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Little by Little・9
(9)







篠原当麻は、自分の身の回りにおこった今回の事件(ミッション)の全貌を知らない。

彼は元・BG研究員”トーマス・マクガー”の孫。
その研究資料を保管していた、月見里学院理事、篠原さえこの(義)息子。
事件の首謀者だった篠原グループ総帥、故・秀顕の孫。

そして、未だに交通事故から意識を覚醒させない、サイボーグ再開発の主犯、石川斗織を実父とし、当麻の戸籍上は母である篠原さえこの親友であった、故・篠原秀顕の娘であったために、当麻の実母”小石川美涼”は、さえこの異母姉妹。


親族経営で運営される”篠原グループ”において、故・秀顕の跡を継いだ篠原さえこの息子である”当麻”は当然、次期TOP候補である。

さえこは、当麻に跡は継がせないと言い、水面下で彼と”篠原”の縁を断ち切るように動いてるが、実際にそれが表立って公表されたとして、彼の”価値”は今のところ変わらない。



故.篠原秀顕と石川斗織が津田海を実験体として、再開発を進めていた”サイボーグ”計画は、今回無事に未然に防がれた。
過去、闇の組織(B.G)がおこなっていた”ビジネス”とは違い、その戦略と目的の差異に感謝するサイボーグ00メンバー。







「時代が変われば、戦いのフィールドも変わる。」
「・・・」




「情報社会。
誰もが、キー、ひとつ押すことで、自分の世界を電子の世界に気づき上げ、神にもなれ、悪魔にもなる。


誰もが”B.G”となるチャンスが与えられた世界。
何も知らないままに・・・、そのキーひとつで。





千、万、億の命が散っていく。」




「p・・・ピュンマ、こ、怖い・・・・・・・・」


ピュンマと海は、(末っ子をおいかけていった)ジェットが去った後、ぐるりと第1グランドに並ぶテナント・ブースを見て歩き、第二グラウンドへと向かう前に、飲食店が集まっている、第一グランドから見て、北にある高等部の校舎へと寄った。


「・・・・・・・・な~んてね!あははは!どお?迫力あった?」
「・・・・・・・・・・怖いよぉ、」
「でも、本当の事だから!」
「ええええええええええええええええええええっ!」


適当に選んだ店で購入した、氷ががちがちに詰められたMサイズのアイス珈琲を手にしたピュンマは、海の反応を楽しむ。


「海の”あの”足が公開されていたら、もおおおおお、大変なことになってたよ!まず、経済に影響が出るよね、世界の株価も変わってさあ、急に潤う国が出て来たりして、世界のパワー・バランスが崩れてた。これも事実」
「・・・・・・・・・」
「ちゃんと知って欲しいから、話すんだよ?」
「う、うん・・・」


海は気づいてないようだったが、2人が校舎へと入ったとき、ピュンマと海がいる位置から一番離れた教室から、見慣れた栗色の髪の、青年を見つけた。


「医療面で多くの人を助けて感謝される。その裏では、多くの命を奪うものにもなるんだ。使う”人間”次第で神の遺産にもなれば悪魔のジッポにもなる」
「・・・・・・・・・あ、悪魔の、し、シッポ?」


栗色の髪の青年は、ピュンマの家族の1人。
その傍らに、黒髪を肩で切りそろえた女の子が一緒にいた。


「あ。これは僕的表現!悪魔のシッポってさあ、コスプレしたり、漫画では可愛いけど~」
「・・・うん」


彼もピュンマの姿に気づいた様子で、校舎から出て行くとき、ピュンマにむかって一瞬、視線を合わせた。
ピュンマは励ますつもりで、力強く彼にむかって頷いてみせた。


---ジョー、自分を誤摩化したりしちゃ駄目だよ。ちゃんとさくらの気持ちも受け止めた上で、がんばれ!




