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もうすぐクリスマスがやってくる。



人工皮膚に沁みこんでいく冷気。
ひんやりとした膜がはり、感覚を無くして行く。

手袋をはめていない手を、薄いジャケットのポケットに突っ込んで、肩を狭めて歩く。



通りすぎるカップルの会話が耳に残る。
街に飾られた赤と緑。
金と銀。


毎年のことながら、よく飽きないな、と、こころの中で呟いた。

繰り返す毎日。
繰り返すイベント。

何も変わらないようで、何かが去年と違うのだろう。



意味も無く陽気な雰囲気を作り出す。
意味も無く人々を宗教イベントへとかり出す。



意味がないようで、意味があるのかもしれない。
僕にとってはないに等しいけれど。






もうすぐクリスマスがやってくる。










悪さをしてぶち込まれた、塀に囲まれた自由のないカゴの中。
その日が来たと知るのは、夕食にバターケーキのデザートがつくからだ。

外に”関係者”がいるヤツは、それなりの”プレゼント”や”面会”があったりもした。

バターケーキくらいしか、縁がなかった僕にとって、その日は特別でも、なんでもない。
ただ、世の中が商業戦争を生き残るためにむやみやたらに人を煽っているだけにしか、見えなかった。









今年も、もうすぐクリスマスがやってくる。







「クリスマス・ツリーをね、買いに行きたいの」




003が言った。


彼女もそんな浮かれた、商業戦争に感化された一人なのかと、ほんの少しだけ・・・落胆したと同時に、彼女が”クリスチャン”であったことを思い出し、舌打ちした。
彼女は”本当”にクリスマスと”縁”がある、人間だったんだ、と。


「いいよ・・・・、週末は人が多いだろうから、平日にしよう」


まだ日本に慣れていない003を、1人で運転させるわけにはいかなかった。
最新のカーナビよりも頼りになる、”眼”と”耳”があったとしても、現在のコンピューター以上の働きをこなす”補助能”があったとしても、だ。

デパートメントのイベント用会場となっている8階は、クリスマスデコレーション一色になっていた。
平日の昼間と言うこともあって、それほど人の姿もない。

派手に飾り付けられたそこが異質に感じたのは、僕だけだろう。
隣にいた003の瞳が大きく輝いて、クリスマスデコレーションと同化していた。


あれも、これも、可愛い!とはしゃいで、手にとっては僕に見せてくる姿は、正直に言えば、可愛かった。
そして同じくらいに、・・・・うざい、とも思った。


クリスマスを祝うことは、ある人の誕生日を祝う事。
自分の誕生日も満足に祝った事も無く、祝ってもらった記憶もない僕が、あったこともない”神”の誕生日をなぜ祝う必要があるんだろう?


神は一度だって僕を祝うことなどない。



この躯にされたときさえも。
カゴにぶちこまれたときも。

血のつながった人に捨てられたときも。





一度だって、その手を差し伸べてはくれなかったヤツを、どう祝えっていうんだ?










「何がそんなに楽しい訳?」


レジ先で受け取った品々を手に、デパートメントの屋上駐車上へと向かう途中、ノンストップでかかるクリスマス・ソングに頭がおかしくなっていた。


「え?」
「だから、クリスマスの何がそんなに楽しいの?」
「・・・・だって、クリスマスだもの!」
「答えになってないよ」
「009はクリスマス、楽しくないの?」
「楽しくない・・・日本人だし」
「あら!日本人だってとおおおおっても楽しんでいるわ!」


ほら!と言うように、屋上から見下ろす街を指さした。




003の眼には見えているのだろう。
浮かれる街を。
飾られた赤と緑。金と銀。


003の耳には聞こえているのだろう。
陽気なクリスマス・ソングが。
人々がプレゼントの相談をする声が。


だから、003も楽しいのか?



