RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
Little by Little ・13
(13)






瞬く星の明かりを背に、彼女は空から、まるで・・・。










「フラっs、危ないっ!」


声に出すと同時に足が動く。
当たり前のように、それが当然とばかりに、フェンスを軽々と超えた彼女を受け止めようとする。

コスト削減気味な、適当に設えられていた青緑色のフェンスは、1度目の衝撃の余韻から抜けきっていなかったのか、大きく傾く。
003が、それくらいのことでバランスを崩すわけなはない。と、009の声が聞こえた。しかし、躯を宙に浮かせたときに風に煽られたスカートにフランソワーズが気を取られた瞬間を、ジョーは見逃さない。そのスカートの裾がフェンス内に移動したフランソワーズを追わずに、飛び出していた金網の針にひっかかったことも。


びっ。と、布が裂ける音に、フランソワーズの表情が固まる。


フェンスの高さは、ジェロニモより低く、ジェットより心持ち高い。
助走をつけることなく、軽々とそれを飛び越えるくらい、サイボーグである自分たちには簡単なこと、だ。


「や・・・」


ジョーの腕が、伸びる。


フランソワーズを肩で受け止め、しっかりとフランソワーズの足を右腕で支えながら躯をフェンスに寄せ、ひっかかったスカートの端部分へ左手を伸ばして外す。

ジョーの肩に下腹部が乗るようにして抱き止められたフランソワーズは、勢いづいて彼の背中側にむかって前のめりに倒れ込みそうになった。
その勢いを殺すかのようにジョーは大きく一歩引いてバランスを取り、フランソワーズを肩から自分の胸へと移動させ、何事もなかったかのように、彼女を地面に着地させた。 



「・・・・・」



ジョーに抱き受けられた衝撃に、止めてしまっていた息を、彼の胸にむかってはあっと吐き出した、フランソワーズ。

たかが、フェンスを飛び越えるくらいのことで。と、フランソワーズは情けない気持ちになると同時に、恥ずかしさの波に胸が襲われて躯を強張らせる。

フェンスが夏の夜空に揺れて鳴り響いていた。
・・・・が、大きくたわんでいたそれも、次第に元の位置へと大人しく戻り、辺りに静寂が訪れた。


「だ、い、じょうぶ?」


先に、口を開いたのはジョーだった。
戸惑いと言うよりも、驚きにのどが引きつっていた。

彼の腕は、フランソワーズをおろしたときと変わらない位置に、軽く彼女の背にまわされている状態。


「大丈夫?フランソワーズ・・・?」


答えない、フランソワーズを怪訝に思い、その顔を覗き込むようにして近づけると、さらり。と、長い前髪が傾けた首と同じ方向へと流れた。


「・・・フランソワーズ?」


普段の半分以下の音量に関わらず、さらに声のボリュームをおとす。
声帯を震わせなかった空気がフランソワーズの頬をかすめた。


「・・・・・ごめんなさい」


蚊の鳴くような弱々しい声を絞り出し、答えた、フランソワーズ。
利き腕で彼女の背をそっと”いつものように”撫でることで、フランソワーズの”ごめんないさい”を受け止める。


「怪我は・・ない、・・・よ、ね?」


ジョーのささやきに、こくん。と、かすかに頷いたフランソワーズは、ジョーとは視線を合わせないようにして、地に落としていた視線を動かし、その動きから数秒遅れて自分の左肩に唇を寄せるように顔を、街灯の光り届かない夜の闇へとむけた。


「・・・・・・・・スカート、で、ああいうことはしない方がいいと、思う、よ」


フランソワーズの横顔を見下ろす、ジョー。
長く上向きの睫毛が風を作り出しながら、フランソワーズの紅い頬に陰をつくっていた。


「それなら」


フランソワーズの唇が、動く。
彼女の唇の動きが、ジョーにはスローモーションのように見えた。


「・・どうして、独りで行こうとするの?・・・・一緒に行くって言ったの・・・に・・・」


深く、胸に吸い込んだ空気。
ジョーが愛煙する甘みのあるスパイシーな香りがフランソワーズの肺を満たす。


「・・・・待っていてと、言ったはずだよ、・・・」


フランソワーズを抱きとめたときと同じ衝動だ。と、言い訳する。
1人でフェンスを超えた、言い訳。


「いつも、そう言って」


前に訪れたときにはなかったフェンスの、向こう側に、行かなければ、と。
躯が勝手に、動いた。と、言い訳する、ジョー。


「・・・1人で、・・・・ジョーは、常にみんなのことを助けてくれるのに、私、(たち)は、あなたの力には、・・なれない、の?」
「・・・みんなに、助けられてる、し・・、それに、いつだって、力になってもらってる」


