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飼い主探し木曜日


急な呼び出しに応えてくれたジョーのために、腕によりをかけて
作ったランチは、2階から降りて来た『用事があるから、帰るね』
の一言に、慌てた張大人。
無理に引き止めるのも、フランソワーズの様子から、得策ではないと
考えて、彼を見送った。
作った料理は張大人と、フランソワーズの胃に収まることになったが、
フランソワーズは箸を手にしたまま、いっこうに料理に手をつける様子
はない。


「喧嘩、アルか?」


張大人はため息とともに話しかけた。


「・・別に・・・」
「何あったね?2人がそんなだと、こっちも調子が狂うアル。
相談にのるあるよ?」


優しい張大人の言葉に、フランソワーズの瞳にみるみる膨れ
上がった涙。


「アイヤイヤー!!」









「・・・私のこと、嫌いって・・・・・」


性能が良すぎる耳は、ジョーの絞り出した小さな声を聞き取っ
てしまっていた。
いたたまれず、その場から逃げるように離れてしまったために、
ジョーの言葉を最後まで聞くことはなかった。


そんなことないアルヨ!っと一所懸命に励ます張大人だけれども、
フランソワーズは力なく首を左右に降って、それらを否定する。
何があったネ?と尋ねられ、フランソワーズは素直に、朝帰りに
なってしまったと言った。


「・・・アイヤー・・・フランソワーズ、それは・・その・・」


口に出してはなんとも言いづらい内容なだけに「こういう事は
いつもグレートのっ!」と、肝心なときにいない共同経営者で
ある彼を恨んだ。

張大人はとにかく、涙を流すフランソワーズを励ますことだけに
集中することにした。


「気がついたら、もう、博士もジョーも、休んでいる時間だったから、
でも、でも・・・私、連絡すべきだったのね・・・」




---ジョーに、嫌われてしまうなんて・・・。





連絡をして、”朝帰り”します。とジョーと博士に宣言するのも、
何か間違っている気がしていならない、張大人。


「元気出すアルヨ、ジョーの機嫌が悪いのもちょっとの間ネ、
フランソワーズのこと、心配だっただけアルヨ、きっと」


その日、フランソワーズは張々湖飯店が閉店するまでお手伝いをし、
夜遅くに、グレートが運転する車でギルモア邸に帰った。












****


それからの2人は、意識的に”いつも”の時間をずらし、
お互いに顔を合わせないように過ごした。

ジョーが貼ったチラシはいつの間にか上から別のチラシが
貼られて、いつの間にか誰の目にも触れられなくなり、
定期的に駅周りを清掃する人に、綺麗サッパリはがされて
しまった。


結局、誰からもチビの飼い主だという連絡はなく、チビはギル
モア邸で日々を過ごす。


ジョーは、再度同じチラシをプリントし、駅など、以前と同じ
場所に貼っていく。

シンプルな見出しはいつしか”迷い(子)犬預かってます”
から、”飼い主を探しています”に変わっていた。

そのチラシを張大人の店へ行く途中に見つけるたびに、
フランソワーズは新しい広告たちに隠れているのを引っ張り
出して、貼り直し、はがれかけているのは、最近持ち歩くように
なった押しピンとテープでしっかりと綺麗に貼りなおした。




季節は少しずつ移り、ジョーがフランソワーズを誘おうと
していた樹から桜がは散り、その枝には気持ちの良い、
さわやかな緑を描く。



「散歩に行ってきます」


朝食、夕食の席以外で、滅多にフランソワーズとは顔を
合わさなくなっていたジョーは、”あの日”以来、張々湖
飯店へは足をむけていない。
店の手伝いを頼まれても、フランソワーズが店を手伝って
”いる”日以外の頼まれ事は、いろいろと用事をつけて
断っていた。それを責める張大人でも、グレートでもない。

フランソワーズは、朝に帰ってくることはないけれど、2日に
1回は出かけて、深夜の帰宅を繰り返しす。
出かける日は、博士とジョー、朝食、昼食をきちんと用意し、
ときには、夕食まで作り置いたりもした。

ジョーは、フランソワーズがきちんと邸に帰って来たことを
確認してから眠りにつくという、新しい習慣ができていた。













***



「なかなか、いい肉付きになってきたなあ!」


チビを抱き上げたグレートがそのカラダをマッサージする
ように触ると、チビはくすぐったそうにカラダをよじった。

人間の子どもをあやすかのように、チビを高い、高い、と
抱き上げるグレートに、ジョーは笑う。


今日はフランソワーズが店に出ない日なので、チビの
散歩と昼食に超豪華新メニュ-をごちそうするアルヨ!と
言う張大人の誘いにのって店に来ていた。

最近のジョーとフランソワーズについて、張大人も
グレートも他愛のないケンカだと踏んでいたが、こう長く
続くと心配になってきたギルモアから、店に2人の様子が
心配で電話をかけてくるようになっていた。

