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Little by Little・20
(20)






「ジョーが好きなのっ・・・ごめんなさいっ・・・」


当麻の耳に届いた、言葉。
フランソワーズの声がはっきりと、当麻の鼓膜を響かせる。


「当麻さん、ごめんなさい・・っ」


彼の脳へ、胸へと、投げられた。
ぱしゃり。と、静かな音をたてて投げられた、一言が、当麻の意思に反して彼の中に浸透していく。




---うん、・・・知ってる・・・し、わかってたよ・・・。



足下から吹き上げた風が当麻を包む。
せり上がってくる冷たい風が、じんじんと頭皮を痺らせ、一歩前に出した足が床におりたときに受けた衝撃が全身を震えさせた。
指先まで届いた震えのせいで、フランソワーズの手を握っている指に力がはいらない。


「当麻さん、私っ・・・・・・」


フランソワーズは強く引っ張られた手を、取り戻すようにぐっと脚に力を入れて踏ん張った状態で、視線を磨かれた床に反射した自分を見下ろした。


「散歩、してくるよ・・・、1人で・・・いいいかな・・」







フランが、ぼくを通して、ぼくではない誰かをみていたことも。
それでもぼくは、いいと思った。

島村にはできないこと。
ぼくだからできること、だと、思ったから。
君とは違う、サイボーグじゃないぼくだからこそ、島村よりも・・・。

ぼくは、ぼくで、フランを好きでいることに、島村より劣ることなんてない。
たとえ、彼が”009”だととしても。


たとえフランが島村/009を好きでも・・・。





「当麻さんっ」


握られていた、手が、するり。と、離れた。
その手を、追いかけようとした。




<<駄目ダヨ、ふらんそわーず。彼ガ求メルモノニ答エラレナイノナラ、オイカケチャ駄目。>>





腕をのばせば届く距離にある、当麻の手。
その手に向かってのびていく途中、フランソワーズは落としていた視線を上げた。


柔らかなカールを描くブラウンカラーの髪。
陽にあたると、亜麻色よりも少し濃い目の色になる。

シナモン・カラーの瞳。
まっすぐに、自分が信じていることを、ありのままの姿を受け止めて、みつめる。
嘘のない、強い光。



純粋さが。
素直さが。
誠実さが。
笑ったときの瞳の細め方が・・・。

ジャンと、同じ色の、髪。
陽にあたると、亜麻色よりも少し濃い目の色になる、髪色。




最低。
私は、最低・・・・・。


自分のことしか考えられなかった。
自分のことだけしか、感じられなかった。

サイボーグを理由にしても、それでもいいと言ってくれる、当麻さんに救われていた。
望めない現実に。





取り戻すことができない、過去の風景を感じられて。
あのときに、あのころの、私を感じていた。


私は、当麻さんの好意に甘えていた。
私は、当麻さんを通してその後ろに、いる、人を、みていた。





兄さんを・・・・






サイボーグとなった自分を受け入れてくれる、ことを。
昔のように、一緒に暮らせる、ことを。


人として、妹として、・・・・家族として。
受け入れてくれる、ことを。


人として会い、サイボーグだと言うことを知っても、かわらずにいてくれた、から。
優しいあなたに、好きだと言ってくれる想いに、私は、夢を見ていた。








ジョーに・・。


それを、


仲間に、

家族に、

それらを求められなかったから。





「わかってるよ、みてりゃあ、お前がちょっとばかしはあいつに惹かれてるくれえわよ・・・。でも、それは一時的なもんだぜ?言っておいてやるよ、お前は逃げてんだよ、ジョーのことが好きすぎて、それを言えねえまんまで、その思いを散らすために、当麻を使ってんだぜ・・・」



ジェットの言う通り・・・。



「・・・ジョーにむけられなくて溜まった思いを、都合よく現れた篠原で解消してんだよ、お前は」



私は、当麻さんの気持ちを、利用していた。
しっていながら、ダメだとわかっていながら、・・・当麻さんの気持ちを傷つけたくないと、言う理由をつけて。



「怖がるな、・・・人を傷つけないで生きて行くなんて無理なんだからな!お前の甘い考えだぜ、欲しいものがあれば、掴みたい何かがあるなら、人を蹴落として、傷つけても、掴み取れっ相手をかまうな、自分だけを見てろ」



卑怯な言い訳・・。
誰も傷つけたくないと言いながら、結局、誰よりも一番自分が傷つきたくなくて。


また、私は逃げていたのよ。

色々な理由をつけて、当麻さんの気持ちから逃げていた。
自分にとって都合のよいように解釈して。





自分のことだけで精一杯で。
今の自分を立たせることしか考えられなくて。
私はまた、同じ事を繰り返して・・アランに、彼にしたことをと、同じことを繰り返して・・・る・・・。













どうして?
どうして好きって思ってくれるの?