止めていた、乗用車のトランクをキーについているボタンを押してあけた。
ピピ!っと、電子音がロックを解いたと知らせる音と同時に、がこん。と、トランクが開く。


「・・・だって初めてなんですもの!」


両手に持っていた荷物を003は丁寧にトランクの中へと入れていく。


「なにが?」


彼女の手に荷物がなくなった後、僕も両手に持っていたものをトランクの中へ投げるように放り込むと、003がそれをきちんと整頓していった。


「クリスマスに1人じゃないもの!」


003は、トランクに突っ込んでいた頭を僕の方へとむけて、微笑んだ。


「・・・・・・1人じゃない?」


腕を伸ばして、トランクのドアを閉めようとする彼女の代わりに、僕がトランクを、ばん!と適当に閉めた。


「ええ、初めてなの!・・・・1人じゃないクリスマス」
「・・・・初めて?」
「・・・言ってなかったかしら?」


003が僕から離れて助手席のドアを開けた。


「聞いたことないよ・・・どうして、1人?君には・・・」


運転席のドアを開けて、乗り込むと、003も同じタイミングで助手席に着いた。


「兄がいたわ・・・でも、私は覚えてないもの、両親と過ごしたクリスマスがどんなだったかなんて・・・・」


僕よりも、先に003がドアを閉めた。
2秒ほどの差で、運転席のドアも閉まる。


「覚えてない、の?」
「小さかったの・・・両親が事故で亡くなったとき・・・・・死んだって言う事も理解できてなかったわ、きっと」


003がシートベルトに手をかけて、とまった。


「でも、お兄さんが・・・」
「初めから2人で暮らしていたわけじゃないの。・・・兄が経済的に私を養えるようになるまでは、私は親戚の家に預けられていたのよ、そこは・・・あまり裕福ではなかったわ。私は”仕方なく”の子で・・・クリスマスは・・・居ずらくて、申し訳なくて、お友達にのパーティに招待されたの、って言って、・・・・・教会に逃げてたわ・・・神父様も私の環境をご存知で・・・ミサが終わった後も、教会にいさせてくださったのだけど、ずっと1人だったわ」


しゅるっと、シートベルトが伸びて、かちん。と、金属音がなる。


「兄は1日も早く私を引き取りたくて・・・軍に入って、でしょう?・・・兄と一緒に暮らし始めても・・・簡単には家には戻ってこなかったの、クリスマスとかは、ね。”家庭”を持っている人が休暇を得るのを優先されたのよ、だから1人。で、クリスマス・ツリーも買えるような、余裕もなくて・・、すごく嫌いだったわ!」
「!」
「クリスマスなんてなんであるんだ~~~~~~~~~!!って、パリのクリスマス市のど真ん中で叫びたかったの!」
「それで・・・叫んだり、したの?」
「あら、よく解ったわね!」
「・・・・え?」
「そう、叫んだの!」
「・・・・本当に?」
「ええ、クリスマスなんて嫌いっ大嫌いっ!って」
「・・・・・で?」


003はクスクスと笑いながら、僕の方を見た。


「そしたらね、拍手喝采!」
「は?」
「そうだよね!プレゼント代だって馬鹿にならないよ!とか、毎年料理大変なのよ!とか、私振られて今年は1人よ!とか、みんなクリスマスに対する不満が次々に、おもしろかったわ!」
「・・・・・・」
「・・・淋しくて、泣いてたの・・・。今にして思えば、とっても恥ずかしいわ!!・・・ほんと、やんなっちゃう!ああっもうっ!009が変なこと言うから思い出しちゃったわっ」


