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Day by Day・10
(10)





ピュンマが淹れたお茶は美味しかった。
さくらが言う、”とても美味しい有名なお店のケーキ”は、たしかに普段買い出しへ行くスーパーやデパートでは買うことは難しいだろう。でもそれよりも美味しいものが、少なからず、ここに居るメンバーにとっては、何よりも楽しみにしているものが、あった。それは今日のお茶に出されるはずだった。

フランソワーズが3時のおやつに作る御菓子たち。
今日はブラウニーの予定だった。



ギルモア邸内の冒険に、海岸への散歩。
さくらは、彼らと一緒に過ごした時間の中で、今日が一番リラックスしていたし、楽しかった。それは、彼らの住む邸を見た所為なのか、少しだけ彼らの・・・ジョーのプライベートを見ることが出来たからなのか。それどもフランソワーズがいないせいなのかは、わからないが、それらを突き詰めて考えるつもりはない、さくら。

小さなヒールがある靴は、砂浜を歩くには向いていない。
彼女はその靴を脱いで、走る。
まだ冷たい海水に触れては、可愛い悲鳴を上げた。

グレートがジェロニモと一緒にギルモア邸に戻ってきて、張大人にお小言を言われながら、今日の買い出しの戦利品を手にキッチンへ向かう。ジェロニモも大きな箱を軽々と手についていく。さくら、ジョー、そしてジェットの3人は海岸へ出ている。

大まかな報告を受けて、外出組だった3人は、各々にため息をついた。
キッチンで見た・・・フランソワーズが何か御菓子を作っていた跡を目にしたとき、そのため息は、深く・・・・哀しみも含まれたものとなった。

ジェロニモは、グレートの肩をとんっと叩く。

「フランソワーズは強い。大丈夫だ・・・まだちょっと時間が必要」
「ああ、わかっちゃあいるが・・・楽しめる時にちゃんと楽しまないと・・・いつ今だって・・・なあ、わからんのだからして・・・早ければ早いほど、我が輩としては嬉しいねえ」

ジェロニモはグレートの気持ちを理解するかのように、深く頷いた。

「大丈夫だ。彼女はちゃんと笑っている」







####

「ピュンマは一緒に海に行かなかったアルか?」

張々湖は脱いだコートを自室に置きに行ったとき、きちんと閉められていなかったピュンマの部屋の中を覗き、彼がぼうっと立っている姿を見て声をかけた。

「あ、おかえり・・」
「ただいまアル!」
「・・・・今日の晩ご飯は、張大人が作るんだね?」
「・・・・そうネ・・・フランソワーズはムリさせちゃダメね」
「うん・・・」
「ピュンマ、またフランソワーズは作ってくれるヨ、毎日だってピュンマのために作ってくれるアルよ!」
「そんなの、ボク太っちゃうよ?」

力無く微笑んだ青年の顔に、張々湖はゆっくりと部屋に入り、その両手をとって力強く握った。

「今日はピュンマの好きな蒸し餃子にするネ。いっぱいエビをいれて、スペシャルにするよ!」
「・・・うん!・・・・楽しみにしてるよ!!」
「さあ!いっぱい作るからネ!!!手伝って欲しいアル」

ピュンマを強引に部屋から連れ出し、2人はキッチンへと向かう。

ジェロニモから回線で張々湖へ、フランソワーズがそのままにしていたモノを片づけたと連絡が入っていた。









####

昼の時間がもうすぐ終わる、イワンはメディカル・ルームでゆらゆらとクーファンを浮かせながら、彼のママでもあるフランソワーズを見ていた。
彼は、彼女が何を思い、何か考えているか、知りたい気持にかられるが、それは絶対にしてはいけないことだと、小さな胸に一生懸命に言い聞かせていた。

