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名前を呼ぶだけで/京都・嵐山2泊3日の旅・4
船を降りて、同船していた2家族と船頭に別れの挨拶をすました。
3兄弟のうち、積極的に3人(千里、りか子、フランソワーズ)と話していた長男が、社用の名刺に携帯電話の番号を書いて、別れ際にさっとフランソワーズに渡した。
東京で小さなアパルルト系の会社に勤めていると、千里はチェック済み。


「・・・・」
「モテますね!」
「・・・・・・・・・・」


「気が向いたら。でいいから、よかったら、電話してくれると嬉しいな」と、言われた。
断ろうと、名刺を返そうとしたけれど、千里はにっこりと笑って、「今度、みんなで遊べたらいいですね!」と声をかけてきたために、返しそびれてしまったのだ。

名刺を持つ手が、自然と震えてくる。


「そんなに真剣に考えなくてもいいと思うけど?」


手にもつ名刺に視線を落としたままのフランソワーズを窺うように、りか子が声をかけた。
湯田とジョー、そして美奈子の3人は、次はどこへ行こうかと、少し離れた場所で話し合っている。

昼時だけれど、と、時間を確認した湯田。


昨夜の宴会の席で大体の今日1日の予定は決めていたものの、”なんとなく”だったので、話し合いながら、じょじょに下船した場所から離れて行く。
ずっと立ちっ放しで話していても仕方がないので、とにかく、メインの大通りに出る事にしたようだった。


渡月橋を背にして、一番近い石階段を使用し川沿いからあがろうと、足を進める。
追いかけるようにして、千里、りか子が続いた。
フランソワーズも、2人に続く。



気がつけば、美奈子とフランソワーズの位置が入れ替わっていた。
ジョーの隣に美奈子がいる。
彼女の友人のりか子、千里と一緒に、フランソワーズがいる。



保津川のせせらぎと観光客の雑踏が鼓膜手前で一つになり、003の耳に記録される。
名刺をどうすればいいのかわからないままに、手に持ったままとぼとぼと歩き出した。



出会いは偶然ではなく必然。
その出会いを大切に繋ぎ止めるのも、切ってしまうのも、自分次第。



切る事など選択肢になかった出会いの相手はどうなってしまうのか?




009。と、呼ぶ。
”ジョー”と呼ばずに、009と呼ぶと、こころは締め付けられることなく、重く歪むこともない。


















やっぱり、そうなんだ。
009と、003なんだわ。









自然と足が止まった。
名刺に印刷されていた名字が見慣れない、聞き慣れない珍しいものだった。


補助脳が助けてくれる。
フランス人で、日本語に全く不便を感じないのは、補助脳があるから。

やっぱり、私は003だわ!と、納得する。


名刺から視線をあげた。


「!」
「・・・・・・どうかした?」


覗き込んでくる、瞳。
フランソワーズはまったく気づいていなかった。


足を止めたとき、ジョーが振り向いたこと。


名刺をもらったとき、ジョーが観ていたこと。
千里がフランソワーズの代わりに、名刺を渡した男性にむかって答えた声を聞いていたこと。

船を降りながら、男性が四角いカードに何かしらを書き込んでいる様子を、ジョーは観ていた。






それが、誰に渡されるのか。
まさか、フランソワーズじゃないだろうな?と、不安になって。

受け取るなよ!と、願いながら、受け取らないよね?と、無言でフランソワーズを観ていた。






受け取ってしまい、その名刺に視線を落としたままのフランソワーズ。



何を考えてる?
何を思ってる?




こんなとき、イワンになりたい。と、頭が万能な赤ん坊を思い出させる。



「なんでもないわ!ちょっとフラフラするのよ?」
「・・・・ずっと船に揺られていたからね」
「みんな平気なのね!」
「まあ、これくらいなら・・・そんなにフラフラする?」
「いいえ、今は大丈夫」
「・・・・・・・」


にっこりと微笑む、いつものフランソワーズ。
彼女の視線が自分を通り越して、背後でこちらの様子を見ている5人に送られているのがわかた。


そのまま瞳で「待たせたらいけないわ!行きましょう?」と促された。
フランソワーズは、持っていた名刺を隠すように、サックス・ブルーのダッフルコートのポケットにしまう。

その手の動きをスローもションのようにジョーの目がとらえた。
口が勝手にへの字に歪み、無意識に眉間に皺がよった。



ちゃんとした物語は知らない。
けれど基本的な話しの流れは知っている。


光源氏は、自分の父親と再婚した女性、藤壷に恋をする。
恋い焦がれて、結ばれた後でもその想いははっきりとは、受け入れられたと感じられなかった。はず・・・。そのために、彼は藤壷の幻影を追いかけるかのように、さまざまな女性と関係して、恋愛を楽しむ。



