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情が移った金曜日


なんとなく邸に帰るタイミングを失ってしまったジョーは、夕食
を、永尾親子、フランソワーズ、ギルモア、イワン、そしてグレー
ト&張大人と取ることになった。

店先で、『永尾優哉はフランソワーズの彼氏ではない』と、『フラ
ンス語の話せないアレクシアのベビー・シッターのために、出掛け
ていた』とグレートから知らされたが、素直に、はい、そうです
か。と、今までとってきてしまった態度を急にかえることはできな
かった。

グレートの、仲間の言葉を疑うことはしたくないけれど、夕食時の
永尾、アレクシアそして、フランソワーズはどこからどうみても”カ
ゾク』としてしっくり馴染んでいたために。

ときおり<そんな目で心配すんなって!フランソワーズはただの、
ベビー・シッターだ!>とグレートがジョーの様子をみかねて励ま
すように通信を送ってくる。

余計なお世話だ。と、跳ね返したい気持ちもあるが、正直、その言
葉に何度も救われた。

アレクシアが日本語を口にしたことなど、このときには、すっかり
頭から抜け落ちてしまい、ジョーは話しかけることができない分、
ただ、ただ、フランソワーズに気づかれないように目で追う。



永尾を、フランス語しか話せずに寂しい思いでいる幼いアレクシア
を微力ながらも助けるつもりで始めたベビー・シッターだが、それ
は1日も早く目標金額に達成する意味もあった。

自分がアレクシアのベビー・シッターを始めると、ジョーや博士に
告げれば、きっと”無理して働く必要などない”と言われることなど
安易に想像できた。
理由が理由なだけに、認めてはくれるだろうが、意地になって押し
通せば、きっと何のために?と、聴かれるはずだ。

フランソワーズはその問いだけは避けたかった。




張大人はテーブルいっぱいに自慢の料理を並べ、アレクシアをとて
も喜ばせた。

あれも!これも!と、欲張るアレクシア。
小さなお腹はすぐにいっぱいになるが、それでも一生懸命に頬張ろう
とする。

無理したら、ダメよ。とフランソワーズが注意する。
デザートが食べられなくなるぞ。と、永尾が、娘の取り皿にとる
料理を調節する。


フランスにある中華料理店で少しの間手伝いをしていた。と、だか
ら張大人は子どもとの会話くらいは問題ないと言う。
フランスの劇団にゲストとして呼ばれて全幕フランス語で演ったこ
とがあると、グレートは自慢げに話した。
ギルモアはフランスの大学で講義を受けおったことがあるために、
日常会話程度なら聞き取れる。と、言うことで、フランソワーズの
周りにいる人なので、基本的はフランス語は大丈夫。と、いう少し
無理があるような、ないようなことで通した。


「じゃあ、島村くんは?」
「え?」
「アレクシアが言ってることわかってるみたいだから、君
も・・・」


永尾からの問いに、ジョーは何か上手い言い訳をようと頭を動かす
が、それよりも早く。

「ジョーはフランソワーズに出会ってから、必死に勉強したんでさ
あ、なあ!ジョー」


グレートが答えた。


「ああ、なるほど。じゃあ、日本語を島村くんに教わったんだね?」
「え?」
「?」
「そうそう!言葉が通じ合わないことなど、2人の間にはなあああ
んの障害にもならなぁかったぁがぁ!!お互いを思えば、思うこ
そ、互いをより深く理解し合うたぁめぇにい~」


グレートは舞台に立ったつもりで、身振り手振り大げさに話し始め
たが。


「教え合いっこしたネ。フランソワーズの方が優秀で、あっと言い
う間に日本語話せるようになったアルヨ」


さらと張大人に最後をもっていかれた。


「おいっ大人!オレが今こうやって、ドラマティックに説明
をっ!」
「あんさん、まわりくどいね、時間の無駄アルヨ」


永尾は2人のやり取りに笑って、フランソワーズ、ジョーを交互に
見る。

2人を隣り合わせに座られせようとしたけれど、イワンのミルクの
時間と重なったために、フランソワーズの隣にギルモアが座ってい
た。

自分たちのことを話題にされながら、ジョーもフランソワーズも
一言も口を挟まない。似たような態度で、同じ色に頬を染め、ちら
ちらとギルモア越しに、相手の様子をうかがっていた。


