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なんだか嫌な予感がする/009の予感は常に正しい?

「寂しいのか?」


突然降ってきた言葉に、フランソワーズは瞬きすることを忘れて固まった。


「帰りたい、のか?」


その言葉はフランソワーズのこころの奥底にしまい込んでいた感情を、表に導き出した。
普段の彼女なら、瞬時に精神をコントロールし、何事もなかったかのように振る舞えただろう。

けれど、問いかけて来た家族の言葉は、じんわりとフランソワーズを包み込み、彼女の小さな抵抗を簡単に取り去ってしまう。


「・・・・・」
「ジョーのバイトが忙しくなったのが、原因か。それとも・・・何か、あったのか?」


黙り込んでしまったフランソワーズは、ただじっと、ジェロニモを穴があくほどに強く見つめた。










***

アメリカにいたジェロニモが、ギルモア邸に帰って来た。
理由は勤めていた先の仕事の契約が切れて、更新することができなかったため。
ある程度の蓄えができていたことと、ここ数年はずっと働き通しだったために、この機に全身メンテナンスの予定を入れて今年1月のフランソワーズ、ギルモア博士の合同誕生日会以来、ギルモア邸に住んでいる。


「怖がらなくていい。」


太陽の香りがする大きな手でフランソワーズの頭を優しく撫でると、春風のような温もりとともに、優しくフランソワーズを抱きしめた。


「帰って来て以来、思っていたことだ。」
「・・・・・」


フランソワーズは身を固くして、その温かな包容を拒む。
ジェロニモは気にする事なく、膝の上にフランソワーズを抱き上げた。



昼下がりのリビングルーム。



相変わらずギルモア博士は地下の研究室。
イワンは夜の時間。


張大人はお店、グレートも同じ。


ジョーは朝から大学のバイト。


フランソワーズはいつものように午前中の家事を済ませ、昼食の準備には時間がある、ぽっかりと空いてしまった空間を、朝の散歩から戻って来たジェロニモを捕まえて、ジョーの誕生日の計画を嬉々として語っているときだった。



『○×遊園地の仮面○イダー・ショーのチケットを張大人の店の商店街運営委員会関係でもらったんですって、それを私にくれたの!!』


今月のお小遣いをすでにギルモア博士から前借りをし、絵本4冊、そして、『歴代全員大集合!仮面○イダー・食玩キーホルダー』を全種制覇のために、大人の箱買い(2つ)をしたために、ジョーの誕生日プレゼントに悩んでいた、フランソワーズ。


『お誕生日に遊園地って素敵でしょう!16日は土曜日でジョーのバイトがないもの!ね?たくさんジョーの好きなランチを作ってお弁当にするのよ!あ、心配しなくても大丈夫よ、ちゃんとジェロニモと博士の分もランチボックスにして置いておくわ♪』


止まらない機関銃のように、計画をあれも、これも!と話すフランソワーズだが、まだちゃんとジョーを誘ってはいない。張大人からチケットをもらったのは、2週間前にも関わらず。






「寂しいのか?」









止まらないフランソワーズのおしゃべりに、唐突と言っていいタイミングでジェロニモが落とした音。







勤めていた仕事の都合でギルモア邸にはタッチ&ゴーの状態だったために、誰よりも滞在日数が短く、帰宅回数も少なかったジェロニモは、ここ数ヶ月の滞在で知ってしまったことを、口にする。


「モノでは、寂しさは癒されないぞ。・・・・好きなのはわかるが。」


ジェロニモの言葉に反応を示したフランソワーズの唇が動くが、言葉にするまえに一文字を描いてきゅっと固く締められた。

フランソワーズの座るソファの周りに散らばっている食玩、ぬいぐるみ、絵本、雑誌に、先月から購入し始めた”超絶保存版・テレビシリーズ・仮面○イダー・/コレクション”。

最近、フランソワーズ子供向けアクション・ヒーローに夢中になっており、テレビ・シリーズの初代から追い始めていた。




コレクター気質は元々なのだろう。
何か1つにハマると、とことん突き詰めないと気が済まない性格なのもジェロニモは知っている。


「ジョーがいないと・・・。イワンが夜の時間、いつも1人なのか?」


ギルモア邸はフランソワーズ1人でケアするには大きすぎるために、プロの清掃員が年に何度かやって来る。
それ以外は、全てフランソワーズ1人でケアしている。
プロなどもう、呼ぶ必要はないわ!と、彼女は言うけれど、やはり、それは無理がある上に、そこまでフランソワーズ1人がつとめる必要もないと家族の誰もが思っていた。