「みかけ以上に怖いもんだって言う意味をこめて、使ってみたんだよ!どおかな?」
「・・・まあ、うん。別にいいと思うけどさあ、それで?・・・篠原がどうしたの?」


ジョーが出て行った方向に気を使いながら、彼らを避けるようにして彼らが使った出入り口とは別のを使い、外へ出た。
太陽が力強く、じりじりと空気を焼き付ける時刻。
高台に建ち、自然に囲まれた月見里(やまなし)学院であるが、風が止んでしまった今、あやめ祭に訪れた多くの人が、夏の暑さから逃れるように、校舎内に集まり始めていた。


海は、Lサイズの絞り立てオレンジジュースのカップにさした、ストローを噛み潰しながら、ピュンマについて歩く。


「篠原グループと今、完全に手を切るのは、どうかと思うだよね。・・・・今のトップはさえこさんだし。彼女はこっちの事情も知ってるから、give&takeで、色々とこちらの都合良く動けると思うんだ。まだ、調べないといけないことも多いし~。発端となった(N.B.G)”篠原グループ”は、過去、僕たちが関わった企業(B.G)とも深いからさ」
「うん、うん。それで?」


北校舎を抜けて、第一グランドから離れ、自然と足が伸びて行くのは、”学院生”である、彼らが住み慣れた”寮”。
あやめ祭の間は寮内へのアクセスは禁止されているが、3つの建物からなるその周りは、遊歩道があり、ちょっとした広場になっている。


「今回、公開されるはずだった”取引される予定だったもの(石川開発の海の足)”とは違ったでしょ?」
「うん・・・」


ピュンマと海は自分たちが寝起きするアルタイル寮近くの木蔭になった芝生に、ごろん。と寝転がった。
普段は、”立ち入り禁止”の芝生だけれども、あやめ祭の間は”立ち入り禁止”の寮であるために、誰も2人を注意する者などいなかった。


「それで今、地下で波風が立つ、立たないで、僕たちはちょっぴりピリピリしてんだよ♪」


008はまわりに人の気配がないからこそ、その場所を選んだ。



「・・・・・してない、ピュンマ、してない・・・・・リーダー歌ったし、ジェット、プロム・キングだし、クイーンなんて・・・(汗)それに、ギルモア博士とコズミ博士、カラオケ大会にサイン・アップしたってさっき言ってたじゃないかあ・・・。あ、時間」


海はひんやりと冷えた芝生に心地よさそうに寝転がった状態で、くっきりと時計の後がついた手首を目の前まで持ち上げた。


「観に行く?まだ大丈夫だよ、・・・・で、地下ではけっこうそこまで嵐が来てます」
「ええええええ?!ほ、本当に?!」


起き上がることなく、顔だけを隣に足を伸ばして左手に体重を預けたピュンマを見上げた。



「(裏社会に)繋いでないから、今はわかんないけど、・・・・そこそこに出てる筈だよ、それは前もってシュミレーションされていた範囲内だから僕たち動かない♪プ・ラ・スその辺の攻略ブックは我らが001様が!ですので、ご安心を」
「スーパー・・・」


はああ・・っと、溜め息をつきながら、思い出す001と呼ばれる赤ん坊のイワン。
海もすでに、イワンが”ただの”赤ん坊でないことを知っている。


「それでね、問題は・・・」
「問題は?」
「海!」

がばっ!っと、海の体に多いかぶさるようにして、ピュンマは海の目の前に右手の人差し指をさした。



「ぼくうううううううううううう?!」


目の前に突きつけられたピュンマの人差し指に寄り目になる海。


「と、篠原先輩!」


躯を元の位置に戻しながら、人差し指を魔法でもかけるようにくるくるとまわした、ピュンマ。


「篠原も!?」
「まあ、海のほとぼりが冷めるあたりまで、ぼくは君専属さ!」
「ぴ・・ピュンマ~~!!」


起き上がった海は、ピュンマに抱きついた。


「僕は学院に残るしさ!・・・本当はそこまでする必要はないんだけどね。定期視察なんかで十分なんだ。でも、僕が勝手にそうしたいから、するだけなんだけど・・・。海よりも実際問題、心配なのは”篠原当麻”なんだよねえ・・・」


