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どうしようもなく嬉しい/それが、ボクの願い。
~甘いふたりで5題~(17)
(もじもじ京都・嵐山2泊3日旅行編)の続編となっております・・・。









「好き・・・だったのよ、島村君のこと」
「え、・・・ええ?・・え?・・・・み、水沢、さん?!」
「気づいてなかったんだ、やっぱり・・だと、思った!」
「あの・・・え、え?!」
「いいのよ、もうっ!もう・・・そういう気持ちは、ないのよ!!だって、アルヌールさんと一緒にいる、島村君を見たら、判るし、ちゃんと、うん。ちゃんと・・・判ったから」
「あの、みず・・さ、わ、さん?」
「だから、ありがとう」
「?」
「私、ちょっとだけ・・変われそうなの、島村君のお陰で!!」
「・・・」
「これからも、よろしくね?」
「あ、は、・・・はい」
「また、大学で!」



美奈子の、すっきりとした笑顔に、ジョーは余計な言葉を挟まなかった。




「フランソワーズと一緒に居るときの・・ボク・・・・」







それは、ジョーにとって、初めての経験だった。
今まで、言い寄ってきた女の子たちは、ジョーが誰とつきあってようと、誰と関係してようと、構うことなく好きだと言ってきた。そして、口々に自分がどれほど”余裕”があってジョーとつき合えるかを、競いあった。

無理して、大人ぶる必要なんかないのにも関わらず、年齢に見合わない台詞を吐く。
そうさせるのは、自分だろうけれど。
そうやって口にするのは、彼女たちだ。


勝手に好きになられて。
勝手に押し掛けてきて。
勝手に彼女になって。
勝手に怒って。
勝手に泣いて。


勝手に僕を捨てていく。




何もしてないのに。









ボクはここにいるのに、見えてない、彼女たち。
ボクのいったい、何を、どこを見ているのか、不思議で仕方がなかった。


「ボクの、おかげで・・・変われる?」





ジョーがアルバイトで通う大学の人類学科の秘書、水沢美奈子から頼まれて、彼女の妹の婚約者だと言う人に会った、ジョー。
美奈子が不安に思っていたことを理解するのに、それほど時間はかからなかった。


なぜなら、相手がジョーと同じ環境で育った人だったからだ。


美奈子は、結婚を家同士の、と。とらえている節があり、古風な部分があることをジョーに知られると同時に、彼女の不安な部分がジョーの胸を少しばかり傷つけた。


「自分は、父親しかいなくて、まあガキの世話してる余裕ないっしょ?男だし、若かったし・・・で。施設に預けられて、金はちゃんとしてくれたから・・・、高校まで行けて、正月だけはじーちゃん、ばーちゃんの家で過ごせたし、大学は国公立行くほどの頭、なかったし、やりたいことあったから、バイトしながら、専門行ったんですよ」


松田庸平と名乗った、奈々子(水沢美奈子の妹)の婚約者と、2人で飲んだ。
それは、4人で会った週末から数えてちょうど7日後。

松田から呼び出され、携帯のメルアドを交換しあっていた2人は、適当な駅前の居酒屋で落ち合った。


なんとなく、気があった。
そして、彼の気さくさ人柄と、おしゃべりで、何よりも、一人っ子だったからでっかい家族つくるために、バリバリ働くぞ!っと、奈々子愛してるぞ~!っと、終電がなくなった駅構内で叫んだ彼が、ジョーは応援したくなった。


ジョーは一生懸命に彼の良さを美奈子に伝えるために、大学の昼休みを利用することなく、彼女を土曜日の夕方にプライベートで呼び出した。


街を歩き、夕食を取り、その間、一生懸命に、松田庸平とのことを、自分がどのように彼を知り、思ったかを伝えた。






その、2週間後。
美奈子、奈々子の両親と松田は会い、そして、松田からの報告により、お互いの都合を合わせて、今度は、松田の父、祖父母を交えての食事をすることが決まった。



