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僕の赤
見上げたアーケードに吊るされた、巨大なバルーンは、サンタクロースが雪車(そり)に乗っていた。

どこかの店から賛美歌がながれ、通りかかった雑貨屋でもJpopのクリスマスソング特集。かと思えば、だれもが口ずさむことができる、万国共通?に知られる真っ赤なお鼻♪


少しばかりのracismを感じさせられる歌だと、ジョーは思った。

たった一匹だけ赤い鼻であることが理由で同じトナカイたちに笑われる、その鼻をスペシャルだとサンタは言う。




スペシャルだと、サンタクロースは言って赤い鼻のトナカイを励ました。

赤い防護服に身を包み。
戦うことがスペシャルだと、選ばれた人間だと、言われた。





ぴかぴかの赤い鼻は、暗い夜空を照らしだす。

暗い世界をかけぬける、赤い服は何を照らし出すのだろう。
何を導くのだろう。

誰のために・・・?








商店街を抜けると、冷たい冬の凛とした空気にさらされて、強化されているはずの人口の肌がそれらしく神経をつついて、躯を縮こまらせた。



視界に入る空。
色のない街路樹。
忙しなく目の前に表れる赤と緑に金色の飾り。

そのチャームの一つ一つはこのシーズンを迎えるまで、長くほこりをかぶって出番を待っていたのだろう。

すれ違う人の会話がSurround soundのように、リアルに通りすぎる。
邸のリビングに、それを取り付けたのは去年のことだと、思い出した。







初めてのそれに、彼女はびっくりしてきょろきょろと周りを見回した仕草が、瞬きする瞬間に隔離される黒のスクリーンに眩しく映し出された。






いつもの歩道を、早足に通り過ぎる。
昼食をごちそうになった中華店でさえ、なぜかクリスマスの装飾がされていて、そのアンバランスさに苦笑した、今日。

クリスマス・スペシャルランチを食べた自分も、アンバランスな一人なんだと、ため息をつく。







いつもみんなの笑われものは、サンタクロースの言葉に自信を取り戻す。
これでいいんだと。


この赤い鼻は自分のスペシャルな部分だと。
人と違う部分を恥じるのではなく、それを活かすことへと変えていった。









目的の場所へと辿りついて、白く冷たいガードレールに軽く腰を下ろす。
見上げたビルからピアノの曲がきこえ、日本語ではないカウントが聞こえる。
厳しい叱責の声が聞こえたと思えば、少女たちのその年独特な賑やかな会話が聞こえてもきた。





「彼氏でしょ!」
「・・・もお、そんなんじゃないわっ!」
「嘘っ!だって今日はクリスマス・イブよ♪」
「恥ずかしがらない、恥ずかしがらない!!」
「行くんでしょ?白鳥バレエ団のクルミに!」
「いいな~♪し、か、も!!!S席っっ」
「クリスマス・イブ!彼氏とクルミ割り人形の舞台!!そして、そして、聖なる夜に瞬くツリーの下で!!」


きゃあああああ!!っと、歓声があがる。


「も!!だからっ、クリスマスプレゼントを聞かれたから、チケットを・・・」
「それが彼氏のお勤めでしょう!!」
「そうよお!!彼氏だからでしょお?!」
「ね!舞台を観た後はどうするの?」
「ディナーでしょう!ディナー!!」
「その後は、クリスマスイルミネーションで輝く街を歩いて・・・」
「「「「「きゃああああああああああああああ!!!」」」」」


そうか。
夕食のことは、考えてなかったな・・・と、その一人の声に、ジョーはぼんやりと考える。
25日に家族がそろうために、今夜はとくに邸での予定がなかったことも思い出した。