そんな海に、よしよし。と、彼の頭を撫でながらも、暑いから離れて。と、彼を躯から引き離す。


「?」


海が離れると、次にピュンマが、ごろり。と横になり、芝生の冷たさを背中に感じた。


「彼の利用価値は”篠原”であるかぎり続くし、”篠原”でなくなったとしても、彼が”篠原”であったことはもう、変えられないし」
「あ・・・・・。そうか・・篠原1人っ子だ」
「さえこさんがいくら彼を遠ざけても、”血縁者”である事実は拭えない」
「まあ、確かに・・・」


2人の間に沈黙が訪れる。
止んでいた風が再び、むき出しになっている肌を撫でる。
その暑さと、じめっとした湿気の含み具合から、ピュンマは一雨くるなあ。と、手に触れていた芝生を軽く握って、ちぎった。


「ここで、問題です」
「?」

腕をあげて、ちぎった緑をぱらぱらと落とすと、風が吹く方向へと流されながらはらはらと落ちて行った。


「なぜ、我々は篠原グループから手をひくと思う?」
「利用されるから?」

海は置いていたカップを手に、溶けた氷のせいで薄まったオレンジジュースを、噛んでぺたんこになってしまったストローからちびちび飲んでいた。


「ぶー」


ピュンマも起き上がって、わきに置いていた、氷ががちがちに入ったカップを手に取った。
そこにはもう、アイス珈琲が入っていた名残の色しかない。


「ギルモア先生が篠原グループに取り込まれちゃうから!」
「ぶぶー!」
「ん~・・・・理事長が・・島村先輩に気がある?」
「ブーっ。だけど、なんか近い?」
「ええええ?!ち、近い?!」
「うん・・・・ヒント!」
「御願いしますっ!」


芝生の上で姿勢を正した。


「ジョーが不機嫌です、彼が不機嫌になる原因は?」


海の眼が点になる。


---島村先輩が不機嫌?







「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ!」
「あ?」
「フランソワーズさんと篠原がっ」
「正解!」
「・・・・・・・・・え、本気(まじ)で?・・・そんなことで、ミッションって左右されるの?」
「と、言うのが、全て僕の想像なんです」


うん、うん。と、1人納得するように頭を振るピュンマは、手に持っていた冷たいカップにささっているストローを抜き取り、プラスティックの蓋を外すと、中にある氷をいくつか口に含んだ。


「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!ピュンマあああ!?今までの話し、全部うそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお?!」
「ははは、嘘と真実50/50!」


がりがりと氷を噛み砕きながら、ピュンマは空を見上げた。


「でも、・・・・・ジョーは異常に篠原(全体)を警戒していて、できれば関わりたくないって、さ・・・・。ちょっと揉めたんだよね」


ざらっと、カップに直接くちびるを付けて、流し込む氷。
カップに浮かんだ水滴が、ピュンマの顔に降る。


---ん?






「・・・・そうなの?」
「私情は挟んでないとは思うんだけど、その頑に拒む理由がわかんないんだ。だから、自分が納得できるように、言い訳付けたのが」
「恋のすったもんだ?」
「そう!」


海には聞きこえない距離から、近づいてくる足音に008は反応した。


「・・・・・・・なんか、すんごく軽いんだね、サイボーグってさ」
「え?見かけより体重重いよ?」


海に気取られないように、そちらへと意識を向かわせる。
なんとなくだが、”海を狙って”でないことが長年の戦いの経験から解る。あまりにも、その歩みが遅いために。
けれども、警戒することに越した事はない。