ちょうどお正月をはさみ、両家族が揃ったことをメールで報告してもらった。






お礼がしたい。と、美奈子に言われた日は、フランソワーズの誕生日だった。


翌週の、日曜に変更してもらえないか?とジョーは申し出た。
美奈子から理由を聞かれて、はっきりと言う。


「フランソワーズの誕生日なんだ、偶然に、養父が翌日で・・・」


クリスマスに邸に帰ってくることができなかった家族たち(照れくさい/そんな二人のクリスマス(18)参照)。は、お詫びとばかりに、いつもより長く、1月のフランソワーズとギルモアの誕生日まで滞在を延ばしたのだ。


「・・・・・・」
「急ぐ用事でもある?」


サガミ教授が借りた大量の書籍をジョーと2人で第二図書室へと返却し終えた帰り道。


「ううん・・・そういうわけじゃ・・ないのだけど、でも」




この恋は終わっている。
終わってしまったことはもう去年にわかっていた。
今年まで持ち込んで、ずるずると引っ張ったのは、自分の弱さと、未練と・・・・。

止まらない、好き。と言う気持ちから出た、足掻き。



認めたくない、わがまま。
言わないままでいようと思った。





失恋したことに目を瞑って。




「・・・うんっと、24日は多分、朝から忙しいと思うんだ、家族が今からそわそわしてるし。前日の金曜日なら、水沢さん、大学終わった後なら、どうかな?」




諦めるためと言い訳に重ねた、デート。
彼がそれを”デート”とは思っていないことくらい、わかっている。




それでも、以前よりも、昨日よりも、1時間前よりも、もっと、もっと、彼を好きになっていく。
止まらない想いに拍車をかける。


美奈子は、これ以上自分の気持ちを留めておくことはできなかった。

胸に留めておいても。
その想いはたまるばかりで、受け取ってもらえないもの。







先延ばしにしても、何も変わらないのだから。
いつ、終わりにしても変わらない。

それなら、今日がいい。
そうやって思えた今日、この日が一番いい。
この日を逃したら、また、私は・・・・・・・・・・・・・。





####


「好き・・・だったのよ、島村君のこと」






23日、金曜日。


大学の外で待ち合わせをして、早めの夕食を取り、駅まで見送った。
美奈子が選んだレストランは、昼間よく、湯田や大塚と一緒に訪れる場所だった。


ディナーは初めてだね、と、言い合い、食事が進む。





急に冷え込んだと思ったら、ちらり、ちらり。と、雪が降ってきた。
今年初めての雪に、こころが浮き立つ。



「好き・・です、私。ね、・・・島村君のこと、好き・・・」





駅までの道。


雪ね!っと笑っていた美奈子が、真剣に、ジョーを見つめた。



早足に駅に向かう人々。
大通りに出るまで、あとワンブロック。


街頭の下。



ロマンチックな、ドラマのようなシチュエーションにも関わらず、美奈子は、今日、1つの恋に終止符をうつ。









「・・好き”だった”・・・が、今は正解かな・・・」
「過去・・系?」




美奈子は泣き出しそうな笑顔で、ジョーに告白した。






「水沢、さん?」


ジョーの足が、止まる。


2、3歩の距離にいる、美奈子の、向こう側に、フランソワーズの顔が浮かんだ。


「うん、私ね・・・」




ジョーは首を素直に横に倒した。
きょとんと、動揺と驚きを載せた表情が、童顔な彼をさらに幼くみせた。


「好き・・・だったのよ、島村君のこと」


好き。を、強調して言ったとたんに、ジョーが慌てだした。


「え、・・・ええ?・・え?・・・・み、水沢、さん?!」
「気づいてなかったんだ、やっぱり・・だと、思った!」
「あの・・・え、え?!」
「いいのよ、もうっ!もう・・・そういう気持ちは、ないのよ!!だって、アルヌールさんと一緒にいる、島村君を見たら、判るし、ちゃんと、うん。ちゃんと・・・判ったから」
「あの、みず・・さ、わ、さん?」
「だから、ありがとう」
「?」
「私、ちょっとだけ・・変われそうなの、島村君のお陰で!!」
「・・・」
「これからも、よろしくね?」
「あ、は、・・・はい」


ジョーは勢いよく、首を縦に振った。
友達のままでいられることを確認できたことを、嬉しそうに、美奈子は笑った。



「また、大学で!風邪引かないでね、島村君っ!!」













一方的に、告白されて。
一方的に、過去のことだと、言われた。


「・・・告白されて、振られたってこと?僕・・・・」





早口に、その場をまとめて駅へと走り出した美奈子を、ジョーは呆然と見送った。













走り出した美奈子は、ちょっとほっとした。
ジョーが追いかけてこないことに、ほっとして。

そして、悲しかった。


---何を期待していたって言うのよ!







