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君がいれた紅茶の後に。

2週間ほど前に、その日はあけておいて、と、頼まれていた。


「この日に、どうしても一緒に行って欲しいの」
「いいよ、別に用事も何もないから」



誘われて訪れたミュージアムは、とても愛された女性の家だと、パンフレットに書かれていた。

アート・コレクターとして知られるご主人と同じように、芸術を愛し、多くの芸術家と交流を深めサポートした女性の、その家は、彼女の遺言をまもり、コレクションを飾るミュージアムとして現存されている。



その小さなミュージアムの、ティーサロンに使われていたポットとカップが可愛いっと、彼女は言った。


「見て!ジョー・・すみれよ!」
「・・・そんなのが邸にあったら、すぐに割れちゃうよね?」
「もうっ・・・ジョーったら。・・・・・割れないで、ここの部分がかけちゃうじゃなくて?」


指差した、ティー・ポットのふたの部分。
そこにある花。

紫色の花。


ポットの小さな蓋の部分に咲いていた花は、お揃いのティ・カップにも描かれていた。
そして、カップの取って部分にも、同じ花が咲いている。


「そこも、かけちゃうだろうね」
「食器洗いの当番制って、・・・いいのか、悪いのか・・・ね?」


紅茶を注がずに、両手に包んで持ち上げたカップを見ながら、溜め息をついた。


「お気に入りは、自分で洗うとか?」
「そうね・・・でも、勝手に使われたりするのよ?」
「・・・・僕は使わないよ」
「ふふ・・このカップを使っているグレートは想像できても、ジョーは・・・」
「ジェットよりましだよ」
「そうかしら?・・ピュンマも、アルベルトも、張大人も、意外と似合うわ。そうね、博士も・・・」


家族が、繊細で愛らしいカップを使ってお茶を楽しんでいる様子を想像してみる、彼女を見る。


「ジェロニモだと、おままごとのように見えちゃわね!でも、可愛い♪」
「彼を可愛いって言うのは、キミくらいだよ」
「あら、ジェロニモはとっても可愛いのよ?」
「へえ・・・どこにその基準があるのか、僕にはわからないよ」


頼んだコーヒー・セットのチョコレート・ケーキが美味しかったので、あっと言う間に食べてしまい、コーヒーもドリップ式ではなく、プレス式だったのが、けっこう気に入った。


「食器洗いも、張大人よりもとても丁寧で、きちんとしてくれるわ」
「ふうん」
「ジェットも意外と好きよ、こういうの」
「え?」


彼女が頼んだ、ティー・セットは、5種類の小さな、小さな1口サイズのケーキが並ぶ。



「彼は彼なりのルールがあるの。ジョーくらいなものよ、”使えればなんでも良い”は」
「・・・・・別に花が描いてあろうが、ついてようが、カップはカップだし。コーヒーをこぼさずに飲めるならそれでいいよ」
「もう・・・だから”僕は使わない”なのね?そこらに置いてあるのが、使えれば、それでいい」
「何か文句ある?」
「ありません!大切に保管してあるかぎり、ジョーは割らないってことだけはわかったわ」
「僕が食器当番だったときだって割らないよ」


紅茶が注がれる様子が無いので、僕はポットを持ち上げて、サーブする。と、彼女は小さく礼を言った。


「・・ジョーと一緒にミュージアム、・・・間違っていたのね?」
「どうして?」
「・・・だって」
「別に、絵が嫌いなわけじゃないよ」
「でも、・・・・あの・・」


落ち着かない様子で、サロン内にさっと視線を送った、彼女を真似て、僕も周りを見る。
少し時代をさかのぼったような、店内。
この屋敷で実際に使われていた当時のインテリアを使用していると、パンフレットに説明されていた。