『フランソワーズが、好きだ』



こんなに、卑怯な私を・・・。
ちゃんと、向き合う事ができない私を。

人に、人を、好きだと言われる、思われる、資格なんてないわ・・・。





立ち止まった、フランソワーズはのばしかけた利き手を押さえるように左手で包み、ぐっと胸へと押し付けた。
乱れることも歩調を緩めることもなく、当麻はフランソワーズから離れていく。


開いていく当麻との距離に、フランソワーズはこれからの自分が見えた気がした。



当麻の、その背をフランソワーズは見送ることができずに、固くまぶたを閉じる。
ホテル入り口の自動ドアが、当麻がのせた足に反応する。


「当麻さん・・ごめんなさい・・・・本当に、ごめんなさい・・・・」


その場に立ち尽くしたままだったフランソワーズは、深く、深く、彼にむかって頭を下げた。




エレベーターのドアが、フランソワーズの背後で開くと、長身のつんつんとした髪を逆立てた赤毛の男が、出て来た。
泣きむせて揺れる躯を必死になって支え踏ん張って頭を下げた姿勢のフランソワーズに近づくと、その背に優しく手を置いた。


「・・・・泣くんじゃねえよ、これでいいんだぜ」


フランソワーズはゆるゆると、首を左右に振り、ジェットの言葉を否定した。


「よくない・・・わ・・・・・ぜんぜん、よくないの」









####


「やれ、ずいぶん待たせられたのお」
「博士、申し訳ありませんでした・・」


アルベルト、ギルモアそしてイワンはの3人で昼食のためにでかけたが、ギルモアだけがその場に残ったと、ジョーは説明された。


「座りなさい」
「・・・連絡もせずに、無断で・・・」

教えられた場所は、ギルモア博士が泊まるホテルから最寄り駅の途中にある、小さなカフェだった。


「ジョーや・・・」
「ゼロz・・・フランソワーズには、一切責任はありません・・・僕が、連れ出しました。申し訳ありませんでした」


こじんまりとしたカフェは、数年前の流行を取り入れたままの現状維持の店内。
日本人がヨーロッパを意識したときに脳内に描くカフェを体現しようとしたインテリア。
薄い卵色の壁には、ローアカル・アーティストの作品展示場所としているようで、今週のアーティストの画風と、店内のミスマッチ具合が妙に微笑ましい。

そんなカフェに足を踏み入れたジョーは、案内のウェイトレスには片手を上げただけで、まっすぐにカフェ内の最奥の壁に設えられた4人席へと向った。ゆったりとした2人がけのソファに座った立派な白ヒゲを蓄えた、初老と目が合うと、彼は席にもつかず、その場で腰を90度に折り、深々と頭を下げた。


「ギルモア博士、申し訳、ありませんでした」


トレーに水を入れたグラス、そしておしぼりをのせてジョーをおいかけたウェイトレスが、びっくりしながら、持って来た水とおしぼりと、ジョー、を交互に見ながら、彼の背後に立つ。


「すまないね」


ギルモアは、目尻に深い皺をよせてウェイトレスに話しかけた。


「・・・これ、ジョー・・お仕事の邪魔をしてはいかん。座りなさい」


”座りなさい”と最後に言った言葉を強調した、ギルモア。その令に従い、すっと頭を上げたジョーはギルモアから視線を外さずに、向い正面に腰を下ろす。ウェイトレスは自分の勤めが果たせるようでほっと胸を撫で下ろし、業務用の笑顔を取り戻しながらジョーの前にグラスとおしぼり、そして小脇に挟んでいた、メニューを置いた。