ジョーはフランソワーズの横顔から視線を外すと、彼女の背後にある、2ヶ月ほど前に訪れたときにはなかった、あちら。と、こちら。を隔てるためにあるような青緑の色のフェンスを、見つめて下唇を巻き込むように噛んだ。





街灯の光に満たされた向こう側。
光り届かないこちら側。




光にあふれていたはずの、こちら側。












『ここ』はずっと変わらないと、思っていた。













####


「あんな小さな子を今更引き受けるなんて・・。やっとこの間○○ちゃんが中学校を卒業したところなのに・・・」
「手がかからない年の子ならまだしも、今年小学校入学するって、ねえ」
「最低でもあと10年は面倒見ないといけないわねえ」
「神父さまのお体が・・心配だわ・・・」





友達に”おじいちゃん”と勘違いされる、神父様がいた。


お兄さんが、1人いた。
お姉さんが、2人いた。

一緒に、教会で暮らした。




教会で育った。と、週末に遊びに来るお兄さん、お姉さんたちがいた。






今まで着ていた服じゃ駄目だと、新しく買いそろえてくれた。
初めて自分の服を、靴を自分で選んだ。







初めてのデパートで。


ランドセル。

教科書。

文房具。


小学校へ入学するのに必要な物を全て”新品”でそろえてくれた。




入学式には、たくさん写真を撮ってくれた。
おめでとう。と、お祝いしてくれた。


初めて”自分だけが主役”のパーティをした。



名前が”漢字”じゃない”カタカナ”表記だと、泣いた。
同時に半分、日本人じゃないと、知った。



こんな名前嫌だ!っと言った。




神父様に初めて、怒られた。

裏山に、子どもだけで遊びに言ってはいけない。と、何度も注意された。











「ここに、教会があって」


力が抜けてしまいそうな感覚に教われて、フランソワーズの背にある腕に力が入り、自然とフランソワーズを抱きしめた。

左に顔を向けていたフランソワーズは、ジョーの腕に抵抗することなく、彼の胸に右頬を寄せるようにして、触れた。


「・・・・・ここに、は・・・」








危ない。と、言われていた。

夏休みに入ってすぐに、駄目と言われていたのにも関わらずに、黙って遊びに行った。
毎日が日曜日!と、浮かれていた。
遊びに夢中になって、教会に戻る約束の時間が過ぎていることに気がつかなかった。
日が落ちたために、散歩コースの道からはずれていたことにも気づかなかった。


自分を含む5人。


たくさんの大人たちが、探してくれた。
初めて本物のパトカーを見た。

神父様が、地面に額がひっついてしまうほどに、ずっと頭を下げて、様々な大人たちに謝っていた。




一緒にいた友達たちは、彼らの両親にたくさん、たくさん、抱きしめられていた。


無事でよかった。と、いっぱい、いっぱい・・・。





俺はどうしていいか解らず、ただ、ピカピカ光る赤いライトを点したパトカーのそばに突っ立って、それらを見ていた。



友達たちと同じように、神父さまに抱っこしてもらいたくて、自分から神父さまの所へ駆け寄ろうとしたとき、見覚えあるけれど、名前の知らないお兄さんが、俺を力一杯に蹴った。



「神父様はもうお年で、無理できねえんだよ!迷惑かけんなら別のとこ移れ。書類とかそういう手続きはしてやるっ」



石ころのように簡単に転がった、俺。
誰も助けてくれない。



声を上げて、泣いた。
周りの大人たちは、迷惑そうに眉をひそめて俺を見下ろす。


俺を蹴ったお兄さんは、ち。っと、舌打ちして、その場から離れていく。


一緒に住んでいる、お兄さん、お姉さんが、すみません、すみません。と、言いながら、やってくると、俺の腕を乱暴に引っ張って立たせた。


「いい加減にしてよっ!泣きたいのはこっちなんだからさ!!」
「立場ってのをわきまえろっっ、ジョーっオレらは”違う”んだぞ!何かあったら全部オレらのせいに、神父様のせいになんだかんな!」
「泣いたって駄目なんだからっ!」