---落ち着かんなあ・・・・。


2人が向け合う視線を遮る障害物となっている感覚に、ギルモアは
苦笑する。


「もう、大丈夫だね」


アレクシアにジャスミンティーのおかわりをいれていたフランソ
ワーズに永尾はそっと話しかける。
永尾の言葉にフランソワーズは答えなかった。


「?」







***


「Non!」


夕食を終え、永尾がそろそろ。と、アレクシアの様子をうかがいな
がら、帰路につくことを口にした。

張々湖飯店が灯す明かりの下、チビに「さようなら」のために抱っ
こしていたアレクシアは、ぎゅう。っとチビを抱きしめて、離さな
い。


「ダメだ、アレクシア。その子犬は島村くんのわんちゃんなんだ
から、ちゃんと”さようなら”をしたら、かえしなさい」


永尾は日本語でアレクシアに注意する。
けれど、アレクシアは日本語を話す父親に対して、ぷいっと背中を
向けてしまった。


その小さな背中を見ていたジョーの意識に、流れ込んてきた声。






<<ママンとパパが離れているのは、ママンが日本語話せないか
ら。

パパのお仕事が日本になったから。

ママンは日本語ができないで日本にいくのが怖いの。

だから、私がフランス語だけで大丈夫って、ママンに教えてあげる
の。

ウソはいけないから、ちゃんと、フランス語だけで、毎日するの。



ママンと、日本語をお勉強したけど、ママはうまくなくて、とって
も悲しいお顔で泣くの。



ママン。




ママン。











アレクシアがいなくて寂しくなあい?


ママン。


どうしてお電話してくれないの?

もう、アレクシアのこと、忘れちゃったの?






ママン。










日本語がじょうずなアレクシアは嫌い?













ママン。
ママン。








会いたいの、アレクシアはフランスでママンと暮らしたい。>>





「・・・イワン」


ジョーはギルモアに抱かれているイワンに視線を送る。
アレクシアのこころの声をジョーに届けたのは、イワンしか考えら
れないために。


イワンは夜の時間と思ってしまうほどに大人しいままだった。


ジョーはさっと周りを見る。
どうやら、アレクシアの声はジョーにだけ、届いたらしい。

フランソーワズには?と、視線をフランソワーズに止めた。


「・・・ジョー」


まっすぐに、フランソワーズと視線が合った、ジョーは、すごく
久しぶりにフランソワーズを見た感覚に陥った。

父親にではなく、助けを求めるようにフランソワーズに寄りそって
きた、アレクシアと同じ目線の高さににいるフランソワーズが、
ジョーを見上げていた。

その蒼い双眸から、フランソワーズはイワンの力を必要とせずとも、
アレクシアのこころの中の声をちゃんと聴くことのできる、理解で
きる女性だと知っていること再確認する。



チビの飼い主探しは続いている。


---もしも・・・。









『フランソワーズ、あまりアレクシアを甘やかさないで。この
ごろ、我が儘がひどいぞ、アレクシア』


フランソワーズが永尾の声からアレクシアを守るように、チビを
抱っこしたままのアレクシアを抱きあげた。


「我が儘じゃないわ、優哉さん。アレクシアはチビちゃんがとって
も好きなだけです。さよならに、時間がかかっても仕方ないわ」




<<ママン・・・>>



フランソワーズに抱き上げられて、そのフランソワーズの腕の中で、
思い描く人。
小さな唇が、なにかを堪えるように噛み締められるて、フランソワ
ーズの首筋に額をあてて、チビにほおずりを繰り返す。

一生懸命にチビがアレクシアの手を、顎を、頬をぺろぺろとなめて
いたのを、ジョーは見つめた。



---イワンのような力がなくても、何も言わなくても、チビには、
わかるんだね。





動物には人間にはない不思議な力が有る。
たとえ、小さな子犬でも。
ちゃんとその力を持っている。

言葉にしなくても、理解してくれる。
そして、言葉を使わなくても、支えてくれる。

子犬のぬくぬくとしたカラダに、ふさふさとした柔らかい毛の
1本1本に宿っている。

胸に開いた、寂しいと鳴く風穴をじんわりと温めて、閉じてくれる。




---もしも、それなら・・・。








ジョーはアレクシアとは少し違う環境で、母親を求めた経験がある。
アレクシアのように、母と過ごした時間はないけれど、母の顔も、
声も、どんな人であったかさえも解らないけれど。

アレクシアと、自分が、母親を思い、恋しいと、求める気持ちに
差なんかない。




---僕よりも、チビを必要としているなら・・・。











「優哉さん・・、私、今夜このままお邪魔してもいいかしら?」


しっかりとアレクシアを抱いているフランソワーズが言った言葉に、
張大人、グレートがそして尋ねられた永尾が驚く。

やっと、2人の雰囲気が以前のそれに戻りそうな、きっかけが
できたのに、ジョーの目の前で何を言うんだ!と、張大人、グレートの
視線がフランソワーズとジョーの間を行ったり来たり。
ギルモアはイワンを抱いたまま、軽くため息をついただけ。