昼の時間のイワンに、2人がどうなっているのかとギルモアは
尋ねたが”プライベートな事は知らない”とフラれたらしい。

いくらなんでも今のままでは。と、心配する、張大人とグレ-トは、
ランチラッシュを終えた頃に店にやってきたジョーと一緒に昼食を
取った後、さあ、しっかり腰を据えて話すぞ。とそのきっかけを
狙っていた矢先。


「こんにちは」
「あーっっスミマセン今は休憩ちゅう・・で、し・・・て・・・」


昼食には遅く、夕食には早すぎる時間にやってきた
男性客の声に、チビを抱いていたグレートは、慌てて
チビを背中に隠した。


「アイヤー、フランソワーズに永尾さん、に・・・」


張大人が素っ頓狂な声をあげる。
店の入り口に背を向ける形で座っていたジョーが
振り返った。



ジョーの目の前に、一組の『カゾク』が飛び込んで来る。










「Bon jour!!」


永尾と呼ばれた男とフランソワーズの間に、4、5歳くらいの
小さな女の子が、愛らしくフランス語で挨拶をする。

女の子の元気な声に、グレートの背後に隠したチビが
アンアンアン!!っと鳴いて答える。
フランソワーズよりも濃い髪色の女の子に遊ぼう!っと
訴える。


「Le petit(e) chien(ne)!」


グレートの背中から暴れて飛び降り、姿を見せたチビに
たいして、フランス人形のように愛らしい女の子がニンマリと
笑い、今にもその子に飛びつきそうな勢いで駆け出すところを、
ジョーに捕まえられたチビに指差して叫んだ。

チビではなく、女の子の方が、チビを腕に抱くジョーに飛び
つかんばかりに駆け寄ると、両腕をいっぱいに伸ばして、抱っこ
させて!!っと訴え、ジョーは微笑んで、その小さな手の中にチビを
抱っこさせてあげた。

手が、動揺に震えていることに気がついたのは、チビの重さが
ジョーの手から離れたとき。


「 charmant(e)!!!」


子どもは力加減と言うものがわからない。
ぎゅうっと、アレクシアが思いのままにチビを抱きしめたので、
チビは苦しそうにキャン!っと鳴いた。

その声に、ジョーは動揺を振り払うかのように笑って、女の子の
手からチビを救い出し、再びその手にチビを抱いた。

チビと遊ぶなら、外の方が。と、言う視線を、張大人が言った
”永尾”と呼ばれた男ににむける。

そこで初めて、ジョーは名前だけの”永尾”を実態として認識した。







---彼が、フランソワーズ、の・・・・。






永尾だけを見たはずなのにも関わらず、彼のすぐ隣に
立つフランソワーズがジョーの視界に映る。

何かを言いたげに口を開いたフランソワーズを目に留めた
けれど、ジョーは彼女からも、永尾からも視線を外し、女の子を
見ながら言った。


「あの・・・店の中は、さすがに・・・表なら遊べるから」


ジョーにむかって永尾が軽く会釈する。と、それが了解の意と
とらえて、女の子にむかって外を指差し、チビと一緒に店先に
出たのが、20分ほど前。


まだ、ジョーは今日、フランソワーズと一言も口をきいていない。













***


「離婚した妻からアレクシアを引き取ったのですが・・・。
アレクシアはフランス語以外話せないから・・・」



永尾がちらり。と、張々湖飯店前の道で娘と遊んでくれている
ジョーへと視線を流す。その視線につられて、話を聞いていた
グレートも同じ方向へと視線を移動させる。


フランソワーズはギルモア邸に電話入れるために席を立っていた。


「素直にそうジョーに言やあ、いいことを、なんで隠してるんだ?」


永尾はいつもフランソワーズの口から聴かされていた”ジョー”が
誰であるか、店に入った瞬間にすぐに理解した。


「フランソワーズがきてくれて、本当に助かっているんです、
けれど、彼女がここ最近・・・は・・・」


仕事と育児。
永尾はフランス語の話せない両親にアレクシアをまかせた。
始めのうちは孫の可愛さに言葉が通じなくても、と、そのうち
日本語を覚えるだろうと踏んでいたが、アレクシアはいっこうに
日本語を覚える気はないらしく、頑にフランス語を通そうとした。