自分のいる環境を、自分がどういう人間なのかを、知らされた。








騒動の翌日、神父様は泣いて腫上がった瞼の俺を見て、ホットケーキを3枚焼いてくれた。いつもは蜂蜜なのに、缶に入ったメープルシロップをたっぷりかけてくれた。


食べ終わった後、神父様の膝の上で1日を過ごした。



お兄さん、お姉さんたちから、”ジョーが赤ちゃんになった”と、からかわれた。





あの日以来、友達たちはもう一緒に遊んでくれなかった。
遊んでくれなかった、じゃない。


遊べなくなった。










事件から1週間も経っていない、日。
教会のお兄さんに頼まれて、お使いに出た先の店前にいた女性から、声をかけられた。


「ジョー、くん?」
「うん!」
「こんにちは、・・・」
「こんにちは!」
「私が、わかるかしら?」
「うん!わかるよっ!いつもチョコレートが入ったクッキーを持ってきてくれるよね!」
「ええ・・・、ジョーくんがたくさん食べてくれるから、とっても嬉しいわ」
「大好きだよ!!すっごく美味しいもんっ。ね、また持ってきてね!!」
「・・・・ええ、もちろん・・ジョーくん、チョコレート好き?」
「うん、大好きだよ!」
「・・じゃあ、神父さまのこと、・・・好き?」
「うん!大好きっ!!」
「そう。・・大好きな神父さまのために、ジョーくんは、何かしたいわよね?」
「?」
「あの教会は神父さまのお家、よね?」
「うん!そして、僕のお家!!おにーさんとおねーさんのお家!」
「ええ、そうね。・・・ねえ、ジョーくん。でも、ジョーくんの”本当の”お家なのかしら?」
「・・・本当のお家?」
「そう。教会は、違うでしょう?」
「でも、神父さまは教会が僕のお家だって言うよ、僕の名前もあるよ!」
「ジョーくんの名前?」
「うん!マリア様のところに、ね、書いてくれるって!ちゃんと”漢字”でっ!お母さんがつけてくれた名前があるけど、神父さまがもう一つ、別に名前をくれるって、それはね、僕が神父さまの子どもだって言う事のことで、だから、お母さんがくれた名前とは、また違うから、使わないんだけど、でも、神父さまがくれたのは、僕用の、僕と神父様とだけのなんだよ!すっごく、難しい漢字がいっぱい並んでるのをね、神父さまが見つけて、取ってくれたんだ。ちゃんとね、意味もあるんだけどね、すごく勉強しないと解らないんだよ、難しいって、おにーさんも、おねーさんも、僕が大人にならないと使えないって言うの。でも、すぐわかるようになるよ!だって僕のだもん。毎日練習するよ!漢字で書けるように、すぐになるよ!」
「・・・そのお名前を、次のお家で使うのはどう?」
「次の、お家?」
「そうよ、そこはもっと大きな教会で、綺麗で、ジョー君と同じ年のお友達たちがたくさん住んでいるわ」
「神父さまも一緒?」
「・・・いいえ、神父さまのお家はここですもの、いらっしゃらないの。でも、別の神父さまと、シスターがいらっしゃるわ」
「・・・・・・・僕、ここに居たら、駄目なの?」


チョコレートチップ・クッキーを手に毎週礼拝に訪れる、いつも綺麗な服を着た女性の、後ろに立っている男の顔を、俺は忘れない。

綺麗な服を着た女性の顔は、覚えていない。
俺を石ころのように、蹴った男の顔は、今でもはっきりと覚えている。


「・・神父様はもう、年なんだよ、・・・お前がいたら、神父様はいつ、ゆっくりできんだよ?会いたきゃいつでも会えんだし、ここに住まなくったってさ・・・。やっと○○が中学卒業して、手が離れたのによ・・・これでやっとって、思ってたらお前来るし・・・」





そのとき、何を考えて、何を思って、俺を蹴った男と、綺麗な服を来た女性と一緒にタクシーに乗ったのかは、思い出せない。





移った施設から、何度も抜け出しては、”ここ”へ帰ってきた。
けれど、教会内に入ることも、神父様に会うことも、できなかった。


神父様が何度も、俺を心配して施設を訪問してくださったけれど、俺は会わなかった。




どうしてかは、わからない。



俺が施設を抜け出すたびに、”あの男”が俺に会いにくる。
施設を替えるたびに、・・・問題を起こすたびに、警察沙汰になると、一番に連絡が行く先が、なぜか、俺を石ころのように蹴飛ばした、男になっていた。

