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イワンは密かに願いを叶えた
葉のない樹の枝につもった雪。
雪の重さに少しだけしならせた様は、とても綺麗だと思う。


自由に伸びた枝は、重なり合うことなく、広がり、伸びて行く先に次の季節に降り注がれるであろう、あたたかな陽光を想像させる。
まるで。



そう、まるで。


新しい未来に手を伸ばしているように。











ばん!!!っと、助手席のドアが乱暴にしまった。
大型バンに乗って街までの買い出し部隊に選ばれた、赤毛。


「ったく、ホワイト・クリスマスなんてロマンチックなんかじゃねえなっ。迷惑なだけだっ」
「まあねえ・・・この大荷物がなくて、同行者が恋人たちにガンを飛ばしまくって迷惑かけまくりのアメリカンに、クリスマスにも中華メニューしか考えない中国人、紅茶の葉を選ぶのに2時間かかる英国人。・・・と、一緒じゃなきゃ、それなりにこの雪もロマンチックだったと思うよ」


運転席から盛大な溜め息をこぼしたピュンマ。


「ほらほら、若いの。ぐちってないで、荷物を下ろすぞ!」
「アイヤー、さっきほりも雪ひどくなってるアル・・・」


車から降りた張大人は、腰近くまで積もった雪にずっぽりと埋まっていた。


「ジェロニモが雪かきしても、間に合わないなあ、こりゃ」


車庫から邸までの道は、昼間にジェロニモの雪かきをしてくれたお陰で、荷物を手にしても不自由無く歩く事が出来たが、すでに、その道も新しい雪が積もり始めて、あと数時間もすれば歩行困難な道になりそうだった。


<買イ出シオ疲レサマ>


玄関のドアが開く。


「あ。ジェロニモ!!ちょうどよかったアルネ」
「ああ、荷物はそのままでいい」
「アルベルト?」
「出かけるでな」
「なんだよっ、博士に・・・イワンもか?!」


トランクを開けて、運転席から出ようとしたピュンマを、アルベルトが再び車の中に押し込めて、ジェットにむかってニヤリと嗤い、その嗤いに含まれる意味をなんとなく理解して、ニヤニヤとした笑いに変えて進んで助手席に座り、シートベルトをパチンとはめた。
開けられたトランクをジェロニモが閉めて、雪に埋まっていた張大人をすぽん!と抜き出すと、後部座席へと座らせる。
イワンを抱いた博士に背中を押されて、グレートはわけも解らずに再び車内に戻った。





「どこに行けばいいわけ?」


運転席で、怪訝に眉を寄せたピュンマ。


「避難場所はコズミ邸と決まってる、だろ?」


答えたのは、肺に溜まった空気を吐き出したアルベルトだった。
ジェットはニヤニヤした笑いを浮かべたまま、後部席へと振り向く。


「「「「避難???」」」


わかっていないのは、3人。


「これ、アルベルト。そういう言い方はよくないぞ。・・・まあ、せっかくのイブじゃし、なんじゃなあ。ここ最近はばたばして、それに、この間のミッションは・・色々と誤解を生むような・・・・まあはっきりせんジョーが悪かったんじゃし、本人も身に凍みたじゃろうて・・」
「「「ああ・・・」」」


ギルモアの言葉に、ジェットをのぞいた買い出し部隊が納得する。


「ま!ホワイト・クリスマスは恋人たちの、ってことだな!!迷惑この上ないのは、ここでもってか?」
「何が起こるか、お楽しみ、だね!!」


ピュンマが再び、キーをまわしてエンジンを噴かす。


「まだ恋人同士じゃないアルよ!」
<・・・>
「形にこだわる必要ない。」


ゆっくりと、2人を残して邸を離れて行くバンが1台。


「まあ、いいじゃないか。ジョーがやっとこさその気になって”けじめ”をつけるんだからなあ!クリスマス・イブっていうのが、にくいねえ!」
「けじめだあ?今更んなもん、必要ねえだろ!?」
「必要あるネ!ちゃあんと、恋人宣言してないから、あんなラブトライアングル地帯が発生したアルよ!」
「見てる方はそれなりに面白いが・・・。とばっちりはたくさんだ」
「「「「「「「「003の機嫌がなあ・・・」」」」」」」