夜の時間が近づくと、イワンは現実と夢の境目で、時折その力を暴走させてしまうことがある。その度に大きな被害をドルフィン号に与えてしまうために、彼自身もどうにかしたいと願っていた。そう簡単に・・・解決出来ないと思われいた。が、しかし、それはごく単純な問題であったことが
証明された。
夜の眠りにつくまでの間フランソワーズに抱っこしてもらいながら、彼女がその小さなイワンの背中を優しく、優しく とん とん とん とん とん っとたたいていればいいのだ。
それが彼が悪夢をみずに、超人的な能力を暴走させることなく、健やかに長い眠りにつくための必要な儀式。

まもなく彼はその儀式が必要な時間が近づいていた。

「イワン、お前もわかっとるじゃろ?心配はいらん、フランソワーズは大丈夫じゃ」

ギルモアの言葉を聞かずとも、そんなことはわかっているイワンだけれども、小さな胸に滲むそれは、そういう問題ではないのだ。頭ではわかっていても、こころがついていかない。

ただイワンはフランソワーズが笑って、「ちゃんと全部飲まないとダメよ」と言う言葉が聞きたかった。








####

ここにさくらを長いさせるつもりはない。
ジェットはそれを諭されないように、上手くさくらをコズミ邸まで連れ帰ることに、成功しつつあった。多分さくらはジョーが送ってくれると思いこんでいるだろう。ジョーも、そのつもりなのかもしれない。しかし、今日は。今日だけは、ジェットはそうさせないつもりだった。

「オレの運転テクニックみせてやるぜ!」

彼女を海岸へ連れて行き、そのままジェットはギルモア邸には戻らせることなく、彼女をコズミ邸まで送り届けようと思っていた。

「ええ?!私まだ死にたくな~~~~~~い!」
「ひっで!お前、それはオレの運転をみてからいえよ!」
「ねえ~、ジョ~~!!!本当にジェットは運転出来るの~~~?」

ジョーは2人から少し離れたところで、煙草に火を付ける。
さくらは驚いて、ジョーをみた。
ジェットは、面白くなさそうな顔を一瞬浮かべた。

ジョーは喫煙者だが、夜、誰かが吸っているときに付き合いで吸うか、酒が入ったときくらいにしか手に取らない。それ以外で彼が煙草を手に取るのは・・・理由は分かり切っている。彼は今、自分のこころを占める、それをなんとか落ち着かせようと、努力しているのだ。

「ええ?!ジョーって煙草を吸うの?!」

深く吸い込み、肺に浸す毒。
ふうっと口からその残骸をはき出して・・・ジョーはさくらをみた。
言葉にせずにただ頷く。

「オレも吸うぜ?珍しくね~よ、そんなの」
「いや・・・ジェットは吸っていてあたりまえ?みたいな?」
「は~~~~~~あ?お前、オレのことどんなイメージもってんだよ?!」
「う~ん・・・悪戯っ子?で不良?真面目に学校さぼってそう?」
「ああ?真面目に学校をサボるって日本語おかしいぞ?この、日本人!」

ざああっとジェットがわざとらしく蹴り上げた足が、砂を持ち上げる。

「イメージよ、イメージ!」
「じゃあ、ジョーはどうなんだよ!!」
「ええ?ジョーのイメージ?」
「そう、アイツも意外と、色々悪い子してんだぜ?」
「ジョーが?!」
「おうよ!オレより経験豊富だぜ?」

ジェットがニヤリと嗤ってみせた。
さくらは信じられない、と言うように目を見開いてジョーをみる。


彼は海を見ていた。
彼がはき出す煙は天高く昇り行く前に雲に紛れて消えていく。
彼が煙草をその・・長い指に挟んでスローモーションのように遅い仕草で口へと運んでいく。手のひらで覆ってしまうように、口元に持ってきた煙草のフィルターを、乾いた唇に押し入れる。彼の胸が動いた。瞼を閉じて吸い込んでいくその毒に酔っていく。長い睫が目元に陰をつくる。冷えた海風が長い前髪を揺らす。彼の唇を独り占めしていたフィルターが離れた瞬間、ふうううっと白い・・・彼の肺を冒した煙が綺麗だった。