両手で顔を覆う。
耳まで真っ赤になっている、003を見つめた。


「・・・嬉しいの」
「嬉しい?」
「だって・・・1人じゃないもの、今年は」
「・・・」
「ジャンがいなくても・・・・・・・私、1人じゃないもの」
「003?」
「だから、夢だったクリスマスがしたくて」
「・・・夢?」
「クリスマスツリーを飾って、暖炉に靴下を並べて、たくさんお料理を用意して、クリスマス・ソングを飽きるくらい聞いて、ちゃんとイブの夜には、ミルクとクッキーを用意して寝るの・・・。朝起きて、エッグノッグ・ラテを飲んで、お昼からケーキを食べちゃうのよ!チキンも、ジンジャークッキーも・・・カードからもクリスマス・ソングが流れて、・・・・・・変よね・・」
「・・・なにが、変?」
「人だったころに、あれほど・・・・夢みていた”クリスマス”が、人でなくなった今・・・・だもの」


顔を両手に隠したまま、003は動かない。
僕は右手で、シートベルトを引っ張り、かちん。と、それを止めて、車に鍵を差し込んでエンジンをかけた。


「・・・泣かなくても、いいだろ・・・・・」


ハンドルを切って、後方を確認しながら駐車場を出るために、車を走らせた。

珍しく、人がいた。
駐車券を確認する、年老いた男は、助手席で両手で顔を覆う003の様子を窺うように腰を曲げると、余計な一言を残す。


「ケンカかい?クリスマス前だ、早く仲直りしなよ!」






その声に、003の肩が揺れて、ごめんなさい。と、呟いた。


「お兄さんに、会いにいけばいいだろ・・・今ならちゃんと2人でクリスマスできるのに・・・・なんでフランスに帰らないの?」
「・・・・・・会えるわけないわ、こんな躯になって」
「でも、ちゃんと説明すれば・・・」
「説明して、”もしも”が起きたらどうするの?」
「もしも?」
「・・・・・・・・サイボーグの身内とわかって、得になるどころか、ジャンにどんな危険が」


会話はそこで止まったまま、車はギルモア邸へと走る。
シートに背を預けて、首だけを窓側へとむけてしまった003は、今、泣いているのかどうかは解らない。










「・・・クリスマスで、僕がしたかったことは」
「・・・・?」
「僕が、夢みていたこと、は・・・・・・。クリスマスツリーでも、ケーキでも、・・・賛美歌でも、なんでもないよ」


動かないままに、003は答えた。


「・・・じゃあ、何?」
「どうだろう?」
「?」
「君の夢にまでみた、クリスマスの協力をするから、僕がクリスマスにしたかったことを、協力してくれる?」



ギルモア邸裏にある車庫へと入れるまえに、一度ブレーキを踏んだ。
003が、ゆっくりと僕を見る。




すこしばかり、涙で滲んだ瞳が、綺麗だった。


「なにを協力すればいいの?」
「・・・・・・・003じゃないとできないこと」
「?」


不思議そうに、首を傾けた。


「サイボーグにならなかったら、会えなかった」








今年は、祝ってもいいかもしれない。
あなたの祝福があるならば。

















今ここに、勇気を持って伝えたる言葉を、彼女が受け入れてくれるなら。




















「日本のクリスマスは、家族よりも”恋人”のためのイベントって知ってる?」




みんなとクリスマスを楽しもう、キミが望むように。
けれど、ほんの少しの時間でいい。


僕のためのクリスマスが欲しい。






「・・・・・憧れていたんだよ、家族のいない僕にも、いつか・・・大切に、・・・その、・・・いつか恋人と一緒に過ごせる、あたたかなクリスマスが迎えられる日がくるかなって」