「ご注文がお決まりでしたら、うかがいますが?」


ジョーは置かれたメニューを、手にとり首を横に振りながら、何もいらないと示した。
そんなジョーを眺めていたギルモアが、にこやかにウェイトレスに声をかけた。


「儂にロイヤル・ミルクティーのおかわりを、そして彼には珈琲じゃ」
「珈琲はアイスですか?ホットですか?」


ウェイトレスの質問に、ギルモアはジョーを見た。


「・・・ホットで」


ギルモアと視線を合わせたジョーが、応えた。


「かしこまりました」


ウェイトレスがにこやかにジョーから受け取ったメニューを手に、去って行く。
その後ろ姿を見送りながら、ジョーが口を開く前に、ギルモアが会話をの主導権を握った。


「可愛いウェイトレスさんじゃな、フランソワーズと・・・”みかけ”変わらんくらいの年齢じゃろうて。アルバイトかのお?・・・さっきな、ランチセットを頼んだんじゃが、ほれ、ここのチキンはマスタードのぴりっと効いたやつらしくてな、・・・辛さとか心配してくれたんじゃ」
「はk」
「謝るくらいなら、初めからフランソワーズを連れて行くんじゃない」


ぴしゃり。と、ジョーの言葉を遮った。
ジョーの肩が、揺れて、彼の前髪がその揺れに反応する。


「ですがっ」
「・・・・終わってしまったことを、ぐずぐず言うでない、ジョー。お前たち2人が何事もなく無事であったことがわかれば、それでいい。誰も今回の、009、003の行動を責めてはおらん。ミッション中の無断外泊に関してはのまた別の機会に償ってもらう。今はこれでしまいじゃ」
「博士・・」
「しまいと言っておろうが」
「でも」
「聞き分けなさい、009」


眉根を下げ狼狽しきっているジョーの表情に、ギルモアはなんとも言えない、慈しみのを込めた微笑みで見つめた。


「そんな顔をするでない、まったく・・・。これくらいの悪さ(ハプニング)で、みんながいちいち動揺して腹を立てると思っておるのか?」
「けれど・・」
「誰も気にしとらん、気にしておるのは、本人ばかりじゃ」
「・・・・博士」
「何か思うところがあるなら、自分なりに行動で示しなさい」
「・・・・・・・・・・・・・はい」


泣き笑いに近い微笑をつくり、ジョーは静かに頷いた。



---ふむ・・・・・。



その頷きに、幼い顔立ちの印象が拭えなかったジョーの表情の変化を見つけた。



「それで、明日からどうなるんじゃ?」
「・・・明日から、ですか?」
「そうじゃ」


ギルモアは自分の言葉を繰り返しながら頷いた。


「明日からじゃ」
「・・・・・・・明日は、ホテルを午前中にチェックアウト。津田の姉2人はもう一泊します。ですので、津田と008は1日遅れてホテルからギルモア邸に戻ります。新学期が始まるまでの間、津田は実家に戻りますが、戻るまでの一週間ほど今まで通りにギルモア邸に滞在します、彼の通う病院へはギルモア邸の方が都合がいいので、実家に戻る前にあと2回通院予定です。007はそのままあやめ祭の後片付けが済むまで篠原さえこの警護。006には石川(斗織)の方へ。また篠原さえこが彼の転院を考えているようですので、その辺りを007と2人で任せます。004のメンテナンスは週明けから。ですが、先に005と002のメンテナンスをすることにスケジュールを変えました。002から始めます。その間に004にはコズミ博士、恩田から交流会の動きをより細かく調査してもらい、ブラック・マーケット(BM)の調査をしていた005の方も引き継いでもらいます。002と005の2人がアメリカに行くのですが、004がイギリスで調査するので、その補佐としての役割を負担してもらいます。002が向こうで動けるのは助かります。001はまもなく夜の時間ですから、3人のメンテナンスのヘルプには僕が。篠原当麻ですが、篠原さえこから篠原本家の住み込みの手伝いを頼んでいた女性が体調不慮から辞めたいと言われたようで、これを機に家を処分するようです。ですので、開寮までの間、篠原当麻の身柄をギルモア邸で預かって欲しいらしく、007からそのように報告がありました」


切りの良い部分で、009は報告を止めた。


「お待たせいたしました」


トレーにのせた、ギルモアがオーダーしたロイヤル・ミルクティと珈琲が配膳された。
ギルモアがウェイトレスにむかって、ありがとう。と、礼を言うと、ウェイトレスは小さく頷くような仕草を見せて、席から離れた。