ジョーはとても絵になる。
ずっと見ていたくなる。

それだけじゃあ、もう物足りない。
それに気がついたのは、さくら自身。


だから、欲しいのだ。
彼の彼を彼が彼で、自分だけの人になってほしい。


「おい!ジョー!!風も出てきた、戻るぞぉ!!それからぁ今日はオレが送ってくぜ!運転ができることを証明してやんだかんな!」
「ええ~!!やだああああ、死にたくないもん!ジョーが送って!」

ジョーはちらりと2人に目線を送っただけで答えない。

「ねええええええ!ジョー、私はまだ死にたくない~~~~!ジェットの運転なんて怖い!」



さくらは、簡単に言う。

死。という言葉を。

本当の恐怖を・・・彼女は知らないのかもしれない。

戦場をみてない人。
戦う必要がない人。
死体も、爆煙も、弾丸も、映画や小説の世界だと思う人。

両親が居て、学校に通って、友達とおしゃべりをして、美味しい御菓子を買い、お洒落をして、ボーイフレンドと口げんかをして・・・・毎日を繰り返す、幸せ。


フランソワーズだって。
フランソワーズだって、それを望んでもいいはずだ。

フランソワーズだから。
フランソワーズだからこそ、そんな世界が似合うんだ。

どうして、フランソワーズなんだ?
どうして、フランソワーズが選ばれた?
どうして、フランソワーズが?


003がフランソワーズでよかったと思う。
フランソワーズがサイボーグで嬉しかった。

003を守れるのはボクだけ。
フランソワーズを守りたいとオレは思う。

彼女をここから出してあげないと。
彼女にここは似合わない。


完全に闇が彼女を取り込む前に。



「ジョー?」


「あ。ごめん。なにか言った?」








####

車はまっすぐにコズミ邸へ向かう。
予定どおりに、彼女をギルモア邸に戻らせずにそのまま駐車場へと向かわせた。車を運転するのは、ジェット。

「気持わりぃほど、大人しい~じゃん、どうしたよ?さっきまでの元気は?」

車に乗り込み、ジョーと別れてから一言も口をきかないさくら。
10分ほどして、その沈黙に堪えられなくなったのか、ジェットが声をかけた。

「・・・ジョーは今日・・何かあったの?」
「あ?」
「なんだか、様子がおかしかったもん」
「そうかあ?あいつはいつもぼ~~~っとしてるぜ?」
「・・・そうかな?今日はいつものジョーじゃなかった気がする」
「ふ~ん・・」
「何か、知ってる?」

さくらは運転するジェットはみない。
深く体を助手席のシートに預けて、フロントガラスから見える、伸びた道を視線をさだめているだけ。

「まあ、あいつも色々あるんだろうよ?」
「色々って?」
「色々は、色々だっっ!」
「・・・話してくれたら、ちゃんと相談に乗るのにな、私」

拗ねたように、唇を尖らせたさくらを ちらり とみた。

「ジョーはやめとけ」
「・・・なによ、それ?」
「おめ~の手にはおえないよ・・・あいつはヤバイ」
「意味わかんない~~」
「傷つくのは、さくらだぜ?」
「・・・まだわかんないじゃん。やってみなくちゃ・・・助けてよジェット!」
「・・・・・いや、それは無理」
「ふん、弱虫!可愛い女の子が助けを求めてるのに!」
「だから、やめとけってアドバイスしてんじゃん」
「なによお、ジェットは・・・・」
「?」


