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左右に揺れる亜麻色の髪
かしゃん。と、フランソワーズの手にあった、水を入れていたガラスコップがフローリングの床を跳ね、きらきらと光る星屑のように散った。

濡れた床に落ちた欠片たちが、ギルモア邸、ダイニングルームの照明に反射してきらり、きらりと輝いた。
その小さな輝きに、目を奪われて、ガラスコップが割れてしまったことにすぐさま反応する事が出来なかったジョーは、フランソワーズの声で我に返る。


「ごめんなさいっ!私ったら・・」
「いや、ごめん・・・」
「ううん、私がっ」


左右に揺れる、亜麻色の髪。


「ちゃんと受け取らなかったボクのせいだよ、ごめんね」


しゃがみこんで、グラスの欠片を拾うフランソワーズを見下ろす、彼女の髪は、左右に揺れ続けていた。


「すぐに片付けるわ」


触れ合うガラスの欠片たちが、かしゃり、と。鳴る。


「危ないよ、手を切る」
「平気」
「ボクが片付けるから・・・、キミは掃除機、持ってきて」


片膝をつく形で、ジョーもフランソワーズと同じ目線までしゃがみ込んだ。


「あ、ええ、掃除機、・・・そう?でも、もう大きな欠片は拾ってしまったから・・・」


拾える大きさに割れてしまったグラスの破片を手のひらに乗せた、フランソワーズ。


「・・・・・あの、さ」


ジョーは慎重に、フランソワーズの瞳を覗きこんだ。


「掃除機、すぐにもってくるわ。ジョーはリビングルームへ行っていて、ね?」


ジョーの視線から逃げるように、フランソワーズは固く瞼を降ろして立ち上がり、手のひらのグラスだけを見つめるために、蒼を甦らせる。


「そんなに驚かなくても、いいんじゃない?」


立ち上がったフランソワーズを見上げて言った。


「・・・」


無言でフランソワーズはダイニングルームを去って行く。





「・・・・・なんだよ」





去って行く、彼女の背を見つめながらため息を一つ。







足下の濡れた床。

拾えないガラスの欠片。






きらり。きらり。と、光る。
揺れる、彼女の髪の光り方とは違う。


「なんだよ・・・。聞かれて困るような相手なわけ?」


フランソワーズが持ち帰った小さな箱と、パステルカラーの細い、黄色とピンク、そして白の、3色のリボンで飾られた、とても可愛らしい、イワンのほっぺのようなマシュマロが5つ入った、透明な袋。



今日と言う日が、何の日で、どういう意味があるのかくらい知っている。




















あげたから、お返し?
・・・・誰にあげたの?




1ヶ月前に、キミは、いったい誰に、何をあげて、何を言ったの?



















ボクは聞いてない。
知らない。


















ボクは何も知らない。
ボクは何ももらっていない。
ボクは何も聞いてない。


ボクは何も、・・・・・・・・・・。



「!」





砕け散ったグラスの欠片が、星のように瞬いて。
その瞬きの一瞬に満たない早さで、ボクは彼女を捕まえた。


「なんで、わかってくれないんだよっ・・・・・・・ボクはキミのことが好きだっ!!」




亜麻色の髪が左右に揺れる。
否定を表す揺れ方に、さらに強くフランソワーズを抱きしめる。


『ウソ』と、形作る、愛らしい唇が憎い。




憎くて、愛おしくて。



「っ」


まだ、捨てられずに彼女の手のひらにあった、大きな欠片を握ってしまった、フラソワーズの手から、赤い雫が落ちた。


「!」


彼女の眉が、痛みに歪む。
ジョーは加減せずにフランソワーズを抱きしめてしまったと勘違いして、彼女を解く。


フランソワーズの手のひらにある、欠片が、光る。
赤く、光る。


ジョーは彼女の手から、それらを取り除いてバスルームへとフランソワーズを連れて行き、洗面台の屑篭にガラスの欠片を放り捨て、蛇口を捻って勢いよく出した水に、切ってしまった彼女の血を洗い流した。



流れていく。
水音。

フランソワーズを包み込むように、彼女の背中抱きしめて。



彼女の左肩に顎を預け、左耳にささやく。




「嘘じゃない、・・・どうして、信じてくれないの?」



視線をあげて、洗面台の鏡の中にいるフランソワーズに向って言った。
鏡の中の彼女は、きゅ。と、ジョーの手に固定されていない方の手で蛇口を閉めて、水の流れを止めた。

赤が滲む前に、手近にあったタオルへと腕を伸ばし、それで傷口を押さえると、その手の上に、ジョーの手が重なる。
フランソワーズの両手をジョーの両手が包み込む。


「信じる、信じないじゃなくて・・・・。・・・ダメなの」
「だ・・め・・・?」


かしゃん。と、先ほど聞いたグラスコップが割れる音がジョーの胸で再生された。


「ダメ・・。だって、・・・だって」


亜麻色の髪が、左右に揺れる。
もう、それが癖になってしまったかのように、風もない邸の、バスルームで揺れた。


「だって、なんだよ。ボクが、何だって言うの?」


乾いた唇を潤すように、巻き込んで。
そこで一時停止。






憎らしく、愛おしいと思う、唇が作り出す言葉に耳を澄ませた。つもり、だったけれど、ジョーは彼女の言葉を待つ時間を省略する。
聞く必要ないと、判断したために。









余計な言葉はいらない。と、フランソワーズの言葉を、飲み込むように。
彼女の両手を包んでいた手が、なぞるように腕から肩へと移動し、同時に重なっていた躯がずれて、鏡の中ではない、彼女と、向き合う。