あの、慌て方。
思い出すだけで、笑いがこみ上げてきた。

大通りに出て、その足が止まりそうになるのを、無理矢理、動かした。
止まったら駄目!っと自分の足に命令する。


くすくすと笑いながら、雪のようにはらり、はらりと溢れていく涙。


止まったら駄目!っと、駅を通り過ぎる。


携帯電話を取り出して、バス停前。
ちょうど、やってきた人気のないバスに飛び乗り一番後ろの端っこに、体を押し込むようにして、りか子に電話をかけた。


『美奈?どうしたの』
「りか?・・・あのね、・・・私、今からりか子の家行っていい?」
『え?・・・今日は島村くんとデートって・・・・。最近よく2人で」
「告白したの」

りか子の声を遮って、言った。


「告白したの、もう、これで終わり。デートも、何もかも終わり。・・・もう、終わりにしたのっだから・・・」
『待ってるから、おいで!今どこよ!?』
「バスの中」


ぼろぼろと溢れ始めた涙を、何度も鼻をすすり上げながら、答える。


「明日は、・・・フランソワーズさんの誕生日なんですって・・・。何か、してあげたいね」
『美奈子・・・』
「せっかく、旅行でお友達になれたんだもん、ね?」











####

ジョーは駅についたが、そのまま改札口近くの壁に並んだ冷たい、水色のプラスティックのベンチに座った。
今、ジョーのいる駅からギルモア邸まで、2回の乗り換え、とバス。で、1時間以上かかる。



「フラン、なんて言ってたっけ?」


間に合うように帰らなきゃ、と、重たい腰を上げる。











時間が経つにつれて、色々なことが思い出された。
電車に揺られて、真っ黒に塗られた車窓に移る自分と、ときおり飛び込んでくる街の風景を交互に見ながら、美奈子の告白と、今の大学へ通いだしたころからのことが、ぐるぐると回る。


美奈子の気持ちに全く気づいてなかった。
考えたこともなかった。








その中で、もしかしたら、たくさん、たくさん、水沢さんを傷つけていた?








「彼女のためにも、もう少しちゃんと周りを見ろ。まわりの人間(女性)にもほんの少しでいいからアルヌールさんくらいに、注意を払え。それが、彼女のためになるから」








旅行中に、ユダに言われた言葉がジョーの脳天を殴りつけるように振ってきた。





「誰にでも優しい、みんなの”島村くん”でいられないときだってあるだろう?平和主義なのはわかるが、それだけじゃ世の中渡って行けないぞ?」

「もちろん、二股かける男なんかにはもったいないからなあ」

「水沢に協力しておきながら、アルヌールさんをキープって贅沢だなあ、・・・たらし慣れている」




「それなら、水沢に期待させるようなこと、するな」




「はっきり言うぞ。・・もっと水沢を注意してみろ」















---ああ・・・湯田さんは解ってたんだ・・・・僕は全然気がついてなくて、でも・・・。













告白されて、それは過去の気持ちだと言われた。
そのことが悲しいのか。



自分はフランソワーズが好きなのだ。と、言う気持ちは変わらないのにも関わらず、気分はどんどん沈んでいく。

きちんと水沢さんから告白されても、答えることはできない。
なぜなら、自分はフランソワーズが好きだから。


それなら、よかったじゃないか。
振る手間が省けた。






なら、なんでこんなに・・・・。













『島村?』
「・・・湯田さん、すみません」
『いや・・・どうした?珍しいな、島村から電話なんて」
「湯田さん、僕・・・・」
『どうした?』


ギルモア邸近くの駅。
田舎のバス停に、バスを待つためのしゃれた待合室などない。
雨よけもない、むき出ししの、刷れて色が剥げてしまったベンチにどっかりと座り込んで、冷たい冬の風に身を晒しながら、ジョーは湯田へと電話をかける。