その源氏が藤壷に恋い焦がれる姿が、自分がフランソワーズに想う気持ちと重なると、湯田は言いたかったのだろうけれど。





初恋の君を思い愁えながらもあっちに、こっちに、恋愛していく光源氏と自分は違う。
ボクは、彼女だけ。


---フランソワーズ。


彼女の名を呼ぶだけで、こころが震えるほどに愛おしくて、空にいくつ彼女への想いを乗せた溜め息を放っただろうか。




いつの頃からか。
彼女は003でなくて、フランソワーズだった。
綺麗な、キレイな、きれいな、003よりも、未だによく理解できないフランソワーズが・・・・。




「ジョー?」


彼の名前を呼ぶ。








009もジョーで、ジョーが009。
解っている。


頭でも、こころでも、ちゃんと解っているのにも関わらず、”ジョー”と名前を呼ぶだけで。

息苦しいほどに、傍に居たい。
窒息してしまいそうに、胸が痛いのに、この痛みがあるから傍にいたい。





大好きなの。でも、怖い。
このままでいられなくなるのが怖い。

この距離でいるかぎり、アタシは彼と一緒にいる時間を安全に共有できる。









「フランソワーズ、・・・・あの・・さ」


彼女の名前を音にする。




好きだ。と、彼女に言ってしまえばいいのかもしれない。
でも、それによって失ってしまう何かがあるような気がして、怖い。
何かが変わってしまう”変化”を受け止めるには、まだ自信がない。


だけど!


「湯田さんっ、水沢さん、稲畑さん、原さん!!スミマセンっここからはボクら別行動しますっ!!!」
「!」


フランソワーズのコートのポケットにしまわれた、小さなカードが気になって、気になって・・・その苛つきと、焦りがジョーを突き動かした。





ごめんなさい。と、謝る。
ギルモア博士、すみません・・・。
せっかくフランソワーズに、女の子の友達が出来そうだったのに。


今日一日、みんなと一緒にいれば、もっと、もっと彼女の世界を広げてあげられたと思うんです。









いつも、このタイミングの、このチャンスを自分は逃していたと言うか。
怖じ気づいてしまって、前に進めていなかったんだと思うんです。

彼女のポケットの中のあのカードが、ボクに挑戦しているんです。
003である、フランソワーズを護るのは、ボク、009ですよね?
敵(ライバル)を倒さなくちゃいけなくなりました。




ジョーは4人に向かって90度の角度で頭を下げた。
昨夜、自分から今日、フランソワーズと自分につき合って観光して欲しいと頼んだだけに。



「スミマセンっっっ!」


ジョーの声が、保津川の流れを一瞬だけ止めた。
湯田の、のんびりとした声が川の流れに乗る。


「いいって、いいって、時間も昼ちょいくらいだし、午後は別行動ってことでオッケー!」


湯田の返事にりか子はもの言いたげに湯田を見るが、りか子のそんな視線を物ともせず、湯田はぶんぶん!!っと手を振る。その動作はジョーをとっととその場から追い払うようにさえ見えた。

ジョーが深々と下げていた頭を上げて、早足に4人から離れて行く。
湯田たちと向かっていた方向とは逆、渡月橋をくぐった先にある石階段を使って、川沿いからあがるようだ。


遠ざかって行くジョーとフランソワーズ。
それを黙って見送っている美奈子に、りか子よりも千里が先に声をかけた。


「水沢さん・・・?」


千里の声に、引き攣った笑みを浮かべながら溜め息を深く、ついた。



「・・・・・・あれくらいの勇気、私にもあれば・・ね?」
「追いかけましょうよ!」


千里の声に、すぐに首を左右に振って否定した。


「だって、島村くん・・・アルヌールさんと2人で観光したいんだもの」
「でも!一緒して欲しいって頼んだの、島村さんですよ?!」
「・・・・だから、ちゃんと誤ってくれたじゃない?」


今度はちゃんと引き攣らすことなく、千里へと微笑んだ。
湯田と、りか子が美奈子へと近づく。


4人は小さくなった2人に視線をむけた。


「・・・・湯田さんって、どっちの味方なんですか?」


りか子よりもストレートに千里は言葉を舌にのせた。


「島村の味方・・・だし。って言うか気づいてるんだろ?自分らだってさ・・・水沢には悪いけど。彼ら両想いだってこと」
「湯田さん!」
「・・それでも、いいかなあ、って思うの変ですか?」
「「!」」


美奈子は湯田を見上げた。


「変じゃないさ。まだ”片思い”してるんだろうからさ、島村自身は・・・」



水沢美奈子は、モテる。
高嶺の花と勝手に思われて、勝手に諦められてしまうけれど。
それを乗り越えて、告白され、つき合いが始まっても、結局は誰の1番にもなれない。

だいたい、同じ理由で美奈子は振られる。


『いても、いなくても、美奈子にとって別に、・・・変わらないみたいだし・・よくわかんないんだよ。俺って美奈子にとって彼氏なのに、さあ・・・友達と変わんなくね?』








彼女が、彼女らしく、彼女でいるために、つき合った人はみんな、完璧な”美奈子”に自分を受け入れてもらえていないと勝手に判断する。
そんなことない!と、いくら不定しても・・・。