「ねえ、ジョーは・・・ううん。フランソワーズさんは誰か好きな人いるの?」



ぱあああっとクラクションを鳴らしながら走り去った車。
日が落ちて、ネオンが意味もなく明るい。
通り過ぎる車のライトが、車内を不規則に照らし出す。

「なんだよ、急に。なんでフランソワーズが出てくんだ?そこ?」

「ライバルかもしんないから」

「相手になんね」

「・・・私が?」

「両方」

「????」

「ジョーと相思相愛は、これのオレだ!」









####

ガレージでジェットとさくらと別れ、ギルモア邸の玄関から直接、自室に戻った。
来ていた上着をイスに置き、プリントしたまま放っておかれた1枚の紙を手に取る。電気をつけない暗い部屋の中でも、彼は紙に印刷されたその文字を読むことが出来る。
丁寧に4つに折り、ジーンズの後ろポケットにしまい込んで部屋を出た。
足は、そのままリビングを抜け、キッチンで忙しく夕食の支度をしている、張大人と、エビの背わたを取り除くことに集中しているピュンマがいた。

彼らを目の端で捕らえつつ、何も言わずに通り過ぎる。
その足は、一番狭い部屋に作られた、主にメンテナンス後に用意られる部屋に向かう。

そこにフランソワーズがいるからだ。


寝ているのか、起きているのかわからないが、彼女の部屋に人らしい気配がなかったために、まだここに居ると思われた。

堅いドアを2,3回ノックする。

返事はない。

もう一度、先ほどよりも強くノックをしてみたが、同じく返事がなく、遠慮がちにドアノブをまわしてみた。10cmほど開けたドアの隙間から、目だけで部屋を覗いてみる。
自分がこの部屋を出たときと、変わらない様子が目に入る。
ギルモアはもう、ここには居ないようだったので、それだけが、自分が居た時と違っていた。

ドアを開ける音が立たないように、慎重に開け、そして足音を消して、シングルサイズの細いベッドに寝かせられている彼女、フランソワーズを観た。

少しばかり顔色に血の気が戻り、唇も赤みを取り戻しつつあった。
白いシーツが彼女の肩までしっかりと引き上げられている。
胸のあたりが上下していることから、彼女がちゃんと生きていることが確認できた。

生きている。

それが解っただけで、・・・ジョーは安堵の息をはく。

それでも、より強く彼女が生きていると言うことを確かめたくて、彼女の口元まで顔を近づけ、耳を寄せる。
微かに聞こえる、息づかいにジョーは目元が柔らかく緩まった。

そのまま そろり と彼女のそばに置いてある折りたたみイスに腰掛ける。
枕元に寄せたイスに座り、ただ彼女の寝顔をみつめる。

以前だったなら・・・戦いの日々だったなら、
立場は逆だったことが多かった。

ジョーが戦いに傷つき、ギルモアの治療後にベッドで寝させられたとき、目を開ければ飛び込んでくる、哀しげに揺れる星が瞬く夏の夜空・・・を思い起こさせる紺碧の瞳。彼女の、その瞳を観るたびに、ジョーは自分が生きていることを、戻ってこれらことを実感するのだ。

目が覚めたとき、それを観ることが叶わなかったときには、ひどく寂しい気持ちに駆られ、そして、今いる場所はこの世なのか、あの世に来てしまったのかが解らずに酷く混乱したりした。

ジョーは冷たい無機質な部屋で彼女を1人、目覚めさせることのが嫌だった。
まだ目が覚めていないなら、そばに居てあげたかった。
もしも、目が覚めていたら・・・嫌なことを忘れさせるためにも、彼女が見入っていたあの、ポスターの公演のチケットを手に入れたことを教えたかった。
それが少しでも彼女を喜ばす方法ならば。