なかな意思の疎通ができないことに、疲れきった両親を気遣い、
フランス語が話せるベビーシッターを探した永尾だが、簡単には
見つからなかった。

そんなとき、同僚から中華レストランにチャイナ服を着た(超絶
美人な)フランス人がいるとの話しを聴き、張々飯店へフランソ
ワーズ目当てで来たのだと言う。

永尾から流暢なフランス語で話しかけられて、フランソワーズは
とても驚き、初めはなんとなく敬遠していたが、少しずつ永尾から
アレクシアの相談を持ちかけられて、誰か知り合いの方でフランス人
(もしくはフランス語の堪能な)ベビーシッターを引き受けてくれる人は
いないかと相談するまでになった。

フランソワーズも一緒になって探すが、思うようにことは
進まなかったために、フランソワーズ自身が、アレクシアの
面倒を見ると永尾に申し出たのだった。




「ベビー・シッターを申し出てくれたのは、さっきの彼の
ためなんですよ」


秘密にする必要があるのか?と、顔に浮かべる疑問を、永尾は
くすっと笑ってその答えを口にした。


「「?」」
「彼の誕生日が、5月だって・・・」
「ああ・・・そうえば、そうだ・・ったけ?」
「アイヤー、うっかりしてたネ」
「驚かせたくて、ここ以外で働いていることを内緒にしたかった
そうで・・・」
「それでも、こんな風になるくらいなら、別にばれたったかまわない
じゃないか、フランソワーズ」


邸に居るギルモアに張大人の店で一緒に夕食を。と、電話を
入れるために席を離れていたフランソワーズが席に戻って来る。
その彼女に向かってグレートは呆れたように言う。
その言葉から、永尾が自分が電話に立っている間に、彼らのに
全てを話したのだと、察しがついたフランソワーズは、抗議する
ように永尾を見た。


「っ優哉さん!」
「別に、グレートさんや張さんに秘密にする必要はないだろう?」
「秘密にしたい言うなら、ちゃああんと、黙ってるアルヨ!心配なのは、
こっちのおしゃべりネ!」
「あんだとお!」


フランソワーズを優しい眼差しで見つめながら、立ち上がって
椅子をひき、フランソワーズに座ることを促す、永尾。その自然な
行為に、永尾を1人娘を持つ親の感覚で見ていたグレートは、
さすが一度はパリジェンヌを妻にした男!と、感動しつつ、同じ
日本人でありがなら・・・と、店先で子犬と子どもと楽しそうに
遊ぶジョーにため息をつく。


「ケンカしていたら意味ないアルヨ?」


張大人は席に着いたフランソワーズに優しく話しかけた。


「・・・もう、いいの。私、アレクシアのことが大好きで、それに
・・・・・お金のためじゃないのよ、・・それに・・・・」




---ジョーは私からのプレゼントなんて、受け取ってくれないわ・・・。





「一体、何をプレゼントしようって思ってたんだ?そんな
高価なもんなのかあ?うちの稼ぎだけじゃあ、ダメなの
かい?」


永尾、グレート、張大人の視線を一身に集めて、その瞳が
こころから自分とジョーのことを心配してくれていると感じ、
観念したかのように呟いた。


「チケット・・・・なの」













***

どれくらいの時間を店先で過ごしたのだろう。
とにかく、ジョーはアレクシアがチビと遊びたいだけ
遊ばせるつもりだった。
店から誰かが呼びに来たら、そのまま邸に帰ろう。と、
考えている。

流石に、フランソワーズとその”彼氏”と一緒にいるのは辛い。



好きは子の彼氏の子ども。と、遊んでいる自分はいったい。と、
数回そんな疑問が脳裏を駆け抜けるが、店の中で当人たちと
世間話しをするよりもずっと楽だし、楽しいし。と、ジョーは
自分を誤摩化す。

本当は、チビを連れて加速してもいいくらいだ。と、思っていた。




小さな商店街の終わりにある張々湖飯店は、
車の往来がほとんどない道に面して立てられていた。

長くなった日は少しずつ傾き始め、少し早めに点いた街灯の
明かりが目立つようになってきたころ、店近くまでやってきた
タクシーに気づいたジョーは、チビを抱き上げてアレクシアの
手をとり、タクシーが自分たちの方へとやって来るかもしれない。
と、安全な場所、店のドア前まで移動した。