『今夜は私が一緒にいるわ、ね?だから、チビちゃんに”さよなら”
をして、ジョーに、ね?』


抱いたアレクシアの耳元で、優しく、優しくフランソワーズはフラ
ンス語でささやいた。


「・・・」


アレクシアは、フランソワーズの言葉に、しぶしぶうなずき、
一度、ぎゅ。っとチビを抱きしめて、ちゅ。と、その鼻先にキスを
1つ贈ると、躯を捻ってジョーの方へと顔をむけた。
フランソワーズではなく、ジョーが自ら足を動かして、アレクシア、
そしてフランソワーズの前に立った。


「・・・ありがとう」


ジョーは日本語で言ったあとに、フランス語で同じ言葉を繰り返す。
そして、アレクシアからチビを受け取った。
ジョーの腕に引き取られたチビがくぅうん。と、悲しげに鼻を鳴らす。

”さよなら”をしたくないのは、チビも同じ気持ちらしい。
ジョーは大切にチビを胸に抱いて、その温もりと、勇気をわけてもらう。



まだ、少しの間、ジョーにはチビが必要のようだ。

それじゃあ。と、永尾はギルモア博士、張大人、グレートに会釈して、
今夜の礼を言い、「フランソワーズは責任をもって自宅までおくります」
と、告げた。
フランソワーズは視線をジョーへとあげないままに、永尾と彼の車を止め
ている商店街客用の無料駐車場へ向かおうと、ジョーの前から離れたとき。


「待って、フランソワーズ」
「!」


ジョーが呼び止めた。


「・・・あの」


ごくん。と、口内にいつのまにかたまってしまった唾液を飲み込む。
フランソワーズの気部元に顔を埋めていた、アレクシアも、ジョーの
声に彼をみた。


「僕が、迎え行くよ。遅くなってもいい。何時になっても平気だから、
・・・電話、待ってる」


手のひらに掻いた汗がチビのふさふさの毛をじっとりと重くする。


「待ってる、から・・・その、ほら、永尾さんは仕事とか、あるから、大変
だろ?・・・君の送迎なら、僕が・・・するよ」


フランソワーズはジョーの申し出に、驚き、何度も瞬きを繰り返す、そん
なフランソワーズを見守る張大人、ギルモア博士に、イワン。

おお!っと何かに期待する瞳でジョーを見たのはグレート。



「・・・あまり遅くならないように、お電話しますので、
よろしくお願いします」


答える様子のない、フランソワーズの代わりに永尾が答えた。











***

いつ電話がかかってきてもいいように、ずっとリビングルームにいた。
ジョーの膝の上で寝ていたチビは、いつの間にか、ソファの上でお腹を
丸出しにして、好きなようにカラダをのばして寝ている。

ときおり、寝言のようにハフハフ、何かを言っては、ピンク色の肉球を
ふるふるとふるわせて、夢の中でも走り回ってる様子をジョーに伝えた。

アレクシアが寝付いたころに。と、言われたけれど。と、疑問が
頭をよぎる。その疑問を何度から繰り返すうちに、その疑問と、
夕食前の店先でグレートに教えられた言葉が混ざりあう。ぐるぐると
回る声が、胸いっぱいに広がろうとしたとき、ジョーの耳に、邸の
電話が鳴る音が聞こえた。

日付が変わって10分ほど過ぎていた。


「遅くなって、ごめんなさい、・・・」
「今から出るよ」
「いいの・・・。もう遅いもの、優哉さんがもしもダメなら泊まっても
かまわないって言ってくださっているから、始発の電車で帰ります、だから」
「行く」
「・・・・ジョー,無理しないで・・迷惑をかけたくないわ」
「無理じゃないよ、すぐだから、出るから。切るね」