穏やかな寝息が、ジョーの胸にあった不安を取り除いていく。

彼女のしっとりとした長い睫が微かに揺れる。
瞼が ぴくり と痙攣した。

眉根が軽いラインを作る。
形良い唇から、掠れた彼女の言葉にならない音が漏れる。

首を左右にふってみせた。

ライトで鈍く光る亜麻色の髪と枕が生んだ摩擦の音が耳に響く。

「う・・・・ん・・・?・・・・」

ジョーは彼女が意識を取り戻し始めてたことを知ると、今の場所よりも気持ち後ろへ下がり、距離を取った。

「・・・あ・・・れ・・・・・わた・・・し?」

フランソワーズの瞳はうっすらと開かれ、天井につけらえた剥き出しの蛍光灯を眩しげに観た。

「フランソワーズ?」

彼女の名前を呼んでみた。

ジョーの声に答えるように、自分の名前を呼ばれたために、フランソワーズは首だけを動かして、声の主を確認する。

「・・・・j、ジョー?」

彼女の口ら自分の名前。
ここでやっと、本当の意味でジョーは安心した。

「フランソワーズ、気分は?」
「き ぶ・・・ん?」
「少し・・・だけ、いつもより少し勢いよくスイッチを入れたから、だ。そうだよ?」
「ああ・・・そう・・・そう・・・な、の? ごめんなさい」

しっかりと開いた瞳は、最後に観た瞳と違い、ちゃんと生気を取り戻している。

「謝る必要はないよ?」
「・・・でも、迷惑を、か・・かけて、しまったわ・・・」
「迷惑じゃない」
「いいえ、ジョー・・・違うわ・・・ちゃんとしてなくて・・・ちゃんと出来なくて・・・ごめんなさい」
「何を?・・・何がだい?」

「さくらさん・・でヨカッタ・・・」
「?」
「これが、もし、これがもしも・・・危険な・・・戦いの始まり・・だったらきっとダメだったわ、私。 みんな・・みんなに迷惑を・・・・」

このまま話せば、彼女は自分を追いつめていくことが、手に取るようにわかる。
フランソワーズの言葉を聞き、彼女らしい。と、思ういながら、
彼は彼女の言葉には何も返事をせずに、首を微かに左右に振った。


「・・・バレエって見に行ったことある・・んだろうね?」

突然の話題にフランソワーズは ぼかん っと、ジョーを観た。
ジョーが何を意図して、そのような話を切り出すか、探ることもせずにただ、?マークを浮かべた顔。その顔はほんの数秒前の後悔の色は微塵もなく、純粋にただ驚いている。

「バレエ」

ジョーはもう一度言う。

「バレエ、観に行ったこと、あるよね?」
「・・・え、ええ。も、もちろん・・・」
「俺・・・はないんだ」
「・・・」

フランソワーズは、もう先ほどのことなど考えることよりも、ジョーの口から出てくる言葉に集中していた。

「誘ったの・・・俺だよ・・ね?・・・2回とも」
「?」
「覚えてないかな?」

フランソワーズは必死で霧のかかった、鈍くなった頭を動かす。
確かに、そのような言葉をジョーの口から聴いた覚えがある。
覚えがあるけれども、それは一体何処で?

・・・そう。それは・・・
さくらが、ドレスを買うために向かったショッピングモールで1回、それよりも前にも1度?
あの、映画館がある駅ビルのインフォメーションセンターで。

「興味ある?・・・チケット予約しておこうか」

エレベーターに乗り遅れてしまったフランソワーズ、それは自分だけだと思っていたら、背後にジョーが立っていた。

ふいにフランソワーズの肩におかれた手に、飛び上がるほどの驚いた。
なぜなら、その時フランソワーズの世界は、バレエのことで頭はいっぱいになっていたために、ジョーがすぐそばに居たことに気がつかなかったからだ。


「バレエがどうか・・・し、たの?」

ジョーはフランソワーズが自分の言葉に応えたことが嬉しかった。
少し腰を浮かせて、部屋から持ってきた1枚の紙をポケットから引き抜くと、それをフランソワーズの目の前に差し出した。

「お礼」

ジョーは彼女が観やすいように紙を広げた。
フランソワーズはゆっくりと文字に目を走らせながら、その紙を白い手で受け取る。

「ずっと、日本食を作ってくれた、お礼がしたかったから。行こう」

ジョーが差し出した紙に印刷された文字。
あの、ポスターの初日公演・S席のチケットを予約した・・・証明書。

「・・・・嬉しい・・・・・観たかったの・・・」

彼女の口元から笑みが零れた。




彼女の笑顔が、ジョーを闇から1歩遠ざけた。










====11 へ 続 く

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