送っていったからな」
「え?」


2人へと足を進めたアルベルトは、フランソワーズの肩に手をぽん、ぽん。と2度やさしく触れて置いた。


「ジェロニモは邸へ戻って、オレが回収したビデオとリストの整理をする・・・、あのまま邸を無人にしておくのもな、何もないとは思うが、躯が空いたなら、戻らせるのがいいだろう」
「車じゃねーじゃん、こっちに来たときよ」
「レンタカーだ」
「は?んなもん、いつ・・・」
「もしもに備えて、向こうのホテルに2台、いつでも自由に使えるように借りて・・おい、・・・トリ。ミーティングでの話しを聞いていなかったのか?」
「あ?んなこと言ってたか?」
「・・・フランソワーズ、このトリと話すだけ無駄だ」
「アルベルト・・」
「泣くんじゃない」


ひんやりと、冷たい手がフランソワーズの雫を払う。


「んじゃ、篠原センパイ一人かよ?ったく、アブねえじゃん、いくぜ、オレ!」
「篠原当麻は部屋だ」
「OK」

ジェットがホテルの正面エントランスへ向かって歩き出した。


「フランソワーズ、オレはお前さんを置いて行く訳じゃない」
「・・・アルb」

フランソワーズの肩を抱いて引き寄せ、ジェットの後を追うように歩き出したアルベルト。


「戻れる邸があるから、旅立てるんだ・・・。あの邸はオレたちの家だ。どこへ行こうとも、オレたちが帰る場所は、ギルモア博士が、ジョーが住む・・・イワンのお気に入りのベッドがある・・・そして、お前さんの焼いた菓子が喰える、あの邸だ」


ニヤリ。と、彼らしく口角を上げて嗤う。と、ジェットが2人に振り返って、に。と笑いながらウィンクを一つ。


「帰って・・・くるの・・・?」
「ったりめーだろっ!」
「ドイツへは行くが、住むのはまだだ・・・。色々変わっているだろうからな、今回は下見だ」
「土産、考えとけよ!」
「・・・絶対よ・・・、忘れちゃ、嫌よ?」
「忘れっかよ!」
「ジェットには期待をするな、3歩歩けばすっからかんだ」
「ああっs!オッサンこそ、ボケはじめんじゃねえぞっ」


甘えるように、フランソワーズはアルベルトの胸に頬を寄せた。


「もう、今までのままでは・・・駄目なのね・・・」
「止まっていた時間が流れ始めただけだ・・・人としてのな」
「とっくの昔に、だけどよ、どっかの誰かさんがのんびりしてやがるから、やっとだぜ!」







<フランソワーズ・・・、自分のために生きろ>







自分のためだけに、生きていい。
自分のだめだけに、我が侭を言えばいい。

もう、我慢しなくていい。
怖がる必要なんてない。




ここは、もう戦場じゃない。


・・・今までの分を、取り返そう。

眠っていた間の分を、戦っていた時間を、・・・・・取り戻そう。









====へ続く。

・ちょっと呟く・

23・・・23ですねえ。そして43....いえ、ここは93サイトですっ!!
第一世代フォーカスでした。
・・あ、イワンっ(汗)

さくらちゃん次回!

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