人工皮膚に沁みこんでいく冷気。
ひんやりとした膜がはり、感覚を無くしていく。

手袋をはめていない手を、薄いジャケットのポケットに突っ込んで、肩を狭めて歩く。





「も!またそんな薄着っ風邪ひいちゃうわっ」


バレエ教室へ通う彼女と、いつものデパートメントで待ち合わせをした。


「平気」
「駄目っ・・もうっ・・・今年はジョーに手袋ね!」


003の・・・フランソワーズの腕が僕の腕に絡んで、ポケットの中で手を繋ぐ。


「いらないよ、・・・それよりフランソワーズ、キミの手袋は?」
「ここにあるじゃない!」


ポケットの中の、彼女の手の力が・・・。


「・・・・じゃ、僕もいらない」
「今年はジョー、何がいい?」
「別にいいよ・・・・」
「駄目よっ!せっかくのクリスマスなのよ!」
「じゃあ、フランソワーズは?」
「そうねえ・・・今年もみんなと一緒がいいわ!」
「・・・・・たまには、2人きりでって考えてくれないの?」
「いやね!私の夢を壊さないで、意地悪だわ!」
「じゃあ、僕のはどうなるわけ?」
「私もいるじゃない、ジョーの夢もちゃんと叶えられてよ?」
「だから、確かに”みんな”の中に、キミも、いるけど・・そういうのは、そろそろさあ・・・・」
「ジョーのH!」
「・・・・・男ですから」
「もうっ、しっかりそういうところだけは”日本”のクリスマスに従うのね?!」
「日本人ですから」
「H!」
「・・・・・フランソワーズ、別に、”そういうこと”を目的で言ってるつもりはないんだけど」
「え?」
「フランソワーズのH・・・・。そんなことばっかり考えてたんだ?」


にんまり。と、僕は笑う。
ぼん!と、フランソワーズの顔が紅くなる。


「ん。わかった・・・じゃあ、僕からのプレゼントは、24日からの一泊二日のホテルだね、みんなと過ごした後なら、ディナーはいらないし。さて、どうやってみんなに知られないように邸を抜け出すかが問題で・・・あ、帰ってくるのもか・・・朝が早いのはゆっくりできなくて辛いね?」









通りすぎるカップルの会話が耳に残る。


「ジョーっ!やだっ、そんなプレゼントなんてっ」


街に飾られた赤と緑。
金と銀。


「落ち着かないよね・・・やっぱり。じゃ、クリスマス後でもいい?プレゼント・・・」



毎年のことながら、よく飽きないな、と、こころの中で呟いた。


「後?」




繰り返す毎日。
繰り返すイベント。





「ん、その方がホテルも予約取りやすいだろうしね」







何も変わらないようで、何かが去年と違うのだろう。




「!!」





意味も無く陽気な雰囲気を作り出す。
意味も無く人々を宗教イベントへとかり出す。



そんな人々の仲間入りをした、僕。




「みんなにも言い訳できるしね、色々と。・・・僕たちだけクリスマス、伸ばそうか?」
「もっ!なんでそんな風になっちゃうの?!」
「それだと、奮発してスイートとかにできるかもよ?」
「だからっジョーっ!」
「ルームサービスで、部屋で食べるのってどう?」
「ジョーっ!!」
「決めた!今年のキミへのプレゼントは、それにするよ。みんなの手前、一応当日のプレゼントは何かのカードでいい?」
「ちょっと!」
「じゃ、今から、どこのホテルがいいか探しに行こうか♪」





意味がないようで、意味があるのかもしれない。
キミと言う大切な人がそばにいてくれるから。




クリスマスと言うイベントが少しだけ待ち遠しい。




「ホテルのリクエストは?」
「・・・勝手だわ!」
「じゃ、僕が決めちゃうよ?」
「っ!・・・・・・ディズニーオーシャンズのホテル・・」
「ああ、はい、前にキミが・・そっか。それならみんなにも言い訳できるし、遊べるし。・・なんだ、しっかり決めてたんだ、フランソワーズのH♪」
「ばかあっ!!もうっジョーのプレゼントなんて用意しないんだからっ」
「いいよ、なくても・・・」







もうすぐクリスマスがやってくる。


「1人じゃないなら、・・・キミがいてくれるだけでいいから」





僕とキミだけの2日延びたクリスマスがやってくる。





end.










*歩いていて、クリスマスの飾り付けを眺めてました。
 もうバーゲンしてるのねえ・・・サンクスギビング前なのに?!

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