けれど、フランソワーズは、ギルモア邸に関することは、何もかも1人でこなそうとする。


家事も、掃除も、洗濯も、料理も、・・・・・何もかも。



全て、を・・。






けれど、住んでいるのは常識を持った身の回りの世話を自身でできる者ばかり。
手のかかるはずの赤ん坊は、そんな大人たちよりも実は手がかからなかったりする。

フランソワーズの手を煩わせるような家事はないに等しい。

毎日、こなす家事の時間を含めて、フランソワーズはどこかへ出掛ける事もなく、ずっとギルモア邸にいる。


家族が帰郷してるときには、気づかない、気づくことが出来なかったことを、ジェロニモは知った。









フランソワーズは1人。




波音が聞こえるだけの、大きな洋館に。




ぽつん。と、1人でテレビを観る。

本を読む。


集めた食玩を並べたり、整理したり。


冬なら、編み物で時間をつぶす。



海辺まで散歩に出ても30分以内には戻ってきて、リビングルームのソファに小さくなって座る。
ジョーから、家族からメールが届くことがあるために、肌身離さずジョーとお揃いのストラップがついた携帯電話を持ち歩く。

毎日、何かしらのメールをジョーに宛てて打つが、送信されることは滅多にない。




昼食の準備の時間がくると、あれやこれやと凝ったものを考える。
お菓子も作る。

夕食の献立を考える。



午後の家事が終わる。



また、リビングルームに戻って、小さくなって座る。


壁にかかる時計をちらちらと見て、秒針の音を追いかけるように数える。








キッチンで、ストックの整理なんかもする。
毎日のことなので、すべて把握しているが、何もしないよりは。と、手を、躯を動かす。





夕食の支度の時間を待つ。
ジョーが好きな料理をいっぱい考える。
ジョーが好きになってくれる料理をいっぱい考える。

美味しいって言ってくれる姿を想像する。






その声が、”さすが僕の妹、フランソワーズだね”と、褒めてくれる人の声に代わる。
恋人にむかって”フランソワーズのお菓子が一番!”っと屈託なく自慢する、兄の声。



その声を振り払うかのように、バスルームに向かい、24時間いつでも入られるようになった変化のないお風呂の温度を確認して、誰もいないリビングルームに戻って来る。



何も考えないでいいように、漫画を読む。
フランスにはいない、日本の妖怪をみつけて、その妖怪に関する逸話にびっくりしたり、笑ったり、ちょっとぞっとしたり。

仮面○イダーの歴史を調べたり、過去の俳優さんが今どうしているのか、ジョーの部屋のパソコンを借りて調べたり。







『ジャンが正義のヒーローなのは当たり前よ!』








関係のないことをしようとして、周りをみれば、すべてジャンと繋がってしまう。



フランソワーズの唯一の、いや、今は唯一ではなくなってしまった、兄、ジャン。
元々、日本のmanga・ファンだった彼からの影響で妖怪だのなんだの、を知った。

婚約者であるエヴァは、外資系輸入会社に勤めていて、取引する先が日本企業だったために日本を良く知っていた。
フランソワーズがジャンからエヴァを紹介されたとき、2人は日本を知っていると言う共通点から、とても仲良くなった。ジャンがヤキモチを焼いて拗ねてしまうほどに。


『ジャンは私にとって、王子様・・・ううん、正義のヒーローなのよ!彼は私の運命の人!』


妹には照れて、どのようにしてエヴァと出会ったのか、語らなかったが、女2人のアペリティフ・タイムには隠し事などない。


『ジャンが正義のヒーローなのは当たり前よ、エヴァ!だって私の兄さんだもの!!』


酔いに任せて、自慢の兄を、恋人をお互いに惚気合った。


















「ジョーに、なぜ言わない?」


ジェロニモは末弟が、今、膝に抱く愛らしい妹に好意を寄せていることは当然のごとく知っている。
観ていて苦笑してしまうほどに、彼女を大切に、大切にしていることを、よく知っている。