「・・・・水沢さんに、今日、告白されました」
『・・・そうか・・・・・』
「返事も何も、する暇もなく、過去のことだって・・・好き”だった”と、言われました」
『・・・好きだった。か・・・、ちゃんと、決着つけられたんだ、水沢』
「・・・知ってたんです・・か?・・・」
『当たり前だ!馬鹿野郎っ!!・・・・・・・・みんな気づいてたよ、島村くらいだ』
「・・・・馬鹿です」
『おお、うましか島村。で?どうだ・・・?告白された感想は?』
「びっくりです」
『だろうな~・・・で?』
「・・・・・・はっきり言うと、落ち込んでます」
『なんでだ?』
「告白されて、過去だったから、と、言うことで、振られたんですから・・」


湯田の笑い声が、ジョーの耳に響く。
そんなにおかしなことを言っただろうか?と、困惑する、ジョー。


『なんだあ?!島村あ・・お前、水沢が好きだったのか!?』
「・・・・・・・・・フランソワーズの好きとは違う、友人としてですけど」
『なら、それでいいだろう・・・島村』
「でもっ・・・」
『島村、・・・言っただろう?ちゃんと周りを見ろって、・・・そういうことだ』
「・・・」
『お前が落ち込んでるのは、水沢の気持ちに気づかなかったからか?それとも、水沢の気持ちに答えられないからか?どれだ?』
「・・・・わかりません、ただ・・・びっくりして、でも、過去のことだからって、また大学でって言われて、走っていく、水沢さんを止めることも、何もできなまま見送って・・・ただ」
『ただ?なんだ・・・?』
「・・・・・彼女が、ありがとうって。・・ちょっとだけ自分が変われそうだって言われて・・・ボクは、何もしてないし、何もできなかったし、できなかったというよりも、気づいてなかったし、何をしたのか、わからないです・・・。ボクは・・」
『島村、フランソワーズさんは、そこにいるのか?』
「え?・・・いえ・・・・まだ家じゃないんで」
『じゃあ、フランソワーズさんに会ったら、答えがわかるんじゃないのか?』
「・・・・なんで、フランソワーズが出てくるんですか?」
『とっとと、家に帰って、フランソワーズさんが寝る前に会え、そしたらわかると思うぞお・・・、それでもわかんときは、明日の朝一に電話しろ、じゃーな!』
「ちょっ・・・湯田・・・・・・・さ、」


ツー、ツー、っと、通話が切られた音が、虚しくジョーの鼓膜を揺らす。


ぱあ。っと、ジョーの目に、バスのライトが飛び込んできた。
駅構内で暖を取っていた人々が走り込んでくる。





ベンチに座ったまま、ジョーは3本のバスを見送った。


携帯電話が揺れる。
11時を過ぎたあたりから、家族からメールが続々と届く。


帰らなきゃ。とは思うものの、足に力が入らない。



冷えた冬の空気が気持ちよかった。











12時、15分前。


ジョーの目の前に、1台のタクシーが止まった。


自動でドアが開く、と。
ほっそりとした足に、ぴったりとした焦げ茶色のロングブーツ。

そして、中から聞き覚えのある声。


「ジョーっ!」
「?!」
「あのねっケーキがっお財布っ」
「???」


フランソワーズの声を聞いただけで、ぐっと足に力が入る。
べったりと座り込んでいたベンチから素早く立ち上がり、バス停留所に止まったタクシーの後部座席を覗き込んだ。


「お財布がっケーキが壊れちゃうの!」
「フラン、?!」


お皿の上に載せられた、真っ白なホールのホワイトチョコレート・ケーキの上にろうそくがくるり芸術的な円を描いていた。
真ん中に、”Dear Fracoice”と、ピンク色の文字が書かれている。