「それの何が悪いのさ?」
「・・・・・・もう、いいわ」


平日なのに、けっこう混んでいるね。と、感想を漏らすと、彼女はさっきとは違う溜め息を吐かれて、なんだかムカついた。


「ジョー、すみれ、・・・よ、この花」
「へえ、すみれなんだ・・・」


ティ・カップを持ち上げた彼女の、カップに添えた唇の色が濃くなった。



「・・・ええ。すみれ、なの」
「ふうん」



僕は、サーブ中に傾けたポットの裏にプリントされているメーカーをチェックして、そのメーカーの名前を記録することに忙しかった。









****

会計は僕がするから。と、先に彼女をサロンの隣にある、ギフト・コーナーに向かわせた。


「あの、・・・ティー・セットに使われている食器なんですけど、どこで購入できるのか教えてもらえませんか?」


会計に立った女性は、よく訊ねられることなんですよ。と、言いながら、指差したのは、フランソワーズがむかった方向。


「隣のギフト・コーナーで取り扱っております」
「!!」


会計をすませて、慌ててフランソワーズを探した。


「残念、すみれはないのね・・・」


言われた通り、ギフト・コーナーの一画に飾られた見覚えのある食器たち。・・・の、前に彼女はいた。



他にも種類があったのか。
欲しいのなら買えば?と、すすめたけれど、結局フランソワーズは買わなかった。


「すみれ、がいいの・・・よ。可愛かったもの、それにね・・」
「あの紫の花のがいいの?まるで”刷り込み”されたヒナ鳥みたいだよ」
「っだって・・」
「どれでもいいんじゃない?」
「・・・・やっぱり、ジョーと来たのは間違っていたのね?」
「間違ってるなんて・・・」
「・・・・・・」


気まずい雰囲気になる。
仕方がない。


そういう風にしたのは、彼女だ。










「もう、二度と来ないよ」
「・・・・・・・誘わないわ」


---涙声?


「今度から、もっと、生活に密接した合理的な場所にするわね!」
「!」
「たとえば、スーパーの特売日とか、かしら?」
「・・・・・・・それっていつもと変わりないよ?」
「ええ、・・・・・いつもと変わらない・・。それがいいのでしょう?」
「まあね」


---気のせいか・・・・・・・・。





















僕は、気づいていなかった。
周りがカップルだらけだったことに。



彼女の勇気に。










アート・コレクションをミュージアムとして家ごと残して欲しいと、遺言を残した女性の結婚記念日だった、今日。
毎年、”恋人”(夫婦・男女のペア)は入場無料になるらしい。


そういえば、入場チケットを購入した覚えがない。



「どうだった、ジョー!姫に”恋人”として扱われた感想は!」
「は?」



そういうイベントに詳しいグレートから、”恋人”として、フランソワーズに誘われたことをからかうつもりが、ひっくりかえって、僕にお説教し始めた。








『もう、二度と来ないよ』
『・・・・・・・誘わないわ』









誘わない?




もしかして、僕は・・・。
いや、深読みかもしれない!!





でも・・・。

もしかして、僕は、フランソワーズを・・振った?!



”もう、来ない”=恋人じゃない、から。



ことになる?!










放心する僕を気の毒に思った007が、緊急会議を開いた。


「当然だろう。」
「そんなイベントの日に、”もう、二度と来ない”、たあ・・・なあ・・・」
「ばっかじゃねえの?」
「まったく・・・しかも、あのミュージアムは片思いの相手と行くと絶対に”恋”が叶うことってこと有名なんだぞ?それで”二度と来ない”なんて言ったら、振られたも同じだ」
「そんなっ!知らなかったんだよっ」
「気づかなかったのかよ!周りがピンクハート飛ばしたバカップルだらけっつうことによ?」
「気づかないっ!平日なのに込んでるなあ?くらいっ。普通っ、子どもとかいないだろ、平日にっ!」
「なんだよ、その基準はよお?」
「ジョー、すぐにでもフランソワーズに謝るネ、知らなかったこと、仕方ないアルヨ!」
「・・・そのう」


ピュンマが、恐る、恐る、手を挙げた。


「何?」
「・・・・・・・ジョー、ごめん」
「そういえば、ピュンマなんでここにいるの?・・・博士とホテルに行く時間はとっくに・・」
「だから、ごめん」
「!?」
「僕が博士に同行する予定だったのを、イワンがほら、予定よりも早く起きただろ?それで、イワンも行くって言うから、フランソワーズが同行するって言う事で・・・」
「!!」
「「「「「傷心旅行・・・」」」」



---振ったつもりなんてない!