学校行事に、進路相談。
どうやってそれらの情報を得るのか・・・。


必ず、やって来る。





「頭いーんだな・・、高校あきらめんな。推薦されてる学校や奨学金、駄目だったら、最低公立くらいなんとかしてやる・・、大学、国公立にいけるんなら、俺が保証人になってやるから、学生ローンでも組めよ。それくれえ、軽々入れるような奴らが行く高校に推薦もらえんだからな、・・・」
「・・・奥さんに怒られるよ?」
「オレのやり方に文句言わせるような、女はいらねえ」
「・・・・」
「・・・お亡くなりになられた神父様が、お前にしたかったことをオレが全部してやんだよ」
「・・・・未成年に煙草の味までしっかり教えるなんて、神父様は想像してなかったんじゃない?」
「お前が勝手に人の煙草で覚えたんだろ?・・・えらくなったら煙草代を徴収させてもらうかんな」
「たかるの?」
「親の面倒みんのが子どもだろ?」
「誰が、”親”だよ・・・都合良過ぎだよ、それ・・・殴る、蹴る、喧嘩の仕方しか教えなかったクセに」
「上等だろ、お前がナメられねえようにしてやったんだからな」
「・・・それはどうも」
「腕っ節もそこそこ、顔は一丁前、大学失敗したら、オレの店で働けよ。あっと言う間に左団扇で生きていけんぞ」
「・・・まだ高校にも入ってないのに」
「こういうことは、先に先にって、考えんのがいいんだろ?なあ、澄(ジョウ)」








教会に身を寄せた子どもたちの名前、全員の、名前が刻まれている、一番最後に、ある、神父様がくださった、漢字の名前。


こっそりと、神父様の様子を伺い、教会の裏の小さなガーデンに建つマリア像の台座に刻まれた”漢字”の名前を撫でる。




その中に、未成年に煙草の味を教えた男の、名前も・・・当然のごとく、あった。













####

押し当てている左の耳がスイッチを入れなくても捉える、ジョーの心音。
顔をゆっくりと動かして、フランソワーズはジョーを見上げた。

ジョーの心音が少し遠ざかる。


「・・・ここに、名前があって」


ジョーの腕に、さらに力が入った。
彼の心音が先ほどよりも強く聴こえる位置に、かわった。

「・・・・神父様は、教会にいた子どもの名前を、マリア像の下に彫ってくださる、から」




Tシャツを通りこして。
人工皮膚を超えて。

作り物の心臓しかない胸が、焼けていく。





「この奥は、・・・・・暗いし、危ない」


ジョーの腕の強さに、フランソワーズの胸にじんわりと甘みある色が溶けだして滲む。


「003、よ・・・私の担当だわ」


その甘みを吸った心臓が、戸惑う。


「命令、違反」


強く、強く、さらに強く、腕に力を入れた。
身長差をなくすように、少し前かがみに体重をフランソワーズへと移動させる。












頬が重なる。









「009、命令、だったの・・・?・・・ごめんなさ、い。日本語、まだ勉強中だ、か、・・ら・・」


直接ふれあう皮膚(頬)の温度。
汗ばむ手の平をごまかすように、ぎゅうっとジョーのTシャツの、左右の脇腹あたりを握りしめる。


「・・・漢字の、書き取り、け、って・・・い・・」


頬の熱がさらにあがる。










「・・・・ジョー」


フランソワーズは握りしめていたジョーのTシャツから1本、1本、慎重に力を抜いていき、Tシャツから手が離れると、ジョーの背へと恐る、恐る、腕をまわし、彼に負けないほどの力で、ジョーを、抱きしめた。




過去に2度、”フランソワーズ”として、ジョーの腕に抱きしめられた。
(day14/48)









これで、3度目。と、無意識に数えたフランソワーズの躯が、かっ。と火照る。


お互いの体温が混じり合う。
夏の空気から浮き立ちながら。




ジョーの熱がフランソワーズを染めていく。
腕に抱くフランソワーズの柔らかさに、溺れて。


フランソワーズにジョーの煙草の香りが移る。
着やせするタイプの、見かけ以上に広いジョーの胸にすべての体重をあずけた。




フランソワーズの腕の力を強める。
お互いの想いを、お互いの腕に、こめる。





布越しに感じる、共有する機械の躯。


生身ではないはずの躯だと、生身でないことを一番知っている自身が信じられないほどに、抱き合う躯は、燃えるように、熱く、柔らかく、たくましく、華奢で、広く、愛おしく、離れられたくない。と、遠い街灯がぎりぎり届く距離に、うっすらと形作る陰は1つ。