すっとジョーの唇が開き、エア・コンディショナーで冷やされた店内の空気を肺に送った。


「篠原当麻のギルモア邸滞在の件に関しては」


ジョーが続きを語ることをギルモアが盛大なため息をついてみせることで止めた。


「バカもん・・・儂はそんな事は聴いとらんぞ」
「でも、博士・・」

ギルモアは、テーブル左端っこに置かれている砂糖の瓶を手に取り、白い陶器でできた蓋の突起をつまんだ。


「儂が訊いとるんは、明日から、・・・ジョー」


そなえつけの銀色のスプーンで砂糖を一さじ、ロイヤル・ミルクティーにいれる。
ジョーはギルモアの声に耳を傾けながら、落ちていく砂糖を見ていた。


「お前はアルベルトとイギリスへ行く準備をするのか、フランソワーズとのデートの準備をするのか、どっちじゃ?」


スプーンを戻し、蓋をして、瓶をもとの位置に置いたギルモアは、カップソーサーにそえられている、装飾が少し凝ったティ・スプーンを持ってゆっくりとロイヤル・ミルクティをかき混ぜた。


「アルベルトに同行するなら、メンテナンスは009、お前からじゃ。次に004。009の世話なんぞなくとも002と005は勝手にアメリカへ行くじゃろうて」


ジョーはさっと長く伸ばした前髪に表情(かお)を隠し、視線を珈琲カップにそそがれた漆黒の液体に固定させた。


「デートの準備なら、手伝わないいかんからのお。・・・・その前に、006の発案に対して真剣に考えねばならんな」
「006?」


ジョーは固定させていた視線を、ギルモアへと移した。
ギルモアはすするように、ほんのりと甘くしたロイヤル・ミルクティで口内を潤した。


「001が起きている間に、篠原当麻、津田海、篠原さえこ、恩田充弘、クラーク・リンツ、以上5名の我々に関する記憶を消す事じゃ」
「!?」
「今朝、006が001に言ってきたそうじゃ。・・・002,008,009、の3名の短期留学生としての記憶だけ、残すのじゃ、恩田氏とクラーク氏に関しては、コズミ博士を通してい知り合ったドイツ人、004のみ、記憶に残させる。今後のつじつまを合わせるためにじゃ。海くんには改竄した記憶を与える。詳しいシナリオは007と考えるが、008の学院滞在のこともある。”足”のこともな。表で公表している通り(ないと思われていた事故の後遺症の発見が遅れ、悪化、左足膝下から切断)のラインにそわせるじゃろう。008との関係はそのままにしておいてやりたいし・・やれ、ちと大変じゃな」
「なぜです・・なぜ、・・・記憶を・・・それは、以前にも話し合いました。僕たちに関わった事で、関わった人たちの人生にBGに狙われる危険性がない限りは、人の経験を、真実を、・・・取り除くような不自然あ行為はしないと・・・。そういうことをし始めたら、切りがない上に・・・、そのことに対して、記憶除去に関しては006が一番・・・」
「006が一番反対していたのお、サイボーグであることを恥てはいない、サイボーグであると言う事実を隠すなんておかしい。そして、サイボーグがこの世に存在し、自分たちを理解してくれる未来を作るためにも、と・・・なあ。その006からの案じゃ」
「・・・」


ギルモアから訊かされた、006の案に、ジョーは苦しげに首を左右にふった。


「許可、できません」
「理由はなんじゃ?」
「・・・・・・・・その、必要がないからです」
「危険性と言う面で、篠原さえこ、当麻、両名は・・・」
「博士」


ジョーは肺が取り込めるありったけの量の空気を一気に吸い込んだ。


「記憶改竄の件については、すでに話し合いました。それでみんなも納得できているはずです」
「確かしにのお、しかしじゃ」
「いいえ、博士。・・・・僕たちはこれから・・・人として歩き出すんです。戦い守って来た、世界で、生きていくんです。日本に”邸”を構えると決めたときに誓い合いました。まずは、ここからと・・・。今からであっていく人たちを信じることから初めなければ・・・。人が、人として生きて行く中で”自然”であるべきだと思います。ミッションが絡んだ今回のことで出会った彼らですが、・・・彼らを信頼できないなら、今後も同じだと思います。邸を日本に構えた意味もありませんし、みんなでまたドルフィンの生活に戻った方が、いい・・・ですよね?」
「・・人と関わり、生きて行こうと選んだのは、お前たち自身じゃ」
「・・・はい。だから・・・・・006には俺から言います。大丈夫だと言うことを、です。張大人に謝らないと・・本当に心配をかけてしまって・・・」