「ギルモア・・博士?」


タクシーは店前まではやってこなかった。
大通りから角を曲がったとろこで、停止し、車から降りた人物に
ジョーは驚く。


「おお、ジョー!・・・に・・・???」
「Bonsoir!」


ぴたり。と、店のドアの前に背中を押していたジョーの、
その背が内側から押された。


「博士、いいタイミングっすなあ!」
「un bebe!」


店からグレートが”臨時休業”のプレートを手に出てきた。
アレクシアはギルモアの腕に抱かれているイワンに興味を
しめす。


「グレート、ギルモア博士を呼んだの?」


アレクシアはギルモアに駆け寄り、赤ちゃんを見せて!と
飛び跳ねる。ギルモアは頬が落ちてしまわんばかりに
嬉しそうに笑いかけて、腰を屈めてアレクシアにイワンを
みせた。


「ああ、せっかくだからみんなで夕食にしようってな」


”臨時休業”の札をぺらぺらとジョーにみせて、それをドアに
かかっていた”営業中”の札と交換した。


「・・・僕、さっきの昼がまだ・・・夕食は遠慮するよ」
「おいおい、何を言うんだ、ジョー?せっかくあの子と仲良く
なったんだろ?」


グレートは顎でアレクシアを指しながら、ジョーの手の中に
いるチビの頭を撫でてやる。


「・・・別に」
「ったく、ジョー。フランソワーズはただ、フランス語しか
話せないあの子のベビー・シッターを永尾さんに頼まれた
だけだぞ?」
「え?」

ジョーが驚いたように、アレクシアにを写していた瞳を
グレートへとむけた。


「お前が思っているようなこたあ、なーんもない!誤解だ」
「・・・・ご、かい?」


ジョーの腕の中から、チビを抱き取り、手に持っていた”営業中の
札をジョーに渡す、グレート。
チビはふさふさな茶色のしっぽをぱたぱたと振り続けていた。


「お前が何を気にしてるかあ、しっかり解ってるぞ!」
「・・?」
「”あれ”は、久々にフランス語で相手をしてくれる人が現れて、
興奮してアレクシアちゃんが熱を出したから、一晩中看病して
あげてたんだとよ」
「!!・・・・・・・そ、う、なの?」


信じられない。と、何度も瞬きを繰り返す、ジョー。
けれど、ある種の希望が混じり合った複雑な色の瞳でグレートを
見つめ返す。


「なあ、ジョー・・・、逃げてないでちゃんとフランソワーズと話せ。
それでも009か?いったいどうしちまったんだい?お前もフランソ
ワーズも、遠慮し合ってないで、なんでちゃんと話し合わないんだ?」
「別に、」
「”別に、”じゃないだろお、いまさら”別に、”じゃあ!」
「・・・」


口を突き出すように、への字をつくって少しばかり睨む。


「ヤキモチ焼いてたくせに」
「!!」


にやーっと口を左右に大きく引っ張ったグレートは、ずいっと
ジョーの拗ねた顔に近付けて言った。


「失恋した!と、思ったんだろ?」
「っな!」
「認めろ!ジョー、お前、フランソワーズが好きなんだろ?」
「か、ぐ,グレートには、関係ないよっ」


顔を近づけるイヤラシい笑みを顔に貼付けた中年イギリス人の
顔をぐいーっと遠ざけた。


「チービ!お前のご主人様は好きな女の子に告白もせず、
しかも、フラれちまったと勘違いして、無駄な時間を
過ごしていたんだなあ!」


グレートはにやにやとした笑いのまま抱いたチビを高い、
高い、と腕を伸ばして掲げ上げた。


「グレート!!」
「ヤキモチ焼いて、相手に確かめもせずに勝手にフラれたって
勘違いして!まったく、すっとぼけた最強の戦士さまだよなぁ、
おい!」
「変なことチビに吹き込まないでよ!」
「本当のこったろうが!」


ジョーはグレートの腕からチビを奪い返す。と、びっくりしたチビが
キャン!と鳴いた、その声に。


『子犬ちゃんをいじめたら、や!』


ギルモアの側から駆け寄ってきたアレクシアが小さな手を
伸ばして、ジョーのジーンズにしがみついてきた。
アレクシアは、き!っとジョーを睨み、グレートにむかって、ぷう。と
頬を膨らませる。


「チビをいじめてるんじゃないよ?僕がこのおじさんに
いじめられてるんだから」


ジョーは日本語でアレクシアにむかって答えた。


「いたい、ゆった!」
「「?!」」


自分の口から飛び出した単語に、ジョーのジーンズから手を
離して、アレクシアは両手でぱ!っと口をおおう。


「・・・アレクシアちゃん、日本語話せないってえ・・・」


アレクシアは慌てて店の中へと駆け込んだ。











金曜日に続く

お題元 Fortune Fate 素材/mintblue
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