ジョーはフランソワーズの返事を聞かないままに、電話切った。
ジーンズのポケットに入れていた車のキーを確認するように、ぱん。っと、
たたく。

ソファの上で寝ていたチビがのそのそと置きだして、ジョーを追い掛けて
玄関までやってきた。


「行ってくるね、チビ」


玄関のドアを開ける。と、チビがしっぽをふってジョーよりも早く外に
飛び出した。


「・・・チビ、お散歩じゃないんだって」


アン!っと、外から聴こえた元気で可愛らしい鳴き声は、連れて行って!と
おねだりをしているように聴こえる。


「じゃあ、・・・僕の応援をしてれるなら、一緒に、いこう」









ギルモア邸から永尾に渡された名刺に書かれた家まで、2、30分
ほどの距離。

深夜と言うこともあって、スムーズに車を走らせることができた。


高級住宅地として有名な地域。
初めて車を走らせるその道に、見慣れた人が軽く手を挙げて、ジョーが
運転する車を呼んだ。

ライトに照らされて少しまぶし気に瞳を細めている。
車が止まったのを確認すると、助手席のドアに触れようと伸ばした手が、
一瞬止まり、後部座席のドアを開けて車に乗り込む。

そんなフランソワーズをバックミラー越しに見ていた。


「おかえり」
「・・・遅くに、どうもありがとう・・・・」


ブレーキを踏んでいた足がアクセルへと移動する。


「チビちゃんも来てくれたの?」


後部座席にいたチビを、フランソワーズは抱き上げて膝にのせた。
チビはフンフンと鼻を鳴らしてフランソワーズに甘える。


車をもと来た道に引き返させるために、大きな家の角の道を使い、
Uターンさせる。ハンドルをきり、後方を確認するために躯をねじって
振り向くと、フランソワーズと視線がぶつかった。

そのとき。

勝手に手と足がジョーの意思に反して動いた。
大きな家の長い塀にそって、車が止まる。


「どうして・・教えてくれなかったの?」
「・・・・」
「ベビー・シッターのこと、教えてくれなかったの?」


ジョーはハンドルを握ったまま、ライトが照らす道だけを見た。


「・・・・」
「・・・・」


沈黙の中に、チビの頭を撫でるフランソワーズの動きが作りだす
音が車内にうかぶ。


胃の中に残る夕食の残骸が、重さを増したように感じた。
酸っぱい何かが喉をせりあがってきそうなほどに、緊張して。


「fr・・n」
「お誕生日・・おめでとう・・・ジョー、少し早いけれど・・・」
「え?」
「おめでとう・・・」
「あ。・・・うん・・そういえば、そうか・・明日、だ・・」


フランソワーズに言われて、はじめて明日が16日であることに
気がついた。


「おめでとう・・・私から、なんて・・・迷惑かもしれないけれど、
でも、・・・でも、・・・・どうしても、本物を観て欲しいなって。
私からなんて、・・・イヤならいいの、また、別のを用意するわ」
「?」
「2枚、あるわ。グレートでも、張大人でも、他にお友達がいたら・・」
「?」
「・・・これを」


フランソワーズは持っていたトートバックの中に手をいれた。
届いて以来、いつでも、タイミングがあれが、渡せるようにと、ずっと大切に
持ち歩いていた。


1日早い、プレゼント。


白い封筒に入ったチケット。









伸ばされた指先が持つ、白い封筒がかすかに震える。
受け取った指先も、震えていた。




チビがアンっ!アンっ!と鳴いて、その封筒に興味を示す。
息を詰まらせて、緊張するジョーの指先が糊のはられていない封筒の
中の長方形の紙を取り出した。






「・・・これっ」




ジョーの誕生日の翌週に行われる、
全日本選手権/フォーミュラ・ニッポン第3戦決勝観戦

VIPスイート・プレミアムのチケット。






「一度は行ってみたいって・・・・」


チビが嬉しそうにフランソワーズの膝の上でしっぽをふる。


「・・・」


続けて封筒から、往復の新幹線、専用シャトルのフリー・パス、
そしてホテルの名刺。


「そういう、パッケージがあったの・・」
「フランソワーズ!!」


キャン!っとチビが驚きの声をあげた。


「!!」


ジョーはさっとシートベルトを外し、右手でリクライニング・
バーを引いて、バックシートを勢いよく倒した。
フランソワーズはびく!っと躯を跳ねさせてぎゅ。とチビを抱き
しめる。

運転席から身を乗り出して、ジョーはフランソワーズへと腕を
伸ばした。


「すごいっ!すごいよっ!!」
「・・・・」
「すごい!嬉しいっ!!」
「・・・・ジョー」
「フランソワーズ!!すごいっありがとう!」



チビのようにしっぽがないから。
嬉しい。と、言う気持ちがジョーの躯を動かす。



「一緒に見に行こう!!」
「・・・・・・」


ぎゅう。と、抱きしめられたジョーの腕に、フランソワーズは
抵抗するように、押し返した。


「・・・ジョー、無理しなくていいのよ?」














土曜日に続く




お題元 Fortune Fate素材/mintblue
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