フロントガラスにむかってくる白を、きゅ。きゅ。とワイバーが機嫌良く左右にふりわける。


<今日ガ駄目ナラ、来月ノ誕生日ダネ>


おませな赤ん坊の一言に、誰もが苦笑いを浮かべる。


「悪いな、ジェロニモ。明日はお前さんの日なのに」
「形にこだわる必要ない。」
「いいじゃねえかよ!じーさん家で盛り上がるぜ!!」
「それでじゃ、ジョーが何をプレゼントするか、誰か知っておるか?」


のんびりとした、ギルモアの質問に、運転中のピュンマから答えた。


「本屋につきあったとき、モータースポーツ以外の雑誌を買ってましたよ、メンズ○ン○とか!初めてました、ジョーがそういう雑誌を買うの」
「オレのパソでネットサーフィンしてた履歴、女もんの店ばっかだったぜ?」
「ジェット、お前は人の履歴を覗くのか?」
「オレのパソだぜ?!何しようが、オレの勝手じゃん」


グレートは、二度とジェットのラップトップを拝借しないことをこころに誓った。
だいたい彼のは邸のリビングルームに放り出されているので、ちょっとしたときに使うのに都合がいいのだ。


「フランソワーズのお気に入りの店は、まだ日本には進出してないが、この間取り扱っている雑貨店があったのを見つけたと彼女と話している時、近くにいたな」
「物じゃなく、気持ちが大切。と、言っておいた。」


ジェロニモの言葉に、やはり今日が・・・と。一同同じ考えでまとまる。


「ワテ、何も知らんアルよ・・・」
「儂もじゃぞ」
<僕ハ・・・マア。黙ッテオクヨ>
「結局、ヤツが何を購入したか誰も知らないんだな?」
「「「「「「・・・・」」」」」」
「決まってるだろう!」

沈黙した車内に、グレートの芝居がかった声があがる。


「愛の告白=指輪だ!」
「プロポーズなんてゼッテー無理だって!」
「100億光年先の話しアル」
「そうじゃのう・・・、恋人になるのに、何年かかったことか」
「まだ、恋人になれたかどうかもわからないですよ、博士」
「本人の気持ち次第だ。」
「・・・しかし、だ。ああいうタイプは極端だからな」
<僕、妹希望>
「「「「「「「「!!!!」」」」」」」











####



飾り付けが終わったリビングルームのクリスマス・ツリー。
まもなく買い出し部隊が戻ってくるはず、だった。

フランソワーズが今日のイブのためにパーティの準備を整えていたけれど、当日になって、あれがない。これが足りない。と、自分たちの”定番”のものが出ない事に不満を言い出した我が侭な家族たち。

昨夜から降り始めた雪に、冷蔵庫の中身を心配する張大人。
当分、邸に籠る事になりそうだ。と、言う意見が一致して、買い出し部隊が結成された。


いつもなら、運転手役は誰も何も言うことなく彼になる。
けれども、今日は違った。

彼女の傍にいて、2人きりになるチャンスをうかがうために。
それとなく、そういう会話が始まった時そっとその場から離れた。









離れた先にいた1人の家族に声をかけられたことがきっかけになって、2人きりになるチャンスをくれた。







リビングルームにそれぞれが用意したプレゼントたちを、クリスマスツリーの下に置いた。
暖炉に火をくべて、温めた部屋。

フランソワーズがいれたエッグノッグ・ラテの味に、びっくりしつつ。


「エッグノッグって・・玉子が入ってるの?」


甘いけれど、ベタベタした甘さではなく、少しばかりのアルコールの香りがジョーの舌を楽しませた。


「少しだけ。基本は牛乳、クリーム、砂糖、溶き卵、シナモン、ナツメグで味付けをして、あとは好みのレシピね」
「ラム酒とか?」
「秘密よ、それは。003オリジナルだもの、簡単には教えてあげません」