ダイニングルームから、彼女の部屋へ一気に走る。


「あ!待ってジョーっ!フランソワーズはっもう」




ノックをする。
指の間接を使って軽く。

いつもなら、すぐに聴こえてくる声がないことに、余計に焦った。


「フランっ!!」


彼女の部屋のドアを、どん!っと叩いた、その手を彼女が可愛いと言った男の手が止めた。


「いない。」
「!」
「明日は早い。博士は空港近くのホテルに泊まると聴いているだろう?ピュンマではなく、フランソワーズがイワンと同行した」
「な!・・・んで、・・・僕は知らないんだよっ?!」
「知らされなかった。が、正しい。」
「っな・・・・・・・・・」
「すみれ。」
「?」
「ジョー、フランソワーズは帰ってきてオレに”すみれ”の絵が描かれたティ-セットを見つけたと言った。」
「すみれ・・・」
「春の花。ジョーの誕生日ごろにも咲く花。そして、初めてジョーからもらった花。」
「ええ?!」
「庭にもたくさん植えてある・・紫、白、黄色、ピンク・・・・。」
「そんなの知らないよっ、初めてって・・・僕、花なんかフランソワーズに・・・・・・」
「003には?」
「・・・・・・・・・・・・・・・あ!」





BGから脱出してすぐのころ。
身を寄せたコズミ博士との関係も、まだぎこちなく、今後のことを考えるにも、脱出したことに興奮した頭ではまとまらなかった。



道ばたに咲く、薄紫の花。
歩いていれば、その色の鮮やかさに目を奪われる。
愛らしく咲く小さな花の群れに、微笑んだ003が、可愛くて、あまりにも可愛くて、可愛くて。

自分の身に何が起こったのか、はっきりと把握できていなかった僕自身のこころの不安を、忘れさせてくれた、あの一瞬に、感謝した。


『道の端っこによく咲いてるよ』
『野の花って好き・・・、久しぶりに、見たわ』
『・・・久しぶり?』
『・・・・・・・・・・・花に・・なんて、余裕なかったもの』


その場で、僕は・・・その花を彼女に。




『これからは、たくさんあるよ。はい、・・持って帰って003の部屋に飾ったら良いよ』






ああ。そうだ、あれが”すみれ”だ。












「どうする?」

ジェロニモの声で、我に返ったジョーは、慎重さのある彼を見上げた。


「決まってる!」


まっすぐに向けられた瞳の強さ。


「急げ。ホテルはマリ○ット・ホテルだ。部屋は、309号室」
「ありがとう!」
「・・・・・もっていけ」
「!」





みんなは加速していかないのか?!と、言うけれど、加速できるはずなかった。



「多年草だ。・・・温かければ、季節がずれても咲く」










受け取って。
フランソワーズ、この花と一緒に。


僕の気持ちも!





「フランソワーズっ好きだよっ!!この花っ、キミがこの花を好きだと思ってる以上に僕はキミが好きだしっ。キミがこの花を大切に思っている以上に、キミを大切に思ってるっ!!」




































####

「・・・・・うそ」
「可愛いって言ったから・・」
「探して、くれたの?」
「まあ・・・ある意味、僕たちの記念の・・みたいなもんだし、さ・・・フランソワーズ、お誕生日おめでとう」


23.jpg



「ジョー・・・ありがとう」
「・・・美味しい紅茶をいれてよ」
「まあ!私が?」
「・・・・・うん」
「私の誕生日なのに!」
「・・・・・・まあ、ね。フランソワーズのがいいよ」
「仕方のない人ね。ふふ、でもいいわ、帰りましょう!」


うん・・・。
君の部屋で、君がいれくれた紅茶を飲んだ後、もうひとつの、プレゼントが待ってるんだから。



「ジョー?」
「ん?ああ、なんでもないよっ!さあ、帰ろう・・」











end.



*3誕生日よー・・・で、かなり・・・2/3削った(涙)それでも間に合ってない。
 ラグビーさんのイラストから興したのでした~。
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