「いや、そうじゃなくてさああ・・・」
「ねえ、海」


ピュンマは手に持っていたカップを芝生に置いて立上がった。


「なに?」


立上がったピュンマを見上げる、海。



「恋愛したことある?」
「な!・・・なにを、と、突然・・・中高一貫の寮生に・・」


海も立上がろうとしたのを見て、ピュンマが海に向かって手を差し出した。


「だね~」


ピュンマの声に、しょっとむっとした表情を作りつつ、彼の手を借りて立上がると、海は土を払うかのように、ぱん、ぱん、と、腰回りを払った。


「・・・・そおいうピュンマは?」


008の補助脳が耳に捉えた足音からその距離を分析、知らせる。


「あ、ぼくは独立運動で毎日ドンパチ、忙しかったから」
「・・・」


海を立たせ、彼の姿をピュンマの右後方から聞こえてくる足音の主から隠すように彼の背を押して、足音とは反対の報告へ向かわせた。
近づいてくる者が何者であるか、一応の確認をするために、ピュンマは芝生においたままだった2つのカップを拾い上げるために体勢を低くして、3メートル強ほどの距離にまで縮まった相手を見た。


---さ・・・・・・




北校舎から左右に伸びる遊歩道のうち、自分たちが使わなかった方から、来る。
木蔭に身を置いていた、ピュンマの膝した半分も満たない半円のループで囲われた芝生の中。

見覚えのある色が、木々の合間を縫ってピュンマの眼に入った。


「さくら!」


ピュンマの声にさくらはびくん!と体を跳ねさせて足を止めた。
海はピュンマの肩越しから、さくらがいると思われる方向へと視線を投げた。


「・・・・・p・・ん、ま?」
「さくら・・・ジョーはどうしたの?」


ピュンマと海は、その場に立ち止まったさくらへと近づく。


「・・・・・・・・・ジョー・・」


ピュンマが”ジョー”の名を出した途端、さくらは足から崩れ落ちて、地面にしゃがみ込んむ。


「さくら!どうしたのっ?」


慌ててさくらのそばに駆け寄り、彼女の傍らで膝をついたピュンマ。
覗き込んだ、さくらの瞳からとどめなく溢れる涙に、ピュンマは黙って背後にいる海へと振り返った。









力一杯に抱きしめた。
さくらの想いを腕に、彼と重なり合う体に、すべてに込めた。

脚がつってしまいそうんだほどに、背伸びをして、すり寄せた頬。
近距離で聞く、彼の呼吸の音。

すうっと、吸い込まれた空気が、くっと、止まる。
その空気が、彼の体内で暖まって吐き出されるのをさくらの耳がとらえるはずだったが、空気は、彼の声帯を揺らして、音となって放たれた。


「離せよ」
















さくらを人の賑わう場所へと連れて行くのは憚われた。
彼女の腕をとり、立たせたピュンマは先ほどまで海と一緒に涼んでいた芝生へと再び戻る。

さくらはピュンマのされるがままに、体を動かし、芝生の上に腰をおろした後もただ泣き続けた。
なんとなく、どうしていいかわからずに、ピュンマが座った左斜め後ろに腰を下ろした海だったが、何か飲み物でも買ってくるよ。と、腰を上げたところで、ピュンマに止められた。


「・・・だめだよ、一人は、だろ?」
「大丈夫だって、ちょっとそこまでだし!」
「海」


ピュンマの瞳がくっときつくなる。


「わかった・・・」


海は再び芝生に乱暴に座り直して、足を投げ出した。

















「離せ、さくら」











陽が傾き始めたが、長く空に居続けるようになった太陽の色は、それほど空の色に変えることはなかった。


コズミ、ギルモア両博士と張大人がホテルに戻る1時間ほど前に、ピュンマ、海、さくらの3人がホテルに戻った。


ピュンマはホテルへ戻ったことだけを、ホテル内にいる00メンバーズに脳波通信で報せると、さくらを連れて、海と一緒に泊まっている部屋で、コズミ博士の帰りを待つことにした。