フランソワーズが差し出したケーキを、落とさないように慎重に受け取ると、フランソワーズはタクシーの料金をポケットから直接お札を取り出して支払った。


ケーキを手に、突っ立ったままのジョーを気にもせず、走り去るタクシーに手を振って見送る、フランソワーズ。


「・・・・・・フラン?」


タクシーを見送るフランソワーズに、恐る恐る、声をかけた。


「あ!まだ、まだ食べちゃ駄目よ!」


振り返ったフランソワーズが慌てて、ジョーに注意する。


「食べない・・よ・・・・・なんで、箱に入ってないわけ?・・今からどこへ行くの?」
「だって、私が作ったんですもの!箱なんてないわ!文字はね、張大人が入れてくれたの♪」
「・・・だから、このケーキを持って、どこへ行くの?」
「ジョーをね、迎えにきたのよ!」
「!」
「だって、間に合わなくなっちゃうわ!」
「ケーキは邸においてきたらいいのに・・・」
「待ってる間に12時になっちゃったら、嫌だもの。今年はジャストにろうそくの火を吹き消すって決めてたんですものッ」
「・・・・・それだけのために?」
「も!とおおっても、とおおっても、とおおおおおおっても大切なことなのよっ!!ジョーがバスを待っていてよかったわ、どうしてメールを返してくれないの?みんな心配していたのよ!」
「ね、ジョー、今何時?」


フランソワーズはジョーの手から再びそおっとケーキを受け取る。
ジョーはポケットで揺れ続けていた携帯電話を手に取り、時間を確認した。

ついでに、最後のメールだけ。
フランソワーズから届いたメールだけ、チェックした。


”ジョー、どこにいるの?・・・一緒に12時ちょうどに、ふうってしたいの。だから、駅でケーキと一緒に待ってるわ/F”


「一緒にって・・・?」
「ジョー、ライター!」
「え?・・あ、持ってないよ・・・」


フランソワーズが邸にやってきて以来、ジョーは禁煙しているためライターを持ち歩かなくなった。


「ええ?!」


ジョーが煙草を吸うことを知っていたために、フランソワーズは当然持っていると思い込んでいた。


「ここで待ってて、駅の売店は・・もう・・・あ!そこのコンビニで買ってくるっ」
「急いでっ!今、何時!?」
「すぐだよっ。間に合うから、フランはケーキを落としちゃ駄目だよ、ここで待っていてっ!!」








12時、6分前。


足には自信がある。
それは009だからじゃない。

009になる前から、徒競走のタイムは学年で5番内くらいに入っていた。







湯田さん。
明日の朝一に電話しないでいいみたいです。
けど、報告したいから、電話します。








自動ドアが開くのを待っているのも、もどかしく感じる。
手に200円ライターを握りしめて、走る。













走る僕をずっと”眼”で追っているフランソワーズ。












好き。


フランソワーズが、好き。
この気持ち・・・・・・・・。

いつも好きだって思っていても、彼女を目の前にすると、魔法がかかったように、こころの奥の奥の、奥から、じんわりと暖かくなる。
あふれてくる、想い。




キラキラに輝いて。
どきどきと焦って。

ぽかぽかにこころが暖まる。
ウキウキと気持ちが弾んで、嬉しくて、意味もなく頬が緩む。



人を好きだと想う、気持ちは、それだけじゃないんだよね。

















ごめんね、水沢さん・・・・・。
水沢さんの好きを、ちゃんと僕が受け止めて、返してあげられなくて、ごめん。



ごめんね。



僕が水沢さんにきちんと言うべきことなのにね。
ありがとう。って。



ボクなんかを好きになってくれて、ありがとう。
けれど、ボクは好きな人がいます。


フランソワーズのことが好きです、だから、水沢さんのことをフランソワーズと同じようには、思えません。


独りで、好き。を、諦めるのって・・消化させるのって。

すごく、辛いよね・・・。

そんな風に、させたのはボク。


気づいてあげられなくて、そして、そのせいでたくさん傷ついたんだろうね。



ボクがフランソワーズ、フランソワーズって言ってる間。


水沢さんは、・・・・・。







---人を好きになるって、すごく大変なことで。















「ジョー!」
「落ち着いて、ほら、ここ座って、ケーキを膝の上に・・・まだ時間があるから」
「早くっ!」
「慌てない、動いたらろうそくにうまく火をつけられないって!」






