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ただ、それだけ。
いつもは心地よい筈の、波の音が苛々する。
リビングルームに置かれている壁掛け時計の秒針が走る音が、この部屋に聞こえてくるはずもないのに、なぜか耳に押し付けられているかのごとく、しっかりと、はっきりと聴こえる。

何度も右へ左へと軋むシングルベッドのマットレス。
意味もなく水鳥の羽が詰まっているらしい枕をぽんぽんとたたき、ふんわりと形を整えて頭をその上に載せる。

けれど、何がかわるわけでもなく、また右へ左へとマットレスを凹ませて、体重移動。

はあ。と、溜め息をつくと、波の音が聞こえてくる。
眠れないことを責められているかのように。

間もなく日が昇ってくるから、早く、と、急かされている気になって、壊れて閉まらなくなった書庫のシャッターのように、何度おろしても、ぱっと開いてしまう瞼に、舌打ちした。


イライラとした気分はがしがし。と、もう濡れていない髪を掻きむしる。


ちらり。とベッドサイドのデジタル時計をみる。


そして溜め息をつく。






眠れない、と。






加速する必要ない距離。
気配を消す事は、慣れた。

猫よりも身軽に。

足音を立てず。



目指す部屋。










手にかけたドアノブをまわす。
金属が触れ合う音に細心の注意を払う。

ひっかかっている部分。
埋め込まれているパーツ。

かち。っと外れて、ドアを押し開く。



自分の躯のサイズ分だけの隙間から滑り込んで。
開いた時よりも慎重に閉じたドア。








暗い部屋に漂う香りはいつも感じるよりも強い。
シャワーを浴びた後の湿気が微かに残っているのが、一歩進めた足によって触れた空気で感じた。






だんだん近づいていく息づかい。
規則正しく、穏やかに眠る、息づかい。

ベッドの上にある形のなだらかなラインが、その息づかいに合わせて微かに揺れている。




ゆっくりと近づいて。
月の光を写し取った髪を指にからめる。



真珠の肌に、唇を寄せて。
吐き出すことを許されなかった、空気を飲み込んだ。



左右の腕で、彼女の逃げ場を奪う。
きつく、抱いて、束縛する。



抱きしめて。
抱きしめて。
抱きしめて。


きつく、抱いて。
永遠に解けることがなく、解け合って、海に流れてしまえばいいと願い。


願い。






その柔らかさに、温かさに、愛しさに。





やっと眠れる。










「ジョー・・?」
「・・・・・ただ、キミを抱きしめたかっただけ」







キミを抱いていないから。
キミの柔らかさに、香りに、温度を、この腕の中に感じていないから。

だから。



眠れないんだ。




ただ、それだけ。
それだけの理由。


















「!」
「・・・・・ごめん」





キミと一緒に居て・・・・、やっぱり。


”ただ、それだけ”じゃ、物足りない・・・・・かな・・?







「明日は早いのっ・・・・に・・・・・・・・・・・・・・・・」
「責任は、俺が取る・・・・・・・・か・・ら」





一緒に居るだけじゃ、それだけじゃ、物足りなくさせる、キミが、悪い。






end.








*もじ抜けには、ちょっぴり大人がいいかも?
 と、思い・・・・襲ってる~、襲ってるよ~・・・・(汗)
 
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