ギルモアの泊まる部屋にはフランソワーズがいるからだ。
ただ泣くばかりで、一言も言葉を発しない、さくら。






ジョーがさくらに『何かを言った』ことは明らかで。
その言葉を発したのは、ジョーがフランソワーズを想っているために。

さくらは、ジョーがフランソワーズを想っていることを知っているから。



彼女が泣かなければならない原因は、フランソワーズ。



「・・・寝ちゃったね」
「あんだけ泣いたら、まあね・・・・」
「それで、ピュンマ・・?」
「・・・学院を出る前に通信を飛ばしたんだけど、応答なし」
「誰も?」
「いや、張大人と、アルベルト、ジェットからはあった。なかったのは、ジョーだけ」
「ふうん・・」
「もうそろそろ、コズミ博士もこっちに戻ってくるだろうし、グレートか、ジェットあたりが、さくらとコズミ博士を送っていくんじゃないかな?」




















「離せ。・・・離れろ、よ」

















アルベルトが、ジェットとともにホテルに戻ってきたころ。
星が少しずつ瞬き始めた。


2人はホテルに戻る途中、ジェロニモへ連絡を入れた。


『ジョー・・・?いや。こっちには来ていないが?・・・どうかしたのか?』
「わかった、んなら、いいぜ。・・・心配ねえ」
『何かあったんだな。』
「まあ、ホテルにいるかもしんねえし、”あった”時は、”あった”で、連絡するからよ!」
『・・・ジェット。』
「じゃあな。ジェロニモ、邸の留守番頼むぜ!』


滞在するホテルが建つ街の駅で、つんつんとした赤毛が濡れて、いつもよりも元気がないようにみえた。


「スコールみてえに、一気にきやがったな」
「これで、少しは涼しくなるだろう」
「アルベルトの長袖姿が少しはなじむってわけか?」
「・・・そこまではいかんだろう」


駅から出ると、乾ききらないアスファルトの、独特な匂いが鼻をつく。
歩道と車道の段差にたまった水たまり。

バスターミナルの待合室の透けた壁にぴたり。と、寄せられたゴミ箱に入る予定だったのだろう、週刊誌が、水気を含んで路上にあった。
ゴミといえば、それくらいしか眼につかない。

通りがかりに、アルベルトは重みを増した、そのゴミをひょい。と、拾い上げて、4つ並んだ箱の一つに入れた。


「悪ぃ」
「・・・何がだ?」


徒歩へホテルへと戻る。


「放っておかねえほうが、よかったのかなあってよ・・・」
「放っておけ」
「でもよ、・・・なあ?」
「これくらいのことで、いちいちお前はアメリカから飛んで帰って来るのか?人の色恋沙汰よりも、自分の今後を心配した方がいいと思うが?」


確かに。と、ジェットは溜め息をついた。
アルベルトの隣を少し遅れがちに歩くジェットは、自分が見ていた一部始終を思い出す。











####




「・・・・・こんなことしても、何も変わらないから・・・・・」













さくらが、ジョーを抱きしめていた。
必死で。

ジョーは、一言、二言、彼女の耳元で何かを呟くと、さくらは首をかぶり振って、さらにジョーにしがみつく。
ああ、なあにやってんだよ!と、突っ込みをいれるジェットは数メートル離れた位置からジョーの背を見ていた。


首にまわされたさくらの腕を、しがみついている彼女を、ジョーはあっさりと解き放つ。


「・・・ごめん。俺が自分らしくいられるのはフランソワーズと一緒のときだけ」


ジョーに掴まれ、距離を取らされた腕を振り払うかのように、さくらの体が揺れる。


「・・俺が、俺らしく、自分でさえも・・・驚くんだ、フランソワーズといると、ただ、フランソワーズをみているだけでいいから・・・」


ジョーに掴まれ、距離を取らされた腕を振り払うかのように、さくらの体が揺れる。


「何も考える必要がなくて・・・フランソワーズに、好きって言葉じゃ、足りないんだ」


見上げているジョーの瞳が、だんだんと冷たくなっていく。


「この気持ちを言葉にするなんて、この世界にないよ・・・足りない。」


光を失っていく。


「ないんだ、言葉がない。みつからない、足りないし、どうすればいいか解らなくて、苦しい・・・・」


塗りつぶしただけの褐色。


「大切で、すごく大切で、大切すぎて、でも、彼女に触れるのは自分以外許したくないくらいに、彼女の髪を揺らす風にさえも、嫉妬するくらい・・・だから、篠原も・・・仕方ない・・・?」