逸らされた蒼の中に、ジョーは自分を見つける。
みつけた自分をそのまま固定するように、フランソワーズの頬を包み・・・・。




重ねる。



自分の気持ちを、彼女の気持ちを、何もかも1つにして、自分の胸に流し込むために。










かしゃん。と割れた、グラスが光る。
星のように、瞬いて。
きらり。きらり。と、輝いて。





砕けた欠片を拾い集めて、胸いっぱいに、煌めいて。



















「誰にもらったのか、言うんだ。ボクが返してくる」
「ダメよ」


癖になってしまった、左右に揺れる、亜麻色の髪。
上擦った声を、まだ言うのか?と言う疑問を乗せて。
ついばむように重ねる、憎らしくも愛おしい唇。



「受け取ったら、ダメだっ」
「いいえ、ダメ、いただいたのを返すなんてできないわ」
「キミには必要ない!」
「っそんなの、ジョーには関係ないわっ」
「あるっ!!」






彼女にむかって、彼にむかって睨み合う。
お互いの瞳が先ほどまでの甘さに潤みきっている恥ずかしさを、押し込めるように。








「わた、わ、私はっジョーの彼女でもなんでもっ」
「キスまでしてっ今更っ」
「勝手にジョーがっ!」
「フランソワーズっ!!ボクはキミが好きだっ、何があっても何がどうなっても、地球がひっくりかえって、南極ペンギンが赤道に住む事になったって、ボクはキミが好きでっ、好きなんだよっ」
「・・・・・だってっ!あれはっ」
「あれは何だよっ!」
「ローラにもらったんだものっ」
「・・?」













---ローラ?

キミの通うバレエ団の、プリマドンナ・・・ローラ・友美・甲斐田・・・の、こと?












フランソワーズの躯が熱く、火照る。
足先から上ってくる熱に、彼女の白い肌が綺麗に反応を表す。

耳たぶから、頬を染めて、全身が茹だっていくフランソワーズを、鏡に映るフランソワーズをジョーは見ていた。







「・・・・女の子同士でも、チョコレートをあげたりするのよ。それで、その・・ファン心理と言うか、みんなで、次回の公演をがんばってくださいって言う気持ちで、バレンタインデーにあげたの。・・・そしたら、今日、お返しにって、マシュマロをみんなにくださって、でも、なぜか、私には別にも・・あって・・・・・」





---まさか・・・。






「返してくる。相手がキミの憧れてのダンサーだったとしても!」
「嫌っ!!ダメよっ。私にその気持ちがないことは、そういう”恋愛”の兆候がないことをわかっていらっしゃる上でくださったんですものっ。彼女の勇気に、そして、そんな風に思ってくださっていたことに、水を差すようなことしたくないわ!!」
「許さないっ。女でも、男でもっ、機械でもっ、お化けでもっ妖怪、あああっ全部だっ全部っ!!ボク以外は許さないっ」
「ジョーが許さなくt」








解らないの?
まだ、解らないの?
まだ、ウソだと思っているんだろう?






----逃げないで、受け止めてよフランソワーズ!!












噛んだ加速装置。
燃え散った、彼女の傷口を押さえていたタオルと、衣類。



左右に揺れることが当たり前になってしまった亜麻色の髪の、輝き。
抵抗する彼女の弱々しさに、割れたグラスのコップの小さな欠片が、ジョーの胸をちくり。と、痛ませる。



そんな繊細な痛みを、ジョーは目の前にいるフランソワーズの初めて見る姿に、忘れ去る。














「ダメ・・・」


左右に揺れる亜麻色の髪が、枕カバーにこすれて布擦れの音。


ボクは聞いてない。


彼女の”ダメ”は口癖。
キミの髪が常に左右に揺れているような、同じ癖。



「こんなの、ダメ」



知らない。



「ダメなの・・・」
「ここまで、きて、・・・何が、ダメなんだよ」




うっすらと焦げた匂いが漂う部屋に不似合いな、声。










ボクは何も知らない。
ボクは何ももらっていない。
ボクは何も聞いてない。



だから。



ボクは知ろうと思う。
ボクはもらおうと思う。

ボクは、聞きたいと思う。






「好きだ、フランソワーズ・・・。だから、教えて、聞かせて欲しい。・・・・・・ちゃんと知りたい、言葉が、キミから」
「・・・・・・ダメ」
「フランソワーズ・・・・」


かしゃん。と、割れたガラスコップの欠片が煌めく。
見つからない欠片が、どこかでひっそりと、輝いている。




「言わないわ・・・言ったら、もう、逃げられないもの・・・・」
「・・・」
「ペンギンさんが赤道に住む事になっても・・・言わない・・・・ダメなの」




左右に揺れる亜麻色の髪。
その髪に、唇をよせて。


「好きだよ、フランソワーズ・・・キミが言わないなら、ボクが言い続ける、し・・・」


ダメ。っと、言われても。
激しく揺れて否定する髪も。




何もかも、愛している。














end.






*だああああい分前からあったロングストーリー用のお話だったんです。
 こういうのを書いて、べろーん。と、伸ばして、肉付けして長くなっていくんです。

 ちょこっと文章入れ替え・・・ホワイト・デー使用にしてますが、イベントには置きませんっ(涙)
 それように書いてないからが理由です。
   
 
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