暖炉の火を使って、焼く予定のフルーツ・ブレッドに、ジンジャー・クッキー。

フランソワーズが暖炉の火を使って料理すると言い、それを手伝うと申し出たのは、ジョーだった。
いつもなら、張大人がジェロニモが手伝うようなこと。

珍しい彼の申し出を、断ることはない。


「フランソワーズ」
「なあに?」
「気づいてる?」
「003よ、私」
「そうだよね・・。気づかないはず、ないか」


暖炉から離れて。
ソファに、微妙な距離感で座る、2人。


「帰って来てくれないと困るわ」
「困る?」
「だって、せっかく準備したのよ?私、すごくがんばったのに・・・たくさんお料理、用意したのよ?」
「・・・・・・知ってる、けど・・」


ぱちぱち。と、暖炉の木が火に跳ねる音。
飲み終わったラテを、珈琲テーブルにおいたのは、ジョー。


「あのさ」
「?」
「なんで、みんなが・・・・その・・・気を使ってくれたか、わかる?」
「・・・」


フランソワーズは無言で空になった、ジョーのマグを手にもって、立上がった。
ダイニングルームへと逃げるように去って行く、フランソワーズを黙って見送る。


脳波通信に感謝したのは初めてだったのかもしれない。
どんなに美味しい飲み物で喉を潤しても、緊張に固まった喉はなかなか音にしずらかった。



フランソワーズが座っていた場所に、そっと手を伸ばし、まだ彼女のぬくもり残るそれに勇気をもらう。
ソファから立上がって、リビングルームのライトを消した。

すっかり陽がおちてしまったリビングルームの庭に繋がる窓から、うっすらと雪の白が仄かに光ってみえた。
クリスマスツリーに飾り付けた、ライトの電源をいれようと、コンセント部分にふれたが、そのままオフにした状態でダイニングルームへと向かう。








足音を、耳に捕らえていた。

邸にみんながいれば、つぎつぎにテーブルに並べられる予定だった料理たち。
もうキッチン内で、フランソワーズがすることはなかったために。ジョーがつかったマグを洗うことにした。
緊張に震える心臓を落ち着けさせるために、スポンジをたっぷる泡立たせることに集中する。











<好きだ・・・>












ささやくような通信。
フランソワーズは、その声がきこえなかったかのように振る舞った。


<僕が好きなのは、フランソワーズだから>


フランソワーズは、そっと泡で包んだマグを湯で流した。


「・・・・・」


それを、軽くタオルで拭き、食器をしまう棚におく。。


<好きだ>


ダイニングルームから遠ざかっていった足音を、ためらいがちに追いかけた。
頭に直接響く、声に誘われて。












<部屋にいる・・・僕の気持ちを受け取ってくれるなら、来て・・・・>















ずるい。と、思うけれど。
自分も同じ。


答えを今日まで引き延ばしていたのは、自分だから。
ミッション中にも関わらず、好きだとジョーが告白してきたのは、擁護者の女性のせい。



そんな風に、告白なんてして欲しくなかった。

私が誤解するとでも?
あなたと他の女性に何かあることなんて、見慣れていたし、慣れてもいた私に、いまさら?