ふうっと、全身で息を吐き出すと、ジョーは珈琲カップを手に取り、熱いそれを無理矢理に喉に流し込んだ。


「俺も、・・・フランソワーズも、・・・・ちゃんと、ここで生きて行くんですから・・・・・何が起きても・・この、世界で」


珈琲カップを置き、ジョーは店内へと視線を巡らした。


小さな街の、小さなカフェに。
偶然、その時間に居合わせて、同じ空間を共有している客たち。
カフェの外を行き交う、人の流れ。


「そうじゃな・・・」


ジョーの横顔にむかって、ギルモアはにっこりと微笑んだ。
言葉にするには些かたよりない、小さな変化だけれど、ギルモアはこころの中でジョーを抱き締める。


2人は、それ以上の会話を続ける事はなく、ギルモアはゆっくりと2杯目のロイヤル・ミルクティを飲み終えた後に、カフェを出た。


「で、昨夜にフランソワーズに告白したんじゃな」


カフェを出てホテルへと歩き出したギルモアが隣を歩く、息子と言うには少し若すぎる青年を見上げ、にニヤリと嗤った。
ジョーはすっきりと綺麗に舗装されて、ゴミ一つ、小さな石ころ一つ見当たらない歩道で躓いた。


「はっかsっっっ」
「告白したんじゃろ?」
「・・・・っm・・あ、っsと、ええっと、ですね」


よろけた体勢を整えて、意味もなく喉を鳴らした。


「言ったんじゃな?」


ギルモアはずいっとジョーの方へと躯を寄せて、目に力を入れてきらりとした好奇心の眼差しをジョーへとむけた。


「あの・・それについて、報告の義務はないと思うんですが・・」
「何を言っとるか!たまには、儂が誰よりも早く新鮮な最新情報を仕入れてたいんじゃっ、儂には”通信”がないせいで、いつも後回し!いつもいつも事が起きた大分後に聴かされるばかりで!!」
「博士・・」
「恥ずかしければ、YESかNOで答えなさいっ!」


ジョーはギルモアの迫力に、冷や汗をかきながら、こくん。と、浅く首を縦に振った。


「YESか!?」
「・・・・YES、・・・・です」
「そうか!とうとう!うむ!!」


立派な白いヒゲをゆっさゆっさと揺らして、軽やかなステップでスキップする老人の後ろを、人間、ここまで“赤く”顔を染める事ができるのか?と、人々の視線を浴びる、ジョーの2人が、ホテルへと帰って行った。






「・・・・島村」

その視線の中に、まったく別の意味でジョーへと投げる視線。







ギルモアとはホテルのロビーで別れたジョーは、気持ちを入れ替えた。
フロントデスクの端に置かれた、プラスティック性の無駄をいっさい省いたデジタル時計が示す時間から、今日の”ミッション”開始時間を逆算する。
事前に立てられているスケジュールと照らし合わせて、今、009がすべきことはまだない。


ホテルロビーを出ると、ホテルエントランスと一般道とを分ける、植え込みがある。
その植え込み部分に軽く腰を下ろしている人物と視線を合わせた。そして、その相手から視線を外すことなく近づいた。


「1人なのか?」


ジョーから声をかけた。


「・・・ここにぼくがいることが、みえた?」
「いや、・・・・カフェを出たとき、篠原は駅にむかっての対岸の歩道を歩いていただろ?・・・そっちが俺と博士に気づいて、ここまでついてきた、違うかな?」
「ぼくに気づいていたんだね?」
「今日までは1人では行動しないでくれと、頼んだはずだったんだけど?」


当麻の周りを見回すように、首を巡らせたジョーだけれど、すでに009として仲間の”気配”がないことに、彼が単独行動したことは解りきっていた。


「問題ある?・・・・・島村だって、昨夜・・無断でいなくなったじゃないか」
「俺と、篠原は別問題だよ」
「・・・・そうでもないと思うけど、・・・・・無断で、フランと2人でいなくなったんだから」


当麻は体重を預けていた植え込みから立ち上がった。


「話したいんだけど、時間は・・大丈夫だよね?」
「・・・・・ああ」









====21へと続く。


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