RSSリーダー
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
待ち遠しいよ。
桜前線が通過した後に、残ったのは、さわやかな黄緑色の生命力溢れる新芽たち。
木々を彩っていた華やかさは去ったけれども、さっぱりとした空の青と、黄緑色のコントラストを見上げたフランソワーズの腕に、目覚めたばかりのイワン。
むにむにとイワンが揺らすプラスティックのまあるい形ををした、黄色のおしゃぶりが日の光を弾いていた。

目に見えて肌で感じられる、冬から春へと移り変わる季節のはっきりとした変化ではない、毎日、呼吸しているのが当たり前の中に、見落としがちな小さな変化。


綺麗な顎をついっとあげて。
直射日光を避けるように、大きな桜の木の下に身をよせたフランソワーズ。を、見上げるイワン。


この木から桜の雨が降っていたころ、イワンは夢の中だった。
夜の時間の前には、自分の親指の爪ほどのつぼみがぽつぽつと顔を出し始めて、目覚めたときには、それは消えて、今度は新緑の芽がぽつぽつと、顔を出していた。



「桜を逃しちゃうなんて、残念ね、イワン」
「来年ガアルヨ」


赤ん坊独特の体温の高さを胸に抱きながら、その口からこぼれた言葉の冷静さに、苦笑するフランソワーズ。


「待ち遠しい?」


ジョーのように、軽くイワンを”高い、高い”をすることが、ちょっと怖いフランソワーズは、抱き直
すようにして、胸の位置から肩の位置へとイワンを移動させた。

少しでも、彼をぐんぐんと伸びる枝に近づけるように、と。


「ソウデモナイ」
「桜は嫌い?」
「特別ナコトナンテ何モナイ、タダノ植物ダヨ」


つん。と、すまして、桜の花に何の情緒も抱かないイワンに、フランソワーズはくすっと笑った。



「嘘つきね、イワン」
「?」
「あなたはとっても嬉しそうに、にこにこと、ずっと笑っていたのよ」






***




夜の時間のイワンが満開の桜を愛でられないことを、一番悲しんだのは、誰でもないジョーだった。

花見のため?その肴が目当て?どっちなのかは今ではどうでもいいかもしれないけれど、集まった家族たちとでかけた。

そういうとき、夜の時間のイワンは、クーファンの中で眠らせておくのが常だ。けれど、ジョーは花見の間中、イワンを膝に抱いて、ことあるごとに彼に話しかけていた。


「眠っているときも、おしゃぶりって、不思議なんだけど・・・」
「あら、駄目よ・・ジョー。なくなったらイワンの機嫌を損ねるわ」


そんなフランソワーズの注意を聞きながらも、そっとイワンのおしゃぶりを取り除く。


「・・・ね。みてよ、フランソワーズ」
「あ、ジョー・・・おしゃぶりを戻して」
「笑ってるよ、イワン」








眠っていてもね、フランソワーズ。
イワンはちゃんと解るんだよ。








ジョーは芝生の上に敷かれていたビニールシートから、立ち上がった。
腕に抱くイワンを、咲き誇る桜の重さにしなだれて低くなった枝へと連れて行く。
フランソワーズも、ジョーについて、行く。


「桜だよ・・・たくさん、たくさん、綺麗に咲いてる、イワン。綺麗だよ、来年はちゃんと起きていようね」









いつもはおしゃぶりを吸っているために、見えないイワンの口元。

「笑ってる・・・ね?フランソワーズ」
「・・・・見えてる?イワン・・・とっても綺麗な桜よ」


ジョーは腕の中のイワンをフランソワーズの方へとみせた。




「僕たちの目を、通して、僕たちの・・・今の気持ちを感じてくれてるんだよ」


イワンのくちびるが、おしゃぶりを恋しがるようにむにゅむにゅっと動く。と・・・。



「あ、笑った・・・、ジョー、イワンが笑ってるわ」
「うん」










満開の桜の下。
そよぐ風に舞うはなびら。





「フランソワーズ」
「なあに?」


にこにこと、滅多に観る事が出来ないイワンの満面の笑みに、フランソワーズは釘付けになる。







「来年の桜が待ち遠しいね」
「また夜の時間かもしれなくてよ?」
「・・・意地悪だなあ、フランソワーズ」


フランソワーズはジョーの腕からイワンを抱き受ける。
イワンを抱いたフランソワーズごと、ジョーは抱きしめる。




ジョーの背後で、3人を冷やかす家族たち。
そんな家族たちにむかって首だけひねり、ジョーは言った。




「来年は4人家族かもしれないよ」
「!!」




家族たちが遠くで驚きにひっくりかえる。








「はは、・・・冗談だって」
「もうっ!そういう冗談はいやよっ。ジョーの方が意地悪だわ!!」


背中側から抱きしめられているフランソワーズは、ジョーへと振り向き様に、彼の腕から逃れようとするが、ジョーは腕に力を入れて、逃さない。


「待ち遠しいね、イワン」


フランソワーズの腕の中にいる、イワンに話しかけた。












***




『ソウカモシレナイ』
「?何か言った、イワン?」



フランソワーズは、昼食の準備の時間が近付いている事に気づき、抱いていたイワンをベビーカーへと移した。

短い朝の散歩が終わる。










「僕テキニハ、ふらんそわーず似ノ妹ヲ希望シテオコウカナ。ガンバッテト、じょーニイッテオイテ」
「?!」





待ち遠しいよ、ジョー。







桜が?
それとも?











『ソノ前ニ男トシテ”けじめ”ヲ ツケナイトネ』
---意地悪だなあ・・・イワン・・・・。











フランソワーズの歩調にあわせて進むベビーカーの中で、イワンは笑った。



「じょーガ邸ニ帰ッテ来タヨ、夜ニハ、どるふぃんデ出発スルミタイ」
「まあ、そうなの?急いで帰りましょう!」










待ち遠しいよ。


桜が。


ジョーの、男のけじめ(?)が。






もしかしたらの、新しい家族が。








待ち遠しくて、わくわくするね。








イワンは嬉しそうに、笑った。











end.













*やっと近所でも桜が咲きました!
そして、がんばって"<br>を打ち込みました(笑) めっちゃ面倒です・・・。  





写真/空に咲く花
web拍手 by FC2
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。