冷たい微笑。


---俺は、・・・・彼女が欲しくて、欲しくて、欲しくて、欲しくて、・・・・欲しくて。



ジョーは、小さなさくらの体を腕を伸ばして、自分からさらに距離を取らせた。
さくらは体を揺らして、ジョーの腕から離れようとする。が、びくとも動かない、その腕の力に、ぞっとした。

必死でさくらはジョーの腕から逃れようとする。
けれど、ジョーの腕は、さくらを固定したままの状態で、1mmたりとも動かない。

いくら、相手が男で、さくらよりも体格が良いとしてもおかしい。





---手に入らないなら、・・・・他のヤツの手に渡すくらいなら、・・・・。











暴れるさくらを。
自分から距離を取ったさくらを。

ぐいっと引き寄せてその耳元に唇を寄せた。


「俺は、フランソワーズが好きだ。それ以外ない・・・・・・たとえ、彼女に受け入れられなくても、嫌いだって言われても・・・・フランソワーズしかいない」








構えたスーパーガンが、その胸にあてがわれた。
スーパーガンのトリガーを引く、慣れてしまった、感触。

愛らしくふっくらとした形良いくちびるが、微笑みを形作りながら、最後の言葉を音にして、手が、009の手と重ねられていた彼女の手が、重力に従い落ちた。(day73)



---・・・・・ジョー・・・?











それが。



---・・・・・・魂は誰も手の届かないところへ、この世から消えて、彼女の躯は、永遠に俺のもの。




俺の本当の姿。




---・・殺してでも手に入れたいんだ、フランソワーズを・・・。彼女が関わる周りの男を殺すよりも、楽だし、”完全”に俺のものになるから・・・・・・でもっ!それじゃ駄目なんだっっ








本当にフランソワーズが好きならっそれじゃっっ駄目なんだっっ!!!






















ジョーはぎゅっとさくらを抱きしめた。



「俺はフランソワーズの生きる世界に生きたい、・・・・」



そして、抱きしめた腕を解き、ジョーは自分から数歩、後退してさくらから離れた。


「・・・・・・・・・・さくら・・・・・・そのまま、”そこ”にいればいいよ。俺は行く。もう、嫌だ・・・、”自分で選択しようがなかった”ことに振り回されて、見失って、取りこぼしてしまった、ものを、取り戻したい。さくらが、求めているものは、俺の何を見ているか、わかる。けど、俺はそこから離れたい。今のさくらにはっ無理だ、俺の気持ちなんて変えられない、どころかっ・・・俺がずっと逃げ出したくてっ超えたかったことをっ・・・・・・・・・・・・邪魔しないでくれ」


ジョーの足が、少しずつ、さくらから距離を取る。


「もう嫌なんだよ。俺は好きで”捨てられた”んじゃない。・・1人になったんじゃない。ずっと、ずっと誰かにすがって、ここから出してくれってっ。連れ出してくれって・・・・泣いてた」








