RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
春の装い
「ごめんなさいっ!待たせちゃって」
「ううん」


ジョーの姿に気がついたのは、ずっとずっと遠い位置。
そこから走っても、息切れすることもなく彼の元へと誰よりも早くたどり着く自信があった。けれど、両手に下げたたくさんの紙袋。と、履いている5cmのピンヒールがフランソワーズの決断を鈍らせた。

それ以前に。と、フランソワーズはこころの中で呟く。


繁華街で”オリンピック選手”以上の身体能力を披露することになるのは、さすがにね。と。


「慌てなくてもいいよ、約束の時間より、1分早い」


はにかむような微笑みを浮かべながら、ジーンズにつっこんでいた携帯電話の液晶画面に表示されているアナログ時計に視線を落とした、ジョー。


「でも、待たせたことには変わらないわ」
「思ったよりも早くついただけだよ」
「どれくらい?」


携帯電話を定位置でもあるジーンズの右ポケットにおさめると、ジョーは歩き出した。


待ち合わせの場所は、百貨店。
西側エントランスの、大きなファイン・アートが描かれた壁画前。


「どれくらいかな・・・邸を出たのは、12時前くらいだったけど」
「え?・・・でも、待ち合わせは2時よ。それじゃ・・・」
「ん?ここにくる前にちょっと寄りたいトコロがあって」
「寄りたいトコロ?」
「うん」


どこ?っと、衝動的に口から出てきそうな2つの音。を、フランソワーズはぐっと飲み込んで我慢する。


「それで、用事は済んだの?」
「うん」


日曜日の午後。





スプリング・セールには少し早い時期。


けれど、西口エントランスから入った2人は、その人の多さに視線を合わせて驚き合い、1階のアクセサリー売り場からはじき出されるようにエスカレーターへと向かい、地下の食料品売り場へ直接向かった。


「ものすごい人・・」
「さすが、日曜日」
「・・・・気温が上がれば、みんな外で過ごすと思ってたわ」
「ピクニックとか?」
「お花見よ」
「まだちょっと早いよ」
「そうなの?」
「ニュースでは、あと2週間くらいだって言っていたよ」


フランソワーズが先にエスカレーターに乗る。
同じ段には乗らず、フランソワーズの背後にジョーが立つ。

フランソワーズはエスカレーターの進行方向ではない向きに躯をひねり、段差がある分、ジョーをジェロニモを見上げるような感覚で綺麗なラインを描く顎を、あげた。

エスカレーターと同じ速度で動く手すりにジョーは軽く右手をのせ、視線を先ほどまでいた1階のフロアに理由なく、なんとなく、固定させていた。・・・ために、下っていく速度に合わせて彼の視線があがっていく。

フランソワーズは左右に分けて持っていたガサガサとかさばる紙袋を両手で持ちながら、ジョーと、彼の視線の先にある風景を交互に見ながらため息を吐いた。


「ジョー・・・」


エスカレーターとフロアを区切るセーフティ・ウォールは透明なプラスティック。
寒い冬にしまわれていた”足”は、春色の軽やかなファッショんとともに、季節が変わったことを告げていた。


「・・の、H」
「え・・・」


つん。っと。躯をエスカレーターの進行方向へと戻したフランソワーズは、自分の前に人がいないことをいいことに、高さを換え始めた段差を飛び越えた。


「H」
「・・・フランソワーズ・・別に、・・・見てたわけじゃ・・・」


フランソワーズのように飛び越えはしなかったが、ジョーは長い足を延ばして彼が立っていた段がフロアに吸い込まれる前に、エスカレーターから降りた。


「聞こえませーン」
「・・・・・荷物、持つよ。邪魔になると思うから」


ジョーは苦笑いしつつ、フランソワーズの持っている紙袋へと手を伸ばす。


「結構よ、重くないもの。どうぞ私のことはお気になさらず、じっくり楽しんでくださいませ」
「・・・いや、あの、だからね・・・」


フランソワーズの手にある、荷物を奪うまではいかないけれど、少し強引な感じで彼女の手からジョーは自分の手に荷物を移動させた。


「・・・・持つよ。僕は何を買うのか知らないし、それに今日は、”荷物持ち”のためにいるんだから、ね?」


手から荷物がなくなったフランソワーズが、ちらっと隣に並んだジョーを見る。
いつもの、少し照れるような微笑みが、何かを誤摩化そうとしている上に、加えられた”ちょっと乱暴だったかな?大丈夫?”と言う、メッセージが入った瞳に、”もっと早く言って欲しかったわ”と、言うメッセージを送った。


フランソワーズの避難めいた視線。に、少し勘違いをして。


「大根とか、人参とか、ごぼうな、感じにしか・・」


呟く。


「食料品でも、今日のお買い物はお野菜じゃなくて・・・・」
「いや、そうじゃなくて・・・」




ごにょっと続きを口の中で言ってしまった。





「ジョーのH!!!!!!」











003が、そのささやきにもならない声を聞き逃すはずがない。



真っ赤になったフランソワーズはジョーから逃げるように混雑する食料品売り場に消えていく。
消えたフランソワーズを探すこともせず、エスカレーターのサイドに設えられている、背もたれのないベンチへと足を運ぶと、そこにどっかりと座り込んだ。


「性能良すぎるよ・・・フランソワーズ・・・・・声には出してないのに・・」


フランソワーズの朱がうつったジョーは、このまま加速して帰ろうか。と、言う考えが頭によぎった。











end.









*9が何を言ったか、募集してます。
 思いつかなかったです。

 ・・・フランソワーズは膝頭が隠れる丈しか着ない印象があるので。
 タイトルが・・・(汗)
 なんか、いいのがあったら、換えたいです。


web拍手 by FC2
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。