ガードレールから躯を離す。
フランソワーズの方へと歩き出す。



「来週のレッスンでじいいいいいいっくり報告してもらうから!!」
「それと!!進展があった場合は、今度のお茶はフランソワーズの奢りなんだからね!」


賑やかな少女たちの視界に、近づいてくるジョーの姿が見えたらしく、その声のボリュームを落とす。と、後方を歩いていたフランソワーズの背を押す。


「いってらっしゃい~♪」
「ハッピー・クリスマス!」
「またね!」
「ほらああ、”彼氏”さんが待ってるわよおっ、行きなさいよおっ!!」


薄く頬を染めて、バレエ仲間たちにむかって何かを言い返そうとしているフランソワーズがいる。



10月の終わりに、冬の新作コートはショート丈のダッフルコートがショーウィンドウを飾った。
フードがついているが”ふさふさ”としたファーの縁取りがなく、袖がバルーンタイプにふくらみができているデザイン。
『バルーンスカートなの』と、説明されたそれと同じデザインを要して作られた袖らしいが、ジョーにはよくわからないでいた。



蜂蜜色をたたえる明るい髪色に飾ったトレードマークの赤いカチューシャに、そのコートはよく似合っていた。
ミルク色のシンプルな、障り心地の良さそうな膝頭が見える、ボックススカートによくあっていた。
焦げ茶色のロングブーツはダッフルコートの留め具が木の部分とあっていた。



何もかもが彼女に似合っていた。












けれど、赤が似合うとは言いたくない。
そんな自分の気持ちなど無視して、彼女は平気でその色を選ぶ。











赤い鼻のトナカイは、サンタクロースの言葉を喜び、夜空を照らしながら駆けていった。
赤に身をつつむ彼女は硝煙舞う戦いの地を、駆けていった。



誰に、何を言われて、キミは?
キミのサンタクロースは誰だったんだろう?












「・・・フランソワーズ」


ジョーがフランソワーズに近づくのに比例して、フランソワーズのバレエ仲間たちは離れていく、その方角に向けていた躯を、振り返ってジョーを見上げた、フランソワーズ。


「・・・・ごめんなさい!待たせたかしら?」
「ううん・・・」











フランソワーズのサンタクロースは誰だったんだろう?
あの、戦いの中で・・・。





「車じゃないの?」
「ああ、店の駐車場に置かせてもらった・・・」
「そう、じゃあお店の方へいくの?」


フランソワーズの背後から、こちらを興味深げに観る彼女の友達たち。
そちらへと視線をむけたジョーは、ぺこり。と、頭を下げる仕草をしたために、フランソワーズが振り返る。と、蜂蜜色の髪が空気に揺れる。


大げさに、わざとらしく手を振る友人たちに、さらに顔を頬を染めるフランソワーズを観ながら、自分の赤を思い出す。










ここにいることができたのは、キミのおかげ。
あのとき、あの場所に、キミの声があったから。






















キミの赤はボクを導いた。
暗闇の中にいたボクを照らし出してくれた。






















「・・・・電車の方が便利だから」
「じゃあ、駅に行くのね?」


並んで歩き出す。
フランソワーズと一緒に歩き出す。
とくに何も話すこともないので、美術館でもまわっているかのように、浮かれる街をそれぞれの瞳に映しながら。



「サンタクロース」
「?」
「サンタクロースは、いると思う?」
「ふふ、いるって信じていたいわね」
「・・・・ボクへのプレゼントを忘れないで欲しいなあ、もしもいるなら」
「ジョーは、・・・何が欲しいの?」
「・・・聞きたい?」


フランソワーズは肩にかけているショルダーバッグをきゅうっと握る。その中には彼へのプレゼントが入っている。
鞄に入る大きさで、ラッピングがくずれないようにと苦心した。


「え、ええ・・・く、クリスマスでもすものっ・・・・私があげられるものなら、明日にまで用意できなくても、chあ」
「フランソワーズが欲しい」
「・・・・え?」
「フランソワーズが欲しい。フランソワーズ、が、・・・いい・・」






ボクはボクの赤を、スペシャルにするために、キミが欲しい。

















「キミをボクにください」















end.



*やっぱり告白で終わる。・・・いや『僕たちは別に~』の二人だから・・告白と言うより・・・あっちのお願い?(どっちだっ! 笑)

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