島村ジョーは、そんな彼らとまったく違う角度で、美奈子をみた。


『水沢さんは、ちゃんと自分があって、その中できちんと自分の中に上手に・・・なんて言うのかな、同じ小説を読んでも、”そのまま”受け取らずに、自分風にアレンジして、”そのまま”で良い部分も大切にしながら、自分用に噛み砕いて取り込んで行く、姿勢・・が、すごくいいなあって・・・。ボクは、”そのまま”も自分風にも、まずは、否定してしまう癖みたいなのがあるから・・・・そういうの、いいなって思うから。見習いたいなって・・・』



その言葉を言った昼食の席に、湯田もいた。
島村を憎めないところは、そういう部分だなあ。と、胸でジョーにたいする感想を呟きつつ。


片思いの相手の親友になんとなく思われている節を感じているために、彼女たちの友情を疑うわけはないが、結局は好きな相手とその友人を思って、なんとも曖昧な立ち位置にいる。



島村の味方をすることで、自分の都合を隠していた。

稲葉りか子に対する湯田の気持ちは、好感を持つ、面倒みたい後輩。良き、女友達。
原千里にたいしても、稲葉りか子に対する気持ちとなんら大差ない。


水沢美奈子に大しては、全くの別もの。

けれど、それを押し出していくほど、恋愛に使うエネルギー量があるわけでもなく、がむしゃらになれるほど熱しやすい、子どもでもない。

ただ、黙って時期をはかっていた。
動く、タイミングをつくる時期を・・・。


まだまだ先は長そうだ。っと、溜め息を隠して。



「夕食は一緒しようって、夕方あたりにメールして誘うよ・・・、島村と観光できなかったお詫び」


惚れた女の願いならば。・・と、動いてしまう自分の人の良さに呆れながらも、それはそれで楽しんでいる自分の”悪い部分”を湯田は自覚している。

恋愛に大しては、武道家のイメージを壊す自分に自嘲した。



千里は、そんな湯田にむかって言う。


「結局み~んな春なんですね?私も恋したいなあ~・・・」
「「「!」」」


いつもの湯田らしからぬ、驚きの色を浮かべた目にむかって意地悪く笑った、千里は、確信はなかったが、今までの流れや湯田の態度で感づいていたようだ。


---参ったな・・・一番の曲者だぞお・・・・。


苦笑しながら、ジョーとフランソワーズが消えた方向とは逆の、足を進めていた石階段へと歩き出した、千里にならって、4人は歩き出した。


「昼ご飯は、湯田先輩がおごってくださいね!知っていて、島村くん行かせちゃった罰ですから!!」


湯田の背後から、とげのある声。
美奈子は本気でりか子が怒っていることに笑った。

好きな人相手でも、まっすぐに自分をぶつけていく。それがどうして”告白”に繋がらないの?と、疑問に思うが、そこがりか子の可愛いところだよね?と、美奈子は親友の肘をつついた。


「店は、どこにするんだ、稲葉?」
「足湯のある旅館、嵐○閣の、ランチ!!」
「高過ぎるぞ!!しがない、学院生に何を・・・」
「このまま行けば、”教授”職ですよね?」
「それと、どう関係があるんだよ、稲葉!」
「おそばはどうですか?先輩!」


千里が、優等生のようにはい!と手を挙げて意見した。


まあ、蕎麦なら?と、返事をして、後悔する事になる。

千里が3人を連れていったのは、 石臼で挽くそば職人の店「嵐山よ○む○」だった。嵐山を一望しながら食事を楽しめる贅沢な場所に見合った値段。だったが、まあ、それくらいならギリギリ。と、湯田は首を縦に振る。

ウェイトレスがやってきて、あっと言う間に甘味ものまでオーダーされたときの湯田の情けない顔3人は、明るい笑い声を店内に響かせた。









旅行編・・・に続きます。


*と、言う事でした!
 ここは『りとる』か!?っと、自分で叫びそうでしたが。予定外・・・に絡めてますね。
 好きなのかも・・?こういう展開?・・・新発見。
 
 フランソワーズ→←ジョー←美奈子←湯田←りか子。千里→?
 初めて絵文字を取り入れてみた(笑)


 言っておきます。
 93意外のラブ関係は書かないです。(当然ですが)
 9と3と、美奈子あたりまでで、あとは放っておきます。
 りか子が、湯田がどうなろうと知りません!(笑)
 ネタとして、その後・・出す可能性あるかも?くらいです。・・・書くの?!
 ちらっとね!ちらっと!でも美奈子さんが振られた後は知りません・・・。


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