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ヴァニラ味

温められたために乾燥したリビングルームから健やかな寝息が聞こえた。 スペシャル・サイズのL字型ソファの、端っこに隠れるように置かれた加湿器の 電源を通りがかったついでに入れる。 白い煙を吐き出しはじめて、彼の周りに目に見えない柔かな空気を作り出す。 人の気配に敏感なはずの彼らしくない。 渇いた唇を巻き込んで潤いを与える仕種に思わず魅入る。 毛足の長い、冬用のカーペットの上にそっと両膝をつくと、息を殺して彼の、 柔かな褐色の髪に触れる。 長い前髪が、ソファに押し付けられた方向に流れていたのをそっと持ち上げて。 滅多に見る事の無い、彼の隠れていない顔を見た。 規則正しい息づかい。 あわせるように、肩が微かに揺れる。 腕を折って、頭を置いて。 ソファの背に背中をぴたりをあわせて。 仰向けだった躯を、寝返りを打って横向きに態勢を変えたために、胸部分に 置かれていた雑誌がカーペットの上に落ちて変な折り目がついてしまっていた。 「風邪引くわよ?」 指が彼の髪から離れる。 その感触が皮膚に残る。 「襲っちゃうわよ?」 あまりにも可愛らしい寝顔に、言ってみた。 「・・・・なんて」 溜め息をついて、立上がる。 「・・・・・・ね」 遠ざかっていく、足音。 しゅうう、っと。加湿器がなる。 波の音が、ざああっと聞こえた。 妙に、時計の秒針の音が耳に響く。 キッチンから、こぽこぽと、珈琲サーバーがセットされた音に、髪と同じ色の 褐色の瞳が、片方だけ開く。 「襲ってくれて、いいのに・・・・」 再び、瞼を降ろした。 珈琲の香りが、ジョーの眠るリビングルームに届き始めたころ、聞き慣れた 足音が近づいてくる。 潤った空気に、満足げに微笑む。 さきほどと変わらない態勢の彼に、腕が痺れないのかしら?と、疑問に持ちつつ。 「・・・・そんなに安心して寝てると、危ないのよ?」 さっと、気まぐれの風が通る。 触れ合った唇に、ジョーは昼寝のフリを続けた。 再び、遠ざかって行く足音。 褐色の片目が薄く開いて。 閉じる。 香りよい珈琲の香りが、部屋を包む。 甘いヴァニラ・ビーンズの香りが混じる。 トレーの上に用意された3時のおやつ。 聞き慣れた足音が慎重にそれをリビングルームに運ぶ。 「・・・・・・起きて?」 寝たフリをする。 「ジョーの好きな、ヴァニラ・クッキー焼いたのよ」 寝たフリを続ける。 「全部、食べちゃうわよ、私が」 寝たフリをやめない。 「好きでしょ?」 「好きだよ」 ぱちり。と、褐色の双眸が開く。 「食いしん坊さん、おやつです」 「・・・フランソワーズ」 「なあに?」 ジョーの前に珈琲カップを置いた。 「・・・・・・おはよう」 「おはようございます」 「博士は?」 「地下なの、お茶の時間には呼んでくれてって言われて、 呼んだのだけど・・・」 のろのろと、ジョーは躯を起こす。 「出てこないみたいだね」 「あとで、様子を見て来てくれるかしら?」 ソファに座り直して、フランソワーズが焼いた丸いだけのヴァニラ・クッキーに 手を伸ばし、ぽん。っと口に放り込む。 「了解」 口元で微笑みを形作ったまま、手に取ったカップに浮かぶ自分を見つめて、 苦い液体で喉を潤す。 「ジョーってすごくシンプルな味が好きよね」 「好きだよ」 「また、焼くわ」 カップのふちに添えた唇が思い出す感触は、気まぐれな風。 「だから、ちゃんと襲ってよ・・・・今度から」 苦い珈琲とあっさり甘いヴァニラ・クッキー。 加湿器が必要とする水が足りないと赤ランプが点滅する。 「え?」 「こういう風に、ね?」 に手に持っていたカップがソーサーに重なる音と、驚きに揺れた亜麻色の髪。 「もっと好きになりそうだ・・この味」 1口かじっただけの、クッキーがフランソワーズの膝に落ちる。 お茶の時間にやってきた、足音がドア前で止まり、遠慮がちに引きかえしていく。 「ジョー・・・」 「駄目だよ、逃げたら」 膝の上に落ちていた、かじられたクッキーを、ジョーの指先が拾う。 「おやつの時間なんだろ?」 拾ったそれを、フランソワーズの唇にはさませて。 「いただきます」 両方を美味しく味わう、午後。 end. *ええっと、ヴァニラ味っていいですよね!飽きないですよね!  だから、なんだって言われても、わかりませんっ(泣)

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