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ドライフルーツのパウンドケーキのために

ふと気づけば、誰もいなかった。



今日のおやつはドライフルーツのパウンドケーキにする予定。
どこに型をしまったのかしら?と、首を御菓子作り用の器具を入れた棚に突っ込んで捜していた。



「?」





ふと気づけば、人の気配がなかった。





「?」








キッチンから出て、ダイニングルームへ。
午後のまろやかな光がフローリングの床をあたためていた。



「?」



ダイニングルームから、リビングルームへ。
いつもなら午後の紅茶を楽しんでいるはずのシェークスピアの姿が見えなかった。


「あ・・・今日はお店だったわ」


そのままリビングルームを抜けて、吹き抜けの広間へ。
二階へと続く階段を見上げたとき、ざあっと波が浜辺へと打ち上げる音が聞こえた。



「・・・・?」



耳のスイッチを入れてみる。


イワンの寝息。
地下室にいるはずの博士の独り言。


聞こえるはずの、音が聞こえない。
ただ邸近くの海が一定の感覚で鳴り響くだけ。


「?」


振り返る、リビングルームのドア。
首を巡らせて見上げる二階の自室のドア。



玄関のドア。


躯をくるりと360度回転させた。









静かな、静かな、人のいない邸。










静かな、静かな、静かな邸に、響くのは波の音と、邸を覗きにやってくる午後の光。
リビングルームの壁にかかっている時計の秒針が妙に張り切っている気がした。



「?」



一歩、リビングルームに踏み出した、スリッパの音が、ぱたん。と、響く。




ざあっと、波。
かちっと、秒針。


ぱたっと、自分の足音。



ざあっと、波。
かちっと、秒針。



ぽたり。と、雫。





がちゃり。と、玄関のドアが開く。



「ただいま・・・あれ?フランソワーズ、どうしたの・・・!?」




風に揺れた亜麻色の髪。
伸ばされた腕が、彼の首にしがみつく。




「え?え?え?ええ?えええ?・・・ふ、ふ、フランソワーズ!?」









邸に響く、ジョーの声。
抱きつかれた、ちょっと特別な気持ちで観ている彼女が泣いている。



声を上げて、ぼろぼろと行く筋もの光る雫の路。



「え?な、なんで泣いてるの?!え?あ?あれ?言わなかった?・・あの、博士とイワンをコズミ博士の家まで贈っていくって・・・え?あれ?ほら、朝ご飯のときに・・・言ったよね?」


首を左右に振って、いつもとかわらない花の香りを振りまきながら、フランソワーズは泣く。






ジョーの首にぶら下がる形でしがみつくフランソワーズの肩に、そおっとジョーは手を置くと、さらに、フランソワーズは腕に力を入れてジョーに抱きついた。


耳を塞ぎたくなるほどに、大きな声をあげて泣くフランソワーズに、ジョーはどうしたらいいのかわからない。





一人にしてしまったことを、後悔した。



「ごめんね、・・・」



不謹慎にも泣いてるフランソワーズが可愛いと思った。



「ごめん・・行ってきますって・・・言ったと思ったんだけど...気づかなかった?」



恐る恐るフランソワーズの背に腕をまわして、ぽん、ぽん。と叩いた。



「ごめんね、・・・一人にしてごめん」









ぽん、ぽん。と、彼女を落ち着かすために、動いていた腕は、いつのまにかフランソワーズを抱きしめていた。


泣く、彼女。
抱きしめる、彼。



ざあっと、波。
かちっと、秒針が張り切って駆け回る。










耳を覆いたくなるほどの鳴き声は、耳を澄まさないと聞こえないくらいに小さくなった。
落ち着いたのだと、ほっとジョーは安堵の息を吐いた瞬間。


ざあっと波。





「・・・ジョーのおやつ、今日はないのっ」
「ええ?!」


胸の中で泣き枯れた声だったけれどはっきりと言い切ったフランソワーズ。


「もう、今日はないの!」


かちっと、秒針がフランソワーズの味方になった。


「でもっ・・だって・・・・さ・・・・」


躯を離して、覗き込んでくるジョーの下がった眉根を見ながら睨むフランソワーズ。


「・・・反省してる?」
「してます!」
「じゃ、キスして」
「?!」
「キスしてくれたら、おやつを作るわ・・・・慰めて」


赤がまじった葵の瞳がいたずらに笑う。




ざあっと、波。
かちっと、秒針。



おはようも、お休みのキスもできない彼にちょっとしたお仕置き。




「なんて、・・・じょうだ・・・ん、・・・・」




涙に濡れた頬に吸い付く手のひら。







ざあっと、波。
かちっと、秒針。



邸を覗き込む好奇心いっぱいの午後の光。
初めてのキスは海と同じだけ、塩辛かった。







「!!!っホントにするなんてっ!」
「え?ええええ?!」
「もうっバカっ!」
「だっっ!!って・・・」
「バカっジョーの・・・バカ・・・」
「フランソワーズ・・・」
「バカ・・・」
「・・・・・・・・バカでいいよ」





ざあっと、波。
かちっと、秒針。



静かな、静かな、人の気配のない邸。
初めてのキスは3時のおやつの、ドライフルーツのパウンドケーキのためだった。










end.




*平?!・・・でしょうねえ・・・。
 禁断症状(笑)
 思いつきで書きました・・・エディター直書き・・・見直しなし投稿っ!
 いいんです・・・今、休憩中なんで、いいんです・・・。
 横で睨まれてますけど、いいんです(苦笑)



最新のマックだから描ける・・・(涙・・・作業しなきゃ!)

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