---大変だから、必死になって。この気持ちを受け止めて欲しくて。






---なんで、今までわかってあげられなかったんだろう。





1つ1つにゆっくりと火を点していく。
フランソワーズの顔に、オレンジ色の光が揺れる。


「ふふ♪ちゃんと一緒に火を吹き消すのよ?」
「フランソワーズの誕生日なんだから、フランソワーズがしないと・・・」
「駄目!ジョーも一緒によ?」
「何か、意味があるの?」
「ええ!願い事がかなうのでしょ?」
「まあ、一般的にそう言われているけど?」


吹きさらしの、バス停留所の置かれたベンチに、膝小僧をつき合わせるようにして座る、カップルの膝上にろうそくの火がともった、ホールのケーキ。


「2倍になるの!」
「は?」
「ジョーと一緒に、ふうっ♪ってすると、お願いも2人分よ!」
「・・・え?」
「せっかくのチャンスだものっ、明日は博士のケーキをふうっ♪するのよ、いっぱいお願いできるわ!!」
「・・・・・・いや、バースデーの人j・・ま、いいや。でも、それなら、僕じゃなくても・・」
「駄目なの、ジョーじゃないと!」
「どうして?」


携帯電話野デジタル時計の設定を変えて、秒数まで出るようにする。


「だって、ジョー」
「?」
「・・・・ジョーのお願いをかなえてもらうのが、アタシのお願いで、だから、ジョーがどんなお願い事があるのかアタシは解らないから、一緒にふうっ♪ってするのよ」
「・・・え・・・僕の願いを・・かなえるのが、フランの?」
「そうよ」


ジョーの手の中の携帯電話を覗き込む。



12時まで・・・・1分前。




「ちゃんと、お願いごと決めてね!もうすぐだからっ!!」
「ど、どうしてっ、フランが好きなことをお願いしなよ?」
「だあ、かあ、らあ、アタシのお願いごとは、ジョーの願いがかないますようにってお願いなの、そのために、ジョーと一緒にふうっ♪なの!」
「・・・・どうして?」
「も!どうしてばっかり、いいのっ、時間がないわっ」













---人を好きになるって、すごいこと。


嬉しいも、楽しいも、どきどきも、わくわくも。
痛いも、辛いも、悲しいも、切ないも。











全部、全部、人を好きになることで、深く、広く、新しいことを覚えていく。
同じ好きでも。






まったく違う、気持ち。









---水沢さん、ありがとう。そして、ごめんなさい。


















20秒前。








フランソワーズは携帯を睨む。
その横顔をジョーは見つめる。





5.


「あのね、・・・・アタシのお願いは、ジョー・・・が」


4.


「いつも叶えてくれるもの」


3.


「だから、ジョーのお願いを叶えるお手伝いしたいの!」
「?」


2.


「今年はね、2”009”年で、ジョーの年なのよ」
「・・・」



1.


「だから、いっぱいジョーのお願いが叶う年になるわ!」



0.


ふうっっ♪と、フランソワーズの息と混ざったジョーの息がが小さな火を吹き消す。









ろうそくの火が消えると、顔にあたっていた温もりが消えた。




「・・・ジョー、ちゃんとお願いごとd・・・」
「フランソワーズ・・・ありがとう、ボクの願いはね・・・・」

















キミの願いをすべてボクの手で叶えること。
キミの幸せをすべてボクの手でつくること。
キミに笑顔が永遠にボクのそばにあること。


人を好きになるって言う気持ちを、人を愛すると言うことを、今、ちゃんと理解できるようになりました。





フランソワーズを、人を、自分がちゃんと好きになったから、わかったんだ。
フラソワーズを好きなボクだから、わかる。


今だから、わかる。








教えてくれたのは、フランソワーズです。

気づかせてくれたのは、水沢さん。












「ジョー?・・・お願いごと、間に合わなかったの?」
「・・・・・・・・・ううん。叶ったんだよ」
「じゃあ、どうして・・・・」
「あ、気にしないで、ちょっと・・・ね」
「泣いたら、駄目よ・・・?ジョー、悲しいの?」
「・・違うよ、フラン・・その、逆」