私のあなたへの”好き”がとても薄っぺらいものに感じてしまって。
やっと言葉にしてくれたあなたからの”好き”を保留にしていた。

”私たちは別に~”だもの。










<好きだよ・・・・・・フランソワーズ>













キッチンのライトを消す。
続いてダイニングルームのライトも。


誰もいないリビングルームのライトは消されていた。
窓からみえる淡く光る白に視線を移してから、クリスマスツリーのライトの電源をいれた。







<好きだ>










ちか。っと、光ったツリーのライトに合わせて、ジョーの声。


輝くツリーを残して、リビングルームを出て行く。
2階へと続く階段を上って、右に曲がる。

ジェットの部屋の前を過ぎて、グレートの部屋前で、再び右に曲がる。
長い廊下の突き当たりにある、灯とりの窓にかけたリースの、赤いリボンが瞳に飛び込んできた。


ふと、足をとめて。











<好きだよ>













また、足をすすめる。


一番端っこの彼の部屋のドア前に立って。
本当に、このドアをノックして良いものか、悩む。


クリスマスの魔法は、明日の朝にはなくなってしまって。
すべて。


彼の声は幻だったなんて。
夢だったなんて、ことになるのでは?と、疑ってしまう、自分が悲しかった。


それくらい長く、曖昧だったから。








「いつまで、そこに立ってるんだよっ」



突然、ドアが開いた。
伸びてきた腕に抱きしめられて。


「フランソワーズっ・・・・」



キスが降る。





降り止まないキスは、降り続く雪が止んだ後も、止まらなかった。

YESもNOも言う暇を与えなかった。
部屋のドアを、ノックしたわけでもない。

自分から、彼の部屋へ行ったけれど、その部屋に自らの意思で入ったわけじゃなかった。


答えは決まっていたけれど。
なんだか腑に落ちない。

それなら、イヤだと抵抗すれば良いのだけれど。
何もかも初めてのことで、初めての皮膚感覚に、流されてしまう。


触れられて。
口づけされて。

贈られた、彼自身。
受け取った、彼女自身。


本当にこれでよかったの?と、不安になったこころを溶かすのは、そんな不安を与えた本人である、彼だった。











「ジョーも?」
「ペア・リングだから、ね」

左手の薬指にはめてくれた、シルバー。


「・・・・」
「なに?変・・・?」


同じデザインのものを、ジョーは自分の薬指にもはめた。


「だって、これってまるで・・・」
「ああ。マリッジ・リングのコーナーで買ったから」
「マリ・・・え?」


横たわっていた躯をゆっくりと起こそうとするが、それを制された。


「僕はキミのものだよ、フランソワーズ・・・。永遠に、キミのものだから」
「ちょ・・・と、ま・・え?」


その彼女の上に、再び、躯を重ねる。


「待たない。・・と、言うか、・・・・・待たせてごめん」
「ちが、私がっ」
「不安にさせて、ごめん・・でも、もう大丈夫だろ?これで、結婚したことになるし」
「?!」
「僕を、受け入れてくれただろ?」
「だけどっ・・・」
「嫌?・・・・今後一生、僕以外を知る事なんてないんだし」
「それと、これとはっっジョーっ。いくらなんでも、そ・・っm・・・・!!・・・・・」
「順番とか関係ない・・好きか嫌いか、僕とキミが愛し合っているか、どうか・・・だけ。あとは・・・誰がみても、納得できる”形”が・・・欲しかったから・・・」



それ以上、フランソワーズに言葉を作り出す余裕などなかった。













強引すぎるわ!と。文句を言った朝。
幻でも夢でもなく、互いの薬指に残る揃いのデザインを見てしまっては、文句を言いつつも、喜びに浸る気持ちは隠せない。


25日の夕方に戻って来た家族+ゲスト1人。から、冷やかされ、お祝いされて、驚かせて。
誕生日のその人を牧師に見立てて開かれた結婚式。

宴会のついでみたいな結婚式?に、文句をいうのは、やはり、即席で白のワンピースに着替えさせられた花嫁。は、まさか、次のクリスマスに家族が一人、増えている未来が待っているとはまだ、知らない。





<妹、1人目ゲット♪>








end.







*・・・はい、はい。
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