少しばかり、過保護すぎないか?と、心配になってしまうほどに。


「遊園地は、オレに言う前にジョーに言うべきだろう。」
「・・・・まだ、日はあるもの」


聞き逃してしまいそうなほど、小さな小さな声で呟かれた。


「寂しくなんかないわ」


ジェロニの胸に顔を埋めて、子猫のように躯を丸くして、フランソワーズは言った。
フランソワーズの頭を撫でてやりながら、ジェロニモはこの数ヶ月見てきたフランソワーズを思い出す。




彼女はジェロニモが帰郷したことを一番喜んでくれた。
それと同時に、見られないように、気づかれないようにと、彼女は孤独を隠し始めた。



見ていて辛いほどに、元気で明るく、変わらないフランソワーズ。




『最近、フランソワーズは無駄遣いし過ぎだよ!』
『も!春は新商品がたくさん出る時期なんですもの!!』




隠すために。





ほら、アタシはこんなに忙しいの!
いっぱい、いっぱい、楽しいことがあるの!
毎日が忙しくって、大変よ!








毎日・・・・楽しくて、忙しくて、たくさん、たくさん、時間が・・・。























イワンも気づいているのだろう。
昼の時間でも、研究途中であろうと、フランソワーズが彼を求めるとぱっとテレポートして彼女の腕に抱かれている。
黙って、静かに赤ん坊独特のミルクの香りとその体温の高さで、フランソワーズを温める。







「帰らないのか?」
「フランスはもう、私が帰るべき場所じゃないわ」


即答だった。
そして、しっかりとはっきり言い切った。




ジャンとエヴァの間に娘(フランシーヌ)が生まれ、大切な家族を護るために。






フランソワーズの覚悟と強さに、哀しみを覚える、ジェロニモ。








フランソワーズはジェロニモに甘えた。
彼の膝上で、太陽の香りに包まれて。

まるでひなたぼっこをしているかのような、心地よさに甘えた。





「踊ればいい。我を忘れて、全てを忘れて、内にある想いをすべて踊りではらせばいい。」


フラソワーズは、首を左右に振った。


「こんな躯じゃ、踊ってもフェアじゃないわ・・・。」
「人のために踊るんじゃない、自分のために踊るんだ。」






ジェロニモの胸が涙に濡れる。








「誰でも祖国は恋しいものだ。家族が愛おしいものだ。その想いに代理はない。」












ジェロニモは泣き寝入ってしまったフランソワーズを自室へと連れていき、そっと寝かした。
時間をみて、昼食の時間が過ぎていることに気づき、ジェロニモはフランソワーズに代わってキッチンに立つ。


「なんじゃ、フランソワーズはどうした?」


いつもの時間帯に昼食の声がかからないために、ギルモアは地下の研究室から出てくると、キッチンに立つジェロニモに驚いた。


「博士は、気づいてましたか?」
「何をじゃ?」
「フランソワーズのことです。」


ジェロニモの手にかかると、キッチン用品全てがまるでフランソワーズが買ってくる食玩のおもちゃのようにギルモアの目に映った。


「季節的に、ホームシックにかかりやすい時期じゃて・・・」


ギルモアはヒゲを撫でながら、ため息混じりに言い、視線をフランソワーズの部屋のある方角へと動かした。


「ジョーは何も知らないのですか?」
「ジョーはジョーなりに、がんばっとるよ・・・。フランソワーズのために」


ジョーが通う大学の慰安旅行(お題・17/京都2泊3日の旅)から帰ってきた直後、ギルモアはジョーからジャンの連絡先を教えてくれと言われたことを、ジェロニモに告げた。密やかに彼は彼女のために慎重に動いていると。


「もうすぐ、ジョーの誕生日です。」
「んー。そうじゃったのう・・・・」
「張大人に言っておきます。」
「それがいいな、2人じゃし」
「はい。」
「ジェロニモ、かぶらんようにせんとな」
「博士。」
「なんじゃ?」
「部屋はまだ早い。」
「・・・・・・・いや、ほれ、ホテルのレストランじゃ、ついでに・・と」
「フランソワーズのヒーローが、まだジョーじゃなく、ジャンのうちは、止めておいた方がいい。」