嬉しくて。








「どうしようもなく、嬉しくて・・・、だよ。今日はすごいね。・・・フランソワーズの誕生日は、ボクの大切な記念日になったよ」









この気持ちをちゃんと言うから。
次のフランソワーズの誕生日までに。









それが、新しいボクの願い。













*ギャグなしです・・・。
 美奈子りんの気持ちがなんか宙ぶらりん♪だったので・・・。
 本当はお誕生日に出したかった(涙)
・・・しかしっここはもじもじだっ(笑)











・おまけ・

「ケーキ、どうする?・・・このまま持って帰る?」
「あのね、あのね!!」
「?」
「お行儀が悪いから、いつも我慢してたのっ」
「何を?」
「ホールのままかぶりつくのっっ!!おっきいのを独り占めよっ!」
「どうせ、フォークも、ナイフもないし、かぶりつく?」
「つく!」


ろうそくを、ケーキから抜いていくと、フランソワーズの膝上にあったケーキを、彼女の目線の高さまで持ち上げた。


「好きなだけかぶりついたらいいよ、なんなら、顔突っ込んでみる?」
「駄目よ、あれは”パイ”だものっ。ケーキは駄目!」
「一緒だよっ」
「!」


ジョーはお皿を少し傾けて、ケーキのまるっこい角をフランソワーズの唇にちょん。っとつけた。

ちょん。と、つけたつもりが。
ホワイト・チョコレートのクリームのラインが、1本。フランソワーズの顔につく。


「あー・・・」
「もおおおおっっ」
「いいじゃん、どうせかぶりつくなら、クリームだらけになるんだし、先に食べるよ?」
「あああっ!」

ばくんっ。と、ジョーは大口をあけてかぶりついた。


「おいしい!」
「もっ!!アタシがするのっ、アタシのケーキなのにいいっ」
「おしゃべりしてるからだよ」


ばくんっ。と、口の周りをクリームだらけにして、かぶりつく。


「ジョー、前髪っ!前髪にクリームっ!」
「いいよ、別に。帰ってすぐ風呂に入るから」
「もっ!」
「食べないの?」
「食べるうううっ」


ケーキを持つ、ジョーの手にフランソワーズは自分の手を重ね、皿を引き寄せた。
ぱくん。っと、かぶりついたケーキに小さなフランソワーズの口の形。



「駄目だなあ・・そんなのかぶりついたうちに入らないよ?」



ばくん、ばくん。っと遠慮なくジョーはケーキにくらいつく。
負けじとフランソワーズもクリームだらけになって、ケーキにかぶりついた。





バスは最終を逃したので、やってこない。
2人はケーキを食べ合いっこしながら、歩いて邸に帰る。













邸に帰り着いたころには、2人の顔はケーキだらけ。
迎えた家族に笑われて、呆れられて。


家族用の大きなケーキを2人で食べきった翌日。
胃薬片手に、夕方までリビグルームの家具を置いていない左半分、暖炉に火を焼べた、ふかふかの絨毯だけが敷かれたスペースに、たくさんのクッションを使い、2人、胃痛に転がっていた。


「ケーキは来年までいらない・・・」
「いやあ・・・今日はアタシの誕生日だもの・・・ちゃんと洋菓子店”プワワーク”でお誕生日ケーキ頼んだのーー・・」
「げ・・・・まだ、食べるの・・・・?」
「食べるっ!」
「・・・・・・・・明日も?」
「だって、ふうっ♪したケーキは特別だものっ・・・・んん・・痛い・・・」
「紅茶・・あったかいの欲しい・・・・」
「アタシもーーーーっ・・・」
「「こうちゃああああああっっ」」


