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犬を拾った月曜日(09’ジョー誕)


「・・君はどこから来たんだい?」


茶色のふっさふさしたしっぽが千切れてしまわないか、心配になってしまう
ほどに、ジョーにむかって振られていた。


「こんなところをウロウロしていたら、保健所に通報されてしまうよ?」


ワン!ではなく、アン!と、疳高く響いた元気な鳴き声に、ジョーは微笑
む。


「じゃあね」


アンっ!アンっ!っと、二回鳴く。

ジョーは小さく子犬にむかって手を振り立ち去った。




アンっ!アンアンっ!アン!っと、聞こえる鳴き声は、いっこうに去る様子
はなく、跳ねるように走り出したかと思えば、ジョーを追い越し、彼の
前で止まると、後ろ足を投げ出すようにして座り込み、アンっ!!っと、
吠えて、可愛らしい舌をペロリと出した。


「・・・・・困ったなあ」


周りを見回すが、飼い主らしき人物は見当たらない。

鈍行しか止まらない駅とは言えど、それなりに昔は”ニュータウン”として有
名だった街。
通勤、通学ラッシュではない時間帯だが、リノベーションが済んだばかりの
バスターミナルはきっちり時間厳守で規則正しく活動している上に、免許を
持つ主婦が多いこのごろは、昼時の交通量を増やす手助けとなっている。


「危ないよなあ・・・」


ひょいっと、片手で道に落ちていた100円玉を拾うように、素知らぬ顔で
子犬を抱き上げた。













****

「それで、連れてきたアルか?」
「子犬一匹で、駅周辺は危ないし、首輪をしてるから・・・きっと近くに飼
い主がいると思ったんだけど、それらしい人は見かけなくてさ、放ってはお
けないだろう?」
「首輪にゃあ、飼い主の情報なんてもんはないなあ・・」


飲食店に犬を連れ込むのはどうか?とは、思ったものの、知人の店だと言う
ことで、多めにみてもらった。
ちょうど、ランチタイムのラッシュもすぎて、店内に人気がなくなったところに、
張々湖飯店は2時間ほどの休憩をいれる。
店のドアには”休憩中”と言う手書きの紙が貼られている。
配達注文は休憩中関わらず、受け付けていた。

店内にある、予約客用の個室のうちの1つ、小さい方の部屋にグレート、
フランソワーズと3人、ジョーが拾って来た子犬といた。


「ちっちゃい犬っコロ1匹いたって、ここに来る客は文句なんて言わないか
ら、心配すんなって」と、左目のウィンクで迎えいれてくれたのは、共同経
営者の、「”本業”は英国ロイヤルアカデミーの役者だ!」が持ちギャグだと
思われてしまっているグレート。
子犬から外した首輪を調べ終えると、それをテーブルの上に置いた。


「・・・首輪をしてるから、捨てられたとは思えないんだよね」
「でも、電話番号1つ書いてねえんじゃなあ・・・」


張々湖飯店で遅いランチを拾ってきた子犬と一緒に食べる、ジョー。

サーブしてくれたのは、新しい空色の同色の凝った花の刺繍を施されたチャ
イナドレスを着た、フランソワーズ。
今日は髪を二つに結い上げてなく、チャイナ服とお揃いの空色のカチュー
シャをしていた。


「さあ、あなたにはこっちね?」と、温めたミルクに、しっかりと焼いた後
に冷ましたミンチの肉を少し添えて、ジョーの座る椅子の下にいる子犬の前
に置いた。


「ありがとう、フランソワーズ」


膝を折り、肉を頬張る子犬の頭を撫でてやるフランソワーズに向かって声を
かけると、彼女は顔を少しあげて、ジョーに向かって微笑む。


「可愛いわね」
「うん」


新しいチャイナドレスを着ているフランソワーズを、ジョーは今日、初めて
見た。
確か、先々週あたりにグレートがオーダーしていたのが届いたと騒いでいた
ことを思い出す。

前のピンク色も似合っていて可愛らしかったけれど、彼女には、新しい今着
ている方がよく似合っていると、口に出してはなかなか言えない感想を心の
中で呟いた。

心の中で呟いたけれど、なんとなく、そういう風な視線で彼女を見てしまっ
たことが恥ずかしくて、フランソワーズから視線をそらすと、出されている
中華五目そばを子犬に負けじと頬張った。


「で、どうするアルね?飼うアルか?」


張々湖飯店の店主であり、コックでもある張大人がジョーに向かって。と、
言うよりも、ジョーとフランソワーズ、2人に向かって言った。
その手には、ジョーと同じテーブルについている、グレートと自分の分の昼
食がある。

待ってました!と、ばかりに、ぱん。と柏手を打つグレート。
彼は本当にイギリス人?と疑いたくなるほどに、「いただきます!」と言っ
た仕草が馴染んでいた。
人気のない店に、グレートが合わせた手の乾いた音が響く。


テーブルに置かれた賄い食は2人分。
張大人がテーブルに付き、ふうっと、疲れを吐き出すのと同時に、ジョーが
疑問を投げかけた。


「フランソワーズの分は?」


ジョーの足下で焼いたミンチ肉を食べ終わり、ミルクに取りかかり
はじめた子犬を眺めているフランソワーズではなく、張大人に尋ねる。


「私はいいの。予定があるから」


立ち上がったフランソワーズへと視線を移した、ジョーの顔に?マークが浮
かぶ。


「予定?」
「ええ、・・・今夜の夕食はグレートが届けてくれるわ」
「夕食って・・・?」
「もしかしたら、今日は遅くなるかもしれないから・・・」


二人のやり取りを張大人とグレートはニヤニヤとした薄笑いを浮かべつつ、
何も知りません。と、ばかりに、賄いを食べ始めた。


「どうして?」
「予定が、・・・あるの」


ジョーの邪気のない、素朴な疑問に戸惑うフランソワーズ。
困ったように、右手を頬に添えながら答えるが、口からははっきりとした
理由が出てこない。


「フランソワーズ、遅れるアルね。ココはもういいアルから行くヨロシ」


ジョーではなく、フランソワーズに助け舟を出したのは、張大人。
フランソワーズは頷いて、厨房裏のスタッフルームへとむかう、その姿を
見送った男3人。呆然とするジョーにむかってイヒヒっ。っと意地悪く笑った
グレートがジョーの背中をばんっ!ばんっ!と叩いた。


「デートだよ!デートっ!!フランソワーズ嬢はここに通って来る青年に
デートを申し込まれたんだ!」


背中を叩かれた衝撃に眉をしかめる、ジョーの頭の上に浮かぶ
「?」マークを消してやる。


「マドモアゼルはデートにでかけるんだ、それでランチはいらないんだよっ
ジョー!」


お腹いっぱい!と満足そうに、アン!っと、鳴いた子犬の声が、ジョーの耳
に届いたかどうか、わからない。
ただ、びっくりした瞳のままに固まってしまっていた。





「デート・・・・、フランソワーズ、が?」















火曜日に続く

お題元 Fortune Fate 素材/mintblue
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