「・・・漢字、は・・・”澄”を、練習、して、欲しい・・・・」
「・・・・?」
「・・・澄(ジョウ)」
















####


当麻のナビゲーションに従って、レンタカーを運転する張大人。
フランソワーズの携帯をしっかりと握りしめ、液晶画面が示す地図をにらみ、時折フロントガラスから見る夜の街と、運転する張大人を見る。


「・・・どこアルかねえ、ここは」


張大人の呟きに、当麻は答えなかった。
そんな当麻にむかって視線を流し、フロントに反射する対向車線からのライトに小さな目をさらに小さく細めて、独り言を続けた。


「こんな場所を、フランソワーズが知ってる筈ないアルから、きっとジョーと関係ある場所ネ。でも、聞いたことないアルなあ・・・。ジョーが日本を離れる前に住んでいた場所はワタシ知ってるアルからして・・・」


アクセルを踏む力を弱め、ブレーキをへと移動させながら、当麻の様子を窺う。


「次の交差点を左折してください。大通りから離れます・・・あの、シャッターが閉じている、写真屋かな・・・、あの角を、です」
「アイアイね!」


3色の信号機。
防護服と同じ色が点滅していた。


当麻は腕時計の文字盤を見た。
通り抜けていく対向車線の車のライトが、ストロボライトのように当麻に軽い目眩を与える。暗い車内の中、長短の張りが指す数字に、ため息が漏れる。

そのため息を重くさせたのは、ホテルに居るであろう、フランソワーズの”家族”から未だに彼女が帰ってきたと連絡がないこと。

今向かっている先が、フランソワーズに関係があるとは思えない場所。







島村ジョーに関連する場所であるから。



「アイヤー・・・」
「・・・・天王山」


のろのろと、人が歩く速度までに落として、大人が運転する車が進む。
ライトが照らし出す細道に飛び込んできた、案内板。

白のそれに大きく書かれていた、地図。
閉め切っていたカーウィンドウをあけて、当麻は窓から顔をだすようにして、書かれている文字を読んだ。


「山アルヨ・・」
「公園、散道・・・に、ハイキング・コースがあるみたいです・・・ね。その途中に、学校が・・・・多分、専門学校とか、そういうのだと思いますけど」
「こんな時間にジョーとフランソワーズがハイキングするとは思えないアルヨ」
「学校にも用があるとは思えません」
「・・・さっきの新築の立派なお家から、ここまで、フェンスに囲まれた空き地と駐車場に田んぼばっかりネ」
「でも、・・・地図はここを示していて・・」
「この付近にいるいうことアルか?」


---こんな時間に、こんな場所・・・ジョーがフランソワーズを連れてブラブラするはずないネ。絶対に此処じゃないアルヨ・・・ワタシの感は四千年アル!



張対人は、車のエンジンをその場で切った。
彼の持つフランソワーズの携帯電話を貸すアル。と。当麻へと腕を伸ばした。

受け取った携帯電話を、慣れたように操作する。
まるっこい指が迷いなく動くさまを当麻は見つめた。



ーーー・・・・アイヤイヤー・・ギルモア博士。・・・これじゃ、2人が移動を止めない限り、いつまでも追いかけっこネ。



フランソワーズの携帯電話が指し示すのは、彼女が向かった先を順に追うものであり、”今現在”の場所を指し示すようには設定されていなかった。




大人は、2人の現在地を知る。




「当麻くん、ちょうどいいネ。ちょっと話したいアルヨ・・・」


ギルモアが設定した状態に戻し、当麻にフランソワーズの携帯電話を返した。


「なんですか?」


携帯電話を受け取った後、当麻は車内の室内灯に手を伸ばしスイッチを入れた。


「フランソワーズとジョーは、両思い。愛し合ってるネ・・・・・」











====14へと続く



・ちょっと呟く・

っ6!!が、・・・連載を終わらせました(笑)

亀のような進み具合で、申し訳ありません・・・。
web拍手 by FC2
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。