末弟と、愛妹の声に、ぞろぞろと兄たちが集まってくる。


「まああったく、2人で欲張ってあんな大きいの食べてしまうからネ!」
「まってな、今すっきりするのをいれてやるからな」
「グレート、・・・ありがと」
「放っておけ」
「ジョーまで一緒になって、君が止めないで、誰が(フランソワーズの暴走を)止めるんだい?」
「・・・面目ない」
「っつーかよ、自分の部屋で寝てろよっ!邪魔だろーが!!」
「ジェットの方が邪魔よお」
「ああっ?!」
「はい、はい、ジェット、買い出しいくアルよ!」
「パーティ中止にするか。」
「いやあああああんっ、お誕生日するのっ、みんながいるなんて、珍しいものっ」
「叫ぶな、フランソワーズ・・・おとなしくし寝てろ」
「博士は?・・・なんとかしてくれないのか、な・・・?」
<じょー、ふらんそわーず>


地下から、イワンのテレパスがリビングルームへと飛んできた。


「「イワン?」」
<ぼくカラの・・・ぷれぜんとダト思ッテ、聞イテホシイ>
「「?」」
<絶対ニ、博士ガ持ッテキタ 薬 飲ンダラ駄目ダヨ>
「「?」」
<チョット、調子二ノッテシマッチャッタンダ。イイ感ジニシアガッタンダケド、君タチニハ、マダ早スギルカナッテ。・・・飲ンデモイイケド・・・。後悔シナイデネ?>
「おい。博士は何をしている?」
<最近、ホラ、学会de孫ぶーむダカラ・・・>
「「「「「「ああ・・・」」」」」」
「孫?」
「・・・・まごお?」
「まあ、春の温泉旅行で、ジョーがしっかりくるくる♪を”最後までやり通せたら”、問題ないんじゃないか?」
「!」


くるくる♪ってなんだ?!っとアルベルトを問いつめる、理由を知らないメンバーたちに、ジョーはアルベルトを止めようと勢いよく起き上がらせた。
とたんに、針を刺したような鋭い痛みが胃に走る。


<くるくる♪・・・ソウカ!ジャア、ソノトキのタメニ  トッテオイテ モラウ!>
「イワン、フランソワーズのために、品よく改良しておけ・・・初めては辛いからな」
「「「「「おおおおおお・・・・・」」」」」」
<マカセテ♪>
「な・・あ・・な・・・・・なっ・・・・・・・・・・なっっっ!?・・・・・・・・・・ぁぁぁっxxxxx」
「・・・ね、ジョーが壊れちゃった」


つん。つん。と、愛らしい人差し指がジョーの頬を突くが、無反応。



「気がついたころには、胃がなおってるアルヨ」
「だなあ、じゃ、紅茶は姫の分だけでいいか?」
「甘いのにしてね?」
「ミルク仕立てで、つくってあげるから、まっておいでな」
「ふふふ、嬉しい!」
「ジョー。部屋に運ぼう。」
「フランソワーズ、ブランケットだけじゃ、寒くない?部屋から毛布もってこようか?」
「ええ、毛がふわんふわんの、気持ちいいのがいいわ」
「うん、持ってくるよ」
「ったくよお、これしきのことでっ!フランソワーズ、てめえらどうなってんだよ?」
「ちゃんとメンテナンス受けていてよ?昨日ケーキを食べ過ぎただけ」
「そおいうことっ聞いてんじゃっ」


鳥が一羽、キッチンに投げ込まれた。


「・・あのね、アルベルト」
「なんだ?」


ブランケットをぐるぐるに躯に巻き付けて、暖炉の前に大小様々なクッションに囲まれ横わたる、蜂蜜色の髪の少女が甘えるような、とろりとした、潤んだ瞳で同じヨーロッパ圏出身の、義兄を見つめた。


「温泉は2回目よ?くるくる♪もよ?初めてじゃないわ。・・・それに、ちょっと緊張したけど、辛くはなかったのよ?・・・ジョーが一緒だったもの、とっても素敵だったわ、みんなと一緒に温泉、楽しみにしてるわね?・・・絶対に行きましょうね?あのね、温泉にみんなと行けるなら、アタシ、お誕生日100年くらいなくても、がんばって我慢できてよ」


愛らしい花が咲き、微笑んだ。





その日。
兄たちは、かわいい、かわいい、妹を、それは、それは大切に看病したそうな。




end.




*なんだかおかしな方向に向かい始めてる・・気がしないわけでもない(汗)
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