繰り返すだけの毎日。
退屈な毎日。

時間が早く過ぎていけばいいと願った毎日。

朝がくることを呪った。






夜なら、目立たない。
自分の中にある、真っ暗な世界とひとつになって溶け出し、どこかの誰かと交わりながら、息を顰めて、確かめ合う。




自分だけじゃない。
この闇は自分だけじゃない。











太陽の陽射しが、朝が怖かった。
逃げるように、安い事以外に何もない部屋に帰って、布団に潜り込む。


そして、後悔する、毎日。
助けて。と、泣きながら眠る、毎日。
枯れてしまった涙に慣れてしまった、過去。













「俺はどうしたらいいか、わからない。なんでこっちにくるんだよ?・・・あの時、さくらは言ったのに・・・」


ジョーが指した”あの時”を瞬時に思い出すことができない、さくらの眼が泳ぐ。



『うん、さくらを見ていたら・・・わかるよ』
『・・・え』
『さくらが、とても幸せな家庭で育ったんだって、わかる」
『ほ、ほ、本当に!?』
『うん』
『本当に!!私は、私は幸せに見える?』
『うん、見えるよ』
『・・・・日本に来ることを反対されたんだけど、無理矢理来たの。名乗らなくても、お互いがわからなくても、見せたかったの、どこかの町でどこかの店で、どこかですれ違うかもしれない、私の本当のお母さんに、”私は幸せです!”って』(Day16)









さくらの、ジョーの腕に抱きしめられた部分が、急激に冷えていく。


「さくらは、もう、自分でちゃんと乗り越えて、俺が望む世界を知っている子だって、こっちには来ないって思っていたのに・・・」


ジョーが触れていた部分がだけが、まるで、違う細胞で作られているかのように。



「なんでっどうしてだよっ、なんでっ俺に関わったら、みんな”こっち”に来るんだよっ!!!!!俺はっもうっ嫌なんだっっっっっっっ!」
「ジョ・・ー・・・ウ」
「好きになるわけないっ、好きになるかよっ!!俺と同じヤツなんてっっ重たいだけだっっっっ!!」









ジョーの瞳に再び浮き上がった、膜が、雫となってぼろぼろとこぼれ落ちた。











「さくら、ごめん。・・・・・ごめん・・・・俺のせいだよね。・・・・・前は違ったのに・・・・俺がそういう風な”考え方”しかできない子にさせた。俺の、俺が、・・さくらが、俺に会ったせいで・・・・、ごめん」


さくらは、ちゃんと自分が呼吸できているのか、信じられないほどに、喉を詰まらせ、躯を硬直させていた。




生温い風が視界を歪ませる。
風にさらされた瞳をまばたきさせたとき、目の前に誰もいなかった。

















加速装置をプライベートで使用。
それも、”さくら”の前で。





ジェットは、さくらが混乱しているときであるために、まだ良かったと胸を撫で下ろしたが、彼女が冷静になって今日の事を思い出した時、疑問に思われないかを案じたために、ホテルに戻ってすぐ、イワンにむかってだけ、そのことの報告を済ませておいた。

ジョーを追いかけることはせず、さくらを見守っていたジェットは、さくらが偶然にもピュンマ、海と合流したことで、さくらから離れた。


ジェットは、ジョーを追うつもりはない。が、絶対に言ってやるっと、こころに決めたことがある。















ジョー、お前は、最後の希望、未来の証だった・・・・・・。
オレたちは009/島村ジョーによって、今、夢に見た”未来”に生きている。と、







B.G(闇)に流れ落ちた希望の星だった。







さくらには、さくらの。
ジョーには、ジョーの。
オレには、オレの。


みんなには、みんなのこころに抱えた、夜がある。




ジョー、みんながお前に救いを求めてるんだぜ?気づいてるか?
みんながお前の”闇”に引きこめれて、お前に近づくんじゃねえ!




そんな底なしの闇を抱えながらも、真っ白で、あまりにも綺麗なこころのままでいる、お前に憧れて、吸い寄せられてんだよ。























オレも、オッサンも、みんな。
フランソワーズも、・・・・・・・お前の、何にも染まらない、光っていっちまった方がいい白さに救われてんだ・・・。





====10へと続く。


・ちょっと呟く・

こ・・・こんな感じですが・・(汗)
難しかった・・・。
さくらをふったと言うか・・彼女を正したと言うか...。

ところで9はどこへ行ったでしょう?
加速したらしい!・・服の心配をしてしまう・・・(あ!)
ってことで、次回は3メインでやっっと3日目!!突入か!?

盛り上がってきて・・ないっすね・・・ない・・・ない・・・(駄目やん!)



付けたし/2って覗き趣味があったのかー・・・。
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