腕を組んで真剣に悩み始めたギルモアに苦笑を残して、ジェロニモは昼食の準備に集中した。










***

「ただいまー!フランソワーズっ」


ギルモア邸のドアを開けて、まず彼女の名前を呼ぶ。
そのままエントランスの吹き抜けを通り抜け、自室に戻らずにリビング・ルームへ。
L字型のソファに持っていたメッセンジャー型の鞄を放り置いて、キッチンへとジョーの足が急ぐ。


「お帰りなさい、ジョー!」


キッチン・カウンター越しに、ジョーは夕食の支度をするフランソワーズを観る。
振り返って、微笑む大切な、大好きな人。


「御夕食の準備は出来てるの、すぐにテーブルに運ぶわね」
「お腹すいたよ!」
「まずは手を洗って来てちょうだい」
「うん!っと、その前に・・・」
「?」


ジョーはもぞもぞと、ジーンズのポケットを探りはじめた。
フランソワーズは緑茶のために用意していたお湯の火を切って、キッチン・カウンターに近付く。


「あのさ・・・、好きだよね?」
「?」
「最近、ほら、よく・・・集めてるし」
「?」
「湯田さんに、その話しをしたら、そこでバイトしてる人がいるって・・・それで」


キッチン・カウンターの上に、フランソワーズの部屋の鏡台の引き出しに仕舞われた同じ紙が2枚、置かれた。


「・・・その、さ。・・・・・・(2人で)行かない?」


きっとすごく喜んでくれるだろう。と、想像していた。
色んなリアクションのフランソワーズをずっと帰りの道中、想像しては、怪しくニヤけてしまうのを必死にこらえながら。


「あの・・、フランソワーズ?」


けれど、ジョーの予想に反してフランソワーズは押し黙ったまま、じっとカウンターの上に置かれたチケットを見つめていた。



なんだか、嫌な予感がする。
じわじわと、不安がジョーの胸に広がっていく。


009の予感は的中率が高い。

---この嫌な感じは、多分・・・・・・・・・・。
















「・・・・・・・・ジョー」
「は、・・・・はい」


黙り込んでいたフランソワーズが、やっと声を出した。
奇妙な緊張感が走り、背中に冷たい汗を掻く。


いくら好きで集め出したといえど、遊園地の着ぐるみショーなんて、やっぱり。なのか???と、焦り始める。


「あのさ、別に、ショーは観なくてもっ!ほら、遊園地!これっ!!乗り物券はついてないけどッ、入場料込みだからッ!」
「ジョーっ!!」
「は、はいっ!!!」


キッチン・カウンターに乗り出して、ジョーの顔を真剣に見つめる、フランソワーズの勢いに驚く。


「これで4枚よ!」
「?!」
「ジョーの2枚っ、アタシの持ってる2枚!」
「え・・、フランのっ2・・???え?」
「イワンは無料だからっあと2枚でみんなで行けるわっっ♪」












「・・・みんなと一緒の方が楽しいから・・ね」



ジョー/009の”嫌な予感”が的中。

たまには外れろよ・・と、ぼやいてします。








「アイヤー!そうアルか、そうアルか。ならもう2枚、こっちでなんとか調達するアルヨ!」

フランソワーズとの電話のやり取りの後、こっそり、ジョーの携帯電話に謝りのメールをいれる張大人。気を利かせたつもりが裏目に出てしまった。と、反省する。


「こういうコトあるかもネー、と、早めに渡したアルに・・・上手くいかんもんアルねえ」
「それなら、当日ドタキャンするかあ?」
「駄目アルよ・・・フランソワーズ、すごく楽しみにしてるネ」
「あちゃー・・・・」





***

「博士、みんなで行くなら別のもの考えた方がいい。」
「むう・・・困ったのう」
「旅行券とか、なしです。」
「なに!・・・・・・じゃあ、どうすればいいんじゃああああっ?!」



ジョーの誕生日、16日は家族で遊園地(着ぐるみショー)に決定した。





25)へと続く。


end.


*『アタシってばすごーい』と、言うお話を同じお題で書いています。
 その作品はこちら。からどうぞv。

お好きなお話を序章として妄想してくださいませ。

 どっちも、遊